工事契約会計 P15、P16 工事契約会計 P17
第12章
「工事契約に関する会計基準」は本年度の試験より試験範囲となる新しい会計基準です。
従来は、工事契約については、長期請負工事の収益認識の方法など一部の会計処理についてのみ「企業会計原則」において定めがあるのみでしたが、「工事契約に関する会計基準」では工事契約全般に関する会計処理が定められています。
簿記では論点の多くない分野でしたが、簿記で扱っていない部分が多い会計基準ですので、少々骨が折れるかもしれません。
目
次
1 目的
2 範囲
3 定義
4 工事契約に係る認識の単位
5 工事契約に係る認識基準
6 工事進行基準の会計処理
7 工事完成基準の会計処理
8 工事契約から損失が見込まれる場合の取扱い
9 開示
1 目的
目 的
1.本会計基準は、工事契約に係る収益(以下「工事収益」という。)及びその原価(以下「工事原価」という。)に関し、施工者における会計処理及び開示について定めることを目的とする。
2.施工者における工事収益及び工事原価の会計処理については、他の会計基準等において本会計基準と異なる取扱いを定めている場合であっても、本会計基準の取扱いが優先して適用される。
3.平成 19 年 12 月 27 日に、本会計基準を適用する際の指針を定めた企
業会計基準適用指針第 18 号「工事契約に関する会計基準の適用指針」が公表されている。本会計基準の適用にあたっては、当該適用指針も参照する必要がある。
これまで我が国では、長期請負工事に関する収益の計上については、「企業会計原則」において工事進行基準又は工事完成基準のいずれかを選択適用することができるとされてきた。
12
このため、同じような請負工事契約であっても、企業の選択により異なる収益等の認識基準が適用される結果、財務諸表間の比較可能性が損なわれる場合があるとの指摘がなされていた。
第 章
加えて、四半期財務報告制度が導入されるなど、より適時な財務情報の提供への関心が高まったこと、さらに、会計基準の国際的なコンバージェンスの一環として、「工事契約に関する会計基準」が公表された。
工事契約の会計処理については、「企業会計原則」などに定めがあるが、「工事契約に関する会計基準」が優先して適用される。
2 範囲
▇ 囲
4.本会計基準は、工事契約に関して、施工者における工事収益及び工事原価の会計処理並びに開示に適用される。
本会計基準において「工事契約」とは、仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、土木、建築、造船や一定の機械装置の製造等、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うものをいう。
5.受注制作のソフトウェアについても、前項の工事契約に準じて本会計基準を適用する。
🗐基準
基準 30
🗄 文献
工事契約会計 P15、P16
🗐基準
基準 31
🗄 文献
工事契約会計 P17
🗏過去問
1995 問題17 ア
機械装置の製造であっても標準品を製造するような場合には、たとえその付随的な部分について顧客に一定の選択が認められているようなときであっても適用範囲には含まれない。(基準31)
(1)適用範囲
「工事契約に関する会計基準」は、『工事契約』の定義に該当するものを適用範囲としている。
工事契約:仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、土木、建築、造船や一定の機械装置の製造等、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うもの
従来、工事進行基準と工事完成基準の選択適用が認められていた結果、同様の請負工事契約に関して適用される収益の認識基準が企業の選択により異なる可能性があったことから、「工事契約に関する会計基準」ではそのような可能性を排除し、『工事契約』の内容に着目してその契約ごとに会社が適用すべき認識基準を明確にしている。
(2)適用範囲の具体的な検討
① 顧客の指示に基づいて行う請負製品製造
適用範囲に含まれるもの | 適用範囲に含まれないもの |
造船や、基本的な仕様や作業内容について顧客の指図に基づいて行う機械装置の製造に係る契約 | 機械装置の製造であっても標準品を製造するような場合(特定の顧客からの受注であっても、あらかじめ主要な部分について様の定まった ものを量産する場合を含む) |
工事は、典型的には土木・建築工事等、建設業において行われている取引を指すものとして用いられることが多い。しかし、「工事契約に関する会計基準」でいう『工事契約』はこれよりも広く、造船や、基本的な仕様や作業内容について顧客の指図に基づいて行う機械装置の製造に係る契約も含んでいる。
② 工事に係る部分と工事以外の部分とが含まれている場合
実質的な取引の単位の中に、工事に係る部分とそれ以外の部分とが含まれていても、全体として、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行う工事を目的とする契約であれば、実質的な取引の単位の全体について、『工事契約』として「工事契約に関する会計基準」を適用する。
付随的な工事の取扱い
しかし、契約内容に工事を伴っていても、その工事が全体として物の引渡しを目的とする契約に付随して行われるに過ぎない場合には、「工事契約に関する会計基準」の適用対象となる『工事契約』とはならない。
適用範囲に含まれるもの | 適用範囲に含まれないもの |
工事に係る部分とそれ以外の部分 とが含まれていても、全体として、基本的な仕様や作業内容を顧客の 指図に基づいて行う工事を目的と する契約 | 契約内容に工事を伴っていても、その工事が全体として物の引渡しを目的とする契約に付随して行われるに過ぎない場合 |
適用範囲に含まれるもの | 適用範囲に含まれないもの |
・ 移設や据付、試運転といった作業が、土木、建築、機械装置の製造等の工事契約に作業内容の一部として付随的に含まれる場合(一体として『工事契約』に該当) ・ 構築物等に関する移設や据付を目的とする工事が、土木工事や建築工事等として独立に取引された場合 | 移設や据付、試運転といった作業が、単に物の引渡しを目的とする契約に付随して行われる場合 |
③ 受注制作のソフトウェア
受注制作のソフトウェア取引については、契約の形態(請負契約の形態をとるか、準委任契約の形態をとるか等)を問わず適用範囲に含める。
(3)その他適用範囲に含まれないもの
・ 請負契約ではあっても専らサービスの提供を目的とする契約や外形上は工事契約に類似する契約であっても、工事に係る労働サービスの提供そのものを目的とするような契約
・ 交渉中の工事契約やそれ以前の段階の工事契約(当事者間で既に合意された工事契約のみが適用範囲となる)
🗐基準
基準 44
🗐基準
基準 31
🗐基準
12
基準 32
第 章
🗐基準
基準 30、31
3 定義
用語の定義
6.本会計基準における用語の定義は、次のとおりとする。
(1) 工事契約に係る「認識の単位」とは、工事収益及び工事原価の認識に係る判断を行う単位をいう。以下、「工事契約」という用語を用いる場合には、工事契約に係る「認識の単位」に属する範囲を指すものとする。
(2) 「工事契約に係る認識基準」とは、工事契約に関して工事収益及び工事原価を認識するための基準をいい、工事進行基準と工事完成基準とがある。
(3) 「工事進行基準」とは、工事契約に関して、工事収益総額(本項(5)参照)、工事原価総額(本項(6)参照)及び決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を認識する方法をいう。
(4) 「工事完成基準」とは、工事契約に関して、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、工事収益及び工事原価を認識する方法をいう。
(5) 「工事収益総額」とは、工事契約において定められた、施工者が受け取る対価の総額をいう。
(6) 「工事原価総額」とは、工事契約において定められた、施工者の義務を果たすための支出の総額をいう。工事原価は、原価計算基準に従って適正に算定する。
(7) 「原価比例法」とは、決算日における工事進捗度を見積る方法のうち、決算日までに実施した工事に関して発生した工事原価が工事原価総額に占める割合をもって決算日における工事進捗度とする方法をいう。
🗐基準
基準 34
企業会計原則 第二・3・F
🗏過去問
2004 問題12 オ
2002 問題15 オ
2000 問題20 オ
1997 問題15 ウ
販売費及び一般管理費の工事契約への配分
「企業会計原則」では、「長期の請負工事については、販売費及び一般管理費を適当な比率で請負工事に配分し、売上原価及び期末たな卸高に算入することができる。」と定めている。しかし、「工事契約に関する会計基準」の適用後は、工事原価の範囲は、適正な原価計算基準に基づいて合理的に定まると考えられることなどから、この定めについては適用しないこととされている。
4 工事契約に係る認識の単位
会計処理
工事契約に係る認識の単位
7.工事契約に係る認識の単位は、工事契約において当事者間で合意された実質的な取引の単位に基づく。
工事契約に関する契約書は、当事者間で合意された実質的な取引の単位で作成されることが一般的である。ただし、契約書が当事者間で合意された実質的な取引の単位を適切に反映していない場合には、これを反映するように複数の契約書上の取引を結合し、又は契約書上の取引の一部をもって工事契約に係る認識の単位とする必要がある。
8.工事収益及び工事原価は、工事契約に係る認識の単位ごとに、工事契約に係る認識基準を適用することにより計上する。
(1)『認識の単位』の意義
工事契約に係る『認識の単位』とは、工事収益及び工事原価の認識に係る判断を行う単位をいう。工事収益及び工事原価は、工事契約に係る『認識の単位』ごとに、工事契約に係る認識基準を適用することにより計上される。
(2)工事契約に係る認識の単位
ある取引を行う場合、取引の内容をどのようなものとするのか、取引の単位をどのようなものとするのか等の事項は、すべての当事者間の契約において合意される事項であり、会計処理は合意された取引の実態を▇▇に反映するように、実質的な取引の単位に基づいて行う必要がある。
したがって、工事契約について認識に関する判断を行う単位は、工事契約において当事者間で合意された実質的な取引の単位に基づく。
工事契約の実質的な取引の単位が有する特徴は、施工者がその範囲の工事義務を履行することによって、顧客から対価に対する確定的な請求権を獲得すること(既に対価の一部又は全部を受け取っている場合には、その受け取った額について、確定的に保有する権限を獲得すること)である。
(3)契約書の作成単位の関係の結合・分割
工事契約に関して取引に関する合意の確証として交わされる契約書は、当 事者間で合意された実質的な取引の単位で作成されることが一般的である。しかし、契約書が当事者間で合意された実質的な取引の単位を反映してい ない場合には、工事収益及び工事原価は、形式的な契約書上の取引にとらわ
れることなく、実質的な取引の単位に基づいて認識される必要がある。
そのため、契約書が当事者間で合意された実質的な取引の単位を適切に反映していない場合には、これを反映するように複数の契約書上の取引を結合し、又は契約書上の取引の一部をもって(契約書上の取引を分割し)工事契約に係る認識の単位とする必要がある。
🗐基準
基準 6・(1)
🗐基準
基準 41、43
🗐基準
12
第 章
基準 42
5 工事契約に係る認識基準
会計処理
工事契約に係る認識基準
9.工事契約に関して、工事の進行途上においても、その進捗部分について成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を適用し、この要件を満たさない場合には工事完成基準を適用する。
成果の確実性が認められるためには、次の各要素について、信頼性をもって見積ることができなければならない。
(1) 工事収益総額(第 10 項及び第 11 項参照)
(2) 工事原価総額(第 12 項参照)
(3) 決算日における工事進捗度(第 13 項参照)
🗐基準
基準 1、6・(2)~(6)
2008 | 問題10 | オ |
1998 | 問題12 | ウ |
1995 | 問題16 | オ |
🗏過去問
(1)工事契約に係る認識基準の意義
『工事契約に係る認識基準』とは、工事契約に関して工事収益(工事契約に係る収益)及び工事原価(工事契約に係る原価)を認識するための基準をいい、工事進行基準と工事完成基準とがある。
工事完成基準 | 工事進行基準 | |
意 義 | 工事契約に関して、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、工事収益及び工事原価を認識する方法 | 工事契約に関して、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を認識す る方法 |
収益の認識規準 との関係 | 実現主義の適用 | 発生主義の適用 |
財務報告の目的:財務諸表の利用者が不確実な将来の成果である企業の将来キャッシュ・フローの予測、ひいては企業価値の評価に役立つ財務情報を提供すること
(2)収益認識と成果の確実性
財務報告の目的を達成するためには、企業が資金をどのように投資し、投資にあたって期待された成果に対して実際にどれだけ成果を上げているかについての情報を提供することが重要である
🗐基準
基準 37~39
🗏過去問
2007 問題16 ウ
したがって
実績としての成果は、投資にあたって事前に期待されていた成果が事実となったと認められる時点(成果の確実性が得られた時点)で把握すべきである
工事完成基準による収益認識と成果の確実性 |
供給者側が契約上の義務をすべて履行した段階、すなわち、物の引渡しを目的とする売買契約においては引渡しを行った時点、工事の完成と完成した物の引渡しを目的とする工事契約においては完成・引渡しを行った時点で、通常、成果の確実性が認められる |
工事進行基準による収益認識と成果の確実性 |
工事契約については、一定の条件が整えば当該工事の進捗に応じて対応する部分の成果の確実性が認められる場合がある 当事者間で基本的な仕様や作業内容が合意された工事契約について、施工者がその契約上の義務のすべてを果たし終えておらず、法的には対価に対する請求権を未だ獲得していない状態であっても、会計上はこれと同視し得る程度に成果の確実性が高まった場合には、収益として認識することが適切である |
このように
一般に、実現主義により商品等の販売又は役務の給付によって実現した段階で収益を認識されるのも、収益は成果の確実性が得られた段階で認識すべきであるとの考え方に基づいている。
(基準36、37)
12
第 章
同じ工事契約であっても、例えば、その工事に必要とされる技術が確立されていて完成の確実性が高い状況と、そうでない状況とでは、適用すべき収益の認識基準は必ずしも同一ではない
🗏過去問
1998 問題12 ウ
工事契約が割賦販売と同様に長期にわたって代金回収されることとなっていても、代金の回収期限到来の日や入金の日をもって、回収期限到来基準又は回収基準により工事収益及び工事原価を認識することは認められていない。(基準45)
🗐基準
基準 38、40、45
(3)工事契約に係る認識基準の識別
工事の進行途上においても、その進捗部分について成果の確実性が認められるという要件 | 満たす | 工事進行基準を適用 工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期 の工事収益及び工事原価を認識する |
満たさない | 工事完成基準を適用 工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、工事収益及び工事原価を認識する |
『投資のリスクからの解放』概念と工事契約に係る認識基準
「概念フレームワーク」では、収益及び費用は、投下資金が投資のリスクから解放された時点で把握されるとされている。ここで、投資のリスクとは、投資の成果の不確定性を意味し、投資にあたって期待された成果が事実となれば、それはリスクから解放されることになるとされている。
このように
投資のリスクからの解放概念によれば、収益や費用は、事前の投資にあたって期待された成果に対比される事実が生じ、投資がリスクから解放された時点で把握される。
ここで
工事契約による事業活動は、工事の遂行を通じて成果に結び付けることが期待されている投資であり、そのような事業活動(工事の遂行)を通じて、徐々に成果の確実性が得られ、投資のリスクから解放されるものと考えられる。
したがって
工事契約に基づく工事の進捗に応じて、それに対応する部分について成果の確実性が認められるような場合には工事進行基準を適用し、工事の進捗に応じた当期の工事収益及び工事原価を認識する。
一方、この要件に当てはまらない場合には、工事完成基準を適用し、通常、成果の確実性が認められることとなる完成・引渡し時点で工事収益及び工事原価を認識する。
投資のリスクから解放された時点で収益及び費用を把握するという考え方の背景には、投資家は、投資にあたって期待された成果に対して実際にどれだけの成果が得られたのかについての情報を求めているとの理解がある。(基準40)
成果の確実性が得られた時点と投資のリスクから解放された時点は同義である。(基準40)
工期の長さと工事契約に係る認識基準の識別
「企業会計原則」では、長期の請負工事に関する収益認識について、工事進行基準又は工事完成基準のいずれかの選択適用が可能なものしていたが、「工事契約に関する会計基準」では、その進捗部分について成果の確実性によって収益認識規準を識別するため、長期の請負工事でなくとも、会計期間をまたぐ工事については工事進行基準を適用すべき場合がある。このため、「工事契約に関する会計基準」では、工事契約に係る認識基準を識別する上で、特に工期の長さには言及していない。
しかし、工期がごく短いものは、通常、金額的な重要性が乏しいばかりでなく、工事契約としての性格にも乏しい場合が多いと想定されるため、工事進行基準を適用して工事収益総額や工事原価総額の按分計算を行う必要はなく、通常、工事完成基準を適用することになる。
🗐基準
基準 52、53
🗄 文献
新会計基準 P268
成果の確実性が認められない場合の工事契約に係る認識基準
12
第 章
成果の確実性が認められない場合の工事契約に係る認識基準としては、工事完成基準のほか、工事原価を発生した期間に費用として計上しつつ、工事原価のうち回収可能性が高い部分についてのみ工事収益を計上するという方法(ex.工事原価回収基準)も考えられるが、成果の確実性がないと判断されたにもかかわらず収益を認識する方法には合理性がない考えられるため、「工事契約に関する会計基準」ではこれを採用していない。
🗐基準
基準 54
(4)成果の確実性が認められるための条件
🗐基準
基準 46
① 工事収益総額
② 工事原価総額
③ 決算日における工事進捗度
①~③の各要素について、信頼性をもって
見積ることができること
①~③の各要素は、①工事収益総額、②工事原価総額及び③決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を認識
成果の確実性が認められるためには、決算日までの工事の進捗が最終的に
対価に結び付き、①工事収益総額、②工事原価総額及びそのうち決算日までに成果として確実になった部分の割合、すなわち③決算日における工事進捗度について、信頼性をもって見積ることができなければならない。
このように、工事進行基準を適用するためには、国際的な会計基準と同様に、工事結果の信頼性のある見積りができることが必要である。
するという工事進行基準の手続に対応している。(工事契約会計 P41)
成果の確実性が認められるための前提
12
第 章
成果の確実性が認められる条件の前提として、対象となる工事契約には実体がなければならない。形式的に工事契約書が存在していても、容易に解約されてしまうような場合には、工事契約の実体があるとはいえない。前提となる工事契約に実体があるといえるためには、工事契約が解約される可能性が少ないこと、又は、仮に工事途上で工事契約が解約される可能性があっても、解約以前に進捗した部分については、それに見合う対価を受け取ることの確実性が存在することが必要である。
🗐基準
基準 47
🗐基準
工事収益総額:工事契約において定められた、施工者が受け取る対価の総額
基準 6・(5)
① 工事収益総額の信頼性をもった見積り
会計処理
工事契約に係る認識基準
(工事収益総額の信頼性をもった見積り)
10.信頼性をもって工事収益総額を見積るための前提条件として、工事の完成見込みが確実であることが必要である。このためには、施工者に当該工事を完成させるに足りる十分な能力があり、かつ、完成を妨げる環境要因が存在しないことが必要である。
11.信頼性をもって工事収益総額を見積るためには、工事契約において当該工事についての対価の定めがあることが必要である。「対価の定め」とは、当事者間で実質的に合意された対価の額に関する定め、対価の決済条件及び決済方法に関する定めをいう。対価の額に関する定めには、対価の額が固定額で定められている場合のほか、その一部又は全部が将来の不確実な事象に関連付けて定められている場合がある。
🗐基準
基準 48
1)信頼性をもって見積るための条件①-工事の完成見込みが確実であること
工事の完成見込みが確実であることが必要
施工者に当該工事を完成させるに足りる十分な能力がある
+
完成を妨げる環境要因が存在しないこと
信頼性をもって工事収益総額を見積るためには、その前提として、最終的にその工事が完成することについての確実性が求められる。そのためには、施工者には当該工事を完成させるに足りる能力が求められる。また、工事が完成するのに必要な環境条件も整っていなければならない。したがって、施工者自身に係るものであるか否かを問わず、工事の完成を妨げる可能性のある重要な要因が存在する場合には、この要件を満たさないことになる。
2)信頼性をもって見積るための条件②-対価の定めがあること
対価の定め:当事者間で実質的に合意された(a)対価の額に関する定め、(b)対価の決済条件及び(c)決済方法に関する定め
信頼性をもって工事収益総額を見積るためには、工事契約において当該工事についての対価の定めがあることが必要である。
12
第 章
工事契約においては、対価の額があらかじめ固定額で定められることが多いが、対価の一部又は全部を、将来の不確実な事象(例えば、将来の資材価格等)に関わらせて定めることもある。工事進行基準の適用に際しては、工事収益総額について信頼性をもって見積ることができることが前提となっており、このような場合には、工事進行基準を適用する上で、工事収益総額について合理的な見積りを行うことになる。
🗐基準
基準 49
(a)対価の額に関する定めには、対価の額が固定額で定められている場合のほか、その一部又は全部が将来の不確実な事象に関連付けて定められている場合が含まれる。(基準11)
🗐基準
基準 6・(6)、33
工事原価は、原価計算基準に従って適正に算定する。(基準 6・(6))
🗐基準
基準 50
② 工事原価総額の信頼性をもった見積り
1)工事原価総額の意義
工事原価総額:工事契約において定められた、施工者の義務を果たすための支出の総額
工事原価総額には、工事契約に係る認識の単位に含まれる施工者の義務を果たすためのすべての原価が含まれる。例えば、ある工事契約により、施工者が目的物を完成し、顧客に引き渡す義務を負っている場合には、目的物の完成に必要な原価のみならず、その引渡しの作業に要する原価も含まれる。
2)信頼性をもって見積るための条件
会計処理
工事契約に係る認識基準
(工事原価総額の信頼性をもった見積り)
12.信頼性をもって工事原価総額を見積るためには、工事原価の事前の見積りと実績を対比することにより、適時・適切に工事原価総額の見積りの見直しが行われることが必要である。
工事進行基準を適用するためには、工事原価総額についても、信頼性をもって見積ることができる必要があるが、工事原価総額は、工事契約に着手した後も様々な状況の変化により変動することが多い。
このため、信頼性をもって工事原価総額の見積りを行うためには、こうした見積りが工事の各段階における工事原価の見積りの詳細な積上げとして構成されている等、実際の原価発生と対比して適切に見積りの見直しができる状態となっており、工事原価の事前の見積りと実績を対比することによって、適時・適切に工事原価総額の見積りの見直しが行われることが必要である。
この条件を満たすためには、当該工事契約に関する実行予算や工事原価等に関する管理体制の整備が不可欠であると考えられる。このため、工事契約に金額的な重要性がない等の理由により、個別にこうした管理が行われていない工事契約については、工事原価総額について信頼性をもって見積ることができないものとされ、工事進行基準の適用要件を満たさない。
🗐基準
基準 51
受注制作のソフトウェアの工事原価総額の見積り
受注制作のソフトウェアについては、工事原価総額の信頼性のある見積りの可否が特に問題となる。ソフトウェアの制作を受注する場合、当初に仕様の詳細まで詰められない場合もあり、また、想定外の事象の発生などによって、追加的な工数が生じやすいなど、適切な原価総額の見積りが困難な場合も少なくない。一般的に、ハードウェアの供給を目的とする取引と比較すると、ソフトウェアの開発途上において信頼性をもって工事原価総額を見積るためには、原価の発生やその見積りに対するより高度な管理が必要となる。
③ 決算日における工事進捗度の信頼性をもった見積り
🗐基準
決算日における :工事契約に係る認識の単位に含まれている施工者の履
工事進捗度
行義務全体のうち、決算日までに遂行した部分の割合
基準 6・(7)、15、35
会計処理
工事契約に係る認識基準
(決算日における工事進捗度の信頼性をもった見積り)
13.決算日における工事進捗度を見積る方法として原価比例法を採用する場合には、前項の要件が満たされれば、通常、決算日における工事進捗度も信頼性をもって見積ることができる。
施工者が工事契約の義務を履行するために、単に目的物を完成させるだけでなく、その移設や据付等、引渡しのための作業が必要となる場合には、そのような付随的な作業内容を含む施工者の履行義務全体のうち、決算日までに遂行した部分の割合をいう。(基準35)
決算日における工事進捗度は、原価比例法等の、工事契約における施工者の履行義務全体との対比において、決算日における当該義務の遂行の割合を合理的に反映する方法を用いて見積ることとされている
ここで
原価比例法:決算日における工事進捗度を見積る方法のうち、決算日までに実施した工事に関して発生した工事原価が工事原価総額に占める割合をもって決算日における工事進捗度とする方法
原価比例法については「6工事進行基準の会計処理」を参照すること。
したがって
12
第 章
決算日における工事進捗度を見積る方法として原価比例法を採用する場合には、工事原価総額について、信頼性をもって見積もることができれば、通常、決算日における工事進捗度も信頼性をもって見積ることができる
🗐基準
基準 55
適用指針 3、4、13、16、17
例えば、実行予算の管理体制が不十分であることから、施工当初の段階では「成果の確実性」の要件を満たすことができなかったが、その後の工事の最終段階に至って、発生原価がほぼ確定したことにより工事原価総額の信頼性をもった見積りができるようになった場合があげられる。(新会計基準P271)
事後的にみれば、当初認められた成果の確実性が失われた以上、それまでに計上した工事収益及び工事原価の修正を要するという見方もあり得る。(適用指針17)
(5)成果の確実性の事後的な獲得及び喪失
工事契約に関する 認識基準 | 認識基準を変更することの可否 | |
成果の確実性の事後的な獲得 | 工事完成基準 ⇒ 工事進行基準 | 単に工事の進捗に伴って完成が近づいたために成果の確実性が相対的に増したことのみをもって、変更する ことは認められない |
成果の確実性の事後的な喪失 | 工事進行基準 ⇒ 工事完成基準 | 工事進行基準を継続して適用することはできないため、成果の確実性が事後的に失われた時点以降は、工事 完成基準を適用する |
① 成果の確実性の事後的な獲得
工事進行基準を適用する要件を満たさないため工事完成基準を適用している工事契約について、その後、単に工事の進捗に伴って完成が近づいたために成果の確実性が相対的に増すことがあるが、このことのみをもって途中で工事契約に係る認識基準の変更を容認した場合、収益認識の恣意的な操作のおそれがある。
したがって、工事が進捗し、工事の完成が近づいたことによって成果の確実性が増した場合でも、そのことのみを理由として、工事契約に係る認識基準を工事完成基準から工事進行基準に変更することは認められない。
② 成果の確実性の事後的な喪失
工事進行基準の適用要件を満たすと判断された工事契約について、事後的な事情の変化により成果の確実性が失われた場合には、工事進行基準の適用要件を満たさないため、それ以降は工事進行基準を継続して適用することはできない。したがって、成果の確実性が事後的に失われた時点以降の工事収益及び工事原価の認識については、工事完成基準を適用することになる。
この場合、それまでに計上した工事収益及び工事原価の取扱いが問題と なるが、事後的な事情の変化は会計事実の変化と考え、工事収益及び工事 原価を計上した時点で成果の確実性が認められていたとすれば、そのよう な工事収益及び工事原価の認識に問題はないため、事後的な修正は行わず、原則として過去の会計処理に影響を及ぼさない。
6 工事進行基準の会計処理
会計処理
工事進行基準の会計処理
(工事進行基準の適用による工事収益及び工事原価の計上)
14.工事進行基準を適用する場合には、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を損益計算書に計上する。
工事進行基準を適用する場合、発生した工事原価のうち、未だ損益計算書に計上されていない部分は「未成工事支出金」等の適切な科目をもって貸借対照表に計上する。
(決算日における工事進捗度の見積方法)
15.決算日における工事進捗度は、原価比例法等の、工事契約における施工者の履行義務全体との対比において、決算日における当該義務の遂行の割合を合理的に反映する方法を用いて見積る。工事契約の内容によっては、原価比例法以外にも、より合理的に工事進捗度を把握することが可能な見積方法があり得る。このような場合には、原価比例法に代えて、当該見積方法を用いることができる。
(1)工事進行基準の意義
工事進行基準:工事契約に関して、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を認識する方法
当期の工事収益 | 工事収益総額 | × | 決算日における工事進捗度 | - | 過年度の 工事収益計上額 |
当期の工事原価 | 工事原価総額 | × | 決算日における工事進捗度 | - | 過年度の 工事原価計上額 |
工事契約に関して、工事の進行途上においても、その進捗部分について成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を適用し、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を損益計算書に計上する。
🗐基準
基準 6・(3) 適用指針 設例1
12
第 章
当期の工事収益に対応する工事原価が損益計算書に計上される。
(2)『決算日における工事進捗度』の見積方法
決算日における工事進捗度は、原価比例法等の、工事契約における施工者の履行義務全体との対比において、決算日における当該義務の遂行の割合を合理的に反映する方法を用いて見積る。
🗐基準
基準 56
① 原価比例法
決算日における
工事進捗度
=
当期末までに発生した工事原価の累計額
工事原価総額
原価比例法:決算日における工事進捗度を見積る方法のうち、決算日までに実施した工事に関して発生した工事原価が工事原価総額に占める割合をもって決算日における工事進捗度とする方法
🗄 文献
新会計基準 P268、P269
原価比例法を用いる場合の当期の工事収益 | 当期末までに発生した 工事原価の累計額 過年度の 工事収益総額 × - 工事収益計上額工事原価総額 |
原価比例法を 用いる場合の | 当期末までに発生した - 過年度の = 当期に発生した 工事原価の累計額 工事原価計上額 工事原価 |
当期の工事原価 |
ただし、原価比例法による場合であっても、発生した工事原価が工事原価総額との関係で、決算日における工事進捗度を合理的に反映しない場合には、これを合理的に反映するように調整が必要となる。
② 原価比例法以外の合理的な見積方法
決算日における工事進捗度の合理的な見積方法としては、工事契約の内容のいかんにかかわらず、広く適用可能な原価比例法が用いられてきたが、工事契約の内容によっては、原価比例法以外にも決算日における工事進捗度をより合理的に把握する方法もあり得る。
このような場合には、原価比例法に代えて、当該見積方法を用いることができる。
(具体例)
・ 工事の進捗が工事原価総額よりも直接作業時間とより関係が深いと考えられる状況において、直接作業時間比率を決算日における工事進捗度の見積方法とする
・ 工事原価の発生よりも施工面積の方がより適切に工事の進捗度を反映していると考えられる状況では、施工面積比率を決算日における工事進捗度の見積方法とする
🗐基準
基準 56、57
工事進行基準を適用しても「未成工事支出金」等が計上される場合
次の場合には、工事進行基準を適用しても損益計算書に計上できない原価が残ることがあり、発生した工事原価のうち、未だ損益計算書に計上されていない部分が
「未成工事支出金」等の適切な科目をもって貸借対照表に計上される。
・ 決算日における工事進捗度の合理的な見積方法として原価比例法を用いるが、発生した工事原価が工事原価総額との関係で、決算日における工事進捗度を合理的に反映しないため、これを合理的に反映するように調整した場合
・ 決算日における工事進捗度の合理的な見積方法として原価比例法以外の方法を用いている場合
🗄 文献
新会計基準 P269
🗏過去問
12
第 章
1997 問題12 ウ
🗐基準
基準 58
(3)見積りの変更
会計処理
工事進行基準の会計処理
(見積りの変更)
16.工事進行基準が適用される場合において、工事収益総額、工事原価総額又は決算日における工事進捗度の見積りが変更されたときには、その見積りの変更が行われた期に影響額を損益として処理する。
・ 見積りの変更の影響額を将来に向かって調整する方法
・ 見積りを変更した期にすべての影響額を反映する方法(現行制度の方法)
見積りの変更の影響額を財務諸表に反映する方法として、いずれの方法を採用することが適切であるかは、当該見積りの変更の影響がいずれの期間と関係したものかにより異なるが、いずれの実態も存在し得るため、一概にいずれの方法がより優れているということは難しい
しかし
・ 見積りの変更は、事前の見積りと実績とを対比した結果として求められることが多く、こうした場合には、修正の原因は当期に起因することが多いと考えられる
・ 実務上の便宜を考慮
したがって
現行制度上、変更した期にすべての影響額を反映する方法を採用し、工事収益総額、工事原価総額又は決算日における工事進捗度の見積りが変更されたときには、その見積りの変更が行われた期に影響額を損益として処理することとしている
工事契約の変更の取扱い
既存の工事契約に関して、当事者間の新たな合意等によって、工事の追加や削減、
工事の内容の変更もしくは対価の定めの変更が行われることがある。
工事契約の変更:当事者間の実質的な合意による工事の追加や削減、工事の内容又は対価の定めの変更のうち、これらの変更が当初の工事契約とは別の認識の単位として扱われないもの
🗐基準
適用指針 5、20
工事の追加、内容の変更等と 工事契約に係る認識の単位の関係 | 会計処理 |
当初の工事契約とは 別の認識の単位として扱われない (工事契約の変更) | 見積りの変更として処理 |
既存の契約部分とは 別の認識の単位とすべき | 既存の契約部分とは独立して処理 |
(4)工事進行基準の適用により計上される未収入額
🗐基準
基準 59
会計処理
工事進行基準の会計処理
(工事進行基準の適用により計上される未収入額)
17.工事進行基準を適用した結果、工事の進行途上において計上される未収入額については、金銭債権として取り扱う。
工事進行基準を適用した結果、当期の工事収益に見合って未収入額が計上されるが、この工事の進捗に応じて計上される未収入額は、法的は未だ債権とはいえない
しかし
12
第 章
工事進行基準は、法的には対価に対する請求権を未だ獲得していない状態であっても、会計上はこれと同視し得る程度に成果の確実性が高まった場合にこれを収益として認識するものであり、この場合の未収入額は、会計上は法的債権に準ずるものと考えることができる
したがって
工事進行基準の適用により計上される未収入額は、金銭債権として取り扱う
・ 工事契約に関する入金があった場合には、計上されている未収入額から入金相当額を減額する
・ 回収可能性に疑義がある場合には、貸倒引当金の計上が必要となる
・ 外貨建てである場合には、原則として決算時の為替相場による円換算額を付す
🗏過去問
1997 問題12 ウ
7 工事完成基準の会計処理
会計処理
工事完成基準の会計処理
18.工事完成基準を適用する場合には、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、工事収益及び工事原価を損益計算書に計上する。
工事の完成・引渡しまでに発生した工事原価は、「未成工事支出金」等の適切な科目をもって貸借対照表に計上する。
工事完成基準:工事契約に関して、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、工事収益及び工事原価を認識する方法
工事契約に関して、工事の進行途上においても、その進捗部分について成果の確実性が認められるという要件を充たさない場合には、工事完成基準を適用し、工事の完成・引渡しまでに発生した工事原価は、「未成工事支出金」等の適切な科目をもって貸借対照表に計上するとともに、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、工事収益及び工事原価を損益計算書に計上する。
8 工事契約から損失が見込まれる場合の取扱い
会計処理
工事契約から損失が見込まれる場合の取扱い
19.工事契約について、工事原価総額等(工事原価総額のほか、販売直接経費がある場合にはその見積額を含めた額)が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、その超過すると見込まれる額(以下「工事損失」という。)のうち、当該工事契約に関して既に計上された損益の額を控除した残額を、工事損失が見込まれた期の損失として処理し、工事損失引当金を計上する。
20.前項の取扱いは、当該工事契約について適用されている工事契約に係る認識基準が工事進行基準であるか工事完成基準であるかにかかわらず、また、工事の進捗の程度にかかわらず適用される。
工事損失:工事原価総額等(工事原価総額のほか、販売直接経費がある場合にはその見積額を含めた額)が工事収益総額を超過すると見込まれる額
工事損失 = 工事原価総額(+販売直接経費の見積額)-工事収益総額
(1)工事損失
正常な利益を獲得することを目的とする企業行動において、投資額を回収できないような事態が生じた場合には、将来に損失を繰り延べないための会計処理が求められている
🗐基準
基準 60、61
例えば
有価証券や固定資産の減損処理、通常の販売目的で保有する棚卸資産の簿価切下げ等がこれに当たり、財務諸表利用者に有用な情報を提供することができるものと考えられる
ここで
12
第 章
工事契約において損失が見込まれる場合に、当該損失を見込まれた期の損失として計上する会計処理も、そのような事態において、将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理であると考えられる。
したがって
工事契約を履行することによって、最終的に損失が発生すると見込まれる場合には、当該工事契約から発生すると見込まれる損失について、見込まれた期の損失として処理しなければならない
🗐基準
基準 62、63
企業会計原則注解 注18
🗏過去問
1995 問題17 ア
(2)工事損失引当金の設定による損失の計上
現行制度上、将来の特定の費用に加え、将来の特定の損失についても引当金の計上を求められており、このような特定の損失の引当金については、将来の発生が見込まれる損失の全額について、発生が見込まれた期の負担に属する金額として、引当金の計上が行われている(ex.債務保証損失引当金、損害補償損失引当金)
したがって
工事契約から将来発生が見込まれる損失についても、引当金計上の要件を満たせば、同様の処理が必要になる
引当金計上の要件 | 具体的な検討 |
(1) 将来の特定の費用 又は損失であること | 特定の工事契約の履行により発生すると見込ま れる損失は『将来の特定の損失』に当たる |
(2) その発生が当期以前の事象に起因すること | 工事契約の締結以後に生じた施工者に起因する設計変更、工事の進捗遅延による経費の増加、想定外の資材価格の高騰等、そのいずれもが過去の事象に起因するものであある + 工事契約を締結した当初から損失が見込まれるような場合であっても、損失の発生はそのような工事契約を締結したという過去の事象に起因していると考えることができる 損失が発生すると見込まれることになる原因は様々であるものの、いずれの原因による場合であっても、『その発生が当期以前(過去)の事象 に起因する』ものと考えることができる |
(3) 発生の可能性が高い こと | 工事契約により異なる |
(4) その金額を合理的に 見積ることができること |
このため
工事損失引当金を計上すべき状況 | 工事損失の発生の可能性が高く、かつ、 その金額を合理的に見積ることができる場合 |
工事損失引当金の計上額 | 当該工事契約に関して、今後見込まれる損失の額 当該工事契約に関して工事損失 - 既に計上された損益の額 |
為替相場の変動により工事損失が見込まれる場合
工事収益の通貨と、発生する工事原価の通貨とが一致しない場合、それらの通貨間の為替相場の変動が、見込まれる工事損失の金額や工事損失引当金計上の要否の判断に影響を及ぼす可能性がある。
このような場合には、見込まれる工事損失の中に為替相場の変動による部分が含まれていても、工事損失引当金の計上の要否の判断及び計上すべき工事損失引当金の額の算定ともに、為替相場の変動による影響額も含めて行う。
🗐基準
適用指針 8、27、29
工事損失引当金の計上の会計処理と工事契約に係る認識基準
信頼性をもった見積りと合理的な見積りという類似の要素が含まれていても、工事進行基準を適用するための要件と、工事損失について工事損失引当金を計上するための要件とは異なっている。工事損失引当金の計上の会計処理は、その要件を満たす限りにおいて、当該工事契約について適用されている工事契約に係る認識基準を問わず(工事進行基準であるか工事完成基準であるかにかかわらず)適用される。
🗐基準
基準 20、68
工事損失引当金の計上の会計処理は、工事契約に係る認識基準にかかわらず、また、工事の進捗の程度にもかかわらず(進捗率がゼロであっても)適用される。(基準20、新会計基準P271)
(3)工事損失引当金の取崩し
工事損失引当金は、①工事の進捗や完成・引渡しにより、工事損失が確定した場合又は②工事損失の今後の発生見込額が減少した場合には、それに対応する額を取り崩す。
(4)工事進行基準を適用している場合の留意点
① 工事損失引当金計上後の工事契約に係る認識規準
工事進行基準を適用している工事契約について、工事損失引当金を計上する場合であっても、工事進行基準適用の要件を満たしている限りは、引き続き工事進行基準を適用する。
② 工事損失引当金の残高
工事損失引当金の計上後も工事進行基準適用の要件を満たしており、工事進行基準が適用されている工事契約について、工事の進捗に伴って新たな損益が計上された場合には、その損益に対応して工事損失引当金の金額が修正される
🗐基準
基準 64
🗐基準
基準 69
🗏過去問
1999 問題12 オ
12
第 章
このため
工事損失引当金の残高は、工事損失の見込額のうち、当該工事契約に関して既に計上された損益の額を除いた残額(すなわち、当該工事契約に関して今後見込まれる損失の額)となる
9 開示
開 示
表 示
21.第 19 項の工事損失引当金の繰入額は売上原価に含め、工事損失引当金の残高は、貸借対照表に流動負債として計上する。なお、同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がともに計上されることとなる場合には、貸借対照表の表示上、相殺して表示することができる。
注記事項
22.工事契約に関しては、次の事項を注記する。
(1) 工事契約に係る認識基準
(2) 決算日における工事進捗度を見積るために用いた方法
(3) 当期の工事損失引当金繰入額
(4) 同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がともに計上されることとなる場合には、次の①又は②のいずれかの額(該当する工事契約が複数存在する場合にはその合計額)
① 棚卸資産と工事損失引当金を相殺せずに両建てで表示した場合その旨及び当該棚卸資産の額のうち工事損失引当金に対応する額
② 棚卸資産と工事損失引当金を相殺して表示した場合その旨及び相殺表示した棚卸資産の額
(2)の注記に関しては、原価比例法を適用している場合にはその旨を注記することになり、原価比例法以外の見積方法を適用している場合には、適用した方法
12
第 章
についての具体的な説明を注記する。(基準70)
(1)工事損失引当金の表示及び注記
工事損失引当金繰入額 | 売上原価 | |
工事損失引当▇ | ▇ ▇ | 流動負債 |
容 認 | 同一の工事契約に関する 棚卸資産と工事損失引当金が ともに計上されることとなる場合 貸借対照表の表示上、 棚卸資産と工事損失引当金を 相殺して表示することができる | |
🗄 文献
新会計基準 P269
🗄 文献
工事契約会計 P110
① 工事損失引当金繰入額の表示
工事損失引当金繰入額は、通常、売上原価となる工事原価総額等が工事収益総額を超過すると見込まれる場合、将来に損失を繰り延べないように、当該超過額を当期の損失として処理することによって生じたものであり、工事収益に対応する損失として、売上原価に含める。
② 工事損失引当金の表示
1)原則的な表示区分
完成するまでに1年を超えて長期にわたる工事があるため、ワン・イヤー・ルールにより区分すべきとも考えられる
しかし
工事損失引当金は、企業の主目的である営業活動に係る引当金である
したがって、
正常営業循環基準により、工事損失引当金の残高は、貸借対照表に流動負債として計上される
2)同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がともに計上される場合
工事損失が見込まれた段階で工事損失引当金の計上が求められる趣旨は、将来に損失を繰り延べないことにあり、「棚卸資産の評価に関する会計基準」が通常の販売目的で保有する棚卸資産の簿価の切下げを求める趣旨とも共通していると考えられる
🗐基準
基準 65~68
しかし
・ 「棚卸資産の評価に関する会計基準」は、必ずしも工事損失の会計処理を念頭に置いて定められたものではない
↓
工事損失が見込まれる場合において、仮に「棚卸資産の評価に関する会計基準」で定める会計処理をそのままの形で適用すると、棚卸資産の評価に切放し法を選択した場合の会計処理が、工事の進捗や完成・引渡しにより、工事損失が確定した場合又は工事損失の今後の発生見込額が減少した場合に、それに対応する額を取り崩すという工事損失の会計処理に必ずしもなじまない
・ たとえ工事損失の見込額が変動しない場合においても、工事の進捗にしたがって、工事損失引当金から棚卸資産(簿価の切下げ)への振替えが必要となるが、取引内容によっては棚卸資産の種類が多岐にわたり得るため、実務上の負担が懸念される
したがって
工事損失が見込まれることとなった段階で、工事契約について未成工事支出金等の棚卸資産が計上されている場合でも、工事損失引当金の計上に先立ち「棚卸資産の評価に関する会計基準」に基づく棚卸資産の簿価の切下げを行うことなく、工事損失のうち既に計上された損益の額を除いた残額の全体について工事損失引当金として計上する
12
第 章
ただし
棚卸資産と | 実務上の過重な負担を回避しつつも、必要な情報の提供が |
工事損失引当金を | 図られるように、工事損失引当金が計上された工事契約に |
相殺せずに両建てで | ついて未成工事支出金等として計上されている棚卸資産が |
表示した場合 | ある場合には、その旨及び当該棚卸資産の額のうち、工事 |
(原則) | 損失引当金に対応する額の注記を行う |
棚卸資産と 工事損失引当金を 相殺して 表示した場合 (容認) | 実務に配慮して、同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がともに計上されている場合には、貸借対照▇▇相殺して表示することも認められる 棚卸資産と工事損失引当金を総額で表示した場合と同じ情報を提供される必要があると考えられるため、工事契約に係る棚卸資産が相殺後の額で表示されていることを明示した上で、その内容を示すため、相殺表示した棚卸資産の額 の注記を行う |
工事損失引当金の計上 | 棚卸資産の 簿価の切下げ | ||
▇ ▇ | 容 認 | ||
貸借対照表 | 未成工事支出金 11,000 工事損失引当金 5,000 | 未成工事支出金 6,000 | 未成工事支出金 6,000 |
損益計算書 | 売上原価5,000 | 売上原価5,000 | |
(借) 工事損失引当金繰入額
-売上原価-
5,000(*1) (貸) 工事損失引当金
5,000
(借) 棚卸資産評価損
-売上原価-
5,000 (貸) 未成工事支出金
5,000(*1)
工事損失引当金と棚卸資産の簿価の切下げ
1.工事収益総額:10,000
2.工事原価総額は契約直後は9,500と見積られていたが、材料価格の高騰等から当期に15,000に見積りを変更した。
3.当該工事には認識基準として、工事完成基準が適用されており、未成工
事支出金(当期末までに発生した工事原価の累計額)は11,000であった。
工事原価総額
5,000
15,000(変更後)
(1) 工事損失引当金を計上した場合
(*1) 工事損失:工事原価総額15,000-工事収益総額10,000=5,000
(2) 「棚卸資産の評価に関する会計基準」に基づき簿価を切下げた場合
(*1) 簿価11,000-正味売却価額6,000(*2)=5,000
(*2) 工事収益総額(売価)10,000-見積追加製造原価4,000(=工事原価総額15,000-未成工事支出金11,000)=6,000
6,000
10,000
見積追加製造原価 4,000
11,000
見積追加製造原価 4,000
5,000
未成工事支出金(棚卸資産)
工事損失引当金
工事収益総額(売価)
正味売却価額
簿価の切下げ
(2)その他の注記事項
① 工事契約に係る認識基準
工事契約に係る認識基準を重要な会計方針(収益及び費用の計上基準)として注記する。
② 決算日における工事進捗度を見積るために用いた方法
原価比例法を適用している場合にはその旨を注記し、原価比例法以外の見積方法を適用している場合には、適用した方法についての具体的な説明を注記する。
③ 当期の工事損失引当金繰入額
12
第 章
「棚卸資産に関する会計基準」において収益性の低下による簿価切下額は注記による方法(又は売上原価の内訳として独立掲記する方法)により示すことが求められているのと同様に、売上原価に含められている当期の工事損失引当金繰入額について注記が求められる。
🗄 文献
工事契約会計 P110
🗏過去問
1998 問題12 ウ
🗐基準
▇▇ガイドライン 8の2-7
🗐基準
▇▇ 第76条の2
🗄 文献
新会計基準 P274
本章における主要参考文献
基準・文献 | 著者等 | 出版社 | 発行年月 | 本章における略称 | ||||
工事契約に関する会計基準 | 企業会計基準委員会 | 2007 | 基準 | |||||
工事契約に関する会計基準の適用指針 | 企業会計基準委員会 | 2007 | 適用指針 | |||||
2008-2010 新会計基準の実務 | ▇▇ ▇▇他 | 中央経済社 | 2008 | 新会計基準 | ||||
工事契約会計 | (財)建設業 | ▇▇社 | 2008 | 工事契約会計 |
振興基金
