Contract
第34 使用貸借
1 使用貸借の成立(変更)民法第 593 条
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその引渡しを受けた物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
(改正前民法593条)
使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
使用貸借を諾成契約とするものである。そのため、合意によって
・貸主には、借主に物を引き渡す義務及びそれを借主に無償で使用収益させる義務
・借主には、契約終了時に目的物を返還する義務が、それぞれ課されることになる。
なお、消費貸借と異なり、書面等によることを要しない(書面化した場合において解除要件に影響する)。
2 使用貸借の終了(変更)民法第 597 条
(1) 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了した時に終了する。
(2) 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
(3)使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
(改正前民法597条)
1 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
2 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
3 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。
改正前民法597条1項及び同2項を実質的に維持したものである。
なお、2項但し書き及び3項は使用貸借の終了時期の定めではなく、借主による使用貸借の解除と位置づけられることから、別項に規定することとなったものである。
3 使用貸借の解除(変更)民法第593条の2
貸主は、借主が借用物を受け取るまで、解約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。
民法第598条
(1)貸主は、前条第2項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
(2) 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
(3) 借主は、いつでも契約の解除をすることができる。
(改正前民法597条)
1 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
2 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
3 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。
第593条の2、及び第598条1項及び2項は貸主の解除権を規定するものである。
第593条の2は、目的物の引渡前であれば、貸主は解除できる。無償の合意は軽 率に行われることが少なくなく、契約の拘束力を弱めて貸主の保護を図る必要がある。しかし、書面によって使用貸借契約が締結された場合には、むしろ借主の借りる権利 を尊重すべきものである。
第598条1項は、改正前民法597条2項但し書きを維持するものである。ただし、使用収益の終了は、契約終了事由として当然に契約の終焉をもたらすものの、使用収益に足りる期間の経過は、当然終了事由ではない点が異なる。
同条3項は借主の解除権を規定するものである。
改正前民法は、借主がいつでも使用貸借を解除できることを規定していなかったが、およそ異論がないため、明文化することとしたものである。
そのため、借主は使用貸借の期間を定めた場合にその期間満了前でも解除できる。また、期間を定めず使用及び収益の目的を定めた場合に使用収益を終える前であっても解除できることとなる。
4 使用貸借終了後の収去義務及び原状回復義務(変更)民法第 599 条
(1) 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
(2) 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
(3) 借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
(改正前民法598条)
借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。
第1項は、借主の収去義務を規定したものである。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、収去義務を負わないことに異論がないため、そのことを明らかにした。
第2項は、改正前598条が規定していた借主の収去権を規定したものである。 第3項は、改正前598条が規定していた原状回復義務を規定したものである。目
的物に生じた損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、借主は原状回復義務を負わないことに異論がないため、そのことも明らかにした。
5 損害賠償の請求権に関する期間制限(変更)民法第 600 条
(1)契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。
(2)民法第 600 条に規定する損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から 1 年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(改正前民法600条)
契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。
民法総則における消滅時効の完成猶予の事由を、使用貸借に追加するものである。なお、借主が支出した費用の償還については、適用がない。