Contract
【事案Ⅰ-3】契約無効確認および既契約掛金返還請求
・平成 27 年 10 月 21 日 和解成立
<事案の概要>
申立人の父(死亡)を共済契約者兼被共済者とし、共済の対象を建物とする自然災害保障付火災共済契約が存在するが、本件共済契約について一切の権利義務を承継した申立人が、本件共済契約は、共済契約者兼被共済者の意思に基づいて成立したものではないため、不成立もしくは無効との主張があったもの。
また、本件共済契約の対象建物は父と母の共有であり、父の持分は2分の1であるため、父の被共済者利益は2分の1であり、それを超える部分は無効であるとも主張している。
申立人が被申立人に対し本件共済契約に基づきこれまでに支払った共済掛金は不当利得に当たるので、その共済掛金合計額(又は半額)を返還するよう求めたことに対し、被申立人が本件共済契約が契約者の意思に基づいて有効に成立していることを理由として共済掛金の返還をしないため、これを不服として申立てがあったもの。
<申立人の主張>
被申立人は申立人に対し、自然災害保障付火災共済契約は不成立もしくは無効であるため、これまでに支払った共済掛金の合計額(又は半額)を支払え、との判断を求める。
(1)申立人は本件共済契約の契約者である父の相続人であり、申立人が本件共済契約についてその一切の権利義務を承継した。
(2)父を契約者とする本件共済契約申込書について、被申立人の取扱職員が記入したことが判明した。
(3)約款・事業規約には本件共済契約申込書の契約内容は契約者本人が記入すべきことを明記している。被申立人の取扱職員は職務上の注意義務を犯しており、共済契約の締結は契約者の意思に基づくものではないことは明らかである。
(4)被申立人が、本件共済契約が有効に成立していることを主張することはxxxに反するため、契約は不成立である。
(5)また、本件共済契約の共済の対象建物は父と母の共有であり、父の持分は2分の
1である。契約者である父は、被共済者利益も2分の1となり、それを超える部分は無効である。
(6)契約者から被申立人に対して支払われた共済掛金合計(本件共済契約の2分の1が無効の場合はその半額)は不当利得に当たるので、被申立人はその金員を申立人に返還せよ。
<共済団体の主張>
申立人の請求を棄却する、との判断を求める。
(1)契約者は、以前から被申立人との間で本件共済以外の共済契約も締結していた。共済の対象を建物とする共済契約を締結したいとのことだったので、取扱職員が重要事項について契約者の意思を確認しながら記載をし、契約者がその氏名欄を自署・押捺したものである。
(2)約款・事業規約は、共済契約内容のすべてを契約者が自署することは要求していない。
(3)契約者に対しては、被申立人から毎年共済掛金払込の案内、共済掛金払込証明書、並びに本共済契約の内容確認ができる書類も送っていたが、契約者からは一度も異議の申し出はなかった。
(4)本件共済契約は、法律上の原因があり、被申立人に不当利得が成立する余地はない。
<裁定の概要>
審議において、共済の目的となった建物(登記上では契約者と契約者の妻との 1/2ずつの共有)の共有者である契約者の妻から本件共済契約について同意をしていない旨の陳述があり、審議会としては、契約者が妻の共有持ち分まで被共済者利益を有するとの被申立人主張には無理があると判断されたことから、審議会より両当事者に対して和解の打診を行い、被申立人が申立人に対して和解金を支払うことで解決を図る旨、両当事者合意し、和解契約書の締結をもって解決とした。