Contract
説明義務違反と契約の解除
――説明義務の基本原理に立ち返って――
x x x
(法学専攻 法政リサーチ・コース
推薦教員:xx x)
目 次
Ⅰ.は じ め に
⚑.説明義務論の展開と最高裁平成23年判決 1.1.説明義務論の展開
1.2.最高裁平成23年判決の問題点
⚒.本稿の目的と構成
Ⅱ.説明義務の基本原理
⚑.ドイツにおける議論 1.1.xxxxによる分析
1.2.xxxxによる分析
⚒.日本における議論
2.1.「自己決定権」との関連を強く意識したアプローチ
2.2.「専門家」に対する信頼保護原理を強調したアプローチ
⚓.小 括
Ⅲ.説明義務違反の法的性質
⚑.学 説 状 況
1.1.初期の契約責任説
1.2.ドイツの cic 責任論に影響を受けた中期の契約責任説
1.3.不法行為責任説
1.4.近時の契約責任説
⚒.小 括
Ⅳ.説明義務違反にかかわる裁判例
⚑.大阪高裁平成11年判決 1.1.事実の概要
1.2.判 旨
1.3.分 析
⚒.最高裁平成23年判決 2.1.事実の概要
説明義務違反と契約の解除(xx)
2.2.判 旨
2.3.分 析
3.小 括
Ⅴ.説明義務違反の法的構成と契約の解除
⚑.説明義務違反の法的構成
1.1.「情報提供義務」と「説明義務」による峻別
1.2.「説明義務違反」の法的構成と最高裁平成23年判決
1.3.「説明義務」の対象となる「専門家」の射程と最高裁平成23年判決の誤謬
⚒.契約の解除の可能性 2.1.学 説 状 況
2.2.検討と事案へのあてはめ
Ⅵ.お わ り に
Ⅰ.は じ め に
1.説明義務論の展開と最高裁平成23年判決
1.1.説明義務論の展開
民法典は,契約の締結があったことをもって契約責任,すなわち債務不履行責任の成立を認めている。そのため,契約が成立するまでの当事者同士は互いに赤の他人にすぎず,一方の過失によって他方が損害を被ったとしても,せいぜい不法行為責任による保護が認められるにすぎない。しかし,現実売買のような場合を除けば,全くの他人が突然出会って即座に契約を締結するような場面はほとんどないのが実態であろう。つまり,契約が締結されるまでには交渉等を含めた契約の準備段階が存在するはずなのである。後に契約を結ぶことを前提とした準備・交渉関係なのであれば,契約責任は認められないのだろうか。
そのような当事者を保護するために,学説はドイツの「契約締結上の過失(culpa in contrahendo)」(以下,「cic 責任」という)を取り入れ,判
例も「契約準備段階におけるxxx上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任」を認めてきた1)。また,契約交渉破棄事例で提唱された「熟度論」は,契約締結過程における問題の本質について,「ある一定の時点を
立命館法政論集 第16号(2018年)
境にして,それ以前は何らの法律関係も存在せず,それ以後は両当事者は契約の鎖で固く結びつけられるというような截然と区別されるものではなく」,「その端緒から履行の完了に至るまで段階的に成熟してい」き,個別その成熟度によって法律効果を考えるほかないと説明した2)。
説明義務(情報提供義務を含む)論は,cic 責任の一環としてドイツで発展した理論であるが,ここにいう義務は,高度に発展した分業化社会において特に重要となる。契約の内容が高度化・複雑化するに従い,民法が前提とする「対等な私人」像は薄れ,当事者の一方だけが事情に精通しているという場合が多くなってしまっているためである。そのような事態を解決するため,本来自己責任とされてきた情報収集を一方に説明義務という形で転嫁した。そしてこの責任は,「契約の準備交渉段階に入った当事者間の関係は,なんら特別の関係のない者の関係よりも緊密である」こと
を根拠に「不法行為責任以上の義務(一種の契約債務不履行責任)」であると考えられてきた3)。
1.2.最高裁平成23年判決の問題点
そうであるにもかかわらず,最判平成23・4・22民集65巻⚓号1405頁
(以下,「最高裁平成23年判決」という)は,「説明義務が果たされなかっ たために不本意な契約を締結してしまった」という,契約の成立と密接不 可分な説明義務違反があったにもかかわらず,不法行為による損害賠償責 任を認めるにとどまった。しかし,この結論はそれまでの学説の蓄積を無 視したものではないだろうか。かつては不法行為責任であるとされた「x x配慮義務」違反までもが今では契約責任であると考えられているように,学説および判例はその範囲を,契約当事者の関係性の実態に即して拡張し てきた。そうであれば,契約準備段階に入った一方当事者による,契約の 成立と密接不可分な説明義務違反は契約責任を構成すると考えた方が妥当 なのではないだろうか。
ところで,この問題が孕んでいるのは,法的構成という理論的な問題や
説明義務違反と契約の解除(xx)
消滅時効の長短の問題だけではない。説明義務違反のうち,一方当事者が他方当事者の信頼を大きく裏切ったような場合であれば,被害者たる他方当事者はその契約関係自体を清算したい,具体的には無効,取消しないしは解除の主張をしたいといったニーズも十分に考えられる。
実際,諸外国は「しっかりと説明があれば契約しなかった」という,契約の締結自体が損害となるような説明義務違反があった事例において,法的構成は違えど結論は同じようなところに落ち着いている。すなわち,契
約関係の清算である。ドイツでは cic 責任を根拠に,原状回復損害賠償の制度を手がかりとして契約の解除の形をとることが多い4)。またxx法では,「不実表示」として,一方当事者の表示した契約内容や契約条件に重
大な不実表示がある場合には,その結果として与えた同意自体に瑕疵があるとされ,形成された合意は取り消し得るとされている5)。フランス法で
も,情報提供義務違反は「沈黙による詐欺」という構成がなされているため,その合意は無効となり得る6)。これらを踏まえれば,日本法においても契約関係の清算という効果を導くことはそれほどおかしな結論ではないと思われる。
しかしながら,消費者契約法では,立法過程において情報提供義務違反
による取消しを認める方向に向かっていたにもかかわらず,結局は努力義務にとどまり,問題の解決は民法にゆだねられることになった7)。ただ民法においても,公序良俗違反または錯誤無効(平成29年民法改正により錯誤取消し),詐欺取消しの主張については要件の充足が難しく,その認定は容易ではない。だからこそ,説明義務違反を契約責任と構成することができれば,契約の解除という可能性もあるのではないかと考えた。実際,大阪高判平成11・9・17判タ1051号286頁(以下,「大阪高裁平成11年判決」という)は,説明義務違反を理由に解除を認めている。
2.本稿の目的と構成
現在の高度に発展した分業化社会のもとで契約に関する全ての情報を自
立命館法政論集 第16号(2018年)
力で入手することなどほぼ不可能であるし,仮に可能であったとしても,専門家でもなければ説明を受けない限り,入手した情報を十分に活用することなどできない。特に不動産取引などでは,その取引回数において,一般個人とそれを生業にしている専門家の間に歴然とした差が生じている。つまり,当事者間にそれだけの知識や経験の差が生じる可能性のある取引なのである。
本稿においてはこのような問題意識から,契約の締結・成立と密接不可分な説明義務の違反のなかには,契約責任と構成するのが妥当なものがあることを明らかにしたい。その上で,救済手段の一つとして契約の解除が可能であるという結論を導きたいと考えている。
そこで本稿では,以下のような順序で考察する。まず,説明義務違反を 問題とする前に,そもそも説明義務の基本原理(発生根拠)についてⅡで 検討する。次にⅢでは,説明義務違反の法的性質に関する学説について, 時系列順に整理した上で,その動向を捉え分析する。Ⅳでは説明義務違反 に関し,法的性質を異にする二つの裁判例を取り上げ,分析する。そして,これらを踏まえⅤでは,一般的には区別されない「情報提供義務」と「説 明義務」の違いに言及しつつ,その違反の法的性質が契約責任である場合 があることを明らかにし,その上で契約の解除の可能性やその要件につい て言及する。
なお,学説ではこの問題をフランス法における情報提供義務理論に依拠して,「沈黙による詐欺」として構成すべきという見解もある8)。しかしこれには,上記したとおり日本法における詐欺の「故意」という主観的要件を直接証明することは難しく,積極的な行為を伴わない詐欺的黙秘の場
合には外的事実からこれを推定することはさらに困難であるという問題がある9)。日本においても,古くはこの問題を「告知する義務」を負う場合には「沈黙の詐欺」を構成するとした学説が有力であり,判例もこの論理を採用していたが,結局は詐欺の「二重の故意」論の制約を免れることはできず,説明義務が問題となる場面を民事責任論である cic 責任論へと移
説明義務違反と契約の解除(xx)
していったという経緯がある10)。それでもなお,詐欺を認めるために,故 意の要件を緩和するという解釈も考えられるが,そうすると過失による詐 欺を詐欺的黙秘と同視することになってしまうし,沈黙についての故意で 足るという解釈をすると,詐欺はxxxに反する行為に対する直接的な制 裁となってしまうという批判がある11)。また,当該理論を追究することは,契約締結過程の問題である説明義務違反をいかに契約責任に取り込むかと いう本稿の目的から逸れることになってしまうことから,本稿では触れな いこととする。
Ⅱ.説明義務の基本原理
「情報提供義務」ないし「説明義務」は,一定の立場の者たちが契約関 係に入った過程で課せられる義務である。契約は有効に締結されたが,契 約交渉の際の一方当事者による不十分な情報提供・説明などにより,他方 当事者としては自らが考えていたのとは違った状態で給付を保持すること になったという場合に,両義務違反として問題となる12)。これらの義務は,
「契約を締結するかしないかを判断するにあたって重要な事実を契約準備
段階における一方当事者が知り,他方当事者が知らない場合に,一方がそ の他方に対し,その事実を告知する義務」13)が,実定法xxx則という形 で表れたものとされており14),二つの用語は一般的にはあまり区別されな い。しかし,ひとくくりにされがちな「情報提供義務」と「説明義務」は,本当に同じものを指すのだろうか。
いずれにせよ,民法が本来的に想定するところによれば,契約の両当事 者は対等であり,ゆえに契約をする際の情報収集も自己責任が原則のはず である。そのリスクを説明義務として相手方に転嫁するための根拠,すな わち説明義務の基本原理を明らかにするため,以下では,cic 責任の一環 として広く議論が展開されてきたドイツ法も踏まえつつ考察していきたい。
立命館法政論集 第16号(2018年)
1.ドイツにおける議論
ドイツでは,契約交渉段階において一方が過失によって他方を欺罔したとしても,故意が認められなければ詐欺の要件は充たされない。そして BGB(ドイツ民法)は詐欺以外にこのような場合の救済を規定していないため,被害者の救済は容易ではない。そのため BGH(連邦通常裁判所)は,一方の過失によって不本意な契約を締結してしまった被害者を救済するために,cic 責任としての助言義務を認め,学説を巻き込んだ議論を巻き起こした15)。その議論は,説明義務違反の法的性質や要件・効果と,説明義務の基本原理に関する二つの観点からなされてきたが,本節では,後者の基本原理について論じる。
1.1.xxxxによる分析
xxxx教授は,ドイツにおける説明義務の基本原理に関する議論を以下のように登場順に分析している。
⑴ 福祉国家・社会国家の視点から説明する見解(Xxxx Xxxxx, Xxxx Xxxxxxx)があるが,これは,取引経験のない者を社会的弱者とし,経済的な過剰負担から保護するためにこの義務を認めるとしている。
⑵ 専門家としての責任に位置づける見解(Xxxx-Xxxxxxx Xxxxxxx)は,弁護士等の職業上の専門知識のある人は,職業上の地位に基づき保証人的地位に立つと考える。また,さらに踏み込んで,市場における一定の役割の担い手とその相手方の間で生じた後者の期待の中で,「役割関係」が構築されるとする見解(Xxxxx X. Xxxx)もある。このように考えると,「職業的地位に基づく責任」を負担する人的範囲が,プロフェッションに限られず,為替のディーラーや,投資媒介をする金融機関等の,市場におけるスペシャリストを含め,経済活動の中での経済的役割まで広がる。
⑶ 契約メカニズム論から「交渉力の実質的対等性」を保障するためのx xであるとする見解(Xxxxxx Xxxxxxx-Xxxxxxx, Xxxxxxx Xxxx 等)もある。契約メカニズム論とは,契約の両当事者の評価に基礎づけられた双方的な
説明義務違反と契約の解除(xx)
意思の合致がなされたことが,契約の正当性の保障をもたらすとする考え 方のことをいう。そして,契約の両当事者ともに,自己にとって不当に不 利なものを意識的に引き受けることはないため,意思の合致の正当性を保 障する。ゆえに,交渉において一方当事者の劣位を他方当事者が利用,あ xxx黙認した場合には,契約xxが契約自由にとってかわることになる。
⑷ 自己決定権という基本権の視点からの保護モデルとして捉える見解
(Xxxxxxxx Xxxxxx)もある。契約自由を原則的に承認した上で,私的自治の機能する前提が典型的には保障されていないために取引当事者を特別に保護する必要性が存在している場面で,基本権による制約を導くとされる。
⑸ 市場の機能不全を是正することに意義を認める見解(Xxxx Xxxxx Xxxxxxxxxx)もある。本来,情報収集は自己責任であるが,それを貫徹すると,市場が機能不全に陥る。そこで,必要な情報が提供されれば,合理的な意思決定ができるという前提に立ち,さらに消費者に理解できる形式で行われることが重要とされる。この見解によれば,特に一方当事者による情報提供・説明なしには取引ができないような場合に,その情報を他方当事者が調達するにあたって協力する要請がなされる。
⑹ そして,以上⑴から⑸の観点を批判的に検討し,動的システムの観点から再構成する見解(Xxxxxxx Xxxxxxxbach)もある。動的システム論とは,「一定の法領域においてはたらきうる諸『要素』を特定し,それらの
『要素の数と強さに応じた協働作用』から法規範あるいは法律効果を説明ないし正当化する」という考え方である16)。それによれば,情報提供義務が確定するには,①情報ニーズ,②情報提供の可能性,③機能領域の三つの基準が重要となる。①情報ニーズは,「契約目的を挫折させうるような,それゆえに契約当事者の決定にとって重要な意義を有するような事情に関しては,説明がなされるべきである」というものである。②情報提供の可能性は,「現実に知識を持ちあわせている者は,情報をこれから初めて獲得する努力をして高いコストを払って調達しなければならない者よりも,
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説明を容易にすることができ,説明すべきである」ということを意味する。そして,③機能領域とは,契約の両当事者は,それぞれ自らの属性におい て,ある機能を有しており,その機能の振り分けによって,相手方の意思 自由への影響可能性が拡張され,それが,既に法律行為的接触によって成 立している特別の信頼関係を強める,というものである。一方当事者があ る機能を「引き受け」,他方がこれへの信頼において自らの独自の努力と 情報調達を放棄した場合には,保護の必要性が発生する,とされている。
⑴から⑹のように議論の展開をまとめた上で,xxxxは,ドイツにお
いては「交渉力の欠如を矯正する実質的xxの視点」または「自己決定権の保障」が中心的な考え方であると評している17)。なお,xxxxはここまでの分析を踏まえた上で,情報提供義務の基本原理・目的を,「背後にある民法の基本原理と関連づける作業」こそが必要であるとしている。つまり,基本原理レベルに立ち返った国家による介入の正当化がされてはじめて,情報提供義務の射程が明らかになるだけでなく,BGB 上の詐欺取消し等の射程の及ばない場面でなおこの契約の効力を否定することも体系適合的に説明できるのである18)。
1.2.xxxxによる分析
xxxx教授は,xxxxの⑴から⑹の分析を踏まえつつ,さらに,保護義務の具体化という観点から,抽象的な概念を明らかにするための試みとして,より具体的な保護の要素を抽出する過程に重点を置いて検討している。つまり,説明義務を抽象的な概念によって基礎づけようとする試みは,それぞれ根拠となり得る要素は有しているが,逆にその抽象性ゆえに外延が画しにくいこともあり,具体的な義務を基礎づける根拠として決定的なものであるということはできないと評価された,と分析している19)。そして,上記⑴から⑸の抽象論ではなく⑹で具体的な根拠の検討にシフトしたことそれ自体を高く評価し,なかでも,先行行為に着目する見解について詳しく検討している。
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⑺ 「先行行為」に着目する見解(Xxxxxxx Xxxxxx)は,動的システム論と同じく説明義務を発生させる具体例に着目しながらも,動的システム論では,本来予見が難しい個別具体的な要素に従って判断することになり,法的安定性を害する危険があると批判する。それを回避するために,①契約の目的を無に帰せしめること,②契約目的に違反すること,③特別な契約の危険,④先行行為,⑤特別な信頼,という五つの要素を説明義務の根拠として検討する20)。
2.日本における議論
日本においても,ドイツの影響を受け,上記の議論の流れを汲みながらもさらに分析・整理がなされ,説明義務の根拠づけがなされている。そのなかでも,主だったものとして「自己決定権」から説明するものと,「専門家責任」に基づくものの二つに大別されるが,その背景には新自由主義や自立支援に向けた契約xxといった考え方が存在する21)。
2.1.「自己決定権」との関連を強く意識したアプローチ
情報提供義務が「自己決定権」という憲法上の権利を保護するためのx xであるとする立場は,主にxxxxやxxxxxxが主張している。こ の立場は,xxxxによれば,「新自由主義の立場から,市場原理にのっ とった自己決定(および自己決定結果に対する自己責任)に最大の価値を 見出す中で,自己決定基盤の維持に法秩序を向かわせ,その一環として, 市場参加者に情報提供義務その他の行為義務を課すというもの」となる22)。この立場の特徴は,国家による取引への介入が,市場参加者の契約内容な いしは意思形成そのものに対しておこなわれるのではなく,競争秩序を維 持すべく,市場メカニズムが機能するための基盤の確保に向けておこなわ れるという点にある。そしてこの場合,市場メカニズムが機能する基盤整 備のために国家が担うべき役割・使命を,市場に参加する取引当事者の一 方に負担させている23)。こうして情報提供義務を認めることで,決定結果
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への市民の責任を問うこと,つまり,自己決定に基づく自己責任を強調するのである24)。
またxxxxは,この自己決定の内容につき,「この情報を知っていれ
ば契約をしなかった」という意思決定ではなく,「整備された環境で意思決定できなかった」ことにあるとしている25)。つまり,本来なら自己責任であるはずの「情報環境整備責任」が相手方にシフトすることで情報提供義務が発生するという。
なおxxxx教授は,「交換的xx」という言葉を用いているが,両者の格差を解消し両者を対等な地位においてはじめて「市場的取引の原則」
を作用させるべきであるという規範的判断によって情報提供義務が認められるとしていることから26),上記の見解に親和性が高いと思われる。
2.2.「専門家」に対する信頼保護原理を強調したアプローチ
専門家責任に基づくとする見解は,説明義務の基本原理を市場メカニズムが機能するための基盤整備・情報環境整備とする上記見解よりも踏み込んで捉えている。
xxxx教授は,説明義務について当事者間の情報力の構造的格差と,それによって生じる依存関係によって生じるものとし,情報力の平等の回復および自己決定基盤の確保を目的としているという側面を認めつつ,もう一つの観点として,事業者の専門家性に対する信頼の保護という点を強調する。説明義務は,専門家が,自らに対する信頼を基礎として事業を展
開していることに起因して発生する,つまり事業者は当該事業の専門家と して,専門家に対する社会的信頼に応えるべく説明義務を負うのである27)。
そしてこの義務は,情報力の格差に起因する不都合の是正(自己決定基盤の整備)にとどまらず,顧客の正当な信頼に応えるべく,顧客の利益に
配慮することを要求するため,これによって保護されるべき利益も,自己決定権,財産権に限られず,顧客の利益に広く及び得るとされる28)。だからこそ,専門家に対する「信頼」を基礎とした説明義務は,より「助言」
説明義務違反と契約の解除(xx)
に近い形で要求される場合もあると考えられる。
なお,xx関係に基づくとする見解もあり,xxx教授は,両当事者間に信認関係が成立している場合に発生する説明義務で,特別に助言義務と呼称する。この見解は,情報や専門的知識のアンバランスを背景に,契約当事者間に一種の信認関係が成立した場合に求められる相手方に対する配慮義務の一環としての説明義務があるとしている29)。ただ,この見解については,「信認関係」を基礎づける要因に専門性が挙げられるため,専門家責任としての見解に内包されると考えられる30)。
3.小 括
以上が,ドイツと日本における説明義務の基本原理・発生根拠についての議論状況である。
ドイツにおいては上記⑴から⑺の見解が挙げられているが,これらは,
「何らかの形で保護しなければならないが,保護の方法までは言及されて いない」ものと「契約責任として保護されなければならないもの」の二つ に大別できるのではないかと考える。前者には⑴福祉国家・社会国家の視 点から説明する見解,⑷自己決定権という基本権から説明する見解,⑸市 場の機能不全という視点から説明する見解が含まれ,後者には⑵専門家責 任から説明する見解と⑶契約メカニズム論から説明する見解が含まれると 考えられる。なお⑹⑺については,具体的な検討はなされているが,その 根拠を突き詰めれば,結局のところ⑴から⑸の議論と大差ないように思わ れる。ただ,義務の発生要件等を具体化している点で非常に有意義である。
そして日本では,上記ドイツの考え方がさらに具体化され,二つの見解に大別される。一つは,義務の基本原理は当事者間の「情報力格差」を是正し「自己決定基盤の確保」にあるとする見解(自己決定権との関連を強く意識したアプローチ)である。そしてもう一つは,「専門性」に着目し,上記格差という要因に加えて,さらに専門家への社会的「信頼」を保護することにあるため,保護される利益も「顧客の利益一般」にまで及ぶとす
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る見解(専門家に対する信頼保護原理を強調したアプローチ)である31)。この後者のアプローチによれば,契約内容の専門性の高さが説明義務の存否・内容に強い影響を与えると考えられる32)。なお,このアプローチにおいて重視される専門性を基礎とした「社会的な信頼」は,契約交渉の深度に応じて「個人的な信頼」としても高まっていくと考えるべきであろう。いずれにせよ,説明義務がどちらのアプローチに依拠して説明されるか
によって,この義務違反の法的性質や射程が異なってくるように思われる。つまり,前者のアプローチであれば,市場メカニズムが機能する基盤を整 えるための「契約とは異なる独立の義務」であるため,その違反は不法行 為責任を構成しそうである。しかし,後者の契約交渉過程における信頼保 護というアプローチを踏まえれば,契約責任を構成しそうである。
Ⅲ.説明義務違反の法的性質
日本における説明義務違反の議論は,元々ドイツの Xxxxxxx が普通法学において,原始的不能の際に提唱した後,拡大・発展した cic 責任の一類型として学説が展開したものである33)。ここで,その責任の性質をどのように構成すべきかという問題が発生するが,民法の原則論からいえば,契約が締結されていない以上,契約責任は発生せず,不法行為責任ということになる。しかしドイツでは,不法行為責任以上の義務として一種の契約責任が認められており,日本もそれに倣いこの問題を契約責任に位置づける学説が支配的であった34)。しかし日本では近時,不法行為責任とする学説が有力となっている35)。
本章では,説明義務違反の法的性質について,学説状況を俯瞰し考察していく。
1.学 説 状 況
説明義務違反と契約の解除(xx)
1.1.初期の契約責任説
本来,日本民法において契約締結前の当事者間を規律する規定は存在しない。そのため,古くは契約締結過程の問題は不法行為であると考えられてきたが,契約関係に特殊な場面での問題を契約責任として規律すべきであるとxxxxxxが提唱したことを皮切りに36),契約責任に近づけて処理しようとする考えが広まった。
契約責任説につき,cic 責任に倣った解釈がなされることについては戦
前から通説的な認知がなされていたが,理論的な根拠づけについて最初に 輸入したのはxxxx博士であるとされる37)。xxxxによれば,「財貨 の取得を目的とする給付義務の外に,債務関係の発展過程において,相手 方の物的乃至精神的財貨に対する特別な干渉によって生じ得べき損害の防 止を目的とするところの保護義務が発生」することになる。そしてそれは,契約当事者たちが「国家目的に適える財貨の配分という共同目的のために 相互に協力すべき関係にある結果として,債務関係はその当事者間に信頼 関係を成立せしめ」るが,「この信頼関係は給付関係に従属するものでな く,却てこれが地盤をなすものである」38)とされる。つまりxxxxは, 保護義務の目的を相互の協力関係から発生する「当事者間の信頼」の保護 に求めている。これは,説明義務は契約締結に向かう当事者の信頼関係か ら生じ,その信頼関係が契約関係の「基礎的前提」になっていると理解で きるのではないだろうか。
xxxxxxは,cic 責任を日本に本格的に導入したが,この問題につ
き,「有效なる契約が成立するに至らなかつた場合と有效なる契約が成立 したる場合とを區別」するとした39)。そして,契約が有効に成立しなかっ た場合には一切の責任は生じないが,説明義務違反があったために契約が 有効に成立した場合には,その成立した契約関係から遡及する形で,xx xに基づく cic 責任としての契約上の責任が認められるとしている。なお,原始的不能(契約不成立)の場合においては不法行為上の責任と解してい
る40)。
立命館法政論集 第16号(2018年)
そして,xxxxの考えを引き継ぎ発展させたxxx博士は,最終的に契約不成立に終わったならば一般の不法行為以上の責任を負わないとしているが,xxxxと同じく,説明義務違反があったために契約が有効に成立した場合には,されるべき説明がなされなかったこと,あるいは誤った説明があったことを「動機として,契約關係に入つた以上,契約上のxxxは,その時期まで遡つて支配するに至る」41)としている。
以上が,1940年代から1950年代の議論である。ドイツの cic 責任論が輸入された当初は,説明義務違反に焦点を当てて議論する学説はあまり存在せず,ただ,契約の締結段階に何らかの過失があったこと,そして契約が有効に成立したか否かを問題として議論されているように思われる。基本的に説明義務違反については契約責任が肯定されているが,その義務の発生する契機となるものが異なる。つまり,xxxxは「契約当事者間の信頼関係」から義務が発生していると考えているのに対し,xxxx・xxxxは「後に成立した契約から遡及して」発生していると考えているのである。
1.2.ドイツの cic 責任論に影響を受けた中期の契約責任説
xxxxx教授は,契約相手方の行為の動機形成にかかわる説明義務を 付随義務,つまり補充的契約責任と考える。この義務は,主観的には相手 方の意思決定に重要な事実,客観的には目的たる行為との内部的関連に立 つ事実の開示を内容としている。この義務は「契約準備行為の開始」によ る法定の債権関係から抽出されるため,契約の有効・無効に関係なく発生 する義務であると考えられている42)。そして,契約締結過程の議論に関し,
「各種のxxx上の付随義務群を債権関係論に定着させることにより,原
始的な契約侵害が体系的に契約責任内で軽視されていることに対する批判理論を形成している点」を評価している43)。
xxxx教授は,説明義務違反を cic 責任に位置づけ,その義務が契約
説明義務違反と契約の解除(xx)
交渉によって発生する法定債権であるとし,契約責任を構成すると主張する44)。不法行為責任説に立つと,契約締結過程に不法行為が存在すると評価されるにもかかわらず(つまり,不法行為の存在によって契約が締結されたと評価されるにもかかわらず),その契約が有効とされるのは理論矛盾であると批判している。また,説明義務違反の効果に関して,「契約自体の解消」をも射程に入れるべきであるとする45)。なお,説明義務違反による解除にまで言及する学説は少数ながら他にもあるが46),それについてはⅤで詳しく述べることとする。
xxxx教授は,xxxxやxxxxが契約締結過程を法定債権関係と
捉えることに関し,ドイツでは BGB 旧122条や旧307条が賠償義務を規定しているから法定債権関係とされるのであって,日本法ではそのような規定はないため法定債権関係ということはできないとして批判する47)。その上で,cic 責任という枠組みは,契約が無効・不成立の場合,および契約が準備交渉段階にとどまる場合にのみ用いられるべきであり,契約が有効に成立した場合は契約責任規範の中で付随義務違反・保護義務違反として処理され,あえて契約締結過程を論じる必要すらないとしている48)。
以上が,1960年代から2000年頃までの契約責任説についての議論である。この時期は,cic 責任論の研究も進み,それに従って付随義務論や,説明 義務違反による契約の解除についての言及もなされるようになった。しか し,それと同時にドイツ法と日本法の差異にも注目がなされるようになり,日本でドイツの理論をそのまま用いることへの疑問も提示されるように なった。その上で,xxxxは,説明義務違反をドイツの法理論である cic 責任として捉えるのではなく,契約が有効に成立している以上は契約 責任として捉えるべきであるとした。
1.3.不法行為責任説
これに対して,不法行為責任説の論者は,xxxxと同じように説明義務違反についてドイツの cic 責任論で説明することに否定的でありながら
立命館法政論集 第16号(2018年)
も,しかしながら真逆の方向性,すなわち不法行為責任を構成するとしている。
xxxx教授は,「契約こそが静的な既存の財産状態を動的な変動を目的とした状態へと変質させるルビコンなのであり,それ故に,その決断を
確保するための様式が古くは強調され,近代に至っても契約締結の自由が絶対的な原理とされた」49)という点を強調する。つまり,契約締結過程を問題にしないという,日本民法典の考え方に従い,契約が成立するまでの問題である cic 責任においては,契約責任としての性質を有することはあり得ないということになる。契約責任を契約締結後に限定している民法理論・民法制度の箍を外してしまえば,債務不履行法理がバラバラに崩壊し
てしまい,限りなく不明瞭になってしまうというのが理由として挙げられている50)。ゆえに,契約が成立するまでは契約利益へ向かう義務は問題とすることを得ず,財産的完全性へと向かう義務のみが問題となる。そしてそれは契約の成立を問題としない以上,不法行為責任で規律すべきであるとしている。その際,xxxが債務関係を規律するという考えは短絡的であり,xxxがもつ効果は「他人の関係→契約関係の中間段階」を創造す
るものではなく,不法行為上の注意義務を具体化する以上に責任を変質させるものではない,としている51)。なお,不法行為責任説に比して契約責任説のほうが結果として妥当だとする見解に対しては,「不法行為法に不備があるならば,解釈ないしは立法によるその積極的改正に努めるのがx
xであり,結果の妥当性のための安易な抜け道は避けるべきである」として批判している52)。
xxxxは,契約の履行ではなく,締結に向けられた説明義務の違反については不法行為責任説に立っており,cic 責任論には次のような問題点があるとしている。まず,①cic 責任論は,不法行為責任の成立する場面が規定上制約されているドイツで,被害者を救済するために認められたも
のであるが,一般的不法行為の認められる日本においてはその必要がないことが挙げられる53)。また,②不法行為責任は特別の接触関係のない者で
説明義務違反と契約の解除(xx)
の責任に妥当するという前提自体がおかしいとしている。つまり,取引的不法行為等,特別の接触関係において不法行為責任が機能している領域は少なくないということである。そして,③契約交渉過程での注意義務は契約の締結に向けた義務として当事者に課されるものなのに,その義務違反を理由とする責任を,その後に成立した契約を根拠に契約責任とするのは本末転倒である,というものである54)。
このようにxxxxによれば,日本においては契約締結過程の問題を cic 責任として処理する必然性はなく,むしろ③のような問題を生じさせてしまう。そして,契約交渉段階での上記違反を理由とする損害賠償責任
は,「行為義務違反を理由とする損害賠償責任なのであるから,不法行為 責任としての性質を有するものとみるべき」55)ということになる。つまり,上記義務は自己決定基盤を整備して,市場メカニズムを機能させるための
「契約とは異なる独立の義務」であるため,契約上の義務とはなり得ないのである。
また,xxxxxxは,契約交渉は自己責任のもとにおこなわれるものであり,一方当事者の期待を他方当事者が満たす必要性はないという点を強調する。その上で例外的に,「契約交渉開始以前であれ,契約交渉中で
あれ,相手方の経済的出捐を誘いかけ,あるいは不誠実に黙認した場合等には」,「先行行為にもとづく不法行為責任」を負うとしている56)。
以上が,戦後の契約責任説に対峙して主唱された不法行為責任説である。ドイツの cic 責任に関する研究が進むにつれ,日本民法との差異などが注 目されるようになったことで近年有力になった学説である。ただこれらの 見解は,説明義務違反の法的性質を不法行為責任であるとする点では共通 するが,法的性質決定の契機となるものが大きく異なる。xxxxが不法 行為責任から契約責任へとシフトする契機を「契約の締結」であるとして いるのに対し,xxxxは,契約の締結自体は関係なく「その義務が何に 基礎づけられているのか(契約とは関係のない独立した行為義務に基礎づ けられているのか,それとも契約に基礎づけられているのか)」,つまり説
立命館法政論集 第16号(2018年)
明義務の基本原理を問題としている。なお,Ⅳで挙げる最高裁平成23年判決においてもxxxxの見解とほぼ同様の判示がなされている。
1.4.近時の契約責任説
近年では上記 1.3. で述べた不法行為責任説が有力であるが,それでもなお契約責任説を提唱する論者もいる。以下では中期の「法定債権」として考えられていた契約責任説が,現在ではどのような変容を遂げているのかについて言及する。
xxxxは,「契約準備段階の権利義務」について,以下のように述べ る。つまり,cic 責任はもともとドイツで原始的不能の場合であっても何 らかの救済が与えられるという判例法理から発展したものであり,ドイツ と異なり一般的不法行為が認められるわが国の民法においては,不法行為 責任と解してもさほど問題がない。しかし,契約法の任務は権利義務の設 計にあり,あえて不法行為責任と位置づけてその設計に要した工夫を無に するような解釈は疑問だとし,ドイツ法定の cic 責任とは根拠を異にした,
日本独自の「xxx上の義務違反責任」として,契約上の債務不履行責任に類似した責任を認めるべきとしている57)。説明義務において,cic 責任ではなくあえて「xxx上の義務違反責任」とするのは,説明義務の根拠
が「交換的xxの理念」によるものであり,信頼を基礎とした cic 責任とは根拠を異にするためとしている58)。
つまりxxxxは,cic 責任論を不法行為責任説の論者と同じように批判し,説明義務の発生根拠についてもⅡで述べた「自己決定権の保護」に準ずる見解を持ちつつ,しかしその法的性質については債務不履行責任類似のものであるとしているのである。なお,契約の解除まで認められるべ
きかは,今後論じられるべき課題であるとされており,その可能性についても否定はしていない59)。
xxxxは,説明義務について,意思表示の内容を柔軟に捉える前提的保障合意論を意識し,当事者の意思に基づく義務として債務の中に取り込
説明義務違反と契約の解除(xx)
むことにより,契約義務違反責任を追及することが可能となるとしている60)。つまり,「現在の深化した契約理論のもとでは,契約当事者間の個別具体的な事情に応じて発生した義務が契約の本旨の一部として取り込まれることもある」61)のである。そして,事前に提供された情報も契約内容を構成しているとともに,最高裁平成23年判決のような投資取引においては,投資先の財務状況は投資を行うか否かを決する不可欠な前提であり,契約内容の根幹をなすと考える。それにもかかわらず,財務状況について積極的に虚偽の情報を提供した場合はもちろん,それが非常に厳しいことを秘匿したと評価できるような場合には,不法行為責任として処理するよりもむしろ契約責任として処理するほうが自然であるとしている62)。この見解は,説明が契約締結に不可欠な前提であることや,契約内容の根幹となっていることを重視している点においては後述する筆者の見解と共通するが,説明義務を実際に成立した契約の「内容」にまで取り込もうとする点で異なる。
また,xxxx教授は,当事者が無関係の者同士ではなく契約交渉過程
にある者同士の間の義務であること,説明を要するような契約であるから
こそ義務があるといえることなどを根拠に,契約責任としてよいと考えている63)。
近時の契約責任説は,中期までと異なり cic 責任に依拠するものはほぼなくなっている。これは,不法行為責任説の論者から批判された「ドイツ法と日本法の違い」という点に少なからず影響を受けているためではないかと考える。それは,xxxxの主張からはもちろん,xxxxも,cic
責任を根拠に説明義務違反があった場合の責任を基礎づけようとする試み自体の正当性が疑われるとしていることからも分かる64)。
2.小 括
以上の流れをまとめると,次のようになる。すなわち,戦前は説明義務違反を不法行為責任として捉えていたが,その後ドイツで cic 責任につい
立命館法政論集 第16号(2018年)
ての議論が盛り上がった時期においてそれが日本にも取り入れられた(松坂,鳩山,xx説)。その後,研究が進むと(xx,xx説),日本法とドイツ法の違いに着目されるようになり(近江説),やがて不法行為責任説が再び脚光を浴びることとなる(xx,xx,xx説)。しかしそれでもなお,この問題を契約責任として捉えることに意義を見出す学説も存在している(xx,xx,xx説)。
そして,中期まではドイツの議論をいかに日本の民法に落とし込むかに 苦心しており,Ⅱで述べた基本原理についてはほとんど言及されていない。しかし,xxxxが基本原理を強く意識した上で不法行為責任説を提唱す
るようになって以来,基本原理に立ち返って説明義務の理論を検証すべきという認識が強まってきている65)。そして,筆者も基本原理と法的性質の関係は切っても切れない関係にある,つまり基本原理が法的性質を決定すると考えているため,その点ではxxxxの見解に賛同するが,それでもなお,説明義務違反が契約責任を構成する余地は残っているように思う。たとえば,xxxxのいう上記 1.3.① の,一般的不法行為の認められ る日本においては契約責任と構成する必要がないという理由は,あくまで
情報提供義務違反の法的性質が不法行為責任であるとの前提に立っている。そのため,仮に上記性質が契約責任であるとすれば,この理由はその正当 性を失う。つまりこの理由は,義務違反の法的性質をいかに考えるか(前 提とするか)によって,その妥当性が左右されるのである。そして筆者は,日本における cic 責任論や熟度論,中間的合意論のように,契約締結過程 の問題を契約責任として処理するよう努力してきた契約法の在り方,解釈 論の発展を無にするべきではないと考える。そして②の,不法行為責任は 特別の接触関係のない者での責任に妥当するという前提自体がおかしいと いう理由については,「契約関係にあることが不法行為責任を排除しない」だけであって,「契約責任でない」理由にはならない。そうであるならば,契約責任とした上で不法行為との請求権競合を認めれば問題ないはずであ る66)。③の理由についてはⅣで最高裁平成23年判決を分析した上で,Ⅴで
説明義務違反と契約の解除(xx)
詳しく述べることとする。
なお,xxxxの「契約責任は契約締結後のみを規律する」という見解は,筆者が前提とする,「契約締結前であっても契約責任を負う可能性がある」という立場と相容れないものであるため,本稿では学説の紹介にとどめておいた。
Ⅳ.説明義務違反にかかわる裁判例
本章では,Ⅴで基本原理との関係において説明義務違反の法的性質を明らかにし,契約の解除の可能性を検討するに先立って,これにかかわる二つの裁判例を分析する。一つは不動産取引において説明義務違反による解除を認めた下級審判決で,契約責任説に立ったと考えられている。もう一つは,説明義務違反の法的性質のリーディング・ケースであるが,投資取引において説明義務違反による損害賠償が争われた最高裁判決で,不法行為責任説の立場をとった。
1.大阪高裁平成11年判決
1.1.事実の概要
Yら(Y1 は不動産の売買業者であり,Y2 は不動産の仲介・管理等をす る業者である)は,1994年10月頃,建築中のマンションの販売をしていた。 Xはこのマンションのモデルルームを訪れ,Yらの説明を受け,そのうち の一部屋を購入した。しかし,完成したマンションからの眺望は,Yらの 事前の説明と異なっていた。Yらの作成したパンフレット等では,マン ションの居室からは二条城の眺望・景観が広がると説明していたにもかか わらず,実際に建築されたマンションの窓の正面には隣接ビルのクーリン グタワーがあるため,窓に接近しないと二条城の緑がほとんど見えない状 態だった。またXは,本件居室の購入に際し,Y2 に対して視界を遮るも のがないかどうかについて,何度も質問していたにもかかわらず,Yらは,
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窓の正面にはクーリングタワーが見える,またはその可能性があるという告知・説明をしなかった。
Xはその説明義務違反をもって,契約の解除および損害賠償の請求をした。
1.2.判 旨
請求認容。
「未だ完成前のマンションの販売においては,購入希望者は現物を見ることができないから,売主は購入希望者に対し,その売買予定物の状況について,その実物を見聞できたのと同程度にまで説明する義務があるというべきである。そして,売主が説明したところが,その後に完成したマンションの状況と一致せず,かつそのような状況があったとすれば,買主において契約を締結しなかったと認められる場合には,買主はマンションの売買契約を解除することもでき,この場合には売主において,買主が契約が有効であると信頼したことによる損害の賠償をすべき義務があると解すべきである」。
1.3.分 析
大阪高裁平成11年判決は,契約の解除を認めていることから説明義務違反の法的性質につき,契約責任説に立ったと考えられる。そこで問題となっていたのは,マンションの窓から見える眺望についての説明が十分でなかった,というものである。
眺望利益とは,景観と異なり,その価値が本来的に個別的・主観的なも
のである67)。そして,「眺望は変化しうるものであり,将来にわたって不変であることを法的に請求できる性格のものではないということも考慮されるべきである」68)が,それはつまり将来ではなく,現時点の問題であるならば法的な請求も可能であるということになる。
不動産取引については,xx業法が35条において重要事項説明義務を規
説明義務違反と契約の解除(xx)
定している。これは,私法上の効果が明記されているわけではないが,民事上の責任が生じると解される69)。この義務は,xx業者以外の者であっても売買契約に付随するxxx上の注意義務として負うとされる70)。
当該マンション売買契約には,「売主および買主は,それぞれの相手方が本契約に違反し,相当な期限を定めた履行の催促に応じない場合に」,違約金を支払う旨の特約があった。しかし裁判所は,この特約が想定する債務はあくまで「本件居室を給付すること」であり,「本件居室を二条城の眺望が広がるような位置に作る債務」ではないとして,当該特約による違約金の支払いは認めなかった。思うに,説明義務,ましてや眺望にかかわるものが当該特約の債務であるとすることは解釈上不可能であったのだろう。
だからこそ,本判決は説明義務違反を契約責任として解除を認め,被害者救済を図ったと考えられる。つまり,違約金債務を発生させる契約違反は認められないが,解除にかかわっては説明義務を,本件においては,た
とえ眺望にかかわるものであったとはいえ,重要な義務と考えたのである71)。これは,説明義務が,契約の成立を待たずして発生した義務であるために,「特約として表れている本来の給付」とは異なるが,そうであってもその違反による解除は認められるということである。この点につきxxxxx教授は,裁判所が「本件事案の説明義務を『要素たる債務』に含
めて扱った(あるいは,単なる付随的義務ではなく契約目的達成にとり重 要なものであると考えた)ことになる」と分析している72)。このことから,説明義務は単なる「付随義務」として安易に位置づけられるべきものでは ないことが分かる。
なお,本判決は消費者契約法の施行前の事案であったが,仮に施行されていたとすれば,⚔条⚑項⚑号の不実告知との関係が問題となる。しかしその場合,あくまで事業者・消費者間に限定される上,「事実と異なること」という要件において適用が否定される可能性もある。実際に福岡地判平成18・2・2 判タ1224号255頁は,売主によるマンションからの眺望につ
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いての説明が,事実と異なるものであった場合に,買主の主位的請求であった消費者契約法⚔条⚑項⚑号による取消しについては,「事実と異なること」=「客観的な事実」であるとした上で,眺望の違いは「主観的なもの」であるとの解釈から,消費者契約法の適用を否定した。しかし,説明義務が履行されていれば買主としては契約を締結しなかったことから,買主は売主の債務不履行を理由に契約を解除できるとすることで被害者救済を図っている。
2.最高裁平成23年判決
2.1.事実の概要
信用協同組合Yは,平成⚖年には監督官庁の立ち入り検査において自己 資本比率の低下を,そして平成⚘年にも債務超過の指摘とその改善を求め られていた。平成10年頃には,その改善がなされていないにもかかわらず, YはXら(X1,X2 は個人,X3,X4 は会社)に対して,「Yが信用組合か ら普通銀行に転換するためには自己資本比率が不足している」,「そのため に出資金を集めている」,「普通銀行になれば将来高配当が得られる」,「Y がつぶれることは絶対にない」などと説明して,自らに出資するよう勧誘 した。なお,Yは当時,その経営が破綻寸前であることを認識していた。 その勧誘を受けたXらはそれぞれ500万円ずつ出資したが,その後Yは破 綻した。
Xらは,上記勧誘にあたり,Yが実質的な債務超過の状態にあり経営が破綻するおそれがあることを説明すべき義務に違反したとして提訴した。第xxでは,Xらは主位的請求として,不法行為による損害賠償および 詐欺による取消しと,予備的請求として,説明義務違反による損害賠償を請求した。主位的請求については,事実認定において各々の消滅時効(不法行為が724条前段により⚓年,詐欺取消しが126条前段により⚕年)が完成していることを理由にXらの請求は認められなかった。しかし,予備的請求としての債務不履行による損害賠償については,X3,X4 については
説明義務違反と契約の解除(xx)
商事消滅時効(522条本文により⚕年)が完成しているとされながらも, X1,X2 については民法が適用され,その主張が認められた(債権の消滅時効は167条⚑項により10年)。
第二審では,錯誤による無効が主位的請求に加えられたが,Xらの行為が合同行為であったことを理由に認められなかった。他方で予備的請求については,第xxの判断を支持した。その際に裁判所は,説明義務違反の性質について,「不法行為責任としてとらえることも可能であるが,むしろ契約法を支配するxxxを理由とする契約法上の責任として……とらえるのが相当である。およそ,当該当事者が,社会の中から特定の者を選んで契約関係に入ろうとする以上,社会の一般人に対する責任……よりも一層強度の責任を課されるべきことは当然の事理というべきものであり,当該当事者が結果として契約を締結するに至らなかったときは,一般の不法行為責任にとどめるべきであるが……,いやしくもこれを動機として契約関係に入った以上,契約上のxxxは,その時期まで遡って支配するに至るとみるべきであるからである(xxx『債権各論上巻』38頁以下参照)」とした。
これを受けてYが上告し,説明義務違反の法的性質が争われた。
2.2.判 旨
破棄自判。
「契約の一方当事者が,当該契約の締結に先立ち,xxx上の説明義務に違反して,当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかったことにより被った損害については,不法行為による賠償責任を負うことはあっても,当該契約上の債務不履行により賠償責任を負うことはない」。なぜなら,「一方当事者がxxx上の説明義務に違反したために,相手方が本来であれば締結しなかったはずの契約を締結するに至り,損害を被った場合には,後に締結された契約は,上記説明義務の違反によって生じた結果であると位置づけられるのであって,上
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記説明義務をもって上記契約に基づいて生じた義務であるということは,それを契約上の本来的な債務というか付随義務というかにかかわらず,一種の背理であるといわざるを得ないからである」。そして,「このように解すると,上記のような場合の損害賠償請求権は不法行為により発生したものであるから,これには民法724条前段所定の⚓年の消滅時効が適用されることになるが,上記の消滅時効の制度趣旨や同条前段の起算点の定めに鑑みると,このことにより被害者の権利救済が不当に妨げられることにはならないものというべきである」。
2.3.分 析
最高裁平成23年判決は,説明義務違反の法的性質に関するリーディン グ・ケースである。本判決に至るまで,判例はこの問題をあまり意識せず,ただ「契約準備段階におけるxxx上の注意義務違反を理由とする損害賠 償責任」の成立を認めていたにすぎなかった。しかし本事案では,消滅x xが問題とならない錯誤の主張が認められなかったため,説明義務違反の 法的性質を明らかにすることにより,消滅時効の期間を決定する必要が あった。
そのようななかで最高裁は,その法的性質につき,第xxおよび第二審の判断を覆し不法行為責任であるとした。主な理由としては,以下の二点が挙げられている。一つは,「説明義務違反があったため,相手方において本来であれば締結していなかったはずの契約を締結させられたとして,相手方から当該契約を締結したことによって被った損害の賠償が求められているときには,上記の説明義務違反をもって,当該契約を前提としてそれから生ずる義務と捉えることは,一種の論理矛盾」だという点である。そしてもう一つの理由は,制度の住み分けの問題である。典型的な詐欺の事例では,その取消しや不法行為による損害賠償を請求するのが通常であるにもかかわらず,この事案にまで故意による説明義務違反として契約責任の射程を広げてしまうと,不法行為責任との境界を壊してしまうことに
説明義務違反と契約の解除(xx)
なりかねない,ということだとされる73)。
前者の理由にかかわってxxxxは,その義務が課される段階が契約締 結前か後かということよりも,「何に基礎づけられているのか」というx xの発生根拠を重視している74)。ゆえに,事業者・消費者間の情報力格差 を是正して,契約の前提となる自己決定の基盤,つまり市場メカニズムが 機能するための基盤を整える独立の義務である,契約の成立に向けられた 説明義務は,契約に付随するものでさえない,ということになるのである。もっとも最判平成17・9・16判時1912号⚘頁のように,マンションの売主 から仲介業務と販売業務の一切を委託された仲介業者が買主に対して負う
「防火戸の電源スイッチ,操作方法等について説明する義務(履行に向け
られた義務)」などは,締結された契約自体に付随する義務とみることができるため,今後も契約責任とされることとなる75)。
そして後者の理由にかかわっては,消滅時効を念頭に置いた制度の住み分けの問題があると考えられる。「相手を騙すつもりで故意に虚偽の情報を伝えた」という詐欺と,「本来すべきであった説明をうっかり怠ってしまった」という説明義務違反では,当事者の悪質性に相当の差がある。そうであるにもかかわらず,説明義務違反を契約責任としてしまえば,消滅時効期間は,詐欺取消しの⚕年よりも長い10年となってしまうのである。
3.小 括
本章では,説明義務違反の法的性質が問題となった二つの裁判例を検討した。これらは,どちらも「義務違反がなければこのような契約を締結することはなかった」という重大な義務違反が認められている事案である。そうであるにもかかわらず,裁判所の見解は正反対のものとなった。最高裁平成23年判決が,後に成立した契約から遡及して説明義務が生じるとするのは「背理」であるとして契約責任を否定している点については,いささか技術的な論理に偏重しており76),当該義務の重要性を無視しているように感じられる。
立命館法政論集 第16号(2018年)
Ⅴ.説明義務違反の法的構成と契約の解除
本章では,Ⅳまでの考察をもとに,説明義務違反の法的性質が契約責任になる場合もあること,その効果として契約の解除が可能であることを明らかにしたい。
1.説明義務違反の法的構成
1.1.「情報提供義務」と「説明義務」による峻別
Ⅱでは,説明義務の基本原理を「自己決定権の保護」と「専門家に対する信頼の保護」という二つの観点からまとめた。そしてこれらの違いは,前者の義務の目的が自己決定基盤を整備する点にあり,義務の内容が情報力格差の是正にあるのに対し,後者はその目的が専門家に対する社会的信頼を保護する点にあり,その内容が情報力格差の是正を超えた,顧客の利益を保護することにあるとした。そうであれば,基本原理もその目的・内容も異なる義務である以上,以下のように峻別して論じるべきではないのだろうか。
つまり,義務の目的が自己決定基盤を整備することで自己決定結果への責任を負わせることにあるとする見解は,「情報」という事実を「提供するだけ」の義務,すなわち「情報提供義務」を念頭に置いていると考えられる。それに対し,義務が専門性に由来するとする見解は,専門家が,自らに向けられた社会的信頼に応えるために,専門性の高い契約において,契約の両当事者の評価に基礎づけられた「双方的な意思の合致がなされる
ため」に「分かりやすく説き明かす」義務,すなわち「(狭義の)説明義
務」を念頭に置いていると考えられる77)。両者が別の義務であることは, xxxxも自己決定の前提としての情報を開示するための説明義務とは別 に,信認関係に基づく説明義務が存在するとしていることからも分かる78)。最判平成28・3・15判タ1424号103頁は,「説明義務は当事者間の情報xx
説明義務違反と契約の解除(xx)
差の解消をもって達する」としているが,これも「情報提供義務」についての判示であるといえる79)。この文言の違いは,単なる事業者対消費者を前提とした消費者契約法が「情報提供義務」を規定し,専門家を規制するxx業法等が「(重要事項)説明義務」を規定していることにも表れていると考えられる。
「情報提供義務」が不法行為責任にとどまるのは,この義務の本質が,自己決定基盤を整備することで「自己決定結果への責任を問う」ことにあるためであるといえる。つまり,「情報提供義務」は当事者間に存在する客観的な情報格差を是正するための一般的な義務でしかないのである。それに対して「専門性」に由来する「説明義務」は,専門家がその職業的地位に基づいてすでに社会的「信頼」を負っていること,その「信頼」が契約交渉過程を経て当事者間で深まっていくこと,そしてその契約内容の専門性の高さによって義務の存否や程度が決定されることなどを考えれば,もはや不法行為責任とはいえないのではないかと考える。
1.2.「説明義務違反」の法的構成と最高裁平成23年判決
契約の成立と密接不可分な説明義務違反につき,大阪高裁平成11年判決 は契約責任としたが,最高裁平成23年判決は不法行為責任であると明示し た。学説はこの問題につき,本判決が出されるまではどちらの見解も拮抗 していたといえる。Ⅲで述べたとおり,当初はドイツの議論をほぼそのま ま輸入したため契約責任説が非常に強かったが,最近になって日本とドイ ツの不法行為法の違いに着目すべきという視点から,不法行為責任説が有 力になり,平行線を辿るかというところに,本事案が提起されたのである。しかしこれは,安全配慮義務に関する学説・判決の変遷などに見られる, 契約法への流れ――従来は不法行為であると考えられてきたものが契約責 任に取り込まれるようになった――のなか,時代に逆行しているものなの ではないだろうか。
そうであるにもかかわらず,この判示に対して学説はおおむね賛成して
立命館法政論集 第16号(2018年)
いるようである80)。xxxxは,特に本判決の「一方当事者がxxx上の 説明義務に違反したために,相手方が本来であれば締結しなかったはずの 契約を締結するに至り,損害を被った場合には,後に締結された契約は説 明義務違反によって生じた結果と位置づけられるのであって,この説明x xを契約に基づいて生じた義務であるというのは背理である」というのが,本判決の核心部分であり,支持に値するとしている81)。
しかし,本判決のいう「背理」は,本当に「背理」たり得るのだろうか。本判決は,高裁判決が参考にした,「契約の成立と密接不可分な説明義務 違反は,後に成立した契約から遡及して発生する」としたxx説を「背 理」として批判している。xxxxがこの論理を支持しているのは,上記 したとおり,情報提供義務は,事業者・消費者間の情報力格差を是正して,契約の前提となる市場メカニズムが機能する基盤を整えるための独立のx xだと考えているからである。ここで重要なのは,「説明義務」が契約上 の義務とされるか,そうでないとされるかは,時間的な問題ではないとい うことである。そうであるにもかかわらずxx説は,「後に成立した契約 からの遡及効」という形をとることによって契約責任に位置づけ,この問 題を時間的なものにしてしまっている。確かにそれでは,本判決のいう
「背理」を免れ得ない。
しかし筆者は,契約締結過程の問題に関する研究が進み,熟度論や中間的合意論,さらには,本稿における基本原理とそれに基づく法的性質論の考察結果を踏まえれば,説明義務はxx説のように「契約の遡及効」として考えるのではなく,「当事者の専門性を契機として,契約交渉・準備段階の信頼関係から説明義務が発生し,それが契約関係の基礎的前提になる」と考えるべきだと主張する。xxxx教授も,「契約法上のxxxが交渉段階にまでおよび,そこから生じる義務を契約上の義務(ないし,これと同視すべき義務)と解するなら,『背理』は存在しない」82)としている。このように考えれば,本判決のいう「説明義務が果たされていないことによって成立した契約を基礎として説明義務が発生した」という「背
理」にはあたらない。
説明義務違反と契約の解除(xx)
このことから,本判決の理論は絶対的なものとはいえないように思われ る。その上で不法行為責任説を正当化する根拠を強いて挙げるのであれば,
Ⅳ.2.3. で言及した詐欺と説明義務違反の制度の住み分けに関連した消滅 時効期間についてのバランスの問題である。ただこれについては,契約責 任説をとったとしても,平成29年民法改正によって債務不履行責任の消滅 時効が,主観的起算点に限ってのことではあるが,詐欺取消しと同じ⚕年 に短縮される(166条⚑項⚑号)ことから,それほど問題はないように思 われる。以上から,もはや契約責任を排除する明確な根拠は見あたらない。そうであれば,その違反が不法行為責任を構成する「情報提供義務」より も高度な専門性に基づく義務である「説明義務」違反を契約責任とする余 地はなおあり得ると考える。
1.3.「説明義務」の対象となる「専門家」の射程と最高裁平成23年判決の誤謬
以上の研究を踏まえ筆者は,「当事者の専門性を契機とした契約交渉・準備段階の信頼関係から発生する説明義務」の違反は契約責任を構成すると結論づける。そしてその場合,「専門家」の範囲が問題となるが,有資格者のみと考えるのは狭量であろう。なぜなら,特定の資格を有しない者との契約であったとしても,たとえば金融機関等との契約であれば,一方だけが専門的な知識を有しているといった場合も考えられるためである。
Ⅱ.1.1. で言及したドイツの議論を踏まえれば,「説明義務」を負担する人的範囲は,投資媒介をする金融機関等,市場におけるスペシャリストを含め,経済活動の中での経済的役割を担う者まで広がると考えるべきである。このように考えるのであれば,専門家としての「説明義務」を負う人的範囲には,資格の存在するxx業者はもちろん,業法の存在する金融機関や,まだ資格制度が存在しないような場合にまで射程が及ぶ可能性がある。
立命館法政論集 第16号(2018年)
このことから,最高裁平成23年判決の事案は,義務を負う当事者が金融機関であるため,「説明義務違反」が問題になっているにもかかわらず,最高裁は「情報提供義務違反」を意識して判示してしまっていることになる。また,本判決は,高裁判決が支持した,後に成立した契約からの遡及効によって説明義務が発生するとしたxx説を批判の対象としているが,高裁判決がxx説を支持したことがそもそもの誤りであったといえる。なぜなら,「説明義務」自体は,専門性を契機に交渉・準備関係に入ったことで生じる信頼関係に基づく義務だからである。つまり,本判決は議論の前提が間違っていたと評価できる。
2 契約の解除の可能性
2.1.学 説 状 況
それでは「説明義務違反」を契約責任と構成した場合,果たして契約の解除まで認めることは可能だろうか。
諸外国では契約関係の清算が認められるが,日本ではこの問題に関して
あまり議論がなされていない。なぜなら,議論されていたのはもっぱらその法的性質についてであった上に,たとえ契約責任とされても付随義務違反にすぎず,解除の可能性は消極的に考えられてきたためである83)。しかしそれでもなお,解除を認めるべきとする学説は少数ながらも存在する。xxxxは cic 責任を,詐欺・錯誤を補完し,契約締結段階における動 機ないし意図形成を保護する機能を担っているものと考えている。その上で,xx法の「不実表示」と同様に考えれば,意思決定に重要な事情についての説明を怠った場合には付随義務違反であっても解除を認めることは容易だとしている84)。xxx人教授も,契約締結過程における責任を契約責任とするのであれば,その効果として契約の解除まで認めるべきであるとしている85)。また,xxxx教授は,「付随義務違反によって当事者間の信頼関係が破壊され,契約関係の継続をもはや当事者に期待しえないと
給付義務の平面で評価された場合に契約を解除できる」86)としている。
説明義務違反と契約の解除(xx)
さらに,この問題に関し積極的に解除権を認めるべきだとするxxxx は,錯誤によって契約を解消しようとするのは誤りであるとしている。な ぜなら,「錯誤は,事業者側の対応如何にかかわりなく,顧客の思い違い を問題とするのに対して,説明義務は,事業者にどのような義務が課され,どのような義務違反があったかを――事業者との対応で――問題とする制 度だからである」。つまり,錯誤は「表意者の思い違い」等を問題にする が,説明義務違反が問題とすべきなのは,「事業者側の過失」なのであり,その点において,紛争解決の原型としては,説明義務違反構成の方が紛争 実態にはより適合的であるということである87)。
現在解除をめぐる議論は下火になっているが,xxxxやxxxxは,なお検討の余地があるとしている88)。
2.2.検討と事案へのあてはめ
「説明義務違反」の効果として損害賠償だけでなく,解除をも認めるのであれば,まず当該義務が「単なる付随義務にすぎない」という従来の考え方を打破しなければならない。
大阪高裁平成11年判決は,特約による違約金の請求を認めていないにもかかわらず,「解除」という効果に関しては付随義務たる「説明義務」を重要な義務だと考え,解除を認めている。この結論は,「当事者の専門性を契機として,契約交渉・準備段階の信頼関係から説明義務が発生し,それが契約関係の基礎的前提になる」という筆者の考え方で説明できる。つまり,「説明義務」が果たされず,契約関係の「基礎」までが崩壊するに至ったのであれば,もはやその契約関係を維持することはできないのである。そしてこれは,上記 2.1. のxxxxの見解にも繋がると考えられる。
それでは,契約関係の基礎をも崩壊させる「説明義務違反」を導く,すなわち「解除」という効果を導くファクターとなるものは何か。
ここで,「情報提供義務」,「説明義務」と並べて言及されることが多い,
「助言義務」に注目して考えてみたい。一般的には,弁護士との委任契約
立命館法政論集 第16号(2018年)
や証券会社との受託契約を想定した,いわば助言契約を締結している場合に発生する義務であるといえる。他方でxxxxは,助言義務を「他方当事者が契約を締結するかしないかの意思決定にあたって重要な影響を与える一方当事者の判断を告知する義務」であると定義する89)。ただこの助言義務は,助言契約から生じるものと異なり,給付内容とはならない。
それでもなおxxxxが定義するようなxxx上の「助言義務」をもと
に解除を導くことはできないのか。xxxxは,一定の場合に契約締結前 であっても広い意味での助言契約が黙示的に成立するとしている90)。さす がにxxxxのように,「黙示の契約」の認定により「助言義務」を導き 出すのは行きすぎだが,単なる「付随義務」にとどまらないとされるよう な何らかの要因がプラスされたときに,xxx上「助言義務に準じた,重 要な説明義務」が発生すると考えることはできるのではないか。以下では 便宜上,このような助言義務のことを「準助言義務」と呼ぶ。このように,契約関係の基礎となる信頼関係に基づいて「準助言義務」が発生したと想 定できれば,とりわけ重要な「説明義務」が果たされなかったのであるか ら,契約の「基礎」たる信頼関係が崩壊し,契約関係にも多大な影響を与 え,解除という強い効果を導くことも可能であると考える。
それでは,何をもって「準助言義務」が発生したと考えるべきであろうか。上記したxxxxは,黙示の助言契約の成立要件を,⑴一方が専門家であり,⑵相手方が求めている目的を知っており,⑶相手方との間に信認関係が成立している場合,としている。この見解は参考になるが,⑵については,相手方が求めている目的を知っていることだけでなく,その目的が重要なものであること,そしてその目的が果たせなかったことが必要であると考える。また,上記 1.1. を踏まえれば,⑴一方当事者が専門家であることは,そもそも「説明義務」が発生する基本原理であるとともに,専門家を信頼する要素にもなる。そう考えれば,⑶には「一方が専門家であること」に加えて,相手との「信認関係」を基礎づける要素がさらに必要となる。
説明義務違反と契約の解除(xx)
⑶に関し,筆者はその要素が「専門家による先行行為」ではないかと考える。なぜなら,「先行行為」こそ,相手方がより専門家に依存する関係に至らしめる要素になり,それがあったにもかかわらず,専門家が「説明義務」を怠ることは,強い矛盾行為になると考えられるためである。だからこそ,「先行行為」という要素は上記 Ⅱ.1.2. で言及したように説明義務の基本原理として取り上げられたこともあったし,Ⅲ.1.3. のxxxxのように,説明義務違反を先行行為に基づく不法行為責任とするような見解もあったのだと考える。先行行為の有無に関する判断は事案ごとに見ていかざるを得ないであろうが,専門家の方から勧誘をおこなったとか,専門家が相手にとって都合の悪い事実をあえて隠したなどといった事実が問題になると考えられる。
以上から,解除の要件(「準助言義務違反」の要件)は,①専門家が,相手方の求めている契約目的を知っており,相手方にとってその目的が重要なものであったこと,②専門家による先行行為(専門家の方から勧誘をおこなった,専門家が相手にとって都合の悪い事実をあえて隠した等)が認められること,③契約目的が達成されなかったこと,の三つということになる。
これらの要件に基づいて,大阪高裁平成11年判決の事案へのあてはめを試みる。まず,前提となる「説明義務」の有無であるが,本件取引は,xx業法により規制されるほど専門性の高い不動産取引であり,当該契約内容も高い専門性を必要としているため,マンションの売買にかかわるYらは,専門家としての「説明義務」を負う。その上で①Xは,Yらに対し,視界を遮るものがないかどうかについて,何度も質問していたことから, Xは「二条城の緑が見える部屋」であることを重視しており,Yらは,Xが,そのような部屋に住むことを契約目的としていたことを知っていたと考えられる。また,②Yらの作成したパンフレット等では,「二条城が見える」と,その眺望を宣伝した文言を用いているにもかかわらず,Xが, Y2 に対して,視界を遮るものがないかどうかについての質問をしても,
立命館法政論集 第16号(2018年)
Yらは,クーリングタワーについての告知・説明をしていないため,Xにとって都合の悪い事実をあえて隠し続けたといえる。その結果,③Xはクーリングタワーによって「二条城の緑が見えない部屋」の売買契約を半ば締結させられてしまったために,「二条城の緑が見える部屋に住む」という契約目的を達成できなかった。したがって,Yらには「準助言義務違反」が認められるため,Xは契約を解除することができる。
Ⅵ.お わ り に
現在の高度に発展した分業化社会のもとでは,従来原則とされてきた
「買主,注意せよ」という格言はもはや通用しない場面も多い。「説明x x」の基本原理が,専門家に対する信頼の保護にあると考えるのであれば,その信頼こそが契約の締結・成立の決定的契機となっているため,「説明 義務」は相手方の意思形成に向かった義務であり,契約責任を構成すると 考えるべきである。
それにもかかわらず,説明義務違反の問題はこれまでその基本原理と法的性質の問題が切り離されて考えられることが多く,その繋がりを強く意識した学説はxx説以外にはほとんど見受けられない。しかしこのxx説は,義務の基本原理が当事者間の「情報力格差」を是正し,自己決定基盤を整備することにあると考えているため,後に成立する契約からは独立した義務ということになり,その法的性質も不法行為責任とされる。
それに対して筆者は,異なる二つの基本原理から,それぞれ別の義務を想定できると考える。つまり,xxの説明義務のなかには,自己決定の基盤を整備するという市場の要請に基づいた,「情報」という事実を「提供するだけ」の義務である「情報提供義務」と,社会的信頼を受けた専門家が,「分かりやすく説き明かす」義務である「(狭義の)説明義務」の二つが存在するのである。それを前提として,「説明義務違反」に対する責任は,専門家が自己に対する「社会的な信頼」のみならず「個人的な信頼」
説明義務違反と契約の解除(xx)
をも裏切ったことに対するものであるため,不法行為責任をなす「情報提供義務違反」とは異質の責任,つまり契約責任を構成し得るのではないかと考えた。
そこで問題となるのは,最高裁平成23年判決が批判した,契約責任説をとると生じてしまう「背理」をどう回避するかについてである。これについては,契約責任説のなかでも,xx説のように「説明義務」を後の契約からの遡及効として考えるのではなく,筆者のように「当事者の専門性を契機として,契約交渉・準備段階の信頼関係から発生し,契約関係の基礎的前提になる」と考えるべきである。このように考えれば,本判決のいう
「説明義務が果たされていないことによって成立した契約を基礎として説明義務が発生した」という「背理」は生じない。本判決は,「説明義務違反」が問題となった事案において「情報提供義務違反」の論理を展開している点において,誤った判示であったといえよう。
契約の解除についても,同じように「説明義務」が契約関係の「基礎」となると考えれば,その崩壊によって契約関係も維持できなくなると考えることに違和感はない。この場合,解除を導けるのは「説明義務違反」のなかでもより重大な義務違反,すなわちxxx上発生する「準助言義務」の違反を想定できる場合に限られると考えるべきである。
ただ,本稿のように「専門家」であることを契約責任としての「説明義務」発生の契機としてしまうと,たとえ当事者間に強固な信頼関係が築かれていて,それを裏切るような説明義務違反があった場合であっても,違反者が非専門家であった場合には不法行為責任にすぎないという帰結になってしまう。これを回避するためには,「専門家」の要件を弛める必要があるが,そうすると,「説明義務」の基本原理である「専門家に対する社会的信頼の保護」という観点が薄れ,「専門性の高さ」,つまり当事者間の能力格差が強調されることになり,「情報提供義務」の基本原理である
「自己決定権の保護」との区別が相対化してしまうことが懸念される。この点については,今後の課題としたい。
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ところで,平成29年民法改正にかかわって,そのxxxxの段階においては情報提供義務ないし説明義務違反の規定についても盛り込まれることになっていた。しかし,その要件化の困難性や,義務を明文化することによって類型の柔軟性が損なわれ,かえって相手方の保護にならないのではないかという意見もあり,結局要綱仮案には残らず,今後も解釈にゆだねられることになった91)。
筆者としては,説明義務については明文化して規定するのは困難だと考える。なぜなら,説明義務を発生させる「xxx」が適用されるということの本質は,社会や環境の変化に柔軟に対応できるという点にあることか
ら,裁判例の積み重ねから固定化された個別要件を見出そうという硬直的な発想とは相容れないためである92)。もし仮に,将来的に説明義務違反を規定するのであれば,一般的・包括的な規定であるべきだが,だからこそ
「説明義務」の意義を基本原理や法的性質から考える必要があり,本稿のような研究にも意味があるといえるのではないだろうか。
1) xxxx=xxxx編『新版 注釈民法(13)債権(⚔)〔補訂版〕』(有斐閣,2006)
〔xxxx〕91頁参照。
2) xxx「売渡承諾書の交付と売買契約の成否」ジュリ857号(1986)117頁。なお,詳しくは,同「不動産売買契約の成否」判タ484号(1983)21頁参照。
3) xx=xxx・前掲注(1)91頁。
4) xxx=xxxx編『ドイツ債権法総論』(日本評論社,1988)〔xxx人〕116頁。
5) xxxx『アメリカ契約法〔第⚒版〕』(弘文堂,2008)190頁。
6) xxxx「フランス法における情報提供義務理論の生成と展開(⚑)」早法73巻⚒号
(1997)99頁,xxxx「沈黙による詐欺と情報収集義務(⚑)――フランス法の展開を題材として――」早法91巻⚔号(2016)45頁参照。
7) xxxx『契約法の現代化Ⅰ――契約規制の現代化』(商事法務,2016)243-247頁参照。
8) 詳しくは,xx・前掲注(6)33頁以下,同「沈黙による詐欺と情報収集義務(⚒・完)
――フランス法の展開を題材として――」92巻⚑号(2016)119頁以下等参照。
9) xxxx「『合意の瑕疵』の構造とその拡張理論(⚒)」NBL 483号(1991)59頁。
10) xxx「第五講 意思表示制度:契約締結過程規制の拡張と第三者保護規定の整備(その⚑)」法教436号(2017)66-67頁。
11) xx(x)・前掲注(9)59-60頁参照。
12) xx=xxx・前掲注(1)143頁。
13) xxxx『債権各論Ⅰ上――契約総論』(弘文堂,2008)133頁。
説明義務違反と契約の解除(xx)
14) xxxx『債権総論〔第⚓版〕』(岩波書店,2013)127頁。
15) xxxx『契約法理の現代化』(有斐閣,2004)149-153頁参照。
16) 詳しくは,xxxx「民法における動的システム論の検討――法的評価の構造と方法に関する序章的考察――」法叢138巻⚑・⚒・⚓号(1995)208頁以下参照。
17) xx・前掲注(15)178-207頁参照。
18) xx・前掲注(15)208頁。
19) xxxx『消費者保護と私法理論』(信山社,2006)128頁。
20) xx・前掲注(19)153-166頁参照。
21) xxxx『債権総論Ⅰ〔第⚒版〕』(信山社,2003)570-576頁参照。
22) xxxx「説明義務・情報提供義務と自己決定」判タ1178号(2005)10頁。
23) xx・前掲注(22)11頁。
24) xxxx『不法行為法Ⅰ〔第⚒版〕』(信山社,2009)145頁。
25) xxxx「説明義務違反による不法行為と民法理論(下)」ジュリ1088号(1996)93頁。
26) xx・前掲注(13)133頁。
27) xxxx「説明義務と専門性」判タ1178号(2005)19-21頁参照。
28) xx・前掲注(27)22頁。
29) xxx『契約の時代 日本社会と契約法』(岩波書店,2000)76-77頁。
30) なお,弁護士との委任契約等に基づく説明義務も存在するが(xxx「専門家責任の基本的構造」xxxx編『新・現代損害賠償法講座(⚓)』(日本評論社,1997)296頁以下参照),これは,専門家が依頼者の代わりに第三者と契約をなす場合などにおいて,依頼者および第三者の利益を保護するために,専門的な立場から,「依頼者の説明に従属することなく必要な範囲で自主的な調査・確認をし,依頼者に適切な説明・助言を与える義務」であるため,本稿で扱っているような,専門家が契約の相手方となって負う「契約の成立と密接不可分な説明義務」とは異なる。
31) xx・前掲注(15)87頁参照。
32) xx・前掲注(14)127頁参照。
33) xx=xxx・前掲注(1)95-97頁参照。
34) xxxx『民法講義Ⅴ 契約法〔第⚓版〕』(成文堂,2006)31頁。
35) xxxx「いわゆる『契約締結上の過失』責任について」法論61巻⚖号(1989)64頁,xx・前掲注(24)160頁,xxx「説明義務違反と債務不履行責任の成否」金商1379号
(2011)13頁,xxxx「契約締結に先立つ説明義務違反に基づく損害賠償責任」金法 1942号(2012)73頁,xxxx「契約締結前の説明義務違反の法的性質について」判タ
1384号(2013)52頁,他。
36) xxxx「契約不履行と不法行爲との關係について」法協52巻⚓号(1934)79頁参照。
37) xxxx「契約締結に際するxxx上の説明義務違反に基づく責任の法的性質――最二判平成23・4・22の債務不履行責任論へのインパクト」NBL 955号(2011)19頁。
38) xxxx『債権者取消権の研究』(有斐閣,1962)245頁。なお,「国家目的に適える財貨の配分」は「契約の締結」と同旨である(同281頁等参照)。
39) xxxx『債権法におけるxxxxの原則』(有斐閣,1955)301頁。
立命館法政論集 第16号(2018年)
40) 鳩山・前掲注(39)314-315頁。
41) xxx『債權各論 上巻』(岩波書店,1954)41-42頁。
42) xxxxx『契約責任の研究――構造論――』(有斐閣,1963)356頁。
43) xx・前掲注(42)347頁。
44) xxxx「『契約締結上の過失』理論について」xxx=xxx=xxx『現代契約法大系 第⚑x xx契約の法理(⚑)』(有斐閣,1983)214頁。
45) xxxx『契約規範の成立と範囲』(一粒社,1999)69頁参照。
46) xxx人「ドイツにおける契約締結上の過失責任理論の展開」私法47号(1985)124頁,xxxxx『現代契約法Ⅰ』(商事法務研究会,1973)144頁,他参照。
47) 近江・前掲注(34)33頁参照。なお,旧122条は取消しを行う者の損害賠償義務について,旧307条は不能の給付を目的とする契約を締結した際の損害賠償義務について規定している(同29頁)。
48) 近江・前掲注(34)34頁。
49) xx・前掲注(35)69-70頁。
50) xx・前掲注(37)22頁。
51) xx・前掲注(35)69頁。
52) xx・前掲注(35)68頁。
53) xxxx『新債権総論Ⅰ』(信山社,2017)121頁参照。なお,詳しくは,xxx・xxxxxxxxx・xxxxxx(xxxx=xxxx監訳)『ドイツ不法行為法』(法律文化社,2011)48頁以下参照。
54) xx・前掲注(53)121-122頁。
55) xx・前掲注(24)160頁。
56) xxxx『新民法体系Ⅳ 契約法』(有斐閣,2007)108-109頁。
57) xx・前掲注(13)128-129頁。
58) xx・前掲注(13)133頁。
59) xx・前掲注(13)134頁参照。
60) xx・前掲注(19)486頁。
61) xxxx「契約締結段階の説明義務違反と債務不履行・不法行為――最高裁判所平成23年⚔月22日判決を受けて――」国民生活研究51巻⚒号(2011)63頁。なお,詳しくは,xx・前掲注(19)447-487頁参照。
62) xx・前掲注(61)63頁。
63) xx・前掲注(14)127-128頁。
64) xx・前掲注(19)207-209頁参照。
65) xx・前掲注(22)9 頁。
66) xx・前掲注(14)128頁。xxxxx「契約締結説明義務違反に基づく損害賠償」xxxx=xxxx編『民法判例百選Ⅱ 債権〔第⚗版〕』別冊ジュリ224号(2015)11頁も同旨。
67) xxxx=xxxx=xxx「眺望を巡る法的紛争に係る裁判上の争点の検討」判タ 1186号(2005年)5 頁。
説明義務違反と契約の解除(xx)
68) xx=xx=xx・前掲注(67)11頁。
69) xx業者が売主となった売買契約において,売主がxx業法35条の説明義務をつくさなかったことを理由として,買主による契約解除を認めた裁判例がある(東京高判昭和52・ 3・31判時858号69頁)。
70) xxxx「不動産取引と説明義務」判タ1178号(2005)126頁。
71) xxxxx「マンションの景観に関する説明義務の不履行に伴う損害賠償責任の成否および売買契約解除の許否」判タ1068号(2001)97頁参照。
72) xxx・前掲注(71)97頁。
73) xxxxx「契約の一方当事者が契約の締結に先立ちxxx上の説明義務に違反して契約の締結に関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合の債務不履行責任の有無」曹時66巻⚖号(2014)161頁。
74) xxxx「契約の一方当事者が契約の締結に先立ちxxx上の説明義務に違反して契約の締結に関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合の債務不履行責任」金法1953号(2012)77頁参照。
75) xx・前掲注(66)11頁。
76) xx・前掲注(14)128頁参照。xx・前掲注(66)11頁も同旨。
77) xxxxは,「説明義務」の内容が「情報提供」にとどまる場合と,専門家が「分かりやすく説き明かす」ことまで求められる場合とでは義務の正当化根拠が異なるとしている
(xxxx「分譲マンションの売主の説明義務違反による損害賠償責任が認められた事例」リマークス53号(2016)29頁参照)。
78) xx・前掲注(29)77頁参照。
79) xx・前掲注(77)29頁参照。
80) xx・前掲注(35)61頁,xx・前掲注(35)13頁,xx・前掲注(74)77頁,xx・前掲注(35)73頁,xx・前掲注(35)52頁,他参照。
81) xx・前掲注(74)77頁。
82) xxxx「契約締結前の説明義務違反と当該契約上の債務の不履行による損害賠償責任の成否」ジュリ1440号(2012)75頁。
83) xxx『新・契約の成立と責任』(成文堂,2004)113頁参照。
84) xxxxx『現代契約法Ⅰ』(商事法務研究会,1976)140-144頁参照。
85) xx・前掲注(46)124頁。
86) xxxx「契約締結上の過失責任法理と付随義務」xxxx編『法と政治の現代的課題
――明治学院大学法学部二十周年論文集――』(第一法規,1987)78頁。
87) xx・前掲注(45)83頁。
88) xx・前掲注(13)134頁。xxxx『契約法』(有斐閣,2017)132頁も同旨。
89) xx・前掲注(13)134頁。
90) xx・前掲注(88)132頁。
91) xxxx編『新民法典成立への扉――法制審議会の議論から改正法案へ――』(信山社, 2016)145-147頁参照。
92) xx・前掲注(77)27頁参照。