Contract
2018/3/8
トラブル防止
契約書チェックのポイント
xxxx法律事務所 弁護士 xx x
xxとは?
・私法上の効果(権利義務関係)の発生を目的としてなされる「合意」のこと。
・契約当事者は,個人,会社,組合,行政など様々。
・契約が成立すると,契約当事者間で,権利義務関係が発生する。
契約とは?
・権利義務関係の例-売買契約-
権利 | 義務 | |
売主 | 代金債権 | 目的物引渡債務 |
買主 | 目的物引渡債権 | 代金支払債務 |
売買契約のように当事者双方に権利も義務も発生する契約
が多い。
→双務契約
契約とは?
・民法典に定められている契約(典型契約)
贈与契約 売買契約 交換契約 消費貸借契約 使用貸借契約 賃貸借契約 雇用契約 請負契約委任契約 寄託契約 組合契約 終身定期金契約和解契約
→計13類型の契約が定められている。
契約とは?
・典型契約にぴったり当てはまらない取引きをしたい場合も当然ある。
→契約自由の原則があるので,自らで契約を作成すればよい。
・契約自由の原則
:契約内容については契約当事者で自由に定めてよい。
・ただし,行いたい取引がどの典型契約に近いかは検討する必要あり。
契約とは?
・契約は「合意」なので,原則として口頭で約束すれば成立する。
→契約を成立させること自体に契約書は必須ではない。
※書面がなければ成立しない契約もある(要式契約)
→保証契約,定期建物賃貸借契約等々。
※目的物を引渡さなければ成立しない契約もある(要物契約)
→使用貸借契約,寄託契約等々。
契約とは?
・契約書がないと・・・
・契約内容について契約当事者の認識がずれる。
・契約締結時は円満な関係でも,取引中に関係が悪化し,
トラブルに。
・トラブルになったときに解決が困難。
→契約書をしっかり作っておくことは非常に重要。
契約とは?
・契約書がきちんと作成されていると・・・
・トラブルが生じたときに有利に交渉が可能。
・裁判に発展したときに,重要な証拠となる。
・契約内容が明確化されるのでトラブルを防止することも可能。
契約締結時の着眼点
1 具体的な取引が,典型契約のどれに近いか
裁判で契約の解釈が争われた場合,典型契約のどの契約
類型に当てはまりそうか検討する。
→契約類型ごとに民法で,解除や損害賠償の要件や効果が異なる定め方をしていることがある。
→契約を締結するときも,締結しようとしている契約が典型契約のどの契約に近いかを考え,民法の原則を把握しなければならない。
契約締結時の着眼点
2 意図する取引の内容を明確化する
・取引の特殊性
→取引毎に個性があるのは当たり前。どのような取引をしたいのかはっきりさせておかなければ,契約書にも反映できない。
・何故この契約を締結するのか(契約の目的)
・契約で取引するものは具体的に何か(目的物)
→木材といった,抽象的なものでは×
材質,強度等々,できるだけ具体的に。
契約締結時の着眼点
2 意図する取引の内容を明確化する
・想定されるリスクを洗い出す。
→取引開始から終了時まで,考えられるリスクを想像。
相手方が義務を履行しない場合のリスク納期に遅れた場合のリスク
自分が目的物を調達できない場合のリスク目的物に問題がある場合のリスク
自然災害が生じた場合のリスク
・・・等々
→取引の特殊性から生じるリスクも検討。
契約締結時の着眼点
2 意図する取引の内容を明確化する
・リスクを回避するためには民法の原則をどう変えればよ
いかを検討。
→リスク回避のために原則を修正する形で契約書を作成。
契約締結時の着眼点
3 強行法規違反,公序良俗違反の確認
・完成した契約が,強行法規違反,公序良俗違反だと,契
約は無効。
→無効となっては意味がないので,検討が必要。
以上の作業を経て契約書がようやく完成。
契約書のチェックも同じように行う。
契約書の構成
1 要素
① 表題(タイトル)
② 印紙
③ 前文
④ 目的
⑤ 権利義務の内容
⑥ 条件,期限
⑦ 解除,損害賠償
⑧ 費用負担
⑨ 規定外事項
⑩ 準拠法・合意管轄
契約書の構成
2 ① 表題(タイトル)
・「〇〇契約書」とすることが多い。
→不動産売買契約書,建物賃貸借契約書
業務委託契約書,取引基本契約書等々
・「覚書」,「合意書」という表題でも,書面の内容から
権利義務関係が発生する合意内容であれば,契約となる。
→「契約」という言葉は仰々しいため使いたくないなどの場合は使わなくてもよい。
→表題がなくとも,契約書となる場合もある。
契約書の構成
3 ② 印紙
・印紙税が発生する文書は印紙を貼付して,消印。
→不動産譲渡に関する契約書,請負に関する契約書等は印紙税が発生する場合あり。
・印紙代の負担を明らかにしておくと良い(⑧も参照)。
契約書の構成
4 ③前文
・契約当事者が誰であり,どのような契約なのかを明らかにする部分。
→法人であれば登記されている企業名を記載する。
契約書の構成
5 ④ 目的
・契約を締結する場合は,何らかの目的があることが通常
→契約を締結する目的は必ず記載する。
→取引はしたけれども契約の目的を達成できない場合は取引をした意味がなくなる場合もある。
契約書の構成
5 ④ 目的
・第14条3項,4項
→目的が達成できない場合に解除が可能。支払い済みの金員も返還請求可能。
→不可抗力は想定可能で,その場合のリスクを回避。
→民法の規定でも同じように解除ができる可能性はある
が,予め契約書で明確に定めておいたほうが良い。
契約書の構成
6 ⑤ 権利義務の内容
・契約当事者間でどのような権利義務が発生するのかを過
不足なく反映させる。
→非常に重要。特に義務内容があやふやだと紛争になりやすい。
→売買契約だと,目的物についてはどのような目的物なの
か詳細に盛り込む必要あり。
契約書の構成
6 ⑤ 権利義務の内容
・第1条
・目的物:本件物件→登記通りに特定。
・代 金:消費税別であることを明記。
・第3条
→目的物は土地なので,隣接土地所有者等とトラブルに なっている可能性,第三者に貸している可能性など想定されるリスクは多々ある。
→目的物にそのようなリスクはないと甲が表明保証をする形でリスク回避。
契約書の構成
6 ⑤ 権利義務の内容
・第5条(売買対象面積)
→土地の実際の面積が,登記上の面積と異なる場合,契 約当事者が認識していた目的物とは異なる土地となる。
→面積の増減分を清算する形で解決。
契約書の構成
7 ⑥ 条件,期限
・条件
→停止条件:条件が成就したら法律効果が発生
→解除条件:条件が成就したら法律効果が消滅
・第10条
→金額が大きい売買では,買主は代金だけ支払い,目的物
が引き渡されない場合には損害が大きい等のリスクあり。
→売主の代金支払義務に停止条件を付けることで,一定の場合に,買主からの請求を拒否することが可能。
契約書の構成
8 ⑦ 解除,損害賠償
・解除
→契約に従った履行をしない場合は,契約を解除することは民法上の規定でも可能(法定解除)。
→解除事由を契約で広げることで,契約を解除することが民法よりも楽に行える(約定解除)。逆に,解除に制限を設けることで,契約を解除しにくくできる。
契約書の構成
8 ⑦ 解除,損害賠償
・解除
・第13条(手付解除)
→手付解除ができる時期に期限を設けており,民法よりも手付解除ができる時期が狭められている。
契約書の構成
8 ⑦ 解除,損害賠償
・損害賠償
→民法の損害賠償請求だと,損害額を立証しなければなら
なず,損害の立証は以外と難しいことが多い。
→契約書で損害賠償額の予定を用いることで立証の負担を軽減できる(民法420条)。
契約書の構成
8 ⑦ 解除,損害賠償
・損害賠償
・第15条2項
→損害賠償額の予定をすることで立証の負担が軽減。
・第17条(瑕疵担保責任)
→条項では「瑕疵」とされているが,具体的に考えられる瑕疵を規定してもよい。
→不動産の取引だと土壌汚染は考えられるリスクであり, これを「瑕疵」として規定してもよい。この契約書では,土壌汚染については18条で瑕疵担保責任とは別に手当 てしている。
契約書の構成
9 ⑧ 費用負担
・取引には各種費用がつきものなので,どちらが負担するかを明らかにしておく。
→振込手数料(第2条1項但書),移転登記費用(第9条
2項)
契約書の構成
10 ⑨ 規定外事項
・第21条(協議条項)
→一方的であったり不利益な条項だと非常に不利なので,要確認。
11 ⑩ 準拠法・合意管轄
・準拠法
→渉外取引の場合はどこの国の法律を使うのか定める。
→基本的に日本法を選択。
・合意管轄は,皆様は仙台地裁にすると楽。
弁護士に依頼するときは・・・
・契約書のチェック・作成は皆様でも行えますが,規模の大きい取引の場合は,一度ご相談下さい。
→取引の特殊性を一番知っているのは依頼者の方々なので,明確化の作業は深めていただけると助かります。
→前例のない取引,特殊な取引の場合は,ありうるリスクをできるだけ一緒に考えていただけると助かります。
ご清聴ありがとうございました