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「広報たかまつ」の配布業務に係る委託契約の締結・履行に関する住民監査請求について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第4項の規定により監査したので、その結果を同項の規定により次のとおり公表します。
平成30 年4 月27 日 | ||||
xx市監査委員 | x | x | x | x |
同 | x | x | x | x |
同 | x | x | x | x |
同 | x | x | x | x |
「広報たかまつ」の配布業務に係る委託契約の締結・履行関する住民監査請求の監査結果について
第1 | 請求の受理 | |
1 | 請求人 | |
住所・氏名 | 省略 |
2 請求の受付
本件請求は、平成30年3月7日に受け付けた。
3 請求の要旨(原文)
別紙事実証明書(①xx市とxx市連合自治会連絡協議会との間の広報誌「広報たかまつ」の配布業務の委託契約書及び同配布業務の仕様書の各写し、②本件請求人作成のxx市長あての照会書写し、③xx市長作成の照会に対する回答書写し、④xx市の自治会加入世帯数の推移)の記載によると、xx市長は、「広報たかまつ」の配布業務の委託契約においてxx市内の約18万5千世帯の約41%に相当する約7万5千世帯に配布できないことを知りながら、xx市連合自治会連絡協議会との間において地方自治法第242条第1項に規定する違法又は不当な契約を締結し履行し
ている事実が認められる。違法又は不当な契約の締結及び履行と認められる主な理由は次の通りである。
ア 事実証明書③の回答文書の「4について」の回答によると、xx市の推計では、未配布世帯数は昨年度は約5万2千世帯としているが、 同回答文書の「5について」では、平成29年4月時点の自治会加入 率は59.0%としていることから未加入世帯は41.0%となり約
7万5千世帯には配布していないのである。全世帯に配布することが できないことを知りながら膨大な数の世帯に配布しない委託契約を締 結し履行する行為は、住民の法律上保護される利益を侵害する違法行 為である。
イ 「広報たかまつ」の未配布世帯には、何らの落ち度も責任もないのに、xx市によって広報誌を受け取る権利を違法に侵害されているの である。自治会の制度は、本来、任意加入の制度であるから、自治会 加入世帯のみに配布する現在の配布委託契約では全世帯に配布できな いのである。香川県の広報誌「THEかがわ」の配布業務は、一般競 争入札によって契約をした会社(今年度は、四国新聞の子会社)に全 世帯配布を委託しており、県内の他の自治体でも全世帯の6割しか配 布しない自治体はないのである。
ウ 別紙事実証明書② の照会事項3 及びそれに対する事実証明書③ の回答の記載によると「自治会未加入世帯に配布する契約とはなっており ません」としている通り、xx市の解釈では、自治会未加入世帯を切 り捨てているのである。しかし、本件配布委託契約書の仕様書(事実 証明書①の一部)では、「各世帯に配布する」契約になっており、自 治会加入世帯にのみ配布する契約にはなっていないのである。契約書 の解釈を誤り全世帯配布の原則を忘れた不当な運用である。
エ 事実証明書③ の回答「 1 および2 について」 に記載の通り、 xx市長は、自治会加入と広報誌配布とを関連付けているが、自治会への加 入と全世帯配布とは別の問題であり、自治会未加入世帯に対して広報 誌の未配布の不利益を与えることは違法行為である。
オ 事実証明書④の記載によると、全世帯数は増えてきているものの、
自治会加入率は、減少してきているのであり、自治会加入世帯にのみ 配布をする現行の仕組みでは全世帯配布を実現することは不可能なの である。
結局、本件配布委託契約の締結及び履行は、地方自治法第242条第1項に規定する違法又は不当な契約の締結及び履行となることから、本件配布委託契約を是正して全世帯配布とする配布委託契約を締結する必要がある。
よって、本件請求人は、xx市監査委員が、本件配布委託業務に関するxx市連合自治会連絡協議会との間の配布委託契約を是正して、香川県の
「THEかがわ」の全世帯配布と同様の適切な方法によって全世帯配布を 実現できる必要な措置をとるようxx市長に対して勧告することを求める。
4 請求の要件審査
本件監査請求は、地方自治法(昭和22年4月17日法律第67号、以下「法」という。)第242条所定の要件を具備しているものと認め、受理した。
第2 個別外部監査契約に基づく監査請求とこれに対する措置
1 監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求める理由(原文)
住民監査請求の分野においては、従来の監査委員の制度は、全く機能しておらず、信用できないので、個別外部監査契約に基づく監査を求める必要がある。
2 xx市(以下「市」という。)長に法第252条の43第2項前段の規定による通知を行わなかった理由
本件請求の監査を行うに当たっては、監査委員に代わる外部の専門的知識を有する者を必要とするような特段の事情があるとは認められず、むしろ、監査委員の監査による方が適当であると判断したことによるものである。
第3 監査の実施
1 監査対象事項等
本件請求に係る監査対象事項は、市長が、市発行の広報紙「広報たかまつ」(以下「市広報紙」という。)を市民に配布するに当たり、xx市連合自治会連絡協議 会(以 下「連合自治会連絡協議会 」という 。)との間で、 市内の全世帯を配布対象とせず、自治会加入世帯のみを配布対象とする配布業務委託契約(以下「本件委託契約」という。)を締結し、連合自治会連絡協議会をして、自治会加入世帯にのみ市広報紙を配布する債務を履行させ、自治会未加入世帯を含む全世帯には市広報紙を配布しなかったことが、違法又は不当な契約の締結及び履行に該当するか否かという事項である。
そして、その措置請求の内容は、市長に対し、連合自治会連絡協議会との間に締結した本件委託契約を是正し、自治会未加入世帯を含む全世帯に対する市広報紙配布が実現できる必要な措置を講ずるよう市長に勧告することを求めるというものである。
なお、監査委員は、法第242条第6項の規定に基づき、請求人に対して 、平 成3 0 年3 月1 9 日に 、証 拠の提出及び陳述の機会を与えたところ、請求人から、同月22日に、新たな証拠として「香川県広報誌等配布単価表(平成29年度)の写し」の提出があり、陳述を記述した同日付け書面が提出されたが、口頭による陳述はなされなかった。
この書面による請求人の陳述の要旨は、次のとおりである。
ア 本件委託契約では、自治会加入世帯にのみ市広報紙を配布することになっており、市内の全世帯約18万5千世帯の41パーセントに相当する約7万5千世帯に及ぶ自治会未加入世帯には配布されていないが、その配布を受けない一部住民は、何ら正当な理由もなく差別され、市広報紙を受け取る権利を違法に侵害されている。
イ 香川県(以下「県」という。)の広報誌「THEかがわ」(以下「県広報誌」という。)の配布については、県が、一般競争入札により契約した民間事業者に委託して全世帯配布を実施しているにも拘わらず、市
は、 自治会配布に留まり、 しかも市の自治会加入率は平成1 9 年度の
73.3パーセントから毎年減り続け、平成29年度の59パーセントにまで減少している現象から見て、全世帯が自治会に加入することは考えられず、現状のままでは全世帯配布の実現は不可能といえる状態である。
ウ 市は、「自治会に加入しないと広報紙は配布しない」という不利益を住民に与えることにより自治会加入を促進しようとする施策をとっているようであるが、自治会加入と広報紙配布とは別の問題であり、そのような不利益を住民に加える行為は違法である。
エ 連合自治会連絡協議会は、本件委託契約に係る配布業務を実際に行う各単位自治会の会員の承諾を得ていないので、市と本件委託契約を締結する権限はない。
オ 本件委託契約に係る仕様書は、第4項において、労働関係法規の遵守及び適正な雇用条件の確保を規定しており、労働者を雇用して本件配布業務を行うことを前提としており、同仕様書第1項に規定する業務内容には「各世帯に配布する」と明記されているので、一部の世帯にのみ配布することは本件委託契約に違反している。
カ 本件委託契約における配布単価は1部当たり5円であるが、香川県の広報誌の配布に係る契約単価は通常の16頁のものでも1部当たり13. 4円であり、本件委託契約の内容は前記仕様書の定めどおりになっていない。
2 監査対象部局
本件監査対象部局は、総務局xx広報課である。
第4 監査の結果
本件請求について、監査委員は、合議により次のとおり決定した。 本件請求は、措置請求に理由がないものと判断する。
以下、その理由を述べる。
1 監査により認められた事実
本件監査は、監査対象部局に事実照会するとともに、関係証拠書類の提出を受けて精査し、担当職員から事情聴取するなどの方法により実施し、その結果、次の各事実を認定した。
(1 ) 市の広報活動に関する基本方針
市などの基礎的な普通地方公共団体は、直接、市民の生活に深く関 係する地方行政を担っているところから、 市民に対し、 適時的確に、市の施策や制度を始め、生活に密着した情報や政策課題などの市政に 関する情報を提供し、市民の意見や提案を市行政の施策やそれに基づ く事業の実施に反映させる広報活動を行う必要性が強く要請される ところ、市は、予てより、自らが持つ「 市政に関する情報」について、 参画と協働による市政運営のため、多くの人に情報を伝達できるよう、様々な広報媒体を用い、分かりやすく、時期を逸しないように提供す ることが肝要であることを肝に銘じ、これを基本方針として、広報活 動を実施しており、xx市自治基本条例(平成21年12月21日条 例第51号)を制定した際にも、第14条第1項で「市は、市政に関 する情報を積極的に、分かりやすく、かつ、適時に市民に提供し、市 民との情報の共有に努めなければならない。」と規定し、その趣旨を 確認した上、広報活動を積極的に展開している。
(2 ) 市の広報活動の概要
市は、 この広報活動に関する基本方針に基づき、 昭和2 5 年には、
「xx市報発行規則」(昭和25年xx市告示第149号)を制定し た上、その広報活動の一つとして、広報紙「xx市報」を創刊・配布 したのを初めとして、定期的に広報紙の発行・配布を続け、その後、 時代の要請に応じて、同規則を一部改正したり、全部改正してxx市 広報発行規則(昭和50年6月26日規則第25号、以下「規則」と いう。)を制定するなどして対応し、現在では、その名称を「広報た かまつ」と改称し、紙面のカラー化、編集形式の改善、記事内容の充 実などを行い、前記基本方針に基づき、次のとおり、各種媒体を利用 した幅広い広報活動を実施している(平成29年度実績)。
ア 印刷媒体等による広報
(ア) 「広報たかまつ」の発行・配布(月2回) (イ) 「点字広報」の発行・配布(月1回)
(ウ) 「くらしの情報」の発行・配布(年1回) イ テレビ放送による広報
( ア) 「 ワンダフルたかまつN E X T 」 1 5 分広報番組( 年4 回放送、岡山放送)
(イ) 「 xx、歴史礼讃」 1 5 分広報番組( 年2 回放送、山陽放送) (ウ) 「xxシティCLIP」 3分広報番組(年12回放送、西日
本放送)
ウ ケーブルテレビ放送による広報
( ア) 「 いき・ いきxx」 3 0 分広報番組( 1 日4 ~ 5 回放送) 、
45分番組(1日3回放送)
(イ) 「市長定例記者会見」 実時間(1日3回放送) エ ラジオ放送による広報
(ア) 「げんキッズ」 10分広報番組(毎週水曜日放送、エフエムxx)
(イ) 「xx市インフォメーション」 3分広報番組(毎週月曜日から金曜日までの間、1日3回放送、エフエムxx)
( ウ) 「 市長ラジオエッセイ もっとxx」 5 分広報番組( 毎月第
1土曜日放送、西日本放送) オ インターネット等を活用した広報
(ア) 「公式ホームページ もっとxx」(常時掲載) (イ) 「公式ツイッター」(随時掲載)
(ウ) 「メルマガもっと髙松」(随時掲載) (エ) 「公式フェイスブック」(随時掲載)
(オ) 「xxムービー(動画)チャンネル」(随時掲載) カ その他の媒体による広報
「声の広報」(月1回)など
(3 ) 市の広報活動における広報紙の役割
市が本格的に広報活動を始めたのは、前述のとおり、第2次世界大戦終了後間もない時期であり、当時は、広報媒体として、印刷物かラジオ放送しか存在せず、ラジオは未だ民間の商業放送が普及していなかったため、専ら公共放送によるお知らせ放送と広報印刷物の配布以外の媒体はなく、市の広報活動の方法も限られていたが、その後、急速な経済発展とそれに伴う技術開発などにより、ラジオ・ テレビの商業放送やコンピューターによるインターネットなどの広報媒体が開発され、これを広報活動に活用することが普及し始め、市でも、前述のとおり、多様な手段・方法による適時的確な広報活動を実施することができるようになり、現在に至ったものである。
このように広報媒体の多様化により、広報活動に占める広報紙の役割も 、当 初の時期ほど大きくはなくなったものの 、広 報紙は 、誰 もが、いつでも、どこでも容易に読めて、手軽に有益な情報を得ることができ、簡単に身近に保存できて、必要な都度に読み返し、正確な情報を確実に取得することができる長所があり、他の媒体による広報が広く普及している現在においても、広報紙による広報活動の効用は大なるものがあり、監査対象部局が平成28年度に実施した「広報活動アンケート調査結果報告書」においても、調査に応じた市民の72パーセントを占める市民が、市政情報を知る媒体として、市広報紙を挙げているほどの状況である。
(4 ) 平成29年度における市広報紙の発行
市は、平成29年度においても、前記規則に基づき、市広報紙の発行を継続しており 、同年4月1日から平成30年3月31日までの間、毎月1日号と15日号の2回で年間24回にわたり、①予算及び決算 に関する事項、②市議会に関する事項、③市政全般の広報に関する事 項、 ④ その他市長が必要と認める事項を掲載した市広報紙を、 平成
29年4月1日号では、14万2,800部発行している。 (5 ) 平成29年度における市広報紙の配布
ア 本件委託契約の締結とその内容
市広報紙の配布について、市がいつ頃から自治会組織を活用するよ
うになったか正確な記録が保存されていないため、その時期を正確に 確認することはできないが、地区(校区)単位の自治会組織が充実し た昭和37年頃から、その配布について、市内各地区(校区)の自治 会組織に協力を求め、その理解を得て、市広報紙の配布業務を委託す るようになり、現在まで慣行的にそれを踏襲してきたものと推認され、平成29年度においても、同年4月1日に、連合自治会連絡協議会と の間で、市広報紙の配布業務を委託する契約を締結して対処している。
その契約内容の主要部分は、次のとおりである。 (ア) 委託業務内容
市が発行する広報紙の平成29年4月15日号から平成30 年
4月1日号までの24回分を、毎回、受取後速やかに会員などに 配布する。
なお、配布は、市広報紙発行日前日までに履行するものとし、当該期間に未着の通知がない場合は、履行したこととみなし、履 行できない場合は、 発注者にその旨を通知しなければならない。
(イ) 契約期間
平成29年4月1日から平成30年3月31日までとする。 (ウ) 契約金額
配布数量が未確定のため、単価契約とし、確定した配布数量に
5円を乗じて得た額とする。 (エ) 契約金支払方法
発注者は、平成30年4月1日号の配布履行を確認後、適法な
請求があった日から30日以内に、契約金額を支払うものとする。 (オ) 履行遅滞による遅延損害金
受注者の責めに帰する理由により履行期限までに、約定債務の履行を完了できない場合で、履行期限後に完了する見込みがある と認めたときは、発注者は、受注者から遅延損害金を付して履行 期限を延長することができる。
発注者の責めに帰すべき事由により、契約金の支払いが遅れた場合、受注者は、発注者に対して遅延損害金の支払いを請求する
ことができる。
これらの遅延損害金は、契約金額又は請求金額に対して遅延日数に応じ年2.7パーセントの割合を乗じて計算した額とする。
なお、この契約では、これらの条項の外に、秘密保持・個人情報の保護・契約の解除・不当要求行為を受けた場合の措置などの約定がなされているが、その契約に関する仕様書に定められてい る「労働関係法規の遵守及び適正な雇用条件の確保」についての 約定はなされていない。
イ 本件委託契約による市広報紙の配布状況
本件委託契約により市から市広報紙の配布業務を受注した連合自治会連絡協議会は、 その約定どおり、 配布債務を履行しており、 平成
29年4月1日発行分は、114,437世帯に配布しているが、同時点での自治会加入世帯は、 合計1 0 8 , 4 5 3 世帯であったので、その差5,984世帯は自治会未加入世帯であり、自治会未加入世帯にも相当数の世帯に市広報紙を配布していることを示している。
ウ 自治会配布以外の方法による市広報紙の配布
市は、本件委託契約により、自治会加入世帯には、確実に市広報紙を配布できるものの、自治会未加入世帯には、必ずしも自治会による配布が行き届かないことを了知しているため、それを補完する補助的方法として、マンション・アパートなどの集合住宅の居住世帯や1 0世帯以上のグループからの要請があるものについては、その管理人・管理会社又は世話役に市広報紙を纏めて送付し、配布を依頼するなどして、同じく平成29年4月1日発行分は合計17,638世帯に配布している。
また、市広報紙の配布を受けていない市民が自由に持ち帰ることができるよう、 市の総合センターや支所・ 出張所・ コミュニティセンター等を始め、こどもxx館や保健センター・市民サービスセンター等の出先機関や、一部の銀行・郵便局・スーパーマーケット・コンビニエンスストア等の店舗に市広報紙を備置配布しており、同じく平成
29年4月1日発行分は9,947部備置したうち、平均して備置部
数の約50パーセントは、市民が持ち帰って、活用されているものと推計される。
【印刷媒体による配布世帯数一覧(平成29年4月1日発行分)】
配布方法 | 世帯数 | |
自治会配布 | 自治会加入世帯に対する配布 | 1 0 8 , 4 5 3 |
自治会未加入世帯に対する配布 | 5,984 | |
小 計 | 1 1 4 , 4 3 7 | |
自治会配布以外 | 個別送付による配布 | 17,638 |
公共施設等での備置配布 | 4,974 | |
小 計 | 22,612 | |
合 計 | 1 3 7 , 0 4 9 |
(注) 公共施設等での備置配布は推定値。
平成29年4月1日発行分の市広報紙の配布方法別世帯数の内訳は、前記の表のとおりとなっており、市の同日現在の推計世帯数183,690世帯と比較すると、その差46,641世帯が市広報紙の配布を受け ていないことになっている。
そこで、市は、さらにインターネット等の普及を踏まえ、市広報紙をホームページに掲載するとともに、スマートフォンやタブレット端末からも市広報紙を閲覧しやすいように電子書籍化を行うなどして、市広報紙の閲覧の機会の向上にも努めており、その利用者数は、市ホームページ「広報たかまつ(トップページ)」のアクセス数の過去の実績から、1か月当たり約2,000アクセスと推計される。
(6 ) 市民の自治会加入状況の変遷と市広報紙配布状況の関係
自治会組織が結成された当初は、自治会活動が盛んに行われ、その 加入率は90パーセント前後で推移していたことから、市広報紙の配 布を自治会組織に委託すれば、大半の市民に確実に市広報紙が届き、 市の広報活動に寄与するだけでなく、自治会組織にとっても、広報紙 の配布手数料収入が自治会活動の資金にもなることから、自治会組織
を支援する機能も果たすものと期待し、自治会に市広報紙の配布業務 を委託してきた。しかし、近年の核家族化やライフスタイルの変化に よ り 、 地 縁 関 係 が 希 x x し 、 自 治 会 加 入 率 が 、 平 成 2 0 年 度 で は
70.19パーセント、平成25年度では63.74パーセント、平 成29年度では59.04パーセントと低下し、その傾向に歯止めが かからない状況にある。これに比例して自治会配布による市広報紙の 配布率も低下し、看過できない事態に陥った。
(7 ) 市広報紙の全世帯配布実現に向けての市の対応
市は、前述のとおり、市広報紙創刊の当初から、市広報紙を市内の全世帯に配布して、情報提供することを意図しており、その実現を目指して、前記の各種方策を実施してきており、いずれの時期にも、全世帯配布を排斥していたものではないが、「費用」対「効果」を検討しながら、 財政上、 一気に全世帯配布を実現できないまでも、 順次、でき得る限り多くの世帯に配布する努力を重ねてきたものの、その成果が得られず、平成29年3月には、平成28年度広報活動アンケート調査報告書を纏め、抜本的解決方法を策定する参考とした。
その報告書によると、調査対象市民のうち、70パーセントを超える市民が、市政情報を知る媒体として「広報たかまつ」を利用していると回答し、また、80パーセントを超える市民が、紙媒体の広報が必要と評価し、その配布については、「全世帯に配布すべきである」が58パーセント、「自治会に加入している世帯にのみ配布すべきである」が30パーセントとなっており、全世帯配布を望む市民が過半数を占め、その配布方法としては、「今までどおり自治会を通じて送ってほしい」とする市民が67パーセントに及び、市民の意向が必ずしも一つの方向にあるとは認められなかった。
また、その間、市において、本件委託契約の受注者に、全世帯配布を一括受注してもらえる余地があるか否かの交渉をしたが、全世帯配布については、自治会加入促進に逆行するという考え方や配布担当者にかかる負担の増加など、様々な検討課題があり、その協議は難航している。
市では、今後も、受注者との協議を重ねる予定があるほか、市広報紙の全世帯配布に向けて、民間事業者によるポスティングの導入も含めて、種々検討している最中であるが、最終決定をみていない。
(8 ) その他参考事実
ア 県発行の広報誌の配布状況
県は、現在、県広報誌を、毎月1回発行し、これを県内の全世帯に配布しているが、その配布業務は、民間の事業者に委託し、その事業者によるポスティングの方法で実施させており、配布単価を1部につき13.4円として、その対価を支払っている。
イ 中核市における広報紙の配布状況
平成29年8月現在、中核市48市の中、1市を除く47市が広報紙を発行して市民に配布しているが、その配布方法として、「自治会等を通じた配布を行っている自治体」は25市、「ポスティング事業者による全戸配布を行っている自治体」は14市あり、その他は新聞折込みなどによる配布を実施しており、依然として、その配布を自治会等に頼っているものが過半数を占めるが、既にポスティング事業者による配布によって全世帯配布を実現している自治体も約3 0 パーセントに及ぶ状況にある。
ウ 市広報紙の全世帯配布に関する市長への提言に対する市長の回答 市長は、請求人の市長への提言に対する回答において、本件委託契
約による市広報紙の配布は、「自治会未加入世帯に配布する契約とはなっておりません」と回答しているが、それは、本件委託契約が端的には自治会加入者である会員世帯を中心に配布することを契約内容とし、付随的に負担が大きくない範囲で、可能な限り、自治会未加入者でも、身近な市民に配布してもらいたいとの希望を込めて委託したものであったため、契約書の配布対象者に「会員など」と「など」を付記し、債務として自治会未加入者への配布を義務付けたものではなかったことから、前記回答文言を記述したものにすぎず、自治会未加入世帯に対する配布の現状を是認し、市広報紙の配布を受けていない自治会未加入世帯に対する配慮を欠いたものではなく、事実を客観的
に説明したにすぎないものと認められる。
なお、市広報紙の未配布世帯数については、「28年度が約5万2千世帯と推計」と回答しているが、これは、公共施設等での備置配布数の取扱いの差によるものであり、その配布方法を含めると、未配布世帯数は46,641世帯である。
2 監査委員の判断
(1 ) 市広報紙の市内全世帯配布を対象としていない本件委託契約の適法性等について
請求人は、 本件委託契約が、 委託に係る市広報紙の配布について、市内の全世帯を配布対象とせず、自治会加入者のみを配布対象として いる点において、その契約締結及び履行は違法又は不当であると主張 するので、先ず、その点について検討する。
ア 「監査により認められた事実 」の (1 )ないし(3 )で明らかなとおり、市は、基礎的な普通地方公共団体として、市民の生活に直接的に深く 関係する行政を担っているので、市民に対し、適時的確に、市の施策 や制度を始め、市民の生活に密着した情報や政策課題など市政に関す る情報を提供し、市民の意見や提案を市行政の施策やそれに基づく事 業の実施に反映させる広報活動を行う必要が強く要請されるところで あり、予てより、市民の参画と協働による市政運営のため、多くの市 民に市政に関する情報を伝達できるよう、様々な広報媒体を用い、分 かりやすく、時期を逸しないように提供することが肝要であるという 基本方針を立て、積極的な広報活動を展開してきているが、その中で も、市広報紙の発行・配布は、主要な役割を果たすものであると認識 しており 、昭 和2 5 年以降 、規 則に基づき定期的に市広報紙を発行し、これを市民に配布することを継続しているものであり、その発行の趣 旨に照らして、発行にかかる市広報紙は、広く市内全域にわたって、 漏れなく全世帯に配布し、その情報を取得する機会を与えなければな らないと考え、その実現に向けて様々な努力をしてきていることが認 められる。
イ しかし、現実には、市において、広報紙は、相当多数の世帯に配布されているものの、全世帯の約25パーセントに相当する世帯には配 布されておらず、本件委託契約においても、その委託業務内容は、全 世帯を配布の対象とせず、主として自治会加入世帯に配布することを 内 容 と す る に 留 ま り 、 そ の 債 務 履 行 に よ っ て 、 市 内 全 世 帯 の
62.30パーセントを占める自治会加入世帯とその隣接世帯の一部には市広報紙が配布されているものの、その他の世帯に対する市広報紙配布はなされないままになり、市が他の補助的方法を採って、全世帯の12.31パーセントに相当する22,612世帯に配布して補充している状況にあり、全世帯配布が実現されていないことは事実であり、概ね請求人の主張に沿うものがあるが、本件委託契約は、次に述べる経緯や理由により締結され、その約定どおりの履行がなされており、その契約の締結及び履行において、何ら違法又は不当な点は認められないので、その効力に消長を来す事由は何ら存在しないと認められる。
すなわち、「監査により認められた事実」の(5 )のイ及びウ並びに (6 )及び(7 )で明らかなとおり、市が広報紙を発行・配布し始めた当初頃は、市内全世帯の90パーセント前後を占める世帯が市内各地域の自治会に加入していたので、自治会組織による市広報紙の配布方法だけに依存していたとしても、 市広報紙の配布率は、 全世帯の9 0パーセント位を維持できる状況であったものの、その後、時代の変遷で市民の自治会に対する関心が希薄化したことなどに伴い、市内の自治会加入世帯の割合が減少し 、平成20年度は70 .19パーセント、 平 成 2 5 年 度 は 6 3 . 7 4 パ ー セ ン ト 、 直 近 の 平 成 2 9 年 度 は
59.04パーセントと順次低減の傾向を辿り、これに比例して、自 治会組織による市広報紙の配布率も低下してきたものであり、その間、市においては、自治会配布の方法だけでは対応できない自治会未加入 世帯に対する市広報紙配布を補完するため、マンション・ アパートな どの集合住宅の居住世帯や1 0 世帯以上のグループからの要請があ るものについては、その管理人・管理会社又は世話役に市広報紙を纏
めて送付し、その配布を依頼したり、市広報紙の配布を受けていない市民が自由に持ち帰ることができるよう、市の総合センターや支所・出張所・ コミュニティセンター等を始め、 こども未来館や保健センター・市民サービスセンター等の出先機関や、一部の銀行・郵便局・スーパーマーケット・コンビニエンスストア等の店舗に市広報紙を備置配布するなど、様々な補助的措置を講じ、その成果を期待した。
しかし 、平 成2 9 年4 月1 日発行分の市広報紙の配布状況をみると、市内の全世帯183 , 690世帯のうち、自治会加入の108, 4 5 3世帯には全世帯が自治会配布により直接に配布されているものの、自治会未加入の世帯には 、5 ,984世帯にしか直接配布されておらず、 残る69,253世帯のうち、22,612世帯は、マンション居住者などのグループ等からの要請により市から送付を受けたり、市の総合センターや支所・出張所などに備置配布されていたものを自分で持ち帰るなど、自治会配布以外の方法で入手しているが、その他の46,641世帯(市の全世帯の25.39パーセントに相当する世帯)は取り残されて、市広報紙による情報を入手する機会が得られないままの状態に置かれており、期待したほどの成果が得られず、現状では、残念ながら未だ市内全世帯に対する配布は実現せず、市広報紙の全世帯配布の要請には応えられていない状態で推移している事実が認められる。
そこで、市は、「監査により認められた事実」の(7 )で明らかなとおり、平成28年度に市民を対象に実施した広報活動アンケート調査の結果報告書の内容を精査するなどして、全世帯配布の実現に向けた検討を推進し、「監査により認められた事実」の(8 )のイで明らかな中核市における広報紙の配布状況(平成29年8月現在、中核市4 8市のうち、広報紙を発行していない1市を除く47市のうちで、「自治会等を通じた配布を行っている自治体」 が2 5 市あるのに対し、
「ポスティング事業者による全戸配布を行っている自治体」が14 市ある。)などを参考にして、ポスティング事業者に委託して全世帯配布を実現させる抜本的な解決方法の導入も模索・検討中であるが、これまで長期間にわたり市広報紙の配布に協力してくれている本件委
託契約の相手方である連合自治会連絡協議会との協議・調整やポスティング事業者による配布を採用した場合の費用負担増(「監査により認められた事実」の(8 )のアで明らかな県採用のポスティング事業者に よる広報紙配布単価は、本件委託契約における配布単価の約2.6 8倍)など対処しなければならない問題が多く、最終決定に至っていない状況にある。
ウ このような背景事情が認められる中で、市は、平成29年度の市広報紙配布方法を決定しなければならない状況となり、本件委託契約を 締結したものであるが、この広報紙の配布方法について、規則第4条 は、「広報は、無料配布とする。」と規定するのみで、その他に一切 の規定はなく、その配布方法は、専ら市の裁量に委ねられているもの と思料されるところ、市は、法第2条第14項が「地方公共団体は、 その事務を処理するに当つては 、住民の福祉の増進に努めるとともに、 最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と規 定している趣旨に則り、「費用」対「効果」の観点から、迅速性・確 実性・経済性を総合的に判断し、相当かつ合理的なものを決定する必 要があり、市自身の手による配布、自治会や民間事業者などによる委 託配布、市の支所・出張所や民間施設等に備え置いて持ち帰りを期待 する備置配布など多様にある方法の中から、平成29年度も、従前の 実績に照らし、主たる配布方法として、自治会配布の方法を採用し、 その配布方法では配布が行き届かない世帯に対応するため、これと並 行して、マンション居住世帯などや10世帯以上のグループによる送 付希望に対応する一括送付、市の出先機関や民間協力施設などへの備 置配布、インターネットの市ホームページへの掲載などの補助的措置 を講じる方法を採用することを決定し 、「監査により認められた事実」 の(5 )のアで明らかなとおり、それを実施するため、連合自治会連絡協議会と本件委託契約を締結したものであり、本件委託契約による市 広報紙配布の方法だけによっては、市広報紙の全世帯配布は実現でき ていないものの、少なくとも、市内全世帯の約60パーセントに当た る自治会加入世帯合計108,453世帯と隣接する自治会未加入世
帯の一部5,984世帯には、民間事業者による配布対価の半額以下 の安価な費用負担で、迅速にして確実な配布を実現しており、これに 補助的方法により配布を受けた22,612世帯を加えると、全世帯 の約75パーセントを占める世帯にはその配布が行き渡る状況にある ことが認められる。
そして、「監査により認められた事実」の(8 )のウでも明らかなとおり、本件委託契約では、その配布対象を「会員など」と定め、自治会に加入している会員世帯を主としているものの、会員世帯以外の自治会未加入世帯に配布することを否定するものではなく、会員世帯以外でも、自治会組織で配布が可能な隣接の自治会未加入世帯には、できる限り配布するように協力してほしいとする要望を付する趣旨で
「など」という文言が付記されていることが認められ、平成29年4 月1日発行分市広報紙の配布実績を見ると、前述のとおり、現に、隣 接の自治会未加入世帯合計5 , 9 8 4 世帯にも市広報紙が配布され、その配布先を隣接の自治会未加入世帯にも拡げている事実があるこ とが、それを証左しているものと見ることができ、未だ全世帯配布の 実現には至っていないものの、本件委託契約は、市広報紙配布の一端 を担い、少なくとも、自治会加入世帯と隣接の自治会未加入世帯の一 部の分野では、相応の貢献をしているものと評価することができるも のであり、本件委託契約が市内の全世帯配布を否定したり、それを妨 げたりするものでないことは明白であるので、本件委託契約が、その 委託業務内容として、市広報紙の市内全世帯配布を取り決めておらず、受注者である連合自治会連絡協議会の履行以外の方法によるものを 含めても、市広報紙が市内全世帯の約75パーセントを占める世帯に 配布されているにすぎず、残る約25パーセントを占める世帯には市 広報紙が配布されていない状況が認められるとしても、それをもって 本件委託契約の締結及び履行が違法又は不当であると断じることは 到底できないものと言わざるを得ない。
市広報紙について、市内全世帯配布は、請求人主張のとおり、そう有るべきものではあるが、本件委託契約は、そもそもその配布の一端
を担うものにすぎず、本件委託契約による配布では、それが実現できていないとして、その結果を批難しても、その履行の結果は蓋し当然なことであり、それをもって本件委託契約の締結及び履行自体に非があるものとは、到底、判断できないものであろう。
従って、請求人の前記主張には、何ら理由がないものと言わざるを得ず、その主張は失当であると判断する。
(2 ) その他請求人が本件委託契約の締結及び履行が違法又は不当であると主張する理由について
次に、請求人は、様々な理由を挙示して、本件委託契約の締結及び履行が違法又は不当であると主張しているので、その理由ごとに検討する。
ア 市広報紙の配布について自治会未加入世帯を排除しているとの主張について
請求人は 、自 ら の「 市長への提言 」に 対する市長の回答書において、本件委託契約による市広報紙の配布先についての照会に対する回答と して、市長が「自治会未加入世帯に配布する契約とはなってはいませ ん」と答えていることなどを挙げて、市は、市民に「自治会に加入し ないと広報紙は配布しない」という不利益を与えることにより、自治 会加入を促進する施策をとり、 自治会加入の有無によって市民を違法・不当に差別しており、本件委託契約はそれを認容する内容となっ ているので、違法又は不当なものであると主張しているが、前述のと おり、本件委託契約は、市広報紙の主たる配布先を自治会加入者であ る会員としているものの、それに限定せず、受注者の連合自治会連絡 協議会側の過度の負担にならない範囲で、可能な限り、隣接地に居住 する自治会未加入世帯にも配布することを要望し、それを契約書面上 に盛り込むため 、配布先として 、単 に「会員」と限定的な記載をせず、 その後に「など」という文言を付したものであり、現に、その契約債 務の履行においても、前述のとおり、相当数の自治会未加入世帯にも 市広報紙を配布している事実があり、自治会加入の有無で市民を差別 する意向など全然ないものと認められ、市長の前記回答は、本件委託
契約では、その契約書面に自治会加入者を意味する「会員」とは明記 しているものの、その他に自治会未加入者又はそれを意味する名称は 特に明記していなかったため、それを端的に認め、自治会未加入世帯 に配布する契約にはなっていないと回答したにすぎないものであり、 請求人の主張には理由がないものと判断する。
イ 本件委託契約が、その基をなす仕様書の内容と異なっているので、違法又は不当であるとする主張について
請求人は、本件委託契約の基をなす仕様書において、業務内容として、「各世帯に配布する」と記載されており、当然、その意味は市内全世帯配布が定められていると解釈できるのに、それに基づく本件委託契約は、その配布先を自治会加入者に限定し、さらには前記仕様書は、「労働関係法規の遵守及び適正な雇用条件の確保」に努めることを求めているのに、本件契約書には、その旨の約定が明記されていないことを挙げて、本件委託契約が違法又は不当なものであると主張しているが、前記仕様書が業務内容として記載している「各世帯に配布する。」という意味は、世帯ごとに配布するという業務内容を示したものにすぎず、どの範囲の世帯に何部配布するのかという範囲や数量については特定しておらず、それは契約に委ねられているものと判断するのが相当であり、本件委託契約の内容が、前記仕様書に定める条件に違反するものとは認められず、この点に関する請求人の主張には理由がないものと言わなければならない。
また、労働関係法規の遵守等の約定に関する主張については、仕様書に請求人主張に係る条項が記載されているのに、本件委託契約書には、その条項が記載されていないことは事実であるが、本件委託契約に係る市広報紙の配布については、受注者側の各自治会において、その会構成員である会員が直接に配布業務を行い、 他の者を雇用して、その者に配布業務を行わせることは全然予定しておらず、現に、本件委託契約に係る債務である市広報紙配布業務は、 各自治会において、会員だけが直接にその配布を行っているのであり、そもそも労働者を雇用することを前提とする前記約定を本件委託契約書に盛り込むこ
とは必要がなかったため、その約定を盛り込まなかったものにすぎず、これによって本件委託契約の効力に何ら消長を来すものではな いと 思料されるので、この点に関する請求人の主張も何ら理由がないもの と判断する。
ウ 本件委託契約の締結について、受注者である連合自治会連絡協議会が会に属する単位自治会の会員から承諾を得ていないので、連合自治 会連絡協議会には契約締結の権限はなく、その効力は否定されるべき であるとの主張について
請求人は、本件委託契約の締結について、受注者である連合自治会 連絡協議会は、これに属する各単位自治会の会員の承諾を得ておらず、契約締結の権限がなかったので、 その効力はないと主張しているが、市は、契約の相手方である連合自治会連絡協議会の正当な代表者と交 渉し、その合意を得て契約締結に及んでいるものであり、その手続に おいて、何ら過誤もなく、連合自治会連絡協議会に属する各単位自治 会の構成員により、滞りなく誠実に配布の履行が成され、それについ て自治会員の誰からも異議が述べられていない事実が認められるの で、本件委託契約は、その締結手続のみならず内容においても、違法 又は不当の誹りを受ける点は全然ないものと思料され、請求人の主張 は、単に受注者である連合自治会連絡協議会内部の問題という外はな く、何ら理由がないものと判断する。
以上のとおり、請求人において、本件委託契約の締結及び履行が違法又は不当であると主張する理由は、いずれも是認し難く、失当であると言わざるを得ない。
よって、本件措置請求には理由がないものと判断する。
第5 市長に対する監査委員の意見
本件請求についての判断は、前記のとおりであるが、この際、この監査結果を踏まえて、以下のとおり監査委員の意見を付することとする。
本件委託契約の締結及びその履行が違法又は不当であるという請求人の主張については、監査において、到底、それを是認できるものではないと
判断し、その措置請求を認めなかったが、その背景事情には、市が市広報紙の配布について現行の配布方法をとる限り、市内の自治会加入世帯には市広報紙が確実に個別配布されるのに、自治会未加入世帯の大半にはそれが配布されないという事実が現存し、同じ市民でありながら、自治会加入の有無により、市広報紙の配布を受けるものと受けないものが生じる結果を招来し、しかも、市広報紙の配布を受けない世帯の数が、全世帯数の約
25パーセントを占めるという看過し難い状況にあることが認められるので、早急にこれを是正する必要があると言わざるを得ず、市長において、可及的速やかに、市広報紙の全世帯配布の実現に向けて、然るべき措置を講じることを要望する。
以上