Contract
令和3年9月
消費者契約に関する検討会
目 次
第5 消費者契約の内容に係る情報提供の努力義務における考慮要素について
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消費者契約法(平成 12 年法律第 61 号。以下「法」という。)は、消費者契約全般に適用される包括的な民事実体法であり、その規律は、社会経済情勢の変化等に適切に対応し得るものであることが求められる。
そのため、法は、平成 28 年と平成 30 年に改正が重ねられてきたところであるが、昨今、超高齢社会が益々進展しており、高齢社会対策大綱や認知症施策推進大綱など政府が推進すべき基本的な施策が定められている。また、情報通信技術の進展により普及しつつあったオンライン取引が、コロナ禍による新たな日常と相まって急激に拡大している。このように、消費者や消費者契約を取り巻く環境が急激に変化しており、環境の変化に対応した法の規律の在り方を、改めて考える必要がある。
それに当たっては、消費者の脆弱性には消費者の属性に基づく恒常的・類型的な脆弱性と、消費者であれば属性を問わず誰もが陥り得る一時的な脆弱性とがあること、消費者の有する合理性には限界があること(限定合理性)、消費者の思考に関する二重過程理論(消費者の思考は、直感的で便宜的な思考と論理的な思考があるとする理論)、さらにはデジタル化や複雑化する消費者取引に対する消費者のリテラシーの限界等を踏まえつつ、消費者が事業者との健全な取引を通じて安心して安全に生活していくためのセーフティネットを整備するという視点が欠かせない。
また、平成 30 年改正の前提となった消費者委員会の答申(平成 29 年8月)に付言された喫緊の課題 1や、平成 30 年改正に際しての衆議院・参議院の消費者問題に関する特別委員会における附帯決議で更なる改正を視野に入れた検討が求められていることに応えられるものでもあることも必要である。
消費者契約に関する検討会(以下「本検討会」という。)は、これらの必要性に応えるため、平成 31 年2月から令和元年9月にかけて開催された消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会の成果を踏まえつつ、消費者が安全・安
1 喫緊の課題として、以下の3つを早急に検討すべきとされた。
「1 消費者契約における約款等の契約条件の事前開示につき、事業者が、合理的な方法で、消費者が契約締結前に、契約条項(新民法第 548 条の2以下の『定型約款』を含む。)を あらかじめ認識できるよう努めるべきこと。
2 合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させるいわゆる『つけ込み型』勧誘の類型につき、特に、高齢者・若年成人・障害者等の知識・経験・判断力の不足を不当に利用し過大な不利益をもたらす契約の勧誘が行われた場合における消費者の取消権。
3 消費者に対する配慮に努める事業者の義務につき、考慮すべき要因となる個別の消費者の事情として、『当該消費者契約の目的となるものについての知識及び経験』のほか、
『当該消費者の年齢』等が含まれること。」
心に契約を締結できる社会環境を確保すること、また、正常な取引が阻害されないようにすることが、消費者・事業者の双方にとって重要な利益であるという共通認識の下で、消費者の代表者、事業者の代表者、民事実体法の研究者だけではなく、民事手続法、行動経済学、心理学、情報通信技術などの研究者が集い、令和元年 12 月の第1回から今日まで合計 23 回にわたって議論を重ねた。本報告書は、その成果を取りまとめたものである。
本報告書において示した事項については、これまでの法の考え方を更に拡充・発展させるものも含まれる。そのため、その実現に向けては、法制面その他の困難も予想されるが、消費者庁には、本検討会の精力的な議論をしっかりと受け止め、その成果の可及的な実現に向けて、早急に、法制的な検討に着手することを期待する。その際には、当然ながら、本報告書及び本検討会において指摘された懸念や留意点を示す意見にも十分に配慮する必要があり、また、各論点ごとに議論の熟度に差があることや、解釈がまちまちにならないよう規定の明確性にも留意する必要がある。
これにより、社会経済情勢の変化等に対応した消費者契約に関する新しい規律が実現することを切に希望する。
法は、消費者と事業者との間には情報の質及び量並びに交渉力の格差があることに鑑み、消費者の利益の擁護を図るため、事業者の一定の行為により消費者が誤認し又は困惑した場合等における消費者の取消権を定めている(法第1条参照)。
平成 28 年及び平成 30 年の法改正では、取消しの範囲を広げる改正が行われた。もっとも、超高齢社会がますます進展し、高齢者である消費者の保護がより重要な課題となっている。一方で、若年者である消費者が巻き込まれる消費者被害も多様化している。xx年齢引下げが間近に迫る中で、若年成人の消費者被害の予防や救済が喫緊の課題となっている。これらの高齢者や若年者の消費者被害は消費者の属性に基づいて恒常的・類型的に存在する脆弱性に起因するものであるが、誰もが陥り得る一時的な脆弱性に起因する消費者被害もあり、消費者契約をめぐる社会経済情勢は日々変化している。
2 衆議院消費者問題に関する特別委員会における消費者契約法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成 30 年5月 23 日。以下「衆議院附帯決議」という。)第3号(「消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における取消権の創設について、要件の明確化等の課題を踏まえつつ検討を行い、本法成立後二年以内に必要な措置を講ずること。」)、参議院消費者問題に関する特別委員会における消費者契約法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成 30 年
6月6日。以下「参議院附帯決議」という。)第4号(「高齢者、若年成人、障害者等の知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)の創設について、消費者委員会の答申書において喫緊の課題として付言されていたことを踏まえて早急に検討を行い、本法成立後二年以内に必要な措置を講ずること。」)及び参議院法務委員会における民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成 30 年6月 12 日。以下「民法附帯決議」という。)第1号の1(「xx年齢引下げに伴う消費者被害の拡大を防止するための法整備として、早急に以下の事項につき検討を行い、本法成立後二年以内に必要な措置を講ずること。1 知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を
(1)問題の所在
法第4条第3項は、事業者の一定の行為により消費者が困惑し、契約を締結した場合における取消権を定めている(困惑類型)。事業者の行為として、立法時に不退去(第1号)と退去妨害(第2号)の2つが規定されたところ、平成 30 年改正により6つの行為が追加され計8つとなった。この改正により救済できる消費者被害が広がった一方で、困惑類型について課題も残されていると考えられる。
すなわち、法第4条第3項各号は、事業者の行為態様を個別具体的かつ詳細に定めており、文言の拡張解釈等の柔軟な解釈により救済を図ることにも限界がある。その結果、実質的には法第4条第3項各号と同程度の不当性を有する消費者を困惑させる行為であっても形式的には各号の要件に該当しないため、消費者は契約を取り消すことができないという事態が生じている。
なお、法第4条第3項各号は行為が8つ列挙されている状態であり、各行為の基礎にどのような考え方があるのか、行為を列挙する順番にはどのような意味があるのかが必ずしも明らかではなく、全体として分かりにくい規律となっている。この点にも留意した上で、脱法的な行為への対応を行う必要がある。
(2)考えられる対応
法第4条第3項各号のうち、不退去(第1号)、退去妨害(第2号)、契約前の義務実施(第7号)及び契約前活動の損失補償請求(第8号)は、契約の内容や目的が合理的であるか否かを問わず、本当は契約を締結したくないと考えている一般的・平均的な消費者であっても、結局、契約を締結してしまう程度に消費者に心理的な負担をかける行為であり、この点に不当性の実質的な根拠があると考えられる。しかし、これらの規定に列挙された行為に形式的に該当しないものであっても、これらの不当性の実質的な根拠に照らすと、同様に扱うことが必要と考えられる場合もある。そこで、上記4つの各号と実質的に同程度の不当性を有する行為について、脱法防止規定を設けることが考えられる。
具体的には、上記4つの各号の受皿であることを明確にすることにより、これらと同等の不当性が認められる行為を捉えることを明らかにしつつ、例えば、その場で勧誘から逃れようとする行動を消費者がとることを困難にする行為という形で類型化することで、事業者の威迫による(威力を用いた)言動や偽計を用いた言動、執拗な勧誘行為を捉えることが考えられる。その際は、
創設すること。」)。
対象となる行為をある程度具体化した上で、正当な理由がある場合を除くなど、評価を伴う要件も併せて設けることで、正常な事業活動については取消しの対象にならないよう調整することが可能な規定とすることが考えられる。
また、上記4つの各号のうち第7号及び第8号については、規定上第8号が第7号の受皿規定となっており、脱法防止規定を設けることが難しいのではないかという意見があったが、この点については、第8号の要件を整理し直すことによって第8号を脱法防止規定とすることも考えられる。
他方、霊感等による知見を用いた告知(第6号)は、消費者の心理状態やこれに関する事業者の認識が要件とされていない点で上記4つの各号と共通するものの、消費者が契約を締結したいと考えるよう誘導するものである点において異なるものであることから、受皿となる脱法防止規定の対象とはしないことが考えられる。
さらに、法第4条第3項各号のうち、経験の不足による不安をあおる告知
(第3号)、経験の不足による好意の感情の誤信に乗じた関係の破綻の告知
(第4号)及び判断力の低下による不安をあおる告知(第5号)については、消費者の属性や心理状態を要件としており、当該消費者が有している合理的判断ができない事情が判断の対象となるが、そのような事情は多様であって受皿となる脱法防止規定を設けることは困難であると考えられる。また、消費者の心理状態に関する事業者の認識が要件とされているところ、多様な消費者の心理状態の全てを事業者が認識することは難しく、また消費者がこれを主張立証することも困難であると考えられる。
なお、脱法防止規定の法制化に当たっては、取消しの要件を明確にすることが望ましいという意見があった一方で、脱法防止のための受皿規定という性格上一定の抽象度が必要であり、過度に明確性を求めるあまり受皿としての意味が乏しくなるような規定は望ましくないという意見もあった。また、消費者の心理状態に着目した規定により救済され得る事例を見極めた上で、法第
4条第3項第3号から第5号までの受け皿となる脱法防止規定も検討すべきとの意見もあった。
(1)問題の所在
典型的な消費者被害の一つとして、事業者が、自分にとって都合の良い、消費者にとっては不要な商品やサービスを購入させることがある。社会心理学の知見によると、この種の消費者被害において、悪質な事業者は、人の構成要素である認知(あたま)、感情(xxx)及び身体(からだ)の3要素に働きかけることで、消費者に慎重な検討(熟慮)をさせないよう仕向け、消費者を
直感的で便宜的な思考(ヒューリスティックな判断)に誘導していると分析されている。このような消費者被害は社会経験が未熟な若年者に比較的多いと考えられるが、必ずしもそれに限られるわけではなく、誰もが熟慮の機会を奪われヒューリスティックな判断に導かれ得る脆弱性を有していると考えられる。
消費者をヒューリスティックな判断に誘導する勧誘手法としては、例えば、消費者の検討時間を制限して焦らせたり、広告とは異なる内容の勧誘を行って不意を突いたり、長時間の勧誘により疲弊させることなどがある。しかし、契約の性質上、検討時間が制限されるのがやむを得ない場合や、広告とは異なる商品を勧めるのが消費者のためでもある場合があり得るところであり、これらの勧誘手法それ自体は、正常な事業活動においても用いられるものであって、必ずしも不当とは言えない。しかし、悪質な事業者は、これらの手法を組み合わせたり、極端な形で用いることで濫用し、消費者をヒューリスティックな判断に誘導して契約を締結させており、この場合には消費者の意思決定を歪めたと言え、契約の取消しに値するものと考えられる。
法第4条は、消費者の意思決定が歪められ、意思表示に瑕疵がある場合として、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合等における取消権を定めているが、上述の消費者をヒューリスティックな判断に誘導する消費者被害は、必ずしも誤認や困惑という心理状態で捉えることができるものではない。
(2)考えられる対応
事業者が、正常な商慣習に照らして不当に消費者の判断の前提となる環境に対して働きかけることにより、一般的・平均的な消費者であれば当該消費者契約を締結しないという判断をすることが妨げられることとなる状況を作出し、消費者の意思決定が歪められた場合における消費者の取消権を設けることが考えられる。
具体的には、正常な商慣習に照らして不当に消費者の判断の前提となる環境に対して働き掛ける行為としては、例えば、消費者の検討時間を制限して焦らせたり、広告とは異なる内容の勧誘を行って不意を突いたり、長時間の勧誘により疲弊させたりする勧誘手法を組み合わせたり、そうした勧誘手法を極端な形で用いることにより、消費者が慎重に検討する機会を奪う行為を規定することが考えられる。その際、正常な商慣習については、契約の性質や類型に照らして判断されるべきと考えられる。また、消費者が慎重に検討する機会を奪う行為については、上記のような勧誘手法の組合せや過度の利用が問題であることに照らすと、事業者の行為を細分化するのではなく、組み立てられた一連の行為を総合的に捉えるべきである。また、正当な理由がある場合を除
くなど、評価を伴う要件も併せて設けることで、正常な事業活動については取消しの対象にならないよう調整することが可能な規定とすることが考えられる。
なお、正常な商慣習に照らして不当に消費者の判断の前提となる環境に対 して働き掛ける行為を規律するに当たっては、類型的に不当な行為と言い得 るものを踏まえつつ正当な理由がある場合を除外する等と規定すべきであっ て、一連の行為を総合的に捉えるというだけでは、どのような行為が取り消し 得るものとなるのかが明らかでなく、通常の営業活動への支障が大きいとい う意見があった。また、正当な理由がある場合ではないのに、意思表示をする 期間を極めて短く限定したり広告とは異なる勧誘を行ったりした場合に限定 した上で、この場合を具体化する方向で規定を設けるべきという意見もあっ た。また、高揚感をあおる行為が対象となることを明らかにすべきという意見 があったが、この意見については、通常の営業活動が含まれる可能性があるた め慎重に考える必要があるという意見や、過大な期待を抱かせる等の単なる 意識の高ぶりを超えて高揚感をあおる行為が対象となることを明らかにすべ きという意見もあった。さらに、消費者の心理状態に着目した規定については、議論の状況に照らして一定の方向性を示すことが難しいのではないかとの意 見もあった。
(1)問題の所在
超高齢社会が進展する中で、認知症高齢者等の消費者被害が深刻化している。これまでも、平成 28 年改正により過量契約取消権(法第4条第4項)を
創設し、平成 30 年改正により判断力の著しい低下による不安をあおるような告知を困惑類型に追加する(法第4条第3項第5号)等の対応をしてきたが、判断力の著しく低下した消費者が、自宅を売却して住むところを失うなど、自らの生活に著しい支障を及ぼすような内容の契約を締結してしまうという消費者被害が発生しているところ、上記の各規定では救済が困難である。
(2)考えられる対応
判断力の著しく低下した消費者 3が、自らの生活に著しい支障を及ぼすような内容の契約を締結した場合における取消権を定めることが考えられる。
具体的には、この規定は、契約の当事者には契約自由の原則(民法(明治 29
年法律第 89 号)第 521 条)がある中で、当該契約が当該消費者に及ぼす影響
3 判断力の著しい低下について、内閣府令又は逐条解説等により基準の明確化を図ることも考えられる(例えば、改訂xxx式簡易知能評価スケール若しくはミニメンタルステート検査(MMSE)の点数又は介護保険を利用する際の主治医意見書があることなど)。
に着目した取消権を定めるものであることから、対象となる契約は消費者保護の観点から真に必要な範囲に限定すべきである。そこで、当該消費者の生活を将来にわたり成り立たなくするような契約を対象とすることが考えられ、例えば、自宅を売却し、しかも、今後住むところがないような場合 4や、自身の労働によって新たに収入を得ていくことが期待できない中で貯蓄や年金収入の大半を消尽してしまう場合が想定される。その際、過量契約取消権(法第
4条第4項)のように契約の目的となるものの量に着目するものではなく、質に着目するものであること、当該契約によって直ちに生活が成り立たなくなる場合だけでなく、当該契約によって将来にわたる生活に著しい支障を及ぼす場合も捕捉すべきであること、代理人が本人に代わって意思表示をした場合や被保佐人が保佐人の同意を得て意思表示をした場合などは取消しの対象とならないことを明確にすべきである。
また、消費者の判断力に関する事業者の認識については、判断力が著しく低下している消費者について特に自己の生活に著しい支障を及ぼす契約に限って取消権を認めるという趣旨や、判断力に関する認識を要件とすると本規定案による救済の範囲が大幅に縮減されると考えられること、民法上、意思能力を有しなかったときは、意思無能力についての相手方の認識の有無に関係なく契約が無効となること(民法第3条の2)に照らし、消費者保護の観点から、要件としないことが考えられる。
法制化に当たっては、判断力の著しい低下が消費者の脆弱性のうち恒常的・類型的な脆弱性の典型的場面であり、超高齢社会の進展を踏まえた対応が法において求められることを踏まえつつ、他方で、事業者・消費者の双方に生じ
4 リバースモーゲージのように自宅の処分であっても自宅に住み続けることが前提となっている場合や、住み替え準備のための自宅処分などは、当該消費者の生活を将来にわたり成り立たなくするような契約ではないことから、対象として想定されていない。
5 例えば、自宅を売却し、しかも、今後住むところがないような場合には、契約が当該消費者の生活に著しい支障を及ぼすものであるといえるが、当該消費者や同席した近親者等が、事業者に対し、今後の住むところは確保されている旨の説明をしていたときは、通常、契約が当該消費者の生活に著しい支障を及ぼすことについて事業者に悪意がある場合又は悪意と同視される程度の重過失がある場合には該当しないものと考えられる。
る負担の兼ね合いにも配慮が必要である。すなわち、生活に著しい支障を及ぼすことを典型的場面に限定すること等により、事業者の予見可能性を確保し、消費者が必要な契約ができなくなることがないように配慮することが必要である。
なお、消費者の判断力に関する事業者の認識については、悪意又は善意であっても過失がある場合に限り取り消すことができる旨の規定とすべきであるという意見があった。これによると、悪意又は過失について消費者が立証責任を負うことになるが、仮にこの考え方によるとしても、事業者が立証責任を負うべきであるという意見もあった。事業者が消費者の判断力を確認しようとしたにもかかわらず消費者がこれに応じなかった場合には取り消すことができないようにすべきとの意見もあった。また、対象となる契約については、当該契約内容それ自体において合理性を欠く場合に限定すべきであるという意見や、生活に著しい支障を及ぼす契約のみならず、対価的に不均衡な契約や、当該消費者の契約目的と合致しないような内容の契約も対象とすべきであるという意見もあった。また、契約が当該消費者の生活に著しい支障を及ぼすことについての事業者の認識(主観要件)については、悪意又は重過失を要件とすると訴訟や消費生活相談における被害救済が困難になるとして、悪意又は過失を要件とすべきであるという意見もあった。さらに、民法上の保佐制度に倣ったものとし、例えば、判断力の著しく低下した消費者が民法第 13 条第1項第3号に定める行為(不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること)を目的とする契約を締結したときは、これを取り消すことができること、ただし、配偶者又は民法第 877 条第1項に定める範囲の者(直系血族及び兄弟姉妹)のうち一人の同意を得たときについてはこの限りではないものとすることを検討すべきという意見もあった。さらに、消費者の判断力に着目した規定については、議論の状況に照らして一定の方向性を示すことが難しいのではないかとの意見もあった。
(1)問題の所在
過量契約取消権(法第4条第4項)における「同種」の解釈について、①「同種」であるか別の種類であるかは、事業者の設定した区分によるのではなく、過量性の判断対象となる分量等に合算されるべきかどうかという観点から判断され、②具体的には、その目的となるものの種類、性質、用途等に照らして、別の種類のものとして並行して給付を受けることが通常行われているかどうかによって判断されるものとされている。
しかしながら、例えば、ネックレスとブレスレットは、いずれも身を飾るた
めの装身具であり、通常は「同種」であると判断されるものと考えられるが、
②の基準を形式的に適用すると「同種」とは言い難いと解する余地もあり、具体的な場面における適切な運用に支障が生じ得るのではないかという懸念がある。
(2)考えられる対応
「同種」の範囲は、過度に細分化して解すべきではなく、過量性の判断対象となる分量等に合算されるべきかどうかという観点から、別の種類のものとして並行して給付を受けることが通常行われているかどうかのみならず、当該消費者が置かれた状況に照らして合理的に考えたときに別の種類のものと見ることが適当かどうかについても、社会通念に照らして判断すべきである旨を逐条解説等によって明らかにすることが考えられる。
法第9条第1号は、契約の解除に伴う損害賠償又は違約金を定める条項(以下「違約金条項」という。)であって、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき「平均的な損害」の額を超える部分を無効とすることを定めている。これは、消費者契約の解除に伴い、事業者に損害が生じても事業者には多数の事案について実際に生じる損害の平均的な額の賠償を当該消費者から受ければ足り、それ以上の賠償の請求を認める必要はないためである。
しかし、違約金条項に関する消費生活相談件数は依然として多く 6、適格消費者団体による差止請求訴訟も一定程度存在するが 7、「平均的な損害」の額については、その事業者に固有の事情であり、主張立証のために必要な情報は主として事業者が保有しており、裁判や消費生活相談において、消費者による
「平均的な損害」の額の主張立証が困難となっている。また、そもそも「平均的な損害」が不明確であり、消費者及び事業者の間で共通認識ができていないためにトラブルが多発していることが考えられるため、「平均的な損害」の意義等についても検討を加える必要がある。
平成 30 年の法改正時においても、消費者の「平均的な損害」に関する立証責任の負担軽減に向けた検討を行い必要な措置を講ずることが政府に求められており 8、対応が必要である。
6 解約料をめぐる消費生活相談の件数は、平成 29 年度から平成 31 年度までの各年度において、それぞれ 33,054 件、32,173 件、36,152 件という水準で推移している(独立行政法人国民生活センター「消費者契約法に関連する消費生活相談の概要と主な裁判例等」令和2年 12月 10 日 xxxx://xxx.xxxxxxx.xx.xx/xxx/x-00000000_0.xxx(参照 2021-09-10))。
7 法第 23 条第4項第1号に基づき消費者庁に報告されている差止請求訴訟の総数及びその
うち法第9条第1号に関する訴訟件数は、平成 29 年度から平成 31 年度までの各年度において、それぞれ7件中1件、10 件中3件、4件中2件という水準で推移している。
8 衆議院附帯決議第2号(「法第九条第一号における『当該事業者に生ずべき平均的な損害の額』の立証に必要な資料は主として事業者が保有しており、消費者にとって当該損害額の立証が困難となっている場合が多いと考えられることから、損害賠償額の予定又は違約金を定める条項の運用実態について把握を進めた上で、『平均的な損害の額』の意義、『解除に伴う』などの本号の他の要件についても必要に応じて検討を加えた上で、当該損害額を法律上推定する規定の創設等の立証責任の負担軽減に向け早急に検討を行い、本法成立後二年以内に必要な措置を講ずること。」)、参議院附帯決議第3号(「法第九条第一号における『当該事業者に生ずべき平均的な損害の額』の立証に必要な資料は主として事業者が保有しており、消費者にとって当該損害額の立証が困難となっている場合が多いと考えられることから、『平均的な損害の額』の意義、『解除に伴う』などの本号の他の要件についても必要に応じて検討を加えつつ、当該損害額を法律上推定する規定の創設など消費者の立証責任の
(1)問題の所在
法第9条第1号は、「平均的な損害」としか規定しておらず、違約金条項を定めるに当たって、具体的にどのような要素を考慮すべきかについては定めていない。そのため、消費者は「平均的な損害」について、具体的にどのような事項を主張立証しなければならないのかが分からず、また、どのような要素を考慮して事業者が違約金条項を定めるべきかを判断することが困難になっていると思われる。
(2)考えられる対応
「平均的な損害」を算定する際の主要な考慮要素として、当該消費者契約における商品、権利、役務等の対価、解除の時期 9、当該消費者契約の性質、当該消費者契約の代替可能性、費用の回復可能性などを列挙することにより「平均的な損害」の明確化を図ることが考えられる。これにより、消費者が具体的に主張立証すべき対象が明確化されるとともに、事業者が違約金条項を定める際の参考となるため、事業者にとっても有益と考えられる。その際、「平均的な損害」の考慮要素については、法第9条第1号に網羅的かつ一律に定めることが困難な部分もあり、また事業者による新しい商品・サービスの開発等のイノベーションを阻害しないよう、あくまで例示列挙であることを明確にすべきと考えられる。
(1)問題の所在
違約金条項については、消費者が、違約金が発生することが契約条項に明記されていたとしてもその金額が解除に際して不当に高額なのではないかと思ってしまうこと、すなわち、違約金額が妥当なものであることについて事業者から十分な説明がないため、消費者が納得できず紛争に発展しているという側面があると考えられる。
(2)考えられる対応
事業者に違約金条項について不当でないことを説明する努力義務を課すことが考えられる。
まず、説明の時期については、①違約金条項がトラブルとなりやすいのは、実際に事業者が消費者に対して違約金を請求する場面等であること、②消費
負担軽減に向け早急に検討を行い、本法成立後二年以内に必要な措置を講ずること。」)。
9 法第9条第1号においては、既に「解除の…時期」が列挙されているが、これは違約金条項において設定された区分の例示であって、「平均的な損害」の考慮要素としての例示ではない。
者が違約金について事業者に対して説明を求めていない場合にまで事業者に義務を課す必要はないことから、事業者が消費者に対して違約金条項に基づいて違約金を請求する場合等において、当該消費者から説明を求められた場合に限定することが考えられる。
次に、説明の内容については、どのような考慮要素及び算定基準に従って
「平均的な損害」を算定し、違約金が当該「平均的な損害」の額を下回っていると考えたのかについて、その概要を説明することが考えられる。その際、具体的な金額などは営業秘密に該当する可能性がある上、消費者も具体的な金額についてまで説明を求めていないと思われるため、例えば、算定基準として逸失利益が平均的損害に含まれると考えたかどうかを説明することが想定され、逸失利益が具体的に何円であると算出したのかまで説明する必要はないと考えられる。また、契約対象となる商品等の原価として材料費や人件費を積み上げて解約金を定めたのであって(原価以外に再販売できないことによる損失も生じていることから)「平均的な損害」を下回ることは明らかである等との説明も考えられるところであり、この場合においても具体的に原価やその内訳が何円であるかまで説明する必要はないと考えられる。もっとも、消費者が「平均的な損害」の額との関係で違約金がどのように定められているのかではなく、違約金の合理的根拠そのものの説明を求める場合にあっては、事業者においても、違約金を定めるに当たって考慮した要素や算定の基準の概要、違約金の考え方等をもって、違約金の合理性を説明することが考えられる。この点、6.で後述するとおり「平均的な損害」を基準とすること自体について揺らぎが生じていることに照らしても、「平均的な損害」のみに依拠しない努力義務の規定とすることが考えられる。
最後に、この義務の効果については、①どのような場合に義務に違反したこととなるのか基準を明確に示すことが困難であること、②「平均的な損害」の額については、事業者の業態、ビジネスモデルにより多種多様な要素、考え方等が存在するため、説明内容や説明方法について事業者の創意工夫に委ねる必要性が高く事業者が説明すべき範囲等について明確に定めることも難しいことから、説明に努める義務(努力義務)にとどめるべきと考えられる。
また、努力義務への取り組み方としては、個々の消費者に説明する方法のほか、ホームページ等で説明する等様々な方法があり得ることについて逐条解説等で示していくことが望ましいと考えられる。
なお、取消権の発生等の法的効果を定める必要まではないが、努力義務ではなく法的義務であることを明らかにすべきとの意見もあった。
(1)問題の所在
「平均的な損害」の考え方については、事業者の商品・サービスのほか、業態やビジネスモデルに応じて多種多様なものが存在し、法第9条第1号に例示列挙した考慮要素以外の考慮要素が重要な役割を果たす場面や、例示列挙された考慮要素が妥当しない場面も存在すると考えられる。トラブルが多い分野を中心に、「平均的な損害」の考慮要素や算定基準を踏まえつつ、相当な違約金についての考え方が整理されることで、トラブルの低減を図ることが有益である。
(2)考えられる対応
「平均的な損害」の考え方について、違約金条項に関する消費生活相談事例や差止請求訴訟の実例も参考にし、関係する事業者、業界団体や適格消費者団体等の意見も踏まえつつ、法学、経済学等の観点から違約金条項の在り方に関する検討を行い、逐条解説等により随時示していくことが考えられる。
なお、違約金条項について一定の考え方を示すことにより、事業者による新たな商品・サービスの開発等のイノベーションを阻害しないように留意する必要があるとの意見もあった。
(1)問題の所在
「平均的な損害」の額は、その事業者に固有の事情であり、その主張立証に必要な情報は事業者に偏在している事例が多いため、消費者や適格消費者団体が「平均的な損害」の額について主張立証することが困難な状況となっている。
(2)考えられる対応
主張立証の負担の軽減を図るに当たっては、訴訟上の新たな規律を設けること、すなわち、特許法(昭和 34 年法律第 121 号)第 104 条の210の規定等を参考として、「平均的な損害」の額に関する違約金条項の効力に係る訴訟において、事業者が、その相手方が主張する「平均的な損害」の額を否認するときは、その事業者は自己の主張する「平均的な損害」の額とその算定根拠を明らかにしなければならないこととする規定、いわゆる積極否認の特則の規定を設けることが考えられる。
もっとも、「平均的な損害」の額とその算定根拠には営業秘密に該当し得る
10 特許法第104条の2の規定は、特許権侵害訴訟において、特許権者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない旨を定めている。
情報が含まれている可能性もあり、事業者が当該算定根拠を明らかにすることが困難である事例が存在することも考えられる。さらに、「平均的な損害」の額について消費者側が具体的な主張を行わない等、いわゆる濫訴に該当する事例が発生する可能性もある。そこで、これらの「相当の理由」が存在する場合には、事業者が当該算定根拠について明らかにする必要がないようにする規律とすべきと考えられる。
積極否認の特則の利用主体については、法第 25 条等により秘密保持義務が課されており、厳格な情報管理体制の構築が求められている適格消費者団体
(法第 13 条第4項)及び特定適格消費者団体(消費者の財産的被害の集団的
な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律(平成 25 年法律第 96 号)
第 65 条第5項)に限定することで事業者が明らかにした情報が不正に利用されることを防止し、よって事業者の情報の不正利用に関する懸念を払拭することが考えられる。また、実際にも「平均的な損害」の額及びその算定根拠には粗利益、原価、再販率などの情報が含まれており、当該内容を用いて立証活動を行うには相応の専門性と労力負担が求められるため、適格消費者団体及び特定適格消費者団体に利用主体を限定することが現実的であると考えられる。
さらに、適格消費者団体及び特定適格消費者団体が積極否認の特則により知った情報についてその目的外利用が禁止されることを明らかにすべきであるとともに、裁判実務においては、裁判記録の閲覧等制限の制度が適宜活用されるべきと考えられる。
なお、違約金条項に関する訴訟は消費者個人が訴訟当事者となる事例があることから、利用主体を限定すべきでないとの意見もあった。また、積極否認の特則は文書提出命令の特則と共に導入することにより機能するため、文書提出命令の特則についても同時に導入する必要があるとの意見もあった。さらに、訴訟構造が必ずしも同じではない中で特許法等と同様の制度を持ち込むことは難しいとの意見もあった。
「平均的な損害」に係る立証責任の負担を軽減するために、文書提出命令の特則及び「平均的な損害」の額の立証責任の転換等については、法第9条第1号に考慮要素を列挙することの効果、「平均的な損害」の説明に努める義務及び積極否認の特則の運用実態を踏まえて、それでも「平均的な損害」に係る負担の軽減が不十分であると判明した場合に、将来改めて検討することが考えられる。
また、文書提出命令の特則について導入を検討する際には、営業秘密が含ま
れている可能性のある文書を開示する義務を負うという性質に鑑み、特許法等と異なる部分があることを踏まえつつ秘密保持命令の導入等の営業秘密の保護に関しても改めて検討する必要があると考えられる。
さらに、「平均的な損害」を違約金の策定やその相当性判断の基準とすることの当否についても問題提起がされてきており、「平均的な損害」という概念自体から見直す必要についても意見があった。すなわち、消費者の多様なニーズに対応するために同じ商品・サービスについて複数の価格を設定する場合においては、違約金条項も含めた契約内容の全てが価格設定の要素となっており、必ずしも損害の発生を前提として違約金を定めていない商品・サービスも生じてきているところ、そのような場合には、まず当該商品・サービスの価格設定の在り方が考慮されるべきであり、「平均的な損害」の額との関係のみで違約金の規律を考えることは、新しい商品・サービスの提供や多様な価格設定を阻害するとの指摘や、「平均的な損害」に焦点を当てた議論は、事業者の経営形態や取引実態からかけ離れているとの指摘があり、さらには「平均的な損害」という基準の立て方自体を変えることで、現在生じている種々の問題を軽減できる可能性も考えられる。そこで、上記の各制度改正後の実務の状況や違約金条項についての在り方の提示の進捗状況も踏まえて、「平均的な損害」の概念を見直すことを将来的に検討課題とすることが考えられる。
不当条項の類型の追加については、平成 28 年及び平成 30 年の法改正により、消費者の解除権を放棄させる条項(法第8条の2)や事業者に対し後見開始の審判等による解除権を付与する条項(法第8条の3)が不当条項の類型として追加されたほか、法第 10 条前段を改正し、これに該当する契約条項の例示として「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項」を挙げる等の改正が行われた。
もっとも、サルベージ条項等の不当条項の類型の追加など消費者委員会消費者契約法専門調査会報告書(平成 29 年8月)において今後の検討課題とされた事項につき、引き続き検討を行うことが求められているため 11、不当条項の類型の追加について本検討会では各契約条項の使用実態等を踏まえ、以下の契約条項について検討を行った。
(1)問題の所在
サルベージ条項とは、ある条項が強行法規に反し全部無効となる場合に、その条項の効力を強行法規によって無効とされない範囲に限定する趣旨の契約条項をいう。同条項については、これを不当条項の類型として追加するか否かについて、かつて消費者委員会消費者契約法専門調査会(平成 26 年 10 月か
ら平成 29 年8月にかけて開催)で議論が行われたが、不当条項として規律するのではなく、「事業者は消費者にとって『明確かつ平易な』条項を作成するよう配慮する努力義務を負っていることから、サルベージ条項を使用せずに具体的に条項を作成するよう努めるべきであり、その旨を法第3条第1項の逐条解説に記載するなどにより、より適正な契約条項の作成が行われるよう促すことが相当と考えられる。」とし、今後の課題として必要に応じ検討を行うべきとされた(「消費者契約法専門調査会報告書」(平成 29 年8月)12 頁参照)。
もっとも、現在も、事業者の損害賠償責任を免除する契約条項に「法律上許
11 衆議院附帯決議第5号(抜粋)(「…サルベージ条項等の不当条項の類型の追加など消費者委員会消費者契約法専門調査会報告書において今後の検討課題とされた事項につき、引き続き検討を行うこと。」)、参議院附帯決議第7号(抜粋)(「消費者委員会消費者契約法専門調査会報告書において今後の検討課題とされた諸問題である…サルベージ条項等の不当条項の類型の追加…などにつき、引き続き検討を行い、本法施行後三年を目途として必要な措置を講ずること。」)。
される限り」等の留保文言が付される形式で、サルベージ条項が使用される例が見られる。
このような形式を有するサルベージ条項は、留保文言が付される結果、契約条項のうち有効とされる範囲が不明確となり、消費者が法律上請求可能な権利行使を抑制されてしまう、また、軽過失の場合に損害賠償の限度額を定めることとせずに「法律上許される限り賠償限度額を〇万円」とする契約条項を作成する場合は、留保文言がない場合には、本来全てが無効となる可能性があるところ、「法律上許される限り」等の留保文言によって、条項の文言からはその趣旨が読み取れないにもかかわらず軽過失の一部免除を意図するものとして有効になる可能性があるという不当性が見られる。
(2)考えられる対応
事業者の損害賠償責任の範囲についてサルベージ条項が用いられる場合には、消費者の事業者に対する損害賠償責任の追及を抑制してしまい、法第8条の目的が大きく損なわれることとなりかねない点に不当性があると考え、事業者の損害賠償責任の範囲を軽過失の場合に一部免除する旨の契約条項は、これを明示的に定めなければ効力を有さない(サルベージ条項によっては同様の効果を生じない)こととする規定を設けることが考えられる。
その際、事業者が何を明示的に定めれば良いのか明確化する必要があるが、例えば、事業者が、軽過失の場合に損害賠償の限度額を定めるのであれば、明示的に、「当社の損害賠償責任は、当社に故意又は重大な過失がある場合を除き、顧客から受領した本サービスの手数料の総額を上限とする。」等の契約条項とすることが求められると考えられる。
ただし、サルベージ条項の問題は理論的には事業者の損害賠償責任の一部免除に関わる場合に限定されないことには留意する必要があり、「法律上許される限り」という留保文言は契約内容の不透明さという点で非常に問題があり、法第3条第1項第1号との関係で問題があること等を逐条解説等で示すことも必要と考えられる。また、事業者の損害賠償責任の一部免除条項以外のサルベージ条項についても規律を設ける必要があるかについては、具体的に問題ある使用事例が相当程度確認された際に検討課題とすることが適切と考えられる。
なお、ある責任制限について判例や学説による評価が定まっていないときや、国際的に展開するサービスにおいて各国の判例や学説などの状況が把握し切れない場合などに万一紛争が生じたときには、裁判所の判断に従うことをあらかじめ明記し、ある条項や規約の一部が裁判等で無効となっても、それ以外の部分は有効性が維持されることを確認するような条項については不当性があるとはいえないという意見もあった。また、「法律上許される限り」と
いう留保文言は、法第3条第1項第1号との関係においても、これを使用したことのみをもって直ちに問題があるものではないという意見もあった。
(1)問題の所在
例えば、建物等の一時的な利用契約において、消費者が賃借物件内に動産を残置する等の一定の行為をしたことをもって、当該消費者が有する所有xxの権利を放棄したものとみなす契約条項や、ウェブサイト利用規約において、消費者が情報等を事業者に送付したことをもって、当該情報等に関する一切の権利を放棄したものとみなす契約条項のように、消費者の一定の行為をもって消費者が自らの権利を放棄する意思表示をしたものとみなす契約条項の使用例がみられる(以下「所有xxを放棄するものとみなす条項」という。)。
所有xxを放棄するものとみなす条項は、例えば、賃貸借契約終了後に賃借人が残置した廃棄物について所有権放棄の意思表示の擬制を行う場合等のように、一定の社会的な必要性がある、消費者が権利を放棄する意思を推定する基礎がある、黙示の意思表示があると見られる等の理由により、一律に不当条項と評価することが適切ではない場合もあると考えられる。
他方で、権利放棄意思を擬制するための前提事実となる一定の行為から推認される意思と、擬制される権利放棄の意思との間の乖離の程度が大きい場合には、権利の放棄は権利者の意思によるという私法の原則との抵触が見られ、消費者に不利益を与える不当性が見られる。
(2)考えられる対応
法第 10 条の第1要件の「法令中の公の秩序に関しない規定」(任意規定)に
はxxの規定のみならず一般的な法理等も含まれることを踏まえ、平成 28 年の法改正により、「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項」が例示されたが、所有xxを放棄するものとみなす条項についても、権利の放棄は権利者の意思によるという私法のxxの規定によらない一般的な法理と抵触する場面が見られることを踏まえ、法第 10 条の第1要件に例示することが考えられる。
契約条項の使用例を踏まえると、例示すべき権利については、擬制の対象と なる権利の中核的なものは所有権と考えられることから、消費者の所有権に 係るものとすることが考えられる。また、みなされる消費者の行為については、権利放棄意思の前提事実が消費者の作為とも不作為とも解釈できる例が見ら れることから、法第 10 条の第1要件の例示はそのいずれかに限定すべきでな いと考えられる。
また、所有xxを放棄するものとみなす条項には、所有権以外の権利につい
ても放棄の対象とする使用例が見られるところ、これらも法第 10 条の第1要 件を満たすことを逐条解説等によって明らかにする必要があると考えられる。また、所有xxを放棄するものとみなす条項であっても法第 10 条の第2要件 の適用等により不当性が否定される場合として、例えば、明示的な作為をもっ て意思表示が推定されるような場合や、然るべき手続や段階・期間などを経て いる場合、あるいは消費者の保護の必要性がある場合などについても、逐条解 説等で一定の考え方を示すことにより、事業者及び消費者の予見可能性を高 めることも考えられる。もっとも、所有xxを放棄するものとみなす条項には、法律上事業者に動産類の処分が認められている場合について同様の規定を行 う例が考えられるところ、このような場合は法律に基づき動産類の処分が有 効に行われるのであって、契約条項の効力が問題とされなければならない場 面ではないと考えられる。
なお、法第 10 条の第1要件の例示について、これが不当条項の例示であることを踏まえ、不当性が高い契約条項を例示するものであると考えるのであれば、例示に際しては「法令に基づく場合を除き」等の要件を設けるべきとの意見もあった。
(1)問題の所在
例えば、電気通信回線の利用契約等において、消費者による解除権の行使の方法を電話や店舗の手続に限定する契約条項や、予備校の利用規約等において、消費者による解除事由を限定するとともに、中途解約権の行使の際には、解除事由が存在することを明らかにする診断書等の書類の提出を要求する契約条項の使用例が見られる。
このような契約条項が使用され、消費者が解除権を容易に行使できない状態が生じる場合には、消費者に解除権が認められた趣旨が没却されかねない。他方で、事業者は、消費者が消費者契約を解除する際、本人確認や契約関係の確認を行うため、解除を書面や対面によるものに限る必要性が生じる場面も考えられる。また、解除権の行使方法をあらかじめ定めておくことで、消費者からの解除の意思表示を見逃さずに対応できることや、大量の契約について統一的な手法・手続によることで迅速な事務作業が可能になり、それによって多くの消費者に一定の品質でサービスを提供できるといった、消費者にとってのメリットもあり得ると考えられる。
そこで、このような必要性がない、又は必要な範囲を超えて、契約条項により、消費者が解除権を容易に行使できない状況が生じている場合には一定の不当性があると考えられる。加えて、事業者側から見れば、契約の締結の際に
は大きなエネルギーを割くインセンティブがあるが、契約解除の場面では通常これを抑制したいというインセンティブが働くと考えられること、反対に消費者側から見れば、契約の締結の際には契約への期待があるため大きな負担感は生じない一方で、契約を解除する際には相手方である事業者の意に沿わない効果を実現するために、自身が積極的に行動を起こさなければならないという大きな負担感が生じるという問題状況も考慮する必要がある。
(2)考えられる対応
少なくとも、契約条項の定めのみをもって、消費者の解除権の行使を制限するものと評価できる契約条項が存するのであれば、このような契約条項について消費者契約法上の不当条項規制によって対応すべきと考えられる。もっとも、これらは常に無効とすべきものではないことを踏まえて、法第 10 条の第1要件の例示とすることが考えられる。
具体的には、解除に伴う手続に必要な範囲を超えて、消費者に労力又は費用 をかけさせる方法に制限する条項とし、さらに、その範囲の判断を画するため、
「本人確認その他の解除に係る手続に通常必要な範囲」等として、必要な範囲の典型例を具体的に示すことが考えられる。また、これに加えて、当該消費者契約の締結の際に必要とされた手続等と比して、消費者の労力又は費用を加重することを要素とすることも考えられる。
法第 10 条の第1要件に例示すべきものとしては、任意規定と乖離しているというだけではなく、不当性が認められる相応の蓋然性があるものとすべきと考えられるが、他方、例示部分を除いた法第 10 条の第1要件としては、任意規定との乖離、すなわち「法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項」であれば要件該当性が認められると考えられるため、この点については逐条解説等で明確にすべきと考えられる。
なお、法第 10 条の第1要件の例示に際しては、正常な事業活動で用いられる契約条項が無効とならないように留意する必要があるという意見がある一方で、そのような考慮は法第 10 条の第2要件によってなされるべきものであるという意見もあった。また、「本人確認」を必要な範囲の典型例として示すと、契約の類型により本来厳格な本人確認が必要ないと思われる場合であっても、個人情報の提供を受けなければ契約の解除に応じない等として悪用される恐れがあるとの意見や、法第 10 条の第1要件の例示について、これが不当条項の例示であることを踏まえ、不当性が高い契約条項を例示するものであると考えるのであれば、例示に際しては「法令に基づく場合を除き」等の要件を設けるべきとの意見もあった。さらに、消費者が解除権を容易に行使できないという不当性を生じさせるのは解除手続における事業者側の体制や運用
の問題であって、契約の条項の問題ではないため、法第 10 条の第1要件の例示として掲げるべきではないという意見や、解除権の行使を制限する条項を法第 10 条の第1要件の例示として掲げることには消極的であるが、仮に掲げるとしても、例示の内容は、事業者が実質的に解除を妨げていると評価され得るものとすべきであり、そのような観点から、例えば、消費者の解除権の行使を事業者の受理その他の事業者の行為に係らしめる条項とすべきとの意見もあった。
(1)問題の所在
消費者が解除権を容易に行使できなくなる状態は、上記4記載のように事業者による契約条項の使用が原因となる場合の他に、事業者による運用が原因となる場合も考えられる。具体的には、例えば、①事業者が開設するホームページ上で契約の解除の方法について紹介しているが、ホームページの表記が分かりにくい、②契約を解除するためにはウェブページやアプリケーション上で手続をすることとされているが、解除をするためのリンクが分かりにくく表示される、③解除は電話によるとされるが、消費者が電話をしても事業者の担当者に電話が繋がりにくい、解除を進めるためには複数のウィンドウでクリックを繰り返す必要がある、④特にオンラインで結ばれる契約では、契約者の相続人による解除が非常に難しい場合がある、⑤サブスクリプション契約においては、契約締結の容易さに比して、解約手続が困難に設定されている場合がある等の運用があり得る。
このような運用は、場合によっては、解除権が消費者に認められている趣旨を没却しかねない。
(2)考えられる対応
上記のような問題は、事業者が消費者の解除権の行使のために必要な情報 を、消費者が解除権を行使する時点において十分に提供できていないために 生じている場合が多いと考えられる。この点、法第3条第1項第2号によって 事業者に求められる情報提供の努力義務はあくまでも勧誘時のものであるが、事業者側から見れば、契約の締結の際に一番大きなエネルギーが割かれると ころ、消費者側から見れば、契約の締結の際には契約への期待があるため大き な負担が生じない一方で、契約を解除する際には大きな負担が生じることか ら、解除に関する情報提供は契約締結時だけでなく、消費者が契約を解除する 際にこそより丁寧になされる必要があると考えられ、これを努力義務とする 規定を設けることが考えられる。
また、単に消費者の解除権の行使のために必要な情報の提供にとどまらず、
例えばサポート体制の構築に見られるような、消費者による解除権の行使が円滑に行われるための配慮も有益と考えられるところ、消費者が解除権の行使を円滑に行える様々な手法による配慮を含めて努力義務の内容とすることが考えられる。
なお、上記のような運用の原因は、事業者が消費者の解除権の行使を意図的に妨げていることに原因がある可能性もあるところ、これに対しては法的義務及び当該義務違反への制裁により対処することが適切であるという意見もあった。他方で、これが行為規制の規定を持たない消費者契約法で対処すべき問題であるか否かは慎重な検討を要するという意見も見られた。
以上の論点のほか、本検討会では第三者が消費者取引に介入する契約条項についてもその不当性について議論が行われた。同条項については、使用される場面が限定的であることを踏まえると、現時点においては一定の対応を採ることとはされなかったが、将来の検討課題として引き続きその実態を注視することが考えられる。
消費者に対して適用される条件等の契約内容が定められた契約条項につい て、消費者が消費者契約の締結に先立ち容易に知ることができる状態に置く ことは、少なくとも抽象的な努力義務として、事業者に求められているものと 考えられる 12。この考え方を基礎とした上で、消費者保護の観点から消費者 契約の条項の開示について具体的にどのような制度を設けるかが課題であり、平成 30 年の法改正における附帯決議においても契約条項の開示の在り方につ いての検討が求められている 13。
(1)問題の所在
民法の一部を改正する法律(平成 29 年法律第 44 号)により、民法に定型約款の規定が設けられたところ、定型約款の内容を知る権利を保障するという観点から、定型約款準備者の相手方は、定型約款準備者に対し、定型約款の内容の表示を請求する権利を行使して内容を確認することができる旨が定められた(民法第 548 条の3第1項)。しかし、定型約款準備者の相手方が消費者である場合には、当該消費者はこのような請求権があることを知らないことが多いと考えられる。
(2)考えられる対応
事業者は、消費者契約の条項として定型約款を使用するときは、消費者契約の締結について勧誘をするに際し、定型約款の表示請求権の存在及び行使方法についての必要な情報を提供することを努力義務として定めることが考えられる。
もっとも、定型約款を使用する事業者の多くは、消費者が定型約款の内容を 容易に知ることができるようにするための措置を講じているものと考えられ、この場合には、別途、定型約款の表示請求権についての情報提供を行う必要は ないと考えられる。そこで、事業者が上記の措置を講じている場合には、定型 約款の表示請求権に係る努力義務を負わない旨を明らかにすることが考えら れる。
12 消費者契約法専門調査会報告書(平成 29 年8月)16 頁。
13 衆議院附帯決議第4号(「…消費者が事前に消費者契約の条項を容易に知ることができるようにするための契約条項の開示の在り方についても検討を行うこと。」)及び参議院附帯決議第6号(「消費者が消費者契約締結前に契約条項を認識できるよう、事業者における約款等の契約条件の事前開示の在り方について、消費者委員会の答申書において喫緊の課題として付言されていたことを踏まえた検討を行うこと。」)。
なお、急速に進化したデジタル技術を活用することができる現代の取引環境においては、定型約款の内容を容易に知り得る状態に置くようにすることを原則とすることに支障はなく、このことは法第3条第1項第2号の解釈に含まれていることを逐条解説等で明らかにすべきとの意見もあった。
(1)問題の所在
適格消費者団体は、事業者が不特定かつ多数の消費者との間で不当条項を使用しているときは、当該事業者に対して差止請求権を行使することができる(法第 12 条第3項)。
適格消費者団体は消費者から提供される契約条項に関する情報に基づいて差止請求権を行使するところ、消費者からの情報が最新のものではないこともあり、その場合には、適格消費者団体は、事業者に対し、最新の契約条項の開示を求めることになる。ところが、契約条項の開示に応じない事業者が存在し、差止請求権の行使の障害となっている。
適格消費者団体が差止請求権を行使した結果、事業者が契約条項の改善を約束したり、訴訟上の差止請求を認諾したにもかかわらず、その後、確認のため、当該適格消費者団体が契約条項の開示を請求したところ、当該事業者は開示を拒絶したという事例も存在する。
(2)考えられる対応
事業者が不特定かつ多数の消費者との間で不当条項を含む消費者契約を締 結している疑いがあると客観的な事情に照らして認められる場合には、適格 消費者団体は、どのような不当条項の疑いがあるのか、またそれに関係し得る 条項・内容としてどのようなものが考えられるのか等の開示を求める趣旨を 示して、当該事業者に対し、当該事業者が不特定かつ多数の消費者との間で使 用している契約条項 14の開示等を求めることができる仕組みを設けることが 考えられる。消費者契約の条項の適正化という観点からすると、消費者団体と 事業者が協働してより良い契約条項を作っていくよう促すことが重要であり、そのためにも、適格消費者団体が契約条項の開示を請求することができるよ うにすることが有益である。
もっとも、事業者に不合理な負担が生じることを避けるため、事業者が不特定かつ多数の消費者との間で使用している契約条項の内容を消費者が容易に知ることができる状態に置く措置を講じている場合には、適格消費者団体は開示を求めることができない旨を明らかにすることが考えられる。
14 したがって、個別の消費者との間で合意した契約条項は開示の対象とならない。
第5 消費者契約の内容に係る情報提供の努力義務における考慮要素について
1.問題の所在
2.考えられる対応
消費者の「年齢」が同じであっても、理解の程度は個々の消費者によって異なるものであり、「年齢」のみで一律の対応をすることは適切ではない。もっとも、消費者が若年者である又は高齢者であるという意味で、消費者の「年齢」は理解の不十分さを伺わせる一つの手掛かりになるものと考えられる 17。また、消費者の「年齢」は、消費者の「知識及び経験」と比べると、取引の態様によっては事業者が容易に知ることができることから、消費者の「年齢」を考
15 「個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で」という文言は、平成 30 年改正により加えられたものである。
16 衆議院附帯決議第4号(「本法第三条第一項第二号の事業者の情報提供における考慮要素については、考慮要素と提供すべき情報の内容との関係性を明らかにした上で、年齢、生活の状況及び財産の状況についても要素とするよう検討を行う…こと。」)、参議院附帯決議第
5号(「本法第三条第一項第二号の事業者の情報提供における考慮要素については、考慮要素と提供すべき情報の内容との関係性を明らかにした上で、年齢、生活の状況及び財産の状況についても要素とするよう検討を行うこと。」)及び民法附帯決議第1号の2(「xx年齢引下げに伴う消費者被害の拡大を防止するための法整備として、早急に以下の事項につき検討を行い、本法成立後二年以内に必要な措置を講ずること。2 消費者契約法第三条第一項第二号の事業者の情報提供における考慮要素については、考慮要素と提供すべき情報の内容との関係性を明らかにした上で、年齢、生活の状況及び財産の状況についても要素とすること。」)。
17 裁判例の中には、82 歳又は 92 歳と高齢で理解力が低下していた可能性がある者に対して十分な説明を行わないまま不合理な内容の契約を締結させたとして、公序良俗違反により契約を無効としたものがある(東京地判平成 30 年5月 25 日判タ 1469 号 240 頁)。
慮要素とすることで、個々の消費者の理解に応じた丁寧な情報提供が、より多くの取引において行われるようになることが期待できる。
消費者の「年齢」、「知識及び経験」は個々の消費者に関する事情であり、事業者が知っているとは限らないが、事業者はこれらの要素を知ることができた場合には考慮した上で情報提供を行うことが期待されており、これらの要素を積極的に調査することまで求めるものではないことを明らかにすることが考えられる。また、これらの要素は消費者の理解の不十分さを伺わせる手掛かりであるから、これらの要素を総合的に考慮し、消費者の理解に応じた情報提供を行うべきであり、「年齢」だけで画一的な対応をすべきではない旨も明らかにすることが考えられる。
他方、消費者の「生活の状況」及び「財産の状況」については、一般的には消費者の理解の程度との関連性が低いため、考慮要素とはしないことが考えられる。
以上を踏まえ、法第3条第1項第2号については、事業者が知ることができた個々の消費者の年齢、知識及び経験を総合的に考慮した上で情報を提供すべきである旨を明らかにすることが考えられる。
なお、世界的に見ても年齢を問うことに対して制限的であるべきとの傾向がある中で、消費者の年齢を考慮要素とすることにより積極的に消費者の年齢を確認する口実となり、ひいては年齢による差別のきっかけとなり得る懸念があることや、知識・経験に加えて新たに年齢を考慮要素とすることにより年齢による画一的な対応を促すことになりかねないとの意見があった。
(委員)
お き の ま さ み xx xx | 東京大学大学院法学政治学研究科教授 |
xxxx xxxx x xx x x | 東京大学大学院法学政治学研究科教授 |
xxxx x う へ い xx x x | 早稲田大学政治経済学術院教授 |
xxxx xxxx x xx | 一般社団法人 OpenID ファウンデーション・ジャパン代表理事(令和3年6月まで) |
こ う ら み ち こ xx xx | 一般社団法人全国消費者団体連絡会理事、東京消費者団体連絡センター事務局長 |
ご と う xxx xx x | 全国商工会連合会常務理事 |
た か は し x x x x xx | 立教大学法学部教授 |
つ ぼ た い く こ xx xx | 公益社団法人全国消費生活相談員協会専務理事 |
とおやま ま さ x x xx x x | 一般社団法人日本経済団体連合会 消費者契約法改正検討ワーキンググループ委員、 日本生命保険相互会社調査部上席専門部長 |
に x x x x あ き xx x x | 立正大学心理学部教授 |
ひ ら お よ し あ き xx x x | 弁護士、 日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会委員 |
やました よしかず xx xx | 学習院大学法学部教授 |
xxxx xxxx xx xx (座長代理) | 一橋大学大学院法学研究科教授 |
xxxx xxxx xx xx (座長) | 京都大学大学院法学研究科教授 |
xxxx xxxx xx xx | 慶應義塾大学大学院法務研究科教授 |
xxxx xxxx xx xx | アジアインターネット日本連盟 |
(敬称略、五十xx)
(オブザーバー)最高裁判所
法務省
独立行政法人国民生活センター
日 時 | 主 な 議 題 | |
第1回 | 令和元年 12 月 24 日(火) 17:30~19:00 | 検討会の進め方について 等 |
第2回 | 令和2年 1月 27 日(月) 15:30~17:30 | 消費者の取消権について① |
第3回 | 2月 10 日(月) 16:00~18:00 | 消費者の取消権について② |
第4回 | 5月 13 日(水) 9:30~12:00 | 消費者契約の条項の開示について①不当条項について① |
第5回 | 6月 17 日(水) 9:30~12:00 | 消費者の取消権について③ |
第6回 | 6月 25 日(木) 17:00~19:30 | 「平均的な損害」について① |
第7回 | 7月7日(火) 9:30~12:00 | 消費者の取消権について④ |
第8回 | 7月 16 日(木) 17:00~19:00 | 不当条項について② |
第9回 | 8月6日(木) 13:00~15:30 | 「平均的な損害」について② |
第 10 回 | 11 月 11 日(水) 10:00~12:00 | 不測の事態における消費者契約のキャンセルについて等① |
第 11 回 | 12 月2日(水) 9:30~12:00 | 不測の事態における消費者契約のキャンセルについて等② |
第 12 回 | 令和3年 1月 27 日(水) 9:00~12:00 | 消費者の取消権について⑤ |
第 13 回 | 2月 12 日(金) 9:00~12:00 | 消費者の取消権について⑥ |
第 14 回 | 3月9日(火) 9:00~12:00 | 不当条項について③ |
第 15 回 | 3月 26 日(金) 13:00~15:30 | 「平均的な損害」について③ |
第 16 回 | 4月2日(金) 9:00~12:00 | 「平均的な損害」について④ 消費者契約の条項の開示について② 情報提供の努力義務における考慮要素について① |
第 17 回 | 5月 14 日(金) 9:00~11:00 | 論点に関するヒアリング |
第 18 回 | 6月 18 日(金) 9:00~12:00 | 「平均的な損害」について⑤ |
第 19 回 | 6月 25 日(金) 9:00~12:00 | 不当条項について④ |
第 20 回 | 7月2日(金) 9:00~12:00 | 消費者の取消権について⑦ 消費者契約の条項の開示について③ 情報提供の努力義務における考慮要素について② |
第 21 回 | 7月 16 日(水) 9:00~12:00 | 消費者の取消権について⑧ 「平均的な損害」について⑥不当条項について⑤ |
第 22 回 | 8月6日(金) 9:00~12:00 | 報告書作成に向けた議論① |
第 23 回 | 9月7日(火) 11:00~13:00 | 報告書作成に向けた議論② |