PDD
集 寄稿 商社の排出量ビジネス
動 (掲載:社名五十xx)
出
き 住友商事の排出権獲得海外プロジェクトへの取り組み
し
た させたのは、2002年の4月のことだった。豪州
排 から輸出される発電用の一般炭に炭坑メタンの
出 回収により得られる温暖化ガスの排出権に関す
量 るオプション権を付与した契約を、豪州の州政
取 府系企業との間で日本向けに成約した。その後、
引 豪州が京都議定書からの離脱を発表したため、
現状では、残念ながら排出権のオプション権の
x x x x(xxxx xxxxx)
住友商事株式会社地球環境部長
1.取り組みの経緯
世界の各国が温暖化対策を推進するための京都議定書が1997年に批准されて以降、住友商事は温室効果ガスを削減するためのプロジェクトに取り組んできた。取り組み始めた時点では、プロジェクト推進のための国連機関が設立されていなかったことに加え、温室効果ガス削減プロジェクトの仕組みについても不明点が多く、当社は温室効果ガスの削減効果が得られるであろうと想定した、限られた数のプロジェクトを試験的に手掛けることが多かった。
当初は不確実な点が多かったとはいえ、排出権を獲得するためには、省エネ、発電などの事業を同時に手掛ける必要があるプロジェクトが多かったため、事業向けに発電用機器の輸出なども手掛ける商社にとっては排出権を獲得する事業は魅力的なビジネスモデルに思えた。また、排出権を他のビジネスに絡めることにより、新たなビジネスを創出するチャンスもあるものと思われた。
当社が排出権を絡めたビジネスを初めて成立
行使は不可能な状況となっている。
最近になり、排出権獲得プロジェクトに関する環境は徐々に整備され、排出権獲得プロジェクトを、議定書を批准済みの各国で推進することが可能になってきた。また、排出権を必要とする需要家も欧州、日本、カナダなどで徐々に現れてきたため、大量の排出権を獲得できる温暖化効果の高いガスの回収プロジェクトの検討を開始した。具体的にはフロン類、メタンなどのガス回収プロジェクトの検討であった。
例えば、天然ガスの主成分であるメタンは坑内掘りの炭坑で採炭作業を行うときに発生することがある。このメタンを回収すれば、炭坑の安全性が向上するうえにメタンを利用した熱供給事業、発電事業なども可能になる。さらに排出権を得られるとなると一石二鳥以上の効果が得られる。
また、冷媒、樹脂に利用されるHCFC22と呼ばれるフロンを製造する過程で副産物として生じる代替フロンHFC23は温暖化以外の害がなく、途上国ではそのまま排出されている。HFC23の温暖化効果は11,700倍と高く、これを回収し破壊すれば、二酸化炭素換算では、非常に大きな量の温暖化ガス削減効果が見込まれる。
当社は、このような案件の発掘を行い、幾つ
かのプロジェクトを手掛けることになった。具体的なプロジェクトの概要と現状を以下に紹介したい。
2.中国での炭坑メタン回収プロジェクト
中国で炭坑メタンを回収し、発電に利用する観点からプロジェクトの検討を開始したのは5、 6年前のことになる。坑内掘りの炭坑であればどこでもメタンが発生するものではなく、一定の地質条件の炭坑だけで商業的に利用可能なメタン量が発生する。中国では比較的利用可能なメタン量を発生させる炭坑が多かったことが中国でのプロジェクトに踏み切った理由の一つであった。
当初は、比較的南部のxxでの企業化調査を行ったが、中国側が排出権にこだわらず発電事業に重きを置くようになったため、排出権獲得のためのプロジェクトにはならなかった。このため、中国側のパートナーと炭坑の場所を変え、xxx省にて同様のプロジェクトの実施を検討
することになった。
炭坑メタンの回収による発電の技術面を検討するために、濃度が変化するガスを効率よく燃焼させるガスエンジンメーカーおよび発電のノウハウを持つ電力会社を日本側のパートナーとして選定し、プロジェクトを推進する体制を整えた。
企業化調査の実施について現地企業と合意し、2003年度からNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助も受け企業化調査を実施した。途上国で実施するプロジェクトであるCDM(Clean Development Mechanism)から排出権を獲得するためには、国連の機関であるCDM理事会の承認を得ることが必要である。この承認を得るプロセスでは、まずCDM理 事会で排出権を獲得する手法について承認を得、さらにプロジェクト実施国と日本国政府の承認を得た後、CDM理事会にプロジェクトの登録申請を行うことになる。このプロセスは下
図のとおりである。
CDMプロジェクト~排出権獲得までの手続き
Feasibility Studyの実施
PDD
(※1)の作成
方法論の認定
※2
(国連)
政府承認取得
相手国政府・日本政府
有効化審査
※3
登録
(DOE)
(国連)
設備
CDMプロジェクトの
投資
モニタリング
検証
認証
(DOE)
(DOE)
排出権の発行
(国連)
(注)※1. PDD:プロジェクト設計書
※2. 認定済み方法論を利用する場合は、不要
※3. DOE(指定運営機関):CDMプロジェクトの温室効果ガスの排出削減量を検証・認証する第三者機関
4.( )内は実施者
寄稿
商社の排出量ビジネス
特集
これらの一連のプロセスを進めるためには国
動
き
出
連が要求する書類を用意する必要と国連が承認した運営機関による審査がある。当社はすでに必要書類を準備し、CDM理事会に手法に関する承認を申請済みである。早ければこの1月に
し はCDM理事会による審査が行われる予定であ
た り、炭坑メタンプロジェクトとして世界初とな排 る手法の承認が得られる可能性がある(1月24出 日現在)。
量 手法が承認された後、日本政府と中国政府の取 承認を申請する手順となるが、日本企業が関与引 するプロジェクトでは、まだ中国政府承認の申請が行われたことがなく、本プロジェクトが第
1号の中国政府承認申請案件になる可能性も高い。本プロジェクトが実施された際には、現地の 炭坑で必要とされる電力の供給が行われ、さらに二酸化炭素換算で年間約8万トンの排出権を
獲得することが可能になる。
3.インドでのHFC23回収・破壊プロジェクト
HFC23を副産物として製造するフロンの製造は中国、インドなどで行われている。当社は HFC23を回収・破壊するプロジェクトの実施を中国で行うことを検討したが、中国政府との非公式の接触の結果、政府許可取得に時間が必要である可能性が高いことが判明したため、先にインドでのプロジェクト実施を検討することになった。インド政府に接触したところ、政府許可を短時間で取得できることが判明したこともインドでのプロジェクト実施に傾いた理由の一つであった。
インドには数社のフロン製造会社があるが、その中で最大規模のGFL社とHFC23の回収・破壊プロジェクト推進についての交渉を重ね、 2004xxに合意に達した。当社はプロジェクト参加者として2004年5月に日本政府の許可を取得した。インド政府の許可はGFL社が2004年1
月に取得していたため、国連への登録申請条件がすべて満たされ、2004年9月1日にCDMプロジェクトとして世界初の国連登録申請が行われた。
申請8週間後に登録が行われる予定であったが、HFC23がフロン製造時に生じる副産物であることから、排出権が獲得され収入が増えることによりオゾン層破壊物質であるフロンの生産を助長するとの意見が出され、本申請は CDM理事会により再審査が行われることになった。
現在再審査の最中であり、2005年2月下旬の CDM理事会にて「登録を認めるか」「再申請を要求するか」の結論が出る予定となっている。 CDMプロジェクトに関する手続きは、まだ始まったばかりであり不透明あるいは未成熟な部分も残念ながらあると言わざるを得ない。
本プロジェクトの登録が認められた際には、二酸化炭素換算で年間338万トンの排出権が得られる見込みであり、現状では世界最大規模の CDMプロジェクトとなっている。
4.今後の取り組み
当社は、現在種々のCDMプロジェクトを手掛けている。企業化調査前の段階にあるものまで含めると相当数のCDMプロジェクトが検討されている。省エネ、化学系、メタン回収、ガスパイプラインの補修など排出権を獲得する仕組みは多岐にわたっている。また、プロジェクトを実施している国はCDMの対象となる途上国のみならず、共同実施(JI:Joint Implementation)プロジェクトの対象である市場経済移行国と呼ばれるロシア、ウクライナまで広がっている。
CDMあるいはJIは、総合商社が持つ多種多様な機能を生かすことができる絶好の対象であり、今後とも積極的に世界の各地でネットワークを生かした案件の発掘を続けたい。
豊田通商の京都議定書プロジェクトの足跡
xxx xxx(xxx xxxxx)
xx通商株式会社 エネルギー部東京環境エネルギーグループ主査
京都議定書発効を見据えて
環境は共生という意識なくして進捗しない。共生とは互恵という言葉にも置き換えられるとも思うが、排出削減義務を背負う国と排出削減義務を背負わない国を結ぶCDM/JIプロジェクトの底に流れる互恵思想は、まさに商社が追求する環境ビジネス追求のための先駆けとなるべきものである。
経済成長と環境は必ずしも両立しないとちまたで言われていること、環境改善自体に明確な経済的価値がなく、民間企業が積極的に投資する動機付けが存在しないという声が大きいこと等々、周りのハードルは高い。そのハードルの中で営業の一翼を担うエネルギー部には、採算の不確実性を克服しながら、環境保全ならびに改善と対極に位置するエネルギーという商いを追求するという責務がある。にもかかわらず、地球環境保全に大きく貢献したいという真摯な意欲と実行力が実現させているのである。
xx通商は直接的に環境改善に貢献する温暖化ガス排出削減プロジェクトの実施を核に、 2000年より本格的な取り組みを行っているが、本年2月の京都議定書発効という重要な時期を迎え、環境と調和した経済発展のモデルである
CDM(クリーン開発メカニズム)案件を確立していくためには、部としての単独の取り組みを大きく超えた全社横断の対応が必要となっていることも否定できない。
下記に述べることは、当社社員が最初の仕組みから何回も現場に足を運びながら構築した案件の紹介である。
第1に、共生は文化的ごった煮を生むが、その典型たるブラジルという国で、民間第1号案件として日本政府によりCDM認知されたV&M製鉄燃料プロジェクトをCDMとして立ち上げた当社の議定書活動の一端を紹介する。
第2に、隣国中国においてCDM案件開発を指向すべく、他社に先駆けて種々の調査を行ってきたが、中国知性を代表するxx大学とのCDM案件開発共同開発調査の一端も紹介したい。
1.ブラジルV&M CDMプロジェクト
a 概要
当プロジェクトは、京都議定書のCDMによるカーボンクレジットの販売を通じ、ブラジルにおいて木炭ベースの鉄鋼生産の継続を可能にした。潜在的なコークスへの燃料転換を回避することを目的としたCDMプロジェクトであり、 2002年12月、民間企業として初めて日本政府により承認された。
このプロジェクトは京都議定書のCDMを背景としたカーボンクレジット販売からの資金導入をめざしており、その販売から取得する収入によって、木炭を使用する鉄鋼生産の収益性を向上させ、石炭を使用する製鉄所による市場占有につながりかねない鉄鋼産業の衰退を回避することを目的としている。
寄稿
商社の排出量ビジネス
特集
同プロジェクトでは、鉄鋼生産にコークスを
動
き
出
使用しないで、持続管理可能な植林地で生産した木炭を使用、さらには既存の1,640基の炭化キルンを改良し、メタンおよび粒子状物質の排出を防止する優れた設計を組み込むことも考慮に
し 入れている。現時点では、相手先の鉄鋼メーカ
た ーV&M社は、2004年に炭化キルンの50%を改造
排 し、残りは2005年に改造する予定としている。
部門の生き残りにつながっていると断言して差し支えないのである。ミナスジェライス州もブラジルの木炭の 73%を消費して
既存のキルン
出 CO2削減は21年間で約2,050万トンが可能と評量 価しており、内訳は木炭使用によるCO2削減が取 1,580万トン、キルン使用によるメタンガス大引 気放出分の捕捉分のCO2削減換算分が470万ト
ンである。
s 経緯・背景
① ブラジルの鉄鋼生産、森林植林地部門の現状ブラジルのミナスジェライス州はウジミナス 製鉄所建設で日本企業が大活躍した場所としてよく知られている。しかし、豊富な鉱物資源を有しているブラジルといっても、石炭だけは全量輸入に頼らざるを得ないというから面白い。世界の製鉄業界の鉄鋼製造の生産プロセスの 中で、還元剤としては化石燃料である石炭からのコークス利用が主体であるが、ブラジル製鉄業界の一部は木炭を利用している数少ない例であることに注目しなければならない。今や BRICsの一国であるブラジルの製鉄業界は世界に冠たる産業のひとつに数えられるが、木炭が代替燃料の起源であることを考慮すると、ブラジルで生産される鉄・鋼はいわゆるカーボンニュートラルとなり、環境問題に多大に貢献して
いると言えよう。
すなわち、ブラジルで木炭燃料を使用する製鉄部門が生き残れるか否かは、木炭の入手可能性に完全に依存していると言える。一方、木炭は木炭で森林植林地の状態に左右される構図になっており、逆に言えば、ブラジルにおける森林植林地部門の安定性は、木炭を利用する製鉄
おり、鉄鋼生産への使用量は、そのうちの91%に上るのである。
しかし、植林地以外のアマゾンを中心とした熱帯原生雨林の状況は極めて厳しい。ブラジル国立宇宙研究所の人工衛星画像を使った解析によると、2002年1年間で破壊されたアマゾンの熱帯林の面積は、日本の国土の15分の1に当たる約2万5,500hに上り、2001年の1万8,200hから40%も増えていたそうである。これは、過去に森林の消失が最も激しかった1990年代半ばの 2万9,000hに匹敵している。
世界自然保護基金(WWF)などの環境保護団体によると、大豆栽培などのために森林が農地に転用されたことが森林破壊の最大の要因とのことである。ブラジル政府の監視の目が行き届かずに、違法な森林伐採などが進んでいるという。グリーンピースも「このままでは100年足らずのうちに、アマゾンの熱帯林はほとんど消失する」と、早急な取り組みを求めている。
上述のように熱帯原生林の枯渇しつつある現
ふ かん
状を俯瞰すると、このままでは製鉄業界も温室
効果ガス排出量を増やす方向(木炭燃料から石炭燃料へ)に向かいかねない危険性を内在しているのである。しかし、現状では再植林投資が衰退しつつあるのである。
② 森林投資の制度と現状
FISET期間(パルプ・紙・銑鋼産業用木炭に使用するために、植林への投資を奨励する財政奨励金プログラム)に作られた森林の大部分が 21年間ローテーションの終期に近づきつつあ
(
ユーカリ種植林地
り、再植林する必要があることから、多大な再植林への投資が求められてい る。しかし、既存森林の伐採 現在は伐採ロ
ーテーションの最終サイクル)と、再植林への投資の意欲の欠如が、植林地減少に加速をつけかねない。
このような、森林の減少で、木炭使用の製鉄所の原料としての木炭が欠乏することになり、最終的には製鉄産業の消滅につながりかねず、同市場分野で、コークス使用の海外資本中心の製鉄所が優勢になる可能性が大きい。
しかし、森林投資に関しては、FISET以降奨励金もなく、さらには低金利の資金を獲得できる手段もなく(ブラジルの金利は海外金利と比較して非常に高い)、海外資金を調達する手段も持たない。森林産業自体が持っている本質的な低収益性により、投資が期待できない中で、徐々に森林部門は衰退しつつあり、FISETのような奨励金やODA資金的なものを導入しなければ、この衰退傾向には歯止めがかからない可能性が大きいことに注意しなければならない。
さらに困った問題は、有力な製鉄企業が自社の森林植林地を売りに出しているという現実がある。ブラジルで唯一のステンレス鋼生産企業であるAcesita社は、森林資産を25万haから10万1,500haに大幅に減少させ、溶鉱炉の1基をコークスのみで使用可能にすべく1億5,000万ドルを投資したという。また、Companhia Belgo- Mineira社はブラジル第2の鋼生産企業であるが、最近になってコークス燃料の溶鉱炉に1億 5,000万ドルを投資して、全面的に石炭使用に切り替えており、森林事業をすでに縮小し始めている。
Acesita、Belgo-Mineira、Usiminas、CSTは年間生産量150万トンの容量を持つ共同コークス化工場への3億ドルの投資計画をすでに発表しており(Gazeta Mercantil、2001)、コークス化に拍車がかかる可能性が高いことにも注意しなければならない。
つまり、森林部門および木炭使用のいずれかを支える資金や奨励金が投入されなければ、化石燃料である石炭への切り替え傾向は今後とも持続するのである。
③ カーボンファイナンスの活用
今回のプロジェクトの相手であるV&M Tubes do Brasil社はドイツのMannesmannroheren- Werke(45%)とフランスのFrench Vallourec
(55%)のJ/Vである。
当初はマンネスマンの鉄管はドイツのコークスを利用して操業する予定であったが、ブラジル政府による通貨政策のために、木炭操業にせざるを得ない選択肢を選んだ経緯があった。
1969年には、植林事業とミル操業用木炭生産を目的とした、Mannesman Florestal Ltdaが設立され、FISETの税効果を謳歌しながら植林事業を順調に進捗させた。すなわち、11万9,608haの植林地をミナスジェライス州に実現したのである。
しかし、FISETプランの停止、レアルプランの導入等、V&M社の木炭保持策に多大な影響を及ぼしかねない環境の中で、同社は環境重視を堅持しており、現在に至るも木炭保持を貫いている同社に対して、xx通商はCDM交渉に入ったのである。
V&Mプロジェクトに採用されたベースラインは、カーボンファイナンスがない場合は、 V&M社は自社工場を改造してコークスを採用し、そしてこの産業部門全体が、その動きに呼応するであろう、そしてV&M社が既存の植林地で最後の伐採を行った直後に、植林地を放棄し、森林への再植林投資を一切行わないであろ
寄稿
商社の排出量ビジネス
特集
う、という仮定に基づいている。
動
き
現在(2005年1月)、本プロジェクトの方法論が国連の方法論パネルにおいても審議中であり、CDMプロジェクトとしての正式承認まで
理事会の意思決定支援組織としての方法論パネルに中国代表のメンバーを輩出するなど、その取り組みは中国内でも際立ったものがある。
xx大学と当社の取り組みもその始まりは、
出 にはまだ時間がかかることが予想されるが、今
2000
さかのぼ
、その後定期的に中国における
し 後とも正式承認の獲得に向けて積極的な活動を
た 続けていかなければいけない。
排 2.中国でのCDM実施
出
量 トヨタグループが最重点地域として取り組ん取 でいる中国において、当社エネルギー部として引 も初めての海外でのF/Sとなる、中国・遼寧省撫順特殊鋼、撫順鋼鉄での省エネ調査を2000
年に実施した。当時はまだ、排出量ビジネスに直接的に関わる担当者は、1名のみであり、また実質的な京都議定書の運用細則を定めるルールブックとしてのマラケシュ合意が採択(2001年11月)される前であったため、まだまだ手探りの状態ではあったが、先行的取り組みを開始した意義は大きいと考える。
続いて2001年に遼寧省xx鋼鉄、遼寧公源セメントでの省エネ調査、2002年にxxx棗庄熱電公司でのボタ焚き発電事業調査と、3年連続で中国でのF/Sの実施を進める中、2002年8月に中国政府が京都議定書の批准を表明、その後 2004年5月31日、中国政府はCDMプロジェクト活動に関する有効管理を強化し、CDMプロジェクトの順調な進行を確保するため、『CDMプロジェクト運行管理暫定弁法』を制定・公表し、 2004年6月30日から施行された。
このように、具体的なCDMプロジェクト実施のための事業環境が整うには、当初予想した以上の時間を要したが中国が重点地域のひとつであるという事実に変わりはない。
xx大学におけるCDMの取り組みは、各種外国機関との共同研究プロジェクトの実施をはじめ、国連におけるCDMの運営組織であるCDM
年まで遡り
CDMプロジェクトの開発について協議を行ってきた。その後2003年後半、正式にCDMプロジェクト共同開発に関する契約を締結、本格的な取り組みを開始した。xx大学サイドより十数件に及ぶ潜在的な案件の紹介を受け、その中より幾つかのの案件を選定、共同でCDMとしての適格性の検討を実施した。今後ともこれら案件への取り組み可能性も含め、中国で積極的な活動を実施していく予定である。
3.おわりに
上述した案件は当社が現在フォローしている案件の一部を紹介したにすぎない。日本に限らず、経済至上主義下では、ブラジルも現時点では地元で生産した木炭を使用するよりも、輸入石炭を利用するほうが魅力的になっていることは事実である。環境関連案件へのカーボンクレジットという一種の資金援助がなければ、上述 V&M社のみならず、ブラジルの製鉄企業は、木炭から石炭に方向転換し、大気中へのGHG排出量が大幅に増加することになるのは容易に想像できる。
CDM Methodology Panelの手法がこのままでよいのかという観点からいろいろと議論されているようであるが、そもそもMethodologyとは手法の学問である。現場および現実感覚のない知識のみの手法で時間がない環境問題に対応していけるのであろうか。xxが必要なのである。環境問題への取り組みは、進む行程が真摯であるかぎり、小異を捨てて大同に就く姿勢も必要である。当社は今後も環境貢献すべく、互恵精神横溢しているCDM/JI案件の実現に積極的に取り組んでいく所存である。
三井物産の排出量ビジネスへの取り組み
x x x(xxx xxx)
三井物産株式会社 鉄鋼原料・非鉄金属本部事業開発部水素・燃料電池・環境室排出権チームマネージャー
1.取り組み体制と経緯
三井物産内では排出権ビジネスの専門組織として、鉄鋼原料・非鉄金属本部事業開発部水素・燃料電池・環境室内に排出権ビジネスチームが設置されており、室長以下5名の担当者が、社内の各営業本部、支社・支店、海外現地法人・事務所と連携を取りながら、排出権取引ビジネスおよびCDM/JI発掘・推進を行なっている。また、同チームから世界銀行炭素基金
(PCF:Prototype Carbon Fund)および日本温暖化ガス削減基金にそれぞれ出向者1名ずつを派遣している。エネルギー本部も同チームと歩調を合わせて排出権ビジネスを推進しているほか、プロジェクト本部内に排出権タスクフォースが組成され、全世界での排出権プロジェクトへの取り組みを推進している。
さらに、社内における排出権関連ビジネスの
情報交換の場として、排出権関連ビジネス連絡 会(関係会社である三井物産戦略研究所が主催)が設置されており、定期的に講演会や報告会を開催し、社内啓蒙・情報共有化を進めている。
さかのぼ
遡ると、当社の排出権ビジネスへの取り組み
は、2000年1月の世界銀行炭素基金への参加を皮切りとして、以下の経緯となっている。
2000年1月 世界銀行炭素基金に500万ドルを出資決定。
2001年7月 米国の大手排出権ブローカーであるCO 2 x.xxx(シーオーツーイー・ドットコム)と共同で、xxxの排出権取引模擬実験(シュミレーション)を実施、民間企業や調査機関等から約40名が参加。
2002年10月 XX0x.xxx社に出資。同社と、日本およびアジアにおける排出権の共同マーケティングを目的とした提携契約を締結し、排出権ビジネス専門の担当者を配置。また、同時期に世界銀行炭素基金に対する研修員の派遣を開始。
2002年12月 世界銀行炭素基金に対する100万ドルの追加出資を決定。
2003年6月 世界銀行炭素基金への出向者派遣開始。
XX0x.xxx社ウェブサイト(xxxx://xxx.xx0x.xxx/)のリアルタイム排出権マーケット情報
寄稿
商社の排出量ビジネス
特集
2004年8月 東京電力向けに、チリにおける家
動
き
畜し尿メタン回収・分解CDMプロジェクトからのCER先渡し契約
出
(200万トン)を仲介。
2004年12月 国際協力銀行および日本政策投資
し 銀行が設立した日本温暖化ガス削
た 減基金に1,000万ドルの出資を決
排 定。また、同基金のための排出x
x 調達業務を請け負う日本カーボン
量 ファイナンス㈱に出資、同社に非
取 常勤取締役および出向者1名を派
引 遣。
当社の排出権関連取り組みにおいて特徴的な点は、当初より営業本部主導でビジネス開拓が進められてきた点にあると考える。石炭を取り扱う鉄鋼原料・非鉄金属本部や石油・ガスを取り扱うエネルギー本部は、2000年ごろから、化石燃料需要家の温暖化問題への意識の高まり、将来起こりうるCO2排出規制への危機感を感じ取り、京都議定書や排出権取引、CDM/JIプロジェクトに関する知見を蓄積してきた。当社は現在、XX0x.xxxの看板で排出権仲介・トレードビジネスを推進しており、そのために3名の担当者を配置しているが、そのうち2名が鉄鋼原料・非鉄金属本部、1名がエネルギー本部の
チリ・アグロスーパー社の養豚場
所属である。また、両本部はそれぞれ世界銀行炭素基金、日本温暖化ガス削減基金に出資している。
海外でプラント事業、発電プロジェクト、交通プロジェクトなどを手掛けるプロジェクト本部は、排出権を既存事業に対する新しい切り口・付加価値として捉えており、同様に両基金に出資し排出権プロジェクトの知見を蓄えるとともに、タスクフォースを立ち上げてCDM/JIプロジェクトの発掘・推進を進めている。
2.成果と今後の展開
2004年8月、当社とXX0x.xxxは、チリの大手食品加工メーカーであるアグロスーパー社が推進するCDMプロジェクトから、合計400万トンの排出権先渡し契約の仲介成約を発表した。約 200万トンが東京電力、残りの約200万トンをカナダ電力会社に仲介したもので、排出権マーケットにおいてエポック・メイキングな出来事となった。京都議定書の発効が遅れる中(2004年 8月時点)、世界の排出権取引は一取引あたり10万トンから100万トン程度が一般的で、民間企業間で一度に400万トンもの規模の売買契約が締結されたことはかつてなかった。また、一部の日本企業は排出権ファンドへの出資やCDMの推進といった形で排出権調達を始めていたが、排出権の最終需要家がマーケット
から大量のクレジットを調達したのはこれが初めてのケースだった。当社でも本件が排出権ビジネスとして初のxx案件となり、排出権取引やCDM/JIに対するビジネスとしての期待がさらに高まった。
ロシアの批准による京都議定書の発効決定や、国内における温暖化防止政策導入議論の高まり、CDM理事会による初のCDMプロジェクト登録、と
いった最近の出来事を受けて、日本企業の排出権に対する需要は高まりをみせている。当社では、前出のアグロスーパー・プロジェクトに続き、現在日本の複数需要家と排出権売買交渉を進めているが、排出権取引ビジネスを拡大していく環境が整いつつあると考え、XX0x.xxxの日本法人設立等、仲介・トレードビジネスのさらなる拡大を計画している。
排出権に対する需要が増える一方で、マーケットが現在直面しているのが供給不足である。 2004年中に取引されたと言われる2億トン弱の排出権の大部分は、途上国における実際の温室効果ガス削減活動、すなわちCDMからのクレジット(CER)であったが、CDMプロジェクトは関連ルールの整備や承認体制構築の遅れもあり、需要と裏腹に、当初予想されていたよりも案件数が増えていない。また、プロジェクトであるが故に、実際の削減が開始されるまでに時間がかかり、急速な需要の高まりに対して供給力が追いついていない。先進国間のプロジェクト争奪競争が激しくなる中で、日本の排出権需要に応えるためには、当社自身による CDM/JI推進の必要性があると感じ、積極的に推進している。
すでに、マレーシアにおけるゴミ埋立場メタン回収・発電事業で日本政府のCDM承認を取得し、南米でも同様のプロジェクトについて具体的な取り組みを開始している。インドネシアではNEDOの資金を得て養豚場メタン回収事業のF/Sを実施中である。他に中国での炭鉱メタン回収、化学品工場からのフロンや亜酸化窒素の回収、バイオマス発電、風力発電プロジェクトなどへの参画も検討・推進中である。途上国におけるCDMだけでなく、東欧・旧ソ連などにおけるJIについても、数件のF/Sを実施中である。
排出権は、日本の産業界にとって、温暖化防止を進めながら、(京都議定書の少なくとも第
一約束期間中は)削減目標を持たない中国、近隣アジア諸国、米国等に対する国際競争力を維持していくために不可欠な“原材料”になる可能性が高い。当社は、日本の先兵となってエネルギー・資源の開発に取り組んできた経験・実績を生かしてCDM/JIを積極的に推進し、日本の需要家に対して排出権を安定的に供給していくことをめざしている。
3.終わりに
当社が排出権ビジネスに積極的に取り組む理由として、まず、排出権取引やCDM/JIは、マーケットが今後、大きく開花する可能性を秘めていることが挙げられる。また、すでに述べたように、京都メカニズムはすなわち海外からのプロジェクトからの排出権調達であり、資源の開発輸入や海外プロジェクトの推進等でxx培ってきた商社のネットワーク、ノウハウ、経験が生かせる分野であると言える。海外で排出権プロジェクトを実施する場合には、温室効果ガスを削減するとともに、立地国の持続的発展に貢献することが義務付けられる。排出権プロジェクトを通して地域社会にも貢献し、企業の社会的責任(CSR)を積極的に果たしながら、同時に利益を追求することができるユニークな仕組みであり、これも積極的に取り組む大きな理由の一つとなっている。
世界的な温暖化ガス排出規制の動きや、環境・社会貢献に経済的な価値を与えるという考え方(=排出権)は、社会・ビジネス環境の大きな変化として捉えるべきであろう。当社でもこれに対応すべく、各営業本部の個別努力と同時に、海外を含めた全社的なサポート体制の構築を模索している。京都メカニズムの活用は、大きな削減義務を負う日本にとって緊急の課題であり、商社業界が積極的に取り組んでいくことが望まれるだろう。
寄稿
商社の排出量ビジネス
三菱商事の排出権ビジネスへの取り組み
を日本で設立した。
また別のアライアンスとしては、京都メカニズムの試行的な実践を目的に企画された世界銀行の炭素基金(PCF:Prototype Carbon Fund)への出資を行った。同基金はクリーン開発メカニズム(CDM)などの京都メカニズムに関するルールの詳細が決まる前から先進的に途上国
x x x x(xxx xxx)
三菱商事株式会社 事業開発部
環境・エネルギー室シニアマネージャー
三菱商事は総合商社の中でも比較的早く温室効果ガスの排出権ビジネスに取り組んできた。今でこそ排出権ビジネスとは具体的に何をすることかが分かりかけているものの、わが社が取り組みを始めた2000年当時は排出量というものは商社として作るものなのか売買するものなのかあるいは仲介だけするものなのか全く分からなかったし、そのどれかをすべきと思ったところで具体的にどうすればそれを実行できるのかも分からなかった。
1.ナットソース・ジャパンの設立
そこでわが社が考えたことはそのように少しでも先行している人とxxxxxxを組むことであった。京都議定書における排出量取引の概念の母体となった硫黄酸化物(SO2)等の排出権市場が米国ではすでに成立しており、ナットソース社が取引の仲介から企業コンサルティングまで先進的な取り組みをしていた。同社は温室効果ガスの排出量取引にも積極的に事業展開しており、同社と組むことで「排出権ビジネスとは何か」を学びつつ実際のビジネスを始めることを狙った。具体的には同社への資本参加を行うと同時に、同社や東京短資、住友商事、xx通商などと組んでナットソース・ジャパン㈱
における排出削減プロジェクトに取り組んでおり、その試行錯誤の様子を知ることは非常に貴重なノウハウになった。また単に日本にいて出資者として報告を受けるだけでなく世銀のオフィスに出向者を派遣することでわが社の人的資源の強化にも役立った。
先述のナットソース・ジャパンは営業開始より間もなく4年となるが、この間排出量取引の仲介のみならず、ファンド事業や企業へのアドバイス、官民双方からの調査業務の受託や月刊誌の発行など多岐にわたるビジネスを手掛けてきた。このような取り組みの中で実感するのはこのような創成期にあるビジネスの成長力である。誰もが手探りで情報を求め、情報のあるところに人が集まってさらに情報が集積する。そこでは情報がxxを生んでひとつの方向性が現れる。それがビジネスのルールとなって参入者が増えていくのである。
2.排出量取引とCDM/JI事業開発
このような流れの中でわが社単独とも言える試みも行ってきた。ひとつは自己勘定での排出量取引であり、もうひとつはCDMや共同実施
(JI)を活用した事業開発である。
a 排出権ビジネス
前者については、排出権ビジネスの発展過程と符合する形で段階を踏みながら3種類の取引
特集
動き出した排出量取引
を行ってきた。1つ目はまだCDMの詳細が決まらず「正式な排出権とは何か」も分からないうちに行ったもので、世銀炭素基金の方法論がいずれデファクト・スタンダードになることを見越して、同基金が開発したチリの小水力発電プロジェクトから同基金とともに並行買い付けを行った。2つ目は英国の排出枠(アローワンス)取引である。ご存知のように英国は京都議定書やEUよりも早く2002年に独自の排出量取引制度を立ち上げた。これは英国内においては「正式な排出権」であり、英国政府が管理するデータベース上で保管や移転が行われる。仲介業者を通じて売買を進めつつ、日本からインターネット経由でデータベースを操作しながらアローワンスの移転を行う手法は京都議定書の下でも踏襲されるものと考えられる。3つ目は京都議定書の下で「正式な排出権」として認められる CER(Certified Emission Reduction)の購入である。日本ではイネオスケミカル㈱がいち早く韓国で代替フロンの回収・破壊事業に取り組んでおり、CDM事業としての登録手続きも最終段階を迎えている。すでに昨年5月からプラントも稼動していることから、世界でも最も早く CERを発行できるプロジェクトであると期待されている。わが社はイネオスケミカルとはすでに排出権購入契約を締結済みであるが、今年中にも現物としてのCERを手にすることで一連の排出量取引も新たな段階を迎えるものと考えている。
この代替フロン回収・破壊プロジェクトは温室効果ガスの削減事業とは何か、CDMとは何かを考えるうえで非常に示唆に富んでいるので、ここでその概要を紹介したい。代替フロンの一つであるHFC23はエアコンや冷蔵庫に使われる冷媒(HCFC22と呼ばれるガス)を製造するときに発生する副産物である。HFC23は大気中に放出されると非常に強い温室効果を持
イネオスケミカルの韓国プラント
つという以外には基本的に無害な物質であり、韓国においてはその廃棄について規制がない。冷媒としての性能も劣るので冷媒メーカーとしてはHFC23を回収する経済的なインセンティブもなく、通常は大気へ放出している。つまり地球温暖化防止に明らかに役立つプロジェクトである。実際に条約の下で個別案件を審査する CDM理事会において、イネオスケミカルの韓国案件は京都議定書の趣旨に沿った考え方をしていることがいち早く認められた。
しかし案件登録をする段階になって異論が出た。ここで問題とされたのは別の環境問題であるオゾン層破壊である。HCFC22という冷媒はオゾン層に影響を与えると言われており、モントリオール議定書という別の国際合意の下では規制が課されている。韓国は現時点では HCFC22の製造・使用が規制対象となっていないが、排出権のタネとなるHFC23欲しさのあまりHCFC22が増産されるようなことがあっては例えそれが規制外の韓国であっても環境に悪影響を及ぼすことには違いがない。実はモントリオール議定書で取り扱っているために京都議定書では議論の対象から外されているが、 HCFC22自身、温室効果を持っている点も懸念された。HFC23の回収にCDMという制度が適用されなければHCFC22の増産を懸念する必要も生じないのだから、HFC23の回収・破壊事業はCDMとして認めるべきではないという過
寄稿
商社の排出量ビジネス
特集
激な意見まで飛び出した。
動
き
出
これは「京都議定書だけを見て温室効果ガスが減っていれば排出権がもらえるのか」というxx的な問題提起である。もちろん環境貢献が大前提で事業をするのであるから、京都議定書
し さえ守っていればそれでいいと言い切るのは乱た 暴だが、民間企業の立場から見れば、京都議定排 書の複雑なルールを守って投資したのに別のル出 ールが現れて案件が予定どおり進まなくなった量 という典型的な制度リスクが発生している。ど取 のような事業でもそうであるが排出権ビジネス引 においても、いや排出権という全く新しいビジネスであるからこそ、このような思いもよらぬ
リスクがあるのだと認識させられたという点で、このイネオスケミカルの韓国案件は非常に教訓的である。幸い熱心な議論が行われ関係者の理解も深まっており、事態は遠からず収束するものと期待されている。
s CDM/JI事業開発
わが社単独で、排出量取引に加えてCDMや JIの事業開発も行っているので、これについても簡単に述べたい。総合商社に共通することであるが、社内では実にさまざまなプロジェクトへの取り組みが行われている。エネルギー部門や金属部門では資源開発から流通まで、プラント部門では発電、製鉄、化学品、廃棄物処理など、生活産業部門では植林や家畜のように、いずれも今日CDMの対象として取り上げられる事業領域である。地域的にも附属書Ⅰ国と呼ばれる東欧と非附属書Ⅰ国と呼ばれる途上国の両方で活発なビジネスを行っている。これらと CDM/JIという京都メカニズムを組み合わせることにより、プロジェクトに付加価値を与え、日本の削減目標達成にも寄与し、地球規模での環境改善に貢献することは環境と共生する企業として積極的に取り組むべき課題と言える。上述したような過去の取り組みを通じて培ったノ
ウハウとネットワークを最大限活用して世界各地で複数案件を同時並行的に推進している。
3.日本温暖化ガス削減基金
最後に昨年12月に発足した日本温暖化ガス削減基金(JGRF:Japan GHG Reduction Fund)への参画についても触れさせていただきたい。本誌でも紹介されているとおりJGRFは官民合同の排出権買い付け機構という性格を持っている。ここに出資することにより良質な排出権を安価に獲得できることが期待できる。これだけでも重要なことであるが、わが社としてはさらに2つのことを期待している。1つは前に述べた自社プロジェクトとの相乗効果である。わが社が手掛けるCDM/JIといった排出削減プロジェクトは事業資金を必要とする。あるいは事業の結果として生まれる排出権の買い手を必要とする。JGRFはその姉妹機関である日本カーボンファイナンス㈱(JCF)を通じて間接的に事業資金の提供や排出権の買い取りを行うものであり、わが社事業にとっては大切なサポーターである。またJGRFのような官民合同の組織というのは排出量の世界では非常にユニークである。このような組織が日本に生まれたことは非常に喜ばしい。京都議定書は世界共通でもそれに参加する国にはそれぞれ固有の事情や課題があり、日本も例外ではない。そのような事情は日本の当事者が集まって議論しなければ解決されず、JGRFは絶好の機会を提供できるものと期待している。単に情報交換をするサロンとして機能してもよいが、せっかく日本の主要企業と政府系金融機関が多数集まる場であるから、今までオフィシャルな場ではしにくかった産業界の意見収集や政策側との討議も可能になるのではないだろうか。地球温暖化という新しい問題を解決しようとする以上、このような新しい器で今までと違う発想で衆知を集めて大いに議論が行われることを願っている。