◆ 海外テレビ局(地上波・VOD等)への放送権販売 ◆ Amazon Prime、Netflixなどへの番組販売 ◆ パッケージ商品(CD/DVD)の販売
~契約と法律の視点から~
2021年9月22日xx町法律事務所
弁護士・ニューヨーク州弁護士
xx xx
本日のテーマ
⮚ コンテンツ海外展開の契約形態
⮚ ライセンス・共同事業・自社製作・コンテンツ販売型
⮚ 契約形態の選択にあたっての検討点
⮚ 法的リスク・契約リスクを理解するために
~コンテンツビジネスの契約構造・収益構造・リスク
⮚ 海外展開における法的リスク・契約問題
⮚ 法務目線から見た海外展開の留意点まとめ(時系列)
⮚ より良い海外展開のために
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 2
コンテンツ海外展開の契約形態【概要】
(日本発の原作・海外向けコンテンツ)
*下記はあくまでも典型例であり、実際の条件は個々の契約によって異なる。
ライセンス | 制作委託 | 共同制作日本/海外 | 自社製作 | コンテンツの販売 | |
制作費 | 海外事業者 | 日本 | 日本/海外 | 日本 | 日本 |
海外流通費 (配給・配信) | 海外事業者 | 日本/海外 | 海外 | 日本 | 海外 |
海外作品の権利 | 海外事業者 | 日本 | 日本/海外 | 日本 | 日本 (現地版) |
クリエイティブコントロール | 海外事業者 | 日本/海外 | 日本/海外 | 日本 | 日本 |
日本側の収益 | ロイヤリティ | 興行収入等 全般 | 興行収入等 全般を分配 | 興行収入等 全般 | 販売料 配信料等 |
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 3
◆ 既存作品を「利用」させるための契約=ライセンス契約
◆ 日本発のコンテンツを原作とした映画作品・ドラマなどを海外で制作させる)
◆ 「原作」はコミック・小説(ラノベ)・ゲーム等
◆ 「リメイク」の元はアニメ・ドラマ・映画等
◆ バラエティ番組:フォーマットライセンス
◆ 製作者は海外(制作・流通費は海外負担)
◆ 日本側の収入はロイヤリティ:計算方法に留意
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 4
◆ 海外向けコンテンツを自社で製作する
① 原作権の取得: 企画・原作・脚本
② 資金調達: 自社・製作委員会方式・投資家(出資者)
*製作前~完成後まで様々な段階で調達され得る
③ プリプロダクション: 予算組み・脚本の企画開発
キャスティング・スタッフ/業務委託先選定
衣装/セット等デザイン・ロケハン
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 5
➃ 撮影(プロダクション):俳優・監督・プロデューサー
(スケジュール・移動・宿泊手配)・セットの建設・制作・保守
xx・衣装・撮影他スタッフ
⑤ ポストプロダクション:映像編集・特殊効果・ダビング
映画音楽の制作・サウンドトラック
⑥ 販売促進、広告・宣伝、配給、流通
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 6
◆ 新しい作品の制作「委託」契約
◆ 製作者は日本
◆ 海外の映画制作会社に映画作品の制作を委託
◆ 日本側が人的にも関与する場合(プロデューサー等)には、海外制作会社と業務委託契約
◆ 収益は基本的に日本
◆ 制作費のコントロールが重要
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 7
◆ 共同で行う「事業」の契約
◆ 映画・舞台作品などの海外パートナーとの「共同制作」
◆ 「共同」の実態は多様
◆ 基本的には制作資金は分担・収益は分配
◆ 作品の権利は共有
◆ 日本国内の展開は日本、相手国内の展開は海外側
◆ 相手国以外での展開の方法
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 8
◆ コンテンツの海外向け「販売」契約
◆ 日本で制作したコンテンツを海外に販売する
◆ 海外配給
◆ 海外テレビ局(地上波・VOD等)への放送権販売
◆ Amazon Prime、Netflixなどへの番組販売
◆ パッケージ商品(CD/DVD)の販売
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 9
← 海外展開の目的は何か
◆ 権利・収益を多く確保したい → 自社製作・制作委託
◆ ただし、収益が確保できるかどうかは、売上による
◆ クリエイティブコントロール重視 → 自社製作・海外販売
◆ コンテンツをまずは海外に知ってほしい → ライセンス
◆ ゲーム・商品化などでの副次的収益が期待できる場合
◆ 経済的リスクを回避 → ライセンス・海外販売
◆ 海外クリエイターの才能も生かして日本で制作したい → 共同制作
*製作誘致の重要性
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 10
コンテンツビジネスの構造(映画)
原作:原作者台本:脚本家
楽曲:作詞家・作曲家・編曲家
音源:レコード会社 監督・プロデューサー
美術監督・デザイナー・衣装
実演:出演者
撮影・照明・xx・映像制作等
映画を制作する
配給
海外販売
商品化
配信権・放映権の販売
ビデオグラム発売
配給
配信権・放映権の販売
映画を製作する
出資する
興行
販売
消費者消費者
レンタル業者
配信事業者テレビ局
消費者企業 消費者
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第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料
コンテンツビジネスの収益構造(映画)興行収入
製作会社の利益分配
分配 収入
ロイヤリティ
配給収入
配給手数料 |
P&A費 |
製作費 |
放送権料
配信料
制作費
出版権料
製作会社の利益
上映権料
出資者への配当
原作権者
制作会社
運営経費 |
広告宣伝費 |
利益 |
上映権料 (約50%) |
DVD売上
小売店の収入 |
出版者の収入 |
プリント・パッケージ経費 |
出版権料 |
放映権料
テレビ放映・配信
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 12
ゲーム攻略本
商 品 化
ゲーム コンテンツ
カードゲーム
ゲームコンテンツの展開事例
ゲーム機
放送・配信・DVD
映 画
アニメ作品
コミック
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第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料
コンテンツ制作のリスク
◆ 完成リスク
◆ 完成しない
◆ 当初の予想と異なる作品となる
◆ 制作費が膨れ上がる
◆ 興行・販売リスク
◆ 興行を担う劇場、ソフト販売を担う卸業者・小売店等、配信事業者等に関するリスク
◆ 商品(作品)リスク
◆ 制作された映画の市場価値(売れるか、売れないか)
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 14
海外展開において生じうる法的問題
① 権利処理
▶ 権利処理の重要性
▶ ・ コンテンツ提供者(ライセンサー)が、権利・権限を有することを保証
▶ ・ 権利関係の紛争は、ライセンサーに対応義務
▶ ・ ライセンシーの損害は、ライセンサーに損害賠償責任
▶ 権利処理の裏付け書類(Chain of Title)を要求されるケース
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 15
海外展開において生じうる法的問題
① 権利処理
◆権利処理において生じうる問題
◆権利者から権利の許諾を拒否される
◆権利者が不明
◆許諾の条件で合意できない
◆(製作委員会制作の映像作品が原作)
コンテンツ利用について当事者間の調整が必要
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 16
含まれる著作物 | 権利者 | 権利の内容 | ||
小説・随筆・講演など | 原作者 | 複製権 公衆送信権(放送権)翻案権・著作者人格権 | ||
台本 (放送脚本) | 脚本家 | 複製権 公衆送信権(放送権)翻案権・著作者人格権 | ||
楽曲 | 作詞家・作曲家・編曲家・訳詩家 | 複製権 公衆送信権(放送権)著作者人格権 | ||
レコード (音源) | 実演家・レコード 製作者 | 二次使用料請求権 複製権 | ||
実演 | 実演家 (俳優・歌手・ モデル・一般人) | 録音・録画権、放送権実演家人格権 |
(参考) コンテンツに関わる権利 ①
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 17
含まれる 著作物 | 権利者 | 権利の内容 | ||
絵画・彫刻・写真・ デザイン等 | 原作者 (画家・写真家・ デザイナー) | 複製権 公衆送信権(放送権)著作者人格権 | ||
映画・映像素材 | 映画製作者 | 複製権 公衆送信権(放送権) | ||
監督等の著作者 | 著作者人格権 | |||
原作者・脚本家・作詞家・作曲家等 (クラシカルオーサー) | 複製権 公衆送信権(放送権)著作者人格権 | |||
その他 | 出演者 | 肖像権 | ||
著作物所有者 | 管理権 | |||
キャラクター | 商標xx |
(参考) コンテンツに関わる権利 ②
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 18
◆ 国内権利処理をスムーズにする方策
◆ コンテンツ製作段階における適切な権利処理の推進
◆ 標準雛形の公表
◆ コンテンツ制作ガイドブック
:書面合意を原則にすることを推奨
◆ セミナー・オンライン講座などの啓蒙活動
◆ 集中的権利処理・裁定制度の周知・促進
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 19
◆ 許諾の範囲
◆ 想定していた以上の範囲・地域で許諾してしまった
◆ ロイヤリティ
◆ 最低保証額がなかった・経費控除が大きい
◆ 続編・派生物に対する権利
◆ 日本側の続編・派生物制作が制約を受ける内容だった
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 20
◆ 適切な相手と契約できるか
◆ 作品の権利の帰属
◆ 権利が制作者側にある場合・共有する場合はライセンス契約同様の検討必要
◆ クリエイティブコントロール
◆ どの段階でどのような承諾を求めるか
◆ ローカライゼーションとのバランス
◆ 海外クリエーター達のモチベーションへの配慮
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料
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◆ コストコントロール
◆ クリエイティブコントロールにこだわりコストに無関心な傾向
◆ 分配可能な収益に直結
◆ 海外チームとの収益分配の規定の適切性
◆ クレジット
◆ 将来の作品・海外展開への足掛かり
◆ 日本クリエイターのモチベーション
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 22
映画制作コスト概要
映画制作費(ネガティブ費用)の構成要素 | |
原作権の取得 | 企画・原作(小説・コミック・アニメ等)脚本 |
プリプロダクション | 脚本の企画開発・出演者/スタッフ選定 衣装・セット等デザイン・ロケハン |
撮影 (プロダクション) | 俳優・監督・プロデューサー セット制作・xx・衣装・撮影他スタッフ |
ポストプロダクション | 映像編集・ダビング・映画音楽の制作 特殊効果・サウンドトラック |
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 23
➃ 海外共同制作契約の問題
◆ 適切な相手と契約できるか
◆ 担当業務の内容
◆ 利益・損失の分配
◆ コストについて制作委託と同様の検討が必要
◆ 事業の成果物について
◆ 権利の帰属-二次利用で問題になる可能性大
◆ ライセンス契約と同様の検討が必要
◆ 上手な終わり方
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 24
交渉開始
• SNSで話が飛び込んでくることも ・最初のメールから慎重に確認する ・素性の確認
• Deal Termがnon-bindingでも要注意 ・会議のアジェンダも気を抜かない
契約タイプの選択
• ライセンス型:権利処理は済んでいるか? ・ライセンス+出資等のハイブリッドもあり
• 共同事業型:リスクとメリット・予算確認 ・プロジェクトの目的を共有
契約交渉締結
• 各契約のポイントを確認のこと ・国際法務人材は必須→必要に応じて選定
• 契約交渉はドラフトのマークアップのやりとりで進むことが多い
第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会資料 25
プロジェクト開始
• ライセンス型:クリエイティブコントロール
• 共同事業型:進行管理・コストコントロール・クリエイティブコントロール
作品完成
• ライセンス型:クレジット等の確認 ・プロモーション協力
• 共同事業型:プロモーション ・収益確認
作品利用
• ライセンス型:クレジット等の確認 ・ロイヤリティ確認・監査
• 共同事業型:配給/配信/その他の二次利用の決定・管理 ・収益確認・監査
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◆ プロジェクト初期段階から関与できる法務人材の育成
◆ 国際法務・交渉の経験+コンテンツ業界・契約の理解
◆ 中小のコンテンツ事業者が利用しやすい仕組みの構築
◆ 専門家ネットワーク・リーズナブルな費用(助成)
◆ コンテンツ制作に特化した企業向け国際契約セミナー
◆ 有益な現地人材・企業・法律事務所と日本企業を結ぶ取り組み
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◆ 「良いものを作る」だけではなく、収益を上げ、国内コンテンツ産業のすみずみまで経済的メリットが出ることの重要性
◆ SNS等の拡大→話はいつ舞い込んでくるか分からない
◆ 好機を逃さないための準備
◆ 制作過程における権利処理など日頃の備え
◆ 国際展開の交渉に対応できるリソースの準備
◆ 好機を取りに行くための準備
◆ 情報収集 人的ネットワーク作り
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