JSLA契約書雛形の解説講座
シンジケートローン実務者セミナー
JSLA契約書雛形の解説講座
2024年7⽉17⽇
森・濱⽥xx法律事務所弁護⼠ ⻘⼭ ⼤樹
⽬次
第1部 JSLA契約書雛形の解説
I. 本セミナーの解説対象 p.3
II. JSLAプライマリー契約書の解説 p.5
1. シローン契約の全体像
2. 貸付⼈-借⼊⼈関係の⾻格
3. 貸付⼈間の協調・拘束
(1) 貸付実⾏局⾯
(2) 回収局⾯
(3) 期中管理
(4) エージェントの役割
III. コミットメントラインに特有の論点 p.20
1. 「コミットメントライン」と「リボルビングクレジットファシリティ」
2. 借⼊申込(CL契約書第5条)
3. コミットメントフィー(CL契約書第15条)
IV. シンジケートローンにおける担保 p.28
1. シンジケートローンにおける担保取引
2. 個別同順位⽅式と順共有⽅式
3. 後順位担保
4. 新しい担保設定⼿法
第2部 近時のトピック
I. XXXXX・XXXXX廃⽌対応 p.38
II. 事業性融資推進法(企業価値担保権) p.40
質疑応答
第1部 JSLA契約書雛形の解説
I. 本セミナーの解説対象
JSLA公表の標準契約書・解説書
契約書の種類 | 制定・改訂経緯 | 解説書 | ||
プライマリー契約書 | タームローン契約書 | 2019年改訂平成25年改訂平成15年制定 | 2019年改訂平成25年改訂平成15年制定 | |
コミットメントライン契約書 | 2019年改訂平成25年改訂 平成13年制定(旧「リボルビング・クレジット・ファシリティ契約書」) | |||
セカンダリー契約書 | 基本契約書 | 貸付債権譲渡に関する基本契約書 | 平成25年改訂平成13年制定 | 2019年改訂平成25年改訂平成13年制定 |
貸付債権譲渡に関する基本契約書(問題債権⽤) | 平成17年制定 | |||
個別契約書 | 貸付債権等譲渡契約書 (汎⽤バージョン) | 2019年改訂平成25年改訂平成13年制定 | ||
貸付債権等譲渡契約書 (抗弁放棄異議なき承諾バージョン) | 2019年改訂平成25年改訂 平成13年制定(旧「異議なき承諾バージョン」) | |||
貸付債権等譲渡契約書 (問題債権⽤) | 平成17年制定 |
II. JSLAプライマリー契約書の解説
◼ シンジケートローンの意義
→⼤規模融資に適する。
– アレンジャー・エージェントによる取りまとめ機能
→複数の⾦融機関と個別に交渉することは借⼊⼈の負担が⼤きくても、アレンジャー・エージェントが取りまとめ機能を担うことで、単⼀の窓⼝と交渉すれば複数の⾦融機関からの借⼊が可能。
– 多数の貸付⼈の参加
→単⼀の貸付⼈にとっては過⼤となる融資額であっても、複数の⾦融機関が協調することで信⽤リスクの分散が可能。
⇒他の貸付⼈の不履⾏等により悪影響を受けないよう、貸付⼈間の個別独⽴の要請
⇒真に信⽤リスクが割合的に分散するよう、契約条件の平等・貸付⼈間の協調⾏動の要請
◼ シンジケートローン契約に特徴的な規定
緑︓詳細ローン特有規定 →貸付⼈・借⼊⼈間の関係
⾚︓シローン特有規定 →貸付⼈相互間/貸付⼈・エージェント間の関係
第1条(定義)
タームローン契約書(JSLA2019年版)⽬次
第15条(貸付⼈への分配)
第2条(貸付⼈の権利義務)第3条(資⾦使途)
第4条(貸付実⾏の前提条件)
第5条(貸付の実⾏) 第6条(貸付の不実⾏)
第7条(増加費⽤及び違法性)第8条(元本弁済)
第9条(利息)
第10条(期限前弁済)第11条(遅延損害⾦)
第12条(エージェントフィー)第13条(諸経費及び公租公課等)第14条(借⼊⼈の債務の履⾏)
第16条(借⼊⼈による表明及び保証)第17条(借⼊⼈の確約)
第18条(期限の利益喪失事由)
第19条(相殺、許容担保権の実⾏及び任意売却)第20条(貸付⼈間の調整)
第21条(エージェントの権利義務)
第22条(xxxxxxの辞任及び解任)第23条(貸付⼈の意思結集)
第24条(契約の変更)
第25条(借⼊⼈による地位の譲渡、貸付実⾏前の譲渡)第26条(貸付実⾏後の譲渡)
第27条(第三者からの回収等)第28条(⼀般規定)
貸付契約
貸付契約
貸付契約
借⼊⼈
貸付⼈
貸付⼈
貸付⼈兼 エージェント
貸付⼈間の協調・拘束
– 各貸付⼈と借⼊⼈がそれぞれ個別の貸付契約関係に⽴つ
– 貸付⼈間で相互に協調⾏動を拘束し抜け駆け禁⽌の拘束を課する
⇒他貸付⼈に劣後しないポジション(信⽤リスクの割合的分散)の確保
⇒ 個別独⽴の原則に対し、平等・協調の要請から必要な修正をどのように加えていくか
◼ 前提条件・表明保証・コベナンツ・失期条項の相互関係
前提条件
✓ 書類提出
✓ コベナンツ違反の不存在
✓ 表明保証違反の不存在
✓ 失期事由不存在
✓ その他
失期条項
✓ 倒産、差押事由
✓ 元利⾦不払い
✓ コベナンツ違反
✓ 表明保証違反の判明
✓ その他
貸付実⾏⽇
契約締結⽇
最終弁済⽇
表明保証対象時点
t
コベナンツ対象時点
(1) 前提条件(Conditions Precedent)
契約条項例(TL契約書第4条、CL契約書第6条)
「貸付⼈は、次の条件が実⾏⽇において全て充⾜されることを条件に、個別貸付を実⾏する。なお、かかる条件充⾜の判断は貸付⼈毎に⾏い、他の貸付⼈並びにエージェントは、当該貸付⼈の判断及び貸付の不実⾏について⼀切の責任を負わない。 」
◼ 借⼊⼈の表明保証違反が存在しないこと
◼ 借⼊⼈のコベナンツ違反(契約違反)が存在しないこと
◼ 借⼊⼈による書類の提出
🞐 借⼊⼈の会社関係書類(定款、印鑑証明等)
🞐 法律意⾒書の提出
ローン契約上の前提条件の意義
✓ 前提条件不成就の場合貸付⼈は貸付義務の履⾏を拒むことができる。
(2) 表明保証(Representation and Warranties)
契約条項例(TL契約書第16条、CL契約書第20条)
「借⼊⼈は、貸付⼈及びエージェントに対し、本契約の締結⽇及び実⾏⽇において、次の事項がxxに相違ないことを表明及び保証する。」
◼ 借⼊⼈の権利能⼒・⾏為能⼒の存在。
◼ 借⼊⼈による授権⼿続・意思決定⼿続の履践。
◼ 借⼊⼈による本契約の締結・履⾏の適法性。
◼ 借⼊⼈にとっての契約の適法・有効・執⾏可能性。
◼ 借⼊⼈の財務書類の会計基準適合性・適法性。
◼ 直近財務書類基準時点以降、事業・財産・財政状態に悪影響ある事象(MAC)の不発⽣。
◼ 紛争の不存在。
◼ 期限の利益喪失事由の不存在。
ローン契約上の表明保証の意義
✓ 前提条件事実を構成
✓ 期限の利益喪失事由(失期事由)を構成
(3) コベナンツ(Covenants/誓約)
契約条項例(TL契約書第17条、CL契約書第21条)
◼ 情報提供義務
◼ 財務制限条項(フィナンシャルコベナンツ)
◼ その他の義務(事業制限、ネガティブプレッジなど)
ローン契約上のコベナンツの意義
✓ 前提条件、失期事由を構成
(4) 期限の利益喪失条項
契約条項例(TL契約書第18条、CL契約書第22条)
◼ 当然失期事由︓倒産、解散、事業廃⽌、取引停⽌処分(電⼦債権記録機関の同等措置)、預⾦差押え
◼ 請求失期事由︓⽀払遅滞、表明保証違反の判明、コベナンツ違反、クロスデフォルト等
(1) 貸付実⾏局⾯
◼ 前提条件成否判断の独⽴の原則︓前提条件が充⾜したか否かの判断は、各貸付⼈が個別に⾏う。
⇒与信の最終・中核的判断については、各貸付⼈の個別独⽴の判断を尊重する。ひとたび貸付を⾏ったとき以降(回収局⾯・期中管理局⾯)は、貸付⼈間の協調・拘束が前⾯に出る。
TL契約書第4条、CL契約書第6条
貸付⼈は、次の各号に定める条件が実⾏⽇において全て充⾜されることを条件に(但し、第6条第1項に基づく通知の有無を問わない。)個別貸付を実⾏する。なお、かかる条件充⾜の判断は貸付⼈毎に⾏い、他の貸 付⼈及びエージェントは、当該貸付⼈の判断及び個別貸付の不実⾏について⼀切の責任を負わない。
◼ もっとも、前提条件は全貸付⼈について同⼀であり、貸付⼈毎に判断が分かれることは基本的には想定されない。
(2) 回収局⾯
◼ 回収のバリエーション概観
回収窓⼝ | 回収果実の収受 | 具体例 |
原則 エージェントが回収し (TL14条2項、CL18条2項) | 原則 各貸付⼈に平等分配する (TL15条、CL19条) | 通常の弁済 |
例外 貸付⼈が直接回収するが (TL19条1項、CL23条1項) | 原則 回収果実は平等にシェアする (TL20条1〜3項、CL24条1〜3項) | 相殺 |
例外 貸付⼈が直接回収し (TL19条3・5項、CL23条3・ 5項) | 例外 その貸付⼈が回収果実を独占する (TL20条4項、CL24条4項) | 許容担保権の実⾏ |
◼ 回収局⾯における協調の原則︓回収はエージェントが全貸付⼈分を⼀括して⾏い、貸付
⼈にプロラタ分配する。
⇒貸付⼈による抜け駆け回収・借⼊⼈による⼀部貸付⼈優遇を禁⽌し、平等回収を実現する。
弁済受領
権限
全貸付⼈分を
⼀括回収
貸付⼈への分配
貸付⼈
貸付⼈
貸付⼈
借⼊⼈
エージェント
直接回収の禁⽌(TL14条2項、CL)
TL契約書第14条第2項、CL契約書第18条第2項
本契約に別段の定めがある場合を除き、前項に反して、借⼊⼈が本契約上の債務についてエージェント以外の貸付⼈に直接⽀払っ たとしても、かかる⽀払は本契約上の債務の履⾏とは認めない。この場合、⽀払を受けた貸付⼈は、受領した⾦員を直ちにエージェントに⽀払い、エージェントによる当該⾦員の受領をもって、当該⾦員についての債務の履⾏があったものとみなす。
◼ 例外的な直接回収と平等結果の実現(相殺とシェアリング)
10
15
譲渡代⾦⽀払
A
50
B
30 20
C
Aが相殺
回収50
A
回収25 回収15 回収10
B
30
C
20
A
25
B
15
C
預⾦50
シローン貸付合計100
Bの15・Cの 10をAに債権譲渡
10
預⾦債務の帰属先が特定の⼀貸付⼈である以上、「エージェントを通じた回収」がそもそも⾏えないので相殺(=直接回収と同効果)を認めるが、その回収成果は全貸付⼈で平等にシェアする。
借⼊⼈
借⼊⼈
借⼊⼈
※シェアリング対象とする預⾦の範囲
①相殺全般をシェアリング対象にする例(JSLAフォーム)のほか、
②シンジケート⼝座のみを相殺の対象とする例、
③相殺を⼀切シェアリングの対象としない例。
◼ 許容担保権
回収果実の独占まで含めた特定の貸付⼈の既得権益を認め、xxxxの引き当てからそもそも除外して捉える。許容担保権の範囲︓①既存根担保権、②ネガティブプレッジに反しない担保権、③法定担保権
(3) 期中管理
◼ 期中管理における協調
– 失期請求の是⾮に関し多数貸付⼈が決定(TL18条2項、CL22条2項)
– コベナンツ承諾(ウェーバー)について多数貸付⼈が決定(TL17条2・4項、CL 21条2・4項等)
⇒回収活動の歩調を揃え、平等回収を実現する。
– 「多数貸付⼈」の定義(TL1条27項、CL1条39項)
⚫ 参加割合の数値
⮚ 66.7%以上とするのが最も⼀般的。
⮚ 50.1%以上とする例も多数。
⮚ 75%、90%を「特別多数貸付⼈」とする例もある。
⚫ 貸付⼈の頭数要件
⮚ 「単独または複数の貸付⼈」として、単数でも可とする例が最も⼀般的。
⮚ 「複数の貸付⼈」として、単数では多数貸付⼈とならないようにする例もある。
<例>A︓55、B︓35、C︓10のアロケーションの場合の、「多数貸付⼈」の定義と最少要件
50.1%以上 | 66.7%以上 | |
「単数⼜は複数」 | A | A + B |
「複数」 | A + 〔B or C〕 | A + B |
◼ 「多数貸付⼈」の定義を決定する要素
– 参加⾦融機関の利害
メイン⾏(ないし、エージェント・アレンジャー)が過半をテイクする場合、発⾔権を独占される事態を回避するために、多数貸付⼈の定義を厳しくする要請があり得る。
– 借⼊⼈の利害
期中のウェイバー(コベナンツ承諾など)を得やすくするために、できるだけ少数の主要貸付⼈のみで「多数貸付⼈」を構成するようにする要請があり得る。
(反⾯で、少数の主要貸付⼈のみで失期請求されてしまうリスクは抱える)
◼ 「多数貸付⼈」を構成しない貸付⼈にとっての整理
– 貸付条件が均⼀(⾦額が異なるのみ)である以上、他の貸付⼈も利害は共通であるはず(セイム・ボート理論)。
– 特に重要な事項については全貸付⼈の⼀致を求める対応。
例︓シンジケートローン契約の変更(少なくとも、重要事項に関する変更は全貸付⼈⼀致事項)
(4) エージェントの役割(TL契約書第21条、CL契約書第25条)
◼ 貸付⼈間の協調⾏動の集約点となる役割
例︓⼀括回収と貸付⼈への分配、多数貸付⼈の意思決定⼿続の主催
– 各種のエージェント業務
⚫ アドミニストレイティブ・エージェント
⚫ ペイイング・エージェント
⚫ セキュリティ・エージェント
– エージェントの義務
⚫ エージェントは各貸付⼈との間で委任ないし準委任の関係に⽴ち、善管注意義務・xx義務を負う。
⚫ もっとも、エージェント業務は基本的には事務的事項にとどまり、裁量的判断事項は多数貸付⼈の決定に委ねる。
(業務範囲によるエージェント責任の限定)
⚫ また、故意・重過失がない限り免責するなど、免責規定を設けるのが⼀般的
(主観的要件によるエージェント責任の限定)
III. コミットメントラインに特有の論点
コミットメントラインに特有の論点
コミットメント契約の構成
⻘︓コミットメントライン特有規定
第1条(定義)
第2条(貸付⼈の権利義務)第3条(資⾦使途)
第4条(本契約の発効)
第5条(借⼊の申込)
第6条(貸付実⾏の前提条件)第7条(貸付の実⾏)
第8条(貸付の不実⾏)
第9条(貸付⼈の免責)
第10条(増加費⽤及び違法性)第11条(元本弁済)
第12条(利息)
第13条(期限前弁済)第14条(遅延損害⾦)
第15条(コミットメントフィー)
第16条(エージェントフィー)
第17条(諸経費及び公租公課等)第18条(借⼊⼈の債務の履⾏) 第19条(貸付⼈への分配)
第20条(借⼊⼈による表明及び保証)第21条(借⼊⼈の確約)
第22条(期限の利益喪失事由)
第23条(相殺、許容担保権の実⾏及び任意売却)第24条(貸付⼈間の調整)
第25条(エージェントの権利義務)
第26条(xxxxxxの辞任及び解任)第27条(貸付⼈の意思結集)
第28条(契約の変更)第29条(地位譲渡)
第30条(貸付債権の譲渡)
第31条(第三者からの回収等)
第32条(全貸付⼈の貸付義務の終了)
第33条(⼀般規定)
1.「コミットメントライン」と「リボルビングクレジットファシリティ」
貸付約束の対価
🞐 コミットメントフィー → 「コミットメントライン」
🞐 ファシリティフィー→「リボルビングクレジットファシリティ」
「コミットメントライン」=未使⽤貸付枠×○%
「ファシリティフィー」=貸付枠(使⽤分含む)×○%
貸付枠
× □%
=ファシリ ティーフィー
実務的にはコミットメントフィーを徴する例が多い。
× ○%
未使⽤貸付枠
=コミットメントフィー
貸付残⾼
× △%
=利息
→JSLA標準契約書は平成25年改訂により「リボルビングクレジットファシリティ契約」から「コミットメントライン契約」に変更
◼ 借⼊申し込みの⽅法
ファクシミリ通信に限る。
=印紙税の実務を踏まえた取扱い。
参考︓国税庁「コミットメントライン契約に関して作成する⽂書に対する印紙税の取扱い」(平成18年7⽉)
Q: …借⼊⼈から貸付⼈に⽂書を交付する代わりに、ファクシミリ通信や電⼦メールを利⽤して送信する場合、印紙税の取扱いはどうなりますか。
A: 請求書や領収書をファクシミリや電⼦メールにより貸付⼈に対して提出する場合には、実際に⽂書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発⽣しません。
◼ コミットメントフィーと上限⾦利規制
適⽤対象
利息制限法
第1条
全貸付⼈
貸⾦業者
出資法
第5条第2項
貸⾦業法
第12条の8 第1項
上限⾦利規制
みなし利息規定
⾦銭消費貸借の利息は、100万円以上の貸付については、15% を超えるときは、無効。
第3条
上記規定の適⽤については、⾦銭消費貸借に関し債権者の受け る元本以外の⾦銭は、礼⾦、割引⾦、⼿数料、調査料その他いかなる名義をもってするかを問
営業として⾏う⾦銭の貸付けの利息が年20%を超える場合、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰⾦⼜はその併科。
第5条の4第4項
上記規定の適⽤については、⾦銭の貸付けを⾏う者がその貸付けに関し受け る⾦銭は、礼⾦、⼿数料、調査料その他いかなる名義をもつてするかを問わ
貸⾦業者は、その利息(みなし利息を含む)が利息制限法第1条に規定する⾦額を超える利息の契約を締結してはならない。
第12条の8第2項
上記に規定する「みなし利息」とは、 礼⾦、割引⾦、⼿数料、調査料その他 いかなる名義をもつてするかを問わず、
⾦銭の貸付けに関し債権者の受ける元
本以外の⾦銭をいう(⼀部例外を除
わず、利息とみなす(⼀部例外を除く)。
ず、利息とみなす(⼀部例外を除く)。く)。
特定融資枠 契約法による適⽤除外
第3条 利息制限法第3条及び第6条並びに出資法第5条の4第4項の規定は、特定融資枠契約に係る前条第1項の⼿数料については、適⽤しない。
第2条第1項 「特定融資枠契約」とは、[融資枠契約]であって、借主が 契約締結時に次に掲げる者であるものをいう。
①会社法第2条第6号に規定する⼤会社
・・(※1)
(※2)
※1 特定融資枠契約法適⽤会社(細部省略)
① ⼤会社
② 資本⾦3億円超の株式会社
③ 最終事業年度末純資産が10億円超の株式会社
➃ 監査対象会社かつ有報提出会社
⑤ 上記①〜➃の⼦会社
⑥ 外国会社あって上記②③に準ずるか外国上場会社である者
⑦ 保険会社
Ⓑ 第1種⾦融商品取引業者または投資運⽤業者
⑨ 証券⾦融会社
⑩ 貸⾦業者である株式会社
⑪ 資産流動化法上の特定⽬的会社
⑫ 登録投資法⼈
⑬ 流動化SPC
※2 JSLA「改正貸⾦業法の完全施⾏に伴う特定融資枠契約の留意点について」(2010年4⽉20⽇)
「貸⾦業者がコミットメントフィー等を受領する場合、改正貸⾦業法上の『みなし利息』と認められる蓋然性が⾼く、特定融資枠法の⾮適⽤会社を借主とする特定融資枠契約と同種の契約におけると同等の注意が必要」
◼ コミットメントフィー
貸付⼈が全て
⾮貸⾦業者(銀⾏等)
上限⾦利規制に関し特段の懸念なし
No
コミフィーは利息と 合わせて上限⾦利規制の範囲内とする必要
借⼊⼈が特定融資枠契約法適⽤会社
Yes
Yes
No
貸⾦業者については、コミフィーは利息と合わせて上限⾦利規制の範囲内とする対応を検討
★上限⾦利規制に対応したコミットメントフィーの減額調整規定
「【貸⾦業者貸付⼈については、】各コミットメントフィー計算期間につき、貸付⼈ごとに計算した当該コミットメントフィー計算期間に係るコミットメントフィーに、当該コミットメントフィー計算期間において発⽣する当該貸付
⼈の実⾏した個別貸付に係る利息合計額、遅延損害⾦および当該コミットメントフィー計算期間内に徴求した期限前弁済に係る清算⾦を加算した⾦額の、当該コミットメントフィー計算期間における個別貸付未払⾦の元本⾦額の平均残⾼に対する割合が、年率15%を超えた場合には、係る割合が年率15%以下となるようにコミットメントフィーを減 額するものとする。」
◼ アレンジメントフィー
真にアレンジメント業務の対価である限りは、「貸付に関し」「⾦銭消費貸借に関し」授受される⾦銭ではなく、みなし利息ではないという整理。
なお、出資法上の媒介⼿数料上限規制(5%)との関係に別途要留意。
IV. シンジケートローンにおける担保
◼ ローン契約と担保契約の関係
ローン契約 担保契約
担保の 設定・実⾏
担保権の設定
その他の約定
貸付約束・前提条件返済約束
表明保証 コベナンツ
期限の利益喪失条項
担保権の実⾏
表明保証 コベナンツ
(賠償・補償責任)
– 担保契約上の表明保証・コベナンツは、ローン契約上の表明保証・コベナンツと共に、前提条件・失期事由を構成
– 特に担保提供者がローン債務者以外の場合(物上保証の場合)、担保契約上の表明保証・コベナンツの違反による賠償・補償責任
– ローン契約上の期限の利益喪失が、担保xx⾏の要件を構成
全貸付⼈が、平等に(⾦額割合に応じて)担保の効⽤を受ける必要
→ 単に各⾃バラバラに設定を受けるだけでは、
対抗要件の順序に応じて順位がついてしまい不都合
◼ 伝統的な担保設定⼿法
– 個別同順位⽅式
– 準共有⽅式
◼ 新しい担保設定⼿法
– セキュリティトラスト
– パラレルデット
<個別同順位⽅式> <準共有⽅式>
A B C
担保権者3者が各別に同順位の担保権を設定
A
B
C
担保権者3者が 1つの担保権を準共有
◼ 担保⽬的物毎の設定⽅法
– 不動産
普通抵当権→個別同順位⽅式
※普通抵当権の場合、準共有⽅式の登記は不可能(法務省昭和35年通達問題)。
「他⼈の債権の担保のために普通担保権(の⼀部)を取得することは不可」という理屈。
根抵当権→個別同順位⽅式と準共有⽅式のどちらもあり得る。
※個別同順位⽅式のメリット
確定前根抵当xx共有の場合には、譲渡の都度、全担保権者の同意を要する。
※準共有⽅式のメリット
極度額を貸付⼈毎に定めなくても、全貸付⼈合計の極度額を定めれば⾜りる。
◎普通担保と根担保の使い分け
◼ タームローン・限度貸付(のみの場合) → 普通担保
◼ リボルビングローン(極度貸付)(を含む場合) → 根担保
– 動産
質権よりは譲渡担保権の設定が⼀般的(占有移転を要しないため)。
→ 準共有⽅式の譲渡担保が多い
※個別同順位⽅式とする場合、複数譲渡担保権が可能か否かの論点になる。
(但し、最判平18.7.20が複数譲渡担保権の設定⾃体は認めているという読み⽅も可能。)
– 債権
質権と譲渡担保権のいずれも可能。
→ 個別同順位の質権か、準共有の譲渡担保が多い(普通担保の場合)。
※質権の場合、準共有⽅式では、普通抵当権の場合(上記)と同様、
法務省昭和35年通達問題の考え⽅が当てはまってしまうのではないか、という問題。
※譲渡担保の場合、動産の場合(上記)と同様、複数譲渡担保権の可否の問題。
◼ 劣後xxx(xxxxxxx)に第⼆順位担保権を設定する⽅法
– 抵当権
後順位担保の設定が可能
=抵当権の順位は登記の順位による。
– 質権
後順位担保の設定が可能
=質権の順位は対抗要件具備の順位による。
✓ 債権質(通知・承諾による場合)
→「確定⽇付ある書⾯による通知・承諾」を備える時点をずらす
例︓ 第⼀順位承諾書に確定⽇付を付し、その後に第⼆順位承諾書に確定⽇付を付する。
✓ 債権質(登記による場合)・動産質(登記による場合)
→ 担保権の順位を登記事項とすることはできない。登記申請の順序をずらす実務的取扱い。
✓ 動産質(占有移転による場合)
→ 占有開始の順序をずらす実務的取扱い。
– 譲渡担保権
複数譲渡担保権が可能か否かの論点
= 第⼀順位譲渡担保権を設定した時点で設定者が所有権を失うと形式的に考えれば、
その後で設定者が第⼆順位譲渡担保権を設定しても全く無効ではないか、という問題。
✓ 対処法その1︓ 後順位設定⽅式
上記論点は最判平18.7.20により克服されているという解釈に依拠する
• 最判平18.7.20の判旨「重複して譲渡担保を設定すること⾃体は許されるとしても(後順位譲渡担保権者が独断で担保xx⾏を⾏うことは認められない)」
• 最⾼裁調査官解説「後順位譲渡担保権の概念を⼀応承認したもの」
→もっとも、判例が正⾯から後順位譲渡担保の有効性を認めたものではないという読み⽅も可能。
✓ 対処法その2︓ 第⼀順位準共有⽅式
シニア貸付⼈と劣後貸付⼈の両⽅を担保権者として、準共有⽅式の第⼀順位譲渡担保権を設定する。
+シニア貸付⼈と劣後貸付⼈間で、シニア貸付⼈を優先的に取り扱う旨の合意をする。
→シニア貸付⼈としては、劣後貸付⼈が合意に違反した場合どうするか等を検討する必要。
✓ 対処法その3︓ 清算⾦担保⽅式
シニア貸付⼈が譲渡担保権を設定する。
+劣後貸付⼈は、設定者がシニア貸付⼈に対して取得する清算⾦請求権(担保実⾏後に余剰があれば返還するよう求める権利)に債権担保を設定する。
伝統的な担保設定⽅法の課題
① 債権譲渡の際に、場合により全貸付⼈の同意取得が必要になるなど、譲渡⼿続が煩雑
② 後順位譲渡担保権など、制度上想定されていない担保取得をする際の問題
これらの課題を解決すべく検討されているのが、新しい担保設定⼿法
担保権信託のスキーム図
<担保権信託>
ー
貸付⼈団
A
B
C
受益権
貸付債権
(被担保債権)
担保権
(担保権設定者)
担保対象資産
借⼊⼈
受託者
(1) セキュリティトラスト(担保権信託)
① 担保権設定者は受託者(セキュリティトラスティ)のために担保設定
② 被担保債権はシンジケートローン債権
③ 信託の受益者は(その時々の)シンジケートローンレンダ
このようにすることで、
✓ 担保権者は常に⼀⼈(受託者)
=担保設定⽅法の議論が不要
✓ シンジケートローン債権を譲渡しても担保権の移転が発⽣しない
=譲渡⼿続の簡便化が図れる。
もっとも、信託報酬の問題等により、⼀般的普及は今後の課題。
(2) パラレルデット
① 借⼊⼈は、借⼊債務(「原債務」)と同内容の「並列債務」をエージェントを債権者として引き受ける。
② 原債務と並列債務は、⼀⽅が消滅すれば他⽅が消滅し、
⼆重⾏使はできない関係。
③ 並列債権を被担保債権として担保権設定。
パラレル・デットのスキーム図
貸付⼈団
このようにすることで、
✓ 被担保債権者・担保権者は常に⼀⼈(エージェント)
A B C
分配請求権
エージェント
並列債権
=担保設定⽅法の議論が不要
✓ シンジケートローン債権を譲渡しても、被担保債権・担保権の移転は発⽣しない。
=譲渡⼿続の簡便化が図れる。
貸付債権
(原債権)
(被担保債権)
担保権
もっとも、有効性の本格検討は最近⾏われたばかり。
(担保権設定者)
借⼊⼈
担保対象資産
第2部 近時のトピック
I. XXXXX・XXXXX廃⽌対応
I. XXXXX・XXXXX廃⽌対応
◼ LIBOR対応
– 全銀協「相対貸出のフォールバック条項の参考例」(2020/3)
– JSLA「シンジケートローンのフォールバック条項の参考例」(2020/10)
– 2021/12x xLIBOR公表停⽌
x XXXXX対応
– xxxxXXXXX
⚫ 2024年12⽉末をもって廃⽌
⚫ フォールバック条項は、近く発動される現実的可能性がある想定
– ⽇xxXXXXX
⚫ 現時点で公表停⽌は想定されていない
⚫ フォールバック条項は、将来の抽象的廃⽌可能性に備え頑健性向上を図る⽬的
– 全銀協「相対貸出のフォールバック条項の参考例(XXXXXx)」(2023/3)
– JSLA「シンジケートローンのフォールバック条項の参考例(XXXXXx)」
(2023/9)
II. 事業性融資推進法(企業価値担保権)
II. 事業性融資推進法(企業価値担保権)
◼ 事業性融資推進法の成⽴
– 2024年6⽉7⽇ 事業性融資推進法成⽴
– 施⾏は交付から2年6か⽉以内で別途定める
◼ 企業価値担保権の特徴
– ⽬的財産︓債務者の「総財産」。契約上の地位やのれんも含む
– 当事者︓債務者のみ設定可(物上保証は不可)。セキュリティトラスト
(「企業価値担保権信託会社」)の利⽤が必須
– 対抗要件︓商業登記簿への記載
– 優先順位︓原則として、対抗要件具備の先後による
– 担保権の実⾏︓管財⼈が選任され、債権届出等の⼿続を経て換価(原則として事業譲渡)・配当
◼ 利⽤局⾯
– LBOやプロジェクトファイナンス等の「全資産担保」案件のほか、ベンチャーデットでの活⽤が期待されるとの説明
– 実際に実務で利⽤が広がるかは、今後の推移に注⽬
講師略歴
⻘⼭ ⼤樹
Xxxxxx Xxxxxx
パートナー 2002年 弁護⼠登録
第⼆東京弁護⼠会所属
2008年 ニューヨーク州弁護⼠登録
[学会等]
⽇本私法学会会員
TEL: 00-0000-0000
▌主要な取扱分野
ファイナンス関連業務を基軸として、不動産関連業務、国内・国際契約交渉など、企業法務全般を幅広く取り扱う
▌著作・論⽂
〔書籍〕
『重要論点 実務⺠法(債権関係)改正』(商事法務、2019年)
『詳解 シンジケートローンの法務』(⾦融財政事情研究会、 2015年)
『条⽂から分かる ⺠法改正の要点と企業法務への影響』(中央経済社、2015年)
『M&A法⼤系 第2版』(有斐閣、2022年)
〔論⽂〕
「全銀協XXXXXのフォールバックに関する実務動向」(⾦融法務事情2197号、2022年)
「全銀協『相対貸出のフォールバック条項の参考例(サンプル)
(改訂版)』の解説」(⾦融法務事情2162号、2021年)
「⾦利スワップ取引における参照⾦利の変更に関する論点」 (同上)
「LIBORのxx的公表停⽌とシンジケートローン」(⾦融法務事情2150号、2020年)
「全銀協『相対貸出のフォールバック条項の参考例(サンプル)』の解説」 (⾦融法務事情2139号、2020年)
「LIBOR参照社債におけるフォールバック条項の導⼊に関する法的論点」 (同上)
▌経歴
2001年 東京⼤学法学部卒業
2007年 ハーバード・ロースクール卒業
2007年 ニューヨーク市 Debevoise & Plimpton法律事務所で執務(〜2008年)
2011年 東京⼤学法学部⾮常勤講師(⺠法)(〜2013年)
▌受賞歴等
Xxxxxxxx Global (Banking & Finance) Xxxxxxxx Asia-Pacific (Banking & Finance)
The Best Lawyers in Japan (Banking and Finance Law) The Legal 500 Asia Pacific (Banking and finance) asialaw (Banking and finance)
IFLR1000 (Banking)
等で多数ランクイン
他多数