Contract
匿名組合の法務・会計・税務
Ⅰ.匿名組合とは
匿名組合契約とは、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約する各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約する契約である(商法535)。
出資は財産出資のみ認められる。営業者と組合員は、個人であっても法人であってもよい。匿名組合は営利事業のみを、その目的とする。
匿名組合では、その財産は営業者に所有に帰属する。営業者の固有財産と匿名組合財産の分別はなく、営業者の倒産は匿名組合の倒産ともなる。匿名組合員は有限責任であり、出資額以上の責任を負わない。
営業者と匿名組合員との関係は、会社とその有限責任社員との関係に類似しており、匿名組合の取引相手は営業者のみを認識するのであって、匿名組合員を認識しない。匿名組合員は営業者に対して配当を期待する投資家である。
匿名組合の根拠法は商法535条から542条である。匿名組合契約関係を図示すれば次のようになる。
匿名組合員
取引者
営業者 |
匿名組合財産 |
固有財産 |
取引
匿名組合員
財産出資
損益・財産分配
Ⅱ.匿名組合の法務
1.匿名組合契約の成立
匿名組合契約は、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約する各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって成立する。実際に出資を履行したかどうかは、契約成立には問題とはならない。
登記や登録は不要である。
匿名組合契約は、営業者と個々の組合員との間の個別の契約であって、匿名組合員相互間の契約関係はない。
匿名組合出資は金銭出資と特定物出資だけが認められる(商法536②)。
2.匿名組合の業務執行
匿名組合の業務執行は営業者のみが行い、営業者は匿名組合を代表する。
匿名組合員は第三者に対し、権利義務を有しない(商法536③④)。ただし、匿名組合員が、自己の氏若しくは氏名を営業者の商号中に用いること又は自己の商号を営業者の商号として使用することを許諾したときは、その使用以後に生じた債務については、営業者と連帯してこれを弁済する責任を負うことになる(商法537)。
匿名組合員は、営業年度の終了時において営業者の営業時間内に、営業者の業務及び財産の状況を検査することができる(商法539①)。また、各匿名組合員は、重要な事由があるときは、いつにても、裁判所の許可を得て、営業者の業務及び組合財産の状況を検査することができる(商法539②)。
3.組合財産の帰属
匿名組合財産は営業者に帰属する(商法536①)。営業者は匿名組合財産の他、固有財産を有するが、匿名組合財産と固有財産とが法的に分別されることはない。営業者固有の事由による倒産は、匿名組合財産にも及ぶ。
匿名組合員は、財産の分配又は出資の返還以外には、匿名組合財産に対する何らの権利をも有しない。
4.損益分配と財産分配
組合員当事者への損益分配の割合及び方法は、各匿名組合契約に基づくことになる。 匿名組合契約で損益分配割合を定めなかった場合は、民法上の組合の規定が類推適用さ
れる。すなわち、組合員当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は、各組合員の出資の価額に応じて定める(民法674①)、ことになる。
匿名組合の損益は、組合に帰属するのでなく、営業者と匿名組合員に直接的に帰属する。従って、営業者は各事業年度の匿名組合財産及び匿名組合損益を確定させた後、各組合員に一定の割合に応じて、財産及び損益を帰属させる手続が必要となる。
財産分配とは具体的な財産を組合員に対し帰属させる手続である。出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当(財産分配)を請求することができない(商法538)、とされている。従って、利益剰余金の範囲内でのみ財産分配は可能である。
5.匿名組合員の責任
匿名組合の組合員は、各匿名組合員の出資の範囲内でのみ責任を負う。
ただし、匿名組合員が、自己の氏若しくは氏名を営業者の商号中に用いること又は自己の商号を営業者の商号として使用することを許諾したときは、その使用以後に生じた債務については、営業者と連帯してこれを弁済する責任を負うことになる(商法537)。
6.組合からの脱退及び終了
営業者および匿名組合員は次の①又は②の手続により、匿名組合を任意に脱退することができる。
① 6ヶ月前の予告をもって、事業年度の終わりにおいて匿名組合契約の解除をすることができる(商540①)。これを「予告解除」と呼ぶ。
適法な告知があれば、事業年度末に当然に解約の効果が生じ、他の意思表示を必要としない。
② やむを得ない事由がある場合は、営業者および匿名組合員は告知によりいつでも匿名組合契約の解除をすることができる(商540②)。これを「即時解除」と呼ぶ。
「やむを得ない事由」とは、ア.匿名組合員の出資義務の懈怠、イ.営業者の利益分配の懈怠、ロ.出資金を契約に違反して利用した場合、など著しく匿名組合契約に違反した場合をいう。
その他、次のアからウに掲げる事由によって、匿名組合契約は当然に終了する(商54
1)。
ア 匿名組合の目的である事業の成功又はその成功の不能
イ 営業者の死亡又は営業者が後見開始の審判を受けたこと。 ウ 営業者又は匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたこと。
なお、匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければならないが、出資が損失によって減少したときは、その残額を返還すれば足りるものとされる(商542)。
Ⅲ.匿名組合の会計
1.匿名組合の財務報告
匿名組合の財務報告に関する法令や規則はない。
商法上では組合財産は営業者に属するのであるが、会計上においては、組合財産および組合損益は営業者及び各組合員に直接的に帰属する。従って、営業者及び組合員に帰属する財産および損益を定期的に確定し、各組合員に報告する手続が必要となる。
組合構成員は個人または法人であり、その会計上および税務上の必要から、1年以下の会計年度を定めることになる。仮に組合員が上場企業である場合は、四半期決算の関係上、最低3ヶ月毎の財務報告が必要ともなろう。また、財務報告毎の決算確定(組合総会での承認)は必要ではないが、1年に1度、確定した時期での決算確定(組合総会での承認)およびその各組合員への財務報告は必要である。
報告時期は、組合員の会計及び税務処理の都合上、対象会計期間の終了後1ヶ月以内のできるだけ早い時期となるだろう。
2.匿名組合の財務諸表
匿名組合の作成する財務諸表の様式に関する法令・規則はなく、その様式は全く任意である。
有限責任事業組合(LLP)の場合の財務諸表(貸借対照表・損益計算書)の法定様式を参考までに(1)に掲げる。匿名組合についても、この財務諸表様式で十分であろうと思う。
また、(2)において、営業者の財務諸表を参考までに掲げる。
(1)匿名組合の財務諸表
ア.匿名組合貸借対照表の様式
資産の部 | 負債の部 |
Ⅰ 流動資産 1 現金及び預金 2 受取手形 3 売掛金 4 売買目的有価証券 ------ | Ⅰ 流動負債 1 支払手形 2 買掛金 3 短期借入金 ------ |
Ⅱ 固定資産 1 有形固定資産 2 無形固定資産 3 投資その他の資産 | Ⅱ 固定負債 1 長期借入金 2 引当金 ------ |
純資産の部 | |
Ⅲ 繰延資産 | Ⅰ 出資金 Ⅱ 評価・換算差額等 Ⅲ 累計利益金又は累計損失金 1 前期繰越利益金(損失金) 2 当期純利益(損失) Ⅳ 累計分配金(△) |
資産合計 | 負債及び純資産合計 |
イ.匿名組合損益計算書の様式
Ⅰ 売上高
Ⅱ 売上原価
売上総利益(損失)
Ⅲ 販売費及び一般管理費営業利益(損失)
Ⅳ 営業外収益
Ⅴ 営業外費用
経常利益(損失)
Ⅵ 特別利益
Ⅶ 特別損失
当期純利益(損失)
匿名組合契約に基づく損益分配
(自:平成*年*月*日 至:平成*年*月*日)
ウ.匿名組合契約に基づく損益分配報告書
出資者名 | 出資金額 | 損益分配額 |
貴社 | ****** | **** |
その他の匿名組合出資者 | ****** | **** |
営業者 | - | **** |
合 計 | ****** | **** |
(2)営業者の財務諸表
ア.営業者の貸借対照表の様式
資産の部 | 負債の部 |
Ⅰ 流動資産 | Ⅰ 流動負債 1 支払手形 2 買掛金 3 短期借入金 ------ |
1 現金及び預金 | |
2 受取手形 | |
3 売掛金 | |
4 売買目的有価証券 | |
------ | |
Ⅱ 固定資産 | Ⅱ 固定負債 1 長期借入金 2 引当金 3 長期預り金 ------ |
1 有形固定資産 | |
2 無形固定資産 | |
3 投資その他の資産 | |
Ⅲ 繰延資産 | 純資産の部 |
Ⅰ 出資金 Ⅱ 評価・換算差額等 Ⅲ 累計利益金又は累計損失金 1 前期繰越利益金(損失金) 2 当期純利益(損失) Ⅳ 累計分配金(△) | |
資産合計 | 負債及び純資産合計 |
(注)「長期預り金」は匿名組合員からの出資金であり、その額は匿名組合貸借対照表の純資産の額と一致する。
イ.営業者の損益計算書の様式(法人の場合)
Ⅰ 売上高
Ⅱ 売上原価
売上総利益(損失)
Ⅲ 販売費及び一般管理費営業利益(損失)
Ⅳ 営業外収益
Ⅴ 営業外費用
経常利益(損失)
Ⅵ 特別利益
Ⅶ 特別損失
匿名組合契約に基づく損益分配額前の税引前当期損益損益分配額
税引前当期利益(損失) 法人税・住民税及び事業税当期純利益(損失)
(注)「匿名組合契約に基づく損益分配額前の税引前当期損益」と「損益分配額」は、匿名組合の営業者特有の表示科目である。その差額が、営業者固有の税引前損益と匿名組合損益のうち営業者への損益分配額、の合計額を示す。
3.匿名組合員の会計処理
匿名組合員の会計処理には、次の3方法が認められている(「金融商品会計に関する実務指針132、308」(会計制度委員会報告第14号)日本公認会計士協会会計制度委員会)。
① 匿名組合の財産の持分相当額を出資金(証券取引法第2条第2項により有価証券とみなされるものについては有価証券)として計上し、匿名組合の営業により獲得した損益の持分相当額を当期の損益として計上する方法。ただし,匿名組合,パートナーシップに関し有限責任の特約がある場合にはその範囲で損益を認識する。
② 組合財産のうち持分割合に相当する部分を出資者の資産及び負債等として項目毎に貸借対照表に計上し、損益計算書についても同様に処理する方法。
③ 貸借対照表について持分相当額を純額で、損益計算書については損益の項目毎に持分相当額を計上する方法。
当該実務指針では、匿名組合員が有限責任であること、匿名組合員が出資者が単なる資金運用として考えている場合が実務的に多いことから、処理の都合上、上記のうち①を原則としている。
しかし、匿名組合員が実質的に匿名組合を運営している場合には、②や③の方法がより実態を示し、適正であると考えられる。
Ⅳ.匿名組合の税務
1.構成員課税(パス・スルー課税)の概要
匿名組合契約に基づいて営まれる組合事業に係る所得は、任意組合等の場合と異なり、匿名組合員に直接帰属せず、いったんは営業者に帰属することとなり、匿名組合員に対しては、営業者から分配されるべき利益について課税されることになっている。
ただしこのことは、匿名組合の損益は原則として当該組合に止まることなく、その構成員である営業者及び匿名組合員に対し分配割合に応じて直接帰属することと、税務上の効果としては同じとなる。
ただし、匿名組合員が個人である場合、この構成員課税の課税区分は原則として雑所得とされており、雑所得がマイナスであった場合でも他の所得との間の損益通算は生じないことになっている。
また、匿名組合の法人の組合員については、税務上、損失が一定基準額を超える金額について、損金不算入といった特例が置かれている。
2.匿名組合における税務処理
(1)匿名組合への課税
匿名組合自体には課税されないため、匿名組合としての申告は不必要である。営業者としての申告に匿名組合の申告が含まれことになる。
ただし、組合構成員の税務処理のために、各組合員に対し税務処理上の資料を提供する必要がある。
(2)匿名組合員への分配割合
ア.匿名組合員が個人である場合
匿名組合員への分配割合に関する所得税法上の規定はない。
よって、商法及び民法上の規定及び匿名組合契約に基づくことになる。
イ.匿名組合員が法人である場合
匿名組合員への分配割合に関する法人税法上の規定はない。
よって、商法及び民法上の規定及び匿名組合契約に基づくことになる。
3.個人匿名組合員における税務処理
(1)各種所得の計算
所得税基本通達36・37共-21で次のように規定している。
匿名組合契約を締結する者で当該匿名組合契約に基づいて出資をする者が当該匿名組合契約に基づく営業者から受ける利益の分配(財産分配)は雑所得とする。つまり、個人匿名組合員においては、財産の分配時に雑所得として認識され、負の所得は生じないこととなる。
ただし、匿名組合員が当該匿名組合契約に基づいて営業者の営む事業に係る重要な業務執行の決定を行っているなど組合事業を営業者と共に経営していると認められる場合には、当該匿名組合員が当該営業者から受ける利益の分配は、当該営業者の営業の内容に従い、事業所得又はその他の各種所得とする。
(注)1 匿名組合契約に基づく営業者から受ける利益の分配とは、匿名組合員が当該営業者から支払を受けるものをいう(出資の払戻しとして支払を受けるものを除く。)。
(注)2 営業者から受ける利益の分配が、当該営業の利益の有無にかかわらず一定額又は出資額に対する一定割合によるものである場合には、その分配は金銭の貸付けから生じる所得となる。
なお、当該所得が事業所得であるかどうかの判定については、所得税基本通達27―
6を参照のこと。
(3)匿名組合の個人組合員への損益の帰属時期
匿名組合の組合員の組合事業からの財産の分配額は、その確定した年分の各種所得の金額の計算上、総収入金額又は必要経費に算入する。
4.法人匿名組合員における税務処理
(1)法人匿名組合員における益金及び損金の計算
法人税法基本通達14―1―3に次のように規定されている。
法人が匿名組合員である場合におけるその匿名組合営業について生じた利益の額又は損失の額については、現実に利益の分配を受け、又は損失の負担をしていない場合であっても、匿名組合契約によりその分配を受け又は負担をすべき部分の金額をその計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。
つまり、個人が匿名組合員である場合は、現実の財産分配の額を所得とするのであるが、法人が匿名組合員である場合には、計算期間の損益が法人匿名組合員の各事業年度の所得となる。
ただし、次の(2)以下の特例が置かれている。
(2)匿名組合損失の損金不算入ア.特定組合員
匿名組合の法人組合員のうち「特定組合員」については、法人税法上、次のイ及びウの損金算入制限規定が設けられている。
「特定組合員」とは、次の①と②のいずれにも該当しない組合員である(措置令39の31②)。
① 匿名組合事業に係る重要な財産の処分若しくは譲受け又は組合事業に係る多額の借財に関する業務(以下「重要業務」という。)の執行の決定に関与し、かつ、当該重要業務のうち契約を締結するための交渉その他の重要な部分(以下「重要執行部分」という。)を自ら執行する組合員(既に行われた重要業務の執行の決定(新たにその組合契約に係る組合員となった者及び当該組合契約に係る組合員たる地位の承継により当該組合契約に係る組合員となった者については、これらの組合員となった後に行われたものに限る。)に関与せず、又は当該重要業務のうち重要執行部分を自ら執行しなかったもの及び次号に掲げるものを除く。)
② その匿名組合員のすべてが組合契約が効力を生ずる時(新たに当該組合契約に係る組合員となった者及び当該組合契約に係る組合員たる地位の承継により当該組合契約に係る組合員となった者については、これらの組合員となった時)から組合契約に定める計算期間で既に終了したもののうち最も新しいものの終了の時まで組合事業と同種の事業(当該組合事業を除く。)を主要な事業として営んでいる場合におけるこれらの組合員
イ.組合損失全額の損金不算入
組合事業の最終的な損益の見込みが実質的に欠損となっていない場合において、当該組合事業の形態、組合債務の弁済に関する契約、損失補てん等契約その他の契約の内容その他の状況からみて、当該組合事業が明らかに欠損とならないと見込まれるときは、組合損失の全額が当該組合の特定組合員である法人において損金不算入とされる(措置法67の12①かっこ書、措置令39の31⑦)。
「明らかに欠損とならないと見込まれるとき」に該当するかどうかは、当該組合事業の形態、組合債務の弁済に関する契約、損失補てん等契約その他の契約の内容その他の状況から判断するのであることから、例えば、損失のうち少額の求償を受ける可能性があることや、相対的に発生の蓋然性の低い事由により生ずる損失が補てんされないこと等の事実のみをもって、当該組合事業が「明らかに欠損とならないと見込まれるとき」には該当しないこととなるものではない(措置通達67の12-4)。
ウ.組合損失超過額の損金不算入
匿名組合契約を締結している特定組合員である法人の当該事業年度の組合事業(当該匿名組合契約に基づいて営まれる事業をいう。)による損失の額が当該法人の当該組合事業に係る出資の価額を基礎として計算した金額(「調整出資金額」という。)を超える場合には、その超える部分の金額に相当する金額(「組合損失超過額」という。)は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない(措置法67の13①)。調整出資金額とは、「当事業年度末までの出資累計額+前事業年度末までの組合利益
積立金額-当事業年度末までの財産分配累計額」、をいう(措置令39の32②)。
(3)組合損失超過合計額の損金算入
確定申告書等を提出する法人が、各事業年度において組合損失超過合計額を有する場合には、当該組合損失超過合計額のうち当該事業年度の当該法人の組合事業(当該組合損失超過合計額に係るものに限る。)による利益の額に達するまでの金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する(措置法67の13②)。
(4)確定申告書への明細書の添付
匿名組合契約を締結している組合員である法人は、その提出する法人税確定申告書に、
「組合事業に係る組合損失額等の損金不算入又は組合損失超過合計額等の損金算入に関する明細書」(「別表9(4)」)を添付しなければならない(措置令39の32⑨⑩)。
5.営業者における税務処理
(1)営業者が個人である場合
営業者が匿名組合員に分配する利益の額(財産分配の額)は、当該営業者の当該組合事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入する(所得税基本通達36・37共―2
1の2)。
(2)営業者が法人である場合
法人が営業者である場合における当該法人の当該事業年度の所得金額の計算に当たっては、匿名組合契約により匿名組合員に分配すべき利益の額又は負担させるべき損失の額を損金の額又は益金の額に算入する(法人税基本通達14―1―3)。
6.匿名組合における消費税の取扱い
消費税法上、匿名組合は営業者の事業であって、営業者において消費税の申告、納税を行う。
7.匿名組合における源泉所得税の取扱い源泉徴収義務は営業者が負う。
匿名組合員に対する現実の財産分配額の20%の源泉所得税が課せられる(所得税法2
11・212、所得税令298⑧)。
従来、匿名組合員が9人以下である場合は、営業者における財産分配額への所得税源泉徴収は不要であったが(所得税令旧298⑧)、平成20年1月1日以後に支払われる財産分配については、当該少人数源泉徴収不要制度は廃止され、匿名組合員の人数にかかわらず所得税源泉徴収を行うことと改正されている。
Ⅴ.匿名組合に関する金融商品取引法上の取扱い
匿名組合契約のうち、次に掲げる要件のすべてに該当する以外の出資については、証券取引法上、有価証券とみなされる(金融商品取引法2②五、金融商品取引法施行令1の3の2)。
① 出資対象事業に係る業務執行が全ての出資者の同意を得て行われるものであること。
② 出資者の全てが次のいずれかに該当すること。イ 出資対象事業に常時従事すること
ロ 特に専門的な能力であって出資対象事業の継続の上で欠くことができないものを発揮して当該出資対象事業に従事すること
このみなし有価証券(「第2項有価証券」ともいう。)に該当する場合は、組合出資についても金融商品取引法が適用されることになり、当該組合出資を業として売買等をするには、「第二種金融商品取引業」として登録されている金融商品取引業者でなくてはならない(金融商品取引法28②、29)、といったような取扱い上の注意が必要となる。
ただし、みなし有価証券とされる匿名組合への出資に対する一般公衆への情報開示規制については、流動性が低いため直接の説明義務で対応可能という理由から、匿名組合が主として有価証券投資事業を行っている場合を除き、適用除外とされており、従って有価証券届出書や通知書等の提出は原則免除となっている(金融商品取引法3二)。