○○支店：○○市◇区△△ 1-◎-5 △△ﾋﾞﾙ5F
家庭教師派遣及びそれに付随する補習用教材の契約に係る紛争事件
報 告 書
平成14年７月15日
神奈川県消費者被害救済委員会
目 次
第１ 審議の経過及び結果 １
第２ 紛争の概要 ２
１ 当事者 ２
２ 紛争事件の概要 ２
３ 当事者双方の主な主張 ３
４ 当事者間で和解へと向かった経緯 ４
第３ あっせん部会委員のコメント ５
１ 甲社の販売方法と紛争に至った基本的原因 ５
２ 信販会社の加盟店管理責任について ６
《参考資料》
資料１－１ 神奈川県消費者被害救済委員会へ付託した旨の通知
（事業者） ７
資料１－２ 神奈川県消費者被害救済委員会へ付託した旨の通知
（信販会社） ８
資料２－１ 和解した旨の文書（事業者） ９
資料２－２ 和解した旨の文書（申立人） 10
第１ 審議の経過及び結果
神奈川県消費者被害救済委員会（以下「本委員会」という。）は、平成14年
３月28日付消生第157号をもって神奈川県知事から「家庭教師派遣及びそれに付随する補習用教材の契約に係る紛争」についての処理を付託された。
本委員会は、この紛争を速やかに解決するため、直ちに学識経験者委員２名、消費者委員１名、事業者委員１名をもって構成するあっせん部会を設け、あっ せんによる解決を図ることにした。
当初あっせん部会は、同年４月から当該紛争事件の審議に入る予定としていたが、相手方事業者（以下「甲社」という。）及び関係信販会社（以下「乙信販」という。）に対し、本委員会事務局から本委員会へ付託した旨通知したところ、平成14年４月３日甲社から申立人と和解したい旨申し出があった。
このため、この甲社の申し出を両申立人に伝えたところ、両申立人ともに受諾するとの意思が確認できたため、あっせん部会は『本委員会付託後の合意解決』として審議を打ち切ることとし、本委員会は、平成14年７月15日に神奈川県知事へ報告書を提出した。
第２ | 紛争の概要 | |
１ | 当事者 | |
申立人 相手方事業者関係信販会社 | Ａ、Ｂ（計２名）甲社 乙信販 |
２ 紛争事件の概要
甲社は、主として訪問販売により家庭教師派遣とそれに付随する補習用教材セットの販売を行う事業を行っている。
申立人Ａ、Ｂそれぞれの紛争に至った概要は次のとおりである。
（１）申立人Ａの場合
甲社は、当初電話により申立人Ａと接触を図り、数日後、販売員が申立人Ａ宅を訪れ、契約内容の説明を行った。
来訪時の説明では、家庭教師はしっかり教育を受けた者を派遣すること、指導は甲社の教材を使用して教えるという内容だったので、それを信用し 契約するに至った。
後日家庭教師が派遣されてきたが、同家庭教師は、甲社から購入した教材の問題を１問目から解けず、満足な指導を受けられなかった。
申立人Ａは、甲社に家庭教師の変更を依頼したが対応が悪く、甲社に不信感もあり、中途解約を申し出たが、甲社はクーリング・オフ期間を経過していることを理由に教材の解約には応じられないと拒否した。
その後、申立人Ａは県小田原消費生活センターに相談を寄せ、相談を受 けた同センターでは、乙信販に支払い停止の抗弁書を提出させるとともに、甲社に対して販売方法の問題点を指摘し、特定商取引に関する法律（以下
「特商法」という。）の「債務不履行」の規定や特商法と消費者契約法の
「不実告知」の規定を根拠に合意解約又は取消しを求めるあっせんを行ったが、甲社は応じなかった。
このため、申立人Ａは本委員会への付託を希望した。
（２）申立人Ｂの場合
甲社は、当初電話により申立人Ｂと接触を図り、数日後、販売員が申立人Ｂ宅を訪れ、契約内容の説明を行った。
来訪時の説明では、家庭教師は優秀な人材を派遣すること、指導は甲社
の教材を使用して教えるが、申立人Ｂの子供が通う塾の問題の指導にも応じるという説明であったので、申立人Ｂはこれを信用し契約するに至った。
後日家庭教師が派遣されてきたが、同家庭教師は、申立人Ｂの子供が通う塾の問題を90分の授業の間１問も解けず、満足な指導を受けられなかった。
このため申立人Ｂは、甲社に解約を申し入れをしたが、家庭教師を交代し、「今度はちゃんとできる家庭教師を送る。」という甲社の説明を信用し、一旦は契約を継続することにした。
しかし、２人目の家庭教師も塾の問題を90分の授業の間２問しか解けず、また、これまでの甲社の説明などに不信感もあり、再度解約を申し出たと ころ、甲社にうやむやな対応をされたため、不安に感じた申立人Ｂは、横 須賀市消費生活センターに相談を寄せた。
相談を受けた同センターでは、乙信販に支払い停止の抗弁書を提出するとともに、甲社に対して、販売内容が特商法の特定継続的役務提供に該当することなどを指摘し、同法の「中途解約権」を根拠に、解約を求めるあっせんを行ったが、甲社はクーリング・オフ期間経過を理由に教材の解約に応じなかった。
このため、申立人Ｂは、解約を求め本委員会への付託を希望した。
３ 当事者双方の主な主張
（１）申立人Ａ
最初家庭教師をしているという大学生から自宅に電話があり、来訪に応じたところ大学生ではなく営業マンが来て説明を受けた。「家庭教師はしっかりした者を派遣する。」という約束だったので、教材は必要なかったが、家庭教師がそれを使って教えるというので仕方なく一緒に契約した。後日、家庭教師が来たが、購入した教材を１問目から解けず、その日は
結局無駄な時間になってしまった。その後、甲社に解約を申し出たものの、解約には応じられないということだった。教材は、全く使用しておらず納 得できない。
（２）申立人Ｂ
最初しつこく甲社から自宅に電話があったため、来訪に応じたところ、営業マンが来て説明を受けた。「家庭教師だけでも、契約は可能だが、教材をプラスすれば指導がより効果的になり、成績も上がるはずだ。」と言
われ、「費用も月あたりに換算すれば割安である。」という説明だった。家庭教師についても「子供が通う塾の問題に対応できる優秀な人材を送 る。」ということだったので、教材は必要なかったが、仕方なく一緒に契約した。後日、家庭教師が来たが、塾の問題を１問も解けず、その日は結
局無駄な時間になってしまった。
その後、家庭教師を交代してもらったが、その家庭教師も塾の問題を時 間内に２問しか解けなかったため、甲社に解約を申し出たが、解約には応 じられないということだった。教材は、全く使用しておらず、また、契約 時に教材の解約ができないことも説明を受けていないため、納得できない。
（３）相手方（事業者）
教材は、家庭教師派遣とは別契約であり、事実契約も別々に結んでいる。教材の購入は、お客の任意で選択できるようにしており、特商法の特定継 続的役務提供に規定する関連商品ではないため、解約には応じられない。
４ 当事者間で和解へと向かった経緯
（１）平成14年３月28日付消生第154号により、甲社及び乙信販に対し、『神奈川県消費者被害救済委員会への付託について』（資料１－１及び資料１
－２）を通知したところ、同年４月３日にまず乙信販から本委員会事務局へ電話が入り、「教材については、契約解除とするが、教材は甲社へ返却して欲しい。具体的な和解案は甲社から電話を入れさせる。」との内容だった。間もなくして、甲社からも電話が入り、「和解案として、両申立人とも教材費については、全額契約解除としたい。ただし、教材は当社へ返却して欲しい。また、家庭教師の費用については、入会金と実際に受講した役務に係る対価（既払金）は、放棄していただきたい。」との申し出があったため、その旨をＡＢ両申立人に伝えたところ、両人とも「和解案として満足できるものであり、甲社の申し出に応じたい。」との受諾の意思が確認できた。
（２）その後当事者双方から『和解した旨の文書』（資料２－１及び資料２－
２）が本委員会の会長あてに提出された。
このため部会は、当事者間において、和解が成立したものと判断し、あっせん手続きを打ち切ることとした。
第３ あっせん部会委員のコメント
１ 甲社の販売方法と紛争に至った基本的原因
（１）甲社の販売方法には、次のような特徴が見受けられた。
①まず電話により消費者に対し「家庭教師の無料体験はどうですか。」などと言って最初のアポイントメントをとる。
②次に「詳しい話しを聞きたい。」と関心を示した消費者に対し、後日自宅訪問の約束をして、訪問の際に初めて教材の購入を勧める。
③その際のセールストークとして、「家庭教師と教材はセットである。」
「教材を使うことで学習効果が上がる」と言った説明を行う。
④さらに、「家庭教師と教材をセットで買えば、家庭教師の費用が安くなる。」と言葉巧みに家庭教師と教材の契約を勧める。
⑤また、生徒である中学生の学年に関わりなく３年分の長期かつ高額な教材を販売している。
以上の販売方法は、全国の消費生活センターなどに寄せられた甲社に関する苦情に共通するものである。
（２）一方申立人の側から見ると、子供の学力向上のため、よりよい家庭教師による指導を求めており、中学３年間分の教材については特に必要性を感じていなかったが、甲社の巧みなセールストークにより、やむなく契約するに至っている。
（３）今回の紛争の基本的な原因を考察すると、契約時に甲社販売員が「家庭教師は、しっかりした者を派遣する。」などと言った一連のセールストークに起因していると考えられるが、セールストークの通りしっかりした家庭教師を派遣すればこういったトラブルは起きなかったと思われる。
また、甲社の主たる目的は教材の販売にあったと考えられるが、勧誘に際しては、家庭教師の説明を口実にして申立人宅への訪問の約束を取りつけ、訪問時にはじめて教材の購入を勧めるなど、家庭教師をつけて我が子の学力向上を望もうとする親の心理を利用した問題の多い販売方法と言わざるを得ない。
（４）さらに、勧誘時において甲社販売員が、申立人に対して「家庭教師と教 材はセットである。」「家庭教師と教材をセットで買えば、家庭教師の費 用が安くなる。」などと説明しながら、契約を勧めているにもかかわらず、家庭教師派遣と教材の契約を別々の書面で行うことで、特商法の特定継続 的役務提供の規制を回避できるものとし、教材の中途解約に全く応じない
ことについても、やはり問題があると言わざるを得ない。
（５）特商法で規定されている特定継続的役務提供の関連商品とは、特定商取引法に関する法律施行令第14条別表第六に定める商品であって、役務提供事業者が役務提供の際に必ず購入すべきもの（義務的購入）として自ら販売を又は代理若しくは媒介する商品を言うが、本件の場合、契約時の甲社販売員の説明や両申立人が解約を申し入れるうえで、「家庭教師と教材はセットであり、解約も一緒にできると思っていた。」などの消費生活センターにおける事情聴取の内容から判断すると、実態として、契約した教材は、特商法で規定されている特定継続的役務提供の関連商品に該当すると考えられる。
２ 信販会社の加盟店管理責任について
今回の事件を含めて、同種のトラブルを防止するうえで特に本委員会が言及しておきたい点は、信販会社（与信業者）の加盟店管理責任である。
（１）本事件の当事者である甲社と加盟店契約を締結している乙信販は、当初、甲社と同様の考え方に立って、本件教材のクレジット契約は、家庭教師の 契約とは別契約であるとの認識であったが、甲社に対する苦情の実態や消 費生活センターなどの働きかけにより、家庭教師に付随する関連商品であ ることを認め、甲社に対する加盟店指導に動いたことが、本紛争事件の迅 速な解決につながったものと評価をしたい。
（２）本委員会としては、信販会社が加盟店の事業について管理することは、加盟店を介して広くクレジット契約などで顧客を獲得している信販会社の社会的責務であると考える。
今後も、信販会社が、加盟店の販売方法や苦情の状況などの実態を把握するよう努め、適正な加盟店管理を行うことにより、加盟店と消費者とのトラブルの未然防止や拡大防止に努めるよう強く要望するものである。
（資料１－１）
消 生 第 1 5 4 号平成14年３月28日
株式会社 甲 社
代表取締役 ○ ○ ○ ○ 様
神奈川県県民部消費生活課長神奈川県消費者被害救済委員会への付託について
この度、神奈川県は神奈川県消費生活条例第23条第１項の規定に基づき、貴社と次の消費者の間の紛争事件の処理を、神奈川県消費者被害救済委員 会に付託することといたしました。
つきましては、今後、同委員会における事情の聴取、話し合い等に応じ、紛争解決に御協力くださいますようお願いいたします。
１ 紛争事件名
「家庭教師派遣及びそれに付随する補習用教材の契約に係る紛争事件」
２ 苦情申立人（消費者）２名
（１）Ａ 神奈川県○○市△△ 1-□-□
（２）Ｂ 神奈川県◇◇市□□ 2-△-△1
【神奈川県消費者被害救済委員会とは】
消費者からの消費生活上の被害救済の申出（苦情相談）のうち、その 被害の内容が県民の消費生活に著しく影響を及ぼし又は及ぼすおそれが あると認められるものについて、その紛争のxx迅速な解決を図るため、あっせん又は調停等を行う神奈川県消費生活条例第23条に基づき設置さ れた知事の附属機関。
事務担当は、指 導 班
電話000-000-0000 内線 ****
（資料１－２）
消 生 第 1 5 4 号平成14年３月28日
株式会社 乙信販
代表取締役 ○ ○ ○ ○ 様
神奈川県県民部消費生活課長神奈川県消費者被害救済委員会への付託について
この度、神奈川県は神奈川県消費生活条例第23条第１項の規定に基づき、貴社と加盟店契約を締結している次の事業者と消費者の間の紛争事件の処 理を、神奈川県消費者被害救済委員会に付託することといたしました。
つきましては、同委員会について趣旨御理解のうえ、今後紛争解決に向け御協力くださいますようお願いいたします。
１ 紛争事件名
「家庭教師派遣及びそれに付随する補習用教材の契約に係る紛争事件」
２ 事業者
株式会社 甲 x
x 社：◎◎市○○区□□町 △-1 ○△ﾋﾞﾙ
○○支店：○○市◇区△△ 1-◎-5 △△ﾋﾞﾙ5F
３ 苦情申立人（消費者）２名
（１）Ａ | 神奈川県○○市△△ | 1-□-□ |
（２）Ｂ | 神奈川県◇◇市□□ | 2-△-△1 |
【神奈川県消費者被害救済委員会とは】
消費者からの消費生活上の被害救済の申出（苦情相談）のうち、その 被害の内容が県民の消費生活に著しく影響を及ぼし又は及ぼすおそれが あると認められるものについて、その紛争のxx迅速な解決を図るため、あっせん又は調停等を行う神奈川県消費生活条例第23条に基づき設置さ れた知事の附属機関。
事務担当は、指 導 班
電話000-000-0000 内線 ****
（資料２－１）
平成14年４月15日
神奈川県消費者被害救済委員会
会 長 x x x x x
株式会社 甲 社
印
代表取締役 ○ ○ ○ ○
神奈川県消費者被害救済委員会に付託されました次の契約者に関する契約につきましては、当事者間の話し合いにより、下記の内容のとおり合意解約することにいたしましたので、報告いたします。
なお、今後も法令を遵守するとともに、今回のような同種の申し立てがなされることのないよう十分注意して、適正な事業活動に努めてまいりますので、御理解くださいますようお願い申し上げます。
１ 契約者
（１）Ａ | 神奈川県○○市△△ | 1-□-□ |
（２）Ｂ | 神奈川県◇◇市□□ | 2-△-△1 |
２ 合意解約の内容
今後は、上記契約者に対し、すでにお支払いいただいている金額（入会金と実際に受けた役務相当額）以外は、一切請求いたしません。
（資料２－２）
平成14年４月15日
神奈川県消費者被害救済委員会
会 長 x x x x x
x x x
住 所 神奈川県○○市△△ 1-□-□
（神奈川県◇◇市□□ 2-△-△1）氏 名 申立人Ａ 印
（申立人Ｂ）
神奈川県消費者被害救済委員会に付託していただきました次の事業者に関する契約につきましては、当事者間の話し合いにより、下記の内容のとおり合意解約することにいたしましたので、報告いたします。
１ 事業者
株式会社 甲 社
◎◎市○○区□□町 △-1 ○△ﾋﾞﾙ
２ 合意解約の内容
上記事業者から、すでに支払った金額（入会金と実際に受けた役務相当額）以外は、一切請求しないという内容の提示を受けたため、合意解約に同意いたしました。