Contract
2. AIを利用した製品・サービスにおける契約関係 契約関係の概要
農業分野におけるAIを利用した製品・サービスについて、契約場面と契約当事者ごとに発生する契約について整理したものを表 5 に示す。
農業関係者等の観点から見ると、契約の当事者となるのはAIの研究開発を行う主体であるAI研究開発委託者、またはAI研究開発者との関係でのみである。第三者提供などについては、農業関係者等が提供したデータやノウハウ等が提供の対象となるものの、直接契約の当事者とはならないことから、農業関係者等に不測の損害が発生することが懸念される。
表 5 各場面において生じる契約
契約場面 | ||||
研究開発に関連する 契約関係 | 製品・サービス利用に関 連する契約関係 | 第三者提供 | ||
契約当事者 | 農業関係者等-A I研究開発委託者 | ・データ等提供契約 (AI研究開発委託者がデータ収集等を行う場合) | ・サービス利用契約(A I研究開発委託者が、製品・サービス提供を行う 場合) | - |
農業関係者等- AI研究開発者 | ・データ等提供契約 (AI研究開発者がデータ収集等を行う場合) | - | - | |
AI研究開発委託者-第三者 | - | - | ・データ等提供契約(研究開発委託者にデータ・成果物に関する処 分権限がある場合) | |
AI研究開発者- 第三者 | - | - | ・データ等提供契約 (研究開発者にデータ・成果物に関する処分権限がある場合) | |
AI研究開発委託者-AI研究開発 者 | ・研究開発(再)委託契約 | ・製品・サービス提供協力契約 | - |
黄色部分:農業関係者等が直接、契約に関係する部分
緑色部分:農業関係は直接、契約しないものの、農業関係者等のノウハウ等の処分に関する部分
青色部分:AIを利用した製品・サービス研究開発の委託関係に関する部分(原則として経済産業省ガイドラインが適用)
各契約関係と参照すべき契約ガイドラインの関係
(1)でみた農業分野におけるAIを利用した製品・サービスに関する各当事者で発生する契約に関し、各契約関係の内容を決める際に参照すべきガイドラインについて、図 14 に示す。
農業関係者等がデータやノウハウの提供を行う際の契約については、基本的には本ガイドライン(データ利活用編)に示す内容が妥当するが、AIの研究開発という特殊性に基づき、一部変更すべき内容が発生する。また農業関係者等がサービスを利用する際の契約については、経済産業省ガイドラインにて示されている利用場面での留意点の内容が基本的に該当する。
AI研究開発に係る契約関係については、経済産業省ガイドラインの内容が、基本的には適用可能である。ただし農業関係者等によるデータ等の提供という点の考慮 や、研究開発委託者が国や地方公共団体になった場合の特殊性について考慮した内容を反映することが求められる。
第三者提供に関しては、本ガイドライン(データ利活用編)の内容が該当する。この場合、農業関係者等が提供するデータやノウハウ等が対象となることから、農業関係者等の利益保護の観点からの考慮が求められる。
図 14 各契約関係と参照すべき契約ガイドラインの関係
3. AIを利用した製品・サービスの研究開発場面での契約の当事者に関する留意点
研究開発当事者間の契約における類型
農業分野におけるAIを利用した製品・サービスの研究開発の特徴として、前述の通りAI研究開発委託者が、現状では民間事業者であることよりも、国や地方公共団体、受託契約管理団体、農業関係者等などが主体となることが多い。またAI研究開発者も民間事業者だけではなく研究試験機関などが担うことも多くみられる。
特に研究開発委託者の類型が異なることで、研究開発の成果の利用目的や範囲についての配慮が求められ、その内容を契約内容に反映させる必要が生じる。そこで、A I研究開発委託者の類型とそれに応じた考慮要素を表 6 に示す。具体的な契約条項の検討に当たっては、この内容を加味して対応することが求められる。
表 6 AI研究開発委託者の類型と考慮要素
研究開発 委託者 | 類型の特徴 | 類型における特徴・考慮要素 | 研究開発者(研究開 発の受託者) |
国 | 国が、農業支援等の目的により、AI製品・サービスの研究開発委託を行う | ・農業支援等の産業振興目的の施策に基づいて、成果物の権利関係や利用関係に関する制限等を定めることがある。 ・国際競争力の強化を実現する観点から、成果物等の利用先の制限や、ノウハウの特定地域外への流出防止に資する対応を行うことがある。 ・国の資金を投入する関係で日本版バイ・ドール法への対応などが生じることがある。 ・公的機関等が受託管理機関として位置づけら れ、内部的な契約内容を管理することがある | ・受託契約管理団体 ・製品・サービス提供者 ・AI研究開発者 |
地方公共団体等 | 地方公共団体等が、地域農業支援等の目的により、AI製品・サービスの研究開発委託を行う | ・地域の産業振興等の施策目的や、地域における農業技術の継承などの目的に基づいた成果物の権利関係や利用関係に関する制限等を定めることがある。 ・地域間競争力の強化を実現する観点から、地域外への成果物等の利用先の制限や、ノウハウの地域外への流出防止に資する対応を行うことがある。 ・農業普及指導員が有する地域における農業生産のノウハウの活用促進を図る目的で、研究開 発の委託がなされることがある。 | ・受託契約管理団体 ・製品・サービス提供者 ・AI研究開発者 |
研究開発 委託者 | 類型の特徴 | 類型における特徴・考慮要素 | 研究開発者(研究開 発の受託者) |
・公的機関等が受託管理機関として位置づけら れ、内部的な契約内容を管理することがある | |||
農業関係者 | 農業関係者が、自らの利用目的等のために AI製品・サービスの研究開発委託を行う | ・委託者・受託者の関係は基本的には経済産業省ガイドラインを踏襲 ・農業関係者等に権限や権利がある場合、成果物の権利関係や利用関係が農業関係者等の内部関係に基づき決定される(本ガイドライン(データ利活用編)を踏襲) ・委託者が法人格を有しない場合の考慮が必要 | ・製品・サービス提供者 ・AI研究開発者 |
企業等 | 一般企業・団体が、農業分野でのサービス提供目的でAI製品・サービスの研究開発 委託を行う | ・委託者・受託者の関係及び研究開発の受託者の内部関係は基本的には経済産業省ガイドラインを踏襲 | ・製品・サービス提供者 ・AI研究開発者 |
なし | AI製品・サービス提供者が自ら、AI製品・サービスの研究開 発を行う | ・委託者・受託者の関係は基本的には経済産業省ガイドラインを踏襲 | ・AI研究開発者 |
【ポイント 13】営業秘密と限定提供データ
データについては、一般的には「データ・オーナシップ」という言葉や、「データの所有権」という表現がなされるが、法律上は「所有権」の対象とはならない。所有権は、民法では対象を所有
「物」としており(民法第 206 条)、「物」とは、有体物(物理的に存在するもの)とされている
(民法第 85 条)。そのため、物理的な形を有しない知的財産については、別途法律の定めがある場合(例えば、著作xxや特許法、種苗法等)以外には、所有権同様の保護を受けることができない。
データについては、著作xxで著作物の対象となることがあるものの、一般的には著作権の要件である「創作性」が認められないため、著作xxで保護されないことが多い。
そのため、データそれ自体は、一旦流出してしまうと、法律上の保護が受けられないことになる。このことはノウハウについても同様である。
他方、データやノウハウの生成や蓄積には、資本を投下し、あるいはxxの経験の蓄積や工夫で培われたものがあり、このようなものについて、一定の条件の下で保護することが、求められる。
このようなデータやノウハウは「不正競争防止法14」で保護される。不正競争防止法では、一定のデータやノウハウについて、法律が認める管理方法で管理している場合に、第三者が管理者の意図しない形で利用した際には、「営業秘密」や「限定提供データ」として、損害賠償を認めたり、利用の差し止めを行ったりすることを認めている。
「営業秘密」については、「有用性」(事業等にとって有用であると客観的に認められること)、
「非公知性」(管理しているもの以外には、一般に入手できないこと)、「秘密管理性」(秘密として管理し、これに必要な措置が施されていること)などを要件に認められる。
「限定提供データ」は、秘密としては管理されておらず、他の者と一定の条件の下で利用ができるものの、それ以外の第三者には利用を認めていないようなケースを想定した制度である。第三者が不正に限定提供データを入手して利用する際には、差止請求などがなされる。限定提供データについては、電磁的な方法で相当量に蓄積されたデータについて、管理されている技術上・営業上の情報とされている。
このように営業秘密や限定提供データ15は、データやノウハウを生み出し、管理する者の利益を保護するために重要な制度として位置づけられている。
AI研究開発委託者の類型に応じた委託契約関係の留意点
AI研究開発委託者が国・地方公共団体等の場合の委託契約関係の留意点
国・地方公共団体等がAIの研究開発委託者となる場合の関係を図 15 に示す。
14 xxx年法律第四十七号
15 営業秘密、限定提供データについてはそれぞれ、「営業秘密管理指針」
(xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxxx/xxxxxx/xxxxxxx/xxxxxxxxx/x00xx.xxx)、限定提供データに関する指針」
(xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxxx/xxxxxx/xxxxxxx/xxxxxxxxx/x00xx.xxx)(いずれも経済産業省、平成 31 年 1
月 23 日)が示されている。
図 15 研究開発委託者が国・地方公共団体等の場合の当事者関係と留意点
施策目的に基づく制限等に関する反映
国や地方公共団体がAIの研究開発委託者となる場合、公的資金を投入してAIの研究開発を行うことから、資金投入の施策目的に応じた制限が生じうる。
例えば国が行うAIの研究開発による施策目的として、我が国の農業の国際競争力の強化が含まれる場合には、研究開発委託契約においても、その内容が考慮される必要がある。例えば
・AIにおいては、我が国の農業関係者等のノウハウや暗黙知が反映されうることから、これを用いたサービス提供の範囲は、我が国の農業関係者等に限定される
・AIの研究開発に用いる学習用データセットについて、これが特定地域外に流出すると、特定地域外において我が国の農業関係者等のノウハウを反映した学習済みモデルの生成が可能となる等のリスクが生じうる。これを防止するため、AIの研究開発により生じた成果物等についての第三者提供の範囲を特定地域に限定する16
などが想定される。
地方公共団体による資金投入により、AIの研究開発が行われる場合で、当該地方公共団体における農業関係者等の地域間競争力の強化などが政策目的になっている場合には、同様に研究開発したAIを実装したサービスの提供範囲やAIの研究開発に
16 第三者の範囲の限定における特定地域の範囲については、政策目的などを勘案して必要性を踏まえて検討することになる。
用いた成果物の提供範囲を、当該地方公共団体における農業関係者等に限定するなどの対応が求められる1718。
手続等における対応
国や地方公共団体の資金により研究開発される場合、民間事業者間での契約とは異なり、一定の様式に基づいて契約を行うこと等が求められる。
また事業によっては公的機関等が受託契約管理団体として、委託先の選定や委託契約の締結を行うことも想定される。
このように、国や地方公共団体がAI研究開発委託者となる場合には、契約条件や委託費用の支払方法等などの手続に関する内容に関しては、委託者側で定める規程等を考慮に入れた契約内容とすることが求められる。
権利処理における対応
AIの研究開発の成果として、特許権などの知的財産権が生じた場合には、日本版バイ・ドール制度(産業技術力強化法第 17 条)への対応が求められる。この場合、成果物の帰属関係に関する条項において、必要な手続等に関する取決めを含めることが求められる。
研究開発委託者が農業関係者の場合における委託契約関係の留意点
農業関係者がAI研究開発委託者となる場合の関係を図 16 に示す。
図 16 研究開発委託者が農業関係者の場合の当事者関係と留意点
17 この場合、サービス提供範囲を限定することにより、AIの精度を向上させるためのデータ収集が限定されるおそれも生じる。従って具体的な利用範囲の設定に際しては、例えば地方公共団体の内外で利用料金などの条件に差を設ける、広域連携型のサービスを構築するなど、制限を設けることのメリットとデメリットの調整を行うことが求められる。
18 成果物の利用権限等を特定地域に限定することが、「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(xx取引委員会、最終改正平成 28 年 1 月 21 日)との関係で留意が求められることがある。従って制約を設ける場合にも同指針の趣旨を踏まえて、制限における正当な理由の検討と、制限対象、方法、期間等の適正な設定を行うことが望ましい。
データ・ノウハウ提供関係の整理
農業関係者がAI研究開発委託者である場合、例えば農業協同組合がAI研究開発委託者となり、そこに属する農業従事者がデータ等を提供する場合、研究開発委託者がデータ等を提供するのか、委託者とは別に農業従事者などの農業関係者等がデータ等を提供するのかなどについての整理を行うことが求められる。
例えば農業協同組合がデータ等を提供するという構成をとる場合には、基本的には経済産業省ガイドラインが想定する学習済みモデルと同様であることから、経済産業省ガイドラインにおける条項の適用が可能であると考えられる。そのうえで、本ガイドライン(ノウハウ活用編)で農業分野の特殊性に基づく変更点を考慮することになる。
他方、AI研究開発者が農業関係者等から別途データ等の提供を受けるという構成をとる場合には、データを提供する農業関係者等との間で、別途、データ・ノウハウ等の提供に係る契約を締結することが求められる。
AI研究開発委託者が法人格を有しない場合の考慮
AI研究開発委託者が生産部会や協議会などの法人格を有しない団体の場合(ポイント9参照)には、AIの研究開発によって得られた成果に対する利用権限と、利用権限の許諾を決定する権限について、明確にすることが求められる。基本的にはAI研究開発委託者の内部問題であるが、例えば成果物についてAI研究開発委託者とA I研究開発者の間で共有などの取決めを行う場合には、利用権限の処分権者の確認 や、提供されるデータ内容から見た処分者の妥当な者によって行われたかの確認など行うなど、混乱が生じないような対応を行うことが求められる。
研究開発委託者が企業等の場合における委託契約関係の留意点
研究開発委託者が企業等の場合における委託契約関係の概要
企業等がAI研究開発委託者となる場合の関係を図 17 に示す。
図 17 研究開発委託者が企業の場合の当事者関係と留意点
データ・ノウハウの提供を行う場合の、農業関係者等に対する考慮
AIの研究開発の委託を企業が行い、製品・サービス提供者等がこれを受託する場合には、委託契約関係の当事者に農業関係者等が登場しない。そのため委託契約関係の内部で取り決めた成果物に関する利用権限関係や帰属関係などについての内容によっては、データやノウハウを提供した農業関係者等の利益を損なう可能性がある19。
そこで、AIの研究開発に係る契約内容を決定する際には、農業関係者等からデータ、ノウハウ等の提供を受けるための契約内容との整合性を図ることが求められる。具体的には提供を受けたデータやノウハウの利用目的や、第三者提供の範囲、追加学習等の可否や、利用期間などについての整合性をとることが求められる。
研究開発委託者がなく、製品・サービス提供者が自ら研究開発の委託者となる場合における委託契約関係の留意点
製品・サービス提供者がAI研究開発委託者となる場合の関係を図 18 に示す。この場合の留意点は③と同様の内容になる。
図 18 研究開発委託者が製品・サービス提供者自身の場合の当事者関係と留意点
19 データなどは知的財産に当たらない場合がある。この場合、研究開発契約における第三者の知的財産の侵害とならないとされる。
4. AIを利用した製品・サービスに関して農業関係者等により提供されるデータ・ノウハウ等
農業関係者等におけるデータ・ノウハウの重要性 AIの研究開発に際しては、農業関係者等からデータとノウハウが提供される。データについては、AIの研究開発において基礎となるものである。機械学習で
は、様々なデータを帰納法的なアプローチで分析し、その成果として学習済みモデルが生成されることから、学習に際してより多くの、またより多様なデータを収集することが、精度の高いモデルを研究開発するために重要となる。
農業分野におけるAIの研究開発において求められるデータは、実際に生産を行う際に得られるデータや、農作物等から得られるデータが中心である。農業データの場合、農作物に関するデータには 1 年に 1 度しか得られないものもあり、またAIの研究開発を行う目的によっては、データを取得する地域や環境などが限定されることもある。そのため機械学習を行うのに十分なデータを得るのに、データの提供者、受領者双方において大きな負担を伴うことがある。
そこで農業分野のAIの研究開発においては、データと併せて、農業関係者等のノウハウを活用することにより、モデルの生成を効率的に行うことが期待できる。
AIの研究開発においてノウハウについては、以下の目的で利用される。
・熟練農業者における知見や経験をAIを利用して形式知の形にすることで、他人が利用できるようにする。
・AIの研究開発のうち、機械学習で求められる教師データなどにおいて、農業関係者等の知見等に関する情報を活用する。
農業関係者等における知見とノウハウ
農業関係者等が有する知見とノウハウの関係
農業関係者等のノウハウについては、その経験や創意工夫に基づいて得られるものがあるが、必ずしも可視化されておらず、さらには暗黙知のレベルにとどまっているものも多い。
図 19 は農業関係者等が有する知見や経験がAIを利用して形式知の形になるプロセスのイメージの一例を示したものである。
農業従事者には創意工夫に基づく知見や経験則から得られた知見などが蓄積されている。これらがAIの形になることで、その内容を具体的に表現され、誰でも理解できる形式知とすることができ、この段階でノウハウとしての保護の対象となりうる。他方、農業従事者が経験則上得られた知見の中には、本人も具体的にその内容が説明できないものの、経験則上有用と考えられる暗黙知がある。暗黙知は、そのままではノウハウとして保護することは難しい(保護の対象となる情報が特定できない)。この場合、例えば行動分析や生産プロセスの分析などを通じて、外部からも説明ができるように記述して、形式知とすることもできる。
AIの研究開発においては、このような形式知を活用して、研究開発の効率化を図ったり、形式知を再現するための学習済みモデル等20の生成などを行ったりすることになる。
他方、AIの研究開発においては、暗黙知を再現できるようにするための学習済みモデルの生成を行うこともある。例えば機械学習による場合、帰納法的なアプローチにより学習済みモデル生成を行うという点から見ると、数多くの熟練農業者の経験に関するデータを学習し、その特徴を抽出することにより、暗黙知がモデル上で再現できるようになる。この場合、学習済みモデル等には必ずしも形式知は含まれていないため、「ノウハウ」としての取扱いをxx的に決めることは困難なことがある。従って、予め両者の貢献度に応じた利用条件とすることについて、合意をしておく必要がある。
まず、ノウハウの保護という点から見ると農業関係者等の持つ知見が、そのまま形式知として表現される場合には、ノウハウに対する農業関係者等の貢献が大きい。暗黙知を分析して形式知とする場合には、暗黙知を有する農業関係者等の貢献だけではなく、形式知の形にするために対応した者による貢献も大きいといえる(農業関係者等自身が形式知の形にするケースや、研究者が形式知の形にするケースもある)21。
さらに暗黙知から直接学習済みモデル等の生成を行う場合には、暗黙知に関するデータ分析によるところが大きいため、AI研究開発者の貢献が大きいことが多い。
図 19 農業関係者等が有する知見等から学習済みモデル等を生成する流れのイメージ例
20 ここでは学習済みモデルのほか、統計分析等により得られた分析モデルも含む(【ポイント 1】参照)。
21 データ利活用編では「、当該熟練農業者の「暗黙知」を一定の「形式知」として誰でもが理解できる形に変換されたノウハウとして加工した場合には、熟練農業者と農業データITサービスベンダはいずれも新しく当該「形式知」を創出させた当事者である」とする。(P6)
農業関係者等が有するノウハウの種類
農業関係者等が有する知見については、①で見たように、形式知と暗黙知に分けることができる。ノウハウという点から見ると、形式知については、直接的にノウハウとして保護できるものであるが、暗黙知については、形式知の形にすることでノウハウとすることができるので、潜在的なノウハウとして位置づけることができる。
農業関係者等が有するノウハウの保護を考える際に、ノウハウの重要性などに応じた対応を行うことが求められる。AIの研究開発における一般的なノウハウの重要性については、前述のとおりであるが、実際の重要性は個別に検討することが求められる22。
表 7 は農業関係者等が有するノウハウの例を形式知/暗黙知別に示したものである。これは、ノウハウの重要性を検討する上での考慮要素の一つとして、流通の容易性や適用の汎用性を考え、その特徴に応じてノウハウとしての保護の対応を判断する参考にするために示すものである。
形式知については、一般的には誰にでも理解できる形になっていることから、特段の管理をしていない限り、流通は容易である。例えば、市販流通しているものについては、希少性は一般的には高くない。形式知であっても、提供範囲についての管理が厳格になされている場合には、流通性は低くなり、希少性が高くなる。
暗黙知については、暗黙知を有している農業関係者等から、直接提供を受けない限り、得られにくいため、希少性は高いものと判断やすい。また形式化されていないため、その内容が不明確になりやすく、消失する可能性も高い。そのため、暗黙知については、経済的な価値の具現という観点からだけではなく、暗黙知の内容の保全という観点からも形式知化等を行うことが求められる。
表 7 農業関係者等が有するノウハウの例
ノウハウの例 | 特徴等 | |
形式知 | マニュアル等で市販流通しているもの (ex. 一般書籍として販売され ている栽培マニュアル) | ・ノウハウとしての希少性は小さい ・汎用性は高いものが多い |
特定の範囲(地域・団体)でのみで流通する書籍・文書等の情報 (ex. 地域内での特定の作物に関する栽培方法などの専門的なマニュアル) | ・流通が限定されていることから、ノウハウとしては希少性が比較的高いものが多い ・特定の範囲を対象とするものであるが、汎用性については高いものと低いものが含まれる。 ・データ化されているものについては、管理方法によって は「限定提供データ」23としての保護を受けることがで |
22 経済産業省ガイドラインでは、学習済みモデルにおけるノウハウなどの重要性について、「ノウハウの重要性が高い場面が少なくないと思われる。もっとも、一言でノウハウといっても様々なものがあり、価値の高いノウハウもあれば、同業者であれば簡単に思いつくことができるノウハウもある。そのため、ノウハウであれば、どのようなものであっても重要であるわけではないことにも留意が必要である。」とする(P21))。
23 不正競争防止法第 2 条第 7 項。なお限定提供データの具体的な対応方法については「限定提供データに関する指針」(経済産業省、平成 31 年 1 月 23 日)に詳しい。(xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxxx/xxxxAI
/chiteki/guideline/h31pd.pdf)
ノウハウの例 | 特徴等 | |
きる。 | ||
個々の農業関係者等のみで管理される生産方法等に関して記述等がなされた情報 (ex. 特定の作物の収量を向 上させるための創意工夫) | ・農業関係者等内でのみ活用されるもの。公開することで希少性が大きく下がる可能性がある。 ・汎用性については高いものと低いものが含まれる。 ・要件を満たすことで営業秘密としての保護を受けうることもある | |
暗黙知 | 経験的な知見に基づく情報 (ex.一定の経験を経て修得される技能) | ・形式知化されない限り、xxに流通しにくい。 ・汎用性については高いものと低いものが含まれる。 ・暗黙知のままでは営業秘密として保護することは難しい。 |
地域等において経験等と相まって伝承される情報 (ex.地域の気候等の特質に応じた栽培上の留意点、対応方法) | ・各地域(地域や部会)で共有されているものやxx相伝的なものが含まれる。 ・形式知化されない限り、xxに流通しにくい。 ・汎用性については低いものが多い。 ・暗黙知のままでは営業秘密として保護することは難しい。 |
【ポイント 14】地域で保有するノウハウのAIの利用による継承
地域で保有される農業生産に係るノウハウをAIの利用により継承することが期待されている。
地域で伝承されるノウハウの継承については、地域における後継者不足による継承者の減少があるほか、暗黙知であることが多いため、農業生産の経験を通じてのみ修得されるなど、継承自体が容易ではないなどの課題がある。このような点から、地域において伝承されるノウハウの継承が困難になりつつあるという指摘がある。限られた地域でのみ伝承されてきたものであることから、流通自体が限定的であることも、継承を困難とする一因となっている。
このような地域において伝承されてきたノウハウ継承の課題に対して、AIを利用して形式知の形にすることにより、特定の継承者に依存しない形で、地域において継承できるようにすることが期待されている。AIによる形式知化に当たっては、地域内での生産における工夫に関するノウハウをAIにより形式知化したり、伝承者における行動や着眼点などのノウハウを学習できるようにモデル化したりするなどが想定される。
また地域におけるノウハウの伝承に当たっては、国や地方公共団体がAI研究開発委託者となるケースが想定されるほか、地域の農業関係者等がAIにより形式知化を図るなどが想定される。
このような地域において伝承されてきたノウハウ、あるいはこれらをAIを利用して形式知の形にしたものについては、地域における合意を踏まえて提供されることとなる。農業関係者がこれらを地域外に提供しようとするときは事前に地域の合意を得るようにすることが流出防止のために重要である。
農業関係者等への配慮したデータ・ノウハウ等の取扱い
形式知に関する事前の情報提供
熟練農業者、農業普及指導員のノウハウを保護する際には、農業関係者等の利益等が保護される形でノウハウを取り扱うことが求められる。
まずデータの提供や教師データ作成に貢献する熟練農業者、農業普及指導員等に、不意打ち的な損害が生じないことを配慮した取扱いが行われる必要がある。熟練農業者、農業普及指導員者等のノウハウが形式知となっている場合には、AIの研究開発のために、ノウハウの提供依頼や利用に先立ち、例えば表 8に示す内容を、AIの研究開発者は熟練農業者、農業普及指導員に示すことが可能であり、これにより熟練農業者、農業普及指導員等がノウハウ等の提供の判断材料することができるため、事後の不意打ちとなることを防止することができる。
表8に示す事前情報は、ノウハウ等の提供に係る契約の前に提示される必要があ る。提示方法は、契約書案の形によるほか、熟練農業者、農業普及指導員等のノウハウの提供者が契約前に把握できる方法であればよいが、その内容は、契約に組み込まれることが必要である。
表 8 ノウハウの提供において農業関係者等に事前に提供すべき情報の例
事前情報提供の 場面 | 事前に提供されるべき 情報の内容 | 事前に確認すべき理由 |
提供先でのノウハウの利用 | 利用目的(特に提供先の自己利用目的) | ・利用目的が明確でないと、提供したノウハウが、農業関係者等が想定した範囲を超えて、提供先で利用されることになり、農業関係者等が許諾した趣旨と反した利用が行わる可能性がある。 ・農業関係者等がノウハウ提供の対価を受けて いる場合には、相応の対価が得られない可能性がある |
提供データの利用方法 (組み合わせ等) | ・提供データの利用方法によっては、提供を予定した以外のノウハウが流出することがある。 ・特に農業関係者等の認識にないノウハウが分析結果により判明し、提供時の趣旨に反する利 用がされる場合がある。 | |
追加的な利用の有無 | ・予定する利用以外に、追加的な利用の予定なあ る場合、予定外の利用がなされる | |
他のノウハウ提供者の有無・関係 | ・他のノウハウ提供者が存在する場合、権利関係 等が複雑化したり、予定した権利帰属が困難となったりする場合が生じうる。 | |
利用期間 | ・利用期間を定めない場合には、ノウハウの提供に伴うリスクが無期限に発生することになり、 受容した以上のリスクが生じることがある。 | |
成果物の利用期間 | ・成果物(学習済みモデル等)の利用期間を定めないと、農業関係者等が事後に他の事業者等にノウハウを提供する場合に、競業避止など関係 で制約がかかるおそれがある。 | |
提供先でのノウ ハウの管理 | 管理方法( 安全管理措 置、監査等) | ・提供したノウハウの管理方法が不明確である と、セキュリティ面からのリスクを事前に把握 |
事前情報提供の 場面 | 事前に提供されるべき 情報の内容 | 事前に確認すべき理由 |
できないほか、秘密としての管理を農業関係者等が行っていても、秘密性などの管理が担保できない可能性が生じる。 | ||
利用後の対応(削除及び削除証明) | ・提供先における利用後の削除等が把握できないと、契約期間以降にノウハウの流出が生じる リスクが生じる。 | |
ノウハウの第三者提供 | 提供先及び提供先での利用目的 | ・提供先及び提供先での利用目的が明確でない と、農業関係者等は競合に対してノウハウを提供するリスクが生じる。 |
提供形態(データ、パラメータ等の提供、製品・ サービス提供等) | ・提供形態等が明確でないと、想定外のノウハウの活用がなされたり、競合となるリスクの判断 を誤ったりする可能性が生じる | |
提供するノウハウの範囲・レベル(提供時のノウハウの抽象化等) | ・提供するノウハウの範囲や、ノウハウの抽象度 (汎用レベルの範囲であれば可など)が把握できないと、想定外のノウハウ流出が生じる可能性が生じる。 |
【ポイント 15】データ・ノウハウの提供の対価の支払方式と算出方法
農業関係者等がデータやノウハウを提供する際に、一種のライセンシー契約と位置付けて、対価を設定することがある。現時点ではデータやノウハウの提供等に係る一般的な市場が存在しておらず、例えば「生育データであれば 1 件○円が相場である」のように示すことは難しい。以下では一般的に用いられる対価の設定方式や算出方法について示す。
対価の支払方式は
・従量課金方式:提供したデータ等の件数や利用回数に応じて支払う方式
・固定料金方式:提供したデータの件数等によらず、一定の期間で定めた料金を支払う方式
・売上分配方式:売上高や販売対価等に対して定めた決定割合に応じて支払う方式などが挙げられる(これらを組み合わせて設定することも想定される)。
また対価の算出方法については、具体的なビジネスモデルやAIの研究開発に対する貢献などによって大きく異なることから、一般的には算出が難しいと言われている24。算出に当たって用いられる手法としては、例えば以下のものが挙げられる25。
・コストアプローチ法:実際に要したコストや同等のものを再取得するのに要するコストを踏まえて評価する方法
・インカムアプローチ法:知的財産権が事業活動などに用いられることによって将来的に生み出されると期待される経済的利益を踏まえて評価する方法
・マーケットアプローチ法:類似の取引事情例を参考に評価する方法
支払や対価の算出方法については、製品やサービスに関するビジネスの前に具体的に決め
24 「AI・データの契約に関するガイドライン データ利活用編 1.1 版」(経済産業省、令和元年 12 月)P25 では、データ契約における対価・利益の分配に影響を及ぼす考慮要素として「データの種類、データの利用範囲(地理的制限を含む、データが生み出す価値、派生データの利用権限、創出された知的財産xxの権利関係、損害が発生した場合の責任分担、ライセンスフィーやロイヤルティの設定、データ創出や管理に要する費用分担等」を挙げる。
25 知的財産の価値評価については「知的財産の価値評価について」(特許庁、平成 29 年)に詳しい。
ることが難しいとされる。このような場合には、データ等の提供契約や研究開発委託契約の締結段階で、例えば「対価の支払の具体的な内容の取決めについては、両者協議の上、別途定め
る。」などの条項の形で定めておくことなども想定される。
暗黙知に対する取扱い
農業関係者等から提供するノウハウが暗黙知である場合、事前にその詳細を特定することは困難である。また農業関係者等においても、提供する暗黙知に対してどれだけの価値が生じるものであるのかを事前に判断することが難しい26。
暗黙知の場合、分析を行ったり、AIの研究開発を進めたりする過程で、形式知になったり、学習済みモデル等として実装した段階で、具体的な提供関係や利用関係を決定することができると考えられる。
そこで、暗黙知を提供する際には、まずは提供した暗黙知に対する守秘義務や管理方法などを中心とした内容の契約を当事者間で締結し、そのうえで分析やAIの研究開発を進め、暗黙知の内容の一部または全部が形式知として表現できる状態になったり、あるいは学習済みモデル等として実装できる程度に生成できるようになったりした段階で、具体的なノウハウ提供に関する契約内容を決定することが妥当である。
5. 個人情報等の対応
農業関係者等のうち、個人の農業従事者における営農情報等は、個人情報として扱う必要が生じるものもある。本ガイドライン(データ利活用編)においても、提供データに個人情報が含まれている場合の対応が示されており27、AIの研究開発に際して用いられる学習用データセット等においても、個人情報が含まれている場合には、これに準じて取り扱うことが求められる。
なお個人情報の利用に際しては、個人情報の利用目的をあらかじめ特定し、示す
(通知・公表)ことが求められる。
また個人情報を含むデータから生成された学習済みパラメータについては、それ自体には個人情報が含まれているケースは少なく、生データを再現することが困難であるという特徴を有している。そのため、製品・サービス提供者においては、個人情報としての取扱いは必ずしも求められない。他方、個人の農業関係者等においては、提供した個人情報が学習済みモデルの中で残っているのではないか、との疑念を持つこともあるため、十分な同意を得るための説明が求められる。
26 例えばデータ利活用編では、「「熟練知」を有する熟練農業者が、当該「熟練知」を農業データITサービス開発業者に提供する場面における「熟練知」なるものは、ノウハウとして一定の財産的価値が認められる可能性がある。これに対し、農業関係者等から提供されたと言えるデータであっても、当該農業関係者等の知見が反映されていると言えるかどうかが微妙なケース」も存在するとされる。(P12)
27データ利活用編では、各提供類型の契約のひな型ごとに個人情報が含まれている場合の対応が示されている。例えば
同ガイドラインP14、P17、P36 参照。
なおデータ提供などに際して、契約上、個人情報が含まれていないことを相手方に示す場合には、いわゆる表明保証責任28が生じる可能性があるため、留意する必要がある。また提供するデータ等に個人情報が含まれる場合には、提供する個人情報が、個人情報保護法などの規定に従った取扱いがなされたものであることを示すことで、受領者側において、円滑に利用できることが可能となる。
【ポイント 16】IoT データの個人情報の取扱い
農業分野のAIの研究開発に際して利用されるデータに個人情報が含まれている場合には、個人情報保護措置を講じることについては、ここで述べたとおりであるが、IoT 機器から収集したデータについてはその構成から直ちに個人情報にはならないことがある。例えば機器番号と計測データなどのみを送信するサービスを利用する場合、機器番号と計測データだけから直ちに個人を特定することはできないため、個人情報として扱われないのが一般である。
ただし例えば製品・サービス提供者において、別途機器番号と個人を特定する情報を一体的に管理しており、これを突合することで個人が特定できるようになっている場合には、機器番号と計測データなどを管理しているだけのファイルも個人情報として扱うことが求められることがある(図 20)。
なお欧州の GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」などでは、このような関係がない場合でも、直ちに個人情報として取り扱われるため、欧州のサービスを利用したり、欧州にサービス提供したりする場合には、このような点についても留意することが求められる。
図 20 IoT データ等の個人情報としての取扱い
28 表明した事実に反することで相手方に損害が発生した場合には、その賠償責任等が発生する。
第4. 農業分野におけるAIに関するモデル契約書におけるポイント
1. モデル契約書の提示方針
モデル契約書のポイントの提示方針
本項では、モデル契約書の提示を行う。
モデル契約書の提示については、以下の方針で行う。
・研究開発場面では、農業関係者等とAIの研究開発主体との間での契約と、AIの研究開発を行う主体内部でのAI研究開発委託者とAI研究開発者との契約が想定される。
・農業関係者等とAIの研究開発主体との間での契約については、基本的には本ガイドライン(データ利活用編)におけるデータ提供型またはデータ創出型の契約のひな型が該当すると考えられる。そこでAI研究開発における違いなどを踏まえた個所のみ解説において提示する(別冊に参考までにモデル契約書案のひな型を掲
載)。
・AI研究開発委託者とAI研究開発者との契約関係は、基本的には経済産業省ガイドラインが該当すると考えられる。ただし農業分野、及び、国や行政機関等が委託者となる場合の特殊性を、全体的に考慮する必要があるため、この観点からの変更と解説を行う(別冊に契約のモデル契約書案のひな型を掲載)。
・サービスの利用場面では農業関係者等と製品・サービス提供者との間の利用契約が想定されるが、製品やサービスの内容は多様で、契約のひな型を示すことは難し い。そこでAIを利用した製品・サービスの特殊性から考慮すべき点を示す。
・第三者提供については、AI研究開発委託者またはAI研究開発者と第三者の間でのデータ等の提供契約になる。そこで基本的には本ガイドライン(データ利活用 編)におけるデータ提供型またはデータ創出型契約のひな型が該当すると考えられる。ただしAIに関連する派生データにおける特殊性を鑑みて、本ガイドライン
(ノウハウ活用編)では提供における留意点を示すこととする。
【ポイント 17】特定地域の第三者に対する提供制限に関する条項
農業関係者等が提供するデータやノウハウが、競争力強化の観点から、国内外の特定地域の第三者への提供が制限されることがある。これはAIの研究開発の目的や、ノウハウ等を提供する熟練農業者や農業普及指導員の意向を鑑みて行われる。この趣旨を踏まえて、本ガイドライン(ノウハウ活用編)でもモデル契約書案のモデル条項を、以下のように示している。
【データ・ノウハウ等提供契約】
・提供データ等の利用許諾または譲渡(提供型第3条/創出型第3条関係)
・提供データ等の管理(提供型第8条関係
・データ漏えい等の場合の損害賠償の請求(提供型第8条・第 11 条/創出型第 3 条関係)
【研究開発契約】
・AIの研究開発の成果物の利用条件(研究開発主体間の契約第 18 条関係)
タームシートの添付
契約書においては、契約内容の概要が一覧で把握できるよう、タームシートをつけることが望ましい。タームシートの例を図 21 に示す。
タームシートは、契約の目的や契約概要、当事者間で提供したデータやノウハウの概要やその利用期間、成果として得られた知的財産とその帰属や利用関係、秘密保持に関する内容などを一覧できるように示すものである。図 21 は研究開発を目的とするものの例であるが、一般的なデータ等の提供やサービス提供においても、同様の項目を設けることで対応することが想定される。
これにより農業関係者等において、提供したデータや成果物についての法律関係等を容易に把握することができ、事後の紛争の発生を未然に防ぐことが期待される。
なお第 5 にタームシートの例を示しているので、参考にされたい。
出所:「大学等における知的財産マネジメント事例に学ぶ共同研究等成果の取扱の在り方に関する調査研究~さくらツールの提供~」(文部科学省)
(xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/x_xxxx/xxxxxxx/xxxxxxx/0000000.xxx)
図 21 タームシートの例
2. AIを利用した製品・サービスにおける研究開発場面におけるモデル契約 農業関係者等が締結するデータ・ノウハウの提供に係る契約
農業関係者等が締結するデータ・ノウハウの提供に係る契約の概要
農業関係者等がAIを利用した製品・サービスの研究開発を行う主体(受託契約管理団体、AI研究開発委託者、AI研究開発者)に対して、データやノウハウの提供を行う際には、図 22 に示すような関係が生じる。農業関係者等はこの場合、例えば AIの研究開発を行う主体と、データ・ノウハウの提供に係る契約を締結する。
図 22 農業分野のAIの研究開発及び製品・サービス利用に関連する契約関係 AIの研究開発におけるデータ・ノウハウの提供では、本ガイドライン(データ利
活用編)の「データ提供型契約」、あるいは「データ創出型契約」が基本的には該当する。農業関係者等が保有するデータを、AI研究開発を行う主体に提供して、AIの研究開発を行うケースは、「データ提供型契約」が該当し、農業関係者等とAI研究開発を行う主体が協働してデータの創出(例えば農業関係者等の圃場に、AI研究開発を行う主体がセンサなどを設置して、データ収集等を行い、AIを研究開発するようなケース)を行うケースは、「データ創出型契約」が該当する。
AIの研究開発に際しては、本ガイドライン(データ利活用編)に示すデータ提供型契約、データ創出型契約のひな型との関係で、以下の点を考慮する必要がある。
・本ガイドライン(データ利活用編)に示すデータ提供型契約、データ創出型契約では、いずれも派生データの取扱いが示されているが、AIの研究開発においては、派生データだけではなく、AIの学習済みモデルなども生成されることから、そのための考慮が求められる。
・AIの研究開発においては、農業関係者等からデータの提供だけではなく、具体的にノウハウが提供される場合がある(例えば教師データの作成支援など)。
【ポイント 18】 農業関係者等がデータ・ノウハウの提供に係る契約のポイント
農業関係者等がAIの研究開発を行う主体にデータやノウハウを提供する場合、契約の主な対象は提供されたデータやノウハウの取扱いとなる。
AIの研究開発においては、提供したデータやノウハウが、そのままAIの研究開発に用いられるわけではなく、何らかの加工や分析を経て、形を変えて利用される。さらに新たな知的財産権となることもある。この場合、提供したデータやノウハウの取扱いとは別に、それぞれ形を変えた場合の取決めを行うことが必要になる。
また提供したデータやノウハウ、さらにはその派生データや知的財産権は、直接の相手方だけではなく、第三者に提供され、あるいは提供者である農業関係者等が、別の第三者に提供しようとすることもある。このよう場合にも、どの範囲で提供したり、利用を認めたりすることができるのか、また第三者提供先での取り扱いがどのようなものになるのかなども、取り決めておくことが求められる。
このように提供したデータやノウハウの利用場面をできるだけ具体的に想定することが、データやノウハウの提供契約の内容を取り決めるポイントとなる(図 23)
図 23 農業関係者等が提供したデータ・ノウハウに関するポイント
農業関係者等が締結するAIの研究開発目的でのデータ・ノウハウの提供に係る契約の契約条項
農業分野の一般的なデータ・ノウハウ提供に係る契約に関しては、本ガイドライン
(データ利活用編)において、必要な契約項目およびその解説、契約のひな型が示されているところである。
AIの研究開発においては、AIの生成過程での特殊性や、提供するデータに含まれるノウハウの重要性などに鑑みた対応が求められる。そこで、上述の本ガイドライン(データ利活用編)において示されている契約条項等に対して、これらの観点からの考慮を行う必要がある。
本項では本ガイドライン(データ利活用編)において示した条項から、AIの研究開発目的で提供する際に変更が求められる点について解説する。なお、本項で示した変更点を含むAIの研究開発目的でのデータ・ノウハウの提供に係る契約書のひな型については、別冊に掲載する。
データ提供型契約の形態で、農業関係者等がデータ・ノウハウを提供する際の契約条項
29
(a) 定義規定(本ガイドライン(データ利活用編) データ提供型契約書案第 1 条関係30)
【提供データ】
AIの研究開発においては、農業関係者等はデータの提供だけではなく、明示的にノウハウの提供を行う、あるいはアノテーション等のための情報提供(教師データの判断基準となる情報の提供等)を行うことがある(【ポイント 8】教師データの作成のプロセス参照)。本ガイドライン(データ利活用編)のモデル契約第 1 条第 1 項では、提供データについて、「利用権限を有する情報、データ」と表記されており、ノウハウに関する情報が含まれていることも読めるが、本ガイドライン(ノウハウ活用編)ではその趣旨をより明示するために「(ノウハウほか)」を付加して、ノウハウが契約の対象に含まれていることを明示した。 変更した提供型モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
第1条(定義) 本契約において、次に掲げる語は次の定義による。 ①「提供データ等」とは、本契約に基づき、データ提供者がデータ受領者に対して提供するデータ提供者が利用権限を有する情報(ノウハウほか)、デー タおよび/または画像であって、別紙に詳細に定めるものをいう。 |
29 データ利活用編 P10~P58
30 以下、1)では「提供型モデル契約書案」という。
【目的】
本ガイドライン(データ利活用編)のモデル契約書案第 1 条第 3 項では、「本目的」として、データ提供型契約において、データ受領者が受領データを利用する目的が定められている。
AIの研究開発を目的とする場合に農業関係者等が提供するデータには、潜在的に農業関係者等のノウハウなどが含まれていることもあるため、受領者側の利用目的を明確にすることは重要である31。また、成果であるAIや派生データの活用の活性化を予定している場合には、それらの内容についても目的において記述するとともに、利用条件などの部分で、利用と保護のバランスをとった内容とすることが求められる。
「本目的」の内容は、このような観点を考慮して、定めることが求められる。
なお、AIの研究開発の場合には、単に「AI研究開発」とするだけでは必ずしも十分ではなく、具体的にどのようなAIの研究開発の目的であるのかまで示さないと、提供後のデータに対する農業関係者等のコントロールが失われるケースがあることに留意する必要がある(特に形式知を学習済みモデル等にする場合(表8参照))
【本件成果物】
AIの研究開発では、データ受領者は派生データ以外に、成果物として学習用プログラムや推論プログラムなどの著作物や、これに関連する特許権などの知的財産権を生成することが想定される。 これらについては、提供データから生成されたものについて、一律に権利の帰属関係を取決めるのでは妥当ではない場合がある。例えば学習用プログラムのように、提供データを活用しつつ、データ受領者が元々有していたプログラムを活用して生成するようなもの32や、学習済みモデルにおける推論プログラムのように、提供データにおける依存度が高いものなどもあるためである。 そこで本ガイドライン(ノウハウ活用編)ではこのような、データ受領者が生成するもののうち、本契約で帰属関係をさだめるものを「本件成果物」として整理、モデル条項として追加した。本契約で提供データからの成果としての取決めには含めない場合には、「本件成果物」には含めない形とする(「別紙」の記述には含めない)などが想定される。 追記した提供型モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
④「本件成果物」とは、本契約の目的達成のためにデータ受領者により生成された |
31 データ利活用編では、農業関係者等がデータの提供に際して、不測のノウハウの流出に対する不安があるとし、「不安を取り除く第一歩として、かかる栽培ノウハウまたはそのノウハウを構成するデータや画像が、意図していない目的に使われないことを契約で明確に約束させることは非常に重要である」とする。そのうえで、農業関係者等にとって予測し易い平易な文言で、目的の特定をし、契約書に記載することが望ましい」とされる(P16)。
32 学習用プログラムは、AI研究開発者がすでに保有しているものや、学習するデータに応じて、一部加工して利用することになるが、一般的にはAI研究開発者のノウハウに基づいて作成されるものであり、プログラムの権利はA I研究開発者に帰属する(オープン・ソース・プログラムを用いる場合にはその規約による)。
成果(プログラム等)のうち、別紙に詳細を定めるものをいう。 |
(b) 提供データ等の利用許諾または譲渡(提供型モデル契約書案第 3 条関係) AIの研究開発目的でデータ提供する場合には、提供データから一定の法則性を抽
出して、AIに反映することが目的とされる。そのため、AIの研究開発の対象によっては、熟練農業者や農業普及指導員が有するノウハウを形式知の形にするケースもあるため、農業関係者等が不測の損害を被らないよう、データの提供に当たっては、利用目的やデータ受領者が生成した成果の開示・提供先について合意を得ることが重要である。
なお提供対象となるデータ等については、提供者において利用許諾や譲渡に関する正当な権限を有することが前提となる。例えば複数の農業関係者等により共同で管理されているデータ等や、生産部会などのような権利能力なき社団において管理されているデータ等については、一部の構成員等がデータ提供を行う場合には、その者に代理権・代表権などがあることが前提となる。データ受領者は、この点について必要な確認をとることが求められる33。
また、合意された目的以外にも、例えば災害発生時等の人の生命、身体又は財産の保護のために国の機関又は地方公共団体から協力要請があった時は、必要な範囲でデータを開示・提供する等の対応が求められる場合があることにも留意する。
【提供データの利用目的】
本ガイドライン(データ利活用編)モデル契約書の第3条第1項では、提供データについて、第 1 条で示した「本目的」の範囲での利用について定めており、それ以外の目的での利用を禁ずる内容となっている。AIの研究開発においても同様の規定が求められる。
AIの研究開発を目的に関して、目的外利用とされる例としては、
・本研究開発後に、データ受領者内部での全く別のAIの研究開発を行う
・目的に示される利用範囲を超えた追加学習を行うためにデータを使用するなどが想定される。
データ受領者側の利用目的が明確になっていないと、提供したデータやノウハウに対する農業関係者等のコントロールが失われることになり、データ受領者側の解釈により、データやノウハウの利用がなされる可能性があるほか、別の第三者に対してデータやノウハウを提供する場合の支障となる可能性が生じうる(特にデータ提供先と競業避止に関する取決めを行った場合)。このような事態を避ける観点からも、デー
タの利用目的を明確にすることは重要である。
【提供データ等の開示・提供先】
本ガイドライン(データ利活用編)の第3条第3項では、データ提供者による事前
33 なお【ポイント 9】参照。
の書面の同意がない限り、提供データ等の目的外利用や、提供データ等・派生データの第三者への提供について認めない旨の内容を定めている。 AIの研究開発においては、派生データのみならず、研究開発の成果である学習済みモデルの提供(サービスとしての提供含む)についても、データ提供者の同意の下で、第三者への提供が行われる必要がある。 そこで、本項では派生データを含む、本AI研究開発目的で行われたデータ提供により得られた「本件成果物」について、第三者提供についての制限を行う旨を定めた 34。 変更した提供型モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す)第3条(提供データ等の利用許諾) 1~2 略 3 データ受領者は、データ提供者の書面による事前の承諾のない限り、本目的以外の目的で提供データ等を加工等その他の利用をしてはならず、提供データのほか、派生データ等、本件成果物を第三者(データ受領者が法人である場合、その子会社、関連会社も第三者に含まれる。)に開示、提供、漏えいしてはならない。 またAIの研究開発においては生データと、研究開発の成果である学習済みモデルの提供については、異なる取扱いが求められることも想定される。生データについては、農業関係者等の寄与が大きく、また当該AI研究開発以外の研究開発に、同様のデータ等を農業関係者等が別途提供する場合などがあるため、農業関係者等に提供先等のコントロールを認める必要があるが、派生データを含む本件成果物については、データの受領を受けた者(AI研究開発委託者、AI研究開発者)の寄与が大きく、その投下資本の回収などを行うために、生データの提供よりも広く、提供先を認めるのが妥当であるケースも想定される。このようなケースには、以下のような条項を設けることも想定できる。 生データの提供先と、派生データ、本件成果物の提供先について、異なる対応をするよう変更した提供型モデル契約書案(追記箇所および削除箇所は太字で示す) | ||
第3条(提供データ等の利用許諾) 1~2 略 3 データ受領者は、データ提供者の書面による事前の承諾のない限り、本目的以外の目的で提供データ等を加工等その他の利用をしてはならず、提供データ等 も第三者に含まれる。)に開示、提供、漏えいしてはならない。 |
34 農業関係者等が提供したデータ等については、提供先でのAI等の研究開発の進捗により、契約時には想定していない利用目的や利用条件、提供先をデータ提供者あるいはデータ受領者が求めることもある。契約締結時にはこのような可能性も十分考慮した上で、提供先や利用目的等を取り決めることが重要である。
ただし、派生データを含む本件成果物については、別途定める第三者に限り、 開示、提供できるものとする。 |
【公的資金等によるAI研究開発の場合の開示、提供先の制限】
AIの研究開発が、国や地方公共団体などの公的資金の事業による場合には、研究開発によるものである場合には、第三者提供先については、競争力強化や他地域との差別化強化などの政策目的が反映されるケースがある。 このような場合には、資金提供元の考え方に基づき、「特定地域内での利活用を行う」、「地域外への提供を妨げる場合がある」などの制限を設けられることが考えられる。 変更した提供型モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
3 データ提供者およびデータ受領者は、相手方当事者の事前の書面による承諾がない限り、本目的以外の目的で提供データ等を加工等その他の利用をしてはならず、提供データ等、派生データ、および本件成果物を第三者(データ提供者またはデータ受領者が法人である場合、それらの子会社、関連会社も第三者に含まれる。)に開示、提供、漏えいさせてはならない。 本項に従い、開示、提供等先となる第三者については、本研究開発における政 策的な目的などの観点から、●●地域内での利活用を行える第三者に限定する。 |
(c) 提供データ等の管理(モデル契約書案第 8 条関係)
【注意義務の程度】
本ガイドライン(データ利活用編)におけるデータ提供型モデル契約書案では、第 8
条第 1 項に提供データ等と派生データに対するデータ受領者側の管理責任などについて示されている。ここでは、セキュリティについてのレベルとして、「我が国において一般にデータ保管のために用いられるシステムで通常利用されるのと同種同等」を想定している。
AI研究開発においては、データ等の提供者である熟練農業者や農業普及指導員のノウハウが含まれていることがある。ノウハウなどについては、営業秘密として保護する場合には、秘密管理性が求められ、そのための秘密管理措置が求められる 。
このような場合には、「我が国において一般にデータ保管のために用いられるシステムで通常利用されるのと同種同等」というセキュリティレベルだけでは、不正競争防止法が求める秘密管理性の要件を満たす程度の秘密管理措置の程度を満たさないケースも想定される35。
そこで本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、営業秘密として取り扱うべき内容
35 提供するデータによっては、営業秘密ではなく、「限定提供データ」として管理している場合があり、その場合は秘密管理性の部分を「限定提供データとしての管理」などに置き換えることなどが想定される。なお限定提供データについては、【ポイント 13】参照。
が含まれている場合を想定して、秘密管理性を満たす程度のものを求めることとした。なお管理対象については提供データ等(ノウハウ含む)、派生データのほかに、学 習済みモデルを構成するプログラム等も含まれることが想定されるため、本件成果物 を含めることとした。 変更した提供型モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
第 8 条(提供データ等の管理) 1 データ受領者は、提供データ等および派生データ、本件成果物を他の情報またはデータと明確に区別し、我が国において一般にデータ保管のために用いられるシステムで通常利用されるのと同種同等(かつ、別紙により営業秘密として定めて いるものについては、営業秘密としての保護のための要件を満たす水準の)セキュリティおよびバックアップ体制を備えるなど、善良な管理者の注意をもって管理・保管しなければならない。 2 データ提供者は、提供データ等および派生データ、本件成果物の管理状況について、データ受領者に対していつでも書面による報告を求めることができる。この場合において、提供データ等または派生データの漏えいまたは消失のおそれがあるとデータ提供者が判断した場合、データ提供者は、データ受領者に対して提供 データ等および派生データの管理方法・保管方法の是正を求めることができる。 |
【管理義務違反における損害賠償の予定】
本ガイドライン(データ利活用編)のデータ提供型モデル契約書案では、本条で定める管理責任に反して、データの漏洩や消失、第三者提供が行われた場合の損害賠償について定めており、オプションとして損害賠償の予定に関する規定を示す。
損害賠償の予定を定める意義として、損害額の決定に係るデータ提供者である農業関係者等側の負担を軽減することが挙げられる。本契約の目的で提供したデータについては、ノウハウが潜在的に含まれうるものであるが、提供データとノウハウの関係や、その経済的な価値の算定は困難であるため、損害賠償の予定に関する規定を設けることで、速やかに賠償関係を確定する意義が大きいとされる36。
ただし損害額の算定が難しいことは、損害賠償の予定額を定めること自体が困難な場合があることを示す。そのため、そもそも契約の段階で損害賠償額の予定を定めるために紛糾し、契約締結が遅延するリスクも指摘される。
本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、AIの研究開発目的でのデータ提供であ
ることから、ノウハウを潜在的に含むデータの提供がなされるケースが多いと考えられることから、標準的な条項として、第4項に示す内容を設けた。ただし、上述のよ
36 データ利活用編では「農業データについていえば、特に非構造化データと言われるデータ単体(例えば、特定の農業関係者等のウェアラブル端末から発せられる視認データなど、「暗黙知」とされるノウハウの一部に過ぎないデータで、何らそのデータの分析が行われておらず、「形式知」化されていないもの)については、交換価値の算定が困難であることから、データ提供者において損害を立証するのは難しい」とされる。(P35)
うに具体的な損害賠償額の予定を定めるのに時間を要する可能性がある場合には、第 4項を除いた形での契約を行うことも想定される。 変更した提供型モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
3 略。 4 提供データ等の漏えい、消失、データ提供者の許諾を得ない第三者提供、目的 外利用等、本契約に違反するデータ受領者の提供データ等の利用により、データ提供者に損害が生じた場合、データ受領者はデータ提供者に対して違約金として ●円を支払う義務を負う。ただし、データ提供者に生じた損害が上記違約金額を 上回る場合には、データ提供者は実際に生じた損害額を立証することでデータ受 領者に対し当該損害額の賠償を請求することができる。 |
(d) 派生データ等の取扱(提供型モデル契約書案第 11 条関係)
【派生データ等の対象】
本ガイドライン(データ利活用編)のモデル契約書案第 11 条では、提供データ等と派生データの取扱いとして、利用権限や本契約における業務を通じて得られた知的財産権についての帰属等について定めている。 (a)で述べたようにデータ受領者は派生データ以外に、成果物として学習用プログラムや推論プログラムなどの著作物や、これに関連する特許権などの知的財産権を生成することが想定される。そこで本項での対象として「派生データ等(本件成果物を含む)」として、これらを含めることができるような記載とした。 変更した提供型モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
第11条(派生データ等の取扱) 1 データ提供者およびデータ受領者は、本目的のために自ら派生データ等(本件成果 物含む)を利用することができる。 この利用の中には、本目的のために、派生データを加工等することが含まれる。 |
【データ受領者が生成した知的財産権の帰属】
本ガイドライン(データ利活用編)のモデル契約書案第 11 条第 4 項では、データ受領者が提供データまたは派生データなどを利用して知的財産権を生成した場合、その知的財産権はデータ提供者とデータ受領者との共有とする旨が示されている。
AIの研究開発目的で提供されたデータを活用して知的財産権を生成する場合、(a)【本件成果物】でも述べたように、一律に権利の帰属を決めることは困難である。特に学習済みモデルを生成するための学習用プログラムやハイパー・パラメータについては、AIの研究開発を行う者の貢献度が大きい場合が多く、一律に共有とすることはなじまない。
そこで本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、学習済みモデルを研究開発する際に作
成した学習用プログラムについては、AI研究開発研究者の貢献が大きい場合があることから、原則としては共有対象とはせず、「本件成果物」にこれらを含めた際のみ、農業関係者等とAI研究開発の主体との共有とする規定とした。 また例えば農業関係者等の利益を保護する観点から、学習済みモデルを構成する推論プログラムについては、本件成果物に含め、データ提供者とデータ受領者の共有とすることもできる(学習済みパラメータについては両者で派生データとして取り扱う)。 なお学習済みモデルにおいて実装されるノウハウについて、データ提供者による貢献が必ずしも大きくはない場合や、AIの研究開発主体による貢献が大きい場合(例えば画像データ等の生データの提供もAI研究開発者が行う場合など)の場合には、成果としての知的財産をデータ受領者に帰属させて、本件成果物の利用について優遇された条件を定める、あるいは本件成果物から得られた収益を分配するなどの対応を行うことも考えられる 37。このような対応をとる場合には、データ受領者において上記のような事情があること について、十分な説明責任を果たしたうえで、データ提供者からの合意を得ることが求められる(説明責任を果たさないで得られた合意については、その効力が生じないこともある)。 変更した提供型モデル契約書案(生成した知的財産を共有とする場合) (追記箇所は太字・下線で示す) 2~3 略 4 提供データ等または派生データの利用に基づき生じた知的財産権( この場合において、当該知的財産権の創出に出願作業が必要な場合には、データ提供者とデータ受領者が共同で当該出願作業を行うか、相手方当事者の同意を得て、一方の当事者が単独で行うものとする。 変更したモデル条項(生成した知的財産をデータ受領者の帰属とする場合) (追記箇所は太字・下線で示す) | ||
4 提供データ等または派生データの利用に基づき生じた知的財産権は、本契約で別段の規定がある場合および当事者間で別途合意をした場合を除き、データ受領者に帰属 するものとする。 5~10 略 |
37 そのほか提供されたノウハウの汎用性が低い場合と高い場合の違いに応じて、提供者の権利性を調整することも想定できる。
【公的資金等によるAI研究開発の場合の開示、提供先の制限】
派生データ等の本件成果物の開示や提供先についても、当初データ同様、AIの研究開発が、国や地方公共団体などの公的資金の事業による場合には、研究開発によるものである場合には、第三者提供先については、競争力強化や他地域との差別化強化などの政策目的が反映されるケースがある。 このような場合には、当初データにおいて設けた規定と同様の制限を設けられることが考えられる。 変更した提供型モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
3 データ提供者およびデータ受領者は、相手方当事者の事前の書面による承諾がない限り、本目的以外の目的で提供データ等を加工等その他の利用をしてはならず、提供データ等、派生データ、および本件成果物を第三者(データ提供者またはデータ受領者が法人である場合、それらの子会社、関連会社も第三者に含まれる。)に開示、提供、漏えいさせてはならない。 本項に従い、開示、提供等先となる第三者については、本研究開発における政 策的な目的などの観点から、●●地域内での利活用を行える第三者に限定する。 |
データ創出型契約の形態で、農業関係者等がデータ・ノウハウを提供する際の契約条項
38
(a) 定義規定(本ガイドライン(データ利活用編) データ創出型契約書案39第 1 条)
【当初データ】
本ガイドライン(データ利活用編)のモデル契約書第 1 条第 1 項では、当初データについて、「利用権限を有する情報、データ」と表記されており、ノウハウに関する情報が含まれていることも読めるが、AIの研究開発を目的とする場合については、データ提供契約の場合同様( 1)(a)【提供データ】参照)、本ガイドライン(ノウハウ活用編)ではその趣旨をより明示するために「(ノウハウほか)」を付加して、ノウハウが契約の対象に含まれていることを明示した。 変更した創出型モデル契約書案(太字は追記箇所) | ||
第1条(定義) 本契約において、次に掲げる語は次の定義による。 ① 略 ②「当初データ等」とは、本契約に基づき、データ提供者がデータ受領者に対して提供するデータ提供者が利用権限を有する情報(ノウハウほか)、データおよび /または画像であって、別紙2に詳細に定めるものをいう。 |
【目的】
AIの研究開発を目的とする場合に、データ創出型契約で定める目的の重要性については、データ提供型契約の場合と同様である。具体的な内容についてはデータ提供型契約における解説( 1)(a)【目的】)を参照されたい。
なおデータ創出型契約において、研究開発過程において得られたデータなどの創出データ等については、AI研究開発者がデータを利用する目的となり、農業関係者等の協力でデータの創出が行われることから、事後のトラブルを避ける観点から、この観点からも利用目的については、データ提供契約の場合と同様、明瞭に示
すことが求められる。
【本件成果物】
データ創出型契約類型においても、AIの研究開発では、データ受領者は派生データ以外に、成果物として学習用プログラムや推論プログラムなどの著作物や、これに関連する特許権などの知的財産権を生成することが想定される。
そこでデータ提供型契約同様( 1)(a)【本件成果物】参照)、データ創出型契約に
おいてもデータ受領者が生成するもののうち、本契約で帰属関係をさだめるものを「本
38 データ利活用編 P10~P58
39 以下2)では創出型モデル契約書案
件成果物」として整理、モデル条項として追加した。本契約で当初データからの成果としての取決めには含めない場合には、「本件成果物」には含めない形とする(「別紙 2」には含めない)などが想定される。 追記した創出型モデル契約書案(太字は追記箇所) | ||
⑤「本件成果物」とは、本契約の目的達成のためにデータ受領者により生成された 成果(プログラム等)のうち、別紙に詳細を定めるものをいう。 |
(b) 当初データ等の利用権限等(創出型モデル契約書案第 3 条関係)
【当初データの利用権限】
本ガイドライン(データ利活用編)のデータ創出型モデル契約書案第 3 条では、提供された当初データ等についての利用権限や、取扱いについて規定されている。ここでは、当初データ等に農業関係者等の暗黙知などが含まれていることにより、当初データ提供者の自己利用を原則として認める旨が、解説において示されている。
AIの研究開発においては、暗黙知をモデルの形にすることを目的とするものであることから、上記の趣旨が該当する。従って、当初データの利用権限の設定においても、本ガイドライン(データ利活用編)の趣旨を踏まえて、決定することが求められる。
なお本条で定める「利用権限」は、データ提供型契約における「利用目的」に相当するものである。そこで、本条で「別紙4」により定めるとされる利用権限については、データ提供型契約における利用目的( 1)(a)【利用目的】)を参照の上、決定することが求められる。
なお提供対象となる当初データ等については、提供者において利用許諾や譲渡に関する正当な権限を有することが前提となる。例えば複数の農業関係者等により共同で管理されているデータ等や、生産部会などのような権利能力なき社団において管理されているデータ等については、一部の構成員等がデータ提供を行う場合には、その者に代理権・代表権などがあることが前提となる。データ受領者は、この点について必
要な確認をとることが求められる40。
【公的資金等によるAI研究開発の場合の開示、提供先の制限】
AIの研究開発が国や地方公共団体などの公的資金の事業による場合には、第三者提供先については、競争力強化や他地域との差別化などの政策目的が反映されるケースがあることは、データ創出型契約においても同様である。
本ガイドライン(データ利活用編)のデータ創出型モデル契約書案第 3 条第 4 項で
は開示・提供先等について規定するが、公的資金等によるAI研究開発の場合には、データ提供型契約同様( 1)(b)参照)、下記のような制限を設けることも想定される。
40 なお【ポイント 9】参照。
変更した創出型モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
4 データ受領者は、相手方当事者の事前の書面による承諾がない限り、当初データ等を第三者(データ提供者またはデータ受領者が法人である場合、それらの子会社、関連会社も第三者に含まれる。)に開示、提供、漏えいさせてはならない。なお開示、提供等先となる第三者については、本研究開発における政策的な目的 などの観点から、●●地域内での利活用を行える第三者に限定する。 |
(c) 派生データの利用権限等(創出型モデル契約書案第 4 条関係)
【派生データ等の対象】
本ガイドライン(データ利活用編)のデータ創出型モデル契約書案第4条では、派生データの利用権限や、本契約における業務を通じて得られた知的財産権についての帰属等について定めている。 AIの研究開発を行う場合には、データ提供型契約の場合同様( 1) (d) 【派生データ等の対象】参照)、派生データ以外に成果物として学習用プログラムや推論プログラムなどの著作物や、これに関連する特許権などの知的財産権を生成することが想定され、これらに関する利用権限についても定める必要がある。そこで本項での対象として「派生データ等(本件成果物を含む)」として、これらを含めることができるような記載とした。 変更した創出型モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
第4条(派生データの利用権限等) 1 本契約で別段の規定がある場合および当事者間で別途合意をした場合を除き、派生データ等(本件成果物含む)に関する各自の利用権限は、別紙5に定めるとおりと する。 |
【データ受領者が生成した知的財産権の帰属】
本ガイドライン(データ利活用編)のデータ創出型モデル契約書案第 4 条第5項では、派生データなどを利用して知的財産権を生成した場合、その知的財産権はデータ提供者とデータ受領者との共有とする旨が示されている。
AIの研究開発目的で創出されたデータを活用して知的財産権を生成する場合、データ提供型契約同様( 1)(d) 【派生データ等の対象】参照)、一律に権利の帰属を決めることは困難である。
そこで本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、データ提供型モデル契約で示したものと同様、学習済みモデルを生成する際に作成した学習用プログラムについては、AI研究開発研究者の貢献が大きいことから、原則としては共有対象とはせず、「本件成果
物」にこれらを含めた際のみ、農業関係者等とAI研究開発の主体との共有とした。
他方、農業関係者等の利益を保護する観点から、学習済みモデルを構成する推論プログラムについては、データ提供者とデータ受領者の共有とする規定としている(学習済みパラメータについては両者で派生データとして取り扱う)。 なお学習済みモデルにおいて実装されるノウハウについて、データ提供者による貢献が必ずしも大きくはない場合や、AIの研究開発主体による貢献が大きい場合(例えば画像データ等の生データの提供もAI研究開発者が行う場合など)の場合には、成果としての知的財産をデータ受領者に帰属させて、本件成果物の利用について優遇された条件を定める、あるいは本件成果物から得られた収益を分配するなどの対応を行うことも考えられる。またこの場合の知的財産権の出願等の処理は、権利が帰属するデータ提供者が行うものとし、該当する条項については削除した。 変更した創出型モデル契約書案(生成した知的財産を共有とする場合) (追記箇所は太字・下線で示す) 2~4 略 5 派生データの作成または利用に基づき生じた知的財産権(本件成果物を対象とする。 以下本条において同じ。)は、本契約で別段の規定がある場合および当事者間で別途合意をした場合を除き、データ提供者とデータ受領者の共有とする。この場合において、当該知的財産権の創出に出願作業が必要な場合には、データ提供者とデータ受領者が共同で当該出願作業を行うか、相手方当事者の同意を得て、一方当事者が単独で行うものとする。 変更した創出型モデル契約書案(生成した知的財産をデータ受領者の帰属とする場合) (追記箇所は太字・下線で示す) | ||
5 派生データの作成または利用に基づき生じた知的財産権(本件成果物を対象とする。 以下本条において同じ。)は、本契約で別段の規定がある場合および当事者間で別途合意をした場合を除き、データ受領者に帰属するものとする。 |
(d) 相手方受領データ等の管理(創出型モデル契約書案第 11 条関係)
【注意義務の程度】
本ガイドライン(データ利活用編)におけるデータ創出型モデル契約書案では、第 11
条第 1 項にデータを受領した相手方の管理責任などについて示されている。ここでは、セキュリティについてのレベルとして、「我が国において一般にデータ保管のために用いられるシステムで通常利用されるのと同種同等」を想定している。
AI研究開発においては、データ提供型契約同様(1)(c) 【注意義務の程度】参照)、データ等の提供者である熟練農業者や農業普及指導員のノウハウが含まれていることがある。また、データ受領者側と創出したデータにノウハウが含まれているケースも想定
される。ノウハウなどについては、営業秘密として保護する場合には、秘密管理性が求
められ、そのための秘密管理措置が求められる41 。 そこで本ガイドライン(ノウハウ活用編)では創出型データ契約においても、データ提供型契約の場合と同様、秘密管理性を満たす程度のものを求めることとした。 なおAIの研究開発においては、提供されるものがデータだけではなくノウハウなども含まれていることから、「相手方受領データ等」とした。 変更した創出型モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
第 11 条(相手方受領データ等の管理) 1 データ提供者およびデータ受領者は、相手方から受領するデータ、情報(ノウハウ 含む)(以下「相手方受領データ等」という。)を他の情報またはデータと明確に区別し、自己のものを管理するのと同一の注意義務をもって管理・保管しなければならない。なお相手方受領データ等のうち、別紙により営業秘密として定めているものについては、営業秘密としての保護のための要件を満たす水準の管理を行う。 2 データ提供者およびデータ受領者は、相手方受領データ等の管理状況について合理的な疑義が生じた場合には、データ受領者に対していつでも書面による報告を求めることができる。この場合において、相手方受領データ等の漏えいまたは消失のおそれがあると相手方が判断した場合、データ提供者またはデータ受領者は、相手方に対して当初データ等および派生データの管理方法・保管方法の是正 を求めることができる。 |
【管理義務違反における損害賠償の予定】
本ガイドライン(データ利活用編)のデータ創出型モデル契約書案では、本条で定める管理責任に反して、相手方が提供したデータ等の漏洩や消失、第三者提供が行われた場合の損害賠償については定めていない。
しかし本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、AIの研究開発目的の場合には、熟練農業者や農業普及指導員のノウハウなどの提供が伴うことがあることから、データ提供型契約同様、損害賠償に関する規定を設けた( 1) 【管理義務違反における損害賠償の予定】参照)。
データ創出型契約のモデルひな型として、AIの研究開発目的でのデータ提供であることから、ノウハウを潜在的に含むデータの提供がなされるケースが多いと考えられることから、標準的な条項として、第5項に示す内容を設けた。ただし、具体的な損害賠償額の予定を定めるのに時間を要する可能性がある場合には、第5項を除いた形での契約を行うことも想定される。
変更した創出型モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す)
41 管理対象であるデータが営業秘密ではなく限定提供データの場合には、脚注 35 参照。
5 当初データ等の漏えい、消失、データ提供者の許諾を得ない第三者提供、目的外 利用等、本契約に違反するデータ受領者の当初データ等の利用により、データ提供者に損害が生じた場合、データ受領者はデータ提供者に対して違約金として●円を支払う義務を負う。ただし、データ提供者に生じた損害が上記違約金額を上回る場合には、データ提供者は実際に生じた損害額を立証することでデータ受領者に対し当該損害額の賠償を請求することができる。 |
研究開発における農業関係者等が締結するデータ提供/データ創出型契約における確認項目(チェックリスト) AIの研究開発における農業関係者等が締結するデータ提供/データ創出型契約に
おける確認項目についてのチェックリストの例を表 8 に示す。
データの提供を行う農業関係者等や、ノウハウ等の提供を行う農業関係者等、農業普及指導員、研究開発機関等は、データの受領または共同で創出する相手方と、チェックリストの内容についての取決めがなされているかを確認することが想定される。
表 8 研究開発における農業関係者等が締結するデータ提供契約における確認項目例
カテゴリ | 契約内容として確認する項目等 | 有無(〇をつける) | 項目としてない場合の代替的対 応 | チェックの観点 |
契約の目的 | データ提供の目的 | 契約の目的があいまいであると、各条項が詳細に定められていない場 合に、不測のトラブルが生じることがある(例:提供データの目的外利用、 無断商用利用等) | ||
各種定義 | データ名、項目名、加工、派生データ、著作物、ノウハウ | 契約対象なる用語を明確にすること で、解釈による不一致が生じないようにする(例えばノウハウの範囲など) | ||
提供したデータ(当初データ含 む) | 提供データ名(ファイル名、データベース名等で特定できれば特 定) | 提供データの内容を明らかにすることで、契約の対象となるデータの範囲等を明らかにする。 | ||
データの範囲(項目、粒度、量 (件数ほか) | ||||
データの期間 | ||||
データの提供方法(ファイル、自動送信等(自動送信の場合には 送信元の機器も含める) | データ提供(創出)者が提供に際して行う義務などを明らかにする。 | |||
提供頻度 | ||||
創出型の場合には創出・取得・ 収集方法 | ||||
データの保証・非保証・免責 | ||||
データの利用条件 | 利用目的、加工の有無、条件 | 提供したデータの利用目的、加工の有無、条件などを明らかにすること で、提供者の意に反した利用方法を防ぐ。 提供データの利用の仕方により、農業関係者等のノウハウが分析される可能性がある(データの組み合わせや分析方法等)がため、利用目的との関係で、利用方法やノウハウとの 関係を確認することも求められる。 | ||
第三者提供の可否、範囲、手続 (提供や創出するデータ、ノウハ | データ提供者が意図しない第三者 への提供を防止する |
カテゴリ | 契約内容として確認する項目等 | 有無(〇をつける) | 項目としてない場合の代替的対 応 | チェックの観点 |
ウ、派生データ、およびこれらより 生じる知的財産ごとに示す) | ||||
利用に関する独占・非独占 (提供や創出するデータ、ノウハウ、派生データ、およびこれらより生じる知的財産ごとに示す) | 提供データ(当初データ)や創出データ、派生データ、ノウハウが、提供により相手方に独占的にする権利が移転するか(提供者が使えなくなる か)、提供後も利用できるかなどを示 す。 | |||
利用期間 (特に契約期間との関係を確認) | 提供データ(当初データ)がいつま で利用されるのか(契約期間内か、一定期間内か、無期限か)などを明確にする。これにより、提供データの保護や、データ提供者が別の提供先にデータ提供するなどの関係を明 らかにすることができる。 | |||
利用する地域 | データの提供・創出者が意図しない 地域での利用を防止する | |||
利用方法(利用環境ほか) | AI研究開発者がデータを利用するための環境(AI研究開発者が自由に決めた場所で利用できるか、データ提供者が管理するサーバ上のみ だけでの利用か等) | |||
派生データ、成果物等の提供者へのフィードバック | データの提供・創出者に対する派生データのフィードバックや利用権限 の設定があるか | |||
利用に関する対価の有無と内容、決定方法等 | データの提供・創出者に対する報酬 の設定や、サービス等利用の優遇条件設定等があるか。 | |||
知的財産権の帰属と人格権の不行使等 | プログラムや特許xxの知的財産権の帰属や、著作xxの人格権の不行使があるか(成果物の変更の可否 などが関係する) | |||
本契約に関連する契約の有無及びその関係(データ提供等に係る契約の前提となる契約や、データ提供等を受けて行う研究開発契約の有無、および本契約と関連する利用条件等の事項の有 無) | データ提供契約等の契約目的の背景にある契約(例えば国からの委託契約に基づく等)や、成果物の第三者提供契約の有無を明らかにすることで、本契約で定めた契約内容との整合性を確保すべき契約の範囲を 明らかにする。 | |||
データの管理方法 | 管理基準・注意義務の内容 | 提供(創出)データや派生データの管理内容や前提となる善管注意義務のレベルを明確にすることで、x x責任の重さを明らかにする。 | ||
営業秘密等に関する管理方法 | 提供データ等が提供者側で営業秘密や限定提供データとして取り扱っている場合に、提供先での営業秘密 等の管理方法を確認する。 |
カテゴリ | 契約内容として確認する項目等 | 有無(〇をつける) | 項目としてない場合の代替的対 応 | チェックの観点 |
個人情報の範囲、取扱い、管理方法 | 対象とする個人情報の範囲(特に IoT データ)を明確にするほか、内部的な取扱い(生データのまま使うか、仮名化データに加工して使うか等)や管理方法などについて明らかにすることで、法律上の対応状況のほ か、リスクを把握する。 | |||
データの管理方法 | データの管理方法(主にセキュリテ ィ)を確認する。 | |||
管理状況の報告(内容、方法、頻度) | 管理状況に関するデータ提供者等への報告の有無やその方法(web 上、メール、他)、頻度(月次、年次な ど)を明らかにする。 | |||
管理の是正等 | データの管理方法に問題が生じた場合の、是正方法・方針などを示 す。 | |||
契約終了後のデータ削除対象、方法・報告等 | 契約終了のデータ削除(削除する場合)の対象や返還・削除方法、削除したことについてのデータ提供者への報告方法(削除証明書をつけるか否 かなど)を明らかにする。 | |||
契約上の一般的事項 | 秘密保持義務 | 秘密の定義内容や、範囲を明らかにしたうえで、当事者間の秘密保持の対象や期間(契約終了後含む)につ いて確認できるようにする。 | ||
損害賠償関係 | データ漏洩等が生じた場合の損害賠償責任の範囲・基準(注意義務の内容)、損害賠償の予定、損害賠償 額の上限の有無などを確認する。 | |||
免責 | 損害賠償責任などに対する免責条 項(不可抗力ほか) | |||
契約の有効期間 | 契約の有効期間について確認する (提供データの相手方の利用範囲に関係する) | |||
解除 | 契約の解除事由の確認(相手方に 契約に反する利用があった場合に解除できるかどうかに関係する) | |||
存続条項 | 契約終了後に存続する条項(第三 者が保有する知的財産による紛争対応など) | |||
譲渡禁止 | 契約上の地位の譲渡などについて、事前の書面による合意がない場合 には認めない等を明らかにすることで、相手方が変更するリスクを防止 する。 | |||
準拠法 | 一般的には日本法による |
カテゴリ | 契約内容として確認する項目等 | 有無(〇をつける) | 項目としてない場合の代替的対 応 | チェックの観点 |
管轄裁判所等 | 一般的には日本国内の裁判所(地 方裁判所) |
AI研究開発を行う主体間で締結する契約
AI研究開発を行う主体間で締結される契約の概要
経済産業省ガイドラインでは、ユーザ企業とベンダとの契約関係を想定したひな型が示されているが、主に民間における研究開発の委託者と受託者の間の契約関係を想定している。
しかし農業分野におけるAI研究開発を行う主体としては、前述の通り国、行政機関等が開発委託者となる場合があるほか、公的資金の供与に当たって、受託者の中 で、公的機関等が受託契約管理団体を担い、研究開発に係る契約の委託者となる場合も想定される。これらが研究開発の委託者となる場合には、研究開発の成果の取扱いや手続において、それぞれの特殊性に応じた考慮が求められる。
このような関係を踏まえて想定されるAI研究開発主体間で締結される契約における当事者関係について図 24 に示す。
また経済産業省ガイドラインでは、AIの研究開発で利用するデータ等は、研究開発の委託契約の当事者であるユーザ企業が提供することを想定しているが、農業分野におけるAIの研究開発においては、AIの研究開発契約の第三者である農業関係者等が、データやノウハウの提供を行うことが大半である。そのため、提供データの利用関係等を定める契約条項においても、この点を考慮することが求められる。
図 24 AI研究開発主体間での契約関係
【ポイント 19】AIのモデル研究開発における 3 当事者間の契約
本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、AIの研究開発のスキームとして
・データ・ノウハウ提供者(農業関係者等)とデータ・ノウハウ受領者(AI研究開発主体: AI研究開発委託者あるいはAI研究開発者)とのデータ・ノウハウ提供契約
・AI研究開発委託者とAI研究開発者間でのAI研究開発委託契約の 2 つの契約から構成されることを想定している。
しかし、実際のAIの研究開発においては、データやノウハウを提供する農業関係者等が、モデルの研究開発にも深く関与できるよう、農業関係者等とAI研究開発委託者、AI研究開発者の 3 者による契約がなされることがある。特に熟練農業者や農業普及指導員が研究開発するAIに対する助言等を行うなどの形で、AIの研究開発に深く関わる場合などは、このような契約形態によることがある(図 25)。
3 者間契約では、データ・ノウハウの提供先は、直接的にAI研究開発委託者とAI研究開
発者の双方となる。また成果の帰属先やAIの研究開発における役割についても 3 者間で決定することになる。
図 25 AI研究開発における 3 当事者間の契約
AI研究開発主体間で締結される契約におけるモデル契約条項のポイント
本ガイドライン(ノウハウ活用編)で示す契約のひな型は、経済産業省ガイドラインの「第7 本モデル契約」42で示される契約のひな型のうち、「6 開発段階のソフトウェア開発契約書(モデル契約書)」43に示される契約のひな型44を踏まえている。
そのうえで、①で述べた農業分野の特殊性などを勘案して、経済産業省ガイドラインにおけるひな型のうち、そのまま踏襲できるものについては踏襲し、変更等が必要なものについてのみ、本項で変更内容とその説明を行う。
全体
【委託契約の対象】
経済産業省ガイドライン開発モデル契約書案45では、委託契約の対象を「AIの開発」としている。
農業分野においては、PoC に該当する部分などを公設試験機関に委ねる等、開発ではなく研究を伴うことが多い(なお第 2 4(2)「農業分野におけるAIの研究開発の特殊性」参照)。
そのため、本ガイドライン(ノウハウ活用編)で示す委託契約の対象としては、「AI
の研究開発」を想定し、用語についてもこれを用いる。
【AIの研究開発委託契約の対象・前提】
本ガイドライン(ノウハウ活用編)で示すAIの研究開発委託契約の対象および前提を以下に示す。
・契約当事者:農業分野でのAIを利用した製品・サービスの研究開発に関与する製品・サービス提供者、研究開発者(機関、団体)、各種団体等
・研究開発手法:非ウォーターフォールモデル
・研究開発対象:機械学習を利用した特定機能を持つプログラム(学習済みモデル)
・特徴:準委任型(成果報酬型)
・概要:研究開発モデル契約では、学習済みモデルのみの生成を行うケースを想定した、必要最低限の条項で構成されたシンプルな契約である。そのため基本契約と個別契約に分けていない。一定以上の規模を持つシステムの一部として学習済みモデルを生成する場合は、基本契約と個別契約に分けたり、システム開発契約を別に締結する等して、通常のシステム開発契約に必要な条項
42 経済産業省ガイドライン P77
43 経済産業省ガイドライン P102
44 以下では、「研究開発モデル契約書案」という。
45 経済産業省ガイドラインに示されるひな型は「開発モデル契約書案」と示されているが、本ガイドラインでは研究開発を目的としているので、本項で同ひな型ついては「研究開発モデル契約書案」として示す。
(「情報システム・モデル取引・契約」200746、同 200847(経済産業省)参照)を適宜付加して利用されたい。
【AI研究開発委託者が受託契約管理団体等の場合】
AI研究開発委託者における規程等によっては、本ひな型で定めている条項の内容が定められている場合もある。例えばAIの研究開発が、国等の事業によりなされる場合で、受託契約管理団体(例:国立研究開発法人、独立行政法人)がAI研究開発委託者となる場合には、AI研究開発委託者である受託契約委託管理団体における手続や規程等を踏まえて内容を定めることが求められる。
AI研究開発委託者が受託契約管理団体等の場合に、手続や規程等を踏まえて内容を定める必要性の要否を検討すべきモデル契約書案は、以下に示すものである。
・委託料およびその支払時期・方法(研究開発モデル契約書案第 4 条関係)
・研究開発に際しての体制等(研究開発モデル契約書案第 8 条第 3 項関係)
・再委託手続(研究開発モデル契約書案第9条関係)
・契約の変更手続き(研究開発モデル契約書案第 10 条関係)
・研究開発業務の完了の手続き(研究開発モデル契約書案第 11 条関係)
・秘密情報の取扱いにおける手続き(研究開発モデル契約書案第 14 条関係)
・解除権の行使(研究開発モデル契約書案第 25 条関係)
目的(研究開発モデル契約書案第 1 条関係)
【研究開発契約の委託者・受託者】
農業分野におけるAIの研究開発では、委託者は国や地方公共団体のほか、研究開発の受託契約管理団体、農業関係者等、公的機関、製品・サービス提供事業者などが想定され、必ずしもユーザという立場になるわけではない。またAIの研究開発を行う受託者は、大学等の研究開発機関や製品・サービス提供事業者などとなることが多く、ベンダに限定されるわけではない。
他方、AIの研究開発の委託・受託関係や、その契約において用いる用語などについては、定めるべき内容は経済産業省ガイドラインの研究開発モデル契約書案において示されるものと基本的には同一の内容となるものと想定される。
そこで、本ひな型では、AIの研究開発を委託する者については、「本AI研究開発委託者」、受託する者については、「本AI研究開発者」と定義したうえで、契約における目的及び用語については、経済産業省ガイドラインを踏襲することとした。なお契約における目的及び用語に関する解説は、経済産業省ガイドライン P103 を参照。
なお経済産業省ガイドラインでは、業務内容について、「別紙 業務内容」という形で
具体的な内容を定めている。本ひな型においても、同様の形をとりつつ、別紙のタイトル
46 xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xx_xxxxxx/xxxxxxx/xxxxx_xxxxxxxxxx.xxx
47 xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xx_xxxxxx/xxxxxxxxx/xxxxx_xxxxx/xxxxx_xxxxx.xxx
については、「研究開発業務の内容の詳細」とした。 変更した研究開発モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
第1条(目的) 本契約は、別紙「研究開発業務内容の詳細」記載の「研究開発対象」とされているコンピュータソフトウェアの研究開発(以下「本研究開発」という。)のための、本 AI研究開発委託者と本AI研究開発者の権利・義務関係を定めることを目的とする。 |
AI研究開発者の義務(研究開発モデル契約書案第 7 条関係)
【AI研究開発者における注意義務の程度】
経済産業省ガイドラインの研究開発モデル契約書案第 7 条第 1 項では、本契約の性格を準委任としたうえで、本AI研究開発者における善管注意義務の内容について、「情報処理技術に関する業界の一般的な専門知識」に基づく善管注意義務によるべきこととする。 AIの研究開発では、一般的なシステム開発とは異なり、その性格上、機械学習等の結果によって得られる学習済モデルが、契約の目的を達成する機能や精度を満たさないことがある。そのため、一般的には事前の仕様に基づき完成義務を負う請負は困難とされる。そのため、AI研究開発者が善管注意義務をつくす準委任としての性格を有するとされる。 そこで本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、上記の考え方を踏まえて本研究開発契約の性格として、準委任として捉えることとしたうえで、注意義務については、次の通りとした。 すなわち、AIの研究開発においては、一般的なシステムに関する知見のみならず、A Iに関する知見に着目して受託者を決定するのが一般であることから、AI研究開発者における善管注意義務の内容として、情報処理技術に関する業界の一般的な専門知識に加え、AI分野において一般的とされる専門知識についても、前提とするのが妥当であるとし、本ひな型ではその旨を加えた内容とした。 変更した研究開発モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
第7条(本AI研究開発者の義務) 1 本AI研究開発者は、情報処理技術に関する業界の一般的な専門知識、および AIに関連する一般的な専門知識に基づき、善良な管理者の注意をもって、本件業務を行う義務を負う。 |
【検収における説明義務】
経済産業省ガイドラインの研究開発モデル契約書案では、本契約の性格を準委任としたうえで、完成義務がないことと、成果物の内容の非保証を定める。 本ガイドライン(ノウハウ活用編)においても、AIの研究開発委託契約は、準委任としている。そのため、AI研究開発者に完成義務を負わせない内容としている。また成果物に対する非保証についても、準委任の性格上、経済産業省ガイドラインの内容を踏襲している。 他方、本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、成果報酬型の準委任によることとし ている。成果報酬型の準委任は、令和2年 4 月より施行される改正民法において新設される契約類型で、準委任により得られた成果に対して報酬を支払うものとする契約である48。 成果報酬型準委任を採用した趣旨は、AIの研究開発においては、完成義務が生じない場合でも、業務の結果、何らかの成果(プログラム、派生データ等)が得られるのが一般であると考えられるためである。 加えて、本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、そしてその成果を受領する際に、受任者であるAI研究開発者に対して、契約の目的が達せられない場合に説明責任を課す内容となっている。これは、AIの研究開発においては、委託者と受託者の間での専門的な知識に大きな乖離が生じていることが多く、また契約の目的を達成できない成果物が提供された場合に、AI研究開発委託者においても受領の際の確認において、契約の成果物としての受領の判断基準を設定することが困難となる。そこで、本契約の成果物が、契約の目的を達しないものである場合、AI研究開発委託者からの要請があれば、 AI研究開発者に対して適切な説明を行うことを、本ひな型では示している。なお、説明すべき内容や範囲については、AI研究開発者における負担が過大とならないよう、合理的な範囲とした49。 変更した研究開発モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
2 本AI研究開発者は、本件成果物について完成義務を負わず、本件成果物等が本A I研究開発委託者の業務課題の解決、業績の改善・向上その他の成果や特定の結果等を保証しない。ただし本AI研究開発委託者における業務課題解決等、本契約の目的 が達せられない場合には、本AI研究開発委託者からの求めに応じて、本AI研究開 発者は、合理的な範囲での説明を行うこととする。 |
48 ただし成果自体には請負のような完成義務はないため、準委任の受任者(AI研究開発者)は、善管注意義務に基づいて得られた成果により、報酬を得ることができる(改正民法第 648 条の2、第 648 条第 2 項)
49 AIのうち、深層学習によるモデルには、学習用データセットと得られたモデルの間に人間が理解できる論理関係を示すものはないため、論理的な説明を果たすことが難しいとされる。なお「人間を中心とするAI原則」では、説明責任の範囲について、「AI を利用しているという事実、AI に利用されるデータの取得方法や使用方法、AIの動作結果の適切性を担保する仕組みなど、用途や状況に応じた適切な説明が得られなければならない」とされる。
再委託(研究開発モデル契約書案第9条関係)
【再委託の拒否】
経済産業省ガイドラインの研究開発モデル契約書案第 9 条第 1 項では、合理的な理由がない場合には、委託者は再委託を拒めないという内容が含まれている50。しかし例えば国が行う研究開発助成事業では、事前に再委託も含めた履行体制を事前審査したうえで、委託先を決定するなどの状況があるため、再委託を行うことの合理性の疎明は、AI研究開発者側で行うべきことになる。そのため当該内容については、本ガイドライン(ノウハウ活用編)では不要とした。 変更した研究開発モデル契約書案(削除箇所は取消線で示す) | ||
第9条(再委託) 1 本AI研究開発者は、本AI研究開発委託者が書面によって事前に承認した場合、本件業務の一部を第三者(以下「委託先」という。)に再委託することができるものとする。 2~3 略 |
AI研究開発委託者が提供するデータ・資料等とその管理(研究開発モデル契約書案第
12 条関係)
【AI研究開発委託者が国や地方公共団体等、受託契約管理団体の場合】
経済産業省ガイドラインの研究開発モデル契約書案第 12 条では、本AI研究開発委託者による資料(「資料等」)、および学習のためにデータ(「本AI研究開発委託者提供データ等」)がAI研究開発者に提供が行われることを想定した条項が示されている。
農業分野におけるAIの研究開発の場合、本AI研究開発委託者は、研究開発資金を供与する国や地方公共団体等であったり、受託契約管理団体であったりする場合が多い。この場合には、本条が予定しているような形でのデータ提供関係は発生しない。このような
場合には、本条の規定を置く必要は生じない。
【提供者の正当な権限の確認】
本条第 3 項では、AI研究開発委託者からAI研究開発者に提供される提供データお
よび資料等についての権限が正当なものであることを保証する内容となっている。
50 「ユーザが上記の承諾を拒否するには、合理的な理由を要するものとする。」(第 9 条第 1 項(経済産業省ガイドライン P107))
AI研究開発委託者が法人である場合には、そもそもの前提として、AI研究開発委託者の担当者が正当な代理権(代表権)を有していることが必要であるし、またAI研究開発委託者が提供するデータや資料の処分に関する権限が、第三者が管理するものでないことが求められる。
AI研究開発者においては、契約に際して、提供されるデータや資料の内容、提供する
AI研究開発委託者の権限等を踏まえて、最低限の調査を行うことが求められる51。
AI研究開発委託者提供データの利用・管理(研究開発モデル契約書案第 13 条関係)
経済産業省ガイドラインの開発モデル契約書案第 13 条では、AI研究開発委託者提供データの利用・管理について示されている。
農業分野におけるAIの研究開発の場合、本AI研究開発委託者は、研究開発資金を供与する国や地方公共団体等であったり、受託契約管理団体であったりする場合が多い。この場合には、本条が予定しているような形での提供データの利用・管理関係は発生しないことがある。その場合には、所定の利用・管理規程によるものとし、本条の規定を置く必要
は生じない。
【AI研究開発委託者が国や地方公共団体等、受託契約管理団体の場合の提供データの利用・管理関係】
本条第 2 項では、提供されたデータの目的外利用の禁止について示されている。農業分野におけるAIの研究開発においては、例えば、受託契約管理団体からの委託を踏まえて、製品・サービス提供者と研究開発機関の間でAIの研究開発の委託契約(再委託契約)を結ぶことが想定される。AI研究開発に用いるデータ等が受託契約管理団体から利用目的等が限定された形で提供される場合、それを踏まえて製品・サービス提供者から提供されるデータ等がさらに研究開発機関との委託契約(再委託)においても、利用目的を制限することが求められる。
このような場合は製品・サービス提供者と研究開発機関の間で定める利用目的は、受託契約管理団体と製品サービス提供者の間で定める利用目的の範囲内であるように、設定することが求められる(表 9)。同様の契約関係は、国と受託契約管理団体、受託契約管理団体と製品・サービス提供者との契約関係でも生じるため、利用目的の設定に際しては、各確認が求められる。
【AI研究開発委託者が国や地方公共団体等、受託契約管理団体の場合の目的外利用の禁止】
51 例えば権利能力なき社団(例:生産部会等)によりデータや資料が提供される場合、実際に提供できるのは社団において代表権を持つ者に限定されるが、法人登記等がなされていないことから、公示方法から確認することが困難である。このような場合には、社団の構成や権限などについての資料も併せて提出してもらう等で確認することが想定される(P19 コラム参照)。
表 9 利用目的の設定妥当性判断の例
受託契約管理団体と製品・サービス提供者との契約で定めた利用目的の範囲
製品・サービス提供者とAI研究開発を行う研究開発機関との委託契約で定めた利用目的の範囲
製品・サービス提供者とAI研究開発を行う研究開発機関との委託契約で定めた利用目的の範囲の妥当性
利用目的の範囲(A∋B:B の目的は A の目的に含まれる)
A A B B
A B A B
〇 〇 × 〇
個人情報の取扱い(研究開発モデル契約書案第 15 条関係)
経済産業省ガイドラインのモデルひな型第 15 条では、提供データに個人情報が含まれている場合の責任関係について示している。 AI研究開発委託者、AI研究開発者が民間事業者でない場合には、例えば「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」が適用されるため、同法を含めて規定することが求められる。 なおこの場合には、個人情報の範囲が、個人情報保護法に定める範囲と異なることから留意が必要である52。 変更した研究開発モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
1 本AI研究開発委託者は、本研究開発の遂行に際して、個人情報の保護に関する法律および独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(本条において、以下「法」という。)に定める個人情報または匿名加工情報(以下、総称して「個人情報等」という。)を含んだデータを本AI研究開発者に提供する場合には、事前 にその旨を明示する。 |
【AI研究開発委託者・AI研究開発者が国や地方公共団体等、受託契約管理団体の場合】
52 例えば個人情報保護法では、個人情報の定義として容易照合性が要件となっているが、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律では、容易照合性は要件となっていないため、個人情報の範囲が広くなっている。
本件成果物の著作権の帰属等(研究開発モデル契約書案第 16 条関係)
経済産業省ガイドラインでは、著作権の帰属についてAI研究開発委託者に帰属するケースと、AI研究開発者に帰属するケース、両者の共有となるケースを想定し て、それぞれについての条項例が示されている53。
農業関係者等との関係では、農業関係者等がAIの研究開発に係る契約の当事者でない場合には、AIの研究開発の貢献の一部を担うにすぎず、一般的には著作権のすべてを第三者に帰属させることは想定されないため、本ひな型では、農業関係者等にすべて著作権が帰属するケースは示していない。
【農業関係者等によるデータ・ノウハウ提供契約との関係】
農業関係者等によるデータ・ノウハウ提供契約においては、提供されたデータ・ノウハウに基づいてデータ受領者により得られた知的財産権は、データ提供者(農業関係者等)とデータ受領者(AI研究開発主体)と、原則、共有とする旨を示している。(「(1)農業関係者等が締結するデータ・ノウハウの提供に係る契約」参照)。
そこで、AI研究開発委託者とAI研究開発者との契約においても、上記契約との整合性を図ることが求められる。
例えばAI研究開発委託者あるいはAI研究開発者のいずれかに著作権を帰属させる、あ
るいは両者での共有とする場合には、データ・ノウハウ提供契約において、本件成果物に係る知的財産権の帰属をデータ受領者のみとする(農業関係者等による著作権帰属を定めない)ようにしておくことで、整合性をとることができる。
データ・ノウハウ提供契約においてデータ・ノウハウ提供者(農業関係者等)とデータ受領者との間で、本件成果物に係る知的財産権の帰属を共有とした場合には、これと整合性をとるためには、AI研究開発委託契約において、データ受領者に当たる者に著作xxが帰属するように取決める必要がある。この関係を表 10 に示す。
表 10 データ・ノウハウ提供契約とAI研究開発委託契約における権利帰属関係の取決めの関係
データ・ノウハウ提供契約内容 AI研究開発委託契約内容
農業関係者等に権利帰属 データ受領者となる者において権利帰属
農業関係者等とデータ受領者の共有
農業関係者等に権利帰属なし
データ受領者となる者において権利帰属
※後述のように 3 者共有の場合は除く AI研究開発委託者、AI研究開発者のどちらに帰属でも可
【研究開発に貢献があった農業関係者等に対する利用権限の付与】
53 なお両者の共有となるケースについて、第三者に対して利用許諾を与える際の条項についてもオプションとして示されている。
経済産業省ガイドラインのモデルひな型では、著作権の帰属についてAI研究開発委託者、またはAI研究開発者に帰属するケースのほか、両者の共有となるケースを想定した条項例が示されている(C 案)。 両者の共有となるケースについて、第三者に対して利用許諾を与える際の条項についてもオプションとして示されている。 農業分野におけるAIの研究開発に際しては、契約当事者であるAI研究開発委託者とA I研究開発者以外に、第三者である農業関係者等のデータやノウハウ提供などによる貢献が認められる場合が一般的であることから、本ひな型では原則例として、第三者への許諾に関する規定を示した。なおこの場合には、別紙「研究開発業務内容の詳細」に「ノウハウ等提供者」の項を作成し、その内容としてノウハウ等を提供した者を示すことが想定される54。 変更した研究開発モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
【C 案】本AI研究開発委託者・本AI研究開発者の共有とする場合 1 略 2 前項の場合、本AI研究開発委託者および本AI研究開発者は、共有にかかる著作権につき、本契約に別に定めるところに従い、前項の共有にかかる著作権の行使についての法律上必要とされる共有者の合意を、あらかじめこの契約により与えられるものとし、相手方の同意なしに、かつ、相手方に対する対価の支払いの義務を負うことなく、ノウハウ等提供者への利用許諾を含め、かかる共有著作権を行使することができるものとする。 3~4 略 |
【AI研究開発委託者・本AI研究開発者、農業関係者等との共有とする場合】
経済産業省ガイドラインの開発モデル契約書案では、著作権の帰属についてAI研究開 発委託者とAI研究開発者の共有となるケースを想定した条項例が示されている(C 案)。農業関係者等の貢献によっては、さらにデータ・ノウハウ提供を行った農業関係者等も 含めて、共有とするケースも想定される。 本ガイドライン(ノウハウ活用編)ではこのようなケース(C2 案)を想定したモデルひな型の条項を示した。 変更した研究開発モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
【C2案】本AI研究開発委託者・本AI研究開発者、農業関係者等との共有とする場 合 1 本件成果物および本研究開発遂行に伴い生じた知的財産(以下「本件成果物等」 |
54 なお実際の持ち分を決定する際に、ノウハウの対価については、一般的には確定された価値評価方法がなく、算定は困難とされるため(経済産業省ガイドラインでは「そもそも、ノウハウについては、確立した価値評価手法がないため、当事者の信じる価値(主観的価値)と、実際のノウハウの価値(客観的価値)が異なることがしばしばある」とされる)、当事者間で成果物の利用方法の方針なども含めて検討することが求められる。
という。)に関する著作権(著作xx第 27 条および第 28 条の権利を含む。)は、 本AI研究開発委託者の本AI研究開発者に対する委託料の支払いが完了した時点で、本AI研究開発委託者、本AI研究開発者または第三者が従前から保有していた著作物の著作権を除き、本AI研究開発者、本AI研究開発委託者、別紙「研究開発業務内容の詳細」に示す「ノウハウ等提供者」との共有(持分均等)とする。この場合、xxxx等提供者との権利の共有は、xxxx等提供者と本AI研究開発委託者との間の権利帰属関係に関する合意がなされることを条件に効力が発生する55。なお、本AI研究開発者から本AI研究開発委託者、xxxx等提供者への著作権移転の対価は、委託料に含まれるものとする。 2 前項の場合、本AI研究開発委託者および本AI研究開発者、xxxx等提供者 は、共有にかかる著作権につき、本契約に別に定めるところに従い、前項の共有にかかる著作権の行使についての法律上必要とされる共有者の合意を、あらかじめこの契約により与えられるものとし、相手方の同意なしに、かつ、相手方に対する対価の支払いの義務を負うことなく、自ら利用することができるものとする。 3 本AI研究開発委託者、本AI研究開発者、およびxxxx等提供者は、他の共 有者の同意を得なければ、第 1 項所定の著作権の共有持分を処分することはできないものとする。 4 本AI研究開発委託者、本AI研究開発者およびxxxx等提供者は、本契約に 従った本件成果物等の利用について、他の当事者および正当に権利を取得または承 継した第三者に対して、著作者人格権を行使しないものとする。 |
【譲渡先の制限】
本条で定める成果物の著作権の帰属に関連して、著作権の譲渡先について制限が設けられることがある。例えば農業分野におけるAIの研究開発においては、例えば、受託契約管理団体からの委託を踏まえて、製品・サービス提供者と研究開発機関の間でAIの研究開発の委託契約を結ぶ場合に、受託契約管理団体とAI研究開発委託者との間での契約で、本件成果物である著作権の譲渡先が限定されていることが想定される。 その条項例を下記に示す。この場合、別紙「研究開発業務内容の詳細」に示す「知的財産の譲渡・利用許諾先の範囲」を設けて、受託契約管理団体と間で取り決めた譲渡先制限の内容を盛り込むことが想定される。 本AI研究開発による成果物(著作権)の譲渡先、利用許諾先を制限する場合の追加的な研 究開発モデル契約書案((追記箇所は太字・下線で示す)) | ||
本件成果物および本研究開発遂行に伴い生じた知的財産(以下「本件成果物等」と いう。)に関する著作権については、別紙「研究開発業務内容の詳細」に示す「知的財産の譲渡・利用許諾先の範囲」に定める内容でのみ、譲渡、あるいは利用許諾 を行う。 |
55 ここではノウハウ提供者から研究開発委託者がデータ、ノウハウの提供を受けることを想定している。
このような場合は製品・サービス提供者と研究開発機関の間で定める譲渡先制限は、受託契約管理団体と製品サービス提供者の間で定める譲渡先の範囲内になるように、設定することが求められる(表 11)。同様の契約関係は、国と受託契約管理団体、受託契約管理団体と製品・サービス提供者との契約関係でも生じるため、著作権の譲渡先の設定に際しては、各確認が求められる。
表 11 著作権の譲渡先の設定妥当性判断の例
受託契約管理団体と製品・サービス提供者との契約で定めた譲渡先の範囲
製品・サービス提供者とAI研究開発を行う研究開発機関との委託契約で定めた譲渡先の範囲製品・サービス提供者とAI研究開発を行う研究開発機関との委託契約で定めた譲渡先の範囲の妥当性
著作権の譲渡先の範囲(A∋B:B の目的は A の目的に含まれる)
A A B B
A B A B
〇 〇 × 〇
本件成果物等の特許xxの帰属(研究開発モデル契約書案第第 17 条関係)
【農業関係者等を含めた共有とする場合】
経済産業省ガイドラインの開発モデル契約書案第 17 条第 2 項では、AI研究開発委託者および本AI研究開発者が共同で発明した本件成果物等に関する特許xxについては共有とする旨の規定が示されている56。 農業関係者等がノウハウを提供するなどにより、共同で発明した特許権については、A I研究開発委託者とAI研究開発者以外に、農業関係者等が特許xxの共有者の一部となることが想定できる。このような場合には、権利を帰属させるノウハウを提供した第三者について、「研究開発業務内容の詳細」の「ノウハウ等提供者」の部分に、当該第三者について示す必要がある ノウハウを提供した農業関係者等も含めて共有とする場合の研究開発モデル契約書案 (追記箇所は太字・下線で示す) | ||
2 本AI研究開発委託者および本AI研究開発者および別紙「研究開発業務内容の詳 細」に示す「ノウハウ等提供者」が共同で発明した本件成果物等に関する特許xxについては、本AI研究開発委託者、本AI研究開発者、および「ノウハウ等提供者」との共有(持分は貢献度に応じて定める。)とする。この場合、本AI研究開発委託 者、本AI研究開発者、および「ノウハウ等提供者」は、共有にかかる特許xxにつ |
56 経済産業省ガイドライン P118
き、本契約に定めるところに従い、それぞれ相手方の同意なしに、かつ、相手方に対 する対価の支払いの義務を負うことなく、自ら実施することができるものとする。 |
【日本版バイ・ドール制度が適用される場合の条項例】
AIの研究開発が公的資金により実施される場合、産業技術力強化法第 17 条(以下、「日本版バイ・ドール制度」57)の適用を受けることが想定される。日本版バイ・ドール制度では、本研究開発が公的資金により行われる場合には、一定の要件の下で、研究開発の受託者に特許xxを帰属させることができる。 農業分野では、公的資金により研究開発が行われることが多いことから、本モデルひな型では第 4 項で日本版バイ・ドール制度が適用される場合の条項例を示した。 日本版バイ・ドール制度の適用を受ける場合には、本制度に示される手続きを実施の上、特許xxの帰属が決定する旨を内容とした。本項は国がAI研究開発委託者になる場合のほか、研究開発における受託契約管理団体(国立研究開発法人等)がAI研究開発委託者となる場合にも適用される。 産業技術力強化法第 17 条の適用対象となる場合の研究開発モデル契約書案(追記箇所は太字・下線で示す) | ||
4 本件成果物が産業技術力強化法第 17 条の適用対象となる場合には、同条に定める 手続きを行ったうえで、特許xxの帰属を決定するものとする。 |
【譲渡先の制限】
本条で定める成果物の特許権の帰属に関連して、特許権の譲渡先について制限が設けられることがある。例えば農業分野におけるAIの研究開発においては、例えば、受託契約管理団体からの委託を踏まえて、製品・サービス提供者と研究開発機関の間でAIの研究開発の委託契約を結ぶ場合に、受託契約管理団体とAI研究開発委託者との間での契約で、本件成果物である特許権の譲渡先が限定されていることが想定される。
その条項例を下記に示す。この場合、別紙「研究開発業務内容の詳細」に示す「知的財産の譲渡・利用許諾先の範囲」を設けて、受託契約管理団体と間で取り決めた譲渡先制限の内容を盛り込むことが想定される。
このような場合は製品・サービス提供者と研究開発機関の間で定める譲渡先制限は、8)で示した著作権の場合同様、受託契約管理団体と製品サービス提供者の間で定める譲渡先の範囲内であるように、設定することが求められる(表 11 参照)。
本AI研究開発による成果物(特許権)の譲渡先、利用許諾先を制限する場合の追加的な
57 日本版バイ・ドール制度については、「日本版バイ・ドール制度(産業技術力強化法第17 条)」(経済産業省 HP)
(xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxxx/xxxxxxx_xxxxxxxx/xxxxxxxxxx_xxxxxx/xxxx_xxxx_xxx.xxxx)に趣旨、手続等が示されている。
研究開発モデル契約書案((追記箇所は太字・下線で示す)) | ||
本件成果物および本研究開発遂行に伴い生じた知的財産(以下「本件成果物等」と いう。)に関する特許権については、別紙「研究開発業務内容の詳細」に示す「知的財産の譲渡・利用許諾先の範囲」に定める内容でのみ、譲渡、あるいは利用許諾 を行う。 |
本件成果物等の利用条件(研究開発モデル契約書案第 18 条関係)
【成果物の利用条件】
経済産業省ガイドラインの開発モデル契約書案第 18 条では、成果物(学習済みモデル、学習用データセット、学習済みパラメータ、発明、ノウハウ等)の利用条件について、「知的財産権の対象となるもの」に分けて、それぞれの利用条件の決め方により、A 案、B 案、 C 案の 3 案を示している。
このうち B 案、C 案は、それぞれAI研究開発委託者、AI研究開発者に権利を帰属させることを前提とした条項例である。この場合 8)で示したように、データ・ノウハウ提供契約における取決めとの整合性を図って、決定することが求められる。
A 案については、成果物の知的財産への該当性に応じて、別紙「利用条件一覧表」に、①本研究開発目的(および本AI研究開発委託者の業務)のための自己利用、②上記①以外の他目的(再利用モデル生成目的等)のための自己利用、③第三者への開示、利用許諾、提供が認められるか否か、認められる場合の詳細条件を記載するようになっている。
農業分野におけるAIの研究開発による成果物には、農業関係者等のノウハウなどが含まれる場合があるほか、研究開発における資金提供が国や地方公共団体によるものであり、その成果の使用は政策目的に沿って行われることが求められることを鑑みると、別紙「利用条件一覧表」の利用条件においては、農業関係者等への配慮や、資金投入目的などを踏まえた内容となることが求められる。
具体的には例えば、国の事業による研究開発によるものである場合には、利用目的については、例えば競争力強化の観点から、国内の農業関係者等の生産支援等を行うための利用に限定される、など公的資金を投入した政策目的に応じた制限がなされることがある。
そこで本研究開発成果を活用した製品やサービス利用においても、このような制限の範囲での提供を行うことが求められる58。
経済産業省ガイドラインでは、利用条件の設定は、生データの提供はユーザが行うこととされているが、農業分野におけるAIの研究開発においては、農業関係者等がデータの提供を行うため、農業関係者等が締結するデータ提供契約における第三者提供先と、AIの研究開発において得られた学習用データセットや学習済みモデルの第三者提供先等の整
58本ガイドラインでは、農業分野におけるAIの研究開発契約を行う当事者間の契約条項を対象とするが、AIの開発
により直接的に影響をうけるのは、農業関係者等である。特に地域間競争力の低下などを招かないように、農業関係者等はデータ等の提供段階から、利用目的や第三者提供の制限などを行う場合があるが、民間事業者の研究開発当事者間においてもこの趣旨を十分考慮して、データ等の目的外利用の禁止や第三者提供制限の範囲の設定を検討することが求められる。
合性をとる必要がある。例として表 12 に示すような形で、関係する契約関係を整理して、利用条件における第三者提供先等を定めることが求められる。 表 12 成果物の利用条件における第三者への提供先の設定妥当性判断の例 利用目的の範囲(A∋B:B の目的は A の目的に含まれる) 農業関係者等とのデータ 提供契約で定めた派生デ A A B B ータ等の第三者への提供 先の範囲 AI研究開発委託者とA I研究開発者との委託契 約で定めた成果物(学習用 A B A B データセット、学習済みモデル等)の提供先の範囲 AI研究開発委託者とA I研究開発者との委託契 約で定めた成果物(学習用 〇 〇 × 〇データセット、学習済みモ デル等)の提供先の範囲の妥当性 | ||
第18条(本件成果物等の利用条件) 【A 案】原則型 本AI研究開発委託者および本AI研究開発者は、本件成果物等について、別紙「利用条件一覧表」記載のとおりの条件で利用できるものとする。同別紙の内容と本契約の内容との間に矛盾がある場合には同別紙の内容が優先するものとする。 【B 案】本AI研究開発委託者への著作権帰属型(16 条 B 案)の場合のシンプルな規定本AI研究開発委託者は、本件成果物等を利用でき、本AI研究開発者は、本件成 果物等を本研究開発遂行のためにのみ利用できる。 【C 案】本AI研究開発者著作権帰属型(16 条 A 案)の場合のシンプルな規定 本AI研究開発者は、本件成果物等を利用でき、本AI研究開発委託者は、本件成果物を別紙「利用条件一覧表」に示す利用条件の範囲で、本AI研究開発委託者自身 の業務のためにのみ利用できる。 |
知的財産侵害の責任(研究開発モデル契約書案第 21 条関連)
【AI研究開発者における非保証の制限】
農業分野においては、AI研究開発委託契約において農業関係者等が関与するケースが想定され、2(1)②で示したように、データ・ノウハウ提供契約において、データ等を提供した農業関係者等の利益は保護されることとなっている。そこで本条との関係では、農業
関係者等は「第三者」として位置づけられ、AI研究開発委託者とAI研究開発者との契約
によって得られた成果物の利用等において、農業関係者等の権利等が侵害した場合には、 AI研究開発委託者とAI研究開発者の間で農業関係者等への権利侵害等への対応を図る必要がある。 経済産業省ガイドラインの開発モデル契約書案第 21 条では、このようなケースにおける第三者の知的財産を侵害した場合の損害賠償の対応について、3 つのケースを想定した条項を用意する。 このうち、経済産業省ガイドラインにおける B 案においてAI研究開発者が「本AI研究開発者が知的財産権非侵害(著作権を除く)の保証を行わない」場合、第三者の知的財産権侵害に対しては、AI研究開発者に帰責事由がある場合でも、責任を負わないこととなっている。 しかし農業分野の研究開発においては、本AI研究開発者に対して、データやノウハウ等を提供した場合に、農業関係者等の知的財産を侵害し、AI研究開発者帰責事由が認められる場合でも、その責めを負わないのは、妥当ではない。 そこで本ひな型では、B 案については、直接、農業関係者等がAI研究開発者に対して、知的財産を提供した場合で、その知的財産を侵害した場合は、非保証の対象外とし、損害賠償責任の可能性を残すこととした。 | ||
第21条(知的財産権侵害の責任) 【A-1 案】本AI研究開発者が知的財産権非侵害の保証を行う場合(本AI研究開発委託者主導) 1 本件成果物等の使用等によって、本AI研究開発委託者が第三者の知的財産権を侵害したときは、本AI研究開発者は本AI研究開発委託者に対し、第 22 条(損害賠 償)第 2 項所定の金額を限度として、かかる侵害により本AI研究開発委託者に生じた損害(侵害回避のための代替プログラムへの移行を行う場合の費用を含む。)を賠償する。ただし、知的財産権の侵害が本AI研究開発委託者の責に帰する場合はこの限りではなく、本AI研究開発者は責任を負わないものとする。 2 本AI研究開発委託者は、本件成果物等の使用等に関して、第三者から知的財産権の侵害の申立を受けた場合には、直ちにその旨を本AI研究開発者に通知するものとし、本AI研究開発者は、本AI研究開発委託者の要請に応じて本AI研究開発委託者の防御のために必要な援助を行うもあのとする。 【A-2 案】本AI研究開発者が知的財産権非侵害の保証を行う場合(本AI研究開発者主導) 1 本AI研究開発委託者が本件成果物等の使用等に関し第三者から知的財産権の侵害の申立を受けた場合、次の各号所定のすべての要件が充たされる場合に限り、第 22 条 (損害賠償)の規定にかかわらず本AI研究開発者はかかる申立によって本AI研究開発委託者が支払うべきとされた損害賠償額及び合理的な弁護士費用を負担するも のとする。ただし、第三者からの申立が本AI研究開発委託者の帰責事由による場合 |
にはこの限りではなく、本AI研究開発者は一切責任を負わないものとする。 ① 本AI研究開発委託者が第三者から申立を受けた日から●日以内に、本AI研究開発者に対し申立の事実及び内容を通知すること ② 本AI研究開発委託者が第三者との交渉または訴訟の遂行に関し、本AI研究開発者に対して実質的な参加の機会およびすべてについての決定権限を与え、ならびに必要な援助をすること ③ 本AI研究開発委託者の敗訴判決が確定することまたは本AI研究開発者が訴訟遂行以外の決定を行ったときは和解などにより確定的に解決すること 2 本AI研究開発者の責に帰すべき事由による知的財産権の侵害を理由として本件成果物等の将来に向けての使用が不可能となるおそれがある場合、本AI研究開発者は、本AI研究開発者の判断及び費用負担により、(ⅰ)権利侵害のないものとの交換、(ⅱ)権利侵害している部分の変更、(ⅲ)継続使用のための権利取得のいずれかの措置を講じることができるものとする。 3 第 1 項に基づき本AI研究開発者が負担することとなる損害以外の本AI研究開発委託者に生じた損害については、第 22 条(損害賠償)の規定によるものとする。 【B 案】本AI研究開発者が知的財産権非侵害(著作権を除く)の保証を行わない場合 1 本件成果物等の使用等によって、本AI研究開発委託者が第三者の著作権を侵害したときは、本AI研究開発者は本AI研究開発委託者に対し、第 22 条(損害賠償)第 2 項所定の金額を限度として、かかる侵害により本AI研究開発委託者に生じた損害 (侵害回避のための代替プログラムへの移行を行う場合の費用を含む。)を賠償する。ただし、著作権の侵害が本AI研究開発委託者の責に帰する場合はこの限りではなく、本AI研究開発者は責任を負わないものとする。 2 本AI研究開発者は本AI研究開発委託者に対して、本件成果物等の使用等が第三者の知的財産権(ただし、著作権およびAI研究開発者が直接、第三者から知的財産 の提供を受けた場合を除く)を侵害しない旨の保証を行わない。 3 本AI研究開発委託者は、本件成果物等の使用等に関して、第三者から知的財産権の侵害の申立を受けた場合には、直ちにその旨を本AI研究開発者に通知するものとし、本AI研究開発者は、本AI研究開発委託者の要請に応じて本AI研究開発委託 者の防御のために必要な援助を行うものとする。 |
損害賠償(研究開発モデル契約書案第 22 条)
【損害賠償額の上限】
経済産業省ガイドラインでは、第 22 条第 2 項但書において、開発者の軽過失行為におい
て生じる損害賠償責任の上限を設け、責任を軽減している59。
59 「ベンダがユーザに対して負担する損害賠償は、債務不履行、法律上の瑕疵担保責任、知的財産権の侵害、不当利得、不法行為その他請求原因の如何にかかわらず、本契約の委託料を限度とする。」(第 22 条第 1 項ただし書き)
農業分野におけるAIの研究開発に係る委託契約では、第三者である農業関係者等が保有するノウハウを活用することが一般的であり、その流出などに伴い生じる損害賠償などについても、通常損害として想定することが求められる。これらについて、損害賠償責任の軽減を認めると、委託契約においては第三者となる農業関係者等に対する損害賠償が十分行われない可能性があるなど、不測の損害を被る可能性がある60。そこで本項では、AI研究開発者において通常発生する損害に対する損害賠償のうち、原則として経済産業省ガイドラインのひな形に示されるように上限を設けるものとし61、農業関係者等が提供した知的財産や個人情個人情報の侵害等に係る損害対する賠償については、損害賠償の上限制限の例外とする旨を第 3 項に示した。 損害賠償の上限に係る研究開発モデル契約書案((追記箇所は太字・下線で示す)) | ||
第22条(損害賠償) 1 略。 2 本AI研究開発者が本AI研究開発委託者に対して負担する損害賠償は、債務不履行、契約不適合責任62、不当利得、不法行為その他請求原因の如何にかかわらず、本契約の委託料を限度とする。 3 前項は、以下の場合には適用しない。 (1) 損害が損害賠償義務者の故意または重大な過失に基づくものである場合。 (2) 第 14 条(秘密情報の取扱い)および第 15 条(個人情報の取扱い)に違反する場合 |
権利義務譲渡の禁止(研究開発モデル契約書案第 24 条関係)
【譲渡先制限の妥当性判断】
経済産業省ガイドラインの開発モデル契約書案第 24 条では、契約上の地位の移転の禁止等について示している63。
例えばAI研究開発委託者を通じて、農業関係者等がAI研究開発者に対してデータやノウハウなどの提供を行っている場合に、AI研究開発者から、データ提供を行った農業関係者等の利益に反する第三者に契約上の地位が移転すると、AI研究開発委託者のみならず、AIの研究開発に協力する農業関係者等においても不測の損害が生じることにつながる。そこで、契約の当事者の片方が事前に合意することなく、契約上の地位の移転等が生
じないようにすることが重要となる。
60 例えば農業関係者等とAI研究開発委託者の間で、ノウハウ流出に関する損害賠償責任に関して合意している場合でも、AI研究開発者に対する損賠賠償責任が限定されていると、農業関係者等は十分な損害賠償を得られない可能性がある。
61 経済産業省ガイドライン P124
62 経済産業省ガイドラインでは法律上の瑕疵担保責任とするが、令和 2 年 4 月に施行される改正民法(債権法)では、瑕疵担保責任に関する規定に代わり、契約不適合責任の規定が設けられたため、こちらを採用した。
63 経済産業省ガイドライン P124 参照
〇
×
〇
〇
製品・サービス提供者とAI研究開発を行う研究開発機関との委託契約で定めた移転先の範囲の妥当性
B
A
B
A
製品・サービス提供者とAI研究開発を行う研究開発機関との委託契約で定めた移転先の範囲
経済産業省ガイドラインの開発モデル契約書案第 28 条では、契約に関する紛争が発生した場合の管轄裁判所の取決めについて示している64。 契約上の紛争が両当事者間で生じた場合には、裁判による解決だけではなく、第三者による仲裁により解決を図る方が、両当事者にとってメリットが大きいことがある。特に海外企業との紛争においては、両当事者の負担や実効性などの観点から、仲裁のメリットが指摘されている65。 そこで本条では、裁判による紛争の解決の取決めを原則としつつ、仲裁による紛争解決の取決めを代替的に設ける場合の条項例を示した。 仲裁による紛争解決を行う際の研究開発モデル契約書案((追記箇所は太字・下線で示す)) | ||
第28条(仲裁) 本契約に関する紛争について、協議により解決することができない場合には、本AI 研究開発委託者と本AI研究開発者は、この契約からもしくはこの契約に関連して、当事者の間に生ずることがあるすべての紛争、論争もしくは意見の相違を、日本商事仲裁 |
B
B
A
A
受託契約管理団体と製品・サービス提供者との契約で定めた移転先の範囲
移転先の範囲(A∋B:B の移転先はA の移転先に含まれる)
本条では事前の書面による同意により、契約上の地位の移転等が可能となっている。この移転先については、データ・ノウハウ等提供契約において設定した制限との整合性をとることが求められる。その妥当性の基準について表 13 に示す
表 13 契約上の地位の移転先の妥当性判断の例
64 経済産業省ガイドライン P125 参照
65 例えばデータ利活用編 P61 以下。経済産業省ガイドライン P67 参照。
協会の商事仲裁手続きにしたがって、日本国xxxを仲裁地として、仲裁により最終的
に解決することに合意する。仲裁人は3名とし、仲裁言語は日本語とする。
【別紙】研究開発業務内容の詳細
経済産業省ガイドラインの開発モデル契約書案には、別紙として「業務の内容の詳細」が示されている。
別紙で定める内容・項目は、基本的には農業分野におけるAIの研究開発においても妥当するものと考えられるが、これまで見たように農業関係者等の関与や、国・地方公共団体による公的な資金の提供による場合等の農業分野における特殊性を鑑み て、追加すべき項目や基本的に示す内容として変更すべき点がある。
以下ではその内容について示す。
(a) ノウハウ等提供者に係る項目
農業分野におけるAIの研究開発においては、AI研究開発委託者またはAI研究開発者のいずれかを通じて、第三者である熟練農業者や農業普及指導員等からデータやノウハウの提供を受けることがある。
本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、そのような場合には、著作物であるプログラムについて、第三者も含めた共有の可能性がある旨を示している(第 16 条 C-2案参照)。この場合、共有者となる第三者についてもあらかじめ、別紙において示しておくことが、のちのトラブル防止のために重要である。
そこで農業分野におけるAI研究開発においては、別紙に「ノウハウ提供を行う第三者」の項目を設け、AI研究開発委託者またはAI研究開発者以外にノウハウを提供した第三者の項目を設けることが想定される(第 16 条解説第 5 項参照)
(b) 第 18 条における利用条件の設定について
経済産業省ガイドラインでは、「【別紙】利用条件一覧表(18 条関係)」において、利用条件を設定する際のケースとこれに基づく学習用データセット、学習済みモデルの利用条件(利用範囲、第三者提供範囲等)が示されている。
ここで示されるケースについては、AIの研究開発を委託する側と研究開発する側の当事者のみを想定するものあり、主に民間事業者間の研究開発業務を想定したものとなっている。
しかしながら、農業分野におけるAIの研究開発においては、データやノウハウの提供を行うのが第三者である農業関係者等であることが多く、これらの者に対するフィードバックが求められることが多い。また国や地方公共団体の事業においては、成果物は必ずしも当事者間のみで利用されることは想定されず、施策目的に応じて成果物の第三者への提供がなされることが想定される。
これらの観点から、本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、第 18 条の利用条件の設定について、AI研究開発委託者が国、地方公共団体、または受託契約管理団体であることを想定した例を追加的に示した。
なお農業分野において民間事業者間でAIの研究開発委託を行う場合については、経済産業省ガイドラインに示されるケースをベースに、データ等を提供する農業関係者等に対する配慮を、例えば第三者への提供先等に加える等の対応を行うなどの調整を行うことが妥当であると考える。
(c) 本「別紙」の当事者関係
次ページ以下では、ケース 1 からケース3までの前提に基づいた別紙を示す。別紙
における当事者関係は図 26 のとおりである。
図 26 本「別紙」で示す当事者関係
【別紙】研究開発業務の内容の詳細
1 本開発の対象
(例)次の機能を有するソフトウェア(名称「●」)
⑴ 機能
・・・・
⑵ 使用環境
・・・・
⑶ 前提条件
・・・・
2 本データの明細
⑴ AI研究開発委託者が提供するデータの明細
(例)別紙データ目録に記載するデータ
[⑵ AI研究開発者が提供するデータの明細]
3 ユーザが提供する資料等
⑴・・・
⑵・・・
その他、本開発遂行のために必要な資料等が生じた場合は別途協議する。
4 作業体制
【AI研究開発者およびAI研究開発委託者の責任者および必要に応じてメンバそれぞれの役割、所属、氏名の記載とソフトウェア開発の実施場所等を記載】
⑴ AI研究開発者の作業体制
・AI研究開発者側責任者氏名: ●● ●● AI研究開発者側責任者は次の役割を担当する。
① ・・・・・
② ・・・・・
[・メンバ]
メンバは次の役割を担当する。
【※組織図/氏名/役割を記載】
⑵ AI研究開発委託者の作業体制
・AI研究開発委託者側責任者氏名: ●● ●● AI研究開発委託者側責任者は次の役割を担当する。
① ・・・・・
② ・・・・・
[・メンバ]
メンバは次の役割を担当する。
① ・・・・・
② ・・・・・
【※体制図/氏名/役割を記載】
⑶ 研究開発実施場所
【研究開発の作業等の実施場所を記載】
5 具体的作業内容(範囲、仕様等)
⑴ AI研究開発者の担当作業:
⑵ AI研究開発委託者の担当作業:
(注)共同担当作業がある場合には両方に入れる
6 連絡協議会(設置する場合)
⑴ 開催予定頻度:
⑵ 場所:
7 作業期間、スケジュール
8 AI研究開発者がAI研究開発委託者の委託に基づき開発支援を行う成果物の明細
(例)(該当するものに○をつける)
該当 | 対象物 | 納品有無 | 納品形態(※) |
学習用データセット | |||
学習用プログラム | |||
学習済みモデル |
※ データの場合はデータ形式、プログラムの場合はソースコード・バイナリコード等)
9 ノウハウ等提供者(本研究開発において使用されるノウハウを提供する第三者)
⑴ ノウハウ等提供者の氏名:
⑵ 提供されるノウハウの概要:
10 業務の完了
⑴ AI研究開発者からの成果物提供期限:●年●月●日
⑵ ユーザによる確認期間:成果物提供日から●日間
11 委託料
12 委託料の支払時期・方法
(例)AI研究開発委託者が本件業務の確認を完了してから●日以内にAI研究開発委託者は委託料をAI研究開発者指定の銀行口座に振り込み送金の方法により支払う。振込手数料はAI研究開発委託者の負担とする。
【別紙】AI研究開発委託者提供データの利用条件(13 条 2 項ただし書関係)
[*以下の記載は参考例であり、実際に利用する際は修正されることを前提としている。また、以下は、AI研究開発委託者提供データに個人情報等を含まない場合を想定した記載である。個人情報等を含むデータの取扱いについては、個人情報保護規制の遵守が必要となる。]
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 本開発目的以外の目的での利用 | • 不可/可 • 可の場合の条件 【条件の記載例】 例① AI研究開発委託者の製品・サービス開発や改善目的での利用。 例② 研究目的のための利用。 例③ 第三者に提供しないことを条件に、学習済みモデルの生成および当該学習済みモデルの利 用。 例④ 令和●年●月●日から●か月間は、●●業の分野で利用できる学習済みモデルの生成のため には利用できないものとする。 |
② 第三者への提供 | • 不可/可 • 可の場合の条件 【条件の記載例】 例① ノウハウ等提供者(農業関係者等)を特定できない形に加工したデータに限り提供可能とする。なお、ノウハウ等提供者はデータの有用性や正確性について責任を負わないものとする。 例② AI研究開発委託者が別途指定するデータを除外したデータに限り提供可能とする。なお、 AI研究開発委託者はデータの有用性や正確性について責任を負わないものとする。 例③ 受託契約管理団体における規程・契約の範囲 で提供可能とする。 |
【別紙】利用条件一覧表(18 条関係)
利用条件一覧表
[*以下の記載は参考例であり、実際に利用する際は修正されることを前提としている。]
本一覧表の対象 | 本学習用データセット |
【AI研究開発委託者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 自己の業務遂行に必要な範囲での利用(ただし、②に 記載の利用を除く。) | |
② 再利用モデルの生成 | |
③ 第三者への開示、利用許 諾、提供等(以下「第三者 提供等」という。) |
【AI研究開発者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 本研究開発目的以外の目的 のための利用(再利用モデルの生成等) | |
② 第三者提供等 |
<ケース1>
公的資金を活用した事業により、AIの研究開発を行う場合で、
AI研究開発者に知的財産が帰属66し、AI研究開発委託者に成果物として学習済みデータセットと学習済みモデルを提供するケース(ケース1)
【状況】
1 AI研究開発委託者は公的資金によるAI研究開発に係る元契約を受託契約管理団 体と締結。同契約において、研究開発対象となるAIおよび当該研究開発に際して生成された派生データ等の利用目的および提供先等の制限が設けられている。
2 上記受託契約管理団体との契約では、知的財産の帰属についてはAI研究開発者に 帰属することが認められているものの、所定の範囲での利用については許諾を得られるようにする条件が示されている。
3 農業関係者等が提供した生データのみ利用。生データを提供した農業関係者等に対 しては、生データから派生する知的財産の帰属は認めないものの、利用については許諾している。
4 本学習用データセットは専らAI研究開発者のノウハウを利用してAI研究開発者が生成し、AI研究開発委託者は特に寄与なし。
5 学習用プログラムはAI研究開発者が OSS を利用して研究開発したものを利用。
6 本学習済みモデルの生成は専らAI研究開発者のノウハウを利用してAI研究開発者が生成し、AI研究開発委託者は特に寄与なし。
7 本学習済みモデルは、汎用的に利用できる可能性が高いものであり、AI研究開発者は研究開発した本学習済みモデルを第三者に提供することを予定している。
8 AI研究開発委託者は、本学習済みモデルをAI研究開発者が第三者提供することは認めているが、提供先についてはAI研究開発委託者が限定している。
9 AI研究開発委託者は、本学習済みモデルについて追加でデータを学習させ、本学習済みモデルの精度を上げることを予定している。
10 AI研究開発委託者に提供される成果物は、本学習用データセットと本学習済みモデル。
【前提とする権利帰属および利用条件】
1 本学習用データセットと本学習済みモデルの知的財産はAI研究開発者に帰属する。
2 本学習用データセットは、成果物としてAI研究開発委託者に提供され、AI研究開発委託者が利用できる。AI研究開発委託者は、本学習用データセットを利用して再利用モデルを生成することができるが、AI研究開発者が認める場合を除き、当該
66 知的財産にはデータなども含まれており、権利性がないことから帰属という概念が該当しないが、ここでは管理・処分する権限があるという趣旨で、便宜的に「帰属」の語を用いている(なお【ポイント 13】参照)。
再利用モデルを第三者に提供してはならない。AI研究開発委託者は本学習用データセットそのものを第三者に開示、利用許諾、提供してはならない。AI研究開発者 は、本学習用データセットを利用して再利用モデルを生成できるが、それを第三者へ提供することについては本学習済みモデルの第三者提供と同様の条件に服する。ま た、AI研究開発者は本学習用データセットそのものを第三者に開示、利用許諾、提供してはならない。
3 本学習済みモデルは、成果物としてAI研究開発委託者に提供され、AI研究開発委託者が利用できる。AI研究開発委託者は、本学習済みモデルの自社利用とそれを使った再利用モデルの生成ができるが、本学習済みモデルとその再利用モデルを第三者に提供してはならない。AI研究開発者は、本学習済みモデルを、本研究開発目的のための自己利用の他、AI研究開発委託者が提供を認める第三者のための再利用モデルのために生成可能。AI研究開発者はAI研究開発委託者が提供を認める第三者
67には、本学習済みモデルそのものを利用許諾可能。
67 第三者には、データ提供を行った農業関係者等や、資金提供を行う際に受託契約管理団体から条件として示された開示先などが含まれる。
<ケース1>
利用条件一覧表
[*以下の記載は参考例であり、実際に利用する際は修正されることを前提としている。]
本一覧表の対象 | 本学習用データセット |
【AI研究開発委託者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 自己の業務遂行に必要な範囲での利用(ただし、②に 記載の利用を除く。) | 可。 |
② 再利用モデルの生成 | 可。ただし、生成した再利用モデルを第三者提供等 はならないする場合には、事前に取り決めた範囲とす |
る。 | |
③ 第三者への開示、利用許 諾、提供等(以下「第三者提供等」という。) |
|
提供先: 提供先利用目的: |
【AI研究開発者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 本研究開発目的以外の目的のための利用(再利用モデ ルの生成等) | 可。ただし、本学習用データセットを用いて生成した再利用モデルの第三者提供等については、別紙記載の本学習済みモデルの利用条件に従うものとする。 |
② 第三者提供等 | 不可。 |
68 取消線は、経済産業省ガイドラインで規定されている内容を削除したことを示す。
69 例えば予め事業目的から開示先が決まっている場合には、その対象を、また農業関係者等の協力得て研究開発した場合で、その農業関係者等に利用を認める場合には、その旨を取決めておくことになる。
<ケース1>
利用条件一覧表
[*以下の記載は参考例であり、実際に利用する際は修正されることを前提としている。]
本一覧表の対象 | 本学習済みモデル |
【AI研究開発委託者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 | |
① 自己の業務遂行に必要な範囲での利用(②に記載の利 用を除く) | 可。 | |
② 再利用モデルの生成 | 可。ただし、生成した再利用モデルを第三者提供等する 場合には、事前に取り決めた範囲とする。 | |
③ 第三者への開示、利用許 諾、提供等(以下「第三者提供等」という。) | 学習済みモデルおよび再利用モデルの第三者提供等は不 | |
可。ただし以下に示す範囲に限定する。70提供先: 提供先利用目的: |
【AI研究開発者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 本研究開発目的以外の目的のための利用(再利用モデ ルの生成等) | 可。ただし、生成した再利用モデルの第三者提供等については②にしたがう。 |
② 第三者提供等 | 可。 の分野を事業領域とする事業者には第三者提供等しない |
ものとする。本学習済みモデルの第三者提供等について | |
は、別紙記載の本学習済みモデルの利用条件に従うものとする。 |
70 第三者には、データ提供を行った農業関係者等や、資金提供を行う際に受託契約管理団体から条件として示された開示先などが含まれる。
公的資金を活用した事業により、AIの研究開発を行う場合で、
<ケース 2>
AI研究開発委託者に知的財産が帰属し、AI研究開発委託者に成果物として学習済みデータセットと学習済みモデルを提供するケース(ケース2)
【状況】
1 AI研究開発委託者は公的資金によるAI研究開発に係る元契約を受託契約管理団 体と締結。同契約において、研究開発対象となるAIおよび当該研究開発に際して生成された派生データ等の利用目的および提供先等の制限が設けられている。
2 上記受託契約管理団体との契約では、知的財産の帰属についてはAI研究開発委託 者に帰属することが認められているものの、所定の範囲での利用については許諾するようにする条件が示されている。
3 農業関係者等が提供した生データのみ利用。生データを提供した農業関係者等に対 しては、生データから派生する知的財産のうち、学習済みモデルに関する著作権の共有を行うほか、学習用データセットの利用を認めることとする。
4 本学習用データセットはAI研究開発委託者とAI研究開発者のノウハウを利用してAI研究開発者が生成。
5 学習用プログラムはAI研究開発者が OSS を利用して研究開発したものを利用。
6 本学習済みモデルの生成はAI研究開発委託者とAI研究開発者のノウハウを利用してAI研究開発者が生成。
7 AI研究開発委託者は、本学習済みモデルをAI研究開発者が第三者提供することは認めているが、AI研究開発委託者が付する条件に該当する者71に対して提供することは認めていない。
8 AI研究開発者は、本学習済みモデルについて追加でデータを学習させ、本学習済みモデルの精度を上げることを予定している。
9 AI研究開発委託者に提供される成果物は、本学習用データセットと本学習済みモデル。
【前提とする権利帰属および利用条件】
1 本学習用データセットと本学習済みモデルの知的財産はAI研究開発委託者に帰属する。
2 本学習用データセットは、成果物としてAI研究開発委託者に提供され、AI研究開発委託者が利用できる。AI研究開発委託者は、本学習用データセットを利用して再利用モデルを生成することができる。AI研究開発委託者は本学習用データセットそのものを第三者に開示、利用許諾、提供してはならない。AI研究開発者は、本学
71 例えば受託契約管理団体との契約において、提供先の制限が付されている場合や、データ・ノウハウの提供者から提供制限が付されている第三者などが想定される。
習用データセットを利用して再利用モデルを生成できるが、それを第三者へ提供することについては本学習済みモデルの第三者提供と同様の条件に服する。また、AI研究開発者は本学習用データセットそのものを第三者に開示、利用許諾、提供してはならない。
3 本学習済みモデルは、成果物としてAI研究開発委託者に提供され、AI研究開発委託者が利用できる。AI研究開発委託者は、本学習済みモデルの利用とそれを使った再利用モデルの生成ができ、また、本学習済みモデルとその再利用モデルを第三者に提供することができる。AI研究開発者は、本学習済みモデルを、本研究開発目的のための自己利用の他、AI研究開発委託者が提供を認めない第三者のための再利用モデルの生成のために利用はできない。また、AI研究開発者はAI研究開発委託者と競合する事業領域に属さない会社には本学習済みモデルそのものを利用許諾可能。
<ケース2>
利用条件一覧表
[*以下の記載は参考例であり、実際に利用する際は修正されることを前提としている。]
本一覧表の対象 | 本学習用データセット |
【AI研究開発委託者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 自己の業務遂行に必要な範囲での利用(ただし、②に 記載の利用を除く。) | 可。 |
② 再利用モデルの生成 | 可。 提供先: |
③ 第三者への開示、利用許 諾、提供等(以下「第三者 提供等」という。) | 不可。 |
【AI研究開発者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 本研究開発目的以外の目的のための利用(再利用モデ ルの生成等) | 可。ただし、本学習用データセットを用いて生成した再利用モデルの第三者提供等については、別紙記載の本学習済みモデルの利用条件に従うものとする。 |
② 第三者提供等 | 不可。 |
<ケース2>
利用条件一覧表
[*以下の記載は参考例であり、実際に利用する際は修正されることを前提としている。]
本一覧表の対象 | 本学習済みモデル |
【AI研究開発委託者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 自己の業務遂行に必要な範囲での利用(②に記載の利 用を除く) | 可。 |
② 再利用モデルの生成 | 可。 |
③ 第三者への開示、利用許 諾、提供等(以下「第三者 提供等」という。) | 可。 |
【AI研究開発者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 本研究開発目的以外の目的 のための利用(再利用モデルの生成等) | 可。ただし、生成した再利用モデルの第三者提供等については②にしたがう。 |
② 第三者提供等 | 可。 の分野を事業領域とする事業者には第三者提供等しない |
ものとする。本学習済みモデルの第三者提供等について | |
は、別紙記載の本学習済みモデルの利用条件72に従うものとする。 |
72 利用条件の設定は、共有者である農業関係者等の同意を踏まえて行うことになる。
<ケース3>
公的資金を活用した事業により、AIの研究開発を行う場合で、公的資金を活用した事業により、AIの研究開発を行う場合で、
AI研究開発者とAI研究開発委託者に知的財産が帰属し、利用できるケース
【状況】
1 AI研究開発委託者は公的資金によるAI研究開発に係る元契約を受託契約管理団 体と締結。同契約において、研究開発対象となるAIおよび当該研究開発に際して生成された派生データ等の利用目的および提供先等の制限が設けられている。
2 上記受託契約管理団体との契約では、知的財産の帰属についてはAI研究開発者に 帰属することが認められているものの、所定の範囲での利用については許諾を得られるようにする条件が示されている。
3 農業関係者等が提供した生データのみ利用。生データを提供した農業関係者等に対 しては、生データから派生する知的財産の帰属は認めないものの、利用については許諾している。
4 本学習用データセットはAI研究開発委託者とAI研究開発者のノウハウを利用して生成。
5 本学習用プログラムはAI研究開発者が OSS を利用して研究開発したものを利用。
6 本学習済みモデルの生成は専らAI研究開発者のノウハウを利用してAI研究開発者が生成し、AI研究開発委託者についても一定の寄与がある。
7 AI研究開発委託者とAI研究開発者は特許xxについて共同出願し、共有して帰属することを想定。
8 本学習済みモデルについては、AI研究開発委託者とAI研究開発者は利用を希望し、再利用を予定していない。
9 AI研究開発委託者とAI研究開発者は本学習済みモデルの第三者への提供と再利用を希望。ただしAI研究開発委託者は、AI研究開発者が本学習済みモデルや再利用モデルを自己の競合事業者へ提供することは拒否。それ以外の第三者に対する提供については承諾。
【前提とする権利帰属および利用条件】
1 本学習用データセットと本学習済みモデルの知的財産はAI研究開発委託者とAI研究開発者に帰属する。
2 AI研究開発委託者は、本学習用データセットを利用でき、本学習用データセットを利用して再利用モデルを生成できる。その第三者への提供については本学習済みモデルの第三者提供と同様の条件に服する。なおAI研究開発者はAI研究開発委託者と競合する事業領域に属さない会社には本学習済みモデルそのものを利用許諾可能。
また、AI研究開発者は本学習用データセットそのものを第三者に開示、利用許諾、提供してはならない。
2 AI研究開発委託者についても 2 と同様の条件に服する。
<ケース3>
利用条件一覧表
[*以下の記載は参考例であり、実際に利用する際は修正されることを前提としている。]
本一覧表の対象 | 本学習用データセット |
【AI研究開発委託者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 自己の業務遂行に必要な範囲での利用(②に記載の利 用を除く) | 可。ただし、学習用データセットを用いて生成した再利用モデルの第三者提供等については、別紙記載の本学習 済みモデルの利用条件に従うものとする。 |
② 再利用モデルの生成 | 可。 |
③ 第三者への開示、利用許 諾、提供等(以下「第三者 提供等」という。) | 不可。 |
【AI研究開発者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 本研究開発目的以外の目的 のための利用(再利用モデルの生成等) | 可。ただし、学習用データセットを用いて生成した再利用モデルの第三者提供等については、別紙記載の本学習 済みモデルの利用条件に従うものとする。 |
② 再利用モデルの生成 | 可。 |
③ 第三者への開示、利用許 諾、提供等 | 不可。 |
<ケース3>
利用条件一覧表
[*以下の記載は参考例であり、実際に利用する際は修正されることを前提としている。]
本一覧表の対象 | 本学習済みモデル |
【AI研究開発委託者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 |
① 自己の業務遂行に必要な範囲での利用(②に記載の利 用を除く) | 可。 |
② 再利用モデルの生成 | 可。 |
③ 第三者への開示、利用許 諾、提供等(以下「第三者 提供等」という。) | 不可。以下に示す範囲に限定する。 |
提供先: 提供先利用目的: |
【AI研究開発者】
利用の範囲 | 利用の可否・条件 | |
① 本研究開発目的以外の目的 のための利用(再利用モデルの生成等) | 可。ただし、生成した再利用モデルの第三者提供等については③にしたがう。 | |
② 再利用モデルの生成 | 可。 | |
③ 第三者提供等 | 可。 の分野を事業領域とする事業者には第三者提供等しない | |
ものとする。本学習済みモデルの第三者提供等について | ||
は、別紙記載の本学習済みモデルの利用条件に従うものとする。 |
3. 農業分野におけるAIを利用した製品・サービスの利用場面における契約 利用契約の概要
農業関係者等が締結する利用契約の概要
農業分野におけるAIを利用した製品・サービスの利用場面における契約関係の概要を図 27 に示す。
図 27 AIを利用した製品・サービスの利用場面での契約関係の概要
農業分野におけるAIを利用した製品・サービスの利用場面では、利用者である農業関係者等と製品・サービス提供者との間でサービス利用契約が締結されるのが一般的である。製品を利用する場合でも、AIを利用しているものなどでは、併せてサービス利用契約を締結したり、あるいは、製品利用契約の中に含まれていたりすることがある。
AIを利用したサービスについて、経済産業省ガイドラインでは、「提供されるサービスの内容は様々であり、契約もサービス内容次第ではあるが、学習済みモデルの利用サービスのサービス利用契約は、基本的には、クラウドサービス型のサービスの場合は一般的なクラウドサービス契約と、オンプレミス型のサービスの場合は一般的なソフトウェアライセンス契約と同様であろう」73とする。そしてサービス利用に際して入力するデータについては、「クラウドサービス型の学習済みモデルの利用サー
73 経済産業省ガイドライン P62
ビスの場合、サービス利用に伴い、ユーザがAI研究開発者のサーバに送信した入力データについて、AI研究開発者からのアクセスが可能となる。入力データには、ユーザの営業秘密やノウハウが含まれる場合もあるが、このような入力データの法律上の取扱いは必ずしも明確でないことから、入力データの取扱いや利用条件について、サービス利用契約で取り決めることが望ましい」とされる74。
農業分野におけるAIを利用したサービスにおいても、基本的には同様である。 AIを利用したサービスにおいて、利用者とAI研究開発者との間で問題となるの
は、入力データの取扱いについてである。経済産業省ガイドラインでは、「入力データの取扱いに関して、特に争点となり得るのは、AI研究開発者が入力データを、ユーザへのサービス提供以外の目的で利用することを望む場合である。このような場 合、主に入力データの収集・蓄積にかかるコストの負担、入力データの機密性、別目的での利用範囲、サービス提供にかかるコストの負担、責任の分担等を考慮の上、ユーザ・AI研究開発者間で協議して取り決めることになる。」75とされている。
農業分野の場合には、サービス内容により入力データは異なるが、農業関係者等の
「暗黙知」を内包することもある。この暗黙知については、「農業データについていえば、特に非構造化データと言われるデータ単体(例えば、特定の農業関係者等のウェアラブル端末から発せられる視認データなど、「暗黙知」とされるノウハウの一部に過ぎないデータ)で、何らそのデータの分析が行われておらず、「形式知」化されていないもの)」76のような性格を有するものもある。
このような暗黙知を内包するデータを、AIを利用した製品・サービス提供者が利用する場合、当該製品サービスの品質向上のために利用する目的であれば、製品・サービスを利用する農業関係者等からの利用についての同意が得られやすいと考えられる。利用者へのサービス提供以外の目的で利用する目的であれば、入力するデータの内容やデータ作成に対するコスト、利用者における取扱い(例えば秘密として管理している等)により、許諾の可否や、利用等の範囲が異なってくる。そのため、サービス利用に際して入力されたデータを製品・サービス提供者の自己利用する場合には、利用条件等に係る取決めを行うことが求められる。
74 経済産業省ガイドライン P63
75 経済産業省ガイドライン P63
76 データ利活用編 P35
【ポイント 20】製品・サービスの利用におけるデータ提供
製品などが自動的に収集したデータが利用されることがある。製品サービスの利用者が、例えば温度や家畜の頭数などの設定データを入れるケースなどでは、データの提供を自覚しているため、当該データについての取決め関係を意識的に行うことができる。しかし実際の製品やサービスでは、サービス提供に供されるデータについて、利用者が製品・サービス提供事業者等に提供していること(あるいは収集していること自体)について、無自覚な場合がある。
例えばドローンを利用したサービスでは、サービスの性格上、圃場の撮影などが行われ、そのデータは製品・サービス提供事業者等のデータベースに格納されることがある。製品・サービス提供事業者等が外資系企業の場合には、本国の本社にデータが送信されることもある(図 28)。
このような場合、これらのデータが、契約で保護されるデータの対象となっていない場合には、他のデータについて第三者提供の制限を設けても、契約の対象外とされるため、予期しないデータ提供がなされることになる。
従って、製品・サービス利用にあたっては、具体的にどのようなデータが提供されるのか、確認することが求められる(機器の利用においてはデータ創出型契約の内容に準じて、チェックすることが重要である)
図 28 ドローンの利用に関するデータが特定地域外に提供される例
製品・サービスの利用契約における取決め内容
AIを利用した製品やサービスであっても、その利用自体に係る取決め内容(サービスの内容やサービス水準等に係る取決め)は、一般的な製品やクラウドサービスにおけると同様である。そこで本ガイドライン(ノウハウ活用編)で示す利用契約における取決め内容には含めず、AIを利用した製品・サービスに供されるデータ(利用者が入力するデータ(「入力データ」、機器等が自動的に収集するデータ(「自動収集データ」)の取扱いに係る取決め内容のみを示す。
また製品やサービスの利用約款においては、一般的にはサービス提供自体用に係る内容が大半であり、利用者から取得するデータに関する条項は、簡単な規定にとどまるか、規定それ自体がないことも想定される。ただし、そのような場合には、製品やサービス提供者が取得したデータは、具体的な取決めがない状態に置かれるため、製品やサービスの提供者が任意に利用しうることになる。そこで、必要に応じて、製品やサービスの提供者に、本項で示す内容を確認することが望ましい(なお【ポイント 22】参照)。
【ポイント 21】AIを利用した製品・サービスの利用に関する責任
AIを利用した製品・サービスの利用に関して生じる責任については、
・製品・サービスの利用において提供されたデータに関する管理責任
・製品・サービスの利用により、期待される性能を発揮させる責任などが挙げられる。
本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、このうち主に前者について示している。後者が果たせなかった場合、以下のような損害が発生する可能性がある。
・AIによる「誤認識」に伴う損害(例:本来検知するはずの故障が検知できない、
A 等級すべきところを B 等級とした等による損害)
・AIによる「誤動作」に伴う損害(例:ロボットの制御不能等による損害)
従来のシステムではこれらはプログラムのバグ、あるいは設計上の欠陥などとされ、製品・サービス提供者側の債務不履行(瑕疵担保責任含む)とされてきた。しかし、AIについては研究も進められているが、従来のシステムで仕様を想定することが困難であることから、AI自体にはシステム的に問題がない状態となり、責任の所在を明確にすることが難しくなっている。また、AIに関しては研究開発段階のものも多く、誤認識、誤動作も排除できないリスクもある。
このような状況を踏まえて近時は、損害保険などによる損害への加入や債務不履行
の別則を定めるなどの対応も検討されている。
サービスに供されるデータ(入力データ・自動収集データ)の利用目的
利用目的については、
・提供している製品・サービスの品質向上の目的
・製品・サービス提供者の自己利用(他社に提供される自社製品の研究含む)
・第三者提供目的の有無
などを明らかにすることが求められる。
また自己利用についても、自己利用の範囲を限定するのか77、すべての自己利用に対して許諾するのかなどを明らかにする必要がある。
利用データの範囲
利用目的との関係で、利用データの範囲を調整することが想定される。例えば、
・機密性が高いデータについては、製品・サービス提供者の自己利用の対象外とする
・個人情報に該当するものは、自己利用のうち、マーケティング以外には用いない等の形で、利用する入力データの範囲を限定することなどが想定される78。
データの利用期間
サービス利用に供されるデータの利用期間を定めることが想定される。例えば、
・サービス利用期間中のみ利用する
・サービス利用終了後、●年のみ利用する
・取得したデータの利用期間に制限を設けない
などが想定される。利用者から見れば、利用期間が限定されることで、入力を通じて提供したデータが、意図しない時期に利用されるということを防ぐことが期待でき る。
データの利用方法
製品・サービス提供者がデータを利用する際に、入力データをそのまま利用するのではなく、一定の加工を施して利用するなどを取決めることが想定される。例えば
・匿名加工を施した形で利用する
・仮名化データ(当事者名の削除、あるいは記号の置き換え等)の形で利用する。
・統計情報としてのみ利用する
・入力されたデータのまま利用する
などが想定される。製品・サービスの利用者から見ると、特に自己利用される場合には、自社のデータとして取り扱われないようにする、暗黙知が意図しない形で流出しないような粒度で取り扱われるようにする、などの要請が生じる場合がある。このような場合には、データの利用方法についても取決め内容とすることが望ましい。
77 経済産業省ガイドラインでは「たとえば、研究開発目的での利用に限定する、一定期間ユーザの特定の競合事業者へのサービスには利用しないとする」などが例示される(P63)。
78 経済産業省ガイドラインでは、このような対応を取ることでユーザ側の懸念を一定程度解消できる効果が期待できるものとする(P63)。
利用に対する対価性
製品・サービス提供者が、入力データを自己利用する際の対価を示すことが想定される79。
・自己利用を認めた利用者に対して、利用における優遇条件を示したり、割安な料金設定したりする
・自己利用を認めた利用者に対して、オプションサービスの提供や新製品等の有利な条件での提供を示す
・自己利用を認める利用者に対して、ポイント等の還元を行う
などの対応が想定される。このようなインセンティブを供与することで、入力データの利用に対する同意を促すことになる。
追加学習に関する取決め
AIにおいては、入力データを蓄積し、追加学習させることにより、よりモデルの精度が向上することがある。このような追加学習を認めるかどうかについても、取決め内容に含めることが求められる。
この場合、問題となるのは、追加学習の結果、得られたモデルの提供先についてである。例えばある地域の農業関係者等向けにサービスを提供している企業が、同様のサービスを別の地域でも別途提供している場合、両地域のデータを併せて追加学習 し、両地域に対してサービス提供して良いかは、事前に取り決めておくことが望ましい。
AIの研究開発の経緯(例えばある地域の生産性向上のためを目的として導入されたAIである等)や、追加学習で得られたサービスが、他者に対して提供されることのリスク(競争優位性)とメリット(モデルの精度向上によるサービス品質の向上)など80の検討を踏まえたうえで、追加学習について合意することが求められる。
第三者提供について
入力データについて、製品・サービス提供者が第三者提供を予定しているのか、を示すことが求められる81。
第三者提供については、特に提供先について、限定されているのか否か、限定されている場合には、どの範囲となっているのかが重要である。例えば
・第三者提供先が具体的な提供先名として示されている
79 データ利活用編では、農業従事者が提供したデータ等により、農業従事者の「暗黙知」が「形式知」としてソフトウェアになった場合の対応について示されている(P45)。製品・サービス提供者が自己利用による入力データの分析を行い、利用対象となっているサービスでは明示されていない「暗黙知」が「形式知」となる場合にも該当する。しかしこの場合、暗黙知」から「形式知」への分析に際しては、一般的には製品・サービス提供者による貢献が大きいため、利用に対する対価性の考慮は不要であると考えられる。ただし分析において、さらに利用者である農業関係者等の貢献が大きい場合には、本項に示すような内容も含め、耐火性の検討が求められよう。
80 経済産業省ガイドラインでは、新たに学習された、データの提供主体、データの機微度や流出のリスク、追加学習にかかる労力やコストの負担、ノウハウの希少性、利用範囲、責任の分担等の各要素を考慮したうえで、第三者への提供の可否や条件を定めるものとしている(P64)。
81 個人情報については、個人情報保護法に基づいた第三者提供に関する手続を別途行うことが求められる。
・第三者提供先が、「弊社グループ企業」など、範囲は示されているが、具体的な提供先名は特定されていない
・第三者提供先が、「弊社の審査を経た者」など、実質的な範囲が明示されていない
・第三者提供先について、明示されていない
などが想定される。第三者提供先の許諾の考慮に当たっては、1)~5)までの内容と併せて検討することが望ましい。そのほか、第三者の地理的範囲についても、特に知的財産の場合には重要であることから、確認が求められる82。
また農業分野の場合には、6)の追加学習同様、提供されるサービスの研究開発の経緯により、利用対象が限定されているケースも想定される(例えば国の事業であれば、国内事業者に限定、地方公共団体の事業であれば、その地方公共団体内のみの利用者に限定等)。このような場合、第三者提供先についても、利用対象等の範囲に限定することが求められる。
なお、第三者提供に関しては、農業関係者等の合意をより適切に取得するためには、例えば提供時に、
・第三者提供を行う旨の告知を行う
・第三者提供時の提供先の報告・通知等
・オプトアウトの設定をする
・事後の同意の撤回
などの対応が想定される。
利用契約における契約項目のチェックリスト
製品・サービス利用における農業関係者等が締結する利用契約における確認項目についてのチェックリストの例を表 14 に示す。
表 14 に示すチェックリストは、農業関係者等が入力データ等を提供する際に、不足の損害を被らないようにするために確認すべき項目を一覧にしたものである。しかし、クラウドサービスなどでは、通常は約款や利用規約で、入力データ等の取扱いを取り決める内容が定められており、設けられている条項もシンプルなものが多くなっている。
その場合には、以下の内容を最低限の確認内容としてチェックすることが重要である。
・入力データの利用目的およびその期間
・第三者提供の範囲、目的
・自己利用または第三者提供を行う際のデータの加工の有無、
82 相手方の地理的範囲については、提供時の競業避止義務の関係や、提供先における知的財産制度の整備状況に関連した提供制限、さらに公的資金を投入した研究開発における政策目的からの制約など、様々な観点から定義が求められることがある。
・データ等の流出が生じた場合の対応(損害賠償、利用者への通知等)
表 14 利用場面で農業関係者等が締結するデータ提供契約における確認項目例
カテゴリ | 契約内容として確認する項目等 | 有無(〇をつけ る) | 項目としてない場合の 代替的対応 | チェックの観点 |
契約の目的 | データ提供の目的 | 契約の目的があいまいであると、各条項が詳細に定められていない場合に、不測のトラブルが生じることがある(例:提供データの目 的外利用) | ||
各種定義 | データ名、項目名、加工、派生データ、著作物、ノウハウ | 契約対象なる用語を明確にすることで、解釈による不一致が生じないようにする(例えばノウハウの 範囲など) | ||
提供したデータ | 利用データ名 | 入力データの内容を明らかにすることで、契約の対象となるデータ の範囲等を明らかにする。 | ||
利用データの範囲(項目 等) | 利用者において明示されないデー タについても示す | |||
データの期間 | 入力データの内容を明らかにすることで、契約の対象となるデータの範囲等を明らかにする。 | |||
データの提供方法(自動 送信の有無ほか) | ||||
提供頻度(利用都度、ほ か) | ||||
データの利用条件 | 利用目的、加工の有無、条件 (特に自己利用目的や追加学習の有無等を確認) | 入力したデータの利用目的、加工の有無、条件などを明らかにすることで、提供者の意に反した利用方法を防ぐ。 提供データの利用の仕方により、農業関係者等のノウハウが分析される可能性がある(データの組み合わせや分析方法等)がため、利用目的との関係で、利用方法やノウハウとの関係を確認することも 求められる。 | ||
第三者提供の可否、範 囲、手続(提供や創出するデータ、ノウハウ、派生データ、およびこれらより生じる知的財産ごと に示す) | サービス利用者が意図しない第三者への提供を防止する | |||
利用に関する独占・非独占 (提供や創出するデー タ、ノウハウ、派生データ、およびこれらより生 | 入力されたデータや派生データ、ノウハウが、提供により相手方に独占的にする権利が移転するか (サービス利用者が使えなくなる |
カテゴリ | 契約内容として確認する項目等 | 有無(〇をつけ る) | 項目としてない場合の 代替的対応 | チェックの観点 |
じる知的財産ごとに示 | か)、提供後も利用できるかなど | |||
す) | を示す。 | |||
利用期間 | 入力されたデータや派生データ、 | |||
(特に契約期間との関係 | ノウハウが、提供により相手方に | |||
を確認) | 独占的にする権利が移転するか | |||
(提供者が使えなくなるか)、提 | ||||
供後も利用できるかなどを示す。 | ||||
利用する地域 | 入力データがいつまで利用される | |||
のか(契約期間内か、一定期間内 | ||||
か、無期限か)などを明確にす | ||||
る。これにより、入力データの保 | ||||
護や、サービス利用者が別の提供 | ||||
先にデータ提供するなどの関係を | ||||
明らかにすることができる。 | ||||
派生データ、成果物等の | 特に追加学習の目的とその利用方 | |||
提供者へのフィードバッ | 法などについての確認を行う | |||
ク | ||||
利用に関する対価の有無 | 入力データ提供者に対する報酬の | |||
と内容、決定方法等 | 設定や、サービス等利用の優遇条 | |||
件設定等があるか。 | ||||
知的財産権の帰属と人格 | プログラムや特許xxの知的財産 | |||
権の不行使等 | 権の帰属や、著作xxの人格権の | |||
不行使があるか(成果物の変更の | ||||
可否などが関係する) | ||||
データの | 管理基準・注意義務の内 | 入力データや派生データの管理内 | ||
管理方法 | 容 | 容や前提となる善管注意義務のレ | ||
ベルを明確にすることで、管理責 | ||||
任の重さを明らかにする。 | ||||
営業秘密等に関する管理 | 入力データ等がサービス利用者側 | |||
方法 | で営業秘密として取り扱っている | |||
場合に、提供先での営業秘密の管 | ||||
理方法を確認する。 | ||||
個人情報の範囲、取扱 | 対象とする個人情報の範囲(特に | |||
い、管理方法 | IoT データ)を明確にするほか、 内部的な取扱い(生データのまま | |||
使うか、特定性を削除して使うか | ||||
等)や管理方法などについて明ら | ||||
かにすることで、法律上の対応状 | ||||
況のほか、リスクを把握する。 | ||||
データの管理方法 | データの管理方法(主にセキュリ | |||
ティ)を確認する。 | ||||
管理状況の報告等 | 管理状況に関する入力データ提供 | |||
者への報告の有無やその方法(web 上、メール、他)、頻度(月次、年次など)を明らかにする。 |
カテゴリ | 契約内容として確認する項目等 | 有無(〇をつけ る) | 項目としてない場合の 代替的対応 | チェックの観点 |
管理の是正等 | データの管理方法に問題が生じた場合の、是正方法・方針などを示 す。 | |||
契約終了後のデータ削除対象、方法・報告等 | 契約終了とのデータ削除(削除する場合)の対象や削除方法、削除したことについてのデータ提供者への報告方法(削除証明書をつけ るか否かなど)を明らかにする。 | |||
契約上の一般的事項 | 秘密保持義務 | 秘密の定義内容や、範囲を明らかにしたうえで、当事者間の秘密保持の対象や期間(契約終了後含 む)について確認できるようにす る。 | ||
損害賠償関係 | データ漏洩等が生じた場合の損害賠償責任の範囲・基準(注意義務の内容)、損害賠償の予定、損害賠償額の上限の有無などを確認す る。 | |||
免責 | 損害賠償責任などに対する免責条 項(不可抗力ほか) | |||
契約の有効期間 | 契約の有効期間について確認する (提供データの相手方の利用範囲に関係する) | |||
解除 | 契約の解除事由の確認(相手方に契約に反する利用があった場合に 解除できるかどうかに関係する) | |||
存続条項 | 契約終了後に存続する条項(第三 者が保有する知的財産による紛争対応など) | |||
譲渡禁止 | 契約上の地位の譲渡などについ て、事前の書面による合意がない場合には認めない等を明らかにすることで、相手方が変更するリス クを防止する。 | |||
準拠法 | 一般的には日本法による | |||
管轄裁判所等 | 一般的には日本国内の裁判所(地 方裁判所) |
【ポイント 22】サービス利用に際してのデータ提供契約とサービス利用契約約款
クラウドサービスなどの場合には、一般的には相対契約ではなく、製品・サービス提供者が用意するサービス利用契約約款(利用規約などの名称の場合もある)により、契約を行われる。
サービス利用契約約款による場合には、個別の条項についての交渉がなされることはなく、利
用者は約款全体について同意するか否か、の判断を行ってサービス利用することになる。
他方、データ提供に関しては、サービス利用に供するデータの利用目的や第三者提供の範囲などについては、利用サービスによっては利用者である農業関係者等の営業秘密が含まれていたり
(例:売上情報)、分析方法によってはノウハウとして形式知化しうるデータなどが含まれていたりするため、自由に利用や提供されることに対して、躊躇する農業関係者等もいる。
本ガイドライン(ノウハウ活用編)では、このような農業関係者等の不安を解消し、データの利活用の活性化を図るために、データやノウハウの提供者と受領者が、納得できる合意に必要な契約上の要素や留意点について示す。サービス利用に際しての、データの利用関係についても同様に当事者が納得できることが重要である。
そこで、サービス提供においては、サービス自体の提供とデータの提供は、切り離して考えるべきであり、データ提供を行わない利用者にはサービス提供しない、という形で約款を定めることは妥当ではない。AIを利用した製品・サービスの提供時におけるデータ提供に関する約款等は、サービス利用契約約款などと独立して策定して、データ提供に関して同意しない利用者に対しても、サービス提供が図れるようにすることが望ましい(個人情報の場合の例として、「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(xx取引委員会、令和元年 12 月 17 日)では、プラットフォーム事業者が利用目的の達成に必要な範囲を超えて,消費者の意に反して個人情報を取得・利用することを、優越的地位の濫用行為として位置づけている)。
なお、データ提供を行う利用者に対して、利用料金の優遇条件を提示する、追加的なサービスを提供するなどのインセンティブを供与するなどして合意するなどが想定される。
4. 農業関係者等が提供したデータ等の第三者提供契約 第三者提供契約の概要
第三者提供契約の概要
農業関係者等が提供したデータ等の第三者提供に係る契約関係の概要を図 29 に示す。
図 29 農業関係者等が提供したデータ等の第三者提供の概要
農業関係者等から提供を受けたデータ等を、AI研究開発委託者や、AI研究開発者が第三者に提供する場合には、基本的には本ガイドライン(データ利活用編)の
「データ提供型契約」に示される契約内容が該当すると考えられる。
ただしデータ等を提供した農業関係者等の利益を保護する等の観点から、以下の点に留意することが求められる。
第三者提供契約における取決め内容
提供データ等について
第三者に提供するデータ、ノウハウ等の知的財産の範囲について明示することが求められる。提供するデータに関する取決めは、「3 農業分野におけるAIを利用した製品・サービスの利用場面における契約」の「②1)~4)」において示す内容と同様観点から行う必要がある。
またノウハウについても、利用目的や利用期間等を明示して提供することが求められる。
提供先の範囲・選定
第三者提供の範囲は、農業関係者等とAI研究開発を行う主体との間で締結したデータ等に係る提供契約の範囲内に限定される。そのため、これを超えて第三者に提供することができない。特にノウハウ等を提供する農業関係者等によっては、提供先についての自身のコントロールが可能であることを重視するケースがある。
またAI研究開発委託者が、国や地方公共団体である場合には、資金供与における政策目的から、成果物等に関する提供範囲を限定することが想定される。この場合には、併せて、その制限の範囲でのみ第三者提供を行うことが可能である。
このように第三者提供先の選定やその範囲については、農業関係者等との契約およびAI研究開発委託者との契約内容と齟齬がないようにすることが求められる。
表 15 は特定地域外の第三者への提供の可否を判断するための表の例である。第三者提供に際しては、このような検討を踏まえて、相手先を決定する。
表 15 特定の地域外の第三者へのデータ等の提供の可否の判断
NO
NO
OK
特定地域外の第三者
への提供の可否
OK
NO
OK
国等とのAI研究開
発委託契約
NO
OK
OK
農業関係者等とのデ
ータ等提供契約
特定の地域外の第三者への提供の可否
利用権限等の設定
第三者提供において利用権限の範囲を設定する際、その範囲は農業関係者等との契約において許諾されている範囲に限定される83。従って、例えば独占的使用権が認められていないにもかかわらず、第三者提供において独占的使用権を設定することは認められない。このように利用権限の設定の範囲について、整合性を確保することが求められる。
83 利用権限の設定については、「データ提供型契約」の第 3 条で、提供者の権限の確認の必要性を示している。こちらの確認ができていることを提供先である第三者は確認する必要がある。
提供データの管理責任
第三者提供した情報に、例えば秘密管理が求められるものが含まれている場合に は、第三者提供を行った相手方に対しても、同等の管理責任を求める必要がある。特に不正競争防止法の保護対象となっている情報については、相手先でも同様の保護がなされることが求められる。なお、限定提供データのように、我が国でのみ適用される制度の対象となるデータ等の提供については、農業関係者等から別途許諾を得ない限り、特定地域外への提供を行うことは妥当ではないと考えられる。
秘密保持等に関する内容
上述のように農業関係者等から提供を受ける際に、秘密として受領したものについては、第三者に提供する際にも秘密として保護されるよう、相手方に管理責任等を求める必要がある。併せて、守秘義務の期間等についても、農業関係者等からデータ等の受領を受けた際の設定した期間より短い期間を第三者提供に際して設定すると、農業関係者等に対して不測の損害が生じることになる。従って農業関係者等との間の契約で設定した期間より長い期間設定することが求められる。
個人情報の取扱い
農業関係者等から提供を受けたデータ等において、個人情報等が含まれている場合には、我が国の個人情報保護法に対応した管理を行うことが求められる。第三者提供を行った先が国外である場合、提供先の制度が我が国における制度よりも保護が十分ではない可能性がある。提供に際してはこの点についても考慮の上、相手先を決定することが求められる。
第三者提供契約における契約項目のチェックリスト
農業関係者等が提供したデータ等の第三者提供契約における確認項目についてのチェックリストの例を表 16 に示す。
データやノウハウ等の知的財産の提供を行う提供者および提供を受ける第三者は第三者提供に際してチェックリストの内容についての取決めがなされているかを確認することが望まれる。
表 16 第三者提供契約における確認項目例
カテゴリ | 契約内容として確認する項目等 | 有無(〇をつける) | 項目としてない場合の代替 的対応 | チェックの観点 |
契約の目的 | 提供の目的 | 契約の目的があいまいであると、各条項が詳細に定められていない場合に、不測のトラブルが生じることがある(例:提供モデルの目 的外利用) | ||
各種定義 | データ名、項目名、加工、派生データ、著作物、ノウハウ | 契約対象なる用語を明確にすることで、解釈による不一致が生じないようにする(例えばノウハウの範囲など) | ||
提供対象となるデー タ、知的財産 | 提供するデータ、ノウハウ、知的財産権 | 提供データやノウハウ、知的財産権の内容を明らかにすることで、契約の対象となるものの範囲等を 明らかにする。 | ||
提供対象となる知的財産の範囲(項目等) | データの項目名や派生データ、提供する知的財産の構成についても 示す | |||
提供データの期間 | データの提供形態等を明らかにすることで、契約の対象となるデータの範囲等を明らかにする。 | |||
データの提供方法(自動 送信の有無ほか) | ||||
提供頻度(利用都度、ほ か) | ||||
提供先の範囲 | 提供先の定義 | 提供先として、直接の提供先のみが対象であるのか、親会社・子会社など資本関係がある者も対象となるのか等、提供先の範囲について明らかにする。 なお必要に応じて、提供する対象 (データ、ノウハウ、知的財産権)に応じて定義する。 | ||
再提供の可否 | 提供先である第三者からさらに第三者へ提供あるいは開示することの可否や条件などを明らかにす る。(例えば、第三者からの提供は不可、統計化したものについて は開示可能等) | |||
提供先における利用条件 | 利用目的、加工の有無、条件 (特に自己利用目的や追加学習の有無等を確認) | 提供したデータやノウハウ、知的財産権の利用目的、加工の有無、条件などを明らかにすることで、提供者の意に反した利用方法を防 ぐ。 |
カテゴリ | 契約内容として確認する項目等 | 有無(〇をつける) | 項目としてない場合の代替 的対応 | チェックの観点 |
提供したデータ等の利用の仕方により、農業関係者等のノウハウが分析される可能性がある(データの組み合わせや分析方法等)がため、利用目的との関係で、利用方法やノウハウとの関係を確認する ことも求められる。 | ||||
利用に関する独占・非独占 (提供や創出するデー タ、ノウハウ、派生データ、およびこれらより生じる知的財産ごとに示 す) | 提供(創出)されたデータや派生データ、ノウハウが、提供により相手方に独占的にする権利が移転するか(提供者が使えなくなる か)、提供後も利用できるかなどを示す。 | |||
利用期間 (特に契約期間との関係を確認) | 提供(創出)されたデータや派生データ、ノウハウが、提供により相手方に独占的にする権利が移転するか(提供者が使えなくなる か)、提供後も利用できるかなど を示す。 | |||
利用する地域 | 提供した知的財産がいつまで利用されるのか(契約期間内か、一定期間内か、無期限か)などを明確にする。これにより、提供したものの保護や、提供者が別の提供先にデータ等を提供するなどの関係 を明らかにすることができる。 | |||
派生データ、成果物等の提供者へのフィードバッ ク | 特に追加学習の目的とその利用方法などについての確認を行う | |||
利用に関する対価の有無 と内容、決定方法等 | 提供者に伴う対価の設定およびそ の決定方法 | |||
知的財産権の帰属と人格権の不行使等 | プログラムや特許xxの知的財産権の帰属や、著作xxの人格権の不行使があるか(成果物の変更の 可否などが関係する) | |||
競業避止義務規定 | 提供先が提供元等(さらに原データの提供元である農業関係者等含む)との関係で競業することに伴い、提供元が不測の損害(例えば企図したサービス提供ができなくなる等)を防止するために、必要 に応じて設定する。 |
カテゴリ | 契約内容として確認する項目等 | 有無(〇をつける) | 項目としてない場合の代替 的対応 | チェックの観点 |
提供先における管理方法 | 管理基準・注意義務の内容 | 提供(創出)データや派生データ等、知的財産の管理内容や前提となる善管注意義務のレベルを明確にすることで、管理責任の重さを 明らかにする。 | ||
営業秘密等に関する管理方法 | 提供内容が提供者側で営業秘密として取り扱っている場合に、提供先での営業秘密の管理方法を確認 する。 | |||
個人情報の範囲、取扱い、管理方法 | 対象とする個人情報の範囲(特に IoT データ)を明確にするほか、内部的な取扱い(生データのまま使うか、特定性を削除して使うか等)や管理方法などについて明らかにすることで、法律上の対応状 況のほか、リスクを把握する。 | |||
データ等の管理方法 | データ等の管理方法(主にセキュ リティ)を確認する。 | |||
管理状況の報告等 | 管理状況に関するデータ提供者への報告の有無やその方法(web 上、メール、他)、頻度(月次、年 次など)を明らかにする。 | |||
管理の是正等 | 提供したデータ等の管理方法に問 題が生じた場合の、是正方法・方針などを示す。 | |||
契約終了後のデータ削除対象、方法・報告等 | 契約終了とのデータ等の削除(削除する場合)の対象や削除方法、削除したことについての提供者への報告方法(削除証明書をつける か否かなど)を明らかにする。 | |||
契約上の一般的事項 | 秘密保持義務 | 秘密の定義内容や、範囲を明らかにしたうえで、当事者間の秘密保持の対象や期間(契約終了後含 む)について確認できるようにす る。 | ||
損害賠償関係 | 知的財産の漏洩等が生じた場合の損害賠償責任の範囲・基準(注意義務の内容)、損害賠償の予定、損害賠償額の上限の有無などを確 認する。 | |||
免責 | 損害賠償責任などに対する免責条 項(不可抗力ほか) |
カテゴリ | 契約内容として確認する項目等 | 有無(〇をつける) | 項目としてない場合の代替 的対応 | チェックの観点 |
契約の有効期間 | 契約の有効期間について確認する (提供の相手方の利用範囲に関係する) | |||
解除 | 契約の解除事由の確認(相手方に契約に反する利用があった場合に 解除できるかどうかに関係する) | |||
存続条項 | 契約終了後に存続する条項(第三者が保有する知的財産による紛争 対応など) | |||
譲渡禁止 | 契約上の地位の譲渡などについ て、事前の書面による合意がない場合には認めない等を明らかにすることで、相手方が変更するリス クを防止する。 | |||
準拠法 | 一般的には日本法による | |||
管轄裁判所等 | 一般的には日本国内の裁判所(地 方裁判所) |
第5. 関連する政策・ガイドライン等(参考)
1. 関連する政策・ガイドライン
本ガイドライン(ノウハウ活用編)に関連するAI戦略・ガイドラインを以下に示す。
人間中心のAI社会原則84
「人間中心のAI社会原則」と本ガイドライン(ノウハウ活用編)の関係については【ポイント 4】で紹介している。ここでは、「人間中心のAI社会原則」の概要について表 17 に示す。
表 17 人間中心のAI社会原則の概要
ガイドラインの目的 | 「AI-Ready な社会」への変革を推進すべく、広く「高度に複雑な情報システム一般」が社会に与える影響を議論した上で、AI 社会原則の一つの在り方を提示し、AI の研究開発や社会実装において考慮すべき問題を列挙した。 ※「AI-Ready な社会」 AI を有効に活用して社会に便益もたらしつつ、ネガティブな側面を事前に回避または低減するため、AIに関わる技術自体の研究開発を進めると共に、人、社会システム、産業構造、イノベーションシステム、ガバナンス等、あらゆる面で社会をリデザインし、AI を有効かつ安全に利用できる社会 |
概要 | 3 つの理念を実現する社会を構築することを目指し、AIと人間のかかわり方について各種原則を示した。AIの利用は、基本的人権を侵すものであってはならないとする人間中心の原則を掲げた。 他のガイドラインと異なり、格差や分断を生じさせないため、人間の教育やリテラシーについて言及している。 なお、3 つの理念は以下の通りである。 ・人間の尊厳が尊重される社会(Dignity) ・多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会 (Diversity & Inclusion) ・持続性ある社会(Sustainability) |
AI戦略 2019~人・産業・地域・政府全てにAI~85
「AI戦略 2019~人・産業・地域・政府全てにAI~」は、我が国の現状の各種政策課題とAIの現状の開発状況を踏まえ、国が主体的に直ちに実行するべき施策に焦点を当てて取りまとめた戦略である。
84 統合イノベーション戦略推進会議決定(平成 31 年 3 月 29 日)(xxxxx://xxx0.xxx.xx.xx/xxxx/xxxxxxxxx.xxx)
85 統合イノベーション戦略推進会議決定(令和元年 6 月 11 日)
本戦略の中では、基本的な考え方を整理したうえで、「xxへの基盤づくり」と「産業・社会の基盤づくり」、「倫理」などについての方針が示されている。
農業分野との関連では、「産業・社会の基盤づくり」の中で優先すべき個別領域の一つとして挙げられ、その大目標として「農業分野では 2025 年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践」が掲げられている。さらに具体の目標として下表の内容が示されている。
表 18 AI戦略 2019 に示される農業分野の具体目標
<具体目標1> xx間を含め様々な地域、品目に対応したスマート農業技術の現場への導入 | ・多様な農業関連データを集約・利活用するためのアーキテクチャを実装した、農業データ連携基盤(WAGRI)の本格稼働(2019 年 度)【IT・農】 ・スマート農業技術を現場に導入し、生産から出荷まで一貫した体系として、実証を開始(2019 年度)【IT・農】 ・AIを利用した農業センサデバイス・システムの研究開発及び実証の実施(2019 年度)【IT・文】 ・「スマートフードチェーンシステム」の本格稼働と、我が国農水産物・食品の輸出に向けた海外への展開(2023 年度)【CSTI・IT・農】 |
<具体目標2> アーキテクチャを活用した世界最高水準のスマート農業の実現による、農業の成長産業化 | ・AI学習等に必要なデータをプラットフォーム上に集積するための基盤構築(2019 年度)【IT・農】 ・農業AIサービス等の利用を促進するための契約ガイドラインの策定 (2019 年度)【IT・農】 ・病害虫画像診断の研究開発及び実証の実施(2022 年度)【IT・農】 ・複数の育種拠点を連携させたバーチャル研究ラボのWAGRI上への実装(2022 年度)【IT・農】 ・栽培プロセスの大規模データの解析及び最適化の実現(2022 年度) 【IT・農】 |
<具体目標3> 農業分野におけるA I人材の育成 | ・農研機構のAI専門家・AI研究員における、OJT27 でのAIに関する課題検討・解決の実施【IT・農】 ・xx試や民間企業と連携して、様々な地域課題に対応可能なAI研究を展開するコア人材として、農研機構においてAIを含む高いITリテラシーを保有した研究者を育成し、全国各地の農業情報研究を先導 (2022 年度)【農】 |
出所:「AI戦略 2019 ~人・産業・地域・政府全てにAI~」(統合イノベーション戦略推進会議決定、令和元年6
月 11 日)より作成