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民法(債権法)改正委員会第14回全体会議資料
契約の成立
09.1.24
I 諾成主義の原則
【II-5-1】諾成主義の原則
契約は、当事者の合意のみによって成立する。ただし、法令に反対の定めのある場合は、この限りではない。
提案要旨
1 【II-5-1】は、第1に、契約が当事者の合意のみによって成立すること(諾成主義の原則)を明文化するものである。
契約の成立に関する諾成主義について現行民法に規定はないが、現行民法も諾成主義を前提としており、判例・学説にも異論はない。
そして、諾成主義の原則は、契約の成立要件に関わる基本原則であるから、たとえ法律家にとっては当然であるとしても、xxの規定をおくことが適切である。実際、現在でもなお、一般市民の間には、ときとして、契約が法的拘束力を有するためには、契約書の作成が必要であるとの誤解も存在するところであり、一般市民にとって自明とまではいえない。
そこで、【II-5-1】は、契約は当事者の合意のみによって成立し、契約の成立には原則と
していかなる形式も必要ないことを明確にする。
2 第2に、本提案は、契約は、当事者の合意がなければ成立しないという原則も明らかにするものである。
契約の拘束力の根拠を何に求めるかについては議論があり、わが国においても、当事者間に生じた信頼など、意思以外の要素を契約の拘束力の根拠として考慮すべきであるとの見解も有力に主張されている。しかし、そのような見解にあっても、意思が契約の拘束力の契機としての意味をもっていることは否定されていない。現代において、意思が希薄化・空洞化している場面が少なくないことは事実であるが、意思が、契約の拘束の根拠としての意義を有している以上、合意がないにもかかわらず契約の成立を肯定すべきではない。
3 本提案の趣旨は、あくまで、従来のわが民法における原則を確認するにとどまり、従来よりも諾成主義の原則性を高めるものではない。したがって、法令による場合はもち
ろん、契約自由の原則により、当事者が契約の成立に契約書の作成などの特定の形式や、物の交付を要件とすることを妨げるものではないことは、従来とまったく異なることがない。
II 契約の成立
【II-5-2】契約の成立
(1) 契約は、当事者の意思およびその契約の性質に照らして定められるべき事項について合意がなされることにより成立する。
(2) 前項の規定にもかかわらず、当事者が、契約を成立させる合意を留保したときは、その合意がなされるまで、契約は成立しない。
提案要旨
1 【II-5-2】は、【II-5-1】を承けて、どのような合意があれば契約が成立するかについて規定をおくものである。
現行民法には、契約を成立させる合意とは何かについて、xxの規定はない。しかし、 契約の成否をめぐる紛争を予防するためには、手がかりになる規定があることが望ましい。契約を成立させる合意について規定する方法としては、申込みおよび承諾に関する定義
をおくにとどめる方法もありうる。しかし、申込みと承諾による契約の成立は、契約の成立の1つの典型例に過ぎない。契約は、それ以外にも、契約当事者が契約内容について交渉しつつ合意を形成することによって成立する場合(いわゆる「練り上げ型」)もあり、契約の成否は、後者の類型について問題となることが少なくない。したがって、申込みおよび承諾の定義とは別に、契約を成立させる合意の内容について、一般的な手がかりとなる規定をおくことが適切である。
2 契約が成立するためには、まず、契約内容について合意がなされていることが必要である。その際、契約の内容のあらゆる部分について合意する必要はもちろんないが、少なくとも当事者が契約を成立させるために合意すべきであると定めた事項について合意がなされなければ契約は成立しない。
【II-5-2】(1)は、その趣旨を定めるものである。すなわち、「当事者の意思およびその契約の性質に照らして定められるべき事項」について合意がなされれば、その合意は契約を成立させる終局的な合意であると推定され、(2)による留保がなされていない限り、契約は成立する。
どのような合意がなされれば契約が成立するかは、何よりも、各当事者の意思を基準として、両当事者にとって、何がその契約に拘束力を生じさせるために定められるべき事項であると考えられていたかによって決まる。たとえば、売買の目的物と代金について合意したとしても、目的物の引渡しがなされるべき履行地について合意がされなければ契約を締結させるつもりはない、と当事者が考えていた場合には、その売買契約は、履行地についての合意がなされるまでは成立しない。
そして、当事者が、いかなる点について合意をすれば契約は成立すると考えていたかを判断するに際しては、契約の性質も考慮される。たとえば、日用品の売買契約であれば、目的物および代金に関する合意が、契約を成立させるために定めるべき事項として重要であり、とくに当事者が異なる意思を表示しない限り、これらについて合意がなされれば、契約は成立する。これに対して、企業の合併など、より複雑な内容の契約をするときには、当事者が契約を成立させるために定めるべき事項は、様々な事柄に及びうる。
いずれにしても、契約を成立させる合意は、その内容について確定可能でなければ合意として有効ではないことは、法律行為一般の場合と同じである。
4 さらに、場合によっては、契約当事者は、契約内容として定められるべき事項についてすべて合意をしてもなお、契約を成立させる合意をすることを留保することがある。たとえば、当事者が、契約の内容についてすべて合意しながら、その内容で契約を締結 する終局的な合意は、正式な契約書への署名を通じて行われる旨合意により定めることがある。このような場合、その契約は正式な契約書への署名を通じて契約を成立させる終局的な合意があるまでは契約の効力を生じさせないというのが当事者の意思と考えられる。このように、契約の当事者が、契約の内容として定めるべき事項については合意をして いたとしても、一方または両当事者が契約を成立させる合意を留保していた場合には、その合意は契約を成立させる終局的な合意とはいえない。その場合、両当事者があらためて、
契約を成立させる合意をしたときに契約は成立し、その効力を生じることを定めるのが、
【II-5-2】(2)である。
III 交渉当事者の責任
1 交渉を不当に破棄した者の責任
【II-5-3】交渉を不当に破棄した者の損害賠償責任
(1) 当事者は、契約の交渉を破棄したということのみを理由としては、責任を問われない。
(2) 前項の規定にもかかわらず、当事者は、xxxxの原則に反して、契約締結の見込みがないにもかかわらず交渉を継続し、または契約の締結を拒絶したときは、相手方が契約の成立を信頼したことによって被った損害を賠償する責任を負う。
提案要旨
1 契約の交渉を開始した者は、契約自由の原則により、契約が締結されるまで、一度開始された交渉を継続するか中止するかは自由である。しかし、その例外として、取引上要求されるxxxxの原則に反して交渉を破棄した交渉当事者が、相手方に対して損害賠償責任を負うことは、従来から判例・学説によって認められている。
【II-5-3】は、これらをxxで規定するものである。
2 「xxxxの原則に反して、契約締結の見込みがないにもかかわらず交渉を継続しまたは契約の締結を拒絶したとき」とは、(a) 契約を締結する可能性がないにもかかわらず交渉を継続した場合および、(b) 契約締結が確実になるなど、契約締結に対する正当な信頼が相手方に形成された後に契約の締結を拒絶した場合の2つを含む。
このうち、(a)においては、契約を締結する可能性がないにもかかわらず、いたずらに交渉を継続したことがxxxxの原則に違反するかどうかが問題となるのに対して、(b)では、契約締結に対する正当な信頼が相手方に形成された後に契約の締結を拒絶したことが、それまでの経緯などに照らして、xxxxの原則に違反するかどうかが問題となる。
3 賠償されるべき損害は、相手方が契約の成立を信頼したことにより被った損害であって、伝統的な表現によれば、信頼利益に相当する。しかし、信頼利益という言葉に盛り込まれる意味自体が、この概念を用いる論者により様々であるため、本提案では、信頼利益という表現は用いず、その内容を直接に示す趣旨で、「契約の成立を信頼したことにより被った損害」とする。
2 交渉当事者の情報提供義務・説明義務
【II-5-4】交渉当事者の情報提供義務・説明義務
(1) 当事者は、契約の交渉に際して、当該契約に関する事項であって、契約を締結するか否かに関し相手方の判断に影響を及ぼすべきものにつき、契約の性質、各当事者の地位、当該交渉における行動、交渉過程でなされた当事者間の取り決めの存在およびその内容等に照らして、xxxxの原則に従って情報を提供し、説明をしなければならない。
(2) 前項の義務に違反した者は、それにより相手方が被った損害を賠償する責任を負う。
提案要旨
1 【II-5-4】は、契約の一方当事者が、xxxxの原則に従い、相手方に対して情報提供義務・説明義務を負うこと、および、それに違反した交渉当事者は、それによって相手方が被った損害を賠償しなければならないことにつき、従来の判例・学説を確認するものである。
2 どのような要件のもとで情報提供義務・説明義務が発生するのかについて、その要件を定式化することは、わが国の学説・判例に照らしても困難であるが、考慮要素をできるだけ明確に示すことが望ましい。そこで、まず、情報提供義務・説明義務に関する裁判例に基づき、契約の性質、各当事者の地位、当該交渉における行動、交渉過程でなされた当事者間の取り決めの存在およびその内容を、情報提供義務・説明義務の有無の判断に際して考慮されるべき要素として列挙することにより、考慮要素の明確化を図るのが、
【II-5-5】(1)の趣旨である。
3 その際、xxxにより情報提供義務・説明義務が一方当事者に課されるのが、相手方が契約を締結するかどうかを適切に判断することができるためであることからすれば、情報提供義務・説明義務の対象は、これらの事項についてであることを、明らかにすることが適切である。【II-5-5】(1)が、情報提供義務の対象を、「契約を締結するか否かに関し相手方の判断に影響を及ぼすべきもの」と定めるのはその趣旨である。
4 情報提供義務・説明義務を負う者が、それに違反して、xxxに従って情報を提供し、または説明をしなかった交渉当事者は、それにより相手方が被った損害を賠償する責任を負う(【II-5-5】(2))。具体的には、相手方が契約を締結しなければ被らなかったであろう損害を賠償しなければならない。
IV 申込み
1 申込みの定義
【II-5-5】申込み
(1) 申込みは、その承諾により契約を成立させる意思表示である。
(2) 申込みは、それにより契約の内容を確定しえなければ、その効力を生じない。
提案要旨
1 現行民法には、申込みの定義に関する規定はないが、申込みと申込みの誘引との区別は、実際上もしばしば問題になるところである。しかし、両者の区別は、法律家には知られているとしても、一般市民には必ずしも明らかではない。両者の区別を明らかにするためには、申込みが、それに対する承諾により契約を成立させる意思表示であることを条文上も明記することが適切である(【II-5-5】(1))。
2 また、xxは、申込みに対して、単に「はい。」ということで足りるから、契約内容が確定可能であるためには、申込みによって契約内容を確定可能であることが必要である。したがって、申込みは、それにより契約の内容が確定可能でなければその効力を生じないものとする(【II-5-5】(2))。
2 申込みのとりやめ
【II-5-6】
申込みの取りやめに関するxxの規定は設けない。
提案要旨
申込みの取りやめ(=(=申込みが効力を生ずる前になされる申込みの撤回)の問題は、それについて規定する必要があるとしても、意思表示一般についても問題になることであり、とくに申込みについてのみ規定をおくべきものではないので、規定をおくことはしない。
3 申込みの撤回・失効
【II-5-7】期間の定めのある申込みの撤回・失効
(1) 承諾の期間を定めてした契約の申込みは、その期間内に承諾されなかったときは、その効力を失う。
(2) 前項の申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回する可能性を留保していたときは、この限りでない。
提案要旨
1 承諾期間の定めのある申込みは、期間の経過までは申込みを撤回できないとするとともに、期間の経過により申込みの効力が失われるとする、現行民法521条は合理的な準則として維持すべきである。521条は、隔地者間にのみ適用される準則と理解されているが、期間を定めた申込みについては、対話者間であっても、相手方はその期間が経過するまでに承諾をすれば契約は成立すると期待するのは正当であり、この点について隔地者間の申込みと対話者間の申込みとを区別する理由はない。
そこで、【II-5-7】は、期間の定めのある申込みに関する521条の準則を、隔地者間における申込みだけではなく、対話者間における申込みにもあてはまるものとして規定する。
2 521条は、1 項で期間の定めのある申込みは撤回できないことを、2 項で期間の定めのある申込みの効力が存続する期間について定める。しかし、論理的な明確性の観点からは、まず、申込みの効力存続期間について定め、つぎに、申込者はその間、申込みを撤回できない旨定めるのが適切である。【II-5-7】では、現行民法521 条(1)項と(2)項の順序を入れ替えている。
3 つぎに、期間の定めのある申込みについても、撤回可能性を留保した申込みをすることができるかどうかが問題となりうる。期間の定めのある申込みについても、申込者が反対の意思表示をしていたときは、その意思表示を尊重すべきである。これについては、法的安定性の観点から、承諾期間を定めた申込みについては、反対の意思表示をしていたとしても、撤回可能性を排除すべきであるという考え方もありうる。しかしながら、申込者が相手方に対して期間を定めたうえで撤回可能性を留保した申込みについて、当事者の意思を無視してまで、その撤回可能性を否定する必要があるとはいえない。
従来から、申込者による、撤回可能性を留保する意思表示の効力を認めるのが通説である。そして、当事者による反対の意思表示の効力を是認するのであれば、その旨、xxで規定するのが適切である(【II-5-7】(2))。
なお、撤回可能性を留保した申込みは、「拘束力を排除した申込み」といわれることもあるが、本提案では、わかりやすさという観点から「撤回可能性を留保した申込み」という表現を用いる。
4 承諾の延着と申込みの効力
【II-5-8】承諾期間内に到達すべき承諾の延着民法522条は削除する。
提案要旨
1 承諾の効力発生時期について現行法が採用する発信主義のもとでは、承諾の発信時に承諾の効力が生じる。現行民法の起草者は、延着した承諾が、通常であれば承諾期間内に到達すべきときに、申込者が承諾の消印などからそれを知りうるにもかかわらず何もしなくてよいというのでは、取引の安全を保持するために十分ではないと考え、現行民法522条が定められた。
2 これに対して、本提案は承諾につき到達主義を採用することを前提としている(後述【II-5-18】)。到達主義のもとでは、意思表示をした者が不到達および到達遅延のリスクを負うのは意思表示一般の場合と異なることはなく、特別の規定を設ける理由は存在しない。したがって、現行522条は削除する。
【II-5-9】遅延した承諾の効力
遅延した承諾は、申込者が、これを承諾と扱う旨遅滞なく承諾者に通知したときは、承諾としての効力を有する。この場合、申込みの効力は失われなかったものとみなす。
提案要旨
1 承諾が遅延した場合、承諾が申込者に到達しても、その効力は生じないので、論理的には、当事者は契約を成立させるためには、新たに申込みをしなければならない。しかし、このような結論は実際的ではない。
2 現行民法523 条は、遅延した承諾の効力につき、申込者は、これを新たな申込みとみなすことができる旨の規定をおく。しかしながら、これを新たな申込みとみなすと、申込者は、それに対してあらためて承諾をする必要があるが、それは迂遠である。
そこで、基本的には523 条の考え方を維持しつつ、遅延した承諾を「新たな申込み」ではなく、有効な「承諾」と扱うことができるものとするのが、【II-5-9】の趣旨である。
5 期間の定めのない申込みの撤回・失効
【II-5-10】期間の定めのない申込みの撤回・失効
(1) 承諾の期間を定めないでした申込みは、相手方はもはや承諾しないだろうと申込者が考えることが合理的な期間が経過するまでに承諾がなされなかったときは、その効力を失う。
(2) 申込者は、前項の合理的な期間の満了前であっても、その申込みを承諾するのに相当な期間を経過した後は、撤回することができる。
(3) 申込者は、前項の相当な期間内においても撤回する可能性を留保することができる。この場合においては、申込みを撤回しなかったときでも、その相当な期間の経過により、申込みはその効力を失う。
(4) 不特定の者に対して期間を定めないでした申込みは、(1)項の規定にもかかわらず、その申込みを承諾するのに相当な期間の経過によりその効力を失う。
(5) (1) 項の合理的な期間を経過した後に承諾が申込者に到達した場合につき、
【II-5-9】(遅延した承諾の効力)の規定を準用する。
提案要旨
1 期間の定めのない申込みについて、現行民法524 条は、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間が経過するまでは、撤回できないと規定する。その理由は、被申込者の信頼保護・取引安全に求められている。申込みがいったん効力を生じた以上、相手方に生じた信頼を保護すべきであるとすることには、今日まで異論はなく、したがって、相当期間が経過するまで撤回できないとする524条の考え方は、基本的に維持されるべきである。
2 問題となるのは、撤回可能な時期、すなわち、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間が経過すると、同時に申込みの効力も消滅するとすべきかどうかである。これを肯定すれば、申込者は相当期間経過後にあらためて申込みの撤回をしなくても、その後の承諾により契約が成立してしまうことはないのに対し、これを否定すると、申込みが撤回
可能になった後も、申込者が申込みを撤回しなければ相手方の承諾によって契約が成立することがある。
3 本提案は、この点につき、期間の定めのない申込みは、相当期間が経過するまでは撤回できないが、相当期間の経過により直ちに申込みの効力が失効するわけではないという立場を採用する。というのは、申込者が期間を定めずに申込みをした場合に、申込者が撤回しないにもかかわらず、相当期間経過後は申込みの効力が自動的に失われてしまうとするのは、申込者に過度に有利であって適切ではないと考えられるからである。
具体的には、【II-5-10】(1)により、期間の定めのない申込みは、申込者が、相手方はもはや承諾しないだろうと申込者が考えることが合理的である期間が経過してはじめて、その効力を失う。言い換えれば、「申込みを承諾するのに相当な期間」が経過していても、相手方はもはや承諾しないだろうと申込者が考えることが合理的である期間が経過するまでは、申込みが撤回されない間に承諾をすれば、契約は成立する。「相手方はもはや承諾しないだろうと申込者が考えることが合理的である期間」は、その申込みの意思表示および契約の性質に照らして判断される。
4 ところで、商法508条1項は、「商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。」と定める。本項の規定は、被申込者が商人の場合は、迅速に判断すべきことが被申込者にも要求されることに基づく。そこで、本提案を採用した場合に、商法508条1項にこれを存置すべき独自の理由があるかどうかが問題となる。先に述べたとおり、【II-5-10】(1)の「相手方はもはや承諾しないだろうと申込者が考えることが合理的である期間」の判断に際しては、当事者が商人であることも当然考慮されるので、商法508条1項の解決は、【II-5-10】(1)の合理的な期間が、商人である隔地者の間においては、承諾の通知をするために必要な相当の期間であると解することによって導き出すことが可能であり、商法508条1項を、【II-5-10】(1)とは別にとくに存置すべき理由はないと考えられる。
5 承諾期間の定めのある申込みについても、申込者は撤回の可能性を留保することができる(【II-5-7】(2))のと同様、期間の定めのない申込みにも、申込者は撤回の可能性を留保することができる。この場合には、法律関係を早期に安定させる必要があるので、相当期間の経過後は、その間に申込みが撤回されていなくても、申込みはその効力を失うものとする(【II-5-10】(3))。
6 以上は、申込みが特定の相手方に対してなされた場合の準則である。これに対して、申込みが不特定の者にされた場合については、別段の考慮が必要である。不特定の者に対してもすることができることは、現行民法でも当然の前提とされているが、申込みが不特定の者にされた場合には、法的安定性の観点から、申込みを承諾するのに相当の期間が経過した後は、申込みの効力は失われるのが適切である。このことは、同時に、不特定の者に対する申込みは撤回できないことを意味する(【II-5-10】(4))。
7 申込みが失効した後に承諾が申込者に到達した場合、遅延した承諾に関する【II-5-9】と同じ扱いがなされる。【II-5-9】は、期間を定めてした申込みのみに適用することが前提とはされていないが、その旨、明確にする趣旨で、【II-5-10】(5)項をおく。
7 対話者間における申込みの撤回・失効
【II-5-11】対話者間における申込みの撤回・失効
(1) 対話者の間において契約の申込みを受けた者が対話の終了までに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が反対の意思表示をしたときは、この限りでない。
(2) 対話者間でなされた申込みは、対話が終了するまで、いつでも撤回することができる。
提案要旨
1 【II-5-11】(1)は、これまでの判例および多数説の見解に従い、対話者間の申込みは、対話の終了時にその効力を失う旨の規定を設けるものである。
もちろん、対話者間でも、承諾のための期間が定められることもあるし、また、期間が定められなくても、承諾するかどうか対話終了後に決定することが相手方によって示され、申込者がそれに異議を述べないこともある。すなわち、本提案は、通常の場合を想定したデフォルト・ルールを規定するに過ぎない。したがって、申込者が反対の意思表示を示したときは、申込みの効力の存続期間は、期間の定めがあれば【II-5-7】により、またそうでなければ、【II-5-10】により決定される。
2 また、対話者間では、相手の反応を察知し、それに対応することが可能であるので、対話継続中に、すでになされた申込みを申込者が撤回し、新たな内容の申込みをすることも許容されることが望ましい。それによって相手方の利益を不当に害するおそれもない。したがって、対話者間でなされた申込みは、対話が終了するまでは自由に撤回することができるものとする(【II-5-11】(2))。
8 期間の定めのない申込みの撤回通知の延着
【II-5-12】期間の定めのない申込みの撤回通知の延着民法527条を削除する。
提案要旨
承諾について到達主義を採用する改正案のもとでは、現行527 条を維持する意義は存在せず、むしろ、一般原則に従い、承諾と申込みの撤回のいずれが先かに効力を生じるかにより契約成立の成否を決定すべきであると考えられる。
したがって、527条は削除するのが適切である。
9 事業者による不特定の者に対する契約条件の提示
【II-5-13】事業者による不特定の者に対する契約条件の提示
事業者がその事業に関して不特定の者に対し、契約の内容となるべき事項を提示した場合、その提示は申込みと推定する旨の規定をおく。
提案要旨
1 不特定の者に対する契約締結の申入れのうち、店舗における商品の陳列、カタログやWEB への商品内容の掲載のように、不特定多数者に対して目的物と代金など、特定の契約を構成する内容が提示されている場合について、これを申込みと解するか、申込みの誘引と解するかが問題となることが多い。これらをすべて個別的に処理するという方法も考えられるが、紛争予防の観点からは、一定の典型的な場合については、解釈の基準となるルールを定めておくことが望ましい。
2 そして、事業者が事業の一環として、不特定の者に対し、商品を店に陳列し、カタ ログやWEB に商品と代金を掲載するなどの態様で契約内容を提示するときは、相手方は、提示された契約内容の契約を締結できると期待するのが通常であり、このような正当な信頼を保護することが必要である。このことは、相手方が消費者であると否とを問わず、あてはまる。また、事業者であれば、申込みの拘束力を回避したければ、契約条件を提示しながらなおその条件では契約を締結しない可能性があるときは、その旨自ら留保することを十分に期待できる。
このように考えるならば、少なくとも事業者が事業の一環として、不特定の者に対し、特定の契約の内容となるべき事項を提示したときは、その提示を申込みと推定するルールを設けるのが適切である。このようなルールを設けることは、具体的にいつ契約が成立したかが問題となる場面についての解決を与えるだけでなく、事業者がカタログに商品を記載する場合などにおいて、その必要に応じ、申込みの誘引である旨留保することを促進し、ひいては契約の成否に関する紛争の予防にも資するものである。
そこで、本提案は、事業者がその事業に関して、不特定の者に対して、「契約の内容となるべき事項」を提示したときは、その提示は、申込みと推定する旨の規定をおく。このような提示が申込みと推定される理由が、相手方がそれを申込みと信頼するのが相当であることにその重要な基礎があることからすれば、「契約の内容となるべき事項」とは、具体的には、当該取引の態様に応じてその契約の内容を確定することができるだけの事項が提示されていることが必要である。
10 交❹申込み
【II-5-14】
交❹申込みに関する規定は設けない。
提案要旨
交❹申込みによる契約の成立を肯定することには、偶々、同じ内容の意思表示が合致したことによって、ただちに、契約を成立させる意思の合致があったと認めてもよいのかどうかは、理論的に問題があるほか、実際上も、複数の申込みが交❹することも考えられるが、この場合に、契約が成立することを肯定すると、どの申込みとどの申込みとが合致したのか、特定できないことが生じうるという問題がある。
一方、交❹申込みを認めるべき必要性はさほど大きくはない。
したがって、交❹申込みによる契約の成立は否定し、その趣旨は、承諾に関する条文のなかで明らかになるよう規定する。
11 申込者の死亡または行為能力の喪失等
【II-5-15】申込者の死亡または行為能力の喪失等
民法97条2項の規定は、相手方が、承諾を発信するまでに、申込者の死亡または、その意思表示について、意思能力を欠く状態となったこと若しくは行為能力の制限の事実を知った場合には、適用しない。
提案要旨
1 現行民法525条は、意思表示の発信後、表意者が死亡または行為能力を喪失しても、意思表示はその効力を失わないという民法の原則(97条2項)の特則である。
525条は、申込者が反対の意思表示をしていた場合も挙げるが、97条2項は強行規定ではないので、525条に特別の規定を設ける必要はない。起草者もまた、この点は認識していた。したがって、【II-5-15】では、現行525 条から、「申込者が反対の意思を表示した場合」を削除する。
また、その文言も、現行民法97条2項の改正案(【II-1-20】) 1 、にあわせて、現行525 条の「申込者の死亡若しくは行為能力の喪失の事実」を、「申込者の死亡または、その意思表示について、意思能力を欠く状態となったこと若しくは行為能力の制限の事実」とする。
2 本条の適用範囲については、申込み発信後到達までに限定されるか、それとも申込
み到達後にも適用があるかについては、学説上議論が分かれているが、本条が、当事者の通常の意思の推定に基づくことを考えれば、申込みの到達後承諾をするまでに申込者の死亡または意思能力を欠く状態となり、もしくは行為能力を制限された事実を知ったときも、申込み発信後到達と同様に扱うことが適切である。
以上より、【II-5-15】では、相手方が申込者の死亡または意思能力を欠く状態となり、
もしくは行為能力を制限された場合を知ったかどうかは、相手方が承諾を発信した時が基準として判断することとする。
1 【II-1-20】(表意者の死亡又は行為能力の制限 )
「意思表示は 、 表意者がその意思表示を発した後に死亡し 、又はその意思表示について意思能力を欠く状態となったとき 、若しくは行為能力が制限されたときであっても 、そのためにその効力を妨げられない。」
12 申込みを受けた事業者の物品保管義務
【II-5-16】申込みを受けた事業者の物品保管義務
事業者がその事業に関して契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない。ただし、その物品の価額がその費用を償うのに足りないとき、又は事業者がその保管によって損害を受けるときは、この限りでない。
提案要旨
商法510条は、申込者が商人であると否とを問わず、申込みを受けた商人に申込みとともに受け取った物品保管義務を負わせる。同様の物品保管義務は、事業者にその事業に関する契約の申込みをした者の保護および、事業者としての責任という観点から、事業者がその事業に関して申込みを受けるとともに物品を受け取った場合にも認められる。
そこで、事業者がその事業に関して申込みを受けるとともに物品を受け取った場合、事 業者は申込者の費用で物品を保管すべき義務を負うことを定めるのが本提案の趣旨である。
ただし、物品の保管により事業者に損害を及ぼすのは不合理であって認めるべきではないから、商法510条ただし書きと同様、その物品の価額がその費用を償うのに足りないとき、又は商人がその保管によって損害を受けるときは、申込みを受けた事業者は物品の保管義務を負わないものとする。
なお、本提案が採用されれば、商法510条はその独自の意味をもたず、不要となる。
V 承諾
1 承諾の定義
(1) 承諾の定義
【II-5-17】承諾
承諾は、申込みに同意して、契約を成立させる意思表示である。
提案要旨
承諾の本質は、申込みによって示された内容に終局的に同意することである。
契約内容の確定は、申込みによって満たされているので、承諾自体によって契約内容が確定できる必要はない。承諾は、単なる同意でもかまわない。
以上の 2 つから、承諾の定義を定めたのが【II-5-17】である。
2 承諾の効力発生時期
【II-5-18】承諾の効力発生時期
(1) 契約は、承諾が申込者に到達した時に、その効力を生じる。
(2) 申込者の意思表示または取引上の慣習により、承諾の意思表示が申込者に到達することを必要としない場合は、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。
(3) 前項の場合において、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に申込みの相手方に承諾の意思がなかったときについては、錯誤の規定を準用する。
* 電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(平成 13 年
6 月 29 日法律第 95 号)4 条は、これを廃止する。
提案要旨
1 承諾についてとくに例外を設ける必要性はないので、承諾についても到達主義を採用する。到達主義は、意思表示に関する一般原則であるから、とくに承諾は到達時に効力を生じる旨の条文をおく必要はないとも考えられるが、発信主義からの大きな変更であるので、xxの規定をおく。
2 なお、現在、電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(平成13 年6 月29 日法律第95 号)4条が、電子契約について民法の例外として到達主義を定める規定をおいているが、民法が到達主義を採用することにより、同条は不要となる。そこで、あわせて、同条を廃止することを提案する。
3 意思実現行為による契約の成立については、現行民法 526 条 2 項の考え方を維持する(【II-5-18】(2))。もっとも、意思実現行為による契約の成立を認めることの意義は、現行法と若干異なる点もある。というのは、承諾につき発信主義を採用しているため、承諾の意思表示とみとめるべき事実があった時に、その事実により承諾がなされたと解釈して契約の成立を認めることができる。これに対して、承諾につき到達主義を採用する本提案では、意思実現行為による承諾は、単に、承諾の意思表示と認めるべき事実を承諾の意思表示があったと解するだけではなく、承諾の意思表示が申込者に到達しないにもかかわらず、契約の成立を肯定することを認めるという意味をもつ。
4 意思実現行為による承諾も、申込者に到達することは不要であるにせよ、承諾である以上、承諾の意思をもって行われることが必要である。したがって、承諾の意思なくして意思実現行為を行っても、承諾の効力は生じない。この場合には、錯誤の規定を準用するものとする(【II-5-18】(3))。
3 申込みに変更を加えた承諾
【II-5-19】申込みに変更を加えた承諾
(1) 承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。ただし、【II-5-2】に照らして申込みに実質的変更が加えられていないときは、変更がなされた部分を除いた内容で契約は成立する。
(2) 前項の規定は、申込者が、承諾者によって加えられた変更を契約内容とすることをあらかじめ拒絶する意思を表示していたか、または、その変更について承諾者に遅滞なく異議を述べたときは、適用しない。
提案要旨
1 承諾は、申込みに同意して契約を締結する意思表示であり、条件を付したり変更することは申込みの承諾とはいえないことから、変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなすとする現行民法 528 条を基本的には維持する。
2 そのうえで、例外として、契約の成立要件である合意について定めた【II-5-2】に照らして、申込みに実質的変更が加えられていないとき、言い換えれば、申込みおよび変更された部分を除いた承諾によって確定できる契約内容により、当事者はなお契約を成立させたであろう場合には、その承諾による契約の成立を肯定する。したがって、実質的な変更が加えられたかどうかは、各当事者の意思および契約の性質に照らして判断される。
3 【II-5-19】(1)ただし書きにより、例外的に契約の成立が認められる場合、申込みに変更が加えられた部分については、当事者の意思は合致していないのであるから、変更を加えられた部分が当然に契約内容となることはなく、その変更がなされた部分を除いた内容で契約は成立し、変更を加えられた部分については、必要があれば、解釈により内容を補充することになる。
4 しかし、場合によっては、申込者は、申込みにいかなる変更がなされた場合であっても、申込み内容がそのまま契約内容にならないのであれば契約を締結しないことを欲することもあり、そのようなときにまで、契約の成立を認めるべきではない。
したがって、申込者があらかじめ変更された内容では契約を締結しない旨の意思を承諾者に対して表示していたか、または変更を加えられた承諾の到達後、遅滞なく承諾者に対して異議を述べたときは、変更を加えられた承諾はそれがどのような変更であってもその効力を生じず、契約は成立しないものとする【II-5-19】(2)。
VI 懸賞広告
1 懸賞広告の法的性質
【II-5-20】懸賞広告
ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した(以下、これを懸賞広告という。)者は、その行為をした者に対してその報酬を与える義務を負う。その行為をした者が、その広告を知らなかったときも、同様とする。
提案要旨
懸賞広告をした広告者は、知らずに指定行為をした者に対しても報酬を与える義務を負うことを明らかにする。
懸賞広告の法的性質について、これを単独行為と解するか、契約と解するかは、解釈に委ねるものとする。
2 懸賞広告の撤回・失効
【II-5-21】懸賞広告の撤回・失効
(1) 【II-5-7】(期間の定めのある申込みの撤回・失効)は、懸賞広告者がその指定した行為をする期間を定めた場合について準用する。
(2) 【II-5-10】(4)項(不特定の者に対する期間の定めのない申込みの効力)は、懸賞広告者がその指定した行為をする期間を定めなかった場合について準用する。
(3) 懸賞広告者が、その指定した行為をする期間を定めなかったときは、その指定した行為に着手する者がない間は、その広告を撤回することができる。
(4) 前項の撤回が前の広告と同一の方法によらないでなされたときは、その撤回は、これを知った者に対してのみ、その効力を生じる。
提案要旨
【II-5-21】は、現行民法 530 条を基本的に維持しながら、これまで同条について問題とされていたいくつかの点について修正を行うものである。
まず、懸賞広告の撤回方法は自由に選択できることとした上で、前の広告と同一の方法によるときはその効力は撤回を知らない者に対しても及ぶが、他の方法によるときは、撤回は、これを知った者に対してのみその効力が生じることとする。
つぎに、指定行為をする期間を定めた広告の撤回および効力存続期間は、期間を定めた申込みと同様に扱う。すなわち、指定行為をするための期間の定めがなされた懸賞広告については、撤回できないものとする一方で、指定行為をするための期間の定めがなされていない懸賞広告については、指定した行為に「着手する」者がない間は撤回できるものとする。これは、懸賞広告者が、広告により義務を負うことから、指定行為をおこなった者がいない間は懸賞広告を撤回して自ら負った義務からの解放を認めることが適切であること、と同時に、530 条 1 項のように指定行為を完了していなくても、すでに指定行為に着手した者がいれば、その者には報酬に対する正当な期待がすでに発生しているので、懸賞広告者はもはや撤回はできないとするのが適切であることを理由とする。
そして、期間の定めのない懸賞広告の効力存続期間は、不特定の者に対する申込みと同様の規律にしたがわせるのが適切であるので、【II-5-10】(4)項(不特定の者に対する期間の定めのない申込みの効力)が準用される(【II-5-21】(2)項)。
3 xxが同時に指定行為をした場合
【II-5-22】xxが同時に指定行為をした場合
最初に指定した行為をした者のみが報酬を受けるとした広告について、xxが同時にその行為を同時にしたときは、各自が等しい割合で報酬を受ける権利を有する。ただし、報酬がその性質上分割に適しないとき、又は広告において 1 人のみがこれを受けるものとしたときは、抽選でこれを受ける者を定める。
提案要旨
現行民法 531 条 1 項は、指定行為をした者がxxあるときは、最初にその行為をした者のみが報酬を受ける権利を有するとするが。これをデフォルト・ルールとする必要性はない。何人が報酬を受ける権利を有するかは、広告者の意思による。
これに対し、現行 531 条 2 項の規定は、広告者が広告において、最初に指定した行為をした者のみが報酬を受けるとしたときに、xxが同時に指定行為を行った場合について、なお意味がある。
そこで、【II-5-22】では、最初に指定した行為をした者のみが報酬を受けるとしたとき
のルールとして、現行 531 条 2 項を存続させる。
もちろん、【II-5-22】は強行規定ではないので、現行 531 条 3 項は不要である。したがって、3 項は削除する。
4 優等懸賞広告
【II-5-23】優等懸賞広告
(1) 広告に定めた行為をした者がxxある場合において、その優等者のみに報酬を与えるべきときは、その広告は、応募の期間を定めたときに限り、その効力を有する。
(2) 前項の場合において、応募者中いずれの者の行為が優等であるかは、広告中に定めた者が判定し、広告中に判定をする者を定めなかったときは懸賞広告者が判定する。
(3) 応募者は、前項の判定に対して異議を述べることができない。
(4) 前条の規定は、xxの行為が同等と判定された場合について準用する。
提案要旨
現行 532 条は、優等懸賞広告が、応募の期間を定めていなければ効力を生じないこと(1 項)、優等者の判断を誰にするか(2 項)、応募者は、その判断に対して異議を述べることができないこと(3 項)、同等とされた場合の扱い(4 項)について、規定を設ける。これらの規定については、とくに変更を加える必要はないので、そのまま維持する(【II-5-23】)。なお、【II-5-22】では、現行民法 531 条 2 項に当たる規定が、1 条文となるので、それ
にあわせて、4 項の規定を修正する。