(注)本稿は、政省令案段階で作成した、拙稿「契約締結前の書面交付義務の政省令案」(2007 年 5 月 31 日付 DIR 制度調査部情報)の確定版である。
~制度調査部情報~ 2007年9月 14日 全 18頁
契約締結前の書面交付
xx xx
義務の政省令<確定版> 制度調査部
金融商品取引業者等の販売・勧誘ルール政省令<確定版>―3
【要約】
■2007 年 8 月 3 日から 15 日にかけて、金融商品取引法制に関する政省令が公布された。内容は多岐に渡るが、本稿では、金融商品取引業者等に適用される契約締結前の書面交付義務について扱う。
■金融商品取引業者等は、契約締結前に交付する書面を、単に交付するだけでなく、その顧客に理解されるように説明しなければならない。
■契約締結前の交付書面には、記載方法と記載事項について規制がなされている。
■契約締結前交付書面は、契約締結前 1 年以内に同種の契約の契約締結前交付書面を交付している場合や、自社で買付けをした有価証券の売付けをする場合等は、交付義務が免除される。
■契約締結前の交付書面には、記載内容と交付義務に関して、さまざまな経過措置が設けられ、2007年 12 月 30 日までに既存顧客との間で一定の契約を締結する場合は、あらかじめ交付しなくても、契約が成立して、遅滞なく交付すればよい等の措置が認められている。
(注)本稿は、政省令案段階で作成した、拙稿「契約締結前の書面交付義務の政省令案」(2007 年 5 月 31 日付 DIR 制度調査部情報)の確定版である。
<目次>
1.はじめに
2.書面交付義務と説明義務
3.適用が除外される場合
4.記載方法
5.記載事項
(1)共通記載事項
(2)追加的記載事項
6.経過措置
(1)記載内容に関する経過措置
(2)交付義務に関する経過措置
7.施行日
このレポートは、投資の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を意図するものではありません。投資の決定はご自身の判断と責任でなされますようお願い申し上げます。記載された意見や予測等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあります。内容に関する一切の権利はxx総研にあります。事前の了承なく複製または転送等を行わないようお願いします。
1. はじめに
○2006 年 6 月 7 日、証券取引法を金融商品取引法(以下、金商法)に改正することなどを内容とする、「証券取引法等の一部を改正する法律」「証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が可決・成立した。
○金商法では、金融商品取引業者等(金融商品取引業者と登録金融機関(金商法 34 条)。以下同じ)の契約締結前の書面交付義務の規制が規定されている。しかし、規制の細則は政省令にゆだねられていた。
○2007 年 8 月 3 日から 15 日にかけて、金融商品取引法制に関する政省令が公布された。そのなかで
契約締結前の書面交付義務に関する政省令も公布されており、2007 年 9 月 30 日に施行される。本稿ではそれについて解説する。
2.書面交付義務と説明義務
○金融商品取引業者等は、金融商品取引契約を締結しようとするときは、原則として、契約締結前に書面を交付しなければならない(金商法 37 条の 3 第 1 項)。これは利用者保護のための販売・勧誘ルールの一環であり、これによって顧客に対して重要事項について情報提供がなされる。
○この契約締結前に交付する書面は、単に交付するだけでは足りず、それを、顧客に対して、その属性に応じた方法で説明しなければならない。
○具体的には、金融商品取引業者等とその役職員は、契約締結前交付書面の交付に関し、あらかじめ、顧客1に、その書面の一定の記載事項について、顧客の知識、経験、財産の状況および金融商品取引契約を締結する目的に照らして、顧客に理解されるために必要な方法・程度による説明をしなければならないとされる(金商法 38 条 6 号、金商業等府令 117 条 1 項 1 号)。
3.適用が除外される場合
○契約締結前の書面交付義務は、「投資者の保護に支障を生ずることがない場合として内閣府令で定める場合」は適用が除外される(金商法 37 条の 3 第 1 項但書き)。
○金商業等府令では、適用除外の場合として、以下の場合が規定されている(金商業等府令 80 条 1項)。
1 特定投資家を除く。
①xxxx証券等売買等2の契約の締結前 1 年以内に、当該顧客にxxxx証券等書面3を交付している場合
②有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等の契約の締結前 1 年以内に、同種の内容の金融商品取引契約の契約締結前交付書面を交付している場合
③目論見書4を交付している場合5または目論見書を交付する必要がない場合として金商法 15 条 2 項 2号で定められている場合
④すでに締結している金融商品取引契約の内容の一部の変更を内容とする金融商品取引契約を締結しようとする場合においては、以下の場合
a.変更に伴い、既に成立している金融商品取引契約に係る契約締結前交付書面の記載事項に変更すべきものがないとき
b.変更に伴い、既に成立している金融商品取引契約に係る契約締結前交付書面の記載事項に変更すべきものがある場合は、当該顧客に対し当該変更すべき記載事項を記載した書面(契約変更書面)を交付しているとき
⑤金融商品取引契約が以下の場合 a.有価証券の売付け(当該金融商品取引業者等との間で買付けの契約を締結した場合に限る) b.委託者指図型投資信託受益証券等の募集・私募を行なった者による、転売を目的としない買取り c.課徴金を計算する際に、一定のデリバティブ取引の場合に、行ったことがみなされる反対売買 d.累積投資契約による有価証券の買付け、又は累積投資契約に基づき定期的にする売付け e.投資信託受益証券等から生ずる収益金の再投資 f.計算期間が一日の公社債投資信託受益証券(MRF)の売買(当初の買付けを除く)又はその解約
○上の①に関して、xxxx証券等書面を交付した日から 1 年以内に、xxxx証券等売買等の契約を締結した場合は、その「締結」の日においてxxxx証券等書面を交付したものとみなして、①が適用されることになる(金商業等府令 80 条 3 項)。
○その結果、一度xxxx証券等書面を交付すれば、記載内容を変更する場合等を除き、1 年に 1 回以上契約を締結していれば、改めて契約締結前交付書面を交付する必要がないこととなる。
xxxx証券等書面を交付
契約を締結
契約を締結
1年間、契約締結前交付書面の交付不要
1年間、契約締結前交付書面の交付不要
1年間、契約締結前交付書面の交付不要
2 デリバティブ取引・信用取引・発行日取引を除く。
3 金商法 37 条の 3 第 1 項 1 号~5 号、金商業等府令 82 条 1・3・5・11・14 号に掲げる事項(業者の名称・登録番号、契約の概要、手数料情報、リスク情報、業者の概要、加入している金融商品取引業協会など)を記載した書面。
4 契約締結前交付書面の記載方法に準ずる方法(「4.記載方法」参照)によって、契約締結前交付書面に記載すべき事項の全てが記載されているものに限る。
5 目論見書に契約締結前記載事項の全てが記載されていない場合、その目論見書およびその事項のうち目論見書に記載されていない事項の全てが記載されている書面を一体のものとして交付している場合を含む。
○上の②に関しても、契約締結前交付書面に同様の措置がなされており6、1 年に 1 回以上同種の内容の金融商品取引契約を締結していれば、改めて契約締結前交付書面を交付する必要はない(金商業等府令 80 条 3 項)。
4.記載方法
○金融商品取引業者等は、金融商品取引契約を締結しようとするときは、「内閣府令で定めるところにより」、原則として、契約締結前に書面を交付しなければならない(金商法 37 条の 3 第 1 項)。
○この「内閣府令で定めるところ」として、記載方法について以下の規制が課せられている(金商業等府令 79 条)。
①顧客の判断に影響を及ぼすこととなる特に重要なものを、12 ポイント以上の大きさの文字・数字で、最初に平易に記載する
②①の次に、以下の事項7を枠内に 12 ポイント以上の大きさの文字・数字で明瞭かつ正確に記載する a.手数料等の種類ごとの金額、上限額又は計算方法8及び当該金額の合計額、上限額又は計算方法
(記載できない場合は、その旨及び理由)の概要
b.金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標の変動によって、損失が生ずるおそれがあるときはその旨
c.b の損失の額が保証金等の額を上回るおそれがあるときはその旨
d.金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標の変動を直接の原因として損失が生ずるおそれがある場合は、以下の事項
(1)当該指標
(2) (1)の変動によって損失が生ずるおそれがある理由
e.d の損失の額が保証金等の額を上回るおそれ(元本超過損が生ずるおそれ)がある場合は、以下の事項
(1)d の指標のうち、元本超過損が生ずるおそれを生じさせる直接の原因となるもの (2)(1)の変動により元本超過損が生ずるおそれがある理由
f.金融商品取引業者等その他の者の業務又は財産の状況の変化を直接の原因として損失が生ずるおそれがある場合は、以下の事項
(1)当該者 (2)(1)の業務又は財産の状況の変化により損失が生ずるおそれがある旨及び理由
g.f の損失の額が保証金等の額を上回るおそれ (元本超過損が生ずるおそれ) がある場合は、以下の事項
(1)f の者のうち、元本超過損が生ずるおそれを生じさせる直接の原因となるもの (2)(1)の業務又は財産の状況の変化により元本超過損が生ずるおそれがある旨及び理由
6 店頭金融先物取引の場合は除く。
7 店頭金融先物取引の場合、ここに掲げたもの以外にも財産の管理方法及び預託先などの記載が求められる。
h. 書面による解除9(クーリングオフ)の適用の有無
③①②以外の事項については、8 ポイント以上の大きさの文字・数字で明瞭かつ正確に記載する
5.記載事項
(1)共通記載事項
○契約締結前の交付書面には以下の事項を記載しなければならない(金商法 37 条の 3 第 1 項)。
①金融商品取引業者等の商号、名称又は氏名及び住所
②金融商品取引業者等である旨及び登録番号
③金融商品取引契約の概要
④手数料、報酬その他の当該金融商品取引契約に関して顧客が支払うべき対価に関する事項であって内閣府令で定めるもの
⑤顧客が行う金融商品取引行為について金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標の変動により損失が生ずることとなるおそれがあるときは、その旨
⑥⑤の損失の額が顧客が預託すべき委託証拠金その他の保証金その他内閣府令で定めるものの額を上回るおそれがあるときは、その旨
⑦①~⑥のほか、金融商品取引業の内容に関する事項であって、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして内閣府令で定める事項
(A)対価に関する事項
○④の「内閣府令で定めるもの」は、以下のように規定されている(金商業等府令 81 条)。
顧客が支払うべき手数料等10の種類ごとの金額、上限額又は計算方法11及び当該金額の合計額、上限額又は計算方法(記載できない場合は、その旨及び理由)
(B)その他重要なもの
○⑦の「内閣府令で定める事項」は、共通記載事項として書面をよく読むべき旨、リスク情報、業者の概要・連絡方法といった事項が規定されている。また、各商品・取引の特性に応じ、記載事項が追加されている。
○まず、共通記載事項については、具体的には以下のように規定されている(金商業等府令 82 条)。
9 投資顧問契約に適用される(金商法施行令 16 条の 3)。
10 手数料、報酬、費用その他いかなる名称によるかを問わない。一定の投資信託受益xxの場合、信託報酬などを含む(金商業等府令 74 条 2 項)。
共通記載事項
①当該契約締結前交付書面の内容を十分に読むべき旨
②顧客が預託すべき保証金等がある場合は、その額又は計算方法
③金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標の変動を直接の原因として損失が生ずることとなるおそれがある場合は、次の事項
a.当該指標 b.当該指標の変動により損失が生ずるおそれがある理由
④③の損失の額が保証金等の額を上回るおそれ(元本超過損が生ずるおそれ)がある場合は、以下の事項
a.③の指標のうち、元本超過損が生ずるおそれを生じさせる直接の原因となるもの
b.a の変動により元本超過損が生ずるおそれがある理由
⑤顧客が行う金融商品取引行為について、当該金融商品取引業者等その他の者の業務又は財産の状況の変化を直接の原因として損失が生ずるおそれがある場合は、以下の事項
a.当該者
b.a の業務又は財産の状況の変化により損失が生ずるおそれがある旨及びその理由
⑥⑤の損失の額が保証金等の額を上回るおそれ(元本超過損が生ずるおそれ)がある場合は、以下の事項
a.⑤の者のうち、元本超過損が生ずるおそれを生じさせる直接の原因となるもの
b.a の業務又は財産の状況の変化により元本超過損が生ずるおそれがある旨及びその理由
⑦当該金融商品取引契約に関する租税の概要
⑧当該金融商品取引契約の終了の事由がある場合は、その内容
⑨当該金融商品取引契約の書面による契約解除(クーリングオフ)12の適用の有無
⑩書面による契約解除(クーリングオフ)が適用される場合は、以下の事項 a.契約締結時に交付される書面を受領してから 10 日間、書面により当該金融商品取引
契約の解除を行うことができること b.契約の解除は、解除を行う旨の書面を発したときに効力が生じること
c.解除された場合、金融商品取引業者等は、解除までの期間に相当する手数料、報酬等、顧客が支払うべき対価を超えて損害賠償・違約金の支払いを請求することができないこと
d.解除された場合、金融商品取引業者等は、当該金融商品取引契約に関して対価の前払いを受けているときは、顧客に返還しなければならないこと
⑪当該金融商品取引業者等の概要
⑫当該金融商品取引業者等が行う金融商品取引業(登録金融機関の場合は、登録金融機関業務)の内容及び方法の概要
⑬顧客が当該金融商品取引業者等に連絡する方法
⑭当該金融商品取引業者等が加入している金融商品取引業協会及び対象事業者となっている認定投資者保護団体の有無(加入し、又は対象事業者となっている場合は、その名称)
(2)追加的記載事項
12 投資顧問契約が指定されている(金商法施行令 16 条の 3 第 1 項)。
○先ほど述べたとおり、契約締結前交付書面は、各商品・取引の特性に応じ、記載事項が追加されている。具体的には、以下の金融商品取引契約の場合には、記載事項が追加されている(金商業等府令 83 条~96 条)。
(Ⅰ)有価証券の売買その他の取引(金商業等府令 83 条)
(Ⅱ)信託受益xxの売買その他の取引(金商業等府令 84 条)
(Ⅲ)不動産信託受益権の売買その他の取引(金商業等府令 85 条)
(Ⅳ)抵当証券等の売買その他の取引(金商業等府令 86 条)
(Ⅴ)出資対象事業持分(集団投資スキーム持分)の売買その他の取引(金商業等府令 87 条)
(Ⅵ)外国出資対象事業持分の売買その他の取引(金商業等府令 88 条)
(Ⅶ)主として信託受益xxに対する投資を行う事業を出資対象事業とする出資対象事業持分の売買その他の取引(金商業等府令 89 条)
(Ⅷ)組合契約等に基づく権利のうち当該権利に係る出資対象事業が主として不動産信託受益権に対する投資を行うものの売買その他の取引(金商業等府令 90 条)
(Ⅸ)商品ファンド関連取引(金商業等府令 91 条)
(Ⅹ)競争用馬投資関連業務に係る取引(金商業等府令 92 条)
(Ⅺ)デリバティブ取引等(金商業等府令 93 条)
(Ⅻ)店頭金融先物取引(金商業等府令 94 条)
(XⅢ)投資顧問契約等(金商業等府令 95 条)
(XⅣ)投資一任契約等(金商業等府令 96 条)
○この追加的記載事項については、複数の業者が書面を交付しなければならない場合は、いずれか一つの業者が所定の事項を記載した書面を交付すれば、他の業者は契約締結前交付書面にその事項を記載する必要はない(各条で金商業等府令 83 条 2 項を準用)。
○このなかで、(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅴ)(Ⅺ)(XⅢ)(XⅣ)について説明する。
(A)有価証券の売買その他の取引
○金融商品取引契約が、(Ⅰ)有価証券の売買その他の取引である場合、以下の事項も記載する13(金商業等府令 83 条 1 項)。
①当該有価証券の譲渡に制限がある場合は、その旨及び当該制限の内容
②当該有価証券が取扱有価証券14である場合は、当該取扱有価証券の売買の機会に関して、顧客の注意を喚起すべき事項
13 有価証券の売付けの媒介・取次ぎ・代理、募集・売出しの取扱い・私募の取扱いで、顧客がその有価証券の発行者・所有者である場合は、記載する必要はない(金商業等府令 83 条 3 項)。
14 認可金融商品取引業協会の規則で売買その他の取引の勧誘を行うことが許される非上場株券等の有価証券。現在のグリーンシート銘柄などが該当する。
(B)信託受益xxの売買その他の取引
○金融商品取引契約が、(Ⅱ)信託受益xxの売買その他の取引である場合、以下の事項も記載する15
(金商業等府令 84 条)。
①信託財産の種類、信託期間、信託財産の管理又は処分の方法及び信託財産の交付に関する事項
②信託財産の管理又は処分の権限を有する者及び権限の内容に関する事項
③信託の設定時における第三者による信託財産の評価の有無その他信託財産の評価に関する事項
④信託行為において定められる信託受益xx16の譲渡手続に関する事項
⑤取引の種類の別
⑥売付けの代理もしくは媒介又は募集、私募もしくは売出しの取扱いの場合は、売主・買主に関する事項
⑦信託の目的
⑧受益者の権利義務に関する一定の事項17
⑨信託受益xxの損失の危険に関する事項18
⑩信託財産に関する租税その他の費用に関する事項
⑪信託財産の計算期間に関する事項
⑫信託財産の管理又は処分の状況の報告に関する事項
⑬受託者の氏名又は名称及び公告の方法
⑭信託財産である金銭を固有財産又は他の信託財産である金銭と合同運用する場合は、その旨及び当該信託財産と固有財産又は他の信託財産との間の損益の分配に係る基準
⑮改正信託法 3 条 3 号の方法19によって行う信託の場合の信託受益xxの売買等である場合、一定の事項20
⑯限定責任信託21の信託受益xxの売買等の場合、次の事項
a. 限定責任信託の名称
b. 事務処理地
c. 給付可能額及び給付可能額を超えて給付はできないこと
15 有価証券の売付けの媒介・取次ぎ・代理、募集・売出しの取扱い・私募の取扱いで、顧客がその有価証券の発行者・所有者である場合は、記載する必要はない(金商業等府令 84 条 3 項)。
16 有価証券とみなされるものに限る。
17 受益者の意思決定、信託の変更、信託終了の事由、受託者の辞任などに関して、特別の定めがある場合は、その旨及びその定めの内容が規定されている。
18 信託受益権について損失を生じるおそれのある債務、信託受益権に優先する権利、信託受益権についての信用補完措置などがある場合は、その旨およびその内容が規定されている。
19 特定の者が一定の目的に従って、自己が有する一定の財産の管理又は処分等のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を、一定の形式の下でするという方法(いわゆる自己信託)。
20 xx証書その他の書面等に記載され、又は記録された事項の内容など。
21 受託者が当該信託のすべての信託財産責任負担債務について、信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う信託。
(C)出資対象事業持分の売買その他の取引
○金融商品取引契約が、(Ⅴ)出資対象事業持分(集団投資スキーム持分)の売買その他の取引である場合、以下の事項も記載する22(金商業等府令 87 条)。
①出資対象事業持分取引契約に関する次の事項 a.名称
b.形態 c.契約の締結の申込みに関する事項
d.出資又は拠出をする金銭の払込みに関する事項 e.契約期間がある場合は、その契約期間 f.解約に関する次の事項
(1)解約の可否
(2)解約により行われる出資対象事業持分に係る財産の分配に係る金銭の額の計算方法、支払い方法及び支払い予定日
(3)解約に係る手数料 g.損害賠償額の予定(違約金を含む)に関する定めがあるときは、その内容 h.顧客の権利及び責任の範囲に関する、次の事項
(1)出資対象事業に係る財産に対する顧客の監視権の生む及び顧客が当該監視権を有する場合は、その内容
(2)出資対象事業に係る財産の所有関係 (3)顧客の第三者に対する責任の範囲
(4)出資対象事業に係る財産が損失により減じた場合の顧客の損失分担に関する事項 (5)出資対象事業持分の内容
②出資対象事業の運営に関する次の事項 a.内容及び運営の方針
b.組織、内部規則、出資対象事業に関する意思決定に係る手続きその他の出資対象事業の運営体制に関する事項
c.出資対象事業持分の発行者の商号、名称又は氏名、役割及び関係業務の内容 d.運営を行う者の商号、名称又は氏名、役割及び関係業務の内容
e.出資対象事業が有価証券に対する投資を行う事業であるものである場合は、次の者の商号、名称又は氏名、役割及び関係業務の内容
(1)当該有価証券23の発行者
22 有価証券の売付けの媒介・取次ぎ・代理、募集・売出しの取扱い・私募の取扱いで、顧客がその有価証券の発行者・所有者である場合は、記載する必要はない(金商業等府令 87 条 3 項)。
23 投資の総額に占める割合が大きいものからxxその順位を付し、その第一順位から第三十順位までのものに限る。
(2)出資対象事業持分の発行者又は(1)から金銭その他の財産の運用又は保管の委託を受ける者
24
f. 出資対象事業から生ずる収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配の方針
g. 事業年度、計算期間その他これに類する期間
h. 出資対象事業に係る手数料等の徴収方法及び租税に関する事項
i. 分別管理の方法
③出資対象事業の経理に関する次の事項 a.貸借対照表
b.損益計算書 c.出資対象事業持分の総額 d.発行済みの出資対象事業持分の総数 e.配当等に関する、次の事項
(1)配当等の総額 (2)配当等の支払方法
(3)出資対象事業に係る財産の分配が、契約期間の末日以前に行われる場合は、当該分配に係る金銭の支払い方法
(4)配当等に対する課税方法及び税率 f.総資産額、純資産額、営業損益額、経常損益額及び純損益額 g.出資対象事業持分一単位当たりの総資産額、純損益額及び配当等の金額 h.自己資本比率及び自己資本利益率 i.出資対象事業が有価証券投資を行う事業である場合は、当該有価証券に関する次の事項
(1)発行地等ごとの銘柄、当該有価証券が株券である場合は、当該株券の発行者の業種・数量・金額25、当該有価証券が債券である場合は、利率及び償還金額
(2)(1)の金額の評価方法
(3)(1)の金額がそれぞれ出資対象事業に係る資産の総額に占める割合 j.出資対象事業が有価証券以外の資産に対する投資を行う事業であるものである場合は、当該資産
に関する次の事項 (1)資産の種類ごとの数量及び金額 (2)(1)の金額の評価方法
(3)(1)の金額がそれぞれ出資対象事業に係る資産の総額に占める割合
(D)デリバティブ取引等
24 当該者が運用を再委託する者は出資対象事業持分の発行者又は上記(1)の者から委託を受ける者とみなす。
25 簿価の総額、及び時価総額又は評価額の総額。
○金融商品取引契約が、(Ⅺ)デリバティブ取引等である場合、以下の事項も記載する26(金商業等府令 93 条)。
①デリバティブ取引等の額27が、保証金等の額を上回る可能性がある場合、次の事項 a.その旨
b.デリバティブ取引等の額の、保証金等の額に対する比率(算出できない場合は、その旨及び理由)
②店頭デリバティブ取引について、金融商品取引業者等が表示する金融商品の売付価格と買付価格とに差がある場合、その旨
③当該デリバティブ取引等に基づいて発生する債務の履行の方法および決済する方法
④当該デリバティブ取引等が市場デリバティブ取引等である場合は、その取引の取引所金融商品市場を開設する者の商号・名称
⑤顧客が当該デリバティブ取引等に関し預託すべき委託証拠金その他の保証金の種類及び金額の計算方法等28
⑥顧客から手数料を徴収する方法
⑦デリバティブ取引の受託等の手続きに関する事項
⑧デリバティブ取引に関する主要な用語及びその他の基礎的な事項
(E)投資顧問契約等
○金融商品取引契約が、(XⅢ)投資顧問契約等である場合、以下の事項も記載する29(金商業等府令 95 条)。
①金融商品取引業者等が法人である場合は、その資本金の額・出資の総額、その役員・主要株主の商号・名称・氏名
②分析者等30の氏名
③助言の内容及び方法
④顧客に対する投資顧問契約に基づく助言の業務を行う者の氏名
⑤書面による解除(クーリングオフ)の規定が適用される場合は、契約締結時交付書面を受領した日から起算して 10 日を経過するまでの間、書面により契約の解除を行うことができる旨
⑥書面による解除は、解除を行う旨の書面を発したときに、その効力を生じる旨
⑦金融商品取引業者等は、その行う投資助言業務に関して、顧客を相手方として又は当該顧客のため
26 有価証券の売付けの媒介・取次ぎ・代理、募集・売出しの取扱い・私募の取扱いで、顧客がその有価証券の発行者・所有者である場合は、記載する必要はない(金商業等府令 87 条 3 項)。
27 取引の対価の額又は約定数値に、その取引の件数又は数量を乗じて得た額(契約金額)。
28 当該委託証拠金その他の保証金に充当できる財産の種類及び充当価格その他これに準ずるものならびに顧客が当該委託証拠金その他の保証金を預託し、及びその返還を受ける方法が含まれる。
29 有価証券の売付けの媒介・取次ぎ・代理、募集・売出しの取扱い・私募の取扱いで、顧客がその有価証券の発行者・所有者である場合は、記載する必要はない(金商業等府令 87 条 3 項)。
30 顧客に対する助言の業務に提供する目的で、金融商品の価値等の分析又はその分析に基づいて投資判断を行う者。
に一定の金融商品取引業31を行ってはならない旨32
⑧金融商品取引業者等は、いかなる名目によるかを問わず、その行う投資助言業務に関して、顧客から金銭若しくは有価証券の預託を受け、又は当該金融商品取引業者等と密接な関係を有する者に顧客の金銭若しくは有価証券を預託させてはならない旨33
⑨金融商品取引業者等は、その行う投資助言業務に関して、顧客に対し金銭若しくは有価証券を貸し付け、又は顧客への第三者による金銭もしくは有価証券の貸付けにつき、媒介、取次ぎ若しくは代理をしてはならない旨34
(F)投資一任契約等
○金融商品取引契約が、(XⅣ)投資一任契約等である場合、以下の事項も記載する(金商業等府令 96条)。
①投資一任契約に基づいて顧客のために行う、当該顧客の資産に関する投資の方法及び取引の種類
②投資一任契約に基づいて顧客のために投資判断を行い、または投資判断を行うとともに、これに基づいて投資を行う者の氏名
③投資判断の一任の範囲及び投資の実行に関する事項35
6.経過措置
○金商法は、記載内容と交付義務に関して、証取法から移行する際の経過措置を定めている。これは、規制の大幅な変更によって生じる影響を緩和する措置として認められる、期間限定の特例措置である。
(1)記載内容に関する経過措置
①2007 年 12 月 30 日まで登録番号の記載不要(契約締結前交付書面・xxxx証券等書面)
②2007 年 12 月 30 日までに交付する目論見書等には、作成方法の規制不適用
①登録番号の記載不要
○契約締結前交付書面には、「金融商品取引業者等の登録番号」を記載しなければならない(金商法
37 条の 3 第 1 項 2 号)。しかし、登録番号は金商法が施行されてからでなければ分からない。そ
こで、経過措置として、契約締結前交付書面には、2007 年 12 月 30 日まで登録番号を記載する必
31 有価証券の売買、市場デリバティブ取引、それらの媒介・取次ぎ・代理、取引所金融商品市場における有価証券の売買等の委託の媒介・取次ぎ・代理、店頭デリバティブ取引等が定められている。
32 金融商品取引業者等が第一種金融商品取引業を行う者、第二種金融商品取引業を行う者、登録金融機関、金融商品仲介業者の場合は適用しない。
33 金融商品取引業者等が、有価証券等管理業務を行う者、一定の登録金融機関の場合は適用しない。
34 金融商品取引業者等が、第一種金融商品取引業を行う者、金融商品仲介業者、信託業務を営む登録金融機関の場合は適用しない。
35 権利者のために運用を行う権限を委託する場合は、その者の商号又は名称及び委託の概要を含む。
要はないとされている(証券取引法等の一部を改正する法律及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令附則 23 条 2 項)。
○同様に、xxxx証券等書面(3.の①参照)についても、2007 年 12 月 30 日まで登録番号を記
載する必要はないとされている(金商業等府令附則 12 条)。
②目論見書等の作成方法の規制の不適用
○3.の③で述べたように、契約締結前交付書面を交付する必要はない場合として、契約締結前交付書面の記載方法に準ずる方法(「4.記載方法」参照)によって、契約締結前交付書面に記載すべき事項の全てが記載されている目論見書を交付している場合36が定められている(金商業等府令 80
条 1 項 3 号)。
○この目論見書等について経過措置が設けられ、2007 年 12 月 30 日までに交付するものに関しては、契約締結前交付書面の記載方法に準ずる方法によって作成するという規制は適用されない(金商業等府令附則 15 条 1 項)。これにより、一定期間内は既存の目論見書を利用することができる(ただし、記載事項に関する規制は適用されるので、目論見書に記載されていない事項の全てが記載されている書面を一体として交付する必要がある)。
○金融商品取引業者等は、金商法の施行日(2007 年 9 月 30 日)以後に契約を締結しようとする場
合は、施行日前でも、顧客に対し目論見書37等を交付することができる(金商業等府令附則 15 条
2 項)。この場合についても、契約締結前交付書面の記載方法に準ずる方法によって作成するとい
う規制は適用されない(金商業等府令附則 15 条 2 項)(ただし、記載事項に関する規制は適用されるので、目論見書に記載されていない事項の全てが記載されている書面を一体として交付する必要がある)。
(2)交付義務に関する経過措置
①既存顧客との間で以下の契約を締結する場合の事後交付の特例
a.xxxx証券等の売買等
b. MMF
c. 信用取引・有価証券に関連する市場デリバティブ取引
d. 2007 年 12 月 30 日までに締結する金融商品取引契約
②以下の書面の施行日前交付の特例
a.xxxx証券等書面と同じ様式の書面
36 注 5 参照。
37 金商業等府令 80 条 1 項 3 号の記載事項の様式のもの。
b.契約締結前交付書面と同じ様式の書面
c.旧金融先物取引法・旧商品投資事業規制法に規定される書面
d.目論見書等
①既存顧客との間の金融商品取引契約を締結する場合の特例
a.xxxx証券等の売買等
○金融商品取引業者等が、金商法施行日以後に既存顧客38との間で、以下のxxxx証券等の売買その他の取引を、一定期間(「xxxx証券等売買等経過期間」)内に行う場合、あらかじめ契約締結前交付書面を交付する義務が免除される(金商業等府令附則 2 条 1 項)。
①xxxx証券・店頭売買有価証券
②外国に所在する、証券取引所に類似するものに上場されている有価証券・店頭売買有価証券市場に類似する市場で取引されている有価証券
○ただし、この交付義務免除の特例には条件があり、xxxx証券等売買等経過期間内に、契約締結前交付書面39又はxxxx証券等書面を交付しなければならない(金商業等府令附則 2 条 2 項)。
○この「xxxx証券等売買等経過期間」は、以下の期間である。
①取引残高報告書の報告対象期間の末日が、2007 年 12 月 30 日までの場合
―取引残高報告書を交付する日まで
②取引残高報告書の報告対象期間の末日が、2007 年 12 月 31 日以降の場合
―2008 年 3 月 30 日まで
○この期間内に既存顧客との間でxxxx証券等の売買その他の取引行う場合には、本来ならば契約締結前交付書面を「あらかじめ」交付しなければならないのが、この期間内に契約締結前交付書面又はxxxx証券等書面を事後交付すればよいこととなる。
○よって、たとえば、取引残高報告書の報告対象期間末日が 11 月 30 日であれば、取引残高報告書の交付時までに上場有価証券等の売買その他の取引を行う場合には、その取引残高報告書の交付時までに契約締結前交付書面又は上場有価証券等書面を事後交付すればよい。
○また、たとえば、取引残高報告書の報告対象期間末日が 2008 年 1 月 31 日であれば、2008 年 3 月
30 日までに上場有価証券等の売買その他の取引を行う場合には、2008 年 3 月 30 日までに契約締結前交付書面又は上場有価証券等書面を事後交付すればよい。
38 当該金融商品取引業者等との間で、金商法施行日前に、下記①②の有価証券の売買その他の取引を行うことを内容とする契約を締結した者。
39 契約締結前交付書面を交付する場合、この特例は、「あらかじめ」交付しなければならないという義務が免除される点に意義がある。
「上場有価証券等売買等経過期間」(図のアミかけの部分)
9月30日
12月30日
2008年
3月30日
9月30日
12月30日
2008年
3月30日
取引残高報告書の報告対象期間末日
取引残高報告書交付時
9月30日 12月30日
取引残高報告書の報告対象期間末日
①
このアミかけの期間に既存顧客との間で、上場有価証
② 券等の売買等を行う場合
取引残高報告書の報告対象期間末日
⇒このアミかけの期間内に契約締結前交付書面・上場有価証券等書面を事後交付すればよい
b.MMF
○金融商品取引業者等は、金商法施行以後に既存顧客40との間で、上場有価証券等売買等経過期間内に、MMF 41の売買その他の取引をしようとする場合、あらかじめ契約締結前交付書面を交付する義務が免除される(金商業等府令附則 3 条 1 項)。
○ただし、この交付義務免除の特例には条件があり、上場有価証券等売買等経過期間内(a.参照)に、契約締結前交付書面42又は目論見書を交付しなければならない(金商業等府令附則 3 条 2 項)。
c. 信用取引・有価証券に関連する市場デリバティブ取引
○金融商品取引業者等が、金商法施行日以後に既存顧客43との間で、信用取引・有価証券に関連する市場デリバティブ取引を、一定期間(「信用取引等経過期間」)内に行う場合、あらかじめ契約締結前交付書面を交付する義務が免除される(金商業等府令附則 4 条 1 項)。
40当該金融商品取引業者等との間で、金商法施行日前に、MMF の売買その他の取引を行うことを内容とする契約を締結した者。
41 投資信託財産の計算に関する規則 59 条 1 項 2 号に規定する、計算期間が 1 日の公社債投資信託の受益証券。
42 注 39 参照。
43 当該金融商品取引業者等との間で、金商法施行日前に、下記の有価証券の売買その他の取引を行うことを内容とする契約を締結した者。
○ただし、この交付義務免除の特例には条件があり、信用取引等経過期間内に、契約締結前交付書面
44を交付しなければならない(金商業等府令附則 4 条 2 項)。
○この信用取引等経過期間は、以下の期間である。
①取引残高報告書の報告対象期間の末日が、2007 年 12 月 30 日までの場合
―取引残高報告書を交付する日まで
②取引残高報告書の報告対象期間の末日が、2007 年 12 月 31 日以降の場合
―2008 年 3 月 30 日まで
d. 2007 年 12 月 30 日までに締結する金融商品取引契約
○金融商品取引業者等が、金商法施行日以後に既存顧客45との間で、2007 年 12 月 30 日までに以下の行為を行うことを内容とする金融商品取引契約を締結しようとする場合、あらかじめ契約締結前交付書面を交付する義務が免除される(金商業等府令附則 5 条 1 項)
①旧証取法に規定されている証券業46
②旧投資信託・投資法人法に規定する委託者指図型投資信託の委託者となること
③旧信託業法に規定する信託契約の代理・媒介、信託受益権の販売・代理・媒介
④旧金融先物取引法に規定する金融先物取引の受託等
⑤旧商品投資事業規制法に規定する商品投資販売業
○ただし、この交付義務免除の特例には条件があり、金融商品取引契約が成立したときは、遅滞なく契約締結前交付書面47を交付しなければならない(金商業等府令附則 5 条 2 項)。
②書面の施行日前交付の特例
a. 上場有価証券等書面と同じ様式の書面
○旧証取法に基づく証券会社48は、金商法施行日前でも、既存顧客に対し、上場有価証券等書面と同じ様式の書面を交付できる(金商業等府令附則 13 条 1 項)。この場合、その証券会社は、上場等有価証券等書面を交付したとみなされる。
○この場合、この書面を交付した日が、金商法に基づく上場有価証券等書面を交付した日とみなされ
44 注 39 参照。
45 当該金融商品取引業者等との間で、金商法施行日前に、下記の有価証券の売買その他の取引を行うことを内容とする契約を締結した者。
46 旧有価証券の売買その他の取引及び信用取引・有価証券に関連する市場デリバティブ取引を除く。
47 注 39 参照。
48 金商法が施行されると、第一種金融商品取引業者とみなされる(証券取引法等の一部を改正する法律附則 18 条 1項)。
る(金商業等府令附則 13 条 2 項)。
○この規定により、たとえば、金商法施行前の 2007 年 9 月 20 日に既存顧客に対し、上場有価証券等書面と同じ様式の書面を交付した場合も、1 年間の交付不要の規定(3.の①参照)が適用される結果、原則として 2008 年 9 月 19 日まで契約締結前交付書面の交付が不要となる。
b.契約締結前交付書面と同じ様式の書面
○金融商品取引業者等が、金商法施行日以後に金融商品取引契約を締結しようとする場合に、施行日前に、同種の契約について契約締結前交付書面と同じ様式の書面を交付している場合は、金商法に基づく契約締結前交付書面を交付したものとみなして、1 年間の交付不要の規定(金商業等府令 80 条 1 項 2 号、3.の②参照)を適用する(金商業等府令附則 14 条 1 項)。
○この場合、この書面を交付した日が、金商法に基づく契約締結前交付書面を交付した日とみなされる(金商業等府令附則 14 条 3 項)。
○この規定により、たとえば、金商法施行前の 2007 年 9 月 20 日に顧客49に対し、契約締結前交付
書面と同じ様式の書面を交付した場合も、1 年間の交付不要の規定が適用され、原則として 2008
年 9 月 19 日まで契約締結前交付書面の交付が不要となる。
c.旧金融先物取引法・旧商品投資事業規制法に規定される書面
○金融商品取引業者等が、金商法施行日以後に金融商品取引契約を締結しようとする場合に、施行日前に、同種の契約について旧金融先物取引法・旧商品投資事業規制法に規定される書面を交付している場合は、金商法に基づく契約締結前交付書面を交付したものとみなして、1 年間の交付不要の規定(金商業等府令 80 条 1 項 2 号、3.の②参照)を適用する(金商業等府令附則 14 条 2 項)。
○この場合、この書面を交付した日が、金商法に基づく上場有価証券等書面を交付した日とみなされる(金商業等府令附則 14 条 3 項)。
○この規定により、たとえば、金商法施行前の 2007 年 9 月 20 日に顧客50に対し、旧金融先物取引法・旧商品投資事業規制法に規定される書面を交付した場合も、1 年間の交付不要の規定が適用され、原則として 2008 年 9 月 19 日まで契約締結前交付書面の交付が不要となる。
d.目論見書等
49 既存顧客に限られない。
50 既存顧客に限られない。
○金融商品取引業者等は、金商法施行日以後に金融商品取引契約を締結しようとする場合に、施行日前でも、顧客に対し目論見書等51を交付することができる(金商業等府令附則 15 条 2 項)((1)の
「②目論見書等の作成方法の規制の不適用」参照)。
7.施行日
○金商法は 2007 年 9 月 30 日から施行される(証券取引法等の一部を改正する法律の施行日を定める政令)。
51 目論見書と一体のものとして交付される書面がある場合は、その書面を含む。