Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
(H29.12.8)
国土交通省 説明資料
平成29年12月8日
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
規制改革推進会議 投資等WG 関係省庁ヒアリング
標準請負契約約款は、請負契約の片務性の是正と契約関係の明確化・適正化のため、当該請負契約に おける当事者間の具体的な権利義務関係の内容を律するものとして、中央建設業審議会がxxな立場から作成し、当事者にその実施を勧告するもの。【建設業法第34条第2項】
建設業法(昭和24年法律第100号)(抄)
(中央建設業審議会の設置等)
第34条 この法律、公共工事の前払金保証事業に関する法律 及び入札契約適正化法 によりその権限に属させられた事項を処理するため、国土交通省に、中央建設業審議会を設置する。
2 中央建設業審議会は、建設工事の標準請負契約約款、入札の参加者の資格に関する基準並びに予定価格を構成する材料費及び役務費以外の諸経費に関する基準を作成し、並びにその実施を勧告することができる。
種 類
① 公共工事標準請負契約約款(S25作成)
対象:国の機関、地方公共団体、政府関係機関が発注する工事の請負契約
(電力、ガス、鉄道等の民間企業の工事も含む)
② 民間建設工事標準請負契約約款(甲)(S26作成)
対象:民間の比較的大きな規模の工事を発注する者と建設業者との請負契約
③ 民間建設工事標準請負契約約款(乙)(S26作成)
対象:個人住宅等の民間の比較的小さな規模の工事を発注する者と建設業者との請負契約
➃ 建設工事標準下請契約約款(S52作成)
対象:公共工事・民間工事を問わず、建設工事の下請契約全般
(※)上記のほか、民間の建築関係団体等が定める「民間(旧四会)連合協定 工事請負契約約款」なども別途存在。
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標準約款のうち、例えば「公共工事標準請負契約約款」は、過去、概ね7~8年毎に改正が実施されている。直近では、本年7月に、建設企業の社会保険加入促進を図るための改正が実施されたところ。
昭和47年12月18日改正
○契約の履行に関する発注者及び請負者の双方の権利及び義務の明確化を図るため、工事完成後の工事目的物の引渡しについて請負者の引渡しの申出を原則とするなど、所要の規定を整備。
平成7年5月23日改正
○金銭的保証及び役務的保証の要否については発注者の選択に委ねられているところ、役務的保証として新たに履行ボンド制度を規定するなど、履行保証制度に関する規定を整備。
平成15年2月10日改正
○中小・中堅建設業者の資金繰り悪化及び連鎖倒産の防止を目的として平成10年度から実施されている「下請セーフティネット債務保証事業」の活用促進を図るため、所要の規定を整備。
平成22年7月26日改正
○工期延長に伴う増加費用の負担について、発注者に帰責事由がある場合には発注者が費用を負担するなど、工期延長や第三者に損害を与えた場合の当事者間の負担のあり方を明確化。
○建設工事における紛争の未然防止や迅速な解決を図るため、xx・中立な第三者(調停人)について、紛争が生じた後だけではなく、紛争が生じる前の受発注者間の協議の段階から活用できるよう、規定を整備。
平成29年7月25日改正
○社会保険加入を促進するため、受注者の下請企業を社会保険加入企業に限定する旨や、請負代金内訳書に法定
福利費を内訳として明示する規定を整備。 2
○ 建設工事は、通常、請負契約の成立から完成・引渡しまでの期間が長く、この間に、設計変更や契約解除等に伴う請負代金債権の変更や消滅が生じる場合も多い。(建設工事の請負代金債権は、不確定な要素の多い債権である)
○ 工事契約は双務契約であることから、請負代金債権の債権者(請負人)は対応する債務(工事完成債務)を負っており、債権を譲渡した請負人が、譲渡後にも債務を適正に履行し続けることができるか、完工意欲の面に疑問がある。
○ 債権譲渡を無制限に認めた場合、下請業者に対して請負代金が適正に支払われないおそれがある
現行の建設工事標準請負契約約款においては、代金債権等の譲渡制限が付されており、譲渡できるのは、債務者の承諾を得た場合に限定されている。
2.債権の無断譲渡があった場合の適用
○ 国交省発注工事の場合、債権の無断譲渡を理由とする契約解除の例はない。
3
権利義務の譲渡等
第五条 受注者は、この契約により生ずる権利又は義務を第三者に譲渡し、又は承継させてはならない。ただし、あらかじめ、発注者の承諾を得た場合は、この限りでない。
(注)ただし書きの適用については、たとえば、受注者が工事に係る請負代金債権を担保として資金を借り入れようとする場合が該当する。(受注者が、
「下請セーフティネット債務保証事業」又は「地域建設業経営強化融資制度」により資金を借り入れようとする等の場合)
2 (略)
発注者の解除権
第四十七条 発注者は、受注者が次の各号のいずれかに該当するときは、この契約を解除することができる。一 正当な理由なく、工事に着手すべき期日を過ぎても工事に着手しないとき。
二 その責めに帰すべき事由により工期内に完成しないとき又は工期経過後相当の期間内に工事を完成する見込みが明らかにないと認められるとき。
三 第十条第一項第二号に掲げる者(監理技術者またはxx技術者)を設置しなかったとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、契約に違反し、その違反によりこの契約の目的を達することができないと認められるとき。五~六 (略)
発注者の任意解除権
第四十八条 発注者は、工事が完成するまでの間は、第四十七の規定によるほか、必要があるときは、この契約を解除することができる。
2 発注者は、前項の規定によりこの契約を解除したことにより受注者に損害を及ぼしたときは、その損害を賠償しなければならない。
解除に伴う措置
第五十条 発注者は、この契約が解除された場合においては、出来高部分を検査の上、当該検査に合格した部分及び部分払の対象となった工事材料の引渡しを受けるものとし、当該引渡しを受けたときは、当該引渡しを受けた出来高部分に相応する請負代金を受注者に 支払わなければならない。~(後略)~
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このため、元請への円滑な資金供給に加え、下請代金の支払促進を通じた下請保護や連鎖倒産防止を図ることが有効。
建設業は、中小企業が全体の99%を占めており、工事途中段階における資金繰りの改善や経営基盤の強化が不可欠。
○
請負代金債権等を担保として、中小建設業者からなる事業協同組合等から出来高融資を受ける場合に、その原資となる金融機関からの借入に対して建設業安定化基金による債務保証を行っており、広く活用が図られている。
(H28年度債務保証実績:2139件、602億円)
こうした観点から、下請セーフティネット債務保証事業(H10年度~)等を通じて、元請が、発注者に対する工事
金融機関
事業スキームの概要
公共・民間工事の発注者
⑤借入れ
Ⓑ工事代金支払
建設業 安定化基金
⑤債務保証
①工事請負代金債権の譲渡に係る承諾申請
②債権譲渡の承諾
元請建設企業
(代金債権者)
③代金債権(未完成を含む)の譲渡
⑥転貸融資(出来高の範囲内)
事業協同組合等
➃出来高査定
⑦代金支払
下請建設企業
元請倒産時には、元請に代わって下請へ支払 5
「発注者の承諾を得た場合」の例 (下請セーフティネット債務保証事業等)
から、元請業者による資金調達の円滑化および下請業者への早期支払の促進を図るため、工事代金の一定割合を前払い
建設工事は、資材購入や労働者の確保など着工段階で多額の初期投資が必要となるため、円滑な施工を確保する観点
する制度が整備されている。
○
の2割相当額が中間前払金として追加的に支払われることとなっており、建設業界で広く浸透・定着している。
公共工事の場合、工事代金の4割相当額が着工当初の前払金として支払われることに加え、工事の中間段階でも代金
完成払
前払金による工事資金の流れ(イメージ)
発
注
者
前金払
(4割)
中間 前金払
(2割)
受 注 者 (建 設 企
労務費
下請代金
業)
資機材費
労働者
下請企業
資機材業者
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・債務者の承諾を得ないまま行われた債権譲渡は「有効」として取り扱われること
今般の民法改正(2020年6月までに施行)に伴い、当事者間で債権譲渡制限特約を付した場合でも、
・無断譲渡を理由として契約を解除することは権利の濫用に当たり得ると解されること(法務省見解)を踏まえ、建設工事標準請負契約約款における取扱いについても、今後、解釈の明確化などの必要な 措置について検討を行っていくことが必要。
○
観点も踏まえることが必要。
なお、検討に当たっては、事業者等の意見に加え、建設工事の適正な施工の確保や下請保護などの
規制改革推進会議投資等WG(2017年9月26日)都銀懇話会提出
【問題意識】 強い債務者による契約解除・取引停止等の可能性の問題
✓ 譲渡制限特約の付された債権を、債務者の承諾を得ずに譲渡(無承諾譲渡)することは、改正民法上有効である。
✓ しかし、資金調達・支援継続等を目的とした無承諾譲渡であっても、なお、債権者(譲渡人)・債務者間の合意に 違反する行為であると評価し、譲渡人の債務者に対する債務不履行を構成し得るとして、債権発生原因たる契約の解除もしくは契約更新の見送りをもたらす可能性が指摘されている。
✓ さらに、原因契約の解除等を「惹起」した譲受人のコンプライアンス上の問題も指摘されている。
【要望内容】1.原因契約の解除を規制する政策上の手当
・ 中小企業の資金調達の妨げとなる原因契約解除等の規制・牽制をすること。
・ 具体的には、資金調達・支援継続等を目的とした「無承諾譲渡」のみを原因とする原因契約解除は禁止する旨の 独禁法ガイドライン(または下請法)の改正・明確化を行うこと。また、譲渡制限特約が盛り込まれている業界雛形 を改訂すること。 7