1.はじめに ・・・P 1
福岡市設計変更ガイドライン
(建築・設備工事編)
平成22年4月福岡市
目 次
1.はじめに ・・・P 1
2.請負契約の原則 ・・・P 1
3.設計変更とは ・・・P 2
4.設計変更の要件 ・・・P 2
5-1 手順に関する留意事項 ・・・P 3
(1)協議・回答は迅速に行うこと
(2)設計変更に係る協議・回答は書面で行うこと
(参考)設計変更の手順 ・・・P 5
5-2 要因に関する留意事項 ・・・P 6
(1)施工条件の変更がないものは対象外
(2)受注者の都合(責)によるものは対象外
(3)工事一時中止を要する場合は対象
5-3 その他の留意事項 ・・・P 6
(1)片務的意識の排除
(2)総合評価方式における技術提案等は原則対象外
(3)参考数量内訳書の取り扱い
6.契約条項と要因別の具体例 ・・・P 7
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1 はじめに
公共工事の発注にあたっては,個別に地形,地質,天候,地下埋設物,壁内部の配管などの自然的あるいは人為的な施工条件や騒音,振動,交通の確保等の社会的な制約条件を踏まえ,必要な調査,検討を行ったうえで発注していますが,それでも予見できない事態が発生し,工事内容の変更(設計変更)が避けられない場合があります。
建設工事請負契約書には,第18条(条件変更等)に,施工条件が変わった場合等の確認手続き,設計図書の変更等について定めていますが,変更手続きの認識不足や,協議内容の曖昧さなど様々な理由から,設計変更が円滑に行われていない場合があるとの指摘もあります。
そこで,本市では建設工事請負契約書を踏まえ,受注者・発注者双方の留意事項や具体例を明示し,設計変更に係る手続きの適正化・迅速化を図るため,「福岡市設計変更ガイドライン」を作成しました。本市発注工事では,本ガイドラインに基づき,請負契約の原則をふまえて,適切な手順を踏み,受発注者双方 が対等な立場で迅速な協議・回答を行うことによって,設計変更手続きのスピードアップを図ります。
2 請負契約の原則
建設業法では“建設工事の請負契約の原則”として「建設工事の請負契約の当事者は,各々の対等な立場における合意に基づいてxxな契約を締結し,x xに従って誠実にこれを履行しなければならない。(第18 条)」と定めています。
そのためには,設計変更において従前より問題となってきた片務性を解消し,受・発注者間で共に協力しながら,市民に対し良好な社会資本を提供するという姿勢が大切です。
イメージ
発
受
建設業法及び
注
注
建設工事請負契約書の遵守
者 者
パートナーシップの構築
3 設計変更とは
設計変更とは,原則として設計図書に記載されている工事目的物の内容(形状,寸法,材質,規格,数量)及び施工方法・条件等に変更が生じる場合,契約図書の規定に従い,設計図書の一部を変更することをいいます。
注)「契約図書」:「契約書」,「設計図書」
「設計図書」:「特記仕様書」,「図面」,「共通仕様書」,「現場説明書」,
「現場説明に対する質疑回答書」
※ 数量内訳書は設計図書には含まれません。
4 設計変更の要件
設計変更に係る「要因」及び「手順」ついて,通常つぎの要件が必要です。
設計変更の要件 | 要件を満たさない例 | |
手 順 | 書面による 設計変更協議 書面による 施工内容・費用負担の合意 | ○ 発注者と協議を行っていない場合 ○ 協議が口頭のみの場合 (緊急時を除く) ○ 受注者が独断で施工した場合 等 |
x x | ※「5-1 手順に関する留意事項」を参照 | |
要 因 | (1)設計図書に関するもの (2)現場状況との相違に関するもの (3)発注者の意思によるもの (4)工事の一時中止を要するもの ※「6 契約条項と要因別の 具体例」を参照 | ○ 受注者の都合 (責)によるもの 等 ※「5-2 要因に関する留意事項」を参照 |
5 設計変更にあたっての留意事項
5-1 手順に関する留意事項
(1)協議・回答は迅速に行うこと
① 発注者は多様な条件を検討したうえで迅速に回答すること
発注者は,技術的な制約条件だけでなく,多様な条件を検討したうえで受注者に回答する必要があります。
(例)□予算の確保はできているか。
□工事目的と関係のない工種追加となっていないか。
□当初契約の施工場所以外での施工の追加となっていないか。など
また,回答の遅れは受注者にとって,即コストアップにつながることを十分に認識し,“ワンデーレスポンス”を確実に実践し,発注者としての迅速な判断,意思統一のため,同僚や上司,他所属への相談,報告等を早期に実施したうえで回答する必要があります。
なお,監督員が不在の場合は,回答を迅速にするため,総括監督員による対応など組織的対応が必要です。
<参考>ワンデー
レスポンス PRポスター
<参考>ワンデーレスポンスについてはホームページにも掲載しています。
福岡市ホームページ > ビジネス情報 > 契約・入札・公共工事・公募 > 公共工事の技術情報 > 工事監督におけるワンデーレスポンスの実施について
② 受注者は発注者と迅速に協議を行うこと
受注者が設計変更に該当する事実を発見したときは,その旨を直ちに発注者に通知し,確認を求めてください。
※ 設計図書の作成にあたっては,発注者において十分精査に努めていますが,受注される側においても入札前の見積時や施工前に入念な精査をして疑義があれば,質問書(質疑書)等により早期の解消に努めていただきますようお願いします。
(2)設計変更に係る協議・回答は書面で行うこと
書面を取り交わさずに施工することで,後にトラブルが生じるおそれがあるため,受発注者間で変更内容及び費用負担について,双方合意の上で協議書を取り交わし,施工を行ってください。(受発注者双方で協議を行ってください。受注者が独自の判断で施工した場合は変更の対象となりません。)
急を要する場合においても,電子メール等により,やりとりの形を残してください。(ただし,危険回避など特に緊急を要する場合を除きます。)
① 発注者から協議する場合
発注者側から設計変更の協議を行う場合は,協議書に添付する図面等の資料は発注者側で作成します。
② 受注者から協議する場合
※ 設計変更に当たっては,発注者も外部への説明責任がある(変更の正当な理由が必要となる)こと,また,迅速な回答への判断材料とするために資料等を求めること等について,ご理解ください。
受注者側から設計変更の協議を行う場合は,発注者は安全性や品質及び経済性等の確認を行う必要があるため,協議書に添付する図面やカタログ,計算書などの数値的根拠等の資料は受注者側で作成してください。
口頭のみの協議は,トラブルの元となるため,設計変更に係る協議,指示,承諾等は書面により行うこと。
着 工
入 札
受注者が適切な施工ができるよう,設計図書に品質・規格・施工条件等を明示する。
設計図書作成
発 注 者
受 注 者
変更通知に対する資料作成
発注者の意思による変更通知
独断で施工した場合,設計変更の対象にならないため,変更契約成立後(もしくは書面による協議成立後)に施工すること。
回答通知に対する承諾
現場状況の変化など,施工内容等を見直す必要が生じた場合,受注者に対し,見直し内容や費用負担等に関し,迅速かつ的確な回答を書面により行う。
協議に対する回答通知
設計図書と現場状況が異なるなどの状況が発生した場合,速やかに発注者へ書面にて通知し,確認を請求する。
現場状況との相違に関する協議
・確認事項の回答,設計思想説明
・変更が生じる場合,内容等に関する協議を行う。
照査に対する回答通知
適切な施工のため,着手前に設計図書を照査し,確認用資料を作成し,発注者に確認する。
設計図書の照査
入札時に設計図書に疑義があれば,質問書(質疑書)等で発注者に確認し早期に解消する。
質問書(質疑書)による条件確認
回答通知に対する承諾
回答通知に対する承諾
質問書(質疑書)に対する回答
入 札 前
着 工 前
x x 中
(参考)設計変更の手順
x 約 変 更 | 変更設計図書作成 上記で双方合意した事項に基づき変更設計図書を作成 | |||
契約変更の | 手続き | |||
5-2 要因に関する留意事項
(1)施工条件の変更がないものは対象外
工事を完成する手段(仮設,施工方法等)については,特記仕様書等に特別 の定めがある場合を除いて,本来受注者が自由に施工することが出来るもので,通常設計変更の対象とはなりません。
ただし,現場において施工上の条件が変わった場合(地中から障害物が出てきた場合など)は,設計変更の対象となります。
発注者は,設計図書作成時にできるだけ明確に条件明示を行い,設計変更に対応できるようにすることが必要です。
(2)受注者の都合(責)によるものは対象外
受注者の都合で,設計図書よりグレードが高い製品を現場で使用した場合などは,設計変更の対象となりません。
(3)工事一時中止を要する場合は対象
受注者の責によらず,工事を一時中止する場合は,設計変更(工期及び内容によっては請負代金)の対象となります。
5-3 その他の留意事項
(1)片務的意識の排除
「2 請負契約の原則」に基づき,発注者という優位的立場を利用した無報酬業務(いわゆる「サービス工事」)の強要など,受注者に対する理不尽な要求は行わないよう注意してください。
(2)総合評価方式における技術提案等は原則対象外
総合評価方式における技術提案等は,落札者の決定要素として重要なものであることから,原則として設計変更の対象となりません。ただし,受注者の責によらず,技術提案等が履行できない場合を除きます。
(3)参考数量内訳書の取り扱い
建築・設備工事では,参考数量内訳書は参考としてお渡ししており,設計図書に含まれませんので,設計図書と数量内訳書の相違は設計変更の対象にはなりません。
入札参加者や受注者は,入札前の見積時や施工前に入念に精査されたうえで,疑義があれば質問書(質疑書)等により早期の解消に努めて下さい。
6 契約条項と要因別の具体例
建設工事請負契約書に記載されている設計変更に係る条項と,対応する例は次のとおりです。ただし,具体的な事情は現場毎に異なりますので,受注者・発注者ともに十分協議を行ったうえで施工してください。(以下の条項は契約書記載のもの)
(1)設計図書に関するもの(第18条第1項第1~3号)
① 図面,仕様書,及び現場説明書に対する質問回答書(質疑書)が一致しない場合
② 設計図書に誤謬又は脱漏がある場合
③ 設計図書の表示が明確でない場合
【設備工事の例】
設計図書に誤謬又は脱漏がある | |
設計図書では「足場は別途工事」と記載されているが,実際には別途工事で足場は設置されなかった。 | |
① 受注者が設計図書の誤謬のおそれについて確認 ② 発注者が調査 ③ 設計図書の誤りが判明 設計図書を訂正する設計変更により,金額変更を伴う契約変更を行う。 ※上記の確認などの手順を踏まない場合は,設計変更の対象にならないことに注意 してください。(5-1 手順に関する留意事項を参照) なお,足場に関する記述が特にない場合は,天井の照明器具を取り替える工事において,足場の必要性は当然に想定されるべきものなので,設計変更の対象にはなりません。(この場合は,記載漏れ(脱漏)にはなりません。) このような事例があった場合は,入札前に質問書(質疑書)を提出し事前に疑義を 解消してください。 |
【建築工事の例】
設計図書の明示が不明確 | |
耐火建築物の要求がある建築工事で,延焼のおそれがある部分の開口部は防火戸にする必要があるが,図面には防火戸に関する記述がない。 | |
① 受注者が設計図書の内容について確認 ② 発注者が調査 ③ 設計図書の誤りが判明 設計図書を訂正する設計変更により,金額変更を伴う契約変更を行う。 建築基準法により,耐火建築物の要求がある建築工事で,延焼のおそれがある部分の開口部は防火戸にする必要があるため,設計変更の対象になります。 ※上記の確認などの手順を踏まない場合は,設計変更の対象にならないことに注意 してください。(5-1 手順に関する留意事項を参照) |
(2)現場状況との相違に関するもの(第18条第1項第4~5号)
① 工事現場の形状,地質,湧水等の状態,施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しない場合
② 設計図書で明示されていない施工条件について予期することができない特別な状態が生じた場合
現場状況との相違 | |
埋設部分や隠蔽部分で,不明な配管が現れ,構造物を迂回させる必要が生じた。 地下を掘削中,不明な配管が 現れ,構造物を迂回させる。 壁を撤去すると,不明な配管が 現れ,構造物を迂回させる。 | |
設計時の想定を超えた状況が発生しており,図面等の設計図書を変更する設計変更により契約変更を行います。 ※発注者は受注者からの報告により判断する必要があるため,状況説明用の資料と ともに,協議を行うなど必要な手順を踏まえる必要があります。 (5-1 手順に関する留意事項を参照) |
現場状況との相違 | |
建築の天井改修工事と同時に行う照明器具の取替工事において,契約図面と現場の器具数が違っていた。器具を再利用するとしても撤去再取付の手間は生じる。 | |
設計図書と現場状況の相違であり,設計図書を訂正する設計変更により金額変更を伴う契約変更を行います。 ※上記と同様,適切な時期に適切な手続きを踏む必要があります。 |
発注者が必要と認め,設計図書の内容を変更する場合
発注者の意思 | |
警察からの指導や,地元からの要望により施工時間,施工範囲,使用材料等が変更となる。 警察 夜間に片側通行 地元 明るい雰囲気の での施工を! 色にして欲しい。発注者 受注者 協議が成立した 場合,設計変更協 議 指導,要望を受け,必要と認められる内容で図 協議書の内容を確認 面等を作成し,協議書により受注者と内容,費用 し,支障がなければ承諾負担等に関して協議する。 する。 | |
発注者の判断による施工条件の変更であり,設計変更の対象です。 ※受注者が直接住民の要望を受けて,発注者に確認せずに施工した場合など,適切な手順を踏まない場合は,設計変更の対象となりませんので注意してください。(5 -1 手順に関する留意事項を参照) |
工事用地等が確保できないため又は受注者の責に帰すことができないものにより、請負人が工事を施工できないと認められる(工事を一時中止する必要がある)場合
(4)工事の一時中止を要するもの(第20条)
工事の一時中止を要する | |
a.設計図書と現場状況との不一致(第 18 条)等により、構造計算など工事再開に向けた検討・手続きに時間が必要となった。 b.受注者の責によらない何らかのトラブル(地元調整・災害等)が生じた。 c.埋蔵文化財が発見され調査が必要となった。 d.工事用地などの確保が行われていない。 e.警察、河川、鉄道等の管理者との協議が未了のため施工できない。 ※d、e:受注者が行うものを除く。 | |
受注者の責によらず、工事の施工が出来ないと認められる場合は、必要に応じて、受注者に工事の一時中止を命じることとなります。この場合、中止期間中の現場経費や仮設物のリース料等の費用が設計変更の対象となります。 ※a~cなど発注者側で把握できない場合は、受注者からの確認などの手順を踏ま える必要があります。(5-1 手順に関する留意事項を参照) |
◇相談窓口
現場で監督員等とコミュニケーションを取ることが理想ですが,直接相談しにくいことや,工事完了後の相談等があれば,こちらに御相談ください。
なお,相談された内容については,相談者個人に不利益を生じることはありません。
設計・積算・監督員の対応について
財政局技術監理課 TEL 000-000-0000 (FAX 000-000-0000)