上記答申を踏まえるとともに、地方公共団体が整備した設備を民間の電気通信事業者(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第5号に定める者のうち、公の機関・ 組織に属さない者(以下「事業者」という。)。)に貸与し、当該事業者がサービス提供を行う「公設民営方式」においては、設備貸与に係る契約(IRU契約1)の期間を一 般的に10年としており、今後数年のうちに契約更新のピークを迎えると想定されることから、今般、地方公共団体が保有する光ファイバケーブル及び関連設備の在り方に関す...
別紙3
公設光ファイバケーブル及び関連設備の民間移行に関するガイドライン
令和2年5月x x 省
目次
1. 総論
(1)背景 2
(2)目的 3
(3)基本的考え方 3
(4)本指針の対象となる主体と設備 4
2. 協議の進め方
(1)事前協議 5
(2)議会審議 6
(3)最終合意に向けた調整 6
(4)契約の締結 7
3. 民間移行に係る支援措置
(1)高度化を伴う更新 8
(2)民間移行後の維持管理費 9
(3)財産処分 9
(4)相談窓口 10
4. 各論
(1)利用料金の扱い 11
(2)電柱の添架位置と契約承継 11
(3)地方公共団体が保有する用地の長期利用 12
(4)地方公共団体による独自サービスの扱い 12
(5)負担金 13
(6)協議期間と契約更新 13
(7)住民への説明 14
(8)民間移行に要する費用 14
5. 本指針の見直し
1.総論
(1)背景
我が国では、全ての国民が、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを容易にかつ主体的に利用する機会を有し、その利用の機会を通じて個々の能力を創造的かつ最大限に発揮することが可能となり、もって情報通信技術の恵沢をあまねく享受できる社会が実現されることを旨として、2000年(平成12年)11月に高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)が制定、2001年(平成13年) 1月に施行され、同法に基づき、民間主導の原則の下で、光ファイバを含む情報通信基盤の整備が電気通信事業者により急速に進められた。しかしながら、過疎地域等の条件不利地域を始め、様々な困難を抱える地方においては、電気通信事業者による整備が十分に進まず、ブロードバンド環境の整備に関して地理的情報格差の問題が発生してきた。そこで、2000年代半ばから情報格差が生じる地方公共団体に対し、国が光ファイバ等の情報通信基盤の整備に必要な費用の一部を支援することによって、地域のxxと工夫を活かしつつ効果的かつ効率的な整備を行い、情報格差の是正と利活用の促進を進めてきた。これによ り、今日、我が国は世界最高レベルのネットワーク基盤を実現するとともに、 Society5.0の時代を迎える中で、とりわけ光ファイバに関しては、新たな時代を支える通信基盤であり、地域の発展に不可欠な21世紀の基幹インフラとし て、その重要性が一層高まっている。
一方、近年、当時光ファイバ整備を行った地方公共団体において、設備の老朽化に伴う更新、利用者のニーズや技術革新に対応した設備の高度化等により財政面の課題が深刻さを増すととともに、少子高齢化社会や住民ニーズの多様化等による業務の増加、地方公共団体の行政改革による職員減少等により人材面での課題も深刻化してきている。今後、地方における人口減少等が一層進展した場合、これら人的及び財政的負担を理由としてサービス継続が困難となり、地域住民にとって重要な通信手段が失われるおそれがある。
このため、こうした論点も含め、電気通信事業分野における競争ルール等について包括的に検証を行うべく、総務省では、2018年(平成30年)8月、「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」について情報通信審議会に諮問し、同審議会の電気通信事業政策部会(部会長:xxxx 一橋大学大学院経営管理研究科特任教授)及び電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証に関する特別委員会(主査:xxxx 一橋大学大学院経営管理研究科特任教授)において調査・審議が行われ、2019年(令和元年)12月17日、情報
通信審議会総会において最終答申が取りまとめられた。この中で、地方公共団体が保有する情報通信基盤に関しては、「国民経済全体に対する負担を軽減する観点からは、公設から民設へ、公営から民営へと移行を促すことを視野に入れ、今から必要な対応を講じていくべきである。」との方向性が示された。
上記答申を踏まえるとともに、地方公共団体が整備した設備を民間の電気通信事業者(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第5号に定める者のうち、公の機関・組織に属さない者(以下「事業者」という。)。)に貸与し、当該事業者がサービス提供を行う「公設民営方式」においては、設備貸与に係る契約(IRU契約1)の期間を一般的に10年としており、今後数年のうちに契約更新のピークを迎えると想定されることから、今般、地方公共団体が保有する光ファイバケーブル及び関連設備の在り方に関する考え方を、「公設光ファイバケーブル及び関連設備の民間移行に関するガイドライン」(以下「指針」という。)として定め、公表することとしたものである。
(2)目的
前述のとおり、近年、過去に光ファイバ整備を行った地方公共団体において、その維持管理に係る人材面及び財政面での負担が深刻化している。一方、事業者が整備とサービス提供を行う「民設民営方式」においては、地方公共団体が整備費等の一部を負担する場合があるものの、原則として事業者が設備の維持管理、更新等を担うことから、地方公共団体の維持管理等に係る人的及び財政的負担が軽減されることに加え、災害時における柔軟かつ迅速な復旧対応、規模の経済等による効率的な整備・運営が図られることが期待される。
以上の認識に基づき、本指針は、地方における将来の更なる人口減少等も見据え、情報通信基盤の効率的な管理運営を進めるため、地方公共団体が保有する光ファイバケーブル及び関連設備の円滑な民間移行に向けて、基本的考え方、協議の進め方及び留意すべき事項等を示すことを目的とする。
(3)基本的考え方
本指針は、地方公共団体及び事業者に望まれる行動として、以下を基本的考え方とする。
1 IRU(Indefeasible Right of User/破棄し得ない使用権)契約。関係当事者の合意がない限り破棄又は終了させることができない長期安定的な使用権に係る契約のこと。
◼ 公設設備を保有する地方公共団体は、財政的負担、人的負担、災害復旧における迅速な対応等を総合的に考慮の上、業務の簡素化・効率化を図り地域住民への安定的なブロードバンドサービスの提供を継続するため、必要に応じて事業者と公設設備の民間移行に関する協議を行うことが望ましい 2。
◼ 事業者は、地方公共団体の要望がある場合、採算地域の公設設備に関しては積極的に譲渡を受けることが望ましい。また、不採算地域の公設設備に関しても、支援措置の活用等を含む合理的判断に基づき、譲渡を受けることについて検討を行い、不採算の解消が見込まれる等、条件が合致する場合には、譲渡を受けることが望ましい。
地方公共団体及び事業者は、本指針を踏まえて行動することが期待される。また、民間移行に際しては、既存のサービス利用者への影響にも配慮して検討することが望ましい。
(4)本指針の対象となる主体と設備
本指針は、地方公共団体及び事業者の双方を対象とするものである。地方公共団体が出資等を行う第三セクターに関しても、参照することが期待される。
なお、移行の対象となる設備は事業者との協議の上、最終的に決定される。その際、事業者と締結している設備貸与契約(IRU 契約)がある場合は、当該契約が満了していることが前提となる(ただし、双方が合意する場合は、この限りでない)。
2 「公設公営方式」で自らがサービス提供を行ってきた地方公共団体等では、設備仕様の不一致等により、譲渡が実現しない場合もある。その場合でも、設備の一部廃棄及び事業者による再整備も含め必要に応じて民間移行に関する協議・検討を行うことが望まれる。
3 ただし、事業者との協議の結果、それら設備に関しても民間移行を行う場合は、本指針を参照することが期待される。
2.協議の進め方
公設設備の民間移行に関して、一般的に実施される協議の工程は次のとおり。議会審議の頻度やタイミング等に関しては、地方公共団体により異なることも想定される。
なお、一般的に、「公設民営方式」でブロードバンドサービスの提供等を行ってきた地方公共団体では、既存のサービス利用者への影響を最小限に抑える観点から、設備貸与契約(IRU 契約)を締結している事業者と、随意契約を前提として民間移行に向けた協議を実施することが多い 4。他方、「公設公営方式」で自らがサービス提供を行ってきた地方公共団体等では、競争入札により民間移行を行う事例も見られる。
(1)事前協議
① 地方公共団体と事業者間で基本条件の協議・確認
民間移行に向けた協議を開始する場合、まずは地方公共団体と事業者間で民間移行に係る基本条件について協議・確認を行う。
② 守秘義務協定の締結
基本条件について合意が得られた後、機微な情報のやりとりを可能とするため、地方公共団体及び事業者間で守秘義務協定の締結を行う。
③ 事業者へ情報提供、事業者が採算性判断
協定締結後、地方公共団体から事業者に各種情報(下記「一般的に情報提供を要する項目」参照)の提供を行う。事業者は当該情報に基づき、採算性を判断する。地方公共団体に対して負担金を要求する場合、事業者はその概算費用も算出する。また、第三者が保有する電柱に共架している場合、第三者と公設設備の貸与契約を別途締結している場合等、地方公共団体が第三者との間で公設設備に関係する契約を締結している場合、採算性の判断を行う前に、地方公共団体及び事業者が連携して第三者と当該契約の承継条件等に関して協議・確認を行う。
4 随意契約を行う場合、地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 234 条第 2 項及び地方自治法施行令(昭和 22 年政令第 16 号)第 167 条の 2 第 1 項に基づく必要がある。
一般的に情報提供を要する項目
◼ 譲渡を希望する対象設備
・地方公共団体が譲渡を希望するブロードバンドサービスの提供業務に関わる光ファイバケーブル及びその附帯設備(電気通信回線設備、つり線、自治体柱、xx設備等)の特定
◼ 譲渡を希望する設備の現状等に関する詳細資料
・設備構成図面(建設年月、建設費用、自治体柱に関しては強度計算の情報等含む)
・使用物品一覧 ・ケーブルルート図面 ・芯線接続管理状況 等
(公設公営方式で運営している場合は、経営状況、利用者数の推移等)
◼ 占有地情報
・地方公共団体が保有する設備が立地する占有地の占有位置(都道府県道、市町村道等)及び占有に伴う契約情報(契約相手・条件等)
◼ 地方公共団体で独自に利用している公設設備に関する情報(該当する場合のみ)
・利用目的と提供サービスの内容
・独自利用している区間、対象設備に関する図面 等
◼ 他事業者への芯線貸出等に関する情報(該当する場合のみ)
・貸出等を実施している事業者名と芯線の貸出用途
・貸出等を実施している区間、対象設備に関する図面 等
◼ 地方公共団体が所有する電柱に関する情報(該当する場合のみ)
・譲渡を希望する設備のうち、地方公共団体の資産である電柱の本数、占有位置等
(2)議会審議
④ 追加条件の協議・事業者の選定 (※競争入札を行う場合は入札の実施)
随意契約での民間移行を行う場合は、負担金を含む追加条件について協議を行うとともに、複数の事業者と事前協議を実施している場合は、事業者の選定を行う。競争入札を行う場合は、入札を行い、事業者を決定する。
⑤ 議会審議(移行に係る費用の予算措置)
随意契約での民間移行を行う場合は、移行に係る概ねの費用(後年度の維持管理に係る負担金及び電柱添架等に係る移行費用)が固まった段階で、その予算措置のため、議会の承認を得る。なお、競争入札を行う場合は、入札手続前に予算措置を行うことが必要であるため、議会審議は上記④よりも早いタイミングで行うことになる。
(3)最終合意に向けた調整
⑥ 地方公共団体と事業者の間で覚書締結
地権者等の第三者との交渉に係る委託対応等、地方公共団体及び事業者と
もに費用が発生する可能性がある工程が以後続くため、費用拠出の根拠となる民間移行についての覚書を締結する。
⑦ 占用許可等に関する第三者協議(電力会社、地権者等)
設備の所有者変更に伴い、電柱等に関する占用許可の承継等に関して、地方公共団体及び事業者が連携して、電力会社、地権者等の第三者と協議を行う。
⑧ 譲渡に向けた事前準備(最終条件や費用等について調整)
負担金を含む最終的な条件について、地方公共団体と事業者の間で調整を行う。
⑨ 議会審議(最終条件の合意)
地方公共団体と事業者の間で合意した最終条件について、議会で承認を得る。
(4)契約の締結
⑩ 設備譲渡の仮契約締結
財産処分を実施するため仮契約を締結する。この段階では、譲渡契約に要する期間や正確な費用等の見通しが立たない場合が多いため、契約開始時期や移行費用を確定しない仮契約という形態で締結する。
➃ 財産処分手続
所定の財産処分が必要な場合、地方公共団体が国に対して財産処分の手続を行う。また、第三者との契約等、民間移行に伴う移行作業を実施する。
⑫ 設備譲渡契約の締結
行政手続や第三者との契約等、全ての手続を終え、契約開始時期や移行費用の見通しが立った段階で、仮契約を引き継ぐ形で、当該契約開始時期や移行費用を明確化した設備譲渡契約を締結する。
3.民間移行に係る支援措置
(1)高度化を伴う更新
総務省では、過疎地域、辺地、離島、半島、振興xx、特定農山村、豪雪地帯のいずれかを含む条件不利地域において、都道府県、市町村、第三セクター法人、又は事業者が高速・大容量無線局の前提となる光ファイバ整備を行う場合に、その事業費の一部を補助する「高度無線環境整備推進事業」を 2019 年(令和元年)度から実施している。
高度無線環境整備推進事業
当該事業は、新規整備のみならず、事業者が公設設備の譲渡を受け、5G 対応等の高度化を伴う整備・更新を行う場合にも活用することが可能である。具体的には、伝送容量の拡大のための光ファイバケーブルの芯数増強や装置等の高度化が想定 される。事業者に補助を行う間接補助事業 5に関しては、例年、年初に補助要望調査、春頃に公募を実施している 6。また、当該高度化を伴う整備・更新に際して、仮に地方公共団体による負担が必要となる場合は、地方公共団体の負担分に対して過疎対策事業債、辺地対策事業債も充当することが可能である。
なお、過疎対策事業債においては、2020 年(令和2年)度から「光ファイバ等整備特別分」が創設されており、光ファイバ整備及び高度化に関する事業については、他の事業に優先して同意等予定額が確保される。
5 高度無線環境整備推進事業には、地方公共団体等に対し直接的に補助を行う直接補助事業と執行団体を介して事業者に対し間接的に補助を行う間接補助事業がある。
6 これに先立ち執行予定年度の前年4月頃に、総合通信局等を通じて予算要求に向けた予算活用意向調査を実施。活用を希望する場合、見積書含め予め同調査へ回答を行うこと。
(2)民間移行後の維持管理費
民間移行後は、原則として事業者の負担で設備の維持管理を行っていくことが望まれるが、仮にブロードバンドサービス等の料金収入だけでは設備の維持管理が困難であれば、運営に要する費用等の補填として、地方公共団体による負担金の支払が必要となる場合がある。
過疎の地方公共団体においては、地域医療の確保、住民に身近な生活交通の確保、集落の維持及び活性化等の住民の安全・安心な暮らしの確保を図るため、過疎対策事業債(ソフト分)を活用して様々なソフト事業を実施しているが、当該負担金に対しても、地域通信の確保のため、過疎対策事業債(ソフト分)を充当している地方公共団体がある。
また、「ふるさと納税」制度は、地方公共団体の様々な取組を応援する納税者の気持ちを橋渡しし、支え合う仕組みであるとともに、地方公共団体が自ら財源を確保し、様々な施策を実現するために有効な手段であり、人口減少が深刻化する中、地域資源を最大限活用し、地域経済を再生させていく上で、重要な役割を果たす制度である。
「ふるさと納税」制度により、地方公共団体が納税者から寄附を受けた財源についても、当該負担金に活用することが可能である。「ふるさと納税」による寄附を募る上で、納税者が使途を選択できるようにしている地方公共団体もある。
さらに国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄附を行った場合に、寄附額の一定割合を法人関係税から税額控除する「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」制度がある。地方公共団体が企業から受けた地方創生応援税制に係る寄附についても、当該負担金に充当することが可能である。本税制の活用を希望する地方公共団体は、内閣府地方創生推進事務局まで相談すること。
(3)財産処分
総務省の補助金を受けて整備した施設・設備については、その処分に対して一定の制限が課されている。具体的には、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和 30 年法律第 179 号)第 22 条において、「補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。」と規定されている。また、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(昭和 30
年政令第 255 号)第 14 条において、「法第二十xxxxx書に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。」として「補助金等の交付の目的及び当該財産の
耐用年数を勘案して各省各庁の長が定める期間を経過した場合」等が規定されている。これを踏まえ、同法第 22 条の規定に基づく財産処分(補助金等の交付を受けて取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、担保に供し、又は取り壊すこと等をいう。以下同じ。)の承認については、近年における急速な少子高齢化の進展、産業構造の変化等の社会経済情勢の変化に対応するとともに、既存ストックを効率的に活用した地域活性化を図るため、総務省において承認基準を定めている 7。当該基準において、経過年数(設置後経過した年数)が 10 年以上である施設又は設備について行う財産処分
(有償譲渡及び有償貸付を除く)等については、所定の様式にて報告を行うことで、財産処分が可能である旨規定している。
すなわち、過去に総務省の補助金で整備した公設設備の場合、整備完了後 10 年以上経過した設備の無償譲渡に関しては、総務省(各総合通信局又は沖縄総合通信事務所(以下「総合通信局等」という。))に報告を行うことで、事業者に対して譲渡が可能である 8910。仮に整備完了後 10 年未満の設備の譲渡等を希望する場合は、国庫納付に関する条件を付して承認することが原則となることから、各総合通信局等に相談すること。
また、譲渡を行おうとする施設・設備の整備に係る地方債の償還が終了していない場合には、譲渡に際して繰上償還が必要となる場合がある。
なお、その他省庁等の補助金を活用して整備したものについては、地方公共団体において財産処分についての条件等を確認することが望まれる。
(4)相談窓口
公設設備の民間移行に関して、その他支援が必要な場合は、総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 事業政策課 ブロードバンド整備推進室に相談すること。
7 総務省所管一般会計補助金等に係る財産処分承認基準(平成 20 年 4 月 30 日総官会第 790 号)
8 ただし、地方公共団体が、近年における急速な少子高齢化の進展、産業構造の変化等の社会経済情勢の変化に対応するため等の判断の下に行う財産処分である必要がある。
9 総務省所管補助金等交付規則等で処分制限年数が 10 年以上とされている設備(コンクリート柱等)であっても、整備完了後 10 年以上経過した設備に関しては、包括承認事項の対象となり、総務省に報告を行うことで無償譲渡が可能である。
10 経過年数が 10 年以上の設備の有償譲渡の場合は、(譲渡額に総事業費に対する国庫補助額の割合を乗じて得た額等の)国庫納付が必要となるため、別途承認手続が必要。
4.各論
地方公共団体及び事業者に望まれる行動及び留意すべき事項として、各論の考え方は下記のとおり。なお、各項目において対象とする主体を、項目の右側に括弧で記載する。
(1)利用料金の扱い 【地方公共団体・事業者】
一般的に、地方公共団体が光ファイバ整備等を行い、利用者にサービスを提供する「公設公営方式」及び地方公共団体が整備した設備を事業者に貸与し、当該事業者がサービス提供を行う「公設民営方式」においては、地方公共団体や住民の意向を踏まえ、維持管理に係る経費の一部を地方公共団体が補填等することで、事業者が提供する標準的な利用料金よりも低い料金でブロードバンドサービス等を提供しているケースがある。
しかしながら、標準的な料金よりも低い利用料金を確保するために地方公共団体から事業者に負担金を支払う場合、当該支払が永続的に必要となるため、後年度の財政負担について十分に留意することが必要である。
原則として、民間移行後は事業者の標準的な利用料金メニューを設定することが望まれる。
(2)電柱の添架位置と契約承継 【地方公共団体・事業者】
地方公共団体が保有する光ファイバケーブルを第三者が保有する電柱等に共架している場合、電力会社及び事業者が電線等を共架している添架位置とは異なる一般の添架位置に共架しているケースが多い。この場合で、民間移行後も事業者の添架位置に移設しない場合、事業者が一般の添架位置と従来からの添架位置の二つの添架位置を使用することになる。他方、一般の添架位置で複数のケーブルを同時に共架することは事業者間協議により可能であり、今後添架を希望する他の利用者が不利な条件を強いられないことが確保される限り、「公益事業者の電柱・xx等使用に関するガイドライン」(平成 27 年総務省告示第 363 号)が定める「xx性の原則」11
11 設備保有者は、事業者から設備の提供の申込みがあったときは、自己の事業又は有線電気通信設備令(昭和 28 年政令第 131 号)、電波法(昭和 25 年法律第 131 号)その他の設備に関する法令等の規定及び道路法(昭和 27 年法律第 180 号)その他の公物管理に関する法令等の規定に支障のない限り、xxかつxxな条件で設備を提供する。(xx性のx
xに抵触しない。
民間移行に要する費用を最小化するため、今後添架を希望する他の利用者が不利な条件を強いられないことが確保される場合は、事業者は光ファイバケーブルの添架位置を変更しないことができる。その際、電柱管理者が希望する場合は、譲渡設備であることを電柱管理者が判別できる方法について、事業者は電柱管理者との間で協議を行うこと。
また、私有地に建柱している電柱の敷設使用許諾、道路占用許可、第三者との公設設備の貸与契約、電力会社等との添架契約の承継等を含め、第三者との契約変更等に係る調整に際しては、各種交渉及び申請等に係る費用の最小化を図る 12とともに、地方公共団体及び事業者が密に連携して行うこと。特に第三者との調整については、現行の契約者である地方公共団体が中心となって行うことで円滑な調整が期待できる。
(3)地方公共団体が保有する用地の長期利用 【地方公共団体】
譲渡対象となる光ファイバケーブル、xx設備、電柱等の設備に地方公共団体が保有する用地が利用されている場合がある。民間移行後に、当該用地の利用が制限された場合、事業者が安定的にサービスを提供することが困難となるおそれがある。地域住民への安定的なサービス提供を可能とするため、地方公共団体は民間移行後においても、契約期間や確実な契約の更新等を含め、当該用地の長期利用について配慮することが望まれる。
(4)地方公共団体による独自サービスの扱い 【地方公共団体】
放送事業者においては、地上デジタル放送のカバーエリア拡大に向けて、地上波中継局の整備を推進しているが、条件不利地域等、中継局の整備が容易でない地域においては、地上波中継局の補完措置として、地方公共団体が地上デジタル放送の再放送を実施している場合がある。また、地域のきめ細かな情報等を専門的に提供するため、地方公共団体がコミュニティ放送を含むケーブルテレビ事業を実施してい
則)(「公益事業者の電柱・xx等使用に関するガイドライン」(平成 27 年総務省告示第
363 号)第 1 条第 4 項)
12 例えば、地方公共団体からの設備譲渡に伴い、事業者が当該設備に係る新たな道路占用許可の申請をする際に、過去に地方公共団体が道路占用許可を取得した際に使用した関係書類等を活用し、申請事務が簡素化された事例がある。
る場合がある。地方公共団体によっては、防災・行政情報の配信や地域の情報共有を支援するため、IP 告知システムを運営している場合もある。
このように地方公共団体が独自の情報通信サービスを提供している場合、代替方法への移行等を行うことで、民間移行後もサービスの維持は可能である。具体的には、事業者から光ファイバケーブルの貸与を受けて地方公共団体が継続してサービス提供を行う方法や、事業者が提供するネットワークサービスを活用する方法等が考えられる。最適なサービス継続方法を選択するために、地方公共団体は事業者と連携して検討することが望まれる。
また、仮に地方公共団体が実施していたサービスを存続させずに廃止する場合、電気通信事業法に基づく廃止手続等が必要となる場合がある。地方公共団体が実施していたサービスを事業者が承継する場合にも、業務区域の変更等の手続が必要となる場合がある。詳細は各総合通信局等の相談窓口に相談すること。
(5)負担金 【地方公共団体・事業者】
不採算地域における公設設備の譲渡の場合、ブロードバンドサービス等の料金収入だけでは設備の維持管理が困難なため、運営に要する費用や、民間移行作業に伴い発生する費用の補填として、事業者が地方公共団体に対して負担金を要求する場合がある。当該負担金について、事業者は必要最小限の金額を算定すること。事業者は、譲渡を受ける候補事業者が少ないこと等を背景として、不当な金額を要求してはならない。また、地方公共団体は、負担金の支払を最小化するため、入札等により譲渡する事業者を決定する方法についても検討することが望まれる。
なお、当該負担金の低減に向けて、地方公共団体及び事業者はブロードバンドサービス等の利用促進に向けた努力を行うことが望ましい。
(6)協議期間と契約更新 【地方公共団体・事業者】
公設設備の民間移行に関して、一般的に実施される協議の行程は、前述の「2.協議の進め方」で規定したとおりであるが、事業者に提供する情報の精査、調査、各種条件の協議、地権者等の第三者との交渉、議会審議等を含め、協議期間は一般的に1年半から2年程度を要することが想定される。特に事前協議の段階で、地方公共団体から事業者に迅速な情報提供がなされると協議が円滑に進むことが期待できる。
地方公共団体が公設設備の譲渡を希望する場合、当該協議に要する期間も考慮の上、早い段階で候補となる事業者に相談することが望ましい。また、設備構成図面、ケーブルルート図面、土地占用に伴う契約情報、地方公共団体が独自に利用する公設設備の情報、他事業者への貸出し芯線の情報等、一般的に情報提供を要する項目について、あらかじめ整理しておくことが望ましい。
また、地方公共団体と事業者間で公設設備の貸与契約(IRU 契約)を行っている地方公共団体において、仮に協議が長期化し、設備譲渡完了前に当該契約が更新の時期を迎える場合、当面は自動更新等により単年度等で当該契約を更新することが望ましい。
(7)住民への説明 【地方公共団体】
標準的な利用料金メニューへの移行や地方公共団体による独自サービスの存続等を含め、公設設備の民間移行に関して、地方公共団体は事業者とも連携して、住民に対して適切に説明を行うことが望ましい。特に、これまで「公設公営方式」で地方公共団体がブロードバンドサービスの提供を行っていた場合や、地方公共団体が整備した設備を事業者に貸与し「公設民営方式」で事業者がサービス運営を行っていたが民間移行に伴い運営を行う事業者が変更となる場合は、事業主体の変更に伴う各種手続、稼動負担、利用者のシステム変更等が発生することも想定されることから、住民に対して十分に周知・広報を行うことが望まれる。
(8)民間移行に要する費用 【地方公共団体・事業者】
民間移行に要する費用について、地方公共団体及び事業者が負担するものとして、主として以下の費用が考えられる。
⚫ 設備の老朽化や事業者との設備仕様の不一致等による光ファイバ整備(更新)等に要する費用
⚫ 後年度の運営赤字の補填として地方公共団体から支払われる負担金
⚫ 地権者等第三者との契約承継等に係る各種交渉及び申請等に係る費用
これら費用に関しては、前述のとおり一部支援措置を設けているが、地方公共団体及び事業者の双方ができる限り効率化を行い、費用の最小化を図ることが望ましい。
5.本指針の見直し
本指針は、現時点で想定される各種制度や地方公共団体及び事業者を取り巻く環境等を前提として策定したものであり、今後の技術の進展、環境の変化、各種制度の見直し等を踏まえ、必要に応じて、その内容を見直すものとする。