Google ブック検索集団訴訟
2011年3月30日
Google ブック検索集団訴訟
2011 年 3 月 22 日ニューヨーク南部地区連邦地裁判決要旨
Google ブック検索をめぐる集団訴訟の修正和解契約における最終承認の申立てにつき、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所は、①書籍のデジタル化と世界的なデジタルライブラリの構築は、多くの者に便益をもたらすものであるとしながらも、②修正和解契約が、著作権者の許諾なく全ての書籍を利用する大幅な権利を Google に付与し、競合他社に比べて Google を著しく優位に置き、Google が著作権ある作品を許諾なく大規模にコピーする行為から利益を得る仕組みになっていることから、③修正和解契約はxx性、適切性、合理性に欠けており、④修正和解契約をオプトアウト方式からオプトイン方式にすれば同契約の問題点を解決することが可能であるとして、修正和解契約の最終承認の申立てを再訴可能なものとして棄却した。
(補足)
• 裁判所が修正和解契約で問題があると判断したもの:
⮚ 孤児作品の扱い: 修正和解契約は、孤児作品を使用する仕組みを設けているが、これは裁判所よりも議会で判断すべき事柄である。 - これは立法によるべきで米国フェアユースで利用が許されるものではないことを示していることになる
1。
⮚ 著作権の移転に自主的に応じていない著作権者の著作権上の利益(copyright interests)を取り上げる仕組み: 著作権法上問題がある(例えば 106 条(1)や同条(3)2との関係)。
⮚ Google による書籍検索市場の事実上の独占: 独禁法上問題がある。
⮚ 諸外国との関係: 修正和解契約は、米国、カナダ、オーストラリア、英国で出版された書籍の著作者が有する著作権に関する事実上の独占的ライセンスを Google に付与する仕組みになっており、諸外国は依然としてこれを問題にしている。この問題も議会で判断すべき事柄である。
• xxx・xx裁判官は、修正和解契約をオプトイン形式に修正することを強く求めている。 - オプトアウト方式は、許諾の合意として容易に認められるところでない
1 日本において孤児作品の利用を権利制限の一般的規定によって可とすべきであるという意見がある。一般的規定によるべきでないことに収束するであろう。しかし、より利用を促す方法を構築することが求められる。
2 第 107 条ないし第 122 条を条件として、本編に基づき著作権を保有する者は、以下に掲げる行為を行いまたこれを許諾する排他的権利を有する。
(1) 著作権のある著作物をコピーまたはレコードに複製すること。
<省略>
(3) 著作権のある著作物のコピーまたはレコードを、販売その他の所有権の移転または貸与によって公衆に頒布すること。
ことを示している3。
• 裁判所は、4 月 25 日に原告被告の弁護士を出廷させてスケジュール調整会議(status conference)を開く予定である。
当事務所において判決を訳し公表する。この解説は NBL「Google Book Search クラスアクション和解の実務的検討(不承認決定)」として掲載する予定である4。
以上
3 オプトアウト方式によりうる著作xx契約法を検討して利用の促進を行うべきである。
4 同和解の解説は NBL No. 905 (2009.5.15)、No. 906 (2009.6.1)に掲載されている。