問1 DATE : / / / 解答 2
2022年版
再受験生のための
改正民法☆強化プロジェクト
クロスリファレンス!
改正民法☆解法ナビゲーション
(下)
【クロスリファレンス!改正民法☆解法ナビゲーション(下)】
Ⅰ 肢別ドリル
1 相殺 1
2 契約不適合責任 7
3 贈与契約 11
Ⅱ 重要ポイントノート
1 相殺 17
2 契約不適合責任 19
3 贈与契約 21
再受験生のための改正民法☆強化プロジェクト
相 殺
STEP1 基準問題 【行政書士試験(平成20年)】
問1
相殺に関する次のア~ウの記述のうち、相殺の効力が生じるものをすべて挙げた場合、
民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
ア AがBに対して平成20年5月5日を弁済期とする300万円の売掛代金債権を有し、BがAに対して平成20年7月1日を弁済期とする400万円の貸金債権を有している。この場合に、平成20年5月10日にAがBに対してする相殺。
イ AがBに対して平成18年5月5日を弁済期とする300万円の貸金債権を有していたところ、平成18年7月1日にAがBに対して暴力行為をはたらき、平成20年7月5日に、Aに対してこの暴力行為でBが被った損害300万円の賠償を命ずる判決がなされた。この場合に、平成 20年7月5日にAがBに対してする相殺。
ウ A銀行がBに対して平成19年7月30日に期間1年の約定で貸し付けた400万円の貸金債権を有し、他方、BがA銀行に対して平成20年7月25日を満期とする400万円の定期預金債権を有していたところ、Bの債権者CがBのA銀行に対する当該定期預金債権を差し押さえた。この場合に、平成20年8月1日にA銀行がBに対してする相殺。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ
4 イ・ウ
5 ウ
問1 | DATE : / / / | 解答 | 2 |
ア 妥当である |
相殺が認められるためには、両債権が弁済期にあることが必要である。自働債権の弁済期については、相手方の期限の利益を一方的に奪うことはできないことから、必ず到来していなければならない。もっとも、受働債権の弁済期については、債務者は、期限の利益を放棄して(136条2項)、相殺をすることができる(大判昭8.5.30)。 |
イ 妥当でない |
①悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務、②人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(①に掲げるものを除く。)の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない(509条各号)。これは、①不法行為の被害者に現実の弁済による損害の填補を受けさせる(被害者の救済)とともに、②不法行為の誘発を防止するためである。 |
ウ 妥当である |
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる(511条1項)。判例は、第三債務者は、その債権が差押後に取得されたものでないかぎり、自働債権及び受働債権の弁済期の前後を問わず、相殺適状に達しさえすれば、差押後においても、これを自働債権として相殺をなしうるとしている( 無制限説 最判昭 45.6.24)。 |
以上により、妥当なものはア・ウであるから、正解は2となる。
01-01 司法試験平成21年 | Q 自働債権が時効によって消滅している場合には相殺をすることができないが、相手方は時効利益を放棄して相殺をすることができる。 ☛ × (民法508条) |
01-02 司法試験平成23年 | Q 消滅時効期間の経過した債権が、その期間経過以前に債務者の有する反対債権と相殺適状にあった場合には、消滅時効期間の経過した債権を有する債権者は、債務者による消滅時効の援用の前後を問わず、相殺をすることができる。 ☛ ○ (民法508条) |
01-03 司法試験平成21年 | Q 判例によれば、受働債権の履行について確定期限がある場合、弁済期が到来しないと相殺は不可能であるから、相殺をすることができるのは、その確定期限到来後である。 ☛ × (大判昭8.5.30) |
01-04 司法書士試験平成24年 | Q 受働債権の弁済期が到来していない場合であっても、自働債権の弁済期が到来していれば、相殺をすることができる。 ☛ ○ (大判昭8.5.30) |
01-05 司法試験令和3年 | Q AのBに対する金銭債権(以下「甲債権」という。)とBのAに対する金銭債権 (以下「乙債権」という。)との相殺に関して、甲債権は、Bの悪意による不法行為に基づいて生じたEのBに対する損害賠償債権を、AがEから譲り受けたものであった。この場合、Bは、乙債権と甲債権との相殺をもってAに対抗することができる。 ☛ 〇 (民法509条1号) |
01-06 司法試験令和2年 | Q 金銭債権を有する者が、その債務者を負傷させたことにより不法行為に基づく損害賠償債務を負った場合、当該金銭債権を自働債権、損害賠償債権を受働債権とする相殺をもって債務者に対抗することはできない。 ☛ 〇 (民法509条2号) |
01-07 司法書士試験令和3年 | Q 債務不履行に基づく損害賠償請求権を受働債権とする相殺は、その損害賠償請求権が人の生命又は身体の侵害によるものであっても、することができる。 ☛ × (民法509条2号) |
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STEP2 肢別ドリル
01-08 司法試験平成27年 | Q 債権が不法行為によって生じたときは、その債権者は、その債権を自働債権として相殺することができる。 ☛ ○ (民法509条) |
01-09 司法書士試験平成24年 | Q 不法行為により生じた債権を受働債権とする場合であっても、双方の過失による同一の交通事故によって生じた物的損害に基づく相互の損害賠償債権の間においては、相殺をすることができる。 ☛ 〇 (民法509条) |
01-10 司法試験平成30年 | Q 車両同士の交通事故が双方の運転者の過失に基因して発生し、双方に物的損害のみが生じた場合、一方の運転者は、双方の損害賠償債権を対当額において相殺することができる。 ☛ 〇 (民法509条) |
01-11 司法試験平成29年 | Q 債権者Aの債務者Bに対する甲債権がAの債権者Cに差し押さえられても、差押え前からBがAに対する乙債権を有していた場合、Bは、甲債権と乙債権の弁済期の先後を問わず、相殺適状にあれば、相殺をすることができる。 ☛ 〇 (民法511条1項、最大判昭45.6.24) |
01-12 司法試験平成21年 | Q 受働債権が差し押さえられても、差押え前から自働債権となる債権を第三債務者が有していた場合、第三債務者は、それらの債権の弁済期の先後を問わず、相殺適状に達すれば、相殺をすることができる。 ☛ ○ (民法511条1項、最大判昭45.6.24) |
01-13 司法書士試験令和3年 | Q 債権が第三者に差し押さえられた場合において、被差押債権の債務者がその差押え前に被差押債権の債権者に対する反対債権を取得しており、その差押え後にその反対債権と被差押債権が相殺に適するようになったときは、その反対債権と被差押債権の弁済期の先後にかかわらず、被差押債権の債務者は、その反対債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。 ☛ 〇 (民法511条1項、最大判昭45.6.24) |
01-14 司法試験平成27年 | Q AのBに対する甲債権が差し押さえられた後、BがAに対する乙債権を取得した場合、Bは、乙債権を自働債権として甲債権と相殺することができる余地はない。 ☛ × (民法511条2項) |
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01-15 司法試験令和3年 | Q AのBに対する金銭債権(以下「甲債権」という。)とBのAに対する金銭債権 (以下「乙債権」という。)との相殺に関して、乙債権は、Aの債権者であるXが甲債権を差し押さえた後に、Bが他人から譲り受けたものであった。この場合、乙債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるとしても、Bは、乙債権と甲債権との相殺をもってDに対抗することができない。 ☛ 〇 (民法511条2項) |
【MEMO】
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契約不適合責任
STEP1 基準問題 【司法試験(令和2年)】
問1 | 他人の権利の売買に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。 |
ア 売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、買主は、契約時にその権利が売主に属しないことを知っていたとしても、それにより損害賠償の請求を妨げられない。
x xxが他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、そのことについて売主の責めに帰すべき事由が存在しないときであっても、買主は売主に対して損害賠償請求をすることができる。
ウ 売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、その権利の一部が買主に移転 されず、履行の追完が不能である場合、そのことについて買主の責めに帰すべき事由が存在しないときは、買主は、催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
エ 売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、買主は、契約時にその権利が売主に属しないことを知っていたときは、契約を解除することができない。
オ 売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、買主は、善意の売主に対しては、当該権利が他人の権利であることを知った時から1年以内にその旨を通知しなければ、損害賠償の請求をすることができない。
1 アウ 2 アエ 3 イウ 4 イオ 5 エオ
問1 | DATE : / / / | 解答 | 1 |
ア 正しい |
他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う(561条)。そして、売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合は、民法415条1項の債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときに当たり、損害賠償の請求をすることができる。この場合、売買目的物が他人に属することについて、買主の善意・悪意は問題とならない。 |
イ 誤 り |
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない(415条1項)。 |
ウ 正しい |
売買の目的である権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときは、民法563条が準用される(565条かっこ書)。したがって、買主が相当の期間を定めて履行の追完を催告し、その期間内に履行の追完がないときは、代金減額請求ができ、また、履行の追完が不能であるときは、催告をすることなく、直ちに代金の減額請求をすることができる。 |
エ 誤 り |
売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、買主は、契約を解除することができる(541条、542条)。この場合、売買目的物が他人に属することについて、買主が知っていたかどうかは問題にならない。 |
オ 誤 り |
売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、買主は、善意の売主に対しては、当該権利が他人の権利であることを知った時から1年以内にその旨を通知しなけ れば、損害賠償の請求をすることができない旨の規定は、存在しない。 |
以上により、正しいものはア・ウであるから、正解は1となる。
02-01 司法試験令和3年 | Q AB間の売買契約において、売主Aが買主Bに対して引き渡した目的物の数量が不足しており、契約の内容に適合しない場合に、数量の不足がBの責めに帰すべき事由によって生じた場合、不足分の引渡しが可能であっても、Bは不足分の引渡しを請求することができない。 ☛ 〇 (民法562条2項) |
02-02 行政書士試験令和3年 | Q Aが甲建物(以下「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約に関して、Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合、履行の追完が合理的に期待できるときであっても、Bは、その選択に従い、Aに対して、履行の追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。 ☛ × (民法563条1項) |
02-03 司法試験令和3年 | Q AB間の売買契約において、売主Aが買主Bに対して引き渡した目的物の数量が不足しており、契約の内容に適合しない場合に、不足分の引渡しが可能であり、Aがその引渡しを申し出た場合であっても、Bは、その申出を拒んで直ちに代金の減額を請求することができる。 ☛ × (民法563条1項) |
02-04 司法書士試験令和3年 | Q 売主が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求するために、履行の追完の催告をすることを要しない。 ☛ 〇 (民法563条2項2号) |
02-05 行政書士試験令和3年 | Q Aが甲建物(以下「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約に関して、Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合において、その不適合がBの過失によって生じたときであっても、対価的均衡を図るために、BがAに対して代金の減額を請求することは妨げられない。 ☛ × (民法563条3項) |
02-06 司法書士試験令和3年 | Q 売主が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合であっても、売主の責めに帰すべき事由がないときは、買主は、その不適合を理由として、当該売買契約の解除をすることができない。 ☛ × (民法564条、541条、542条) |
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STEP2 肢別ドリル
02-07 司法試験令和3年 | Q AB間の売買契約において、売主Aが買主Bに対して引き渡した目的物の数量が不足しており、契約の内容に適合しない場合に、数量の不足がABいずれの責めにも帰することができない事由によって生じた場合、BはAB間の売買契約を解除することができない。 ☛ × (民法564条、541条、542条) |
02-08 司法試験令和3年 | Q AB間の売買契約において、売主Aが買主Bに対して引き渡した目的物の数量が不足しており、契約の内容に適合しない場合に、数量の不足がBの責めに帰すべき事由によって生じた場合、BはAB間の売買契約を解除することができない。 ☛ 〇 (民法564条、541条、542条、543条) |
02-09 行政書士試験令和3年 | Q Aが甲建物(以下「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約に関して、Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合、Bは、Aに対して、履行の追完または代金の減額を請求することができるが、これにより債務不履行を理由とする損害賠償の請求は妨げられない。 ☛ 〇 (民法562条1項、563条1項、564条) |
02-10 行政書士試験令和3年 | Q Aが甲建物(以下「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約に関して、Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合において、BがAに対して損害賠償を請求するためには、Bがその不適合を知った時から1年以内に、Aに対して請求権を行使しなければならない。 ☛ × (民法566条) |
02-11 司法試験令和3年 | Q AB間の売買契約において、売主Aが買主Bに対して引き渡した目的物の数量が不足しており、契約の内容に適合しない場合に、Bが数量の不足を知った時から1年以内にその旨をAに通知しない場合には、Aが引渡しの時に数量の不足を知り又は重大な過失によって知らなかったときを除き、Bは損害賠償の請求をすることができない。 ☛ × (民法566条) |
02-12 司法書士試験令和3年 | Q 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合であっても、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなかったときは、売主がその引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときを除き、買主は、その不適合を理由として、損害賠償の請求をすることができない。 ☛ 〇 (民法566条) |
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STEP1 基準問題 【行政書士試験(平成17年)★】
問1 | 贈与者Aと受贈者Bとの関係に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして妥当でないものはどれか。 |
1 未登記の建物を書面によらず贈与した場合において、AがBにその建物を引き渡したときは、Aはその贈与契約を解除することができない。
2 既登記の建物を書面によらずに贈与した場合において、AがBにその建物を引き渡したときは、所有権移転登記が未了であっても、Aはその贈与契約を解除することができない。
3 既登記の建物を書面によらずに贈与した場合において、AからBにその建物の引渡しが行われていないときであっても、所有権移転登記がなされていれば、Aはその贈与契約を解除することができない。
4 負担付贈与においてXがその負担である義務の履行を怠るときは、Aは契約の解除をすることができる。
5 Bに対する定期の給付を目的とする贈与であらかじめ期間の定めがあるものは、Aが死亡しても、その期間内は効力を失うことはない。
問1 | DATE : / / / | 解答 | 5 |
1 2 3 妥当である |
書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない(550条)。不動産の贈与では、不動産の引渡しがなくても、所有権移転登記がされた場合には履行が終わったとされるし、所有権移転登記がなくても、引渡しがされた場合には履行が終わったとされる。 |
4 妥当である |
負担付贈与とは、贈与契約の際に受贈者に負担を課す贈与をいう。負担付贈与は、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定(同時履行の抗弁権、危険負担、解除)が準用される(553条)。 |
5 妥当でない |
定期贈与とは、定期の給付を目的とする贈与をいう。定期贈与は、贈与者又は受贈者の死 亡によって、その効力を失う(552条)。 |
以上により、妥当でないものは肢5であるから、正解は5となる。
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STEP2 肢別ドリル
【贈与の要件・効果】
03-01 司法試験平成26年 | Q 贈与は、ある財産を無償で相手方に与える意思を表示することにより成立する単独行為である。 ☛ × (民法549条) |
03-02 司法試験平成26年 | Q 他人の物を目的とする贈与は、贈与者がその物の権利を取得した時からその効力を生ずる。 ☛ × (民法549条) |
03-03 司法試験令和3年 | Q 受贈者は、贈与契約が書面によらない場合であっても、履行の終わっていない部分について贈与契約を解除することができない。 ☛ × (民法550条) |
03-04 司法試験令和3年 | Q 贈与契約において、贈与者の意思表示が書面によってされている場合には、受贈者の意思表示が書面によってされていないときでも、贈与者は、贈与契約の解除をすることができない。 ☛ 〇 (民法550条) |
03-05 司法試験平成26年 | Q 書面によらない贈与であれば、履行の終わった部分についても解除することができる。 ☛ × (民法550条) |
03-06 司法書士試験平成5年 | Q 甲が乙に対し既登記の建物を口頭によって贈与した場合、甲が乙に対し建物を引き渡したときであっても、所有権移転登記をするまでの間は、贈与を解除することができる。 ☛ × (大判明43.10.10、最判昭31.1.27) |
03-07 司法書士試験平成5年 | Q 甲が乙に対し未登記の建物を口頭によって贈与した場合、甲が乙にその建物を引き渡したときは、贈与を解除することができない。 ☛ ○ (大判明43.10.10、最判昭31.1.27) |
03-08 行政書士試験平成27年 | Q Aは、自己所有の甲建物をBに贈与する旨を約した(以下、「本件贈与」とい う)。本件贈与が口頭によるものであった場合、贈与契約は諾成契約であるから契約は成立するが、書面によらない贈与につき贈与者はいつでも解除 |
することができるため、甲がBに引き渡されて所有権移転登記手続が終了した後であっても、Aは本件贈与を解除することができる。
☛ × (最判昭40.3.26)
03-09 司法試験平成22年 | Q 判例によれば、書面によらない不動産の贈与において、受贈者に登記を移転すれば、引渡しが未了でも、贈与者は贈与を解除することができない。 ☛ ○ (最判昭40.3.26) |
03-10 司法試験令和3年 | Q 登記された建物が書面によらずに贈与された場合、贈与者は、受贈者への目的物の引渡し及び所有権移転登記の双方がされるまでは、贈与契約を解除することができる。 ☛ × (最判昭40.3.26、大判明43.10.10、最判昭31.1.27) |
03-11 司法試験令和3年 | Q 贈与者は、特約のない限り、目的物が特定した時の状態でこれを引き渡せば足りる。 ☛ ○ (民法551条1項) |
03-12 行政書士試験平成24年 | Q 贈与契約において、贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものとは推定されない。 ☛ × (民法551条1項) |
【特殊な贈与】
03-13 行政書士試験平成24年 | Q 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者または受贈者の死亡によって、その効力を失う。 ☛ ○ (民法552条) |
03-14 司法試験平成29年 | Q 定期の給付を目的とする贈与は、受贈者の死亡によって、その効力を失うが、贈与者が死亡しても、その効力は失われない。 ☛ × (民法552条) |
03-15 行政書士試験平成27年 | Q Aは、自己所有の甲建物をBに贈与する旨を約した(以下、「本件贈与」という)。本件贈与につき書面が作成され、その書面でBがAの老後の扶養を行うことが約された場合、BがAの扶養をしないときであっても、甲の引渡しおよび所有権移転登記手続が終了していれば、Aは本件贈与を解除することができない。 ☛ × (最判昭53.2.17) |
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03-16 行政書士試験平成23年 | Q 贈与契約において、受贈者が、受贈の見返りとして贈与者を扶養する義務を負担していたにもかかわらず、この扶養する義務の履行を怠る場合には、贈与者は、贈与契約を解除することができる。 ☛ ○ (最判昭53.2.17) |
03-17 司法試験令和3年 | Q 負担付贈与においては、贈与者は、受贈者がその負担である義務の履行を怠ったことを理由として、贈与契約を解除することができない。 ☛ × (最判昭53.2.17) |
03-18 司法試験平成22年 | Q 死因贈与は、贈与者の単独の行為によってすることができる。 ☛ × (民法554条) |
03-19 司法試験平成29年 | Q 書面によって死因贈与がされたとしても、贈与者は、生前、いつでもその贈与を解除することができる。 ☛ ○ (民法554条、1022条) |
03-20 行政書士試験平成27年 | Q Aは、自己所有の甲建物をBに贈与する旨を約した(以下、「本件贈与」という)。本件贈与につき書面が作成され、その書面でAが死亡した時に本件贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合、遺言が撤回自由であることに準じて、Aはいつでも本件贈与を解除することができる。 ☛ ○ (民法554条、1022条) |
【MEMO】
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相 殺
図表
要件・効果
x x | |
要 件 | (1) 相殺適状にあること 相殺適状とは、双方の債権が相殺をすることができる状態にあることをいう。 ① 対立する債権が存在することア 原則 相殺をするためには、債権者と債務者が相互に相手方に対して、債権を有することが必要である(505条1項本文)。 イ 例外 債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる(469条1項)。 ② 両債権が有効に存在することア 原則 相殺の意思表示前に一方の債権が弁済または解除によって消滅した場合、相殺不能となる。 イ 例外 消滅時効によって消滅した債権が、時効消滅前に相殺適状にあったときは、これをもって相殺をすることができる(508条)。 ③ 両債権が同種の目的を有すること 同種の目的を有するのであれば、相殺は、両債権の履行地が異なるときであってもすることができる(507条)。 ➃ 両債権が弁済期にあることア 自働債権 自働債権の弁済期については、相手方の期限の利益を一方的に奪うことはできないことから、必ず到来していなければならない。 x 受働債権 受働債権の弁済期については、債務者は、期限の利益を放棄して(136条2項)、相殺をすることができる(大判昭8.5.30)。 (2) 相殺の禁止にあたらないこと ① 特約による禁止 当事者が相殺を禁止し、または制限する旨の意思表示をした場合には相殺はできない。この相殺禁止の意思表示は、善意無重過失の第三者に対抗することができない(505条2項)。 ② 法律による禁止 ア 受働債権が不法行為等に基づく債権であるとき ①悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務、②人の生命または身体の侵害による損害賠償の債務(①に掲げるものを除く。)を、受働債権として相殺することは許されない(509条各号)。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない(509条ただし書)。 これは、①不法行為の被害者に現実の弁済による損害の填補を受けさせる(被害者の救済)とともに、②不法行為の誘発を防止するためである。 イ 受働債権が差押禁止債権であるとき 債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって |
債権者に対抗することができない(510条)。 ウ 自働債権が受働債権の差押後に取得された場合 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる(511条1項)。 もっとも、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人 の債権を取得したときは、この限りでない(511条2項)。 | |||
方 法 | 相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする(506条1項 前段)。その意思表示には、条件または期限を付することができない(506条1項後段)。 | ||
効 果 | 相殺によって、両債権は、その対当額で消滅する(505条1項本文)。この効果 は、相殺適状が生じたときに遡って生じる(506条2項)。 | ||
再受験生のための改正民法☆強化プロジェクト
契約不適合責任
図表
契約不適合責任①
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追完請求 | 買主は、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、売主に対し、①目的物の修補、②代替物の引渡または③不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。 どの方法によるかの選択権は、買主にあるが、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる(562条1項ただし書)。 なお、契約不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主 は、履行の追完の請求をすることができない(562条2項)。 |
代金減額請求 | 買主は、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、売主に対し、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。 (1) 催告による代金減額請求 買主は、相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる(563条1項)。 (2) 催告によらない代金減額請求 買主は、次の①~➃の場合には、催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる(563条2項各号)。 ① 履行の追完不能 ② 履行の追完を拒絶する意思の明確な表示 ③ 定期行為 ➃ その他追完される見込みがない場合 代金減額請求権は、契約の一部解除の側面を有することから、債務不履行に基づく損害賠償とは異なり、売主の帰責事由は要件とはなっていない。 なお、目的物の不適合が、買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、 買主は、売主に対して、代金減額請求をすることができない(563条3項)。 |
損害賠償請求 | 買主は、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、売主に対し、一般の債務不履行の規定に基づき、損害賠償請求をすることができる(564条)。 なお、損害賠償請求をするには、売主に帰責事由があることが必要となる。 |
解除権 | 買主は、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、一般の債務不履行の規定に基づき、売買契約の解除をすることができる(564条)。 解除権を行使するにあたって、売主に帰責事由があることは必要ない。一般の解除と同様、催告による解除と、催告によらない解除が認められる。 なお、契約不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主 は、契約の解除をすることができない(564条、543条)。 |
図表 契約不適合責任②
契約不適合の種類 | 買主の権利 | 期間制限 | |
種類・品質・数量に関する契約不適合 | 種類・品質 | ・追完請求(562 条) ・代金減額請求(563 条) ・損害賠償請求(564 条・415 条) ・解除(564 条、541 条・542 条) | 1年以内の通知 (566 条) 5 年または 10 年の消滅時効 (166 条1項) |
数量 | 5 年または 10 年の消滅時効 (166 条1項) | ||
権利に関する契約不適合 | 権利 (権利の一部の非移転含む) | ・追完請求(565 条、562 条) ・代金減額請求(565 条、563 条) ・損害賠償請求(565 条、564 条、 415 条) ・解除(565 条、564 条、541 条、 542 条) | 5 年または 10 年の消滅時効 (166 条1項) |
競売における不適合 | 数量・権利 | ・解除(568 条、541 条、542 条) ・代金減額請求(568 条、563 条) | 5 年または 10 年の消滅時効 (166 条1項) |
種類・品質 | なし(568 条4項) |
図表
他人物売買
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権利取得義務 | 他人の物の売買契約は、無効な契約ではなく、債権的には有効な契約であるか ら、他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う(561条)。 |
買主の権利 | 目的物の権利の全部が他人に属する場合で、売主が権利移転義務を履行しない場合には、権利に関する契約不適合に関する民法565条の適用はなく、買主は、一般の債務不履行の規定により、損害賠償及び解除をすることになる(415条、 541条)。また、履行が可能な場合は、履行請求ができる。 |
再受験生のための改正民法☆強化プロジェクト
贈与契約
図表
要件・効果
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要 件 | 贈与契約は、諾成契約であるため、書面にしておかなくても、有効に成立する。しかし、書面にしておかなければ、各当事者は、贈与契約を解除することができる(550条本文)。 もっとも、書面によらない贈与であっても、履行の終った部分については、解除することができない(550条ただし書)。 不動産の贈与では、不動産の引渡しがなくても、所有権移転登記がされた場合には履行が終わったとされるし(最判昭40.3.26)、所有権移転登記がなくても、引渡しがされた場合には履行が終わったとされる(大判明43.10.10、最判昭 31.1.27)。 |
効 果 | ① 財産権移転義務 贈与者は、財産権を受贈者に移転する義務を負う。動産の場合、その物の引渡し、不動産の場合、目的物の引渡しと登記の移転をしなければならない。 ② 契約内容に適合した物・権利を移転する義務 贈与者は、契約の適合した物の移転等をする債務を負担する。もっとも、贈与契約は無償契約であるため、贈与者の義務の内容は軽減されたものと考えるのが当事者の通常の意思であるといえる。そこで、贈与者は、贈与の目的である物または権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、または移 転することを約したものと推定される(551条1項)。 |
図表
特殊な贈与
定期贈与 | 負担付贈与 | 死因贈与 | |
意 義 | 定期の給付を目的とする贈与をいう。 | 贈与契約の際に受贈者に負担を課す贈与をいう。 | 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与をいう。 |
効 力 | 贈与者または受贈者の死亡によって、その効力を失う(552条)。 | その性質に反しない限り、双務契約に関する規定(同時履行の抗弁権、危険負担、解除)が準用される(553 条)。 | その性質に反しない限り、遺贈に関する規定が準用される(554条)。死因贈与については、遺言の取消に関する民法 1022条が、その方式に関する部分を除いて準用さ れる(最判昭47.5.25)。 |
備 考 | 負担の限度において、贈与者の給付と受贈者の給付とは対価関係に立つため、贈与者は、売主と同様の担保責任を負う(551 条)。 | 死因贈与の方式については、遺贈に関する規定は準用されない( 最判昭 32.5.21)。 |
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消費貸借 (諾成契約) | 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るま で、契約の解除をすることができる。 | |||
使用貸借 | x | x | 貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。 | |
例 | 外 | 書面による使用貸借については、契約の解除をすることができない。 | ||
寄託 | 寄託者の解除 | 寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。 | ||
無償受寄者の解除 | 原則 | 無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。 | ||
例外 | 書面による寄託については、契約の解除をすることができない。 |
消費貸借・使用貸借・寄託契約
図表
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【MEMO】
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