Contract
第2 章 貸付けに関する法令と実務
2-1
金銭消費貸借契約
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(1)有償契約・無償契約
2-1 金銭消費貸借契約
貸付契約は金銭消費貸借契約です。ここでは、金銭消費貸借契約の特徴について、契約の典型例である売買契約と比較しながら学びます。今後の学習の基本となる部分ですので、しっかり押さえておきましょう。
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通常、契約は、申込みの意思表示と承諾の意思表示の合致(合意)で成立します。例えば、売買契約は、「売る」という意思表示と「買う」という意思表示の合致によって成立します。このように、意思表示の合致のみによって成立す
だくせいけいやく
る契約を諾成契約といいます。
これに対して、消費貸借契約は、意思表示の合致のほか、目的物の引き渡しによって初めて成立する契約です。このように、意思表示の合致のほか、目的
ようぶつけいやく
物の引き渡しがなければ成立しない契約を要物契約といいます。
売買契約は買主が代金を支払うので有償契約です。これに対して、消費貸借契約は、特約(利息契約)がなければ無利息であるとされているので、原則として無償契約です。特約がある利息付消費貸借契約は、有償契約です。
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貸付けに関する法令と実務
▼売買契約と消費貸借契約の比較
売買契約 | 消費貸借契約 |
諾成契約 | 要物契約 |
有償契約 | 原則(特約なし): 無償契約 |
例外(特約あり): 有償契約 |
(2)返済の時期
消費貸借契約において当事者が返還の時期を定めなかった場合、貸主は、借主に対して、相当の期間を定めて返還の催告をすることができるとされています。そのため、貸主は直ちに返還するよう求めることはできません。
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準消費貸借 重要度 ★★
契約の成立 重要度 ★★
金銭消費貸借契約の性質 重要度 ★★
● 諾成契約と要物契約の違い
諾成契約:意思表示の合致→契約成立
要物契約:意思表示の合致+目的物の引渡し→契約成立
代金支払債務等を負う者がある場合、当事者がその代金等を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなされます。
※ 試験対策としては、「債務=義務」「債権=権利」 と理解しておけば十分です。
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金銭消費貸借契約 重要度 ★★★
① 消費貸借契約は、契約当事者の意思表示の合致によって成立する。
② 金銭消費貸借契約を締結した場合、特約がなくても、貸主は借主に対して利息の支払いを請求することができる。
解答
① × 消費貸借契約は目的物の引渡しがなければ成立しません。
② × 特約がなければ利息を請求することはできません。
練習問題(○×問題)
消費貸借契約とは、①当事者の一方(借主)が種類・品質・数量の同じ物をもって返還をすることを約束して、②相手方(貸主)から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力が発生する契約です。
■ポイント
• 貸付契約は金銭消費貸借契約である。
• 金銭消費貸借契約は金銭の交付がなければ成立しない(要物契約)。
• 金銭消費貸借契約は特約がなければ無利息である。
消費貸借契約の典型例は貸付契約であり、貸付契約は①金銭を返還することの合意、および、②金銭の交付によって成立します。貸付契約は、借主に金銭を消費させ、一定期間後(返済日)に返還させる契約であるため、「金銭消費貸借契約」の一種です。
▼貸付契約(金銭消費貸借契約)
金銭の交付
金銭返還の合意 貸主 借主
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