2009年新協会貨物約款 A・ ・C
2009年新協会貨物約款 A・・C
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早稲田商学第 422 号
2 0 0 9 年 12 月
2009年新協会貨物約款 A・ ・C
x x x x
(筆者は,1982年に制定され,MAR ポリシー・フォームとともに使用されていた各種協会約款が改訂され,新たに2009年1月1日から使用を開始された協会貨物約款(Institute Cargo Clauses)A・ ・C,協会戦争約款(Institute War Clauses) および協会ストライキ約款(Institute Strikes Clauses)の業界標準訳の監修に携わったので,ここに改めて新約款の改訂の経緯と1982年約款との違いおよびその内容について公表することにした。)
Ⅰ.はじめに
海上保険の特色の一つに,その国際性がある。主として船舶や貨物や石油掘削施設や海上工事物件といった保険の目的物を対象とする海上保険では,陸上保険と比べてとりわけ巨大な損害を生じる可能性があるから,一つの会社あるいは一国の保険市場だけでこれを消化吸収することはなかなか容易でなく,再保険の引き受けを専門とする国際市場への参加によってリスクの国際的な分散を図る必要がある。また,海上を航行する船舶は,自国の領海内ばかりでなく,公海上や外国の海域で損害が起こることも多い。更に,多くの船会社はしばしばその船舶の保険を国際市場で求めることがあり,諸外国では,複数の国の保険者が巨大船舶について共同保険に参加することがある。更にまた,その船舶
で海上輸送される貨物,とりわけ輸出入貨物や三国間を輸送される貿易貨物の海上保険がとりわけ強い国際的性格を有していることについては言を俟たない。すなわち,原則として売主・買主(彼らはそれぞれ異なる言語を話し,異なる法律制度のもとで生活し,活動する人たちであることが多い)の自由に任されている保険を獲得するために,保険者は保険条件,保険料率あるいは事故後のサービス面で世界中の保険者と競争しなければならず,それらも国際的に受け入れられる内容のものでなければならないから,基本的な条件は必然的に国際的に標準化される傾向がある。しかも,その基本的条件は英国市場のそれに向かって国際的に標準化され,同市場の法律および慣行が国際的に支配的な地位を占める傾向がある。貨物海上保険について言えば,それを利用している国の3分の2が何らかの形で英国の条件を使用し,開発途上国に限れば,その
4分の3がこれを使用している。
このように,海上保険が国際的性格を有しながら,その基本的条件が英国市場のそれに向かって国際的に標準化され,世界の海上保険の中心市場として同市場の法律,慣行,保険証券フォームおよび保険約款が国際的に支配的な地位を占め,開発途上国を含む国際的な海上保険事業に多大の影響を与えるにいたったのは,もちろん,19世紀の最後の四半世紀から20世紀初頭にかけて,海上保険の慣行および保険条件が近代的な形に結実した当時,英国の商船隊が世界の商船隊の中で圧倒的な優位を占め,また英国が貿易・金融面でも支配的な地位を占めており,その当然の帰結として国際海上保険の中心市場もロンドンに置かれることになったからで,とりわけ開発途上国が先進国の支配から解放されて独立し,自国の保険市場が出現した後も,先進国とりわけ英国の海上保険市場の優位性は依然として失われず,発展途上国の大部分は従来の先進国海上保険市場の法律,慣行や海上保険証券・保険約款を引き続き使用していたからである⑴。
Ⅱ.1982年協会貨物約款制定の経緯
こうして,先進国の保険者によって支配的に運用される世界の海上保険市場において実際に使用される保険証券フォームおよび保険約款は,長い間,先進国とりわけ英国の保険者が一方的に作成したものであって,その中心はロイズ
S.G. 保険証券(Lloyd’s S.G. Policy)であり,またそれを修正・補完するために
添付されるロンドン保険業者協会(Institute of London Underwriters; ILU)制定の協会貨物約款(Institute Cargo Clauses)であった。
しかも,このロイズ S.G. 保険証券は,それ以前の更に古い様式に代えて 1779年1月にロンドン市場における海上保険証券の正式フォームとして採用されて以来,1879年に放棄条項(Waiver Clause)が挿入され,1899年に捕獲拿捕不担保条項(Free of Capture and Seizure Clause)をはじめとする欄外約款が導入されたのを除けば,今日まで200年以上にわたって実質的に変更されずにきた。メーカーの工場から船積港までの輸送や荷卸港から荷受人の倉庫までの輸送,本船への船積みに使用される艀舟にある間の貨物の担保,被保険危険が作用した結果として積替えがなされた場合以外の積替えに関する規定もなく,離路や航海の変更についても,何の担保も与えられておらず,保険者の負担する危険は保険証券中の危険条項(Perils Clause)に記載された危険およびこれと同種の危険のみであった。その後は各保険者が各自の様式のメモランダム(Memorandum)や艀舟条項(Craft &c. Clause)や船員過失条項(Negli-
gence Clause)や離路条項(Deviation Clause)を使用して,被保険者の要求に応じていた⑵。しかも,その危険条項の構成が難解で,そこに使用されてい
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⑴ xxxx訳「国連貿易開発会議(UNCTAD)事務局報告書─海上保険契約に関する法律と保険書類の問題」(『損害保険研究』第41巻第1号,財団法人損害保険事業研究所,1979年10月,pp.13
~15)。
⑵ xxxx監訳『ロンドン保険協会編-英国海上保険約款の変遷』(損害保険事業研究所,1968年) p.185。
る文言や文体も非常に古風であって,英国の過去の判例によってすべての語句の意味が確定しているとはいえ,ロイズ S.G. 保険証券が英国以外でも多く使用されていることを考えれば,これを正しく理解することはxxに精通していない人々にとっては不可能に近いことであった。
そのような中で,複雑かつ古風で難解な文言を多く含んだロイズ S.G. 保険証券の法的効果を,ロイズ S.G. 保険証券にロンドン保険業者協会制定の標準化された貨物約款を添付することによって修正・補完するという方法が1912年
8月1日以降採られ,この複雑で難解なロイズ S.G. 保険証券の内容および文言を基本的に変更しないまま協会貨物約款を添付して対応するという方法は, 1963年制定の協会貨物約款の使用でほぼ今日まで続けられることになった。しかし,このロイズ S.G. 保険証券を修正・補完する協会貨物約款の解釈もまたなかなか容易でなく,例えば協会貨物約款(W.A., F.P.A., All Risks)の各第5条のように,保険者の負担する危険の拡張に関する内容,その負担危険による損害のてん補に関する内容,1906年英国海上保険法(Marine Insurance Act 1906; MIA)を参照しなければ理解できない内容などが一つの条項の中に渾然一体となって盛り込まれており,これに中世英語の古風でそれ自体難解なロイズ S.G. 保険証券の混乱が加わると,海上保険に関する十分な実務的・法律的知識を有していない,とりわけ開発途上国の多くの保険者および被保険者にとっては,自己の保険契約全体の内容を正確に理解することはほとんど不可能に近い状態となっていた。
その結果,このロイズ S.G. 保険証券とこれに添付される協会貨物約款の全体を通した契約内容の解釈が国によって異なったり,その内容に誤解を生じることになり,国際条約の存在していない海上保険市場において,法律的あるいは経済的に不利な状況に追い込まれる国々の保険者および被保険者の経済的影響は計り知れないのものがあった。そして,こういった状況に対する不満が開発途上国を中心に醸成されて,(海上保険に関する英国の法制度は元々自国市
場用として作られたものであるとしても,それが海上保険契約の基礎として国際市場で使用されているところから)この英国の法制度を中心に,国連貿易開発会議(UNCTAD)の場において批判が続出し,「海上保険-海上保険契約に関する法律と保険書類の問題」と題する1978年11月20日付けの国連貿易開発会議事務局報告書⑶が公表されて,20項目に及ぶ現行船舶および貨物海上保険に関する改訂案が示されるとともに,英国の法制度を中心とした先進国海上保険制度に対する改善勧告がなされ,ついにはxxの原則に従った国際的に統一された新しい海上保険証券および海上保険約款の作成が決議されるに至った。
これに対して,先進国グループは,1979年6月18日~26日にジュネーブで開催されたUNCTAD 海運委員会の国際海運立法作業部会第6会期において,国際的に統一された標準約款の作成作業を行うことには一応賛成しながらも,国際条約のような枠組みの中にこれを閉じ込めることには反対し,これをあくまでも「強制適用」(mandatory)としないことで,発展途上国グループを説得することに成功した。
一方,これまで世界の海上保険の中心市場であり続けたという矜持と自負を有する英国は,この会議の終了直後に,ロンドン市場では,1978年の上記 UNCTAD 報告書の批判に応えて,既にロイズ S.G. 保険証券および主要協会貨物約款の自主的な全面改訂作業に入っていることを公式発表し,その対応の早さで世界の国々を驚かせた。
こうして,ロンドン保険業者協会は,1982年1月1日付けで新しい協会貨物約款,協会戦争約款,協会ストライキ約款等の約款と海上保険証券フォームを公表するに至ったのである。この新海上保険証券フォーム(MAR ポリシー・フォーム)と新協会貨物約款A・ ・C,協会戦争約款,協会ストライキ約款等の新約款は,上記事務局報告書の指摘する改正点(同報告書109節-123節お
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⑶ この報告書については,xxxx・xx訳参照。
よび175節-188節)のほとんどすべてを修正して盛り込んでおり,これらの新保険証券フォームおよび各種協会約款の制定は,まさにUNCTAD の動きに機先を制することに成功したのである。
わが国でも,損害保険会社各社は同年,ロンドンの MAR ポリシー・フォームに倣って新たな保険証券フォームを定め,これとともに使用される上記新約款の使用を開始したのである。
Ⅲ.2009年協会貨物約款制定の経緯
上述のように,1982年約款は,UNCTAD の場でのロイズ S.G. 保険証券と協会約款を含む英国を中心とする海上保険システムに対する批判に応え,国際標準海上保険証券および標準約款制定の動きに機先を制するために急遽作られたもので,「急場しのぎ」の約款というイメージを持たれがちであるが,実際には, UNCTAD 事務局の報告書が1978年11月に出された後,翌年2月には XXXX
(International Union of Marine Insurance)(国際海上保険連合)が,この UNC- TAD 事務局の報告書のロイズ S.G. 保険証券と協会約款に対する批判と改訂案についてロイズ保険業者協会(Lloyd’s Underwriters Association; LUA)とロンドン保険業者協会のメンバーを交えて検討を始め,8月には既に,両協会は保険証券フォームの検討専門委員会を設置して共同でロイズ S.G. 保険証券の全面的な改訂作業を開始しているのであり,したがって,1982年協会貨物約款 A・ ・Cおよび関連の協会戦争約款,協会ストライキ約款は,1982年1月1日付けで発表されるまでに3年の歳月を掛けてじっくり作られたものである。 1912年8月1日に実施が始められた最初の「協会貨物約款(分損不担保)」
(Institute Cargo Clauses ̶ F.P.A.),および単純に「協会貨物約款」(Institute
Cargo Clauses)と題された「中立約款」(Neutral Clauses)が2か月半で作られたことを思えば⑷,大変な長さで,それ故に,四半世紀以上の使用に耐えることができた,大変よく考えられた約款であったということができる⑸。
それでも,1982年約款は制定後既に20数年を経過しているということで,制度疲労は否めず,一方,契約者やブローカーなどからの希望もあって,ロイズ
(Lloyd’s Market Association; LMA)とカンパニー(International Underwrit-
ing Association of London; IUA)の合同委員会であるJoint Cargo Committee
(JCC)は,2006年2月,これらの標準約款A・・Cを見直し,併せて協会戦争約款および協会ストライキ約款についても再検討を行うことにして,関係業界からの意見を徴した。そして JCC は作業部会を設け,寄せられた意見に基づいて,約款改訂の提言をまとめ,新約款制定の趣旨説明書を作成し,新協会貨物約款A・ ・C,協会戦争約款および協会ストライキ約款のドラフトを添えて,2008年5月23日,各関係業界に回覧し,再度意見を徴した。このフィードバックを受けて若干の修正を施し,今回の改訂版が出来上がったのである。
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⑷ xx・前掲監訳書,pp.188-189。付言すれば,上記二つの最初の協会約款は当時ばらばらに使われていた色々な独立の条項を寄せ集めにしただけであるから,それを作るのにそれほど時間は掛からなかったものと思われる。単純に「協会貨物約款」(Institute Cargo Clauses)と題された「中立約款」は7か条の規定から成っており,これが後の「分損担保」(With Average)になるのであるが,「分損不担保」(F.P.A.)の方は,この「中立担保」に「分損不担保条項」(F.P.A. Clause)1か条を加えただけで,当時期待されていた以上に被保険者の有利な内容であった。
⑸ 保険証券や保険約款の歴史は保険保護の範囲の拡大の歴史であったと言っても過言ではない。保険証券や保険約款の変遷を見ると,保険者の担保は三歩前進一歩後退といった感じで,徐々に拡張されてきたということが分かる。業者間の協定のない競争的な環境下にあっては,国際的に見てとりわけ先進国の被保険者に対して絶対的優位に立てない保険者にとって,営業保険料というのは必然的に限りなく採算ラインに近づいて落ちつくものであるから,競争的保険料率は,一般に損をするかそれとも損をしないで済ますことができるかといった低位に必ず置かれるのであって,儲けが出るとすれば,それは実際の損害率が予定の損害率を下回った時だけだということになりかねない。このような状態で,保険料率の引き下げがこれ以上無理だということになれば,契約者あるいはxxxxxが求めるのは,後は同じ料率の下での担保範囲の拡張以外にないのである。そう考えてみると,英国の協会貨物約款の制定とその後の変遷は,まさに保険保護の範囲の拡大の歴史であったということがよく分かるのであるが,その典型が1982年約款の制定であり,今回の2009年約款の改訂であったといえる。
Ⅳ.2009年協会貨物約款の特徴
今回の改訂は27年ぶりの国際的標準約款の改訂となるが,今日の貿易・物流実務やリスク実態が反映され,また用語の平易化も図られるとともに,以下に見るように被保険者側にとって一層有利な規定が随所に盛り込まれている。
今回の改訂約款の特徴を挙げれば,概ね次の通りである⑹。
⑴ 以下の諸点について被保険者の有利に改訂がなされた。
①保険期間の始終期が英国判例による始終期よりも拡大された(A・・ C8条および協会ストライキ約款5条)。(ただし,わが国の実務では,既に新約款の規定のような取り扱いがなされている。)
②いわゆる船社倒産免責の規定が,1983年制定の協会コモディティ・トレード約款(Institute Commodity Trade Clauses)⑺Aや1986年制定の協会冷
凍肉約款の規定に倣って,被保険者の有利に緩和された(A・ ・C4条
6項,協会戦争約款および協会ストライキ約款3条6項)。
③コンテナや陸上輸送用具が安全な運送に適さない場合の免責が,同じく 1983年制定の協会コモディティ・トレード約款Aに倣って緩和された
(A・・C5条1項2号,協会戦争約款および協会ストライキ約款4条
1項2号)。
④善意の買主または証券譲受人に対して,船舶または艀の不堪航および安全な運送への不適合の免責の適用が免除された(A・ ・C5条2項,協会
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⑹ 社団法人日本損害保険協会海上部訳,xxxx監訳『xx貨物海上保険-2009年ロンドン協会貨物約款対訳』「協会貨物約款改訂版の翻訳にあたって」pp. ⅰ~ⅲ参照。
⑺ 協会コモディティ・トレード約款(Institute Commodity Trades Clauses)は,ココア,コーヒー,綿糸,綿布,油脂,オイル(ただし,ばら積みを除く),皮革,金属地金,採油用種子,精製糖,お茶等の国際商品の関連業界(荷主協会= Trade Association)と英国保険協会が1983年以降にこれらの商品毎に協定した専用約款である。
戦争約款および協会ストライキ約款4条2項)。
⑤航海の変更(Change of Voyage)について善意の被保険者およびその使用人に保護を与えた(A・ ・C10条2項,協会戦争約款6条2項,協会ストライキ約款7条2項)。
⑵ 協会貨物約款A・ ・Cの第4条ないし第7条,協会戦争約款および協会ストライキ約款の第3条および第4条の免責規定について,1982年約款では,例えば「戦争免責条項」(War Exclusion Clause)の中に,政治上または行政上の措置を意味する「拘束, 抑止または抑留」(arrest restraint or detain- ment)といった,戦争とは必ずしも関係しない危険が含まれていたり,「ストライキ免責条項」(Strikes Exclusion Clause)の中に,ストライキとは必ずしも関係しない「テロリストまたは政治的動機に基づき行動する者」(any ter-
rorist or any person acting from a political motive)の免責が含まれているといった具合で若干の混乱を生じる恐れがあったので⑻,新約款では欄外にあっ
た「一般免責条項」(General Exclusion Clause),「不堪航および不適合免責条項」(Unseaworthiness and Unfitness Exclusion Clause),「戦争免責条項」
(War Exclusion Clause),「ストライキ免責条項」(Strikes Exclusion Clause)といった小見出しが削除された。
⑶ 1982年約款はロイズ S.G. 保険証券の伝統的な用語あるいは古風な中世英語を排除して,平易な現代英語で書き改められたが,2009年約款では,文章自体も更にすっきりしており,用語についても更なる工夫が図られている。
①82年約款では「貨物 」(goods) と「保険の目的物 」(subject-matter insured)という言葉が混在していたが,新約款ではすべて「保険の目的物」
(subject-matter insured)に統一された。
②82年約款では,Underwriters と Insurers とが混用されていたが,新約款
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⑻ Joint Cargo Committee of the IUA and LMA, Guide to the JCC’s Proposals for the Resion of the Institute Cargo Clauses (23 May 2008), p.4.
では,Underwriters という言葉をやめて,Insurers という言葉が統一的に使用されている。Underwriters というのは,言ってみれば,保険引受人あるいは保険業者という感じで,保険契約当事者を保険引受人あるいは保険業者と保険契約者と言うに等しいわけであるから,保険用語としてもパラレルなものではない。保険契約者(xxでは被保険者 Assured)に対する概念としては Underwriters よりも Insurers の方が一層適しているということである。
③「使用人」を意味する servants という言葉に代えて,一層現代的な employees という言葉が使用され,この employees には「独立した請負業者」を含まないことが明記された。
④内容のはっきりしないリフトバン(liftvan)という用語が削除された。
⑤「テロ行為」(act of terrorism)の意味を準拠法であるxxの表現に倣って明確にした。
⑥82年約款では,(例えば第9条2項の the destination named herein が the destination named in the contract of insurance に,at the destination named herein が at the place named in the contract of insurance にというように)herein,hereunder についてできるだけすべての人に誤解を与えないような工夫がなされている。
⑷ わが国のxx貨物海上保険実務では,輸出貨物については,信用状(L/C)の指定がある場合はもとより契約者の要請がある場合などに MAR ポリシー・フォームと1982年約款を使用しているが,その普及は海外に比べれば限られており,多くの契約については引き続き伝統的なロイズ S.G. 保険証券に倣った旧証券と1963年約款(W.A., F.P.A., All Risks)を使用している。また保険証券が流通しない輸入貨物については,かなりの割合で伝統的な旧証券と1963年約款による契約が行われている。しかし,世界の趨勢が英国の MAR ポリシー・フォームと1982年約款の使用にあること,および2009年約款では被保険者に
とって有利な改訂が諸所になされていることを思えば,次に述べるように,当然のことながらわが国でも MAR ポリシーおよび新約款への移行が加速されるものと思われる(次項参照)。
(序でながら,1884年設立の上記ロンドン保険業者協会は,1998年12月31日にロンドン国際保険・再保険市場協会(London International Insurance and Reinsurance Market Association; LIRMA)と合併して,ロンドン国際保険業協会(International Underwriting Association of London; IUA)と改称されており,従って「協会」(Institute)と称するのは正確ではないが,長い間,協会 貨 物 約 款(Institute Cargo Clauses), 協 会 戦 争 約 款(Institute War Clauses),協会ストライキ約款(Institute Strike Clauses)という名称が巷間流布しており,海上保険業界においても,インコタームズのような貿易取引条件においても,一般に知られているところから,今回もその名称がそのまま使用されている。)
Ⅴ.損害保険会社の対応
ここで,わが国の損害保険会社の対応について簡単に述べておく。聞くところによると,各社は当初,輸出貨物について信用状(L/C)の指定がある場合はもとより契約者の要請がある場合などに,裏面に1982年約款を印刷した MAR ポリシー・フォームを使用し,契約者から2009年1月1日付け新約款の指定がある場合には,裏面に印刷された1982年約款にかぶせて新約款を糊付けするか,別紙として添付する方法が採られていて,わが国の損害保険会社では新約款での契約引き受けの準備を進めつつも,完全に新約款への切り替えは行われていなかった。当分の間は1982年約款との併用を考えるということで,契約者からの指定があれば新約款を使用し,指定がなければ,従来通り1982年約款を使用することにしていたようである。しかし,2009年の後半に入って,各
社は概ね,1982年約款を新約款に一本化する作業を行い始めており,L/C に指定がない限り,新約款を使用するスタンスで作業を進めているようである。この1982年約款の新約款への移行が終了した後,第2段階として,1963年約 款をxx2009年の新約款に切り替える作業と客先への案内を行っていくということであって,この切り替えの目処は,各社で多少前後するものの,2010年4
月頃を予定しているようである。
したがって,現時点の予定では,2010年4月以降,日本でも,L/C による特別の指定がない限り,2009年約款に完全移行するものと思われ,日本もようやく世界の趨勢に順応することになる。
なお,上記スケジュールに先行して,2009年6月から7月にかけて,「1963年約款および1982年約款は,原則使用しないこととしたいので協力願いたい」旨客先に連絡を行い,既に新約款への完全移行が完了した会社も1社現れているとのことである。
Ⅴ.2009年約款と改訂の概要
以下に今回の改訂の要点と概要を示す。
2009年協会貨物約款 A
RISKS COVERED
担保危険
(第1条)
1.Risks
This insurance covers all risks of loss of or damage to the subject- matter insured except as excluded by the provisions of Clauses 4, 5, 6 and 7 below.
第1条 危険
この保険は,下記第4条,第5条,第6条および第7条の規定により
除外された場合を除き,保険の目的物の滅失または損傷の一切の危険を担保する。
82年約款
1.Risks Clause
This insurance covers all risks of loss of or damage to the sub- ject-matter insured except as provided in Clauses 4, 5, 6 and 7 below.
第1条 危険条項
この保険は,下記第4条,第5条,第6条および第7条に規定する場合を除き,保険の目的物の滅失または損傷の一切の危険を担保する。
⑴ 1963年協会貨物約款(All Risks) 第5 条の All Risks Clause は“This insurance is against all risks of loss of or damage to the subject-matter insured”となっていたものが,1982年約款では“This insurance covers all risks of loss of or damage to the subject-matter insured”となって,文章の明確化が図られた。新約款第1条は,82年約款の“except as provided in Clauses 4, 5, 6 and 7 below”が“except as excluded by the provisions of Clauses 4, 5, 6
and 7 below”となった以外は1982年約款と同じである。
⑵ 本条は保険の目的物の滅失または損傷の一切の危険を担保するが,文字通り「一切の危険」(All Risks)を担保するわけではない。
このいわゆる All Risks Clause で免責される危険について,1963年協会貨物約款(All Risks)では保険証券本文,欄外約款および1906年英国海上保険法の規定並びにその背後にある判例の全体を見なければならなかったが,1982年
約款では本約款だけを見れば良いというように自己完結的になった。2009年約款も当然これを踏襲しており,後述第4条,第5条,第6条および第7条に規定する場合は除かれることがいっそう明確にされている。
(第2条)
2.General Average
This insurance covers general average and salvage charges, adjusted or determined according to the contract of carriage and/or the govern- ing law and practice, incurred to avoid or in connection with the avoidance of loss from any cause except those excluded in Clauses 4, 5, 6 and 7 below.
第2条 共同海損
この保険は,下記第4条,第5条,第6条および第7条において除外された事由を除く一切の事由に因る損害を避けるためかまたはこれを避けることに関連して生じ,運送契約および/または準拠法および慣習に従って精算されまたは決定された共同海損および救助料をてん補する。
82年約款
2.General Average Clause
This insurance covers general average and salvage charges, adjusted or determined according to the contract of affreight- ment and/or the governing law and practice, incurred to avoid or in connection with the avoidance of loss from any cause except those excluded in Clauses 4, 5, 6 and 7 or elsewhere in this insurance.
第2条 共同海損条項
この保険は,第4条,第5条,第6条および第7条またはこの保険のその他の条項において除外された事由を除くその他一切の事由に因る損害を避けるため,またはこれを避けることに関連して生じ,海上運送契約および/または準拠法および慣習に従って精
算されまたは決定された共同海損および救助料をてん補する。
⑴ 共同海損損害,共同海損分担額,救助料等の精算に関して,荷主は,準拠する法や条件について運送人に指図をしたり,運送契約の条項に干渉したりする立場になく,運送人の予め定めた運送契約の条件に従って運送を依頼せざるを得ないし,共同海損は実際上船荷証券もしくは用船契約書に定める準拠法または慣習によって精算されるのであるから,荷主はその精算に従わざるを得ない。しかし,これらを保険によって回収するためには,1906年英国海上保険法第66条第6項のように,損害が被保険危険を避けるためかこれを避けることに関連して招致されたものである必要はなく,第4条,第5条,第6条および第
7条において除外された事由を除く一切の事由に因る共同海損および救助料が保険者によって負担されるということが分かる。
⑵ 新約款では,contract of affreightment ではなく,contract of carriage に統一されているため,他の規定と同様,contract of affreightment が contract of carriage に変わったほか,1982年約款の or elsewhere in this insurance が削除された。これは免責事由が第4条,第5条,第6条および第7条に集約されているために,無用の規定となったからである。
(第3条)
3.“Both to Blame Collision”Clause
This insurance indemnifies the Assured, in respect of any risk insured herein, against liability incurred under any Both to Blame Col-
xxxxxx Xxxxxx in the contract of carriage. In the event of any claim by carriers under the said Xxxxxx, the Assured agree to notify the Insur- ers who shall have the right, at their own cost and expense, to defend the Assured against such claim.
第3条 「双方過失衝突」条項
この保険は,この保険の一切の担保危険に関して,運送契約の双方過失衝突条項により被保険者が負担する責任額をてん補する。上記条項によって運送人から請求があった場合には,被保険者はその旨を保険者に通知することを約束する。保険者は自己の費用で,運送人の請求に対して被保険者を防護する権利を有する。
82年約款
3.“Both to Blame Collision”Clause
This insurance is extended to indemnify the Assured against such proportion of liability under the contract of affreightment “Both to Blame Collision” Clause as is in respect of a loss recov- erable hereunder.
In the event of any claim by shipowners under the said Clause the Assured agree to notify the Underwriters who shall have the right, at their own cost and expense, to defend the Assured against such claim.
第3条 「双方過失衝突」条項
この保険は,損害てん補の範囲を拡張して,海上運送契約の「双方過失衝突」条項による責任額のうち,この保険の下でてん補を受けることのできる損害に関する部分を被保険者に支払う。
上記条項によって船主から請求があった場合には,被保険者は,
その旨を保険者に通知することを約束する。アンダライターは,
自己の費用をもって船主の請求に対し被保険者を防護する権利を有する。
⑴ 1982年約款第3条は,1963年協会貨物約款(W.A.,F.P.A. および All Risks)の各第11条の「双方過失衝突」条項の規定をそのまま受け継いだもので,規定もそれと同旨同文であった。
この1963年約款第11条の「双方過失衝突」条項は,双方の船舶に過失があって衝突が生じた場合の荷主の権利について,英国の法律と米国の法律とに取り扱い上の差があることから創案された規定である。
すなわち,英国では,船舶同士が衝突した場合,衝突船の過失の軽重を問わずに,善意の荷主は相手船から自己の貨物の損害額の半分のみを回収することができるという慣行が行われていたが,その後,1910年ブラッセル条約(船舶の衝突についての規定の統一に関する条約)に基づいて制定された1911年海事協約法(Maritime Convention Act 1911)によって,この慣行を改めて,過失の程度に応じて相手船から損害賠償金を回収することにした。
これに対して,最高裁判決によって,双方の過失により船舶が衝突した場合でも,善意の荷主が任意の一方の船舶に対して損害の全額を請求することができた荷主国アメリカでも,1893年のハーター法(Harter Act)によって,運送人は運航上の過失による損害を免責されることになったのであるが,その後の最高裁判決によって,xxxx法は双方の過失による衝突の場合に,衝突の相手船に対して損害賠償を請求する権利を制限するものではないとされたために,荷主は自分の損害の全額を相手船から回収することができるようになった。同時に,1910年ブラッセル条約を批准しなかったアメリカでは,双方過失衝突の場合には,過失の程度に関わりなく,常に過失責任は50%対50%であったために,相手船は,一方の被保険貨物積載船に対する損害賠償請求額の中に
被保険荷主に支払った損害賠償額の半額を含めて請求することができた。その結果,被保険貨物積載船は,海上貨物運送契約において,運航上の過失を免責される規定を設けているにもかかわらず,自船の積荷の損害の半額について相手船を経由して間接的に賠償しなければならないことになった。
その結果,被保険貨物積載船は,相手船を経由して請求される自船の積荷の損害の半額について,自己の船舶保険契約上の衝突条項(Running-down Clause or Collision Clause)によって船舶保険者から回収することもできず,船主責任相互保険組合(Protection and Indemnity Association)からも回収できないことになった。被保険貨物積載船に100%の過失があって他船と衝突した場合には,海上貨物運送契約の免責規定によって被保険貨物の荷主に対して全く責任を負担しなくていいのに,僅かでも過失があれば,自船の積荷に対する損害の半分を負担しなければならない。
そこで,船主協会および船主責任相互保険組合は,船荷証券中に「双方過失衝突」条項を挿入し,船主は,相手船を経由して間接的に自船の積荷に負担することになった損害を自船の荷主に請求することができるようにしたのである。
このようなアメリカにおける双方過失衝突の場合に,荷主は自分の損害の全額を衝突の相手船から回収することができ,その相手船は他船に対する損害賠償請求額の中にその荷主に支払った損害賠償額の半額を含めることができるという取り扱いは,アメリカの裁判上,すべての国の船舶に適用された。そこで,英国の船主協会および船主責任相互保険組合は,その組合員である船主に対して,アメリカに寄航しまたはアメリカから発航する船舶積み貨物の船荷証券にこの「双方過失衝突」条項を挿入することを勧告した。
そこで,この条項の船荷証券への挿入によって,衝突の相手船から回収した損害賠償金の半額を自船の船主に払い戻さなければならなくなった荷主側は,その損害に対する救済を保険者に求めた。その結果,協会貨物約款に挿入され
ることになったのが,同名の “Both to Blame Collision” Clause である⑼。
この規定によって,被保険者が船荷証券上の「双方過失衝突」条項に基づき船主に支払わなければならない金額を,その責任が保険証券上保険者の責めに任じる損害に関するものである限り,保険者がこれを被保険者にてん補することになった。そして,保険者は,船主が被保険者に上記の請求をした場合には,その旨を保険者に通知することを被保険者に要求し,かつ,船主の被保険者に対する請求について,保険者の費用をもって船主に対し被保険者を防護する権利を留保した⑽。
その後,船荷証券の「双方過失衝突」条項の有効性の問題がアメリカの裁判所によって争われ,合衆国巡回控訴裁判所はこの条項を無効と判決し⑾,1952年,合衆国最高裁判所はその判決を認めて,xxx・xxxx(common car- rier)が自己または自己の使用人の犯した怠慢または過失に対する責任を免れるような契約を禁止することが合衆国の公序であって,船荷証券中の双方過失衝突条項はこの合衆国の公序に違反するので無効であると判決した(United States of America v. Farr Sugar Corp. & Others)。
この判決は,多数の船荷証券によって多数人の貨物を運送する船舶に関して下されたものであって,特にコモン・キャリア(公運送人)に重点が置かれたものである。合衆国最高裁判所の見解によると,xxx・xxxxの荷送人は,運送人が提供する船荷証券の条件を承諾するかそうでなければ運送を断念するほかなく,運送契約の条件を交渉するに当たって,荷送人と運送人とが平等な立場に立つものとは認められない。このような交渉力の不平等が長い間アメリカの法で認められてきたが,運送人の不当な免責条項を法をもって承認することはもはや許されなくなったということである⑿。
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⑼ xxxx『新版英文積荷保険証券論』(早稲田大学出版部,1970年)pp.363-370。
⑽ xx・前掲書,pp.363-370。
⑾ Winter, Marine Insurance, 3rd ed., 1952, p.404.
⑿ xx・前掲書,pp.363-370。
この判決の効果は,コモン・キャリアの船荷証券に関する限り,それに挿入された「双方過失衝突」条項を無用のものとした。しかしこの判決は私的運送人(private carrier)が私的関係から特に運送を行う運送契約や用船契約には必ずしも適用されない。すなわち,運送契約当事者双方が自由意思をもって契約内容を取り決める私的運送の場合に,用船契約書または船荷証券に「双方過失衝突」条項が挿入されたとき,アメリカにおいても,契約当事者の間ではこの条項が有効なものと認められるはずである。また,「双方過失衝突」条項による損害賠償請求がアメリカ以外の国の貨物所有者に対してなされる可能性があり,他の国ではこの条項が公序に違反するものとして無効となるとは限らない。したがって,アメリカでは,運送契約に「双方過失衝突」条項を続けて使用する方がよいとされている⒀。
このように,アメリカでは,用船契約書にはこの条項が引き続き挿入されるので,これに対して積荷被保険者を保護するために,協会貨物保険約款中に「双方過失衝突」条項を残しておく必要がある。また衝突両船の責任関係がアメリカ国内で解決されると,過失ある船舶は同じく過失ある他船の損害と自船の積荷の損害の半額を負担させられることになり,この場合その船舶が英国船であって船荷証券に「双方過失衝突」条項が挿入されているときは,英国の裁判所はこれを有効であると判決するかもしれない⒁。このような可能な出来事に対して積荷被保険者を保護するためには,従来通り協会約款中に「双方過失衝突」条項を残しておく必要がある。(この部分の記述はxx・前掲書, pp.363-370に拠った。)
⑵ この第3条は,1982年約款では,「損害てん補の範囲を拡張して,海上運送契約の「双方過失衝突」条項による責任額のうち,この保険の下でてん補を
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⒀ Buglass, General Average and Marine Insurance in the United States, p.30 x x 。
⒁ Fairplay, 22 May 1952; xxxx「双方過失衝突約款の無効判決」(損害保険研究所第14巻第4号) p.158。
受けることのできる損害に関する部分を被保険者に支払う」(is extended to indemnify the Assured against such proportion of liability under the contract of affreightment “Both to Blame Collision” Clause as is in respect of a loss recoverable hereunder)となっていたが,新約款第3条では,「双方過失衝突」条項の運送契約や用船契約への挿入によって,荷主側が衝突の相手船から回収した損害賠償金の半額を自船の船主に払い戻さなければならない損害について保険者はてん補するが,それが保険証券上保険者の責めに任じるものである場合に限るということを一層明確にするために,「この保険の一切の担保危険に関して,運送契約の双方過失衝突条項により被保険者が負担する責任額をてん補 す る 」(indemnifies the Assured, in respect of any risk insured herein, against liability incurred under any Both to Blame Collision Clause in the con- tract of carriage)という簡素で明確な規定に変更された。
⑶ 第2項について,1982年約款では「船主」(shipowners)となっていたものが,新約款ではより一般的な「運送人」(carriers) と変更され,また Underwriters が,他の条文と同様に Insurers となった。全体として,新約款第3条はすっきりしたスマートな規定になったといえる。
EXCLUSIONS
免責事由
(第4条)
4.In no case shall this insurance cover
4.1 loss damage or expense attributable to wilful misconduct of the Assured
4.2 ordinary leakage, ordinary loss in weight or volume, or ordinary wear and tear of the subject-matter insured
4.3 loss damage or expense caused by insufficiency or unsuitability
of packing or preparation of the subject-matter insured to with- stand the ordinary incidents of the insured transit where such packing or preparation is carried out by the Assured or their employees or prior to the attachment of this insurance (for the purpose of these Clauses “packing” shall be deemed to include stowage in a container and “employees” shall not include inde- pendent contractors).
4.4 loss damage or expense caused by inherent vice or nature of the subject-matter insured
4.5 loss damage or expense caused by delay, even though the delay be caused by a risk insured against (except expenses payable under Clause 2 above)
4.6 loss damage or expense caused by insolvency or financial default of the owners managers charterers or operators of the vessel where, at the time of loading of the subject-matter insured on board the vessel, the Assured are aware, or in the ordinary course of business should be aware, that such insol- vency or financial default could prevent the normal prosecution of the voyage.
This exclusion shall not apply where the contract of insurance has been assigned to the party claiming hereunder who has bought or agreed to buy the subject-matter insured in good faith under a binding contract.
4.7 loss damage or expense directly or indirectly caused by or aris- ing from the use of any weapon or device employing atomic or nuclear fission and/or fusion or other like reaction or radioac-
tive force or matter.
第4条 この保険は,いかなる場合においても以下のものをてん補しない。
4.1 被保険者の故意の違法行為に原因を帰し得る滅失,損傷または費用
4.2 保険の目的物の通常の漏損,重量もしくは容積の通常の減少または自然の消耗
4.3 この保険の対象となる輸送に通常生じる出来事に堪えることができるはずの保険の目的物の梱包または準備が,不十分または不適切であることによって生じる滅失,損傷または費用。ただし,その梱包または準備が,被保険者もしくはその使用人によって行われる場合またはこの保険の危険開始前に行われる場合に限る(本約款においては,「梱包」にはコンテナヘの積付けを含むものとし,「使用人」には独立した請負業者を含まない)。
4.4 保険の目的物の固有の瑕疵(かし)または性質によって生じる滅失,損傷または費用
4.5 遅延が担保危険によって生じた場合でも,遅延によって生じる滅失,損傷または費用(上記第2条によって支払われる費用を除く)
4.6 船舶の所有者,管理者,用船者または運航者の支払不能または金銭債務不履行によって生じる滅失,損傷または費用。ただし,保険の目的物を船舶に積込む時に,被保険者がそのような支払不能または金銭債務不履行が,その航海の通常の遂行を妨げることになり得ると知っているか,または通常の業務上当然知っているべきである場合に限る。
本免責規定はある拘束力のある契約に従って,善意で保険の目的物を購入した者もしくは購入することに同意した者に保険契約が譲渡され,その者が本保険により保険金を請求する場合には適用
されない。
4.7 直接であると間接であるとを問わず,原子核の分裂および/もしくは融合もしくはその他類似の反応または放射能もしくは放射性物質を利用した兵器または装置の使用によって生じる,またはそれらの使用から生じる滅失,損傷または費用
82年約款
4.General Exclusions Clause
In no case shall this insurance cover
4.1 loss damage or expense attributable to wilful misconduct of the Assured
4.2 ordinary leakage, ordinary loss in weight or volume, or ordi- xxxx wear and tear of the subject-matter insured
4.3 loss damage or expense caused by insufficiency or unsuit- ability of packing or preparation of the subject-matter insured (for the purpose of this Clause 4.3 “packing” shall be deemed to include stowage in a container or liftvan but only when such stowage is carried out prior to attachment of this insurance or by the Assured or their servants)
4.4 loss damage or expense caused by inherent vice or nature of the subject-matter insured
4.5 loss damage or expense proximately caused by delay, even though the delay be caused by a risk insured against (except expenses payable under Clause 2 above)
4.6 loss damage or expense arising from insolvency or financial default of the owners managers charterers or operators of
the vessel
4.7 loss damage or expense arising from the use of any weapon of war employing atomic or nuclear fission and/or fusion or other like reaction or radioactive force or matter.
第4条 一般免責条項
この保険は,いかなる場合においても以下のものをてん補しない。
4.1 被保険者の故意の違法行為に原因を帰し得る滅失,損傷または費用
4.2 保険の目的物の通常の漏損,重量もしくは容積の通常の減少または自然の消耗
4.3 保険の目的物の梱包または準備の不十分または不適切に因る滅失,損傷または費用(この第4条第3項にいう「梱包」には,コンテナまたはリフトバンへの積付けを含むものとする。ただし,これらへの積付けが,この保険の危険開始前に行われる場合または被保険者もしくはその使用人によって行われる場合に限る。)
4.4 保険の目的物の固有の瑕疵または性質に因って生じる滅失,損傷または費用
4.5 遅延が被保険危険に因って生じる場合でも,遅延に近因して生じる滅失,損傷または費用(上記第2条によって支払われる費用を除く。)
4.6 船舶の所有者,管理者,用船者または運航者の支払不能または金銭債務不履行から生じる滅失,損傷または費用
4.7 原子核の分裂および/もしくは融合もしくはその他類似の反応または放射能もしくは放射性物質を利用した兵器の使用によって生じる滅失,損傷または費用
⑴ 「被保険者の故意の違法行為に原因を帰し得る滅失,損傷または費用」(loss damage or expense attributable to wilful misconduct of the Assured)は,新協会約款A, およびCのすべてでこれを免責している。この危険については,MIA 第55条第2項⒜号の規定によって免責されているから,協会貨物約款(All Risks)を含めて1963年協会貨物約款には特に規定が設けられていなかったが,1982年約款では,海上保険法に規定のある事項についても,約款中に改めて規定することにしたため,この危険の免責が第4条第1項に規定され,今回の改訂約款もそれに従った。1982年約款同様,損害はこの危険に近因して生じる(proximately caused by)必要はなく,単に損害が被保険者の故意の違法行為に原因を帰し得る(attributable to)ものであれば免責が適用される。例えば被保険危険の一つである火災に近因して生じた損害は,それが被保険者の故意の違法行為がなければ生じなかったということを保険者が証明することができれば,保険証券上,回収できない。
⑵ 第7条の解説⑴でも再度述べるが,1906年英国海上保険法(MIA)や1982年約款では,因果関係を示す言葉として attributable to, reasonably attributable to, arising from, resulting from, caused by, proximately caused by, directly conse- quential on, by, from などの言葉が使用されて,因果関係の問題について若干の混乱を招いており,新約款に関するJCC の質問状に対する各関係業界からの解答の中でもその点が指摘されているが,JCC はこの4.1についてあえて1982年約款の場合と同様,MIA 第55条第2項⒜号と同じ表現にするために attributable to(「に原因を帰し得る」)という表現を残した。これは「被保険者の故意の違法行為」については厳格な因果関係の立証なしで保険者を免責するためである。
⑶ 4.2は「保険の目的物の通常の漏損,重量もしくは容積の通常の減少または自然の消耗」(ordinary leakage, ordinary loss in weight or volume, or ordi- xxxx wear and tear of the subject-matter insured)を免責している。
「通常の漏損」というのは,ワイン,ウイスキー,オリーブ油,糖蜜等の保
険の目的物に外襲的な衝撃なくして航海の通常の経過において容器の接目から漏洩することから生じる損害をいい⒂,「重量もしくは容積の通常の減少」は普通,固有の瑕疵または性質による損害であるが,荷造・梱包の不十分や不適切,積付の不注意等によって生じることもある。
「保険の目的物の固有の瑕疵または性質」(inherent vice or nature of the subject-matter insured)については,MIA 第55条第2項c号および1963年協会貨物約款(W.A.,F.P.A. および All Risks)でも免責されており,1982年約款でも免責されているが,今回は変更されていない。
⑷ 4.3は多少説明を要する。まず, 最初のドラフトでは,loss damage or expense caused by insufficiency or unsuitability of packing or preparation of the subject-matter insured to withstand the ordinary incidents of the insured transit where such packing or preparation is carried out by the Assured or their employees or prior to the attachment of this insurance (for the purpose of this Clause 4.3“packing”shall be deemed to include stowage in a container and“employees”shall not include independent contractors) と,「この保険の対象となる輸送に通常生じる出来事に堪えることができるはずの」(to with- stand the ordinary incidents of the insured transit)という言葉が入って,「梱包または準備」(packing or preparation)の程度が示されるとともに,1982年約款制定以来言葉の意味が曖昧であるとして不評であった「リフトバン」(lift- van)という言葉が削除され,また「使用人」を意味する servants という言葉が差別用語であるような印象を与えるところから平易な現代語である employ- ees に変えられた。しかし,相変わらず packing の定義については,1982年約款と同様にこの第4条第3項の目的のために限定されていたが,最終約款では,for the purpose of these Clauses(「本約款においては)と変えられた。ま
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⒂ xx・前掲書 pp.239-240。
た,新約款では,servants という言葉に変えて employees という言葉が使用されたことから,この“employees”「使用人」には「独立した請負業者を含まない」という定義が与えられている。
⑸ 4.4は変更無し⒃。
⑹ 4.5 の 「 遅 延 」 に つ い て は ,1982 年 約 款 の loss damage or expense proxi- mately caused by delay, even though the delay be caused by a risk insured against (except expenses payable under Clause 2 above) が , 新 約 款 で は loss damage or expense caused by delay, even though the delay be caused by a risk insured against (except expenses payable under Clause 2 above) に 変 更 さ れ た 。
MIA 第55条2項⒝号は遅延について “Unless the policy otherwise provides,
the insurer on ship or goods is not liable for any loss proximately caused by delay, although the delay be caused by a peril insured against.” と規定しているところから,82年約款はこれを模して“loss damage or expense proximately caused by delay, even though the delay be caused by a risk insured against”とした。ところが,JCC は,2008年5月の最初の変更ドラフトではこの proxi- mately caused by に変えて attributable to としていたが,下でも述べる通り,とりわけ MIA の「近因」(proximate cause)の意味に関して,今後判例の展開によっては裁判所が不測の予期せぬ判断を下す恐れがあるとの判断から⒄,最終案では結局他の条項と同様に,因果関係に関する文言として caused by に落ち着いたのである。新約款では arising from もいくつか使用されている。
1982年約款は MIA 第55条2項b号を模したといったが,82年約款以後, although が even though に変わり,また peril insured against が現代的に risk insured against に変えられている。
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⒃ 2008年5月28日作業部会報告 p.8 注⑽も参照。
⒄ Joint Cargo Committee, op. cit., p.9 n.12.
⑺ 4.6はいわゆる船社倒産に関する免責規定であって,1982年約款は「船舶の所有者,管理者,用船者または運航者の支払不能または金銭債務不履行から生じる滅失,損傷または費用」(loss damage or expense arising from insol- vency or financial default of the owners managers charterers or operators of the vessel)を免責していた。
この免責は MIA にはない。MIA は既存の判例に基づいて制定されたものであるが,1906年 MIA 制定当時,この点に関する判例は存在しなかったからであろう。それにもかかわらず,保険者が海上運送人の支払不能または金銭債務
不履行がなければ生じなかったであろう損害についててん補を求められる事例が近年徐々に増えてきた⒅。ここで述べる船舶というのは航洋船(overseas
vessel)を意味するとともに,本条は船主等の海上運送人の支払不能または金銭債務不履行の場合に適用されるのであって,それ以外の,例えば陸上運送人や艀運送業者や倉庫業者などの受託者の経済的破綻の場合には適用されない。本項は「(船舶の所有者,管理者,用船者または運航者等の)船舶運航業者 の支払不能または金銭債務不履行から生じる(arising from)滅失,損傷または費用」を免責しているのであって,これを文字通り厳格に解釈すれば,海上運送人の経済的破綻の結果中間港の倉庫に入れられていた貨物が火災によって損傷したようなときには,保険者はその損害をてん補しなくてよいということになるが,保険者がそのように厳格にこの免責条項を解釈するかどうかは必ずしも明らかでない。それにもかかわらず,運送人が経済的破綻の結果,航海を放棄したために,貨物が中間港で荷卸しされたとき,その貨物を倉入れし継搬するために要した費用を損害防止費用として回収することはできないであろう
し,そのような港での貨物の積卸し中に生じた貨物の損害についても保険者はてん補しないであろう⒆。
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⒅ X.X. Xxxxx and X.X. Novitt, Marine Insurance Vol.2̶Cargo Insurance, 4th ed., p.117.
⒆ Xxxxx and Xxxxxx, op. cit., p.117.
金銭債務不履行(financial default)への言及は,恐らく運送人がその結果として生じる債務を履行し,こうして船舶が航海を完遂することができるように,中間港で債権者に保険の目的物を担保として提供し,船舶を解放してもらうような場合を想定しているのであろう。運送人が債務を履行することができなければ,保険の目的物は没収され,しかもその貨物の損害は保険者によっててん補されないであろう。
旧 ICC では,この船社の経済的破綻による損害の取り扱いが必ずしもはっきりしていなかったのであるが,1975年のxx海運の倒産に伴って荷主側が負担を余儀なくされた貨物の継搬費用について,日本の保険市場は All Risks 条件であれば旧約款で支払い可能という解釈を取り,全社的に,船社の経済的破綻によって運送契約の履行が不能になったのであれば,偶然事故と判断できるとして,合理的な継搬費用について All Risks 条件で支払い可能としたのであるが,このことが1982年約款の制定に当たって影響を与えたといわれている。しかし,旧約款と1982年約款とでは,船社の経済的破綻に差があったことから,とりわけ我が国の大手荷主は1982年約款の利用にかなりの抵抗感があった。当時は現実に信用状において明確に1963年の旧約款の適用が指定されるケースが多かったことから,本邦の保険会社各社は原則として従来通り旧約款を適用し,信用状において特に1982年約款適用の指定があった場合にのみ82年約款を
適用した証券を発行するという使い分け策を取り,これがそのまま20年以上を経た現在まで続いている⒇。しかし,英国でも,被保険者の不利を取り除くた
めに,82年の A 約款に1983年9月5日制定の協会コモディティ・トレード約款(Institute Commodity Trades Clauses)A(CL275)に倣った条項を入れるべきであるとの勧告を受けて,2009年の新約款では,「船舶の所有者,管理者,
用船者または運航者の支払不能または金銭債務不履行によって生じる滅失,損
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⒇ xxxx「xx貨物海上保険「新」協会貨物約款(Institute Cargo Clauses)の普及実態」『第3回(2003年度)貿易研究会研究報告書』(財団法人貿易奨励会,2004年7月)pp.212-213。
傷または費用。ただし,保険の目的物を船舶に積込む時に,被保険者がそのような支払不能または金銭債務不履行が,その航海の通常の遂行を妨げることになり得ると知っているか,または通常の業務上当然知っているべきである場合に限る。本免責規定はある拘束力のある契約に従って,善意で保険の目的物を購入した者もしくは購入することに同意した者に保険契約が譲渡され,その者が本保険により保険金を請求する場合には適用されない。」(loss damage or expense caused by insolvency or financial default of the owners managers charterers or operators of the vessel where, at the time of loading of the sub- ject-matter insured on board the vessel, the Assured are aware, or in the ordinary course of business should be aware, that such insolvency or financial default could prevent the normal prosecution of the voyage. This exclusion shall not apply where the contract of insurance has been assigned to the party claiming hereunder who has bought or agreed to buy the subject-mat- ter insured in good faith under a binding contract.)とし,被保険者が保険の目的物を船舶に積込む時に,船社の支払不能または金銭債務不履行が,航海の通常の遂行を妨げることになり得ると知っているか,または通常の業務上当然知っているべきである場合に限って,船社倒産による損害を免責とすることにした。また,ある拘束力のある契約に従って,善意で保険の目的物を購入した者または購入することに同意した者に保険契約が譲渡されて,その者が本保険により保険金を請求する場合には,この免責規定は適用されないこととした。この新しい規定は A 約款ばかりでなく,B約款およびC約款にも同じく設けられ,また新協会戦争約款および新協会ストライキ約款の第3条6項にも導入され,これによって被保険者にとって大きな改善が図られたといえる。
4.7 のいわゆる核兵器の免責は1982年約款で導入されたのであるが,実際には,この規定は “loss, damage, liability or expense directly or indirectly caused by or contributed to by or arising from ionizing radiations” を免責す
る2003年11月10日制定の Institute Radioactive Contamination, Chemical, Bio- logical, Bio-Chemical and Electromagnetic Weapons Exclusion Clause (CL370)が契約に挿入されることによってその効力を失っている。しかし,協会貨物約款にもこのような幅広い免責規定が必要であるということから,新約款は82年約款に「直接であると間接であるとを問わず,……によって生じる」(directly or indirectly caused by or arising from)と directly or indirectly caused by を追加し,またweapon of war のof war を取ってor device を加えることによって,「放射能・放射性物質を利用したあらゆる兵器や装置」を対象として免責の範囲を拡大し,「原子核の分裂・融合その他類似の反応または放射能・放射性物質を利用した兵器や装置の使用によって直接・間接に生じる滅失,損傷または費用」を免責したといえる。
(第5条)
5.5.1 In no case shall this insurance cover loss damage or expense arising from
5.1.1 unseaworthiness of vessel or craft or unfitness of vessel or craft for the safe carriage of the subject- matter insured, where the Assured are privy to such unseaworthiness or unfitness, at the time the subject- matter insured is loaded therein
5.1.2 unfitness of container or conveyance for the safe car- riage of the subject-matter insured,
where loading therein or thereon is carried out prior to attachment of this insurance or by the Assured or their employees and they are privy to such unfitness
at the time of loading.
5.2 Exclusion 5.1.1 above shall not apply where the contract of insurance has been assigned to the party claiming hereunder who has bought or agreed to buy the subject-matter insured in good faith under a binding contract.
5.3 The Insurers waive any breach of the implied warranties of seaworthiness of the ship and fitness of the ship to carry the subject-matter insured to destination.
第5条 5.1 この保険は,いかなる場合においても以下の事由から生じる滅失,損傷または費用をてん補しない。
5.1.1 船舶もしくは艀の不堪航,または船舶もしくは艀が保険の目的物の安全な運送に適さないこと。ただし,被保険者が,保険の目的物がこれらの輸送用具に積込まれる時に,その不堪航または安全な運送に適さないことを知っている場合に限る。
5.1.2 コンテナまたは輸送用具が保険の目的物の安全な運送に適さないこと。ただし,これらの輸送用具への積込みが,この保険の危険開始前に行われる場合,または被保険者もしくはその使用人によって行われ,かつ,これらの者が積込みの時に運送に適さないことを知っている場合に限る。
5.2 上記第5条1項1号の免責規定は,拘束力のある契約のもとで,善意で保険の目的物を購入した者または購入することに同意した者にこの保険契約が譲渡され,その者が本保険により保険金を請求する場合には適用されない。
5.3 保険者は,船舶の堪航性および船舶が保険の目的物の仕向地までの運送に適することについての黙示担保の違反があっても,
これを問わない。
82年約款
5.Unseaworthiness and Unfitness Exclusion Clause
5.1 In no case shall this insurance cover loss damage or expense arising from unseaworthiness of vessel or craft, unfitness of vessel craft conveyance container or liftvan for the safe carriage of the subject-matter insured,
where the Assured or their servants are privy to such unseaworthiness or unfitness, at the time the subject-matter insured is loaded therein.
5.2 The Underwriters waive any breach of the implied warran- ties of seaworthiness of the ship and fitness of the ship to carry the subject-matter insured to destination, unless the Assured or their servants are privy to such unseaworthi- ness or unfitness.
第5条 不堪航および不適合免責条項
5.1 この保険は,いかなる場合においても下記の事由から生じる滅失,損傷または費用をてん補しない。
船舶または艀の不堪航
船舶,艀,輸送用具,コンテナまたはリフトバンが保険の目的物の安全な運送に適しないこと
ただし,被保険者またはその使用人が,保険の目的物がこれらの輸送用具に積込まれる時に,その不堪航または安全な運送に適さないことを知っている場合に限る。
5.2 アンダライターは,船舶の堪航性および船舶が保険の目的物
の仕向地までの運送に適することについての黙示担保の違反があっても,これを問わない。ただし,被保険者またはその使用人がかかる不堪航または運送に適しないことを知ってい
る場合を除く。
⑴ JCC は,被保険者にとって一層有利な内容の規定をもった1983年9月5日の協会コモディティ・トレード約款(Institute Commodity Trades Clauses)A(CL275)が採用している不堪航および不適合免責条項を新協会約款にも導入すべきであるとの勧告を受けて,新約款では,協会コモディティ・トレード約款を若干手直しするとともに,細かい字句の変更・削除がなされている。
(第6条)
6.In no case shall this insurance cover loss damage or expense caused by
6.1 war civil war revolution rebellion insurrection, or civil strife arising therefrom, or any hostile act by or against a belligerent power
6.2 capture seizure arrest restraint or detainment (piracy excepted), and the consequences thereof or any attempt thereat
6.3 derelict xxxxx xxxxxxxxx bombs or other derelict weapons of war.
第6条 この保険は,いかなる場合においても,以下の事由によって生じる滅失,損傷または費用をてん補しない。
6.1 戦争,内乱,革命,謀反,反乱もしくはこれらから生じる国内闘
争,または敵対勢力によってもしくは敵対勢力に対して行なわれ
る一切の敵対的行為
6.2 捕獲,拿捕(だほ),拘束,抑止または抑留(海賊行為を除く)およびこれらの結果またはこれらの一切の企図
6.3 遺棄された機雷,魚雷,爆弾またはその他の遺棄された兵器
82年約款
6.War Exclusion Clause
In no case shall this insurance cover loss damage or expense caused by
6.1 war civil war revolution rebellion insurrection, or civil strife xxxxxxx xxxxxxxxx, or any hostile act by or against a bellig- erent power
6.2 capture seizure arrest restraint or detainment (piracy excepted), and the consequences thereof or any attempt thereat
6.3 derelict xxxxx xxxxxxxxx bombs or other derelict weapons of war.
第6条 戦争免責条項
この保険は,いかなる場合においても下記の事由に因って生じる滅失,損傷または費用をてん補しない。
6.1 戦争,内乱,革命,謀反,反乱もしくはこれらの事変から生じる国内闘争,または軍によってもしくは軍に対して行われる敵対的行為
6.2 捕獲,拿捕,拘束,抑止または抑留(海賊行為を除く)およびそれらの結果またはそれらの企図
6.3 遺棄された機雷,魚雷,爆弾またはその他の遺棄された兵器
⑴ Ⅳの⑵において既に述べた通り,1982年約款では,War Exclusion Clause
(「戦争免責条項」)の中に,政治上または行政上の措置を意味する arrest restraint or detainment(「拘束,抑止または抑留」)といった,戦争とは必ずしも関係しない危険が含まれており(もちろん, この arrest restraint or detainment には,S.G. 保険証券の Perils Clause に見られるような of all Kings, Princes, and People といった単語がないから,官憲による arrest restraint or detainment 以外に,例えば海賊による arrest restraint or detainment も含まれる),また戦後何年も経って,遺棄された機雷や魚雷や爆弾や兵器によって損害が起こったときに,それを戦争危険による損害とすることには異論を生じる恐れがあり,若干の混乱を生み出す恐れがあったことから21,新約款では,欄外にあった見出しの War Exclusion Clause が削除された。
⑵ それ以外は82年約款と同じである。したがって,1963年協会貨物約款第12条の「捕獲拿捕不担保条項」(F.C. & S. Clause)では戦争危険に含まれている
「海賊行為」は,1982年約款と同様,marine risk としてA約款では担保されている。ただし, 約款およびC約款ではpiracy excepted という文言がないので,「海賊行為」による「捕獲,拿捕,拘束,抑止または抑留」(capture sei- zure arrest restraint or detainment)は免責となっている。
(第7条)
7.In no case shall this insurance cover loss damage or expense
7.1 caused by strikers, locked-out workmen, or persons taking part in labour disturbances, riots or civil commotions
7.2 resulting from strikes, lock-outs, labour disturbances, riots or
civil commotions.
─────────────────
21 Joint Cargo Committee, op. cit., p.4.
7.3 caused by any act of terrorism being an act of any person act- ing on behalf of, or in connection with, any organisation which carries out activities directed towards the overthrowing or influ- encing, by force or violence, of any government whether or not legally constituted
7.4 caused by any person acting from a political, ideological, or reli- gious motive.
第7条 この保険は,いかなる場合においても,以下の滅失,損傷または費用をてん補しない。
7.1 ストライキに参加する者,職場閉鎖を受けた労働者,または労働争議,騒じょうもしくは暴動に参加している者によって生じるもの
7.2 ストライキ,職場閉鎖,労働争議,騒じょうまたは暴動から生じるもの
7.3 一切のテロ行為,すなわち,合法的にあるいは非合法に設立された一切の政体を,武力または暴力によって転覆させあるいは支配するために仕向けられた活動を実行する組織のために活動し,あるいはその組織と連携して活動する者の行為によって生じるもの
7.4 政治的,思想的,または宗教的動機から活動する一切の者によって生じるもの
82年約款
7.Strikes Exclusion Clause
In no case shall this insurance cover loss damage or expense
7.1 caused by strikers, locked-out workmen, or persons taking part in labour disturbances, riots or civil commotions
7.2 resulting from strikes, lock-outs, labour disturbances, riots or civil commotions.
7.3 caused by any terrorist or any person acting from a politi- cal motive.
第7条 ストライキ免責条項
この保険は,いかなる場合においても,以下の滅失,損傷または費用をてん補しない。
7.1 ストライキに参加する者,職場閉鎖を受けた労働者,または労働争議,騒じょうもしくは暴動に参加している者によって生じるもの
7.2 ストライキ,職場閉鎖,労働争議,騒じょうまたは暴動から生じるもの
7.3 テロリストまたは政治的動機に基づき行動する者によって生
じるもの
⑴ Ⅳの⑵において既に述べた通り,1982年約款では,Strikes Exclusion Clause(「ストライキ免責条項」)の中に,ストライキとは必ずしも関係しない
「テロリストまたは政治的動機に基づき行動する者」(any terrorist or any per-
son acting from a political motive)の免責が含まれているといった具合で,若干の混乱を生じる恐れがあったことから22,新約款では欄外にあった Strikes Exclusion Clause といった小見出しが削除されたが,それ以外は82年約款7.1および7.2と同じである。
⑵ 2008年の最初のドラフトでは,第7条は7.1と7.2のみで,7.3と7.4は新たに設けられた第8条の8.1,8.2に規定されており,7.1の caused by と7.2の result-
─────────────────
22 Joint Cargo Committee, op. cit., p.4.
ing from に対して,第8条の方はattributable to として,因果関係に差を設けていた。
すなわち,
7.In no case shall this insurance cover loss damage or expense
7.1 caused by strikers, locked-out workmen, or persons taking part in labour disturbances, riots or civil commotions
7.2 resulting from strikes, lock-outs, labour disturbances, riots or civil commotions.
8.In no case shall this insurance cover loss damage or expense attributable to
8.1 any act of terrorism being an act of any person acting on behalf of, or in connection with, any organisation which carries out activities directed towards the overthrowing or influencing, by force or vio- lence, of any government whether or not legally constituted
8.2 any person acting from a political, ideological, or religious motive. となっていて,厳格に因果関係を問う第7条に対して,第8条の「テロ行為」と「政治的,思想的,または宗教的動機から活動する一切の者」(any person acting from a political, ideological, or religious motive)は,合理的に原因を帰
しうる程度の因果関係でいいというように区別をしていたが(従って,当然に,第1条も,
This insurance covers all risks of loss of or damage to the subject-matter insured except as excluded by the provisions of Clauses 4, 5, 6, 7 and 8 or elsewhere in this insurance.
となっていた),因果関係概念(近因説)に絡んで,caused by, resulting from, attributable to 等の用語に関して混乱があることから,最終のドラフトでは,第8条の「テロ行為」と「政治的,思想的,または宗教的動機から活動する一
切の者」をそれぞれ7.3と7.4に配して1つの条文にまとめ,caused by, result- ing from の loss damage or expense をてん補しないと規定したのである。
(ただし,4.1の「被保険者の故意の違法行為」(wilful misconduct of the Assured)については,JCC は,1906年 MIA 第55条2項a号の規定23に拠って,
あえて attributable to を残したとのことである。)
7.4 についていえば,“an act of terrorism” はテロ組織のために行動する者に限定されるので,個人の行動を政治的,思想的,または宗教的動機にまで拡大して含めることが求められた。
DURATION
保険期間
(第8条)
8.Transit Clause
8.1 Subject to Clause 11 below, this insurance attaches from the time the subject-matter insured is first moved in the warehouse or at the place of storage (at the place named in the contract of insurance) for the purpose of the immediate loading into or onto the carrying vehicle or other conveyance for the commence- ment of transit,
continues during the ordinary course of transit
and terminates either
─────────────────
23 55(2) In particular ̶ (a) The insurer is not liable for any loss attributable to the wilful miscon- duct of the assured, but, unless the policy otherwise provides, he is liable for any loss proximately caused by a peril insured against, even though the loss would not have happened but for the mis- conduct or negligence of the master or crew;
8.1.1 on completion of unloading from the carrying vehicle or other conveyance in or at the final warehouse or place of storage at the destination named in the con- tract of insurance,
8.1.2 on completion of unloading from the carrying vehicle or other conveyance in or at any other warehouse or place of storage, whether prior to or at the destination named in the contract of insurance, which the Assured or their employees elect to use either for storage other than in the ordinary course of transit or for allocation or distribution, or
8.1.3 when the Assured or their employees elect to use any carrying vehicle or other conveyance or any con- tainer for storage other than in the ordinary course of transit or
8.1.4 on the expiry of 60 days after completion of discharge overside of the subject-matter insured from the over- sea vessel at the final port of discharge,
whichever shall first occur.
8.2 If, after discharge overside from the oversea vessel at the final port of discharge, but prior to termination of this insurance, the subject-matter insured is to be forwarded to a destination other than that to which it is insured, this insurance, whilst remaining subject to termination as provided in Clauses 8.1.1 to 8.1.4, shall not extend beyond the time the subject-matter insured is first moved for the purpose of the commencement of transit to such
other destination.
8.3 This insurance shall remain in force (subject to termination as provided for in Clauses 8.1.1 to 8.1.4 above and to the provisions of Clause 9 below) during delay beyond the control of the Assured, any deviation, forced discharge, reshipment or tran- shipment and during any variation of the adventure arising from the exercise of a liberty granted to carriers under the con- tract of carriage.
第8条 輸送条項
8.1 下記第11条に従うこととして,この保険は(この保険契約で指定された地の)倉庫または保管場所において,この保険の対象となる輸送の開始のために輸送車両またはその他の輸送用具に保険の目的物を直ちに積込む目的で,保険の目的物が最初に動かされた時に開始し,
通常の輸送過程にある間継続し,
8.1.1 この保険契約で指定された仕向地の最終の倉庫または保管場所において,輸送車両またはその他の輸送用具からの荷卸しが完了した時,
8.1.2 この保険契約で指定された仕向地到着前にあると仕向地にあるとを問わず,被保険者もしくはその使用人が,通常の輸送過程における保管以外の保管のため,または割当もしくは分配のためのいずれかに使用することを選ぶその他の倉庫もしくは保管場所において,輸送車両またはその他の輸送用具からの荷卸しが完了した時,または
8.1.3 被保険者もしくはその使用人が,通常の輸送過程における保管以外の保管のため,輸送車両もしくはその他の輸送用具またはコンテナを使用することを選んだ時,または
8.1.4 最終荷卸港における保険の目的物の航洋船舶からの荷卸完了後60日を経過した時,
のうち,いずれか最初に起きた時に終了する。
8.2 最終荷卸港における航洋船舶からの荷卸後でこの保険の終了前に,保険の目的物が保険に付けられた仕向地以外の地に継搬される場合は,この保険は第8条1項1号ないし第8条1項4号の保険終了の規定に従って存続するが,変更された仕向地への輸送の開始のために保険の目的物が最初に動かされる時以降は延長されない。
8.3 この保険は,(上記第8条1項1号ないし第8条1項4号に規定された保険終了の規定,および下記第9条の規定に従うこととして)被保険者の支配しえない遅延,一切の離路,やむを得ない荷卸し,再積込または積替の期間中および運送契約によって運送人に与えられた自由裁量権の行使から生じる一切の危険の変更の期間中有効に存続する。
82年約款
8.Transit Clause
8.1 This insurance attaches from the time the goods leave the warehouse or place of storage at the place named herein for the commencement of the transit, continues during the
ordinary course of transit and terminates either
8.1.1 on delivery to the Consignees’ or other final ware- house or place of storage at the destination named herein,
8.1.2 on delivery to any other warehouse or place of storage, whether prior to or at the destination named herein, which the Assured elect to use either
8.1.2.1 for storage other than in the ordinary course of transit or
8.1.2.2 for allocation or distribution, or
8.1.3 on the expiry of 60 days after completion of dis- charge overside of the goods hereby insured from the oversea vessel at the final port of discharge
whichever shall first occur.
8.2 If, after discharge overside from the oversea vessel at the final port of discharge, but prior to termination of this insur- ance, the goods are to be forwarded to a destination other than that to which they are insured hereunder, this insur- ance, whilst remaining subject to termination as provided for above, shall not extend beyond the commencement of transit to such other destination.
8.3 This insurance shall remain in force (subject to termination as provided for above and to the provisions of Clause 9 below) during delay beyond the control of the Assured, any
deviation, forced discharge, reshipment or transhipment and during any variation of the adventure arising from the exercise of a liberty granted to shipowners or charterers under the contract of affreightment.
第8条 輸送条項
8.1 この保険は,貨物が,運送開始のために保険証券記載の地の倉庫または保管場所を離れる時に始まり,通常の運送行程中継続し,貨物が,
通常の輸送過程にある間継続し,
8.1.1 保険証券記載の仕向地の荷受人の倉庫もしくは保管場所またはその他の最終の倉庫もしくは保管場所に引渡される時,
8.1.2 保険証券記載の仕向地到着前にあると当該仕向地にあるとを問わず,被保険者が下記のいずれかの目的に使用するために選ぶその他の倉庫もしくは保管場所に引渡される時,
8.1.2.1 通常の輸送過程における保管以外の保管のため,もしくは
8.1.2.2 割当もしくは分配のため
または
8.1.3 最終荷卸港における被保険貨物の航洋船舶からの荷卸完了後60日を経過する時
のうち,いずれか最初に起きた時に終了する。
8.2 最終荷卸港における航洋船舶からの荷卸後でこの保険の終了前に,貨物がこの保険に付けられた仕向地以外の地に継搬される場合は,この保険は,上記の保険終了の規定に従って存
続するが,変更された仕向地への運送が開始する時に終了する。
8.3 この保険は,(上記の保険終了の規定および下記第9条の規定に従うこととして)被保険者の支配できない遅延,一切の離路,やむを得ない荷卸,再積込または積替の期間中,および海上運送契約によって船主または用船者に与えられた自由裁量権の行使から生じる一切の危険の変更の期間中有効に存
続する。
⑴ 1982年約款8.1条は,1963年協会貨物約款第1条の Transit Clause(in cor- porating Warehouse to Warehouse Clause)をそのまま持ってきたものであるが(ただし,第3項 “This insurance shall remain in force (subject to termina- tion as provided for above and to the provisions of Clause 9 below) during delay beyond the control of the Assured, any deviation, forced discharge, reshipment or transhipment and during any variation of the adventure aris- ing from the exercise of a liberty granted to shipowners or charterers under the contract of affreightment, but shall in no case be deemed to extend to cover loss damage or expense proximately caused by delay or inherent vice or nature of the subject matter insured. の but 以下の下線部は1982年約款第
4条4項4号および5号並びにMIA 第55条2項によって免責されているので,削除されている),新約款第8条の Transit Clause は大きく変わった。
まず, 第8条は「下記第11条に従うこととして」(Subject to Clause 11 below,)としている。第11条は「被保険利益」に関する規定であるが,これは, 82年約款の改訂に当たって行われた JCC の関係業界への質問に対して,2人の人から「被保険利益が輸送期間とどのようにかかわっているのかを明確にすべきである」との意見に従ったものである。すなわち,被保険者は,この保険
によって損害のてん補を受けるためには,損害発生の時に,保険の目的物について被保険利益を有していなければならないとともに,保険契約締結前にこの保険の対象となる損害が発生していたとしても,被保険者がその損害発生の事実を知り,かつ保険者がこれを知らなかった場合を除き,被保険者は過去に遡って始まった保険期間内に発生する損害についててん補を受ける権利があるという遡及効を規定しているから,遡及保険における保険期間の開始時期と輸送の開始時期との間に齟齬を生じる可能性がある。したがって,「下記第11条に従うこととして」としたのである。
また,1982年約款の第8条では,「この保険は,貨物が運送開始のために保険証券記載の地の倉庫または保管場所を離れる時に始まる」(This insurance attaches from the time the goods leave the warehouse or place of storage at the place named herein for the commencement of the transit)としている。この「倉庫または保管場所を離れる」というのは,文字通り,「倉庫または保管場所の外に出る」「保険証券記載の地の倉庫または保管場所の境界を離れる」ということであって,例えば倉庫内でトラックに積まれた貨物が倉庫の出口に向かっているとき,トラックが衝突して,あるいは他の物が落下して貨物に損害を与えても,まだ保険は開始していないから,保険者は責任を負わなくてい
いということになる。また,終期についても,文字通り,貨物が倉庫または保管場所の境界を越えたときに保険は終了すると解すべきである24。それに対し
て,新約款では,「この保険は倉庫または保管場所において,この保険の対象となる輸送の開始のために輸送車両またはその他の輸送用具に保険の目的物を直ちに積込む目的で,保険の目的物が最初に動かされた時に開始する」(this insurance attaches from the time the subject-matter insured is first moved in the warehouse or at the place of storage (at the place named in the contract
─────────────────
24 Kessler Export Corp. v. Reliance Ins. Co. of Philadelphia.
of insurance) for the purpose of the immediate loading into or onto the carry- ing vehicle or other conveyance for the commencement of transit)から,貨物が倉庫や保管場所の中にあって,輸送の開始のために輸送車両またはその他の輸送用具に貨物を積込むために移動中に損害が生じても,保険者は責任を負うということになり,終期についても,「この保険契約で指定された仕向地の最終の倉庫または保管場所内で,輸送車両またはその他の輸送用具からの荷卸しが完了した時」(on completion of unloading from the carrying vehicle or other conveyance in or at the final warehouse or place of storage at the des- tination named in the contract of insurance)であるから,この点でも,被保険者側に有利に改訂されたことになる。ただし,日本の実務では,既に倉庫間条項における保険期間の始終期をそのようにしているとのことである。
(第9条)
9.Termination of Contract of Carriage
If owing to circumstances beyond the control of the Assured either the contract of carriage is terminated at a port or place other than the destination named therein or the transit is otherwise terminated before unloading of the subject-matter insured as provided for in Clause 8 above, then this insurance shall also terminate unless prompt notice is given to the Insurers and continuation of cover is requested when this insurance shall remain in force, subject to an additional premium if required by the Insurers, either
9.1 until the subject-matter insured is sold and delivered at such port or place, or, unless otherwise specially agreed, until the expiry of 60 days after arrival of the subject-matter insured at
such port or place, whichever shall first occur,
or
9.2 if the subject-matter insured is forwarded within the said period of 60 days (or any agreed extension thereof) to the destination named in the contract of insurance or to any other destination, until terminated in accordance with the provisions of Clause 8 above.
第9条 運送契約の打切り
被保険者の支配しえない事情により,運送契約がその契約で指定された仕向地以外の港または地において打切られたか,または上記第8条に規定するとおり,保険の目的物が荷卸しされる前に輸送が打切られた場合には,この保険もその時点で終了する。ただし,被保険者が,遅滞なくその旨を保険者に通知し,担保の継続を要請する場合は,保険者が割増保険料を請求するときはその支払いを条件として,この保険は,
9.1 輸送が打切られた港もしくは地において保険の目的物が売却の上引渡される時,または特に別段の協定が行われない限りは,これらの港または地への保険の目的物の到着後60日を経過した時, のうち,いずれか最初に起きた時,
または
9.2 保険の目的物が,上記60日の期間(もしくは協定によりこれを延長した期間)内に,この保険契約で指定された仕向地もしくはいずれか他の仕向地へ継搬される場合は,上記第8条の規定によって保険が終了する時まで,有効に存続する。
82年約款
9.Termination of Contract of Carriage Clause
If owing to circumstances beyond the control of the Assured either the contract of carriage is terminated at a port or place other than the destination named therein or the transit is other- wise terminated before delivery of the goods as provided for in Clause 8 above, then this insurance shall also terminate unless prompt notice is given to the Underwriters and continuation of cover is requested when the insurance shall remain in force, subject to an additional premium if required by the Underwrit- ers, either
9.1 until the goods are sold and delivered at such port or place, or, unless otherwise specially agreed, until the expiry of 60 days after arrival of the goods hereby insured at such port or place, whichever shall first occur,
or
9.2 if the goods are forwarded within the said period of 60 days (or any agreed extension thereof) to the destination named herein or to any other destination, until terminated in accor- dance with the provisions of Clause 8 above.
第9条 運送契約打切条項
被保険者の支配しえない事情により,運送契約がその契約で指定された仕向地以外の港または地において打切られるか,または上記第8条に規定するとおり,貨物が引き渡される前に輸送が打切られる場合には,この保険もその時点で終了する。ただし,被保険者が,遅滞なくその旨をアンダライターに通知し,担保の継続を要請する場合は,アンダライターが割増保険料を請求するときはその支払いを条件として,この
保険は,
9.1 輸送が打切られた港もしくは地において貨物が売却の上引渡される時,または特に別段の協定が行われない限りは,これらの港または地への貨物の到着後60日を経過した時,
のうち,いずれか最初に起きた時, または
9.2 貨物が,上記60日の期間(もしくは協定によりこれを延長した期間)内に,この保険契約で指定された仕向地もしくはいずれか他の仕向地へ継搬される場合は,上記第8条の規定に
よって保険が終了する時まで,有効に存続する。
⑴ この運送契約打切条項は,運送契約上運送人に与えられた自由裁量権の行使によると否とを問わず,被保険者の支配しえない事情(例えば港湾ストや戦争など)によって,運送がその契約で指定された仕向地以外の港または地において打切られるか,または保険の目的物が荷卸しされる前に輸送が打切られる場合の被保険者保護の方法を規定したものであって,被保険者が運送打ち切りの事実を知った場合,遅滞なくその旨を保険者に通知し,場合によって割増保険料の請求があれば,その支払いを条件として,条項に定める一定期間担保が継続される旨を定めたものであるが,1982年約款第9条の運送契約打切条項は 1963年協会貨物約款の第2条を若干手直ししたものにすぎなかった。1963年協会貨物約款第2条や1982年約款では運送の打切りが「貨物の引渡し前に」
(before delivery of the goods)なされた場合には,その時点で保険が終了したが,この「貨物の引き渡し」(delivery of the goods)の意味が不明確であるので,新約款では,「保険の目的物が荷卸しされる前に」(before unloading of the subject-matter insured)運送が打切られるときに,その時点で保険が終了することを明定した。この運送打切条項は,常にその前の運送条項とセットで
理解されなければならない。
また,他の条項と同様,1982年約款の goods が subject-matter insured に, Underwriters が Insurers になっている。
(第10条)
10.Change of Voyage
10.1 Where, after attachment of this insurance, the destination is changed by the Assured, this must be notified promptly to Insurers for rates and terms to be agreed. Should a loss occur prior to such agreement being obtained cover may be provided but only if cover would have been available at a reasonable commercial market rate on reasonable market terms.
10.2 Where the subject-matter insured commences the transit con- templated by this insurance (in accordance with Clause 8.1), but, without the knowledge of the Assured or their employees the ship sails for another destination, this insurance will neverthe- less be deemed to have attached at commencement of such transit.
第10条 航海の変更
10.1 この保険の危険開始後に被保険者が仕向地を変更する場合は,遅滞なくその旨を保険者に通知し,保険料率および保険条件の協定をしなければならない。その協定前に損害が発生した場合は,営利保険市場において妥当と考えられる保険条件および保険料率による担保が得られるときに限り,担保が提供される。
10.2 保険の目的物が,(第8条1項に従い)この保険によって企図された輸送を開始したが,被保険者およびその使用人が知らずし
て,船舶が別の仕向地に向けて出帆した場合であっても,この保
険はその輸送開始の時に危険が開始したものとする。
82年約款
10.Change of Voyage Clause
Where, after attachment of this insurance, the destination is changed by the Assured, held covered at a premium and on condition to be arranged subject to prompt notice being given to the Underwriters.
第10条 航海変更条項
この保険の危険開始後に被保険者が仕向地を変更する場合は,遅滞なくその旨をアンダライターに通知することを条件として, 追って協定される保険料および保険条件をもって担保が継続される。
⑴ xxでは,危険開始後に,船舶の仕向地が保険証券に定めた仕向地から任意に変更される場合を「航海の変更」(change of voyage)という(MIA 第45条第1項)。そして,航海の変更がある場合には,保険証券に別段の定めがない限り,保険者は,その変更の時,すなわち航海を変更する決意が表明された時から,その責任を免れる。損害発生の時に船舶が保険証券に定めた航路を実際に離れていなかったとしても,そのことは問わない(MIA 第45条第2項)。これに対して,1982年約款では,航海の変更がある場合には,遅滞なくその 旨をアンダライターに通知し,保険料および保険条件を協定することをもって
「担保が継続」(held covered)されることを規定している。しかし,このheld
covered という言葉は,商業上保険カバーを利用できない場合にも保険カバーを受けることができるとの誤解を与える恐れがあったために25,1906年 MIA
に必ずしも精通していない被保険者にも理解してもらえるような言葉を使用する方が一層適切であり,実務にもかなっているとして,新約款では,1982年約款の “held covered at a premium and on condition to be arranged subject to prompt notice being given to the Underwriters”(「遅滞なくその旨をアンダライターに通知することを条件として,追って協定される保険料および保険条件をもって担保が継続される」)を削除し,2001年1月1日の協会船級条項
(Classification Clause)に倣って,“this must be notified promptly to Insurers
for rates and terms to be agreed. Should a loss occur prior to such agreement being obtained cover may be provided but only if cover would have been available at a reasonable commercial market rate on reasonable market terms”(「遅滞なくその旨を保険者に通知し,保険料率および保険条件の協定をしなければならない。その協定前に損害が発生した場合は,営利保険市場において妥当と考えられる保険条件および保険料率による担保が得られるときに限り,担保が提供される」)として,保険者から追加的な保険カバーを得ることができる条件を規定し,併せて新たに第2項を設けて,船舶が別の仕向地に向けて出帆した事実を被保険者およびその使用人が知らなかった場合には,この保険によって企図された輸送開始の時に保険者の危険が開始したものとして,善意の被保険者を保護することにした。すなわち,貨物の航海保険において,貨物積載船が保険証券に記載されている仕向地と異なる仕向地に向けて出帆したときは,MIA 第44条の規定によって危険は開始しないことになるが,被保険者およびその使用人がその事実を知らなければ,この保険は輸送開始の時に危険が開始したものとして,善意の被保険者を保護するというのである。これはとりわけ,東南アジア海域に出没するいわゆる Phantom Ship(幽霊船)と言われる詐欺船舶,すなわち表向きは契約で定められた仕向地に向かって船
─────────────────
25 Liberian Insurance Agency Inc. v. Mosse [1977] 2 Lloyd’s Rep. 560.
積港を出帆した直後に姿をくらます船舶による被害が多発しており,これが MIA 第44条の「異なる到達港に向かっての出帆」(Sailing for different desti- nation)の場合として,保険者を免責するかどうかが2003年の The Prestrioka号事件で争われたが26,このような場合に被保険者を保護するためには,MIA第44条の規定を無効にする新たな条項を定めるべきではないかという Xxxxxx Xxxxxxx “The Law of Marine Insurance” 2ed., at para. 18. 18の意見に JCC が耳を傾けたということである。しかし,これは「異なる到達港に向かっての出帆」(Sailing for different destination)の問題であって,MIA 第45条の「航海の変更」(Change of Voyage)の場合とは異なるのであるから,タイトルを Change of Voyage としたのはよくなかったと思う27。
CLAIMS
保険金の請求
(第11条)
11.Insurable Interest
11.1 In order to recover under this insurance the Assured must have an insurable interest in the subject-matter insured at the time of the loss.
11.2 Subject to Clause 11.1 above, the Assured shall be entitled to recover for insured loss occurring during the period covered by this insurance, notwithstanding that the loss occurred before the contract of insurance was concluded, unless the Assured were aware of the loss and the Insurers were not.
第11条 被保険利益
─────────────────
26 Xxxxxxx, 17th ed., 13-17 x x 。
27 Xxxxxxx, 17th ed., 13-16以降参照。
11.1 この保険によって損害のてん補を受けるためには,被保険者は,損害発生の時に保険の目的物について被保険利益を有していなければならない。
11.2 上記第11条1項の規定に従うこととして,保険契約締結前にこの保険の対象となる損害が発生していたとしても,被保険者がその損害発生の事実を知り,かつ保険者がこれを知らなかった場合を除き,被保険者はこの保険によって担保されている期間内に発生
するこの損害についててん補を受ける権利がある。
82年約款
11.Insurable Interest Clause
11.1 In order to recover under this insurance the Assured must have an insurable interest in the subject-matter insured at the time of the loss.
11.2 Subject to 11.1 above, the Assured shall be entitled to recover for insured loss occurring during the period cov- ered by this insurance, notwithstanding that the loss occurred before the contract of insurance was concluded, unless the Assured were aware of the loss and the Under- writers were not.
第11条 被保険利益条項
11.1 この保険によって損害のてん補を受けるためには,被保険者は,損害発生の時に,保険の目的物について被保険利益を有していなければならない。
11.2 上記11条1項の規定に従うこととして,保険契約締結前に被保険損害が発生していたとしても,被保険者がその損害発生
の事実を知り,かつ,アンダライターがこれを知らなかった
場合を除き,被保険者は,この保険の担保期間内に発生する被保険損害についててん補を受ける権利がある。
⑴ 言うまでもなく,被保険利益に関する規定である。その重要性に鑑みて, JCC は1982年約款の規定に変更を加えることをせず,MIA および同法が基礎を置いてきたxxにわたる貨物海上保険実務に従って,被保険利益の要件を維持したとのことである。
⑵ 本条は,ロイズ S.G. 保険証券本文や1906年 MIA 第1付則「保険証券の解釈規則」第1条に規定があるものの,1963年約款には明定されていなかった
「滅失したと否とを問わない」(lost or not lost)の条件に関する MIA 第6条の規定を1982年約款において別の文言をもって導入したのであるが,新約款もそれをそのまま踏襲した。したがって,第2項の Underwriters が Insurers に変わった以外,新約款は1982年約款と同じである。
(第12条)
12.Forwarding Charges
Where, as a result of the operation of a risk covered by this insur- ance, the insured transit is terminated at a port or place other than that to which the subject-matter insured is covered under this insur- ance, the Insurers will reimburse the Assured for any extra charges properly and reasonably incurred in unloading storing and forward- ing the subject-matter insured to the destination to which it is insured.
This Clause 12, which does not apply to general average or salvage
charges, shall be subject to the exclusions contained in Clauses 4, 5,
6 and 7 above, and shall not include charges arising from the fault negligence insolvency or financial default of the Assured or their employees.
第12条 継搬費用
この保険によって担保される危険の作用の結果として,この保険の対象となる輸送が,この保険によって保険の目的物がそこまで担保されている港または地以外の港または地で打切られる場合には,保険者は,保険の目的物の荷卸し,保管およびこの保険に付けられた仕向地までの継搬のために適切かつ合理的に支出された一切の追加費用を被保険者にてん補する。
この第12条は,共同海損または救助料には適用されないが,上記第
4条,第5条,第6条および第7条に規定された免責規定の適用を受ける。また,この第12条は被保険者またはその使用人の過失,怠慢,支払不能または金銭債務不履行から生じる費用を含まない。
82年約款
12.Forwarding Charges
Where, as a result of the operation of a risk covered by this insurance, the insured transit is terminated at a port or place other than that to which the subject-matter is covered under this insurance, the Underwriters will reimburse the Assured for any extra charges properly and reasonably incurred in unload- ing storing and forwarding the subject-matter to the destination to which it is insured hereunder.
This Clause 12, which does not apply to general average or sal-
vage charges, shall be subject to the exclusions contained in
Clauses 4, 5, 6 and 7 above, and shall not include charges arising from the fault negligence insolvency or financial default of the Assured or their servants.
第12条 継搬費用
この保険によって担保される危険の作用の結果として,この保険の対象となる輸送が,この保険によって保険の目的物がそこまで担保されている港または地以外の港または地で打切られる場合には,アンダライターは,保険の目的物の荷卸し,保管およびこの保険に付けられた仕向地までの継搬のために適切かつ合理的に支出された一切の追加費用を被保険者にてん補する。
この第12条は,共同海損または救助料には適用されないが,上記第4条,第5条,第6条および第7条に規定された免責の適用を受ける。また,この第12条は,被保険者またはその使用人の過失,怠慢,支払不能または金銭債務不履行から生じる費用を含まない。
⑴ 被保険危険の結果必要となった継搬費用(Forwarding Charges)を保険者が負担するという規定であるが,この規定は1982年約款で初めて導入された。本規定の導入後特に何の問題も生じなかったということで,Underwrit- ers が Insurers に変わった以外は何の修正もなされていない。
(第13条)
13.Constructive Total Loss
No claim for Constructive Total Loss shall be recoverable hereunder unless the subject-matter insured is reasonably abandoned either on account of its actual total loss appearing to be unavoidable or
because the cost of recovering, reconditioning and forwarding the subject-matter insured to the destination to which it is insured would exceed its value on arrival.
第13条 推定全損
保険の目的物の現実全損が避け難いと思われるため,または保険の目的物の回収,補修および保険に付けられた仕向地までの継搬に要する費用の合計額が到着時の保険の目的物の価額を超える見込であるために,保険の目的物が合理的に遺棄される場合を除き,推定全損に対する保険金はこの保険ではてん補されない。
82年約款
13.Constructive Total Loss
No claim for Constructive Total Loss shall be recoverable here- under unless the subject-matter insured is reasonably abandoned either on account of its actual total loss appearing to be unavoid- able or because the cost of recovering, reconditioning and forwarding the subject-matter to the destination to which it is insured would exceed its value on arrival.
第13条 推定全損
保険の目的物の現実全損が避け難いと思われるため,または目的物の回収,補修および保険に付けられた仕向地までの継搬に要する費用の合計額が到着時の保険の目的物の価額を超える見込であるために,保険の目的物が合理的に遺棄される場合を除き,推定全損に対する保険金はこの保険ではてん補されない。
⑴ 本条は MIA 第60条の規定に倣って作られたもので,1982年約款に初めて
導入されたのであるが,1982年約款4行目の subject-matter が新約款では subject-matter insured となった以外変更はない。
(第14条)
14.Increased Value
14.1 If any Increased Value insurance is effected by the Assured on the subject-matter insured under this insurance the agreed value of the subject-matter insured shall be deemed to be increased to the total amount insured under this insurance and all Increased Value insurances covering the loss, and liability under this insurance shall be in such proportion as the sum insured under this insurance bears to such total amount insured. In the event of claim the Assured shall provide the Insurers with evidence of the amounts insured under all other insur- ances.
14.2 Where this insurance is on Increased Value the following clause shall apply:
The agreed value of the subject-matter insured shall be deemed to be equal to the total amount insured under the primary insur- ance and all Increased Value insurances covering the loss and effected on the subject-matter insured by the Assured, and xxx- bility under this insurance shall be in such proportion as the sum insured under this insurance bears to such total amount insured.
In the event of claim the Assured shall provide the Insurers with evidence of the amounts insured under all other insur-
ances.
第14条 増値
14.1 この保険に付けられた保険の目的物について被保険者が増値保険を付けた場合は,保険の目的物の協定価額は,この保険の保険金額および同じ損害をてん補するすべての増値保険の保険金額の合計額まで増額されたものとみなされ,この保険による保険者の責任額は,この保険の保険金額の上記合計保険金額に対する割合による。
保険金の請求に際しては,被保険者は,この保険以外のすべての保険の保険金額についての証拠を保険者に提供しなければならない。
14.2 この保険が増値についての保険である場合には,以下の規定を適用する。
保険の目的物の協定価額は,原保険の保険金額および被保険者によってその保険の目的物について保険に付けられ,同じ損害をてん補するすべての増値保険の保険金額の合計額と同額とみなされるものとし,この保険における保険者の責任額は,この保険の保険金額の上記合計保険金額に対する割合による。
保険金の請求に際しては,被保険者は,この保険以外のすべての保険の保険金額についての証拠を保険者に提供しなければならない。
82年約款
14.Increased Value Clause
14.1 If any Increased Value insurance is effected by the Assured on the cargo insured herein the agreed value of the cargo
shall be deemed to be increased to the total amount insured under this insurance and all Increased Value insurances covering the loss, and liability under this insurance shall be in such proportion as the sum insured herein bears to such total amount insured.
In the event of claim the Assured shall provide the Under- writers with evidence of the amounts insured under all other insurances.
14.2 Where this insurance is on Increased Value the following clause shall apply:
The agreed value of the cargo shall be deemed to be equal to the total amount insured under the primary insurance and all Increased Value insurances covering the loss and effected on the cargo by the Assured, and liability under this insurance shall be in such proportion as the sum insured herein bears to such total amount insured.
In the event of claim the Assured shall provide the Under- writers with evidence of the amounts insured under all other insurances.
第14条 増値条項
14.1 この保険に付けられた貨物について被保険者が増値保険を付けた場合は,貨物の協定価額は,この保険の保険金額および同じ損害をてん補する一切の増値保険の保険金額の合計額まで増額されたものとみなされ,この保険によるアンダライターのてん補責任は,この保険の保険金額の上記合計保険金額に対する割合による。
保険金の請求に際しては,被保険者は,この保険以外の一切の保険の保険金額についての証拠を保険者に提供しなければならない。
14.2 この保険が増値についての保険である場合は,下記条項を適用する。
貨物の協定価額は,原保険の保険金額と被保険者によってその貨物について付けられ同じ損害をてん補する一切の増値保険の保険金額と同額とみなされ,この保険によるアンダライターのてん補責任は,この保険の保険金額の上記合計金額に対する割合による。
保険金の請求に際しては,被保険者は,この保険以外の一切の保険の保険金額についての証拠をアンダライターに提供し
なければならない。
⑴ 本条は,協会コモディティ・トレード約款に倣って1982年約款に導入されたものであるが,実務上うまく機能しているということで,cargo(insured herein) が subject-matter insured(under this insurance) に,in such pro- portion as the sum insured herein が in such proportion as the sum insured under this insurance に,Underwriters が Insurers に,sum insured herein が sum insured under this insurance に変更された以外,内容に変更はない。
BENEFIT OF INSURANCE
保険の利益
(第15条)
15.This insurance
15.1 covers the Assured which includes the person claiming indem-
nity either as the person by or on whose behalf the contract of insurance was effected or as an assignee,
15.2 shall not extend to or otherwise benefit the carrier or other bailee.
第15条 この保険は
15.1 被保険者を対象とする。被保険者には,この保険契約を自ら締結した者もしくは自己のためにこの保険契約を締結された者として,または譲受人として,保険金の請求を行う者を含む。
15.2 拡張解釈またはその他の方法によって運送人その他の受託者を利
するために利用されてはならない。
82年約款
15.Not to Inure Clause
This insurance shall not inure to the benefit of the carrier or other bailee.
第15条 保険利益不供与条項
運送人その他の受託者は,この保険の利益を享受することはできない。
⑴ Not to Inure Clause(保険利益不供与条項)という欄外見出しを削除するとともに,この保険の利益を享受する「被保険者」(Assured)の定義を第15条1項に入れて,この保険は被保険者を対象とするものであることを明記し28,本保険が運送人その他の受託者を利するために利用されてはならない旨を記した1982年約款第15条1項の規定を2項に移した。
⑵ また inure という単語は enure と書かれることもあるが,その意味は辞書によって様々であることから,この分りにくい inure という単語をやめて,規
定自体を “shall not extend to or otherwise benefit the carrier or other bailee”と,現代的で分りやすい表現にした。
1982年約款 ・C15条および協会戦争約款および協会ストライキ約款10条も同じである。
⑶ 第15条2項の規定は,運送人,波止場業者,倉庫業者,回漕業者等の受託者の故意または過失によって被保険危険が生じ,その被保険危険に近因して損害が生じた場合,損害をてん補した保険者が代位によって取得したこれら第三
者に対する請求権の保存を目的とするものであって,被保険者に対しては別段の義務や権利を与えるものではない29。
これらの者は自己の責めに帰すべき貨物の損害についても,荷主に対して保険者からてん補を受けさせ,荷主が保険者から損害のてん補を受けると,荷主が結局損害を被らなかったことを理由として,運送人その他の受託者は自己の責任を免れようとする。そして運送人その他の受託者はこの立場を強めるために,運送契約その他の受託契約に「保険利益享受条項」(Benefit of insurance Clause)を挿入した。この「保険利益享受条項」は保険者の利益を害すること甚だしいので,その対抗策としてこの「保険利益享受条項」の挿入された船荷証券や運送契約に基づいて運送される貨物に関する保険金請求には一切応じないという趣旨の Bailee Clause(「受託者条項」)と称する特別約款を創案し,最初は船荷証券に「保険利益享受条項」が挿入されがちな北米行き貨物の保険
証券に単独な保険約款として特約されていたが,1933年頃から協会貨物約款の
─────────────────
28 被保険者の定義については,2008年5月23日の最初のドラフトでは,第1条の第2項に以下のように規定されていた。
“1.2 The Assured means the person or entity claiming indemnity either as the original
assured (being the person by or on whose behalf the policy was effected) or by way of assign- ment. The assignee is entitled to claim in his own name in which case Underwriters are entitled to make any defence arising out of the contract which they would have been entitled to make if the claim had been brought by the original assured, except only as otherwise pro- vided in Clauses 4.6 and 5.2 below or elsewhere in this insurance.”
29 xx・前掲書,p.358。
中の一条項としてこれに結合され,それが1957年末まで行われていた30。
MINIMISING LOSSES
損害の軽減
(第16条)
16.Duty of Assured
It is the duty of the Assured and their employees and agents in respect of loss recoverable hereunder
16.1 to take such measures as may be reasonable for the purpose of averting or minimising such loss,
and
16.2 to ensure that all rights against carriers, bailees or other third parties are properly preserved and exercised
and the Insurers will, in addition to any loss recoverable hereunder, reimburse the Assured for any charges properly and reasonably incurred in pursuance of these duties.
第16条 被保険者の義務
この保険によって損害がてん補されるためには,以下のことを被保険者ならびにその使用人および代理人の義務とする。
16.1 その損害を回避または軽減するために合理的な処置を講じること,
および
16.2 運送人,受託者またはその他の第三者に対するすべての権利が適切に保全され,かつ行使されることを確保すること。
─────────────────
30 xx・前掲書,p.359。
保険者は,この保険によっててん補されるすべての損害に加えて,こ
れらの義務を履行することにより適切かつ合理的に支出された一切の費用についても被保険者に支払う。
82年約款
16.Duty of the Assured Clause
It is the duty of the Assured and their servants and agents in respect of loss recover-able hereunder
16.1 to take such measures as may be reasonable for the pur- pose of averting or minimising such loss,
and
16.2 to ensure that all rights against carriers, bailees or other third parties are properly preserved and exercised
and the Underwriters will, in addition to any loss recoverable hereunder, reimburse the Assured for any charges properly and reasonably incurred in pursuance of these duties.
第16条 被保険者の義務条項
次の事項を履行することは,この保険によっててん補される損害についての被保険者並びにその使用人および代理人の義務である。
16.1 上記損害を回避または軽減するために合理的な処置を講じること,
および
16.2 運送人,受寄者またはその他の第三者に対する一切の権利が適切に保存され,かつ行使されることを確保すること
そして,アンダライターは,この保険によっててん補される一切
の損害に加えて,上記義務を履行することによって適切かつ合理
的に支出された一切の費用についても被保険者にてん補する。
⑴ 1982年約款第16条は,S.G. 保険証券中の損害防止条項を修正した1963年協会貨物約款第9条の受託者条項(Bailee Clause)31をさらに修正して導入されたものであるが,新約款はこれを踏襲し,servants が employees に,Under- writers が Insurers に変更された以外は,1982年約款と同じである。
(第17条)
17.Waiver
Measures taken by the Assured or the Insurers with the object of saving, protecting or recovering the subject-matter insured shall not be considered as a waiver or acceptance of abandonment or other- wise prejudice the rights of either party.
第17条 権利放棄
保険の目的物の救助,保護または回復のために被保険者または保険者が講じる処置は,委付の放棄または承諾とみなされず,またいずれの当事者の権利を害するものでもない。
82年約款
17.Waiver Clause
Measures taken by the Assured or the Underwriters with the object of saving, protecting or recovering the subject-matter insured shall not be considered as a waiver or acceptance of
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31 この Bailee Clause 自体は協会貨物約款中に規定することを意図されたものではなく,独立した約款として別個に印刷され,1924年4月7日に導入された。-xx・前掲訳書 p.223.。
abandonment or otherwise prejudice the rights of either party.
第17条 放棄条項
保険の目的物の救助,保護および回復のために被保険者またはアンダライターが講じる処置は,委付の放棄または承諾とはみなされず,また,いずれの当事者の権利を侵害するものでもない。
⑴ この「権利放棄」条項は,S.G. 保険証券中の放棄条項と同趣旨であって,第16条の「被保険者の義務」条項と一緒に理解しなければならない。
⑵ 他の規定同様,見出しのClause がなくなって,単にWaiver となり,Under- writers が Insurers になった以外は,1982年約款と全く同じである。
AVOIDANCE OF DELAY
遅延の回避
(第18条)
18.It is a condition of this insurance that the Assured shall act with reasonable despatch in all circumstances within their control.
第18条 被保険者が自己の支配しうるすべての状況下において相当な迅速
さをもって行動することがこの保険の条件である。
82年約款
18.Reasonable Despatch Clause
It is a condition of this insurance that the Assured shall act with reasonable despatch in all circumstances within their control.
第18条 迅速処置条項
被保険者が自己の支配しうるすべての状況下において相当な迅速さをもって行動することがこの保険の条件である。
⑴ Reasonable Despatch Clause という見出しが削除された以外は1982年約款と同じである。
⑵ この条項は1963年協会貨物約款第14条と同旨同文であるが,この1963年約款第14条は1958年に初めて導入されたものである。この約款に基づく保険保護は,第8条の規定によって,基本的には「この保険契約で指定された地の倉庫または保管場所において,輸送の開始のために輸送車両またはその他の輸送用具に保険の目的物を直ちに積込む目的で保険の目的物が最初に動かされた時に開始し,この保険契約で指定された仕向地の最終の倉庫または保管場所において,輸送車両またはその他の輸送用具からの荷卸しが完了した時」に終了するから,その間に離路,遅延,航海の変更,仕向地の変更等種々の危険変動が生じても,ほとんど無制限に被保険者を保護し続けることになる。したがって,例えば運送契約が打ち切られて中間港で保険の目的物が陸揚げされた場合に,被保険者がそれを放置していては,保険者の利益が害されること甚だしい。そこで,被保険者が自ら処置し得る限り,迅速に行動して貨物を処置することを要求したのがこの規定である。この規定は被保険者が可能な限り迅速な処置をとることを保険契約の「条件」としているが,この条件は停止条件(condition
precedent)であって,これに違反すれば,保険者はその違反の時から危険負担責任を免れるものと解する32。
LAW AND PRACTICE
法律および慣習
(第19条)
19.This insurance is subject to English law and practice.
第19条 この保険は,英国の法律および慣習に従う。
─────────────────
32 xx・前掲書,pp.375-376。
82年約款
19.English law and Practice Clause
This insurance is subject to English law and practice.
第19条 準拠法条項
この保険は,英国の法律および慣習に従う。
⑴ この第19条は,1982年と同じで,何も変わっていない。
⑵ 日本の保険会社が MAR ポリシー・フォームとこの新約款を使用するときには,このxx準拠条項についていろいろ問題が出てくる可能性がある。すなわち,xx準拠条項の適用範囲がどこまでか,あるいは何についてxxが適用されるのかということについてである。したがって,本条をそのまま使用するのではなく,S.G. 保険証券中のxx準拠条項のように,“as to liability for and settlement of any and all claims” といった制限文言を入れるかどうか,慎重に検討する必要がある。
⑶ 言うまでもないことであるが,本条は準拠法に関する規定であって,裁判管轄に関する規定ではない。英国でも,1982年約款が最初に導入された当時,
裁判管轄地を別の国にすることが合意されたときには自動的にこのxx準拠条項も削除されるものと考える者がいたそうであるが33,もちろん裁判管轄とx
x準拠とは別物である。当然のことながら,裁判管轄については,契約当事者が合意すれば自由に別の裁判管轄条項を契約に挿入することができる。
(注意)
NOTE: - Where a continuation of cover is requested under Clause 9, or
a change of destination is notified under Clause 10, there is an obligation
─────────────────
33 Xxxxx and Xxxxxx, op. cit., p.102.
to give prompt notice to the Insurers and the right to such cover is dependent upon compliance with this obligation.
注意: -第9条により担保の継続が要請される場合,または第10条により仕向地の変更が通知される場合には,遅滞なくその旨を保険者に通知する義務があり,担保の継続を受ける権利は,この義務が履行されることを条
件とする。
82年約款
NOTE: - It is necessary for the Assured when they become aware of an event which is “held covered” under this insurance to give prompt notice to the Underwriters and the right to such cover is dependent upon compliance with this obligation.
注意: -被保険者はこの保険に基づいて「継続担保」(held covered) される事由が発生したことを知ったときは,遅滞なくその旨をアンダライターに通知することを要する。この担保を受ける権利は,この義
務が履行されたことを条件とする。
⑴ 既に第10条のところで述べたように,新約款では held covered という言葉が削除されたので,これに併せての修正である。もちろん1982年約款の Underwriters が他の条文と同様,Insurers に変わっているが,この注意規定の内容自体は1982年約款と変っていない。
2009年協会貨物約款 ・ C
RISKS COVERED
担保危険
(第1条)
1.Risks
This insurance covers, except as excluded by the provisions of Clauses 4, 5, 6 and 7 below,
1.1 loss of or damage to the subject-matter insured reasonably attributable to
1.1.1 fire or explosion
1.1.2 vessel or craft being stranded grounded sunk or cap- sized
1.1.3 overturning or derailment of land conveyance
1.1.4 collision or contact of vessel craft or conveyance with any external object other than water
1.1.5 discharge of cargo at a port of distress
1.1.6 earthquake volcanic eruption or lightning(, C約款なし)
1.2 loss of or damage to the subject-matter insured caused by
1.2.1 general average sacrifice
1.2.2 jettison or washing overboard(C約款には or washing overboard なし)
1.2.3 entry of sea lake or river water into vessel craft hold conveyance container or place of storage,(C約款なし)
1.3 total loss of any package lost overboard or dropped whilst load- ing on to, or unloading from, vessel or craft.(C約款なし)
第1条 危険
この保険は,下記第4条,第5条,第6条および第7条の規定により除外された場合を除き,以下のものをてん補する。
1.1 以下の事由に原因を合理的に帰し得る保険の目的物の滅失または損傷
1.1.1 火災または爆発
1.1.2 船舶または艀の座礁,乗揚げ,沈没または転覆
1.1.3 陸上輸送用具の転覆または脱線
1.1.4 船舶,艀または輸送用具の,水以外の他物との衝突または接触
1.1.5 遭難港における貨物の荷卸し
1.1.6 地震,噴火または雷(C約款なし)
1.2 以下の事由によって生じる保険の目的物の滅失または損傷
1.2.1 共同海損犠牲
1.2.2 投荷または波ざらい(C約款には「または波ざらい」なし)
1.2.3 船舶,艀,船艙,輸送用具,コンテナまたは保管場所への海水,湖水または河川の水の浸入(C約款なし)
1.3 船舶もしくは艀への積込みまたはそれらからのxxxにおける水没または落下による梱包1個ごとの全損(C約款なし)
82年約款
1.Risks Clause
This insurance covers, except as provided in Clauses 4, 5, 6 and 7 below,
1.1 loss of or damage to the subject-matter insured reasonably
attributable to
1.1.1 fire or explosion
1.1.2 vessel or craft being stranded grounded sunk or capsized
1.1.3 overturning or derailment of land conveyance
1.1.4 collision or contact of vessel craft or conveyance with any external object other than water
1.1.5 discharge of cargo at a port of distress
1.1.6 earthquake volcanic eruption or lightning,(C約款なし)
1.2 loss of or damage to the subject-matter insured caused by
1.2.1 general average sacrifice
1.2.2 jettison or washing overboard( C 約 款 に は or washing overboard なし)
1.2.3 entry of sea lake or river water into vessel craft hold conveyance container or place of storage.(C約款なし)
1.3 total loss of any package lost overboard or dropped whilst loading on to, or unloading from, vessel or craft.(C約款なし)
第1条 危険条項
この保険は,下記第4条,第5条,第6条および第7条の規定により除外された場合を除き,以下のものをてん補する。
1.1 以下の事由に原因を合理的に帰し得る保険の目的物の滅失または損傷
1.1.1 火災または爆発
1.1.2 船舶または艀の座礁,乗揚げ,沈没または転覆
1.1.3 陸上輸送用具の転覆または脱線
1.1.4 船舶,艀または輸送用具の,水以外の他物との衝突または接触
1.1.5 遭難港における貨物の荷卸し
1.1.6 地震,噴火または雷(C約款なし)
1.2 以下の事由によって生じる保険の目的物の滅失または損傷
1.2.1 共同海損犠牲
1.2.2 投荷または波ざらい(C約款には「または波ざらい」なし)
1.2.3 船舶,艀,船艙,輸送用具,コンテナまたは保管場所への海水,湖水または河川の水の浸入(C約款なし)
1.3 船舶もしくは艀への積込みまたはそれらからのxxxにおける水没または落下による梱包1個ごとの全損(C約款なし)
⑴ 約款およびC約款において担保される危険についてみてみよう。
まず,これらの約款では,因果関係を示す言葉として reasonably attribut- able to という文言が使用されており,これは1982年約款と変わっていない。この言葉は,蓋然性を比較考量して(on the balance of probability),保険の目的物の損害原因を保険者の負担する危険に合理的に帰しうると判断できる程度の合理性を有していればよいということである。
両約款はまず,「火災および爆発」(fire or explosion)を挙げている。S.G. 保険証券の危険条項中には「火災」危険のみが規定されており,「爆発」の危険は具体的に列挙されておらず,また具体的列挙危険と同種の危険でもなく,したがって危険条項によっては爆発は保険者によって負担されないことが判例上
確定しているが34,1963年約款(W.A.)および同(F.P.A.)の第5条では,「火災および爆発に合理的に原因を帰し得る保険の目的物の滅失または損傷」を保険者に負担させているから,新約款と同じである。
(第4条)
4.In no case shall this insurance cover
4.1 loss damage or expense attributable to wilful misconduct of the Assured
4.2 ordinary leakage, ordinary loss in weight or volume, or ordinary wear and tear of the subject-matter insured
4.3 loss damage or expense caused by insufficiency or unsuitability of packing or preparation of the subject-matter insured to with- stand the ordinary incidents of the insured transit where such packing or preparation is carried out by the Assured or their employees or prior to the attachment of this insurance (for the purpose of these Clauses “packing” shall be deemed to include
stowage in a container and “employees” shall not include inde-
pendent contractors)
4.4 loss damage or expense caused by inherent vice or nature of the subject-matter insured
4.5 loss damage or expense caused by delay, even though the delay be caused by a risk insured against (except expenses payable under Clause 2 above)
4.6 loss damage or expense caused by insolvency or financial
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34 xx・前掲書 p.337。ただし,Xxxxx, op. cit. p.106 は,「火災によって生じた爆発は,危険条項中の『その他一切の危険』の含まれると考えられてきた」と述べている。
default of the owners managers charterers or operators of the vessel where, at the time of loading of the subject-matter insured on board the vessel, the Assured are aware, or in the ordinary course of business should be aware, that such insol- vency or financial default could prevent the normal prosecution of the voyage
This exclusion shall not apply where the contract of insurance has been assigned to the party claiming hereunder who has bought or agreed to buy the subject-matter insured in good faith under a binding contract
4.7 deliberate damage to or deliberate destruction of the subject- matter insured or any part thereof by the wrongful act of any person or persons(A約款なし)
4.8 loss damage or expense directly or indirectly caused by or aris- ing from the use of any weapon or device employing atomic or nuclear fission and/or fusion or other like reaction or radioac- tive force or matter.
第4条 この保険は,いかなる場合においても以下のものをてん補しない。
4.1 被保険者の故意の違法行為に原因を帰し得る滅失,損傷または費用
4.2 保険の目的物の通常の漏損,重量もしくは容積の通常の減少または自然の消耗
4.3 この保険の対象となる輸送に通常生じる出来事に堪えることができるはずの保険の目的物の梱包または準備が,不十分または不適切であることによって生じる滅失,損傷または費用。ただし,その梱包または準備が,被保険者もしくはその使用人によって行わ
れる場合またはこの保険の危険開始前に行われる場合に限る(本約款においては,「梱包」にはコンテナヘの積付けを含むものとし,「使用人」には独立した請負業者を含まない)。
4.4 保険の目的物の固有の瑕疵(かし)または性質によって生じる滅失,損傷または費用
4.5 遅延が担保危険によって生じた場合でも,遅延によって生じる滅失,損傷または費用(上記第2条によって支払われる費用を除く)
4.6 船舶の所有者,管理者,用船者または運航者の支払不能または金銭債務不履行によって生じる滅失,損傷または費用。ただし,保険の目的物を船舶に積込む時に,被保険者がそのような支払不能または金銭債務不履行が,その航海の通常の遂行を妨げることになり得ると知っているか,または通常の業務上当然知っているべきである場合に限る。
本免責規定はある拘束力のある契約に従って,善意で保険の目的物を購入した者もしくは購入することに同意した者に保険契約が譲渡され,その者が本保険により保険金を請求する場合には適用されない。
4.7 一切の人または人々の不法な行為による保険の目的物の全部または一部の故意の損傷または故意の破壊(A約款なし)
4.8 直接であると間接であるとを問わず,原子核の分裂および/もしくは融合もしくはその他類似の反応または放射能もしくは放射性物質を利用した兵器または装置の使用によって生じる,またはそれらの使用から生じる滅失,損傷または費用(A約款の4.7)
82年約款
4.General Exclusions Clause
In no case shall this insurance cover
4.1 loss damage or expense attributable to wilful misconduct of the Assured
4.2 ordinary leakage, ordinary loss in weight or volume, or ordi- xxxx wear and tear of the subject-matter insured
4.3 loss damage or expense caused by insufficiency or unsuit- ability of packing or preparation of the subject-matter insured (for the purpose of this Clause 4.3 “packing” shall be deemed to include stowage in a container or liftvan but only when such stowage is carried out prior to attachment of this insurance or by the Assured or their servants)
4.4 loss damage or expense caused by inherent vice or nature of the subject-matter insured
4.5 loss damage or expense proximately caused by delay, even though the delay be caused by a risk insured against (except expenses payable under Clause 2 above)
4.6 loss damage or expense arising from insolvency or financial default of the owners managers charterers or operators of the vessel
4.7 deliberate damage to or deliberate destruction of the sub- ject-matter insured or any part thereof by the wrongful act of any person or persons(A約款なし)
4.8 loss damage or expense arising from the use of any weapon of war employing atomic or nuclear fission and/or fusion or other like reaction or radioactive force or matter.(A約款の4.7)
第4条 一般免責条項
この保険は,いかなる場合においても以下のものをてん補しない。
4.1 被保険者の故意の違法行為に起因する滅失,損傷または費用
4.2 保険の目的物の通常の漏損,重量もしくは容積の通常の減少または自然の消耗
4.3 保険の目的物の梱包または準備の不十分または不適切に因る滅失,損傷または費用(この第4条第3項にいう「梱包」には,コンテナまたはリフトバンへの積付けを含むものとする。ただし,これらへの積付けが,この保険の危険開始前に行われる場合または被保険者もしくはその使用人によって行われる場合に限る。)
4.4 保険の目的物の固有の瑕疵または性質に因って生じる滅失,損傷または費用
4.5 遅延が被保険危険に因って生じる場合でも,遅延に近因して生じる滅失,損傷または費用(上記第2条によって支払われる費用を除く。)
4.6 船舶の所有者,管理者,用船者または運航者の支払不能または金銭債務不履行から生じる滅失,損傷または費用
4.7 一切の人または人々の不法な行為による保険の目的物の全部または一部の故意の損傷または故意の破壊(A約款なし)
4.8 原子核の分裂・融合その他類似の反応または放射能もしくは放射性物質を利用した兵器の使用に因って生じる滅失,損傷または費用(A約款の4.7)
⑴ 新約款Aについてなされた改訂は,すべて 約款およびC約款においても全く同じようになされているので, 約款およびC約款第4条の各項について
は,すでに述べたA約款第4条の関連箇所述べたところを参照されたい。
⑵ 約款およびC約款の4.7の「一切の人または人々の不法な行為による保険の目的物の全部または一部の故意の損傷または故意の破壊」を免責する規定は82年約款と変わっていない(この4.7の規定はA約款にはない)。
S.G. 保険証券では,危険条項において「船員の悪行」(barratry of the mas-
ter and mariners)が担保されているが,これは船主または用船者に損害を及ぼす船長または海員の故意に行う不正行為を意味するから35,貨物海上保険では,積荷被保険者が同時に船主または用船者である場合にのみこの危険は適用される。1963年の All Risks Clauses および1982年のA約款ではこの危険は担保されるが,保険者の担保する危険を列挙した 約款およびC約款の各第1条にこの危険は含まれていないから, 約款およびC約款では,「船員の悪行」は担保されないことになる。
一方,MIA 第55条第2項a号は,被保険者の故意の違法行為(wilful mis- conduct of the assured)に起因する一切の損害を免責しているが,それ以外の人による故意の違法行為を免責していない。これに対して,S.G. 保険証券では,ストライキへの加担者その他が故意に保険の目的物を破壊するいわゆる malicious damage については,欄外約款中のイタリック書体条項第2条「ストライキ等免責条項」(F.S.R. & C.C. Clause)によって免責されているから, 1963年約款(W.A.)および同(F.P.A.)では担保されないが,契約に協会ストライキ騒じょう暴動担保約款(Institute Strikes Riots and Civil Commotions Clauses)を挿入することによって担保してもらうことができた。しかし, 1982年の協会ストライキ約款はこのいわゆる malicious damage を担保していないため, 約款およびC約款においてこの危険を担保してもらうためには,以下の82年1月1日制定の Malicious Damage Clause(CL. 251)を挿入しな
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35 MIA 第1付則・保険証券の解釈規則第11条。
ければならなかった。
MALICIOUS DAMAGE CLAUSE
In consideration of an additional premium, it is hereby agreed that Clause
4.7 of the Institute Cargo Clauses is deemed to be deleted and further that this insurance covers loss of or damage to the subject-matter insured by mali- cious acts vandalism or sabotage, subject always to the other exclusions contained in this insurance.
2009年の 約款およびC約款も,1982年 ・C約款と同様この malicious damage を担保していないため, 約款およびC約款においてこの危険を担保してもらうためには,その旨の特約をしなければならないが,上記1982年の Malicious Damage Clause はその後改訂されていないため,この約款をそのまま特約することになる。
(第6条)
6.In no case shall this insurance cover loss damage or expense caused by
6.2 capture seizure arrest restraint or detainment, and the conse- quences thereof or any attempt thereat
第6条 この保険は,いかなる場合においても,以下の事由によって生じる滅失,損傷または費用をてん補しない。
6.2 捕獲,拿捕(だほ),拘束,抑止または抑留およびこれらの結果
またはこれらの一切の企図
82年約款
6.War Exclusion Clause
In no case shall this insurance cover loss damage or expense caused by
6.2 capture seizure arrest restraint or detainment, and the con- sequences thereof or any attempt thereat
第6条 戦争免責条項
この保険は,いかなる場合においても,以下の事由によって生じる滅失,損傷または費用をてん補しない。
6.2 捕獲,拿捕(だほ),拘束,抑止または抑留およびこれらの
結果またはこれらの一切の企図
⑴ 新約款A第6条と同様,War Exclusion Clause という見出しが削除されている。
⑵ 新約款A第6条2項では,海賊による捕獲,拿捕(だほ),拘束,抑止または抑留およびこれらの結果またはこれらの一切の企図は担保されるが, およびC約款の第6条2項では,海賊行為によるものを含めて捕獲,拿捕(だほ),拘束,抑止または抑留およびこれらの結果またはこれらの一切の企図は免責されている。
⑶ もちろん, およびC約款についても,2009年協会戦争約款(Institute War Clauses)を契約に挿入することによって,これらの危険を担保してもらうことができる。
(2009年9月15日)