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令和 3 年 3 月 1 日施行の改正私立学校法により,学校法人においても,いわゆる会社補償が可能となりました。学校法人における補償契約について,当事務所で作成した補償契約書のひな形を公開します。
このひな形は,学校法人における補償契約の一般的な内容を例示したものであり,実際の契約内容は個々の事案によって異なります。補償契約を締結する際には,個別の事情によって内容を検討していただく必要があります。
なお,改正私立学校法に関する法律相談その他のご依頼は,有料で承っております。x
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補償契約書
学校法人○○学園(以下,「甲」という。)と,甲の役員である○○○○(以下,「乙」という。)は,以下のとおり補償契約を締結する。(1)
(目的)
第 1 条 この契約は,私立学校法第 44 条の 5 が準用する一般社団法人及び一般財団法人に
関する法律第 118 条の 2 第 1 項に基づき,乙が,甲の役員としての職務の執行に関して負担する防御費用及び賠償損失について,その補償に関する事項を定めることを目的とする。
(定義)
第 2 条 この契約において,「防御費用」とは,乙が,甲の役員としての職務の執行に関し,法令の規定に違反したことが疑われ,又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用をいう。(2)
2 この契約において,「賠償損失」とは,乙が,甲の役員としての職務の執行に関し,第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における次に掲げる損失をいう。(3)
⑴ 当該損害を乙が賠償することにより生ずる損失
⑵ 当該第三者との間に和解が成立し,乙が当該和解に基づく金銭を支払うことにより生ずる損失
1 補償契約の内容は,理事会決議で決定しなければなりません。準用後の一般法人法 118
条の 2 第 1 項参照。
2 準用後の一般法人法 118 条の 2 第 1 項第 1 号参照。
3 準用後の一般法人法 118 条の 2 第 1 項第 2 号参照。
(防御費用の補償)
第 3 条 甲は,乙に対し,防御費用のうち,通常要する費用の額を補償する。(4)
2 防御費用には,乙が依頼した弁護士等の報酬,裁判所に納付する訴訟費用,交通費等を含むものとする。
3 乙は,防御費用の補償を受けようとするときは,補償を必要とする理由及び補償を受ける金額の根拠が明らかとなる資料を,甲に提出しなければならない。
4 甲は,前項の資料の提出を受けたときは,遅滞なく,補償の可否を決定し,乙に通知しなければならない。
5 乙は,補償を可とする通知を受けたときは,xに対し,書面で請求書を提出するものとする。
6 甲は,前項の請求書を受領してから○○日以内に,次の各号が定める方法により,防御費用の補償を行う。
⑴ 乙が既に支払った防御費用を補償する場合 乙に対し支払う方法
⑵ 乙が負担する金額が確定しているが,未履行である場合 乙に対し支払う方法又は乙に代理して支払う方法
7 前項第 2 号の場合において,甲が乙に対し損害賠償等を請求しており,かつ,支払先が弁護士又は弁護士法人であるときは,甲は,乙に代理して弁護士又は弁護士法人に対し支払う方法をとることができない。(5)
8 甲は,乙が自己若しくは第三者の不正な利益を図り,又は甲に損害を加える目的で職務を執行したことを知った場合は,防御費用の補償を拒むことができる。(6)
9 甲は,防御費用の補償を行った後で,乙が自己若しくは第三者の不正な利益を図り,又は甲に損害を加える目的で職務を執行したことを知った場合は,乙に対し,防御費用の返還を請求することができる。この場合,乙は,防御費用の補償を受けた日から年 5%の割合の遅延損害金をも負担しなければならない。(7)
(賠償損失の補償)
第 4 条 甲は,乙に対し,賠償損失のうち,次に掲げる損失を補償する。
⑴ 確定判決によって支払義務が確定したもの
⑵ 当該第三者との間に裁判上の和解,調停又は裁判外の和解が成立し,支払義務が
4 通常要する費用の額を超える部分については,防御費用の補償を行うことができませ
ん。準用後の一般法人法 118 条の 2 第 2 項第 1 号参照。
5 学校法人と役員が係争となっている場合,役員の代理人弁護士が学校法人から報酬等を
受け取ることは,弁護士職務基本規程第 53 条等に抵触するおそれがあるため,役員に支払う方法をとることが適切です。
6 準用後の一般法人法 118 条の 2 第 3 項によって防御費用の返還を請求できる場合には,初めから補償をしないこととしています。
確定したもの
2 前項の定めにかかわらず,次の各号に掲げる場合は,甲は,乙に対して,当該各号に掲げる部分の補償を行なうことができない。(8)
⑴ 甲が当該第三者に対し損害を賠償するとすれば,乙が甲に対して対して私立学校法第 44 条の 2 第 1 項の責任を負う場合 当該責任に係る部分
⑵ 乙がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったことにより当該第三者に対する責任を負う場合 当該損失の全部
3 乙は,第 1 項第 2 号の和解又は調停を成立させる場合,あらかじめ甲の同意を得なければ,賠償損失の補償を受けることができない。(9)
4 乙は,賠償損失の補償を受けようとするときは,補償を必要とする理由及び補償を受ける金額の根拠が明らかとなる資料を,甲に提出しなければならない。
5 甲は,前項の資料の提出を受けたときは,遅滞なく,補償の可否を決定し,乙に通知しなければならない。
6 乙は,補償を可とする通知を受けたときは,xに対し,書面で請求書を提出するものとする。
7 甲は,前項の請求書を受領してから○○日以内に,次の各号が定める方法により,防御費用の補償を行う。
⑴ 乙が既に支払った賠償損失を補償する場合 乙に対し支払う方法
⑵ 乙が負担する金額が確定しているが,未履行である場合 乙に対し支払う方法又は乙に代理して支払う方法
(理事会への報告)
第 5 条 乙は,この契約に基づく補償を必要とする事態が生じた場合又はそのおそれがある場合は,直ちに甲に報告しなければならない。ただし,その事実を甲が知っているときは,この限りでない。(10)
2 乙は,この契約に基づく補償を受けた場合は,遅滞なく,当該補償についての重要な事実を甲の理事会に報告しなければならない。(11)
(解除等)
第 6 条 甲及び乙は,相手方がこの契約の各条項に違反し,相当の期間を定めて催告をしても是正されない場合は,この契約を解除することができる。
8 準用後の一般法人法 118 条の 2 第 2 項第 2 号及び第 3 号参照。
9 役員と第三者が,不相当に高額な支払いを内容とする和解・調停を成立させることがないよう,事前に学校法人の同意を得ることを義務付けています。
10 法律で義務付けられているのは補償実行後の報告だけですが,第三者から損害賠償請求を受けた場合等にも,学校法人への報告を義務付けることとしています。
2 甲は,乙がこの契約の各条項に違反したために損失の範囲が拡大した場合,この契約に基づく補償を拒むことができる。(12)
(有効期間)
第 7 条 この契約の有効期間は,○○年○○月○○日から○○年○○月○○日までとする。ただし,甲及び乙が合意したときは,有効期間を○年間として更新できるものとし,以後も同様とする。(13)
2 乙が甲の役員の地位を失ったときは,この契約は,将来へ向けて効力を失うものとする。
3 前各項の定めにかかわらず,乙が在任中に行った職務執行に関しては,なおこの契約の規定を適用する。
(裁判管轄)
第 8 条 この契約に関する紛争が生じた場合,○○地方裁判所を第xxの専属的合意管轄裁判所とする。
(協議)
第 9 条 この契約に定めのない事項又はこの契約について疑義が生じた事項については,甲及び乙が協議して解決するものとする。
この契約の成立を証するため,本書を 2 通作成し,甲及び乙がそれぞれ記名・押印又は署
名・捺印のうえ,各 1 通を所持する。
○○年○○月○○日
(甲)
○○府○○市○○区○○通○○下ル 学校法人○○学園理事長 ○ ○ ○ ○ 印
(乙)
○○県○○市○○区○○町○丁目○番○号
○ ○ ○ ○ 印
12 例えば,第三者から訴訟を提起されたのに学校法人に報告せず,訴訟を放置していた場合を想定したものです。
13 契約更新の際にも,改めて理事会の決議を得る必要があります。