Contract
くらしの法律 第 59 回
土地賃貸借の更新
建物所有目的に特別法
民法によれば、賃貸借の存続期間は最長 20 年とされ、期間満了により賃貸借は終了しますが、合意によ
り自由に契約を更新することができ(民法 604 条)、自動更新をあらかじめ契約条項に定めておくこともできます。期間満了後も借主が使用収益を継続しているのを認識しながら貸主が異議を唱えなかった場合は、更新が推定されます(民法 619 条①)。
土地の賃貸借は、家を建てるためであったり、一時的な資材置き場や駐車場であったりと、その目的、態様は様々ですが、特に建物所有を目的とする土地の賃貸借については、その生活の基盤としての意義に着目し、一般的に弱い立場にあるとされる借主の地位を強化することを基本的な目的とした借地借家法という特別法があり、存続期間、契約更新について民法の規定が大きく修正されています。
借地借家法は、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権のことを借地権と称しています。借地権の存続期間は 30 年以上とされ(借地借家法 3 条)、更新後の存続期
間は最初が 20 年以上、2 回目以降は 10 年以上とされます(同 4 条)。
借地権の存続期間の満了後、借主が引き続き借地を使用、収益している場合に、貸主がそれを知りながら異議を述べないときは、契約の更新があったものとみなされます
(同 5 条 2 項)。期間満了の際に借地上に建物がある場合、借主が更新を請求したとき、貸主自ら使用する必要があるなど正当事由をもって遅滞なく異議を述べない限り契約は更新されたものとみなされます(同 5 条 1 項)。これを法定更新と呼びます。
正当事由が認められるか否かは、①貸主・借主が土地の使用を必要とする事情、②借地に関する従前の経過、③土地の利用状況、④貸主が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換に借主に対して財産上の給付(いわゆる立退料や移転料など)をする申出をした場合はその申出を考慮して判断します(同 6 条)。従前の経過とは契約に至るまでの経過や、権利金支払いの有無及び額、相場と比較しての賃料の高低などのことです。財産上の給付は金銭に限らず代替地の提供なども含みます。①が主たる要素として考慮され、②~④は従たる要素と考えられます。貸主に土地使用の必要性が認められないような場合に、立退料を支払っただけで正当事由が認められるというものではありません。