〇 JA が契約当事者となり数量・価格を決めても、生産者まで結び付いていなければ、事前契約が、その後の流通段階でリスクとなってしまうこともある。
米取引の事前契約研究会(第4回概要)
1.日 時:令和3年8月 10 日(火)14:30~16:30
2.場 所:農林水産省統計部第3・第4会議室
3.要 旨:
米取引における事前契約の目的と機能、内容・方式、拡大に向けた課題等ついて、意見交換を実施。主な意見は以下のとおり。
1.事前契約の目的と機能
○ 収穫後に価格が決まるのではなく、予め決まった価格や数量に基づいて生産する事前契約は、生産者にとって必要。毎年安定的に取引し、互いに信頼できる取引先と契約できることが望ましい。
〇 需要があって初めて生産ができるのであり、事前契約が米取引の本来の姿ではないか。
〇 事前契約の目的は、当事者により様々であるが、とりわけ量の安定が重要。また、実需者と生産者が互いに取引の量や価格を安定させる手法の一つ。
〇 事前契約は、需給の安定にも一定程度寄与するが、需給緩和時の需給安定装置としての役割は難しく、事前契約の推進と需給環境の改善が相補関係にある。また、事前契約は産地から実需者までが繋がる取引が望ましい。
〇 生産者・集荷業者・卸・実需が結びついて、価格・数量等の条件が固定された事前契約が望ましいが、全量は不可能であり、大部分を事前契約としつつ、流通をスムーズにできることが重要。
〇 事前契約は、需給と価格の安定を生み出す引き金になる。
〇 長期的な取組として、品質の良い米を作る産地を評価し取引数量を増やすことにより、将来的な取引拡大を期待。卸に実需者のニーズに合った産地を開拓する手助けをしてもらい、生産者・卸・実需が結びついた取組を進めることが重要。
〇 米の生産が持続的に発展していくためには、雇用の確保やスマート農業への投資が必要。そのためにも、将来を見通すことができる事前契約が重要。
〇 今後アピールされていく環境に優しい米などはスポットでは調達することが難しく、事前契約が必要。マーチャンダイジングの観点も競争戦略上の重要な要素ではないか。
2.事前契約の内容・方式(価格の固定など)
〇 生産者が価格をある程度決められるのが望ましい。
〇 販売先・販売方法に応じて、様々な方法の契約があってよい。
〇 価格固定契約は、取引先や生産者の理解があって成立するが、実際は価格にアローワンスのある契約と比べまだ少数。
〇 契約当事者が誰であるか、当事者がどう理解しているかが重要であり、生産者や実需者が合意できる契約を訴求することでリスクヘッジや価格安定につながる。
〇 業務用(中食・外食向け)では、価格を固定した安定取引のニーズもあるが、家庭用(小売向け)では、需給や価格の変動に応じた価格設定が求められるため、事前契約が低くなり、契約内容もファジーなものが主となる。
〇 価格を固定しない事前契約は、契約というよりも計画に近いが、これを数量・価格を固定した契約に近づけていくのがよい。
〇 事前契約には、様々な内容(値幅など)や方式があるため、事前契約のあり方を議論する際には定義を決めておく方がよいのではないか。
〇 複数年契約など様々な契約形態があるため、多少は値幅を持たせなければならないが、値幅の大きい事前契約は、数量契約に近くなり、買い手としては契約する必要性が下がってしまう。また、収穫前になるほど、値幅は小さくすべき。
〇 取引先との間で一定量を売買するとの前提や信頼関係があれば、価格と数量を柔軟に決めていく方式はありうる。
〇 現物市場の創設とも絡むが、どの価格に対するリスクヘッジなのかが明確に出来れば、より有効なリスクヘッジとなる。売り手と買い手の双方が納得できる価格として、現物市場の価格を使うことが出来れば、事前契約にとって有効となるのではないか。
〇 実需者にとっては、原料となる米の価格に合わせて商品価格を変動させることは難しいことから、価格の固定が必要。
〇 産地との事前契約においては、モデルケースにおける反収に基づいた生産コスト試算等に基づいて、価格を固定して決めている。
○ 契約時期、期間、方式などは様々であるため、ひとつのスキームで事前契約を進めるのは不可能であり、それぞれの立場から事前契約のあり方を考えなければいけない。
〇 事前に数量のみが決められ、価格が固定されていない取引も、実態を踏まえた契約のあり方として議論されるべきもの。
3.事前契約の拡大に向けた課題
〇 生産者が、その年に受け取る金額の多寡だけで品目を選択して作るのではなく、卸や実需者が求める品質や量に敏感になり、自発的に動く仕組みができれば、自ずと事前契約と需給の安定につながるのではないか。
〇 生産者は、現状、作りたいものを作り、誰かに買ってもらうというケースが大部分。xxからxxまでのつながりがxxで途切れている。
〇 JA が契約当事者となり数量・価格を決めても、生産者まで結び付いていなければ、事前契約が、その後の流通段階でリスクとなってしまうこともある。
〇 数量、価格、期限等が固定された事前契約は、年によりリスクが分かれてしまう。
〇 現在の事前契約の大部分は、固定価格ではなく、値幅を決めているが、これは数量契約に近く、値幅の中での価格の決定方法が曖昧であることが、需給緩和局面において買い手が事前契約に踏み込めない理由。
〇 需給緩和によって事前契約に影響が出るのは米に限った問題でははなく、他の品目でもあることではないか。
〇 産地との事前契約において価格固定が難しいのは、事前契約で価格を決めると、その後の概算金と比較して勝ち負けの意識を持つ生産者が多いことも背景にあるのではないか。
4.米取引全般
〇 米は年産格差が大きいため、端境期の前に焦って販売しなければならない場合もある。
〇 米は加工度が低く、製品価格に占める原材料費が高いため、価格変動に対して収益構造は脆弱になりがちである。このため、価格に対して敏感であるために需給の均衡が不安定となる可能性があり、豊凶変動やコロナ等による需要の変動があった際に、安定した取引に引き戻すためには、関係者のメリットに基づく強い意志や何らか政策による誘導が必要となるのではないか。
〇 今後の現物価格を議論する上では、xxxの時点で果たして妥当な相対取引価格を設定することは可能なのかも踏まえることが必要。
5.スマート・フード・チェーン
〇 xxからxxまでの流通に役立つことを期待。
〇 有機 JAS 等の規格とは別に、個品識別しながら農産物を供給することを可能とするものとして期待。事前契約の観点からは、生産情報との紐づけがあるから敢えて契約したいという実需者がどれだけいるかが重要。
〇 産地、銘柄、年産より細かい品質基準(水分、食味等)やそのモニタリング・評価に対するニーズに応える仕組みとして期待。
〇 物流合理化やフレコンの統一化を進める中で、フレコンで流通する米を QRコードで情報管理していくことも検討していきたい。
6.政策による誘導措置
〇 長期保管への支援における現行メリット措置は活用したい。
〇 数量・価格を固定した複数年契約で実需と結び付く取組に対する販売促進支援等(出口支援)があれば事前契約推進に有効ではないか。
〇 複数年契約に対する生産者への支援があれば、事前契約が進むのではないか。