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「新しい社債管理者設置債について(案)」- 社債の期中管理 -【整理・検討メモ①】
平成 23 年 10 月7日
検討の方向性、検討・確認事項 社債管理委託契約証書検討のポイント
1.基本的な考え方(検討の方向性)
低格付社債の発行、投資の拡大等を図るため、米国のトラスティー等を参考に、発行会社及び投資家のニーズを踏まえ、社債管理者の権限の具体化、責務の明確化及び裁量権の縮小化を図ることにより社債管理者の担い手を拡大し、社債管理者の設置を促す。
○ 社債管理者の善管注意義務の内容・範囲の具体化・明確化を図るため、社債管理委託契約証書を見直す。
2.機能・役割
(1) モニタリング
① 社債管理者は、金融商品取引法等に基づく開示書類及び社債管理委託契約証書に基づく発行会社からの通知・報告に基づき、社債管理業務を遂行する。
② 社債管理者は、業務を遂行するにあたり、自ら発行会社の財務状況の確認は行わず、融資取引等により入手した発行会社に関する法人関係情報については利用しない。
また、社債管理業務により入手した発行会社に関する法人関係情報については、社債管理業務以外(融資取引等)の業務には利用しない。
③ 社債管理者によるモニタリングは、発行会社が負担する義務の期日管理、履行状況等の確認を主な内容とする。
④ 投資家保護の観点から、上記①~③にかかわらず、社債管理者による調査権、若しくは
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社債権者の請求に基づく社債管理者の調査権を設けることの要否については、検討を要する。
(2) 発行会社の通知・報告義務と同義務の違反・不履行への対応
① 発行会社による各種通知・報告の確実な実行を図るため、通知・報告すべき事項、タイミング、通知方法等について具体的に定める(コベナンツ化を図る)。
② 社債管理者は、発行会社に通知・報告義務違反や不履行があった場合には、社債権者に通知を行う。この場合の通知方法については、一般債振替制度における対応も含め、具体的な検討を要する。
③ 上記②の場合、社債管理者は、基本的には、その評価は行わず社債権者の判断に委ねる。
(3) コベナンツ等に抵触した場合の対応(期限の利益喪失以外の場合)
① 発行会社が各種コベナンツに抵触したり、通知・報告義務の履行を怠った場合において、かかる事実の発生の確認方法や社債権者に対する周知の方法について、具体的に定める。
② コベナンツ抵触の効果については、投資家のニーズを踏まえた柔軟かつ実効性のある対応を可能とする。
③ コベナンツ等に抵触した場合のアメンド、ウェーブの方法については、従来の対応(社債
① 発行会社によるコベナンツ等の遵守状況に関する通知・報告義務を定めてはどうか。
② 社債権者に対する通知方法について、具体的に定めてはどうか。
〇 現行の社債管理委託契約証書においては、社債管理者は自らの裁量により各種情報の収集、対応の検討、保全・回収の実施を行うことが想定されているが、このような社債管理者の裁量権は撤廃し、一定数の社債権者の同意又は社債権者集会の決議を要件とする等、社債権者のイニシアティブにより行う旨、及び、その具体的方法について定めてはどうか。
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管理者による担付切替)のみを前提とはせず、一定数の社債権者の同意や社債権者集会の決議による等、社債権者の意向を踏まえた実効性のある対応を可能とする。
④ 上記③に関連して、社債権者の意向の確認方法を具体的に定める。
⑤ また、上記③の対応と、会社法に定める社債権者集会等の規定の整合性については、確認を要する。
(4) 期限の利益の喪失
① コベナンツ等への抵触をトリガーとして期限の利益を喪失させる場合について、いわゆる当然喪失に限らず、社債権者の意向に基づく請求喪失等を検討する。
② 請求喪失に関しては、
イ.社債権者毎に期限の利益喪失を認めるのか、もしくは、特定の銘柄については一律期限の利益を喪失させるのか
ロ.社債権者の意向を確認する実効性のある意思決定方法について具体化する。
③ 請求喪失の場合、他の債務とのクロスデフォルトの範囲について具体的に定める。
④ 上記①及び②において、社債管理者は期限の利益喪失の判断において、自ら主体的な役割を担わず、社債権者による判断の遂行を助ける。
⑤ 投資家保護の観点から、上記④にかかわらず、事前に定めたコベナンツ等への抵触は
○ コベナンツ等の種類に応じて、期限の利益の喪失の方法、請求喪失の場合の要件及び手続等について、具体的に定めてはどうか。その場合、実効性のある意思決定方法(社債権者集会以外での意思結集方法等)についての定めも必要ではないか。
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ないが、発行会社の信用力の毀損が疑われるような場合(例:粉飾決算の噂がマスコミ等で報道されている)、現状の信用害損による期限の利益喪失条項のように、社債管理者の判断による期限の利益喪失の余地を残す必要があるかどうかは、検討を要する。
⑥ 期限の利益喪失後、法的整理手続に入る前の段階における保全・回収(強制執行の実施等)についても、社債管理者は、自らの判断によるのではなく、社債権者の意向に基づき対応する。
⑦ 法的整理手続に入った後は、従来の対応と同様に、社債管理者が債権届出、債権者集会での議決権行使(事前に社債権者集会にて社債権者の意向を確認)、配当の受領・分配等を行うことについては、確認を要する。
(5) 情報開示及び投資家への周知
① 社債権者及びセカンダリー市場での投資家が、自ら発行会社の評価・判断を行えるよう、情報開示の在り方(開示内容、開示方法等)について検討を行う。
② 投資家が、従来の社債管理者と混同しないよう、社債の勧誘販売時の説明など投資家への周知方法について検討を行う。
⑦ 具体的な定めを設けてはどうか。
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3.社債管理者の善管注意義務及びxx誠実義務に関する論点の整理
(1) 善管注意義務
① 社債管理者の善管注意義務に関する法令の規定、判例、学説等について整理する。
② 上記「2 機能・役割」のように契約により社債管理者の裁量権を限定した場合に、社債管理者が善管注意義務違反を問われる可能性がある事態、状況、範囲等について整理する。
(2) xx誠実義務(利益相反)
① 社債管理者のxx誠実義務に関する法令の規定、判例、学説等について整理する。
② xx誠実義務違反による責任を軽減する方策としてプロラタ弁済等について整理する。
③ 利益相反を理由とする社債管理者の辞任、及び新たな社債管理者の選任について、具体的方策を検討する。
(3) 善管注意義務及びxx誠実義務の責務軽減の実効性確保
上記(1)及び(2)で検討した方策を確実に実行するための、法令改正、契約対応、市場慣行の確立等の対応について検討を行う。
③ 米国のトラスティーの状況及び米国信託証書法等を整理したうえ、辞任時期・事由、及び、後継者の機動的対応を可能とする選任方法について定めてはどうか。
以 上