1)萩本修編著『一問一答保険法』(商事法務、2009)20頁は、保険法7条(告知義務〔4〕、遡及保険の成立要件〔5II〕)、12条(第三者のためにする損害保険 〔8〕、超過保険の部分取消権〔9〕、保険価額減少に伴う保険料減額請求権
生命保険契約における任意法規の意義: 消費者契約法10条と無催告失効条項・免責条項
xx x
(東北大学 准教授)
1.はじめに―任意規定の意義と保険契約
保険法には、保険契約者保護のための片面的強行規定が複数設けられ1)、保険契約に適用される規定は、絶対的強行規定、片面的強行規定そして任意規定の三種に分類される。そして、片面的強行規定およ
1)xxx編著『一問一答保険法』(商事法務、2009)20頁は、保険法7条(告知義務〔4〕、遡及保険の成立要件〔5II〕)、12条(第三者のためにする損害保険〔8〕、超過保険の部分取消権〔9〕、保険価額減少に伴う保険料減額請求権
〔10〕、危険の減少に伴う保険料減額請求権〔11〕)、26条(保険目的物の滅失
〔15〕、保険給付の履行期〔21I・III〕、残存物代位〔24〕、請求権代位〔25〕)、 33条(告知義務違反による解除〔28I-III〕、危険増加による解除〔29I〕、重大事由解除〔30〕、解除の効力〔31〕)、41条(告知義務〔37〕、遡及保険の成立要件〔39II〕)、49条(第三者のためにする生命保険〔42〕、危険の減少に伴う保険料減額請求権〔48〕)、53条(保険給付の履行期〔52I・III〕)、65条(告知義務違反による解除〔55I-III〕、危険増加による解除〔56I〕、重大事由解除〔57〕、解除の効力〔59〕、保険料積立金の払戻〔63〕、保険料返還の制限〔64〕)、 70条(告知義務〔66〕、遡及保険の成立要件〔68II〕)、78条(第三者のためにする傷害疾病定額保険〔71〕)、82条(保険給付の履行期〔81I・III〕)、94条
(告知義務違反による解除〔84I-III〕、危険増加による解除〔85I〕、重大事由解除〔86〕、解除の効力〔88〕、保険料積立金の払戻〔92〕、保険料返還の制限〔93〕)を片面的強行規定として列挙する。
び絶対的強行規定については分析が進められているものの2)、任意規定にどのような意味があるのかについての分析は十分になされていない3)。そこで、本稿は、生命保険契約において任意規定の存在が裁判所の解釈にどのような影響を与えるのかを分析する。
保険法においては、多くの規定が任意規定とされているところ4)、生命保険の領域だけみても、生命保険約款によって任意規定と異なる定めがなされている点がいくつかある5)。例えば、保険金受取人の変更を認める保険法43条、44条(遺言による場合)に対して、いくつかの保険会社の約款では、受取人の変更を配偶者や親族、その他受取人として指定すべき相当の関係があると保険者が認めた者等の一定の範囲に限定している6)。また、保険金受取人死亡時には相続人全員が保険金受取人となるとする保険法46条に対して、法定相続人以外の者(被保険者の扶助によって生計を維持していた者、被保険者の生計を維持
2)xxxx「絶対的強行規定・片面的強行規定・任意規定」保険学雑誌602号(2008)129頁以下(以下、〔規定〕で引用)、132頁以下〔絶対的強行規定〕、 139頁以下〔片面的強行規定〕、同「新保険法の総論的課題について」保険学雑誌608号(2010)3頁以下(以下、〔総論的課題〕で引用)、13頁以下〔絶対的強行規定〕、17頁以下〔片面的強行規定〕、xxxx=xxxxx『論点体系保険法1』(第一法規、2014)95-96頁〔xxxx〕、xx・前掲注(1)文献 20-22頁。
3)例えば、xx・前掲注(2)〔規定〕147―8頁に任意規定に関する具体的解釈問題として、免責事由は保険給付内容の設定と表裏の関係に立つことから任意規定であることが適切であること、そして、重複保険の規律(保険法20)については実務的な混乱を避けるために(片面的)強行規定としうるということ(立法論)が述べられているのみであり、同〔規定〕131頁注2は、任意規定に関連する問題として消費者契約法上の不当条項規制との抵触問題について「保険法に固有の論点ではないため、本稿の考察範囲からは除外する」とする。
4)xx・前掲注(1)文献222-227頁参照。
5)xxxx「保険法の任意規定と生命保険約款」生命保険経営79巻1号(2011) 65頁以下、76頁以下。
6)xx・前掲注(5)文献78頁以下。
していた者)も保険金受取人死亡時の新たな保険金受取人として追加する約款を用いる保険会社もある7)。任意規定と異なる約款規定が設けられているのが最も多いのは、免責事由であろう。保険法51条は生命保険契約における保険者の免責事由を4つ定めるが、ほぼすべての生命保険の約款においては、自殺免責に無期限ではなく有限の免責期間が定められているほか、傷害特約が付されている場合には、疾病免責条項など法定免責事項以外の免責事由が定められているのが通常である。
そのほか、保険法は、民法・契約法の特別法であるため8)、保険法に規定がない場合は民法の任意規定も、保険契約における任意規定と
7)xx・前掲注(5)文献81頁。他にも、保険法40条の生命保険契約締結時の交付書面について、40条1項10号が「生命保険契約を締結した日」を記載事項としているところ、数社の約款では、保険契約を締結した日ではなく契約日を記載するとしているとのことである(xx・前掲注(5)文献77頁)。これは、契約締結日とは、諾成契約である生命保険契約においては保険契約者の申込に対して保険者が承諾の意思表示をした日ということになるという前提に立ち、約款が保険証券の発行で承諾の意思表示に代えると規定していることから、保険証券を発信した日に契約が成立するところ、書面に記載されているのが、この保険証券の発信の日であることを明示するために、契約締結日ではなく「契約日」という文言を用いる様である。だが、約款の規定によって保険証券を発信した日をもって契約締結日としてよいと解される上、そもそも「契約締結日」と「契約日」という概念が異なるものであること自体、明らかではないため、このような約款規定は任意規定と異なるものとはいえないと解される。
8)xxx「保険法の概要」自由とxx60巻1号(2009)14頁以下、17頁、xx・前掲注(1)文献37頁〔最大善意の原則(xxx)を定める規定が保険法に設けられなかった理由として民法1条2項のxxxxの原則の適用があるとする説明の中での一節〕。保険法が営利を目的としない共済契約等にも適用されることについて保険法2条1項、xx・前掲注(1)文献2頁参照。これに対して、xxxx「『保険契約法』は商法の特別法か民法の特別法か」保険学雑誌596号(2007)133頁、139頁は保険契約の法律関係の合理化,画一化,定型化による個性の喪失の要請といった性質が商法の特色・本質(商的色彩)を示すものであり、商法の本質の典型を示すという観点から保険法を実質的意義の商法に分類すべきとする。
しての意義を有する。後述する無催告失効条項について、最高裁は、民法の催告解除規定(民法540)を任意規定とし、それに対する特約としているのは一例である。
これらの任意規定が、消費者契約法10条を通じて、約款内容規制として機能することはすでに指摘されている9)。特に生命保険契約は、海上保険等と異なり、その多くが消費者契約ないしそれに準じた当事者間の交渉力・経済力の格差が問題となる状況下での契約であり、内容規制の必要性が相対的に大きい。消費者契約法10条は、「その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則(xxx。筆者注)に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする」としており、任意規定からの合理的でない逸脱を無効とする。
さらに、国会に提出された民法(債権法)改正法案は、定型約款について、548条の2において、約款の条項の内容に契約として拘束力が及ぶとされる「組入要件」に加えて、約款の個別の条項のうち不当な条項の効力を否定する不当条項規制を導入している10)。組入要件を定めた第1項を受けて、第2項では、「条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして、第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす」と定めている。この条文案は、消費者契約法10条と異なり、任意規定と比較すべきことは書かれていないのであるが、前段要件であるところの「相手方の権
9)xxxxほか『保険法〔第3版補訂版〕』(有斐閣、2015)64頁、xx=xx編著・前掲注(2)文献95頁〔xx〕。
10)xxxxx「民法改正と約款規制」法曹時報67巻7号(2014)1801頁以下参照。
利を制限」「相手方の義務を加重」とは、おそらく問題となっている約款条項がなかった場合と比較することになろう。約款の個別の条項がなかった場合とは、まさに任意規定が適用された場合ということであるから、やはり、法案548条の2第2項においても、任意規定からの逸脱に合理性の観点から制限を課すという考えが読み取れる。
だが、任意規定の機能は、このような消費者保護的な約款の内容規制にとどまるのであろうか。そもそもなぜこのような内容規制として任意規定が機能することが認められるのであろうか。さらには、任意規定の機能は、消費者保護的な内容規制にとどまるのであろうか。このような観点から、従来指摘されてきた内容規制として任意規定がどのように機能するのかの分析にとどまらず、それ以外の場面でも任意規定が裁判官に対して正当性の根拠を提供する機能を有することを検討したい。本稿では、この研究計画の足掛かりとして、無催告失効条項と自殺免責条項に対する裁判例を素材に、裁判官が任意規定を正当性の淵源として取り扱っている事例を確認する。
2.契約法における任意規定の意義
契約法一般における任意規定の意義については既に様々な議論がある。民法学における従来の伝統的な立場は、契約の内容は全て当事者の意思表示によって決定されると考えており11)、どの典型契約に性質決定されるか、即ちどのような任意規定の適用が想定されるのかには大きな意味はないとされてきた12)。
11)xxx『債権各論・上』(岩波書店、1954)57頁など。
12)xxxx『契約法』(有斐閣、1974)739頁など。同文献739頁、742頁によれば、xxは、当該契約の具体的事実を正確に調べ、典型契約の任意規定その他の民法の規定が前提としている事実に一致する場合に限って、当該規定が適用され、そうでない場合は任意規定も適用されないとする。ここまで任
ところが、近時は、約款や消費者契約を念頭にして、任意規定に、個別の契約に対する指導形象機能や秩序付け機能を認め、任意法規か らの逸脱にはそれを合理化するだけの事由を要求すべきとするなど13)、任意法規の半強行法規化の議論14)が盛んとなっている。実際に、損害 保険(火災保険)の事案であるが、保険目的物の譲渡において保険契 約者または被保険者が保険者に対して承認裏書請求という手続を経な ければ、保険事故の危険の増加の有無にかかわらず、免責されるとい う約款条項に対して、目的物の譲渡の場合には著しい危険の変更・増 加がある場合に限って保険契約を失効すると定める改正前商法650条
2項(保険法では削除)と大きくかい離することをもって無効と判断した下級審裁判例もある15)。
このような任意規定を約款の条項規制(不当条項規制)の出発点とする考え方が、前述した消費者契約法10条や民法(債権関係)改正法案548条の2で提案されている定型約款の内容規制において実現されているのである。
だが、本稿の問題関心は、任意規定がなぜ消費者保護的な内容規制の機能を果たすのか、さらには、消費者保護的な機能以外の機能も認められないのかという点にある。となれば、消費者法的な分析よりも広く任意規定の意義を分析したい。
伝統的な立場は、なるべく多くの当事者が契約するであろう条項を任意規定として定めることで、ドラフティングコストを削減するとい
意規定の適用範囲を限定する見解は、伝統的な立場の中でも例外的なものと思われる。
13)xxxx『約款規制の法理』(有斐閣、1988)386-388頁など。
14)xxxx『典型契約と性質決定』(有斐閣、1997)9頁、xxxx「比較法的にみた現在の日本民法」xxxx=xxxx編『民法典の百年I』(有斐閣、 1998)549頁以下、555頁など。
15)盛岡地判昭和45・2・13xx集12巻1・2号314頁。
う考え方(多数派ルール;majoritarian rule)である16)。だが、これに対して、情報の偏在がある当事者間において、情報を保有している側に交渉で相手方に情報を出させるために敢えて情報保有者側に不利となる条件を任意規定にしておくという考え方(ペナルティ・デフォルト:penalty default)もある17)。さらに、近時、人間の合理性の限界を前提とする行動経済学の知見から、任意規定によって現状維持バイアスが生じ、情報不足・判断力不足の個人に、適切な契約を仕向けるという考え方(リバタリアン・パターナリズム: libertarian paternalism)18)が注目されている19)。
だが、これらの契約法一般の議論が、生命保険契約の場面においてどれほどの意義があるのか疑わしい。生命保険契約においては約款が用いられ、契約条件は約款に詳細に定めているところ、前述の免責条項(とりわけ自殺免責)のように任意規定とは異なる規定が約款に設けられ、しかもそれが実務上、圧倒的多数となっていることがある。この事実は、制定法上の任意規定に多数派ルールとしての意義は現実には認められていないことを示す。
また、約款を用いた契約においては、個別の当事者がそこから交渉によって契約内容を変更することは想定されていない。とりわけ、保険契約においては、大数の原則を用いている保険の技術上の要請により、個別の交渉によって契約条件を変更することは考えられない。このため、交渉によって情報開示を促進するというxxxxx・xxxxxの考え方も妥当しない。
16)XXXXXXX X. XXXXXX, ECONOMIC ANALYSIS OF LAW 119 (8th ed. 2011).
17)Xxx Xxxxx & Xxxxxx Xxxxxxx, Filling Gaps in Incomplete Contracts: An Economic Theory of Default Rules, 99 YALE L.J. 87 (1989).
18)Xxxx X. Xxxxxxxx & Xxxxxxx X. Thaler, Libertarian Paternalism Is Not an Oxymoron, 70 U. CHI. L. R. 1159 (2003).
19)その他、任意規定の経済的意義についてxxxx「契約法における任意法規の構造」神戸法学雑誌63巻1号(2013)171頁以下参照。
リバタリアン・パターナリズムは、特段の合意のない状態(デフォルトルール)が示されることで、当事者に現状維持バイアスが作用するという点に着目する。例えば、労働者が自らの老後のための生活給付となる確定拠出年金(401(k))の掛け金に現在の報酬のうちいくらを回すのかという意思決定の際に、①労働者個人が何も申請しなければ掛け金は0となる場合と、②労働者個人が何も申請しなければ自動的にあらかじめ定めた割合が掛け金となる場合とを比較し、どちらも労働者個人の自由な意思決定で掛け金を設定できるにもかかわらず、
②の場合のほうが、掛け金が高くなるということが指摘されている20)。このように、任意規定が当初の状態を示すことで、個人の意思決定が影響を受けることから、任意規定に、個人を望ましい選択に仕向けるための助言(suggestion)機能があるとされているのである。このメカニズムの前提は、当事者に当初の状態であるところの任意規定が示されていることである。しかし、通常、生命保険契約において、当事者とりわけ保険契約者が検討するのは、保険約款のみであり、他社の約款と比べることがありうるにしても、保険約款を保険法ないし民法の規定と見比べる様なことはしないであろう。よって、リバタリアン・パターナリズムの考えも保険契約の任意規定には妥当しない。
ただし、保険契約者は、そもそも保険法・民法の任意規定を参照しないことが多いであろうが、事後的に約款をめぐる紛争となった場合には、裁判官をはじめとする法律家が、約款規定と任意規定とを比較することになる。この場面で、法律家を名宛人とすれば、リバタリアン・パターナリズムは機能し得るのである。特に、裁判官に対しては、既に、約款の条項の不当性ないし正当性を評価する指標として任意規定を用いているのではないかという指摘がなされている21)。この指摘
20)Xxxxxxxx & Thaler, supra note 19, at 1172.
21)Xxxxxx Xxxxxx, Bounded Rationality: A Double-edged Sword in Regulating Standard Form Contracts, mimeo, at 2. xxx「限定合理性と約款規制」
は、任意規定が、消費者契約法10条によって内容規制となることを説明できるだけではなく、消費者契約法10条をまたずに、消費者保護機能を果たすことも示唆する。さらに、消費者側だけではなく、事業者側(保険契約においては保険者側)にとっても有利となり得るはずである。
本稿は、以上の指摘に基づき、任意規定が裁判官の判断にとって正当性の淵源となっているのではないか、という仮説を、生命保険契約における近時の若干の裁判例を素材に検証していく。そのために、まず、消費者保護の側面において消費者契約法10条の適用以外にも個別のxxx等の形で、任意規定を根拠とした内容規制が行われていることを紹介する(3.)。その上で、そもそも消費者契約法10条が全く問題となっていない場面、保険者側に有利となる場面でも任意規定が使われることがあることを紹介し、かかる仮説の簡単な検証としたい
(4.)。その上で、裁判官が、任意規定を正当性の根拠とすることに規範的な正当化が可能であるのかについて簡単に検討を加えたい
(5.)。
3.消費者保護のための内容規制としての任意規定:消費者契約法10条+α
(1) 最高裁による消費者法10条適用の手法
生命保険契約において消費者契約法10条の適用が問題となった最高裁判決として、無催告失効条項に関する最判平成24・3・16民集66巻5号2216頁がある22)。無催告失効条項とは、保険料の支払いを支払期日から1か月間の猶予期間内になされなかった場合には、民法の定
法律時報89巻3号(2017)80頁以下、84頁。
22)平成26年最判の検討の詳細はxxx「判批」北大法学論集64巻4号(2014)
1750頁以下参照。
める催告・解除の意思表示なしに当然に保険契約が失効する旨を定める条項である。無催告失効条項には復活条項が付されており、復活がなされた場合には、当初の保険契約は最初からその効力を失わなかったこととなることから、失効の効果について争いがあるものの23)、最高裁は、この無催告失効条項を民法の解除の特則と理解した。そして、民法541条の定める催告なしに契約の効力を失わせる条項として、消費者契約法10条の前段要件である任意規定と比較して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する条項であることを満たすと判断した24)。
だが、最高裁は、猶予期間が1か月と通常の金銭債務解除の場合の催告期間よりも長いこと、自動貸付条項の存在などから「権利保護を図るための一定の配慮」がなされており、かつ、払込督促通知の運用が確実になされていれば、xxxに反して消費者の利益を一方的に害するものという10条後段の要件は満たさないと判断した。そして、差戻審は無催告失効条項を有効と判断したのである。
23)通説は、失効によって保険契約は完全に消滅し、復活を「新たな」特殊の契約とみるとされているが(保険契約完全消滅説)、これに対して、有力説は失効によっても保険契約は完全に消滅するのではなく、復活に関する合意、解約返戻金等、当初の保険契約関係のうちの一部については存続し、それ以外の保険契約の効力が消滅するとみる(〔復活条項存続説〕xxx「生命保険契約の失効と復活」xxxx先生追悼論文集『保険法の現代的課題』〔法律文化社、1993〕274頁以下、288頁)。さらに、失効によって消滅するのは保険者の保険金支払責任のみであって保険契約関係は消滅せず、復活は一旦消滅した保険者の責任を再開させることとする見解もある(〔保険関係存続説〕xx x「生命保険契約における失効・復活制度の再検討」生命保険論集140号〔2002〕 49頁以下、80頁)。
24)これに対し、xxxx「生命保険の継続保険料不払いと無催告失効条項の効力」xxxx博士古稀記念『保険学保険法学の課題と展望』(成文堂、2011) 239頁以下、253頁は、前段要件については、単純な規定の文言の比較ではなく、実際に機能している当該任意規定の現実の適用と当該約款の現実の機能という実質論に踏み込んだ比較をすべきとの指摘をしていた。平成26年最判は、前段要件で実質判断をするこのような立場を否定したものと解される。
問題は、最高裁が消費者契約法10条該当性判断の際に考慮した事情の範囲である。平成26年最判の事案は、保険契約者が、振替不能を頻発し、そのたびに、保険会社の営業担当者が注意を重ねていたという事件であったが、こういった事情は条項の有効性の判断材料に含まれていない25)。
このことは、差戻審(東京高判平成24・10・25金判1404号16頁)においてより明らかになる。差戻審が消費者契約法10条後段要件判断の際に考慮した要素は、未納保険料払込督促事務として、人的過誤を排除する形で整備されているコンピュータシステムに基づいて、金融機関の振替結果を督促事務の委託先に自動的に伝送し、普通郵便の方法で行われている点、そして、営業担当者による案内・集金も行われていた点であった。
その上で、差戻審は、保険会社が保険復活申込みを不承諾とした判断にxxx違反・権利濫用があったか否かという別の論点の判断の中で、保険契約者が、生命保険契約締結後わずか4か月で保険料の未払いをし、その後も振替不能が頻発した点や、当該保険会社の営業担当者がそのたびに復活不承諾の可能性について注意し、とりわけ、保険契約者の持病に重ねて注意していた点、当該保険契約者において保険料払込にさしたる困難はなかった点を挙げている。
保険復活とは、保険契約に付されている復活条項に基づき、失効した保険に対して、一定期間内に、保険者の承諾を得て、従前の保険契
25)ここで挙げている事情は保険契約者側の落ち度であり、条項を有効と判断する方向に働く要素であるところ、平成26年最判はこれらの事情がなくとも条項の有効性は支持されるというために敢えて要素に掲げなかった可能性もある。だが、そのほかにも、当該保険者に不払いを知らせる通知が到着したか否かといった事情も掲げられていないことからすれば、保険契約者に有利となる可能性のある事情も要素に挙げられておらず、やはり最高裁は一定の事情を消費者契約法10条該当性判断の考慮要素から外しているものと解される。
約を復活させることである26)。この復活の申込に対して保険者は承諾をしない裁量行使も認められているはずであるが、一定の場合にxxx違反とする余地を差戻審は認めたのである。復活の承諾と、無催告失効条項に基づく失効とは、異なる場面ではあるものの、復活が保険契約の失効を前提とする以上、無催告失効条項に関して保険契約の効力を認めることができるか否かという共通の問題が争われていることに違いはない。すなわち、無催告失効条項の消費者契約法10条該当性判断の場面で判断材料として漏れた事項が、個別具体的な状況における条項援用のxxx違反・権利濫用の判断で考慮される、という二段構えの判断構造になっていると評価できるのである。
この理解は、消費者契約法10条をめぐる他の最高裁判決からも裏付けられる。不動産賃貸借の更新料特約を有効と判断した最判平成23・
7・15民集65巻5号2269頁は、10条後段該当性の判断について、「消費者契約法の趣旨、目的・・・に照らし、当該条項の性質、契約が成立するに至った経緯、消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考量して判断されるべき」と判示している。この判示は、「その他諸般の事情を総合考量」としていることから、個別事情まで含めた全事情を考慮して判断すると述べたかのようにも読める27)。だが、そこで具体例として掲げられている
26)復活の法的性質は、契約当事者間の合意により、失効した保険契約の消滅の効力を失わせて契約失効前の状態を回復させることを内容とする特殊の契約であるとするのが通説である(xxxx「生命保険契約復活論」『私法論文集』〔巌xx・1926〕980頁以下、988頁、xxxx『保険法〔補訂版〕』〔有斐閣、1985〕314頁、xxxx『保険法〔第3版〕』〔悠々社、1998〕374頁。下級審裁判例として東京地判昭和10・6・24評論24巻商法519頁、東京地判昭和 11・4・14法律新報434号28頁、甲府地判昭和29・9・24xx集5巻9号1583頁、東京地判平成23・6・30事例研264号1頁。
27)個別事情まで含めて総合判断すると提唱する学説としてxxxxx「判批」金法1905号(2010)75頁以下、78頁、xxxx『契約法理の現代化』(有斐閣、 2004)228頁。
事情は、契約締結前の事情に限られている。また、実際にあてはめにおいて検討されている事項は、一般の賃貸借における、更新料の経済的合理性や従前の裁判上の和解における取り扱いなど一般的抽象的事項に限られている28)。このことから「契約が成立するに至った経緯」、
「消費者」、「事業者」とは個別具体的な経緯、消費者・事業者ではなく、当該約款が用いられる場合一般と理解すれば、一般的な事象に限定していると理解することもできる。
さらに、不動産賃貸借における敷引特約の有効性について判示した最判平成23・7・12判時2128号43頁におけるxxxx補足意見はより明確である。xx補足意見は、契約締結当時の想定よりも短期間で契約を終了したという事実を、個別契約固有の事情であるという理由で考慮対象とすべきでないと述べた。これは、個別契約固有の事情は、条項の消費者契約法10条の判断材料とはしないことであり、他方で、契約紛争において考慮対象となる事項を限定すべきでないことを考えると、それ以外の事情は、条項援用のxxx違反・権利濫用という第二段階が存在し、そこで考慮すべきであることを示唆する29)。
28)xxx「判批」平成23年度重判(ジュリスト1440号)(2012)66頁以下、67頁。
29)xxx「判批」法学教室389号判例セレクト12(I)(2013)18頁、xx・前 掲注(22)文献1733頁。これに対して、xxxx「判批」保険事例研究会レポ ート294号(2016)12頁以下、20頁は、消費者契約法10条はあくまで当該事案 における契約について個別具体的に要件判断をするものであることを理由に、消費者契約法10条後段においてxxx違反がないと認定しておきながら、個 別の条項援用の場面でxxx違反と認定するのは評価矛盾であり、第二段階 はありえないとする。このような理解の前提として、xxは、平成26年最判 において個別具体的な事情まで判断対象となっていると捉えていると推察さ れる。だが、本稿は、本文で検討した通り、すべての事情が消費者契約法10 条の条項無効において検討されていないと解している。また、xx・同上は、
「xx『本件判批』が引用する最判平成23年7月12日判時2128号のxxxx裁判官補足意見(中略)は二段構えの判断枠組みを述べるものではない」とするが、本文の通り、xx補足意見は、個別具体的な事情を消費者契約法10
このような判例の消費者契約法10条の判断枠組みから、本稿にとって重要であるのは、第一段階である消費者契約法10条による条項無効のほかに第二段階の個別の条項援用のxxx違反または権利濫用という法律構成で条項の効力を否定する場面があるということである30)。これは、任意規定に違反する約款の効力を否定する場面は、消費者契約法10条の適用の有無に限られないということを意味する。任意規定が規律付け機能を果たすのは、消費者契約法10条というxxがあるということのみによってなされているわけではない。これは、裁判官が、消費者契約法10条によらずとも、任意規定を規範評価の淵源としていることを意味する。
(2) 補論:消費者契約法10条の条項無効の判断対象の範囲
本稿の問題関心からすれば、前述のように消費者契約法10条の適用の場面以外に、任意規定が機能していることを示せば足りるはずである。だが、二段構えで理解するとなると、いかなる事項が消費者契約法10条の条項無効の判断材料となり、いかなる事項が具体的な場面における条項援用のxxx違反・権利濫用の判断材料となるのかという問題が残る。そこで、本稿の問題意識からは外れるが、この点につい
条の条項無効の考慮対象から外しており、具体的事案における個別具体的な事情も含めて判断するというxxの消費者契約法10条の判断枠組みとは異なる。そしてこのようなxxの理解は、仮に第一段階の判断対象が限定されているならば、むしろ、外された事情を考慮する第二段階の必要性を示唆しているというべきであろう。
30)ほかにも下級審裁判例ながら、生命保険契約の無催告失効条項の有効性が問題となった東京地判平成23・6・30事例研264号1頁は、保険契約者が株式会社〔事業者〕であることを理由に消費者契約法10条の適用を否定しながら、約款の有効性についてxxxに反して無効となる場合があり得るとし、民法の解除規定の催告と保険者による電話での催告・警告および通知とを比較して、有効性を肯定している。この判決からも消費者契約法が適用されなくとも、任意規定が正当性の評価基準となっていることがうかがえる。
ても補論として検討する31)。
消費者契約法10条適用の際の判断事情の範囲として、2つの観点から整理がなされている。まず、①契約締結時を基準時にし、契約締結前の事情のみを考慮するという枠組みである32)。この整理は、前述の最判平成23・7・15の提示した一般論と整合的である。また、前述の最判平成23・7・12におけるxx補足意見が消費者契約法10条の判断対象から除外した事実は、契約締結当時の想定よりも短期間で契約を終了したという事実であり、契約締結後の事情であることから説明も可能である。
他方で、xx補足意見が述べるように、②事情の個別具体性で判断対象を限定する整理もある。消費者契約法10条について判断した下級審裁判例に対しても、当該当事者の個別具体的な事情を検討せず、一般的事情のみを検討しているとの評価もなされている33)。
いずれの整理であっても判例法理は説明可能であるが、(a)契約法ないし契約責任に関する理論的な整理と(b)適格消費者団体による条項差止(消費者契約法12III、IV)の観点から、本稿では、②事情の個別具体性の観点の整理を支持したい34)。
31)詳細はxx・前掲注(22)文献1739頁以下参照。
32)xxxx『消費者契約法』(有斐閣、2001)150頁以下。
33)神戸地判平成17・7・14判時1901号87頁(賃貸借契約上の敷引特約を消費者契約法10条に基づき無効とした事案)に対してxxxx「契約適合性判定権条項など4類型の契約条項について」消費者契約における不当条項研究会編・消費者契約における不当条項の横断的分析(別冊NBL128号)(商事法務、 2009)23頁。
34)その限りで、xx・前掲注(22)文献1721頁の結論を修正する。個別具体性 を判断基準とするものとしてxxxx=xxxx『保険法解説』(有斐閣、2010) 695-697頁〔xxx已〕参照。そのほか、契約締結時基準では説明がつかな いとするものとしてxxxx「判批」金法1950号(2012)36頁以下、41頁(た だし留保付)、xxxx「判批」判時2169号(2013)153頁以下、158頁〔判評 648号23頁以下、28頁〕、xxxx「判批」私法判例リマークス46号(2013)
108頁、xxxx「判批」保険事例研究会レポート267号(2013)17頁、xx
(a) 契約規範の考え方:契約締結時の合意への現実化か締結後のプロセスか
現在、国会で審議中の民法(債権法)改正法案をめぐる議論におい
て、契約を、契約締結時に契約規範がすべて確定していると捉えるか、それとも、契約締結時の合意が重要であるとしても、契約締結時以降の事情によって契約が変わり得るのか、という問題が指摘された35)。これは、xx的には、民法の瑕疵担保責任について論じられたものである。瑕疵担保責任を債務不履行責任(契約違反の責任)の一態様(契約不適合の責任。法案566)と整理したことに伴って、瑕疵担保責任の権利行使期間が通常の債務不履行責任と異なり、買主が瑕疵を知ったときから1年と短期になっている点(現行民法570・566III)が改正の議論の中で問題とされた。債務不履行責任の一態様であるならば、債務不履行責任の消滅時効(現行民法167条〔10年〕、法案166条〔権利行使可能時から10年、権利行使可能を知ったときから5年〕)と同じでよいはずであるという議論が出てきたのである。これに対して、現行民法の1年を支持する立場からは、瑕疵担保責任は、買主が「履行として認容」して受領したことによって、売主に債務の履行が完了したとの期待を生ぜしめたという点が根拠に挙げられている。この立場は、契約締結後の「受領」という行為によって、売主の契約責任の内容が変容することを認めているのである。
この対立で抽出された、契約規範はすべて契約締結時に現実化して
xx「判批」平成24年重判(2013)68頁、xx・前掲注(27)文献78頁。そのほかxxxx「『消費者契約法(仮称)』の一検討(6)」NBL657号42頁以下、57頁以下(1999)、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会編『コンメンタール消費者契約法〔第2版〕』(商事法務、2010)198頁も原則として契約締結時を基準とするが必要な場合には契約締結後の事情を考慮することも認められるとする。
35)xxxx「担保責任論の争点」東北ローレビュー1号(2014)67頁以下、
85頁以下。
いるという立場は①契約締結時を基準時とする見解と整合的である。だが、民法(債権法)改正法案566条は、現行法の1年の行使期間を維持した。また、債務不履行損害賠償の場面で民法416条における予見可能性について、契約締結時ではなく、債務不履行時までとする理解が通説判例と整理されていることも挙げられる36)。これらの事情から、
①契約締結時を基準時とし、契約規範は全て締結時に現実化しているという立場は採用されていないということになる。
(b) 適格消費者団体による条項差止
適格消費者団体による条項差止の対象は、消費者契約法12条3項・
4項によって「10条・・・に規定する消費者契約の条項」と定められている。これは、条項の有効性を二段構えで判断するという本稿の整理に従えば、第一段階の消費者契約法10条の条項無効とされる場合には差止の対象となるが、第二段階の条項援用のxxx違反・権利濫用とされる場合には、当該事案において条項の効力が否定されても、条項差止の対象にはならないことになる。すなわち、第一段階での考慮対象の範囲によって条項差止の結論が異なりうるのである。
無催告失効条項に関する平成24年最判を契機に適格消費者団体の条項差止を論じた論稿には、差止判決を契機として一般的実務対応を適切な範囲で条項面に反映するよう促すという条項差止請求制度に期待される機能の発揮を理由に、個別事案を超えた一般的実務対応についても顧慮できないと解釈することを提唱する学説がある37)。かかる見解は、無催告失効条項についていえば、条項外の一般的実務慣行であるところの支払督促通知実務が確立しているか否かは考慮せずに、
36)xxx『民法III〔第3版〕』(東京大学出版会、2005)161頁、xxxx『債権総論〔新版〕』(岩波書店、2011)169頁。
37)xxx「契約条項の内容規制における具体的審査・抽象的審査と事後的審査・事前的審査」xxxx先生還暦記念『民事法の現代的課題』(商事法務、 2012)23頁以下、53頁。
条項差止が認められることを示唆する。
このような見解は、平成24年最判の判断と矛盾するようにもみえる。だが、かかる学説は、平成24年最判を前提としており、消費者契約法 10条判断の考慮対象を①契約締結時とすれば説明が可能であると思わ れる。というのは、条項差止は、当該条項を含んだ「現に行い又は行 うおそれがある」契約を対象とするものであることから、条項差止訴 訟における契約締結時とは、過去における具体的な契約締結時ではな く、将来ということになる38)。そして、契約の条項に書かれていない 支払督促通知のような実務慣行が存在するとしても、将来にわたって 維持されることのコミットメントがないことを理由に、条項差止の場 面では判断対象から外されると理解することも可能であろう。
これに対して、②事情の具体性を考慮事項の範囲の基準とする場合は、事後的な紛争と事前の条項差止とで第一段階の消費者契約法10条判断の対象事情は変わらない。この考え方に従えば、二段構えで事後的な紛争で条項の効力を否定する場面と比較して、条項差止訴訟では第一段階のみであるため差止が認められる範囲は狭くなる。
前述の①契約締結時を基準時とし、条項差止を広く認める見解によれば、生命保険契約の無催告失効条項のように実務慣行と相まって消費者保護の観点から問題はない条項であっても、「問題となる可能性のある条項」である以上、一律に使用できなくなる。だが、問題がある場合はありうるとしても、多くの場合、適法な契約となるのであれば、一律に差止とする必要はないと思われる。他方で、条項差止を広く認める見解は、差止によって契約がなくなるのではなく、(擬制的な意味での)再交渉がなされ、契約内容を改定して新たな条件で契約がなさ
38)他方で、契約締結時が将来にわたることから、条項差止請求事件では、訴訟継続中に証明できるすべての事情が消費者契約法10条判断の考慮事由となりうるという側面もある。
れることを期待するという考え方39)に基づくものであろう。しかし、個別の契約紛争において無効と扱われた場合であっても、保険会社は契約条項をみなおすはずであり、適格消費者団体の差止訴訟のみに期待する理由は乏しいと思われる。
4.保険者側に有利に働く任意規定:免責事由を例に
(1) 裁判例における任意規定の活用例
前項では、任意規定が裁判官の正当性判断の淵源となるのは、消費者契約法10条の適用の有無に限られないということを示した。だが、前項で紹介したのは、消費者契約法10条と並んで、任意規定が消費者保護のために資する場面であり、既に民法学によって指摘されていた現象である。これに対して、任意規定が裁判官にとって正当性の淵源であるとするならば、事業者である保険者にとって有利な場面でも機能するはずである。
ここでは、任意規定と異なる約款として、免責事由を素材にする。中でも、自殺免責条項は、約款では、責任開始期から3年ないし2年以内の自殺を免責事由としているのが通常であるのに対して、任意規定である保険法51条1号は、自殺は時期を問わずに生命保険契約の免責事由と定めている(改正前商法680条1項1号も同じ)。
かかる約款による自殺免責条項については、保険法制定前の最判平成16・3・25民集58巻3号753頁において有効と判断され、この判例は
39)差止というproperty ruleによって再交渉を期待するというのは、法と経済学において基本的な考え方とされている。See, Xxxxx Xxxxxxxxx & A. Xxxxxxx Xxxxxxx, Property Rules, Liability Rules, and Inalienability: One View of the Cathedral, 85 HARV. L. REV. 1089 (1972); Xxxxxx Xxxx Xxxxxxx, Property Rights and Liability Rules: The Ex Ante View of the Cathedral, 100 MICH L. REV. 601 (2001).
保険法の下でも維持されていると考えられている40)。だが、平成16年最判以前には、約定の自殺免責期間経過後であっても、保険金受取人に保険金を取得させることが被保険者の自殺の唯一または主要な目的である場合には、約款の適用は排除され、任意規定通りに自殺として免責されるという裁判例がいくつか出されていた41)。
岡山地判平成11・1・27金法1554号90頁は、約款の免責条項に加えて、任意規定である当時の商法680条1項1号の趣旨から、保険金取得を唯一または主要な目的とする自殺の場合であり、かつ、自殺の具体的態様が公序良俗に反するか契約者間のxxを著しく失する場合には約款の免責条項の適用が排除されるとした。xx地判平成11・2・9判時1681号152頁は、「本来、商法の規定の適用を排除する約款の解釈は厳格になされるべき」として、自殺が保険金取得をその唯一または主要な目的としたものであり、かつ、自殺免責期間の経過と保険事故の発生日時に有意的な相関関係がある場合には、任意規定が適用されるとした。平成16年最判の原審である東京高判平成13・1・31民集58巻3号810頁は、商法の規定と約款の規定の趣旨から、保険者において、自殺が専らまたは主として保険金の取得を目的としてされたものであることの立証がなされた場合には、「商法680条1項1号の原則に基づ
40)xxx「法定免責事由」xxxx=xxxx編著『保険法の論点と展望』
(商事法務、2009)226頁以下、245頁、xx=xx編・前掲注(34)文献433頁
〔xxx〕。xxxx「生命保険契約における保険者の免責事由」xxxx先 生喜寿『保険法改正の論点』(法律文化社、2009)337頁以下、353頁は、保険 法によって法定免責事由が任意規定であることが明らかになったこと等から、平成16年最判が約款の免責期間経過後の自殺であっても保険金支払いが免除 されうる場合として判示した犯罪行為等が介在し公序良俗に反するなどの
「特段の事情」を、より制限的に解釈すべきであるとする。約款の有効性をより強く支持する見解と整理できる。
41)岡山地判平成11・1・27金法1554号90頁、xx地判平成11・2・9判時1681号152頁、東京高判平成13・1・31xx集54巻1号1頁(平成16年最判の原審)など。
き」保険金支払義務を負うとした。
これらの下級審裁判例はどれも当時の商法680条1項1号(保険法 51条1号に相当)を少なからぬ根拠として約款の条項の適用を否定している。自殺免責を拡張するのは保険者にとって有利であるところ、そのような場面においても任意規定が用いられたのである。これは、事業者である保険者に有利に任意規定が裁判官によって活用された例といえる。
他方で、前述の通り、これらの下級審裁判例の理解は、平成16年最判によって否定された。しかし、平成16年最判以降においても、自殺免責条項の解釈において任意規定を根拠とした裁判例がある。それが、無催告失効条項に基づき失効した保険契約を、復活手続を用いて復活した事案において、復活時から2年内の自殺免責約款の適用を認めた東京高判平成24・7・11金判1399号8頁がある。
失効後の復活とは、完全に新たな保険契約を締結するのではなく、あくまで従前の契約失効前の状態を回復させることを内容とする特殊な契約と理解するのが通説である42)。従前の契約の効力がそのまま継続するという点を強調すれば、復活時に免責期間が再度開始するという条項を不当条項と評価することも可能である43)。しかし、東京高裁は、平成16年最判の引用に加え、「被保険者の自殺は、旧商法680条1項1号(保険法51条1号)が、生命保険契約における一般的な免責事由として定めるものであって、保険契約の期間のうち契約当初の一定期間に固有のものではない」とし、「旧商法680条1項1号(保険法51条1号)の・・・趣旨にかんがみれば・・・復活の場合に自殺免責期間を再開させることに理論的整合性がないとはいえない」と判示した。ここでは、保険法51条1号という任意規定の存在が、約款条項の合理
42)復活の法的性質については本稿注(26)参照。
43)xxxx「生命保険契約の復活と自殺免責条項」保険学雑誌630号(2015)
249頁以下、268頁。
性を支える方向に機能している44)。
(2) 評価:過渡的な解釈手法としての任意規定
以上のように、下級審裁判例では、自殺免責条項の解釈において、任意規定を保険者に有利な方向にも正当性の淵源として機能していることがうかがえる。他方で、自殺免責期間中の保険金取得目的の自殺を免責とする解釈は既に最高裁によって否定されているのも事実である。
平成16年最判は約款による自殺免責条項の趣旨について、「生命保険契約締結の動機が被保険者の自殺による保険金の取得にあったとしても、その動機を、一定の期間を超えて、長期にわたって持続することは一般的には困難であり、一定の期間経過後の自殺については、当初の契約締結時の動機との関係は希薄であるのが通常であること、また、自殺の真の動機、原因がなんであったかを事後において解明することは極めて困難であることなどから、一定の期間内の被保険者の自殺による死亡の場合に限って、その動機、目的が保険金の取得にあるか否かにかかわりなく、一律に保険者を免責することとし、これによって生命保険契約が上記のような不当な目的に利用されることを防止することが可能であるとの考えにより定められたものと解される」としている。この判示からは、自殺免責約款の趣旨として、「契約締結時の動機」が自殺による保険金取得である者を保険責任から排除するという点に着目していることがわかる。
これに対して、任意規定の無期限の自殺免責規定(改正前商法680条1項1号、保険法51条1号)の趣旨については、「被保険者が自殺をすることにより故意に保険事故(被保険者の死亡)を発生させることは、生命保険契約上要請されるxxxxの原則に反するものであり、
44)xx・前掲注(29)文献23頁。
また、そのような場合に保険金が支払われるとすれば、生命保険契約が不当な目的に利用される可能性が生ずるから、これを防止する必要があること等によるものと解される」と判示している。ここでは、保険契約締結時ではなく、自殺行為を行った時点での動機を問題にしているのである45)。
この両者は経済学的にも異なるものである。「契約締結時の動機」は、保険契約者と保険者との間に保険事故の危険性について情報の偏在がある場合に、保険事故の危険が高い保険契約者が市場に残っていくという逆選択46)の問題である。これに対して、「自殺時の動機」は、故意の事故招致の問題であり、保険契約締結後の責任期間中に保険金を理由に保険事故発生確率が上昇するというモラル・ハザード47)の問題である。そして、この両者は異なる48)。
45)xxx「故殺・自殺・保険事故招致免責の法的根拠」xxxxx先生還暦記念『企業法の理論・下巻』(商事法務、2007)309頁以下、355-356頁は、自殺免責の根拠を、被保険者の関与の態様次第でxxx違反ないし弱い公序としての権利濫用、保険契約の不当な目的への利用の防止を挙げるが、本稿の分析によれば、約款による有期の自殺免責と任意規定による無期限の自殺免責とでは、xxx違反という一般条項を満たしている内実、または「不当な目的」の内容が異なり、区分が必要であるということになる。
46)xx=xx編・前掲注(34)文献249頁〔xxx・xxxx〕。
47)xx=xx編・前掲注(34)文献390頁〔xxx・xxxx〕。同書393頁の整理によれば、自殺時の動機ないし故意の事故招致は、保険事故発生以前の保険契約者がとった行動によって、期待損失額の大きさが保険契約締結時に想定したものよりも大きくなることであることから、事前的モラル・ハザードに分類される。
48)xxxx「保険における逆選択と法学」損害保険研究71巻2号(2009)103頁以下、121頁は逆選択とモラル・ハザードを区別して分析する必要性を指摘する。xx=xx編・前掲注(34)文献によれば、逆選択への対応としては告知義務(同書263頁以下)、(事前的)モラル・ハザードの対応としては故意または重過失による事故招致など免責事由をあげている(同書414頁)。本稿の分析によれば、約款による自殺免責条項は免責事由でありながら、モラル・ハザードではなく逆選択への対応と整理することになる。
この点を踏まえて、自殺免責期間経過後に自殺免責を認めた下級審裁判例を見返してみる。前掲岡山地判平成11・1・27は、「少なくとも自殺の時点では保険ないし共済契約の存在が直接的誘引となったことは明らか」としており、自殺時の動機を問題にしている。
前掲xx地判平成11・2・9も、自殺免責条項規定の趣旨は、改正前商法680条1項1号(保険法51条1号)「を受けつつ、個々の場合における自殺の目的を究明することが困難であることに鑑み、右法の趣旨を没却せしめない限りにおいて、被保険者が保険契約締結後一年以上経過して自殺した場合には、保険金取得をその唯一又は主要な目的としたものではなく、かえって、これが、何ら保険契約締結の事実とは無関係な事態であると推定されることを前提とした規定と解する」としており、自殺時の動機を問題としている。
前掲東京高判平成13・1・31も、免責期間を1年とする自殺免責条項の趣旨を「生命保険契約の締結ないし責任開始の日から1年を経過した後の自殺の場合には、保険金取得目的に出たものは一般的に少なく、通常、それは、生命保険契約とは無関係な動機・目的による自殺であり、専ら又は主として保険金の取得を目的としたものとはいえないものと推定される」としており、やはり自殺時の動機を問題にしている。
このようにこれらの下級審の前提には、逆選択への対応であるはずの自殺免責条項の趣旨を任意規定の自殺免責の趣旨であるモラル・ハザードに引き付けた理解がうかがえる49)。これに対して、平成16年最
49)ただし、紹介した3判決のうち、前掲岡山地判平成11・1・27は、裁判所に認定されていないものの、保険者側の主張において、被保険者の月収が20万円程度であったのに、月々の保険料が30万円であったことから、契約締結時から自殺による保険金取得の目的であったと推察される。もちろん、契約締結時に自殺による保険金取得の目的であっても、立証の困難性等を理由に免責期間経過後は争いえないという不可争約款であることが免責期間の趣旨であるという平成16年最判の考え方は両立し得る。
高裁は、期限のある約款の自殺免責条項と、無期限の法定の自殺免責規定とを、逆選択とモラル・ハザードという点で趣旨が異なるものとして位置づけたのである50)。
このように考えると、近時の前掲東京高判平成24・7・11が復活後の自殺免責期間の再開を認める判断をする際に、保険法51条1号を根拠として挙げた立論にも疑問が生じる。復活においても、例えば、一旦生命保険契約を失効させたところ、被保険者の自殺願望が強くなった途端に保険契約者が復活の請求をしてくるような逆選択となるケー
これに対して、前掲xx地判平成11・2・9は、被保険者Aは保険契約者兼保険金受取人であるⅩ社の取締役であるが、Ⅹ社は指定暴力団が支配しており、Aは当該暴力団の組長の愛人でありⅩ社において何ら役割を果たしていないという事案であった。暴力団組長が多額の借金をしており、「保険金が下りたら支払うと約束している」との発言もあったが、借金の時期と契約締結時の前後関係が認定されておらず、契約締結時から動機があったとは言い切れない事案であった。だが、事案として、暴力団が絡む事件で、Aは、暴力団組長ないし関係者に「債務の弁済のために自殺を教唆ないし強要した事実が推認」されていることから非常に悪性が高い。平成16年最判の枠組みに従っても、「犯罪行為等が介在し、当該自殺による死亡保険金の支払を認めることが公序良俗に違反するおそれがあるなどの特段の事情がある場合」に該当し、免責されたものと解される。
このことから、xxxx「商法680条1項1号と自殺免責条項」『生命保険契約法の基礎理論』(有斐閣、2007)35頁以下、59頁は、2つの裁判例の法律構成は問題があるとしながらも、危険の著増による失効、特別解約権に基づく解約、公序良俗違反による無効、保険金受取人の故殺による免責など他の理論構成によって両判決と同一の結論を導くことができたとする。そこで掲げられている代替的な解決策から判断するに、問題となっている自殺が、逆選択ではなく、モラル・ハザードの問題であることを捉えた指摘であると解される。
50)この場合、任意規定であるところの自殺免責規定の趣旨であるモラル・ハザードの防止を無視する約款条項がなぜ認められるのかが問題となりうる。この点は、生命保険契約の遺族等受取人の生活保護機能のほか、他の対応手段があることや自殺は犯罪でないので公益性が弱い(榊・前掲注(45)文献352、 354、356頁)という点が挙げられよう。
スはあり得る51)。だが、復活時点での自殺に関する逆選択事例は、当初契約時点での逆選択のおそれに比べ、頻度が相当少ないのではないかという懸念から、保険法の任意規定を補強証拠として掲げたと指摘されている52)。
しかし、これでは、江戸の敵を長崎で討つ論理ではないのか。相対的に小さいにしても、逆選択のおそれから自殺免責期間の再開を根拠づけるのが本来あるべき論理のように思われる53)。
これらの自殺免責の事例からは、裁判所による任意規定の活用は、問題の本質についてじっくりとした検討がなされるまでの過渡的な論理として用いられているということが示唆される。思えば、任意規定を消費者保護の場面で正当性の淵源として活用した下級審裁判例の嚆矢である盛岡地判昭和45・2・13xx集12巻1・2号314頁は、目的物の譲渡の場合には著しい危険の変更・増加がある場合に限って保険契約を失効すると定める改正前商法650条2項を基準としたものの、当該規定は、それ自体に合理性がないとして54)保険法で削除されたものである55)。そして、保険法以前も、盛岡地判昭和45・2・13で問題となった目的物の譲渡に承認裏書請求を要求する条項について、盛岡地判とは異なり、有効と解する裁判例が多数派であった56)。このようにみると、任意規定を正当性の淵源と裁判官がしていることは理解できるが、他方で、その内容が、社会にとって合理的であるとは限らないのである57)。とxxと、任意規定を正当性の淵源にして判断するという
51)xx・前掲注(43)文献268頁。
52)xx・前掲注(29)文献23頁。
53)xxx「判批」保険事例研究会レポート287号(2015)5頁以下、9頁。
54)xxxx『保険法』(有斐閣、2005)124頁注70。
55)xx・前掲注(1)文献150頁。
56)大阪高判昭和62・10・30判時1278号139頁、神戸地判平成2・5・25判時1379号123頁、東京地判平成4・9・24判時1440号104頁。
57)xx・前掲注(21)文献85頁、xxxx「任意規定をめぐる自律と秩序(二・
手法は、統一的な判断がなされるまでの間、眼前の事案を解決しなくてはならない裁判官にとって過渡的な手法と位置付けられる。
5.おわりに
本研究は、保険契約において任意規定の存在が解釈にどのような影 響を与えるのかを用いて分析したものである。そして、任意規定には 消費者保護のために内容規制として機能する場合のみならず、保険者 の利益保護の場合や、復活後の自殺免責条項のように場合によっては 約款条項の合理性を支える場合もあることを指摘した。このことは、 任意規定が裁判官にとって正当性の淵源となっていることを意味する。
このような理解は、任意規定の立法における留意事項を1つ追加する。任意規定の内容を、多数派ルールに従い、多くの約款条項の規律通りにすると、それが評価基準になってしまうため、新たな保険商品の設計の際に裁判官にも理解できるような合理的理由が求められる。裁判官に理解できるような合理的な理由がない限り、新たな保険商品の設計が阻害されかねないのである。この懸念は、消費者契約法10条の存在を考えると、任意規定より契約者に不利と形式上判断される条項を含む保険商品の設計には特に強く妥当する。そこで、任意規定の立法の際には、将来の約款条項の内容変更の可能性まで考えるべきである。例えば、保険法制定の際に、法定の自殺免責について、通常使用されている約款と同様、無期限ではなく免責期間を定める方式に変更すべきではないのかという意見があった58)。だが、例えば、自殺免
完)」民商法雑誌148巻2号(2013)117頁以下、131頁は、xxxx(Xxxxxx Xxxxxx)の見解の紹介として、任意法規を契約自由の限界に関する基準として挙げる前提として、評価基準樽秩序内容の認識は「直観」や「感情」に委ねられているとする。
58)「『保険法の見直しに関するxxxx』についての意見募集結果の概要」萩
責期間を3年と任意規定で定めてしまえば、今後、仮に保険金取得目的の自殺の事例が増加し、免責期間を延長することとした場合や、そもそも免責期間を設けずに現在の任意規定通りに自殺を免責とする場合には、消費者契約法10条によって有効性を審査されることになる59)。この意味で、保険法が免責期間を定めない自殺免責規定を維持したのは、合理的な判断といえよう60)。
他方で、実際に任意規定を評価基準に用いた裁判例の中には、自殺免責条項のように争点の本質をとらえていない場合や、かつての保険目的物の譲渡の規定のように合理的でない場合もあった。だが、これは必ずしも任意規定を正当性の根拠とすることが望ましくないことを意味しない。
任意規定を正当性の評価基準とするという手法は、包摂技術61)、性質決定62)ないし法的カテゴリの尊重63)というある種の法律家共同体の中に閉じた論理であり、社会的な意味での合理性を全く提供していないようにみえる64)。だが、時間も資源も有限な裁判所において、xx
xx編著『保険法立案関係資料』(商事法務、2008)、157頁以下、169頁。 59)xx・前掲注(40)文献355頁注5は、「当事者の特約による一定の期間」の免
責という形の任意規定を「一案」として提案する。この案では、免責期間を延長する場合には、消費者契約法の適用はないが、任意規定のように無期限免責とする場合には、消費者契約法10条の審査を受けることになろう。
60)結論同旨、xx・前掲注(29)文献20頁。
61)xxxx「包摂技術とコミュニケーション」『現代法の透視図』(東京大学出版会、1996)101頁以下、102頁以下、xxxx『〈法〉の歴史』(東京大学出版会、1997)157頁以下、xxxx「転換期の法思考」『システムと自己観察―フィクションとしての〈法〉』(東京大学出版会、2000)7頁以下、9頁参照。
62)xx・前掲注(14)文献202、212頁。
63)xxxx「法的カテゴリの機能」『民法学の行方』(商事法務、2008)第3章。
64)法律論が法的理由以外の諸理由を求めることの限界についてxxxx「トートロジーとしての法(学)?」新世代法政策学研究3号(2009)191頁以下、 200―201頁、xxx「制度とその規範的正当化―帰結主義とその社会規範の関
ての紛争について本質的な解釈論(社会的に合理的な結論)を提示するのは、現実には不可能である。それでも、眼前の紛争解決をしなくてはならない裁判所とすれば65)、過渡的な段階では、このような論理を用いることが、当事者に(かりそめであっても)一応の説得力を提供し、(それなりの)納得を得る方法として合理的なのではなかろうか66)。このような法律家の閉じた論理が存在するということによって、xx的に望ましい解答を見いだせない紛争においても当事者からそれなりの納得を得る解決が可能となることは、近時、経済発展において重要性が指摘されている包括的( 包摂的) な制度( inclusive institutions)67)の1つとして機能しているのではなかろうか。
ただし、本稿で扱ったのはわずか無催告失効条項と自殺免責条項の
2例のみである。保険契約法における任意規定と異なる約款条項には、他の免責条項をはじめ様々なものがある。より多くの条項を分析しないと一般的な傾向はみえてこないが、これは今後の課題としたい。
係を巡って」新世代法政策学研究8号(2010)283頁以下、305頁参照。
65)xxxx「民法の解釈」xxxx編集代表『民法講座別巻1』(有斐閣、1990)
1頁以下、91頁、xxxx「法的思考・実践的推論と不法行為『訴訟』」同『民法解釈と揺れ動く所有論』(有斐閣、2000)197頁以下、202頁、xxxx「現代思想から見た民法解釈方法論」同書165頁以下、187頁。この意味で、xx・前掲注(21)文献85頁の任意法規を参照店とする判断によって規制担当者や法学者が満足してしまう恐れの指摘は重要である。このような法律家独自の閉じた論理の解決は実質論ができない場合に限定される。実質論が可能な領域では実質論よりも優先されるべきものではない。
66)xxx「民商の壁」新世代法政策学研究2号(2009)233頁以下、264-265頁。
67)Daron Acemoglu & Xxxxx X. Xxxxxxxx, Why Nations Fail, 2012.
※ 本稿は、平成27年度生命保険に関する研究助成(公益財団法人生命保険文化センター)「生命保険契約における任意法規の意義:消費者契約法10条と無催告失効条項・復活条項」(研究代表者:xxx)の成果である。また、本稿は、2016年12月17日に行った保険学セミナー(東京)での報告をもとにしている。同報告の司会の労をとっていただいたxxxx教授、討論者を務めていただいたxxxx教授のほか、貴重なコメントをくださったxxxx教授、xxxx教授、xxx准教授に深く感謝申し上げる。
※ 校正時にxxx「保険法における任意規定と強行規定」xxxxx先生古稀記念『企業法の進路』(有斐閣、2017)607-648頁に接した。