Ships emissions – Contractual considerations
船舶からの排出 – 契約上の考慮事項
Ships emissions – Contractual considerations
この記事では、用船契約の燃料油の硫黄分に関する条項に注目します。
定期用船契約では、用船船舶の使用に適したバンカーの提供とその代金の支払いを用船者に求めることがよくあります。船主は、供給される予定の燃料の仕様とグレードを用船者に知らせる基本的責任を負っていますが、これは通常、用船契約の条項を通じて実現されるものです。
当事者は、所定の地域において要求される燃料油の品質に対してMARPOL条約附属書VI1が及ぼす可能性のある影響を勘案して、罰金や
用船契約を巡る紛争から自らを守れるように、関連する用船契約の条項を考慮することが推
奨されます。
BIMCO の条項
契約当事者が燃料油の硫黄分に関する自身の
義務を明確にしておけるように、BIMCO では、以下のような用船契約の条項(原文は英文)
を作成しています。
「2005 年定期用船契約向けのバンカー油の硫黄分に関する条項
(a) 本用船契約の他の定めを損なうことなく、用船者は、本船が排出規制海域での交易を命じられた場合に当該海域の最大硫黄分の要件を常に遵守させられるような仕様とグレードの燃料を供給するものとする。
用船者はまた、かかる燃料を供給するために用船者が使用する燃料サプライヤー、バンカー船運航業者およびバンカーサーベイヤーが MARPOL 条約附属書 VI の規則 14 および規則 18(サンプリングおよび燃料油供給記録に関
1 Gard News 187 号の掲載記事「Xxxxxx Xxxxx – 船主と傭 船者への新たなリスクと要求(Xxxxxx Xxxxx XX – New risks and challenges for owners and charterers)」を参照してください。
するガイドラインを含む)を遵守することを保証する。
用船者は、用船者が本項(a)を遵守しないことに起因する損失、責任、遅延、罰金、費用または経費について、船主を補償し、防御し、免責するものとする。
(b) 用船者が(a)項に従って燃料の供給に関する義務を遂行していることを常に条件として、船主は、以下のことを保証する。
(i) 本船は、MARPOR 条約附属書 VI の規則 14および規則 18 ならびに排出規制海域の要求事項を遵守すること。
(ii) 本船が、当該海域内での交易を用船者から要求された場合には、要求された硫黄分の燃料を消費することができること。
(a) 項に従って燃料を船舶に供給していることを条件として、用船者は、本船が MARPOL 条約附属書 VI の規則 14 および規則 18 を遵守しないことに起因する損失、遅延、罰金、費用または経費について他に責任を負わない。
(c) 本条において、「排出規制海域」とは、 MARPOL 条約附属書 VI に定める海域ならびに/または地域および/もしくは国家の当局が規制する海域をいい、例えば以下のような海域をいうが、これに限定されない。」
BIMCO は、MARPOL 条約附属書 VI の要件を取り入れており、したがって、用船者が MARPOL 条約の要件を遵守し、かつ、船舶が向かうように命じられている排出規制海域 Emission Control Area (ECA)の基準に適合した燃料を提供しなければならないという原則を
支持しています。さらに、用船者に対しては、規制を遵守するバンカーサプライヤーのみを
採用すべきとする条項もあります。もっとも、どの程度遵守しなければならないかについて
は説明されていません。この部分はグレーなままです。この条項は、規制を遵守する責任を船主に課すものです(ただし、用船者が義務を遂行した場合に限られます)。
この条項は、定期用船契約向けに推奨されている、燃料補給の質および責任に関する BIMCO の標準規定を補うことを目的としたものです。
「燃料補給の質および責任に関する標準規定
(a) 用船者は、合意した仕様およびグレードの燃料を供給するものとする。燃料は、安定的かつ均質で、本船のエンジンまたは補助エンジンでの燃焼に適したものとし、書面による別段の合意がない限り、ISO 規格 8217:2010 またはその改正規格に準拠したものでなければならない。
(b) 用船者は、不適切な燃料および/または前 (a)項に定める仕様および/またはグレードを遵守しない燃料の供給(不適切な燃料を降ろすことまたは新たな燃料を船舶に供給することを含む)により船主または本船に生じた損
失または損害について責任を負うものとする。船主は、本船の高速性能の低下および/また
はバンカー消費量の増加ならびにそのような供給によって失われた時間その他の結果について、責任を問われないものとする」
燃焼の硫黄分に関する当事者の義務は、用船契約書で明確にすべきです。
この条項は、用船者が合意した仕様およびグレードの燃料を供給する旨を定めたものであり、船主と用船者がそれぞれの量について合
意していることが求められます。これにより、予定されている航海にはどのグレードの燃料
が必要かを船主が宣言することが必要となります。しかし、この他に、その燃料が「船舶のエンジンでの燃焼に適したもの」でなければならないという要件が設けられています。この条件は、ECA を航行する船舶の場合、燃焼に適した燃料であると言えるには、当該海域に適用される規制を遵守したものでなければならないことを意味していると解釈することができます。b) 項は、不適切な燃料の提供
(遅延を含む)により船主が被った損失また
は損害に対する用船者の責任を定めています。用船者は、本船上には燃料の硫黄分を確認す
る手段がないのが一般的であることを考慮に入れて、このリスクを評価しなければなりません。よって、船舶が ECA で高硫黄分の燃料をそれと知らずに燃焼させ、船主に罰金、遅延その他の費用および経費を負担させてしまう可能性があるというリスクが存在します。
したがって、用船者は、自らが供給しようとするバンカーがエンジンの物理的特性面から適したものであるだけでなく、燃料を燃焼させることによって発生する排出に関しても適したものであることを確認することが非常に重要です。
また、BIMCO は、バンカーサプライヤーと買主との間で使用される標準バンカー契約を公表しています。その第 2 条は以下のとおりです。
「グレード/品質
(a) 買主は、本船による使用に適した船舶用燃料の指定について単独で責任を負うものとする。
(b) 売主は、船舶用燃料が均質で安定したものであること、買主が指定したグレードに準拠し、かつ、満足のいく品質のものであることを保証する。確認書で別段の合意をしない限り、船舶用燃料は、ISO 規格 8217:1996 または
その改正規格にすべての点で準拠したものでなければならない。」
BIMCO は、契約に付された注記に以下のようなことを記載しています。
「(a) 項は、『船舶による使用に適した』特定のグレード(例えば RME 25)を指定する責任を明確に買主に課したものである。当初の FUELCON 社の文言では『船舶に適した
(suitable to the vessel)』という表現が使用されているが、この主題に関する現在の判例では、『使用に適した(fit for use)』の方が適切な表現であることが指摘されている。
(b) 項は、多数の議論や法的な意見の対象となっている。イギリスの『1994 年動産売買・提供法』に取り入れられた概念は他の多くの法域の概念に総じて合致していることから、本契約の法的根拠としてはイギリスの『1994 年動産売買・提供法』が使用されるべきであると判断されている。同法では、商品性と適合性という古い概念を『満足のいく品質
(satisfactory quality)』という 1 つの概念で置き換えている。それにもかかわらず、船舶用燃料が均質で安定したものであること、買主が指定したグレードに準拠していることを特に強調しておくことが適切であると思われたのである。また、同項では、船舶用燃料は原則としてISO 規格 8217:1996 またはその改正規格に準拠したものであること、他の規格を使用することもできるが、この場合にはその規格を確認書に記載すべきであることが定められている」
まとめ
該当するBIMCO の規定をP&I クラブが推奨しているとしても、船主と用船者は、各自に課される責任を認識しておくとともに、その規定を用船契約に盛り込む前に、その規定が遵守可能であることを確認しておく必要があります。