発行人:JETRO サンパウロ事務所 知的財産権部(特許庁委託事業)
ブラジル産業財産庁への知的財産契約登録マニュアル
2018 年 3 月
発行人:JETRO サンパウロ事務所 知的財産権部(特許庁委託事業)
目次
1. はじめに 3
2. INPI1 への知財関連契約の登録 4
2.1 INPI への登録の効果 4
2.2 INPI への登録が必要な契約 5
2.3 INPI への登録手続及び要件に関する一般情報 6
2.3.1 基本的な留意事項
2.3.2 形式上の要件
2.3.3 INPI による契約内容への介入
2.3.4 登録手続の流れ
2.4 契約別留意事項 10
2.4.1 特許ライセンス契約
2.4.2 商標ライセンス契約
2.4.3 ノウハウ・ライセンス契約(技術移転契約)
2.4.4 技術サービス契約
2.4.5 フランチャイズ契約
2.5 INPI への登録が不要な契約 16
2.6 ブラジル中央銀行への登録 16
3. おわりに 17
1 ブラジル産業財産庁(ポルトガル語では Instituto Nacional da Propriedade Industrial(INPI))
1. はじめに
今日、知的財産(以下「知財」という。)は世界中の企業にとって最も有用で価値の高い財産の一つと見なされている。日本企業がブラジルでビジネスを行う際の最初のステップは知財保護である。知財は以下に示す様々な法律等によって保護されている。
<国際条約>
・パリ条約
・TRIPS 協定
・ベルヌ条約
・生物の多様性に関する条約(CBD)
・植物の新品種の保護(UPOV)に関する国際条約
<国内法>
・連邦憲法
・産業財産法(法律第 9.279/96 号)
・著作xx(法律第 9.610/98 号)
・ソフトウェア法(法律第 9.609/98 号)
・植物品種保護法(法律第 9.456/97 号)
・生物多様性法(法律第 13.123/2015 号)
・インターネット法(法律第 12.965/2014 号)
・データ保護法(国会審議中)
ブラジルは登録可能な権利(商標、特許、実用新案及び意匠)については先願主義を採用している。ただし、非伝統的商標(音や香りなど視覚によって認識できない商標、位置商標、ホログラムなど)はブラジルでは登録できない。
著作権に関しては、表現作品の最初の発表時から法的保護が生じる。著作権保護は広告スローガンにも適用され、場合によってはトレードドレス(包装材の視覚的特徴)も対象となる。登録は必須ではないが、第三者による侵害への対応手段をとる場合の根拠とする目的での登録が推奨される。特許性のない技術、ノウハウ、営業秘密及び事業手法などの登録できない権利についても、法的及び契約上の秘密保持義務や不xx競争規制によって保護される場合がある。
ブラジルにおいてビジネスを安定させるには、確固たる知財戦略を構築することが必要である。税制上の利益や様々なリスクを考慮しつつ、知財保護が十分に図られた契約内容に基づく最適なビジネスモデルを選択する必要がある。
(1)戦略的パートナーとしてのブラジル企業の選択:
交渉開始前に知財に関する秘密を保護するための秘密保持契約を締結するとともに、知財に関する所有権を明確にする。
(2)ビジネス形態の検討:
✓ 販売及び/又はライセンス契約か?
✓ 合弁契約か?
✓ 子会社を設立するのか?
✓ 知財を子会社株式の対価としての資産又は出資金とするのか?
あらゆるビジネス戦略は適切かつ防御的な契約書の構成により確固たるものとしなければならない。特にブラジル国内に子会社を設立する場合、従業員の活動及び発明から生じる知財について企業の所有権を確保するために、明瞭かつ防御的な雇用契約書を作成することが重要である。
✓ いかなる発明も雇用契約の結果として生じたものである(職務発明)との立場を有利にするために、従業員の活動範囲や権限を明確に定める。
✓ 従業員が雇用終了後に競合他社に知財を移転しないよう、競業禁止条項を明確に定める。
✓ 秘密保持義務を定める。
知財契約を締結する際には、ブラジルの特殊な税規制や送金規制に加え、ブラジル産業財産庁(INPI)の慣習から生じる多くの制約があることを日本企業は認識しておくべきである。なぜなら、場合によっては、知財契約書を INPI に提出し、登録を受けなければならないからである。本マニュアルは登録制度の概要や申請時における留意点などについて簡単に紹介するものである。
2. INPI への知財関連契約等の登録
ブラジルの法制度では、知財ライセンス契約等は INPI に登録せずとも当事者間に効力が発生する。しかしながら、(1)ロイヤリティ収入等を国外に送金したい場合、(2)第三者に対する対抗力を生じさせたい場合、(3)税控除を受けたい場合には必ず知財ライセンス契約等を INPI に登録しなければならない。
2.1 INPI への登録の効果
(1)ロイヤリティ収入等の国外送金(ブラジル企業から外国企業に対する送金)
ブラジル企業が外国企業に対しロイヤルティー等の支払いをした場合、当該ロイヤリティ等を国外に送金するにはブラジル中央銀行の許可が必要となる。ブラジル中央銀行から国外送金の許可を得るには関連する知財ライセンス契約等が INPI に登録されている必要がある。また、国外送金を行う際には、ブラジル中央銀行への登録(セクション 2.6を参照)も別途必要となる。
(2)第三者対抗力
ブラジルにおいて知財ライセンス契約等を締結し、当該契約を第三者にも有効なものとするためには、当該契約を INPI に登録し、第三者対抗力を生じさせる必要がある2。例えば、第三者がライセンサーの知財権を侵害していることに対して、契約条項に基づき措置をとる権利をライセンシーが有する場合、又は義務をライセンシーが負う場合、当該契約が INPI に登録されていれば、ライセンシー名義で侵害行為等の差止めを求めることや、損害賠償を請求することが可能となる。
2 産業財産法(法律第 9.279/96 号)第 211 条「INPI は技術移転、フランチャイズその他類似の契約をそれらが第三者に対して効力を有するようにするために登録するものとする。」
(3)税控除
ブラジルでは税法上、知財ライセンス契約等に起因する支払いについては損金として課税対象となる所得から控除することができる。控除上限は契約の種類及び技術分野によって異なり、最大で各製品販売の純収入の 5%に相当する額となる(控除上限についてはセクション 2.4 を参照)。
2.2 INPI への登録が必要な契約
INPI 規則 70/2017 号第 2 条は INPI への登録が必要な契約の種類について規定している。
①産業財産権ライセンス契約(特許、商標、実用新案、工業意匠を含む)
②技術移転/ライセンス契約
③特許の強制実施権
④フランチャイズ契約
⑤技術サービス契約
⑥産業財産権譲渡契約
INPI は、技術サービス契約について、技術サービス提供者から当該サービスを受けている契約当事者に対する技術移転を必然的に伴うものであると解釈している。しかしながら、以下のサービス契約は技術移転を伴わないため、登録対象外とされている3。
①物流サービス(荷積み支援、通関に関する管理業務)を含む供給管理
②技術的専門性を含まない、国外において国内法人が提供したサービスのうち、それにより文書又は報告が生じないもの
③あらゆる種類の設備/機械の保守管理サービス
④あらゆる種類の設備/機械のためになされる、あらゆる種類の修理、補修、調整、校正、変更、検査、修復及び復旧サービス
⑤設備/機械の組み立て監督、組み立て、分解、据え付け、運転開始のサービス
⑥製品の品質に関する認証及び証明
⑦財務的コンサルティング
⑧商業的コンサルティング
⑨法的コンサルティング
⑩公的入札参加に関するコンサルティング
➃マーケティング・サービス
⑫いかなる文書も発生しない遠隔コンサルティング
⑬ソフトウェアのサポート、管理、インストール、応用、配置、カスタマイズ、適合、セッティング、パラメータのセッティング、システム取引、翻訳又は追跡に関する
サービス
⑭ユーザー・トレーニング又はその他のソフトウェアに関するトレーニングサービス
⑮ソフトウェア・ライセンス
⑯ソフトウェア販売
➃ソフトウェアの唯一のコピーの取得
3 INPI 決議第 156/2015 号第1条
上記登録対象外とされている契約に関する支払いについては、契約書と請求書4を提示することで、為替業務を許可されている商業銀行を介して変動為替レートにて国外に送金することができる。
2.3 INPI への登録手続及び要件に関する一般情報
2.3.1 基本的な留意事項
契約の種類に関係なく、INPI は登録手続において次の情報を含めることを求めている5。
①契約当事者
②契約の種類
③契約の目的
④契約額
⑤支払通貨、金額及び方法(技術サービス契約の場合)
⑥契約期間
⑦その他契約に関する事項(該当する場合)
したがって、契約書を作成する際には以下の点に留意する必要がある。
(1)明瞭であること
✓ あいまいな表現、解釈上相違が生じ得る表現、不明確な定義(例えば、「知財権」のように広く定義し、具体的にどの知財権が取引の対象かを記載しない)を避け る。
✓ 両当事者を特定し、いずれの当事者が知財保持者で、いずれの当事者に知財がライセンスされるのかを明記する。
✓ 両当事者が正当な代表であることを確認する。
(2)完全であること(取引に関する条件を明示的に定めること)
✓ 契約の意図及び目的を明確にするための前文を記載する。この前文があることで、当事者の意図及び合意した条件を正確に解釈することができるようになる。
✓ 契約の対象を特定する。(例:取引対象の技術を具体的に記述する。)
✓ ロイヤルティーの支払い対象となる売り上げに関連する製品及び/又はサービスを特定する。
✓ 契約の地理的範囲を定める。
✓ 契約期間を明確に規定する。
✓ 取引が独占的であるか非独占的であるかを明記する。
4 契約書と請求書がポルトガル語以外の言語で作成されている場合、ポルトガル語訳の提出が必要となる。
5 INPI 規則 70/2017 号第 5 条
(3)具体的であること
✓ 知財契約に関連しないその他の商業的取り決めを契約書の中に含めることは避ける。特に、それぞれの取引に異なる規制上又は税法上の要件が適用される場合には、それぞれの商業的取り決めごとに契約書を分けることが望ましい。
2.3.2 形式上の要件
登録申請を審査する際、まず INPI は契約書が以下の形式要件を満たしているか確認を行う。
✓ 署名日及び署名地が明示的に記載されているか。
✓ 署名者の詳細な身元情報(氏名、身分証番号6、企業における役職など)が記載されているか。
✓ 契約書署名地がブラジル国内でない場合、公証及び領事認証されているか。(契約書が日本7 又はその他のハーグ条約締結国8において署名される場合、領事認証はアポスティーユによる公証にて代用可能。)
✓ 契約書署名地がブラジル国内である場合、証人 2 人の署名、身分証番号及び CPF
(納税者番号)を含めることを忘れてはならない。
また、登録申請時には以下の書類等を1つの電子ファイルにまとめて INPI に提出する必要がある。
✓ 契約書のデジタルファイル(xxから作成したもの)
✓ 主な取引条件を INPI に対し明らかにする説明文書
✓ 連邦政府納付票(GRU)(INPI への手数料が適切に支払われたことを示す書類)
✓ 契約書のポルトガル語訳(簡易翻訳)
✓ 契約書に署名をした当事者が署名権限を有することを証明する各当事者の社内規 則の証明書又は登記所で証明された文書の抜粋又は同様の文書(当該文書の領事 認証又は公証はいずれも不要)、及び当該文書のポルトガル語訳(該当する場合)
✓ INPI に対し契約の登録申請をする当事者名義であって、登録を代理するブラジル国内の代理人宛ての委任状(領事認証や公証はいずれも不要)
さらに、登録申請フォームには以下の情報を記入する必要がある。
✓ 契約期間における概算支払額
✓ 契約期間における技術サービスに関連する概算額(該当する場合)
✓ 契約期間における契約対象製品の概算製造品出荷額及び売上高
✓ 所得税を負担する契約当事者(ライセンサーとライセンシーのどちらか。)
✓ 両当事者間に法人上の関係がある場合にはその関係(一方当事者が他方当事者の子会社である場合など。)
6 外国人の場合はパスポート番号のみ有効。
7 「外国公文書の認証を不要とする条約」1961 年 10 月 5 日。ブラジル及び日本は締結国。
8 法律第 8.660/2016 号によれば、2016 年 8 月 14 日以降に締結された契約書に適用される。
なお、統計データを収集するため、ブラジル側の契約当事者(ライセンシーのみ)に対し、INPI は別の登録フォーム(ポルトガル語では「Ficha Cadastro」)を用いて以下の情報を提出することも求めている。
✓ 主な製造ライン(製造業の場合)又は主な事業分野(サービス業の場合)の説明
✓ どの技術が主な製造ライン(製造業の場合)又は主な事業分野(サービス業の場合)に関連しているか。
✓ ライセンシーは品質管理部門を有しているか。有している場合はその説明
✓ ライセンシーは研究開発部門を有しているか。有している場合はその説明
✓ ライセンシーは大学及び/又は研究開発機関と提携しているか。している場合はライセンシー及び当該大学及び/又は研究開発部門との間で実施される主な研究の説明。
✓ ライセンシーの前会計年度における研究開発関連支出額(ブラジル・レアル)
✓ 過去2年間(会計年度)の全世界での収入額(ブラジル・レアル)に占める輸出額の割合
✓ 過去3年間(会計年度)のライセンシーの収入額
✓ 関連市場におけるライセンシーのシェア(%)
✓ ライセンシーが属する企業グループ(該当する場合)
✓ ライセンシーの株式の大部分を所有するのは個人と法人のどちらか。また、法人である場合、内国法人と外国法人のどちらか。
2.3.3 INPI による契約内容への介入(歴史的背景と最近の動き)
INPI の本来の役割は、セクション 2.1 で説明した効果を発生させるために、公的機関 として知財契約の登録を促進することである。しかしながら、歴史的・政治的事情から、 INPI は 30 年以上にわたり、国内産業の利益保護を重視する形で契約条件の審査を行って きた。そして、契約の各条項がある種の制約に反する場合、INPI は両当事者が自由に合 意した条件に介入し、当該契約の登録を拒絶することも多かった。
支払及び送金の障害となっている税控除の上限及び会計規制は、INPI が契約の登録を拒絶する際の根拠であると長く見なされてきた。原則として合意済みの報酬については海外への支払及び送金が許されるべきであり、法的上限まで単純に支払額を控除すべきである。しかしながら、INPI はある種の上限を超える契約については、ただ登録を拒絶してきた。INPI は多くの明文化されていないルールを登録審査に適用しており、また、明確な審査ガイドラインも公表されていないため、登録手続は不安定で不確実なものとなっている。
この INPI による契約内容への介入に対しては、すでに複数の訴訟が提起されている。先例は多くはないものの、INPI の介入主義的役割を許容するというのが、裁判所の支配的な見解となっている。そのため、何十年にもわたり、多くの企業は、INPI の契約内容への介入に疑義を呈するのではなく、INPI が課す制約的な規制に適合するように契約書の内容を調整するとともに、他の法律上の戦略を考え、INPI による介入の影響を最小限に抑えつつ、登録の効果を迅速に活用できるように努力してきた。
2017 年 2 月、INPI による契約内容への介入は許容されるとの判断を司法最高裁判所が 示したことで9、INPI による介入の影響が抑制される可能性はなくなったものと思われた。しかしながら、2017 年 4 月、INPI は突如として知的財産ライセンス契約等の登録実務の
9 Recurso Especial nº 1.200.528-RJ、2017 年 2 月 16 日判決
簡素化する INPI 規則 70/2017 号(2017 年 7 月 1 日施行)を公表した。当該規制第 13 条によれば、登録証明書には「INPI は会計、税及び支払いに関する規制の観点からは本契約を審査していない。」とする免責事項が含められることとなる。したがって、契約の両当事者は税法及び控除上限の遵守について金融当局に対して引き続き説明責任を負うものの、INPI への契約登録における障害とはならなくなる。
注意しなければならないのは、同一の企業グループに属する当事者間の契約(企業グループ内契約)の場合、ロイヤルティーの国外送金の許容額は控除上限までとなる(セクション 2.4 を参照)。したがって、場合によっては、両当事者が合意した報酬額に達するように、著作権ライセンスやソフトウェア・ライセンスといった補足的契約書を作成することも考慮しなければならない(セクション 2.5 を参照)。
以上のことから、契約の両当事者は、ブラジル側当事者に必然的に課されるブラジルの税規制等を考慮のうえ、制約を回避し、最善の経済的モデルを選択すべく、契約に関する戦略を構築する必要があると言える。したがって、ブラジルにおいて知財ライセンス契約等を締結する前、又は INPI への登録申請前に現地専門家の助言を得ることが望ましい。
2.3.4 登録手続の流れ
INPI 規則 70/2017 号が施行された直後、INPI はさらに登録手続に関するガイドラインを含む決議第 199/2017 号を発布した。これらの規則やガイドラインによって、登録手続に関する INPI の解釈及び判断の透明性・予測可能性は格段に高まったと言える。
当該ガイドラインによれば、すべての登録申請は次の 2 つの審査段階を経ることになる。まず、(1)各特定フォームの形式要件に合致しているか確認し、取引に関連する知財の所有権や状態を調べるための形式審査が行われる。次に、(2)契約の種類ごとに、いくつかの契約条件に対する技術審査が行われる。技術審査については、セクション 2.4にて詳述する。
すべての形式要件を満たしており、かつ契約条項に関し異議がないと INPI が判断した場合、INPI は登録証明書を発行する。登録は登録証明書の発行日から効力を有するが、セクション 2.1 に記載の 3 つの効果は登録申請受理日に遡って有効となる。また、この登録申請受理日はロイヤルティー等の計算における起算日にもなる。
INPI が契約を登録するか、契約内容や両当事者間の関係性に関する追加的な証明や情報を求めるオフィスアクションを行うまでに通常は 45 日から 60 日を要する。オフィス
アクションへの応答期間は当該オフィスアクションの公示日から 60 日に設定されている。オフィスアクションに記載されている INPI の要求が満たされない場合、登録申請は直ち に却下される。却下処分に対して INPI に不服を申し立てることはできない。ただし、却 下された後でも、新たな登録申請を行うことは可能である。登録申請前に現地専門家に 契約書のドラフトをチェックしてもらい、INPI からの無駄なオフィスアクションを回避 することが推奨される。
2.4 契約別留意事項
以下では契約の種類ごとに留意すべき事項などについて説明する。なお、同じの製品
/サービスに対し、複数の知財に基づいて累積的にライセンスの支払いを求めるような契約(例 1~3)を INPI に認めていない点に留意する必要がある10。
(例 1)商標ライセンス + 意匠、特許又は実用新案ライセンス
(例 2)商標ライセンス + ノウハウ(know-how)ライセンス
(例 3)ノウハウ(know-how)ライセンス + 意匠、特許又は実用新案ライセンス
2.4.1 特許ライセンス契約
(1)特有の要件11
①特許番号等:ライセンス対象となる特許の出願番号又は登録番号、発明の名称を明示的に記載する12。
②改良発明の取扱い:ブラジル産業財産法は改良発明の取扱いに関して制限を設けている。同法第 63 条には「ライセンスの対象とされている特許に導入された改良は当該改良を行った当事者に帰属するものとし、相手方当事者は改良についてライセンスを受ける優先権を有するものとする。」と規定されている。
③第三者による侵害への措置:特許権者はライセンシーに対し、特許を保護する措置をとるための完全な権限を与えることができる13。
④ライセンスの範囲:契約はライセンスに基づき許可された用途を予見したものとする。
⑤ライセンスのタイプ:専用実施権と通常実施権のどちらであるか、またサブライセンスは可能であるかについて明示的に定める14。
(2)ロイヤルティーの計算及び支払条件
①ロイヤルティーの計算:一般的な支払い方法は、販売された製品ユニットごとの固定金額、又は純売上高に対するパーセンテージである。両当事者は、その企業間の関係性に従い、ロイヤルティー金額に関する制約を遵守する必要がある。
✓ 両当事者が関係会社の場合15:ライセンサー及びライセンシーが関係会社である場合、ロイヤルティーの支払い及び送金は税控除上限に従う。当該上限は、関連する技術に
10 法律第 436/58 号第 13 条
11 INPI 決議第 000/0000 xx 0 x XX
00 INPI 決議第 199/2017 号第 12 条 I. f
13 産業財産法(法律第 9.279/96 号)第 61 条「特許所有者又は出願人はライセンス契約を締結することができる。(補項)特許所有者は実施権者に対し、特許を防御するための措置を講じる一切の権限を付与することができる。」
14 INPI 決議第 199/2017 号第 12 条 l. a は、両当事者が付与されるライセンスの範囲に関し明確な認識を規定することを求めている。
15 一方当事者が直接的又は間接的に他方当事者の議決権付き持分の 50%以上を支配している場合
より異なり、契約に基づき製造された製品又は提供されたサービスの純売上高の 1%から 5%である(各技術分野に認められているパーセンテージは連邦歳入法(法律第 436/58 号)を参照)。
✓ 両当事者が関係会社でない場合16:ライセンサー及びライセンシーが関係会社でない場合、ロイヤルティーの支払いに上限はない。INPI は契約を登録し、両当事者が合意したロイヤルティー料が登録証明書に明記される。
②ライセンサーから入手するスペア・パーツや原材料:INPI は、ライセンサーからスペ ア・パーツや原材料を購入する際にライセンシーが支払う金額は、ライセンサーに対し 支払うべきロイヤルティーから控除するものとしている。なぜなら、当該スペア・パー ツや原材料は、ライセンスされている技術の一部を成すものであり、ライセンシーは重 複して(当該スペア・パーツや原材料の価格に含まれている技術及び、各製品の最終販 売価格に対するロイヤルティー)支払うべきではないと INPI は解釈しているからである。
③支払期間:特許権の存続期間内に限られ17、登録申請の受理日に遡ることができる。
④送金期間:ロイヤルティーは登録申請の受理日に遡って計算できるが、ライセンシーは、特許権が付与されるまで支払額の送金はできない。特許権が付与される前に契約の登録申請をした場合、INPI は特許権付与前であるとの免責事項を含む登録証明書を発行する18。特許が付与された際には、xxxxxxは登録証明書の更新を INPI に申請しなければならない。また、INPI の承認及び新たな登録証明書の発行がなされた際にはじめてライセンシーは送金をすることができる。そのため、xxxxxxの義務について、特許権が付与される前はロイヤルティーの支払いは不要とし、特許権が付与され次第送金すると契約書で規定することもある。
(3)契約期間及び更新
特許ライセンス契約は各特許の存続期限内のみ INPI に登録できる。特許権の存続期間が満了した場合、契約更新はできなくなり、結果として登録もできなくなる。
2.4.2 商標ライセンス契約
(1)特有の要件
①商標番号等:ライセンス対象となる商標の出願番号又は登録番号、ロゴ(該当する場合)を明示的に記載する19。
②ライセンスの範囲:契約はライセンスに基づき許可された用途を予見したものとする。
16 一方当事者が直接的又は間接的に他方当事者の議決権付き持分の 49%以下を支配している場合、又は両当事者に法人上の関係性が全くない場合
17 INPI 決議第 199/2017 号 第 3 条 III
18 INPI 決議第 199/2017 号 第 14 条 IV
19 INPI 決議第 199/2017 号 第 12 条 I. f
③第三者による侵害への措置:いずれの当事者が商標を保護するための措置に対して責任を負うのか、契約において定める。
④ライセンスのタイプ:専用実施権と通常実施権のどちらであるか、またサブライセンスは可能であるかについて明示的に定める20。
(2)ロイヤルティーの計算及び支払条件
①ロイヤルティーの計算:一般的な支払い方法は、販売された製品ユニットごとの固定金額、又は純売上高に対するパーセンテージである。両当事者は、その企業間の関係性に従い、ロイヤルティー金額に関する制約を遵守する必要がある。
✓ 両当事者が関係会社の場合21:ライセンサー及びライセンシーが関係会社である場合、ロイヤルティーの支払い及び送金は、契約に基づき製造された製品又は提供されたサ ービスの純売上高の 1%という税控除上限に従う。
✓ 両当事者が関係会社でない場合22:ライセンサー及びライセンシーが関係会社でない場合、ロイヤルティーの支払いに上限はない。INPI は契約を登録し、両当事者が合意したロイヤルティー料が証明書に明記される。
②支払期間:商標権の存続期間内に限られ、登録申請の受理日に遡ることができる。
③送金期間:商標に関する専有的権利は商標登録という事実によってのみ生じると INPIは解釈しているため、商標ライセンスから生じるロイヤルティーの支払い及び送金は、商標登録日以降にのみ認められる。つまり、登録前の出願中の商標に関するライセンスはロイヤルティーフリーとする必要がある。
登録前の商標に関するライセンス契約の登録申請をした場合、INPI は、当該商標は未登録であり、xxxxxはロイヤルティーフリーであるとの免責事項を含む登録証明書を発行する23。商標が登録された際には、xxxxxxは登録証明書の更新を INPI に申請しなければならない。また、INPI の承認及び新たな登録証明書の発行がなされた際にはじめてライセンシーは送金をすることができる。
2.4.3 ノウハウ・ライセンス契約(技術移転契約)
ブラジル産業財産法にはノウハウ(know-how)については何ら定義されておらず、登録制度も存在しない。そこで、本マニュアルでは、「ノウハウ」とう用語を「特許が付与されていない技術」及び/又は「特許性のない技術」を意味するものとして用いる。
ノウハウはライセンス対象となり得る独占的な権利ではないというのが INPI の見解である。そのため、ノウハウに関する取引はノウハウの所有権を受領側に売却及び移転するものであると INPI は考えている。つまり、INPI の見解によれば、ノウハウライセンス
20 INPI 決議第 199/2017 号 第 12 条 l. a は、両当事者が、付与されるライセンスの範囲に関し明確な認識を規定することを求めている。
21 一方当事者が直接的又は間接的に他方当事者の議決権付き持分の 50%以上を支配している場合
22 一方当事者が直接的又は間接的に他方当事者の議決権付き持分の 49%以下を支配している場合、又は両当事者に法人上の関係性が全くない場合
23 INPI 決議第 199/2017 号 第 14 条 IV
契約は、技術の売却及び移転に関する契約となるから、登録制度によって制約を課される契約に該当することになる24。
(1)特有の規定
①ノウハウの定義:ライセンス対象となる技術及び当該技術を具現化する製品又はサービスについて、詳細に定義することが特に重要である25。
②ライセンサーの知財権:知財権の所有権はライセンシーにより明確に確認されなければならない。
③契約前の知財:契約前から各当事者が所有していた背景的なノウハウや今後取得が予想される特許権などについても、契約終了後の継続使用を確保するため、所有権などについて明確に定義すべきである。
④改良:ブラジル産業財産法第 63 条は改良発明の取扱いに関して制限を設けている26。 INPI はこの規定をノウハウに対しても適用する傾向があり、INPI はライセンシーが開発した改良に関する知財権の譲渡を規定する条項などライセンサーに有利な条項を拒絶する傾向がある。このような条項を拒絶するオフィスアクションに対しては、ブラジル産業財産法第 63 条が特許を付与された技術に対してのみ適用されるものであり、ノウハウには適用されないと主張し、異議を唱えることが有効である。INPI は原則としてこのような主張を受け入れている。
⑤ライセンスの範囲:契約はライセンスに基づき許可された用途を予見したものとする。
⑥秘密保持義務:xxxxは専用的権利として保護されていないため、秘密保持義務を明確に定めておくことが特に重要である。
⑦第三者による侵害への措置:いずれの当事者がノウハウを保護するための措置に対して責任を負うのか、契約において定める。
⑧ライセンスのタイプ:独占的ライセンス契約と非独占的ライセンス契約のどちらであるか、またサブライセンスは可能であるかについて明示的に定める。
(2)ロイヤルティーの計算及び支払条件
①ロイヤルティーの計算:一般的な支払い方法は、販売された製品ユニットごとの固定金額、又は純売上高に対するパーセンテージである。両当事者は、その企業間の関係性に従い、ロイヤルティー金額に関する制約を遵守する必要がある。
24 INPI 決議第 199/2017 号 第 8 条 I
25 INPI 決議第 199/2017 号 第 12 条 VIII は、このような明確な定義を特に求めている。
26 産業財産法(法律第 9.279/96 号)第 63 条「ライセンスの対象とされている特許に導入された改良は当該改良を行った当事者に帰属するものとし、相手方当事者は改良についてライセンスを受ける優先権を有するものとする。」
✓ 両当事者が関係会社の場合27:ライセンサー及びライセンシーが関係会社である場合、ロイヤルティーの支払い及び送金は税控除上限に従う。当該上限は、関連する技術に より異なり、契約に基づき製造された製品又は提供されたサービスの純売上高の 1% から 5%である(各技術分野に認められているパーセンテージは連邦歳入法(法律第 436/58 号)を参照)。
✓ 両当事者が関係会社でない場合28:ライセンサー及びライセンシーが関係会社でない場合、ロイヤルティーの支払いに上限はない。INPI は契約を登録し、両当事者が合意したロイヤルティー料が登録証明書に明記される。
②支払期間:登録証明書にて認められた支払期間は、登録申請の提出日から開始する。
③ライセンサーから入手するスペア・パーツや原材料:INPI は、ライセンサーからスペ ア・パーツや原材料を購入する際にライセンシーが支払う金額は、ライセンサーに対し 支払うべきロイヤルティーから控除するものとしている。なぜなら、当該スペア・パー ツや原材料は、ライセンスされている技術の一部を成すものであり、ライセンシーは重 複して(当該スペア・パーツや原材料の価格に含まれている技術及び、各製品の最終販 売価格に対するロイヤルティー)支払うべきではないと INPI は解釈しているからである。
(3)契約期間
INPI は両当事者が定めた契約期間を登録する。税規制29においては、ライセンシーは 5年間のみライセンス料を控除することが認められている。xxxxxxが、契約対象の技術を使用する期間として当初期間は十分ではなかったことを証明し、契約延長の正当性を示した場合、1回のみ 5 年間延長することができる。
(4)契約終了の影響
前述したように、INPI はノウハウのライセンスという概念を認めておらず、ノウハウライセンス契約は、ノウハウの売却及び移転を目的とした契約であると考えている。したがって、ノウハウ文書の返却、契約終了後のライセンシーによるノウハウ使用の停止又は永久的な秘密保持義務を規定する条項を含む契約の登録は INPI で拒絶されることが多かった。INPI 規則 70/2017 号の施行以降、INPI はより柔軟な立場をとっているようであるが、上記のような条項については、依然として拒絶されるリスクを無視することはできない。
2.4.4 技術サービス契約
技術サービス受領側の事業分野において一方当事者が他方当事者に技術サービスを提供するのであれば30、通常は受領側が技術的知識を吸収することになるから、技術サービ
27 一方当事者が直接的又は間接的に他方当事者の議決権付き持分の 50%以上を支配している場合
28 一方当事者が直接的又は間接的に他方当事者の議決権付き持分の 49%以下を支配している場合、又は両当事者に法人上の関係性が全くない場合
29法律第 4131/62 号第 12 条第 3 項
30 INPI 決議第 199/2017 号 第 8 条 II
ス契約は技術移転契約とも見なせるため、INPI への登録が必要であると INPI は考えている。例外的に登録が不要な技術サービス契約は、INPI 決議第 156/2015 号に列挙されている(詳細はセクション 2.2 を参照)。
(1)特有の規定
①サービスの定義:提供されるサービスの範囲、両当事者間で合意したサービスのレベル、サービスを提供する専門家の人数及び各専門家の資格などについて詳細に定義することが推奨される。
②秘密保持義務:契約期間中に共有及び開示される各当事者の関連情報を保護するために、秘密保持義務を明確に定めておくことが特に重要である。
(2)サービス料
①サービス料:INPI は以下の項目に関する詳細な情報を提出することを求めている31。
✓ サービスを担当する専門家が行う活動内容
✓ 専門家1人あたりの1時間又は1日の費用
✓ 各専門家の資格
✓ 契約期間中に提供されるサービスにより生じる全世界におけるサービス料概算額(費用の弁済として支払われる価額(例:旅費)は控除額には含まれないため、サービス提供への対価として支払われる価額と費用の弁済として支払われる価格は明確に区別することが強く推奨される。)
②サービス料に関する制約:税控除上限及び送金について制約がある。
✓ 両当事者が関係会社の場合32:ライセンサー及びライセンシーが関係会社である場合、ロイヤルティーの支払い及び送金は税控除上限に従う。当該上限は、関連する技術に より異なり、契約に基づき提供されたサービスの純売上高の 1%から 5%である(各 技術分野に認められているパーセンテージは連邦歳入法(法律第 436/58 号)をx x)。
✓ 両当事者が関係会社でない場合33:両当事者が関係会社でない場合、支払い及び送金に上限は課されない。INPI は契約を登録し、両当事者が合意したロイヤルティー料が登録証明書に明記される。
(3)契約期間及び更新
契約期間はブラジル民法典において 4 年までと制限されている34が、この規則は個人的 な性質の契約(例:著名彫刻家による彫刻作品の製作)に対して適用されるものであり、更新を禁止するものでもない。企業間の契約には当該規則は適用されず、ノウハウライ
31 INPI 決議第 199/2017 号 第 15 条 単項
32 一方当事者が直接的又は間接的に他方当事者の議決権付き持分の 50%以上を支配している場合
33 一方当事者が直接的又は間接的に他方当事者の議決権付き持分の 49%以下を支配している場合、又は両当事者に法人上の関係性が全くない場合
34 ブラジル民法典 第 598 条
センス契約に関する契約期間(2.4.5(3)を参照)と同様に 5 年間(1回のみ 5 年間の延長が可能)というルールが適用される。
2.4.5 フランチャイズ契約
フランチャイズ契約は、知財ライセンス及び/又は技術のやり取り(技術移転及び/又は技術サービス)に関わり、契約の種類に応じて規制に従うこととなる。フランチャイズ契約は、必然的に一つ以上の商標出願又は登録のライセンスと関係する35。例えば、フランチャイズ契約が商標ライセンス及びノウハウの開示を規定している場合、上述の商標ライセンス及び技術移転に関する規制が適用される。ただし、INPI はフランチャイズ契約の審査及び登録については比較的柔軟であり、厳しく制限しない傾向にある。
2.5 INPI への登録が不要な契約
(1)著作権ライセンス契約
著作権ライセンス契約は INPI への登録を必要としない。著作権ライセンス契約の典型的な例は、国外のライセンサー企業が作成したマーケティング及び販売促進資料の使用を国内のライセンシーに許諾することを目的としたライセンス契約がある。両当事者が関係会社の場合など、特定のケースにおいて、INPI が課す制約及び送金規制を回避するために、複数の異なるライセンス契約を組み合わせることがある(例:INPI への登録が必要な知財に関するライセンス契約と広告キャンペーン及び販売促進資料の使用に関する著作権ライセンスの組合せ)。なお、著作権ライセンスに関する契約書はポルトガル語以外の言語で作成することも可能であるが、権利行使をする場合には、裁判所にポルトガル語訳を提出する必要がある。
(2)ソフトウェア・ライセンス契約
ブラジルでは、ソフトウェアに関する権利は著作権制度によって保護されている。ソフトウェア・ライセンスは先のセクション 2.2 で説明したように、登録対象外の契約となる。ただし、ライセンス対象となるソフトウェアのソースコードや技術文書をライセンシーと共有することでノウハウの移転が生じる場合、当該ソフトウェア・ライセンス契約は単純なソフトウェア・ライセンス契約ではなく技術移転契約と見なされるため36、 INPI への登録が必要となる(セクション 2.4.3 を参照)。
2.6 ブラジル中央銀行への登録
ブラジルから他国(日本を含む)への送金についてはブラジル中央銀行(BCB)が規制・監督している。したがって、知財契約によって得られたロイヤルティーをブラジル国外に送金するには、BCB に事前に登録しなければならない。この登録は単なる申告を意味するものであって、事前許可を意味するものではないが、送金を行うためには必ず行
35 INPI 決議第 000/0000 x x 0 x X
00 xxxxxx法(法律第 9.609/98 号)第 11 条
わなければならない手続である37。国外送金を行う際に INPI への登録が必要な場合、 INPI が発行した登録証明書を BCB への登録時に提出しなければならない。
登録手続は、BCB の電子システム(Sisbacen)上で利用可能な電子申告登録システム
(RDE)を介して行われる。知財取引(その他を含む)については、RDE モジュールは金融業務レジストリ(ROF)となる。RDE-ROF で登録するためには BCB の Cademp(個人及び法人登録)システムにて事前に両当事者(送金者及び受領者)の登録手続を行う必要がある38。
両当事者の登録完了後、ガイドライン39に従って Sisbacen システムにアクセスし、以下の情報を入力する必要がある。
①事業コード(知財の種類に対応したコードがある。詳細は BCB ガイドラインを参照。)
②支払通貨
③金額
④INPI 登録証明書
⑤両当事者名
⑥決済の詳細(支払情報等)
⑦その他必要な情報
システムに入力された情報は INPI にも送信され、内容が確認される。登録を終えると RDE 番号が発行される。この RDE 番号は、許可された銀行を通じた投資収益、利息、収益及び配当に関する送金の際に必要となる。なお、投資元本の国際送金についてその他の事前許可又は審査は不要である40(手続の詳細 BCB ガイドラインを参照)。
3. おわりに
日本を含む世界中の企業にとって知財は最も有用で価値の高い財産の一つとなっており、ブラジルにおいてもそれは例外ではない。知財ライセンス契約に関する複雑で特殊な制度がブラジルには存在するため、契約締結時には十分に注意を払う必要がある。ブラジルでビジネスや事業をスムーズに進めるためには、以下の点に留意し、不必要なトラブルを避け、安定的なビジネスモデルを構築することが強く求められる。
(1)知財保護:ブラジル国内で自社の知財を適切に保護する。
(2)確固たる知財戦略の構築:税法上のメリットも考慮しつつ、適切なビジネスモデルを選択し、当該ビジネスモデルを保護可能な構成及び内容の契約書を作成する。
37 ROF の登録に関する詳細ガイドライン BCB ウェブサイト(ポルトガル語)で閲覧可能。 xxxx://xxx.xxx.xxx.xx/xxx/xxxxxxx/XXX/XxxxxxXXX-XXX.xxx
38 両当事者の登録に関する詳細ガイドラインは BCB ウェブサイト(ポルトガル語)で閲覧可能。
): xxxx://xxx.xxx.xxx.xx/xxx/xxxxxxx/XXX/XXX-Xxxxxx.xxx
39 BCB ウェブサイト(ポルトガル語), xxxx://xxx.xxx.xxx.xx/xxx/xxxxxxx/XXX/XxxxxxXXX-XXX.xxx
40 BCB ウェブサイト(ポルトガル語) xxxx://xxx.xxx.xxx.xx/xxx/xxxXX/Xxxx/Xxx/Xxxxxxxxxxxxx_Xxxxxxxx_xxx_Xxxxxxx_Xxxxxxxx_Xxxxxx_xx_Xx azil.pdf
(3)契約の見直し:ブラジルにおける子会社やパートナーとの知財契約内容を見直し、各条項が明瞭に記載されているか、秘密保持義務を明確に定めているかなどについて再確認する。
INPI が課す制約をなるべく回避しつつ、税法上のメリットを享受し、かつ適切に知財を保護することが可能な最適なビジネスモデルを確立するためには、専門家の助言を得ながら、念入りに契約に関する戦略を立てることが強く推奨される。取引の性質によっては、一部を犠牲にしてでも最も有利な契約戦略を模索すべきである。知財契約に関する戦略的な判断は会計上明らかに反映されるであろう。
[特許庁委託事業]
ブラジル産業財産庁への知的財産契約登録マニュアル
2018 年 3 月発行(禁無断転載)
[作成協力]
[発行・編集]
独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO)サンパウロ事務所
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