第1条 共同履行管理型インセンティブ契約制度は、甲と乙が EVM を用いて共同して契約の履行を管理するとともに、契約履行に必要なコストが変動するリスクをより柔 軟に負担して原価管理に関する契約の相手方のインセンティブを強化することにより、より一層実効的にコスト低減と着実な契約履行を図ることを目的とする。
共同履行管理型インセンティブ契約に関する特約条項
甲及び乙は、共同履行管理型インセンティブ契約に関し、次の特約条項を定める。
(共同履行管理型インセンティブ契約制度の趣旨)
第1条 共同履行管理型インセンティブ契約制度は、甲と乙が EVM を用いて共同して契約の履行を管理するとともに、契約履行に必要なコストが変動するリスクをより柔軟に負担して原価管理に関する契約の相手方のインセンティブを強化することにより、より一層実効的にコスト低減と着実な契約履行を図ることを目的とする。
(用語の定義)
第2条 この特約条項において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
⑴ WBS(Work Breakdown Structure) 契約の対象となる装備品等又は役務を、WBS要素(測定又は管理が可能な成果として把握できる単位の構成品、作業その他の要素をいう。以下同じ。)にまで細分化し、その細分化した各要素を親子の関係で体系付け、最上位の階層をレベル1として下位階層に向けて数字が大きくした階層構造をいう。
⑵ EVM(Earned Value Management) 取得対象となる装備品等について、所定の期日までに、所定のコストで取得するため契約の履行管理において、WBS 要素ごとに完了予定期日その他のスケジュール及びコストの計画値を定め、実際の進捗状況とコストのデータを定期的に収集し、計画との差異を分析することにより進捗の遅れ、コスト超過等の問題の兆候を早期に把握し、対処及び改善を図っていくマネジメント手法をいう。
⑶ IBR(Integrated Baseline Review) 契約締結後において、甲及び甲の関係者並びに乙及び乙の関係者が、当該契約に係る WBS の妥当性及びベースライン(スケジュール及びコストの計画をいう。以下同じ。)の実現可能性、EVM を実施するために必要な細部事項、発生した問題に対する対処及び改善策、契約履行後において乙に支払われる代金を確定する基礎となる実際製造原価その他必要な事項について協議し、最終的に合意する場をいう。
⑷ 総コスト 乙が契約の成果物として甲に給付する物品の製造その他契約履行のために必要となる費用の総額をいい、製造原価、一般管理及び販売費、販売直接費、xx、梱包費及び輸送費に相当する金額の合計をいう。
⑸ 計画総コスト 契約(変更契約を含む。)締結後において計画として作成するコスト(別紙1の実績コスト等に関する計算基準(以下「計算基準」という。)及び乙の原価計算の実施に関する規則(以下「計算規則」という。)に基づいて計算したものに限る。以下同じ。)に基づき IBR において合意した総コストをいう。
⑹ 計画製造原価 計画総コストにおける製造原価をいう。
⑺ 実績コスト 履行管理の評価時点において EVM の結果として実際に発生し、又は配賦された製造原価実績の一部であるコストをいう。
⑻ 実績製造原価 実績コストに基づく総コストにおける製造原価をいう。
⑼ 上限金額 乙がこの契約の履行のために支出し、又は負担する費用に係る甲の負担の上限金額をいう。
⑽ 差引利益 契約金額(変更契約(代金を確定するためのものを除く。)がある場合には当該変更された契約金額(上限金額の算定において契約金額に付加された金額に相当する要素を含まない部分に限る。)をいう。以下同じ。)から当該契約金額における計画製造原価(仕様変更その他の事由(上限金額の反映及び代金の確定を除く。)により契約金額が変更された場合における当該変更に係る計測可能な最小単位の部分を除き、当初の計画製造原価における金額から変更されていないものに限る。以下同じ。)を差し引いた粗利金額をいう。
(代金の確定)
第3条 甲は、乙がこの契約の履行のために支出し、又は負担した費用及び支出し、又は負担すべき費用に基づく実績製造原価として IBR において合意した額に差引利益を加えた価格(以下「確定計算価格」という。)を、次の各号に定めるところにより算定する。
⑴ 実績製造原価が計画製造原価を下回った場合(コスト低減) 別紙に定めるコスト低減分の一定割合を報奨として差引利益に加えた額と実績製造原価との合計額
⑵ 実績製造原価が計画製造原価に等しい場合 実績製造原価と差引利益との合計額
⑶ 実績製造原価が計画製造原価を上回った場合(コスト超過) 別紙に定めるコスト超過分の一定割合を甲の負担額として計画製造原価に加えた額と差引利益との合計額
2 乙に支払われる代金は、次の各号に定めるところにより確定する。
⑴ 確定計算価格が契約金額以下である場合 当該確定計算価格
⑵ 確定計算価格が契約金額をやむを得ず超える場合であって、乙が、IBR において合意したベースラインに基づく契約の履行に努めること(必要に応じ IBR の開催を要求し、ベースラインの見直しを提起することを含む。)並びに甲及び乙が共同して行うプロジェクト・マネジメント活動の一環として進捗管理活動、コスト改善活動等に取り組み、これに協力することに合意していたとき 次のア又はイに定める価格又は金額
ア 確定計算価格が別紙2の規定による甲の超過負担限度額に基づき甲及び乙が合意した上限金額以下である場合 当該確定計算価格
イ 確定計算価格が前記アの上限金額を超える場合 上限金額
⑶ 前2号に定める場合以外の場合 契約金額
3 前項第1号の規定により代金を確定して支払われる契約金額のうち、第1項第1号の報奨及び差引利益の合計額から梱包費及び輸送費の合計額を除いたものは、包括して調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令(昭和37年防衛庁訓令第35号)第33条第2項第3号に規定する総利益として取り扱うものとする。この場合において、当該総利益から、実績製造原価に所定の経費率を乗じて得た一般管理及び販売費、xx並び
に利益の合計額を減じて残った部分を特に区別するときは、これを「共同履行管理インセンティブ料」と称するものとする。
4 代金の確定に必要な事項は、契約締結後の実施する IBR において甲及び乙が協議し、合意のうえ、決定する。
5 代金の確定は、 年 月 日までに行うことを目途とする。
6 甲は、甲が第8条第1項に基づく調査を行う場合において、乙が当該調査の実施に協力しないために調査を実施することができなかったときは、乙がこの契約の履行のために支出し、又は負担した費用について、適当と認める金額を実績コストとして決定することができる。
7 甲は、確定計算価格の算定に当たり、第5項で定める期日までに実績額が確定していない部分については、甲が適当と認める金額を実績額と見なして確定計算価格を算定し、代金を確定するものとする。この場合において、甲が必要と認めるときは、後日当該部分の実績額が確定した際に差額を甲に返納させる措置をとることができる。
8 甲は、EVM の過程において、確定計算価格が契約金額を超えることが見込まれる場合には、当該超えると見込まれる部分について、第4項に定める代金の確定のときまでに、甲及び乙が協議のうえ、必要な措置を講じなければならない。
9 前各項の規定による算定、確定その他の計算は、契約の締結から履行完了までのいずれかの年度若しくは各年度又はそれらの前年度のうちの適当な年度に係る計算基準及び計算規則であって、IBR における合意に基づき計画総コスト及び計画製造原価の算定に適用するものと同一のものを適用して行うものとする。
(資料の提出等)
第4条 乙は、契約締結後速やかに、標準 WBS に基づき、プロジェクト・マネジメント活動のための WBS を設定し、かつ、EVM の実施に必要な実現可能性のあるベースラインの案を作成し、甲に提出するものとする。
2 甲及び乙は、前項のベースラインの案について、IBR において協議し、合意のうえ、ベースラインを決定するものとする。この場合において、乙は、決定された WBS 及びベースラインについて、甲の指定する方法によりデータを登録するものとする。
3 最初の IBR は、原則として契約締結後1か月以内に、最終の IBR は、契約履行後速やかに行うものとする。ただし、対象装備品等に係るプロジェクト・マネージャー又は事業管理者が必要と認めた場合には、臨時に IBR を実施することができる。
4 甲及び乙は、プロジェクト管理に必要なプロジェクト・チームをそれぞれ編成するものとする。この場合において、プロジェクト・マネージャー又はプロジェクト・チーム員を新たに指名したとき、又はこれらを変更したときは、速やかに相手方に通知するものとする。
5 乙は、別紙及び IBR において合意した細部実施要領に基づき、設定した WBS 要素ごとの実績コストに関するデータを集計のうえ、速やかに甲に報告しなければならない。この場合において、甲及び乙は、当該データがコストの発生源である WBS 要素ごとに適切に計上されたものであるかを継続的に確認するものとする。
6 前項に規定するもののほか、甲は、乙がこの契約の履行のために支出し、又は負担し
た費用を証する書類その他当該費用を確認するための資料及び乙がこの契約の履行のために支出し、又は負担すべき費用の見積りの根拠を示した資料を必要とする場合には、乙に対し、その提出又は調査への協力を求めることができる。
7 乙は、前号の提出又は協力を求められた場合には、これに応じるものとする。
8 甲及び乙は、本条に規定する IBR の実施、WBS の設定、ベースラインの策定及びコストデータの報告その他 EVM を実施するために必要な細部事項について、協議のうえ、実施するものとする。
(契約の変更等)
第5条 甲は、履行管理の過程において、履行完了の実現可能性が見込めないと判断した場合には、乙と協議したうえで、契約の変更又は解除(一部解除を含む。)を行うことができる。
2 乙は、履行管理の過程において、履行する内容が仕様書等と相違する等の疑義があると判断した場合には、甲と協議することができる。
3 甲は、前号の協議の結果、履行する内容の変更、追加又は削除を要すると判断した場合には、速やかに契約の変更を行うものとする。
(プロジェクト・マネジメント活動に対する協力)
第6条 乙は、甲及び乙が共同して行うプロジェクト・マネジメント活動に対して、計画コスト及び実績コストに関する各種資料の提供、コスト発生予測に係る説明その他必要な協力をしなければならない。
(計算規則の確認等)
第7条 乙は、契約締結後、速やかに契約締結時の社内の原価計算規定その他のコストの計算に関係する規則を甲に提出し、その確認を受けなければならない。
2 乙は、前項で確認を受けたコストの計算に関係する規則の全部又は一部を変更しようとする場合には、その理由を付して甲に申請し、承認を受けなければならない。
3 乙は、コストに影響のある社規、社則、通達、制度、会計手続等を新設し、又は変更した場合には、速やかに甲に報告しなければならない。
4 前3項の規定は、乙が、他の甲との契約その他の機会において既に甲の確認若しくは承認を受け、又は報告している事項には適用しない。
(コストに関する調査)
第8条 甲は、乙が報告した WBS 要素ごとの実績コスト、EVM を実行する社内体制等の適正性を確認するため、必要に応じ、乙がこの契約の履行のために支出し、又は負担した費用に関する調査を実施するものとする。
2 甲は、前項の調査を行うため必要があると認めた場合には、甲の指名する担当者を乙の営業所、工場その他の関係場所に派遣するものとする。ただし、下請負者の営業所、工場その他の下請負者に係る関係場所については、あらかじめ乙の同意を得たものに限る。
3 【製造/役務/試作研究】請負契約条項の職員の派遣及び調査に関する規定は、前項の規定による担当者の派遣及び職務の遂行に適用する。
4 乙は、前3項の規定による調査について、甲が必要と認める場合に、甲が指定した者が甲を支援すること及び甲以外の防衛省の機関が甲に代わって行うことがあることにあらかじめ同意する。
5 甲は、前4項の規定による調査において、次の各号に掲げる事項を調査するものとし、乙はこれに応じなければならない。
⑴ WBS 要素ごとの実績コスト、第2項の規定による担当者がサンプル抽出した原始伝票等の証拠書類の額と原価元帳等に記帳された額との符合状況その他の帳票類の会計処理に関する事項
⑵ 複数の契約案件間で共通に発生するコストの配賦方法、実態その他の契約案件間の相互関係に関する事項
⑶ その他コストに関する調査を行う上で必要となる事項
(コストに関する調査の実施に係る保証)
第9条 甲は、前条第5項各号に掲げる事項を確認するため、次の各号に掲げる調査を行うものとし、乙は、甲に対し、甲が調査(次項に規定するフロアチェックの方法による場合を含む。)に際して必要と認める作業現場(製造現場、設計現場及び試験・検査現場並びにこれらの現場に関する原価管理を行う現場をいう。以下この条において同じ。)、資料、情報システム等へのアクセスを認め、その他甲の調査の円滑な実施を保証するものとする。
⑴ 帳票類、作業指示書、社内原価計算規則等の資料による調査(資料を複写して行う調査を含む。)
⑵ 関係する情報システムに直接アクセスして行う調査
⑶ 前号の情報システムに係るログ(履歴)を取得して行う調査
⑷ 作業員等(調査対象となる事業所において業務に従事する下請負者、委託先等に所属する者を含む。以下この条において同じ。)から直接に説明を聴取して行う調査
2 甲は、前項の調査の一環として、契約の履行期間中、事前に通知又は調整することなく、フロアチェック(作業現場において、作業員等から作業内容について直接に説明を聴取するとともに、聴取内容を作業指示書、帳票類等と突合して行う確認作業をいう。次項において同じ。)を随時実施することができる。
3 乙は、フロアチェックを含む調査の円滑な実施を保証する一環として、甲があらかじめ指定する甲の担当者に対し、この契約に関係する作業現場への随時の立入許可を契約履行期間中常続的に与えるものとする。