Contract
大阪、平2不33、平4.10.9
命 令 書
申立人 総評全国一般労働組合大阪地方連合会大阪一般労働組合
被申立人 大阪ケミカル工業株式会社被申立人 株式会社ダイケミ
主 文
1 被申立人株式会社ダイケミは、xxx年9月22日の団体交渉において、申立人との間で合意した下記事項について、協定書の作成を拒否してはならない。
記
(1) 組合員に対するxxx年度賃上額を一律7,800円とし、同年4 月に遡って実施すること
(2) 組合員に対するxxx年xx一時金の額を、 組合員各人の基本給
×1.5378か月分+一律1,000円+α(会社一任額で一律500円)とし、同年
9月30日までに支給すること
2 被申立人株式会社ダイケミは、前記9月22日の団体交渉においての合意に基づいて、申立人組合員A1、同A2、同A3に対し、xxx年4月からそれぞれ7,800円の賃上げが実施されたものとして取り扱い、未払い分とこれに各支給日の翌日から支払うまでの間年率5分を乗じた額、及び同年xx一時金として、A1に対し金298,161円、A 2に対し金285,620円、A3 に対し金281,697円とこれにxxx年10月1日から支払うまでの間年率5分を乗じた額を支払わねばならない。
3 被申立人株式会社ダイケミは、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、1メートル×2メートル大の白色板に同文を明瞭に墨書して、被申立人会社玄関付近の従業員の見やすい場所に1週間掲示しなければならない。
記
総評全国一般労働組合大阪地方連合会大阪一般労働組合
執行委員長 A4 殿
平成 年 月 日
株式会社ダイケミ 代表取締役 B1
同 B2
当社が行った下記の行為は、大阪府地方労働委員会において、労働組合法
第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められましたので、今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
記
1 xxx年9月22日の貴組合との団体交渉において合意した事項について、協定書の作成を拒否したこと
2 貴組合とxxx年度賃上げ及び同年xx一時金について合意したにもかかわらず、貴組合大阪ケミカル工業分会員に対する支払をしなかったこと
3 xxx年7月4日、貴組合と交渉継続中であるにもかかわらず、貴組合を誹謗中傷する文書を社内に掲示したこと
4 被申立人大阪ケミカル工業株式会社に対する申立ては棄却する。
理 由
第1 認定した事実
1 当 事 者
(1) 被申立人大阪ケミカル工業株式会社( 以下「大阪ケミカル」という) は昭和39年に設立され、肩書地に本社を置き、サンダル・靴等の販売を営む会社であり、その従業員は本件審問終結時12名(うちパート6名) である。
(2) 被申立人株式会社ダイケミ( 以下「ダイケミ」という) は、肩書地に本社を置き、サンダル・靴等の製造を営む会社であり、その従業員は本件審問終結時30名(うちパート21名)である。
ダイケミは、昭和55年8月1日に大阪ケミカルが、その製造部門を切り離し、独立の法人として発足させたものであり、ダイケミ発足時の従業員は、大阪ケミカルの製造部門の従業員を従前の労働条件のままで移籍させたものであった。
なお、大阪ケミカルの代表取締役B 1( 以下「B 1社長」という)は、 B2( 以下「B2」という) とともにダイケミの代表取締役に就任している。
(3) 申立人総評全国一般労働組合大阪地方連合会大阪一般労働組合(以下
「組合」という) は、大阪府下の労働者で組織する労働組合であり、その組合員は、本件審問終結時約150名である。なおダイケミには、組合の下部組織として、ダイケミの従業員で組織する大阪ケミカル工業分会(以下「分会」という)があり、その分会員は本件審問終結時3名である。
2 従前の労使関係について
(1) 昭和56年4月、A1( 以下「A1」という) らダイケミの従業員5名は、組合に加入すると同時に分会を結成し、A1は分会長に就任した。
(2) 昭和56年6月22日、組合は、大阪ケミカル及びダイケミが組合からの団体交渉申入れに対し、権限のある者を出席させず、実質的に団体交渉
(以下「団交」という)を拒否しているとして、当委員会に救済申立てを行った。
58年12月9日、当委員会は大阪ケミカルとダイケミは代表取締役を共通にし、ダイケミの労働条件は大阪ケミカルが決定している等の認定に基づき、両社を事実上一体の企業と判断し、大阪ケミカルに対する①誠実団交応諾、②団交における合意事項の協定書作成拒否の禁止、大阪ケミカル及びダイケミに対するポスト・ノーティスを内容とする救済命令を発した。
当委員会の命令に対し、大阪ケミカル及びダイケミは再審査の申立てを行ったが、60年5月24日、中央労働委員会(以下「中労委」という) の関与で、①団交の当事者はダイケミと組合とし、合意事項については協定書を締結すること、②組合とダイケミの間で結ばれた協定事項についてダイケミが履行できない場合、大阪ケミカルがこれを保証すること、
③大阪ケミカルは、ダイケミが事業継続不能となった場合には従業員の雇用を保証すること等を内容とした和解が成立した。
(3) 中労委での和解以降、分会員の労働条件についてはダイケミと組合との間で団交が行われていた。通常組合の交渉委員は分会長のA1及び副分会長のA3(以下「A3」という)であり、ダイケミの出席者はB1 社長及びB2で、工場長のB3( 以下「B3」という) がこれに加わることもあった。団交の場所は、通常、大阪ケミカルの会議室を利用していた。
なお、組合からの団交申入書等の名宛人は「大阪ケミカル工業株式会社・株式会社ダイケミ 代表取締役 B1」となっていたが、それらの団交申入書等に対するダイケミから組合への文書の差出人はダイケミの B1社長となっていた。
(4) 昭和61年4月9日、組合とダイケミは団交を行い、①ダイケミは組合の基本的権利を認め、労働基準法等の関係法諸規則を守り、不当労働行為を行わないこと、②労働条件の変更は一方的に行わず、事前に協議すること、③前項について合意できないときは、大阪地労委にあっせん等を申請し解決すること、④組合事務所を貸与することの4項目について合意し、組合は執行委員長のA4(以下「A4委員長」という)、ダイケミはB2が署名押印した文書を作成した。なお、B2はB2個人の氏名を署名しているが、これにはダイケミの名称及び代表取締役の文言は付されていない。
3 xxx年度賃上げ及び同年xx一時金に係る団交の経過
(1) xxx年3月8日、組合は大阪ケミカル及びダイケミに対し、同年度の賃上げとして基本給の一律3万円引き上げ、退職金等未解決事項の解決等を内容とする要求書を提出した。これに対し、ダイケミは同年4月12日、団交において、同年度賃上げについて、組合員一人平均7,500円を回答したが、組合は平均ではなく一律とすること及び金額を増額することを要求した。
(2) xxx年4月25日、団交において、ダイケミは「賃上げについて、組
合員一律300円の上積みをする。これが最終回答であり、進展がないならこれで打ち切りたい」旨述べ、これに対し、組合は「増額を要求する」旨述べた。さらに同年5月8日、団交において、ダイケミは「大阪ケミカル、ダイケミともに赤字でこれ以上の増額はできない」旨述べ、組合が回答額の根拠となる資料の提出を要求したのに対し、ダイケミは提出の適否等について何ら検討することなく、単に「機密事項であるから」と述べ、一切の資料の提出を拒否した。
(3) xxx年5月9日、組合は当委員会に対し、同年度の賃上げ等についてのあっせん申請をしたが、ダイケミはこれを辞退した。
(4) xxx年6月7日、組合は大阪ケミカル及びダイケミに対し、xxx年のxx一時金として(基本給+皆勤手当+住宅手当) の3か月分+一律5万円、その他クーラー設備の完備、xx休暇、未解決事項の解決等を内容とした要求書を提出した。
(5) xxx年6月13日、団交において、組合はダイケミに対し、「分会の要求にそった回答をしてほしい」旨述べた。これに対し、ダイケミは「xx一時金の要求金額はいくらになるのか。賃上げについては7,800円で妥結しろ」旨述べ、団交を打ち切った。
(6) xxx年6月27日、団交において、組合は、ダイケミに対し「要求を引き延ばさないで解決してほしい」旨述べたのに対し、ダイケミは「賃上げについて妥結していないので、xx一時金について回答できない」、
「あほなこというな」と怒鳴るなどしたため、A1、A3はダイケミに抗議し、退席した。
(7) xxx年7月4日、ダイケミは同月1日付の「抗議書及び団体交渉申し入れ書」と題する文書(以下「会社文書」という)を、組合に提示するとともに、会社内の廊下や自転車置き場に張り出した。その文書には、
「6月27日、団交において、A1はダイケミ側の質問に答えず突然立ち上がって、『こんな団交はでけへん』と大声でどなって椅子を蹴って退席した。同月13日の団交においても、A1は椅子を蹴って、一方的に団交を打ち切って退場した。今後このような行為を行わないよう申し入れる」旨記載がされていた。
同日、午後6 時半過ぎからの団交において、組合は会社文書の記載中、組合側が一方的に団交を打ち切って退席した等の点が事実と異なるとして、会社に抗議した。
(8) xxx年7月10日、団交において、ダイケミは組合に対し、「xx一時金の回答をするための方法についてはっきりしてほしい」旨申し入れた。それに対し、A 4委員長は同年xx一時金について、「組合が月数で要求しているが、会社は金額で答えても良い。同時に組合が月数でいくらになるか聞くから、それに答えてくれれば良い」旨述べた。
なお、xxx年度の賃上げ交渉前の組合員の基本給はA1 185,113円、 A2( 以下「A2」という) 176,958円、A3 174,407円であった。
(9) その後、xxx年7月12日以降、10回余りの団交を重ね、同年9月22日、団交において、同年度賃上げについては、B1社長は先に回答していた7,800円とする案をあらためて組合に回答し、A4 委員長は「賃上げの7,800円は従来のように3人( 組合員) とも、7,800円出して下さい」と述べた。それに対して、B1社長は「従来は、いくらかの考課があったのではないか」、B 2 は「僕は平均やと思っていた」と述べたが、結局 B1社長は「今まで通りの方法、過去の実績でするということでよい」と述べた。A1が「組合結成当初は差があったが、その後是正されて最近はずっと一律である」と説明し、B2も去年については一律であったことを認めた。A1の説明を受け、A4委員長が「そうして下さい」と述べると、B1社長は「はい」と答えた。
同年xx一時金については、ダイケミは同日までに組合に対し、組合員平均287,000円+一律1,000円+一律α( 会社一任) の回答額を提示しており、A 4委員長は「会社回答のうちの287,000円を月数に直せば組合員各人の基本給の1.537835か月分となるが、1.5378か月分で良い。これに一律分を加え、基本給の1.5378か月分+ 一律1,000円+一律α( 会社一任)で良い」と述べ、それに対し、B1社長は「これで妥結と」と述べた。
その後、ダイケミは、本件審理に至ってはじめてα 分が500円であることを明らかにした。
(10) 協定書の作成については、ダイケミが月曜日( xxx年9月25日)に作成する旨組合に申し入れ、組合もこれを了承した。組合は会社に対し、賃上げは4月に遡って実施し、支給日については可及的速やかに行うこと及び「組合員を非組合員と差別しないようにする」とのxxを協定書に入れるよう要求し、B1社長はそれぞれ、「月末までに致します」、「はい」と述べて、午後7時50分に団交を終えた。
(11) xxx年9月25日午後6時過ぎ、ダイケミの社長室において、ダイケミは、A1とA3にダイケミ作成の同月22日付の下記内容の協定書案を提示した。
記
1.xxx年度賃上げについて
(1) 賃上は組合員一人平均7,800円( 一人平均7,500円+一律300円)とする。
(2) 賃上は4月給与に遡及して行う。
(3) 支給日はxxx年9月30日とする。
2.xxx年度夏期賞与について
(1) 夏期賞与は組合員一人平均288,000円(一人平均287,000円+一人平均1,000円) +α( 会社一任額) とする。
(2) 支給対象者は算定期間勤務し、支給日在籍する者に限る
(3) 支給日はxxx年9月30日とする。
この協定書案に対し、組合は、①賃上げについて、「一人平均」となっていて一律となっていない、②xx一時金については、「夏期賞与」と表記されており、また、その額は「一人平均」となっていて、組合とダイケミとの間で妥結した月数での表記がない、③「非組合員との間で差別しない」とのxxが書かれておらず、「支給対象者は算定期間勤務し、支給日在籍する者に限る」とのxxが加えられているとして抗議し、同年
9月22日の団交での合意どおり同年度賃上げ及び同年xx一時金を支払うようダイケミに申し入れた。
B1社長は「協定書に判をつかなかったら支給はしない」、「妥結しない者には支払わない」旨述べ、支払を拒否した。
(12) xxx年9月26日、ダイケミは新たな協定書案を作成して組合に提示した。その中で、「夏期賞与」の後に「( 一時金)が加えられ、「+ α( 会社一任額)」が「+α 一律( 会社一任額)」と変更されていたが、同年度賃上げについて「平均一律7,800円とする」という表現になっていたこと、同年xx一時金は「一人平均」となっており組合とダイケミの間で妥結した月数での表記がされていなかったことなどから、組合はダイケミに抗議した。
(13) xxx年9月27日、組合はB2よりダイケミ作成の協定書案について返却するよう求められたのでこれをダイケミに返却するとともに、同日付で①賃上げについては、一律7,800円とすること、② xx一時金については、基本給×1.5378か月分+一律1,000円+αとすることを主な内容とする協定書案をダイケミに示し、これで締結するよう求めたが、ダイケミはこれを拒否した。
(14) xxx年9月28日、ダイケミは同日付の「申し入れ書」と題する文書を組合に提示した。
同文書には、「① xxx年9月22日の団体交渉で、労使は賃上げ及びxx一時金について妥結した。②組合が提示した協定書には、交渉の中で合意した内容と反するものがあって会社は締結できない。9月30日までに協定できない場合は、賃上げ及びxx一時金は支給できない」旨の記載がなされていた。
(15) xxx年9月29日、組合はダイケミに対し、前記(14)記載のダイケミの「申し入れ書」について抗議文を提出するとともに、同月22日の団交での確認のとおり、組合作成の同月27日付の協定書案で協定し、早急に同年度賃上げ及び同年xx一時金を支給するよう申し入れたが、翌30日ダイケミは、これを拒否した。その後も、ダイケミは組合員に対し、同年度賃上げ及び同年xx一時金を支給していない。
4 申立人の請求する救済内容
申立人の請求する救済内容の要旨は、次のとおりである。
(1) ダイケミは、協定書の作成を拒否しないこと。
(2) ダイケミは、申立人組合員3名に対し、xxx年4月に遡っての賃上
げの実施及び同年xx一時金の支払を行うこと。
(3) 大阪ケミカルによるダイケミの債務の保証。
(4) 大阪ケミカル及びダイケミによる、組合を誹謗した文書の掲示及び上記(1)、(2)に係るxxxの掲示及び手交。
第2 判 断
1 xxx年度賃上げ及び同年xx一時金について
(1) 当事者の主張要旨
ア 組合は次のとおり主張する。
xxx年9月22日、ダイケミと組合は団交において、同年度賃上げについて一律7,800円、同年xx一時金については組合員各人の基本給×1.5378か月+一律1,000円+一律αとすることで合意したにもかかわらず、ダイケミが、合意内容に反するとして、協定書の締結を拒否し、組合員に対し同年度賃上げ及び同年xx一時金の支払いを行わないのは、不当労働行為である。
x xxxxは次のとおり主張する。
xxx年7月10日の団交において、同年xx一時金は支給額で示すことで合意し、それに基づき同年9月22日の団交において、ダイケミは、組合員平均288,500円( 会社一任額α 500円を含む)を提案し、組合もそれに合意したのであり、組合員各人一律の意味ではない。また、組合の計算方法とダイケミの計算方法とでは、支給額に差が生じて金額が一致しないので協定書が作成できず、協定書ができていない以上組合員各自に具体的一時金請求権は発生しないのであるから、同年度賃上げ及び同年xx一時金の不払は不当労働行為にあたらない。よって、以下判断する。
(2) 不当労働行為の成否
ア xxx年度の賃上げについては、前記第1 .3(9)認定のとおり、ダイケミのB1社長は組合員一律を主張する組合に対し、団交当初こそ
「従来いくらか考課があっかのではないか」と述べていたが、結局は
「過去の実績で良い」と述べ、組合が「最近はずっと一律であり、そうしてください」と述べると、B1社長は「はい」と答え、特に異議を述べていない。以上から同年度賃上げについては、組合員一律7,800円で合意があったものと認めるのが相当である。
また、同年xx一時金については、前記第1. 3(9)認定のとおり、組合がダイケミの回答額を月数換算してダイケミに示したところ、B
1社長は「これで妥結と」と述べ、特に異議を述べていないことから、組合主張の月数で合意したもの、すなわち、同年xx一時金については、「組合員各人の基本給の1.5378か月分+ 一律1,000円+一律α」で合意したものと認めるのが相当である。
よって、月数ではなく金額で、組合員平均288,500円で合意したとするダイケミの主張は失当である。
なお、前記第1. 3(10)及び(11)認定によれば、支給については、少なくともxxx年9月30日までに行うものとする合意があったものと認められる。
イ 次に、ダイケミは、xxx年xx一時金について、ダイケミの計算と組合の計算では、組合員平均及び組合員各人の金額が一致しないの で、協定書が作成できない旨主張するが、同年xx一時金が、「組合 員各人の基本給×1.5378か月分+一律1,000円+一律α 」で合意された ことは前記ア判断のとおりであるので、ダイケミの主張は失当である。 ウ また、前記ア判断のとおりの合意があるにもかかわらず、前記第1.
3(10)ないし(13)及び(15)認定によれば、①合意の成立後、協定書の作成をまかされたダイケミが合意内容と異なる協定書案を作成したため、組合がこれに調印せず、その後、組合が合意内容に沿って、その書面化を求めたところ、ダイケミはこれを拒否したこと、②ダイケミは、協定書が締結されていないことを理由に組合員に対して、xxx年度賃上げ及び同年xx一時金を支給していないことが認められる。さらに、前記第1. 3(2)認定によれば、xxx年4月25日の団交において、組合が回答額の根拠となる資料の提出を要求したのに対し、ダイケミは提出の適否等について何ら検討することなく、単に「機密事項であるから」と述べ、一切の資料の提出を拒否したことが認められ、また、後記2(2)判断のとおり組合を誹謗中傷した文書を掲示するなどしていることからすれば、ダイケミの組合嫌悪は明らかである。
以上、要するに、合意した事項について、書面化を拒否したダイケミの態度は、労働協約の締結を目的とした団交の意義を失わしめ、正当な理由なく団交を拒否することに相当するもので、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である、また、組合員に対して賃上げ及びxx一時金を支払わなかったダイケミの行為は、組合員をことさら不利益に取り扱い、もって組合の弱体化を企図したものであって、労働組合法第7条第1 号及び第3 号に該当する不当労働行為である。
エ なお、ダイケミは、協定書ができていない以上、組合員各自に具体的一時金請求権は発生せず、xxx年度賃上げ及び同年xx一時金の不払いは不当労働行為にはあたらないと主張するが、前記ウ判断のとおり、ダイケミは、合意があるにもかかわらず書面化を拒否していると認められるのであるから、ダイケミが、協定書を締結するという自らの義務を履行しないでおきながら、その不履行の結果である協定書の未締結を理由に、同年度賃上げ及び同年xx一時金の支払いを拒否することは許されない。
2 xxx年7月1日付のダイケミ掲示の文書について
(1) 当事者の主張要旨
ア 組合は次のとおり主張する。
xxx年7月4日、ダイケミは同月1日付の会社文書を組合に提示
するとともに、会社内の廊下や自転車置き場に張り出した。
会社文書に書かれた同年6月13日及び同月27日の団交の模様は事実に反しており、ダイケミの行為は組合の運営に介入する不当労働行為である。
x xxxxは次のとおり主張する。
xxx年6月13日及び同月27日の団交の模様は、ダイケミ作成の同年7月1日付の会社文書のとおりである。
よって、以下判断する。
(2) 不当労働行為の成否
前記第1.3(5)及び(6)認定のとおり、①xxx年6月13日の団交において、A1が椅子を蹴り一方的に団交を打ち切ったとの事実は認められないこと、②同月27日の団交において組合側は団交の席から退場しているが、それは団交におけるダイケミ側の発言に抗議してなされたものと認められる。以上のとおり、会社文書に記載された内容は事実に反しており、ダイケミの主張は失当である。
しかも、前記第1.3(7)認定によれば、ダイケミは、会社文書を単に組合に提示するのみでなく、会社内の廊下や自転車置き場に掲示したことが認められる、これらからすれば、ダイケミが事実に反する内容の文書を掲示したのは、あたかも組合が団交において理不尽な要求をし、誠実に団交を行わず、本件一時金問題の解決を遅らせているような印象を与えることにより、非組合員の組合に対する評価を落とさせ、ひいてはその弱体化を企図したものであって、かかるダイケミの行為は労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
3 大阪ケミカルの行為について
(1) 当事者の主張要旨
ア 組合は次のとおり主張する。
ダイケミは、昭和55年8月1日大阪ケミカルの製造部門を形式上分離して設立されたものであり、両社は同地番、同建物内にあり、B1社長が両社の代表取締役を兼務して実権を握っている。大阪ケミカルとダイケミは事実上同一の企業であり、大阪ケミカルは、ダイケミの組合員3名の実質的な使用者である。
よって、ダイケミが不当労働行為を行った場合には、大阪ケミカルもその責めを負うべきである。また、昭和60年5月24日付協定書によれば、ダイケミの組合に対するxxx年度賃上げ及び同年xx一時金の支払の保証をしなければならないのに、大阪ケミカルはこれをしていない。
以上の大阪ケミカルの行為は労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為である。
イ 大阪ケミカルは次のとおり主張する。
大阪ケミカルとダイケミは別会社であり、この点は再審査申立事件
で認められている。
よって以下判断する。
(2) 当委員会の判断
ア 前記第1.1(2)及び2(3)認定のとおり、①ダイケミは大阪ケミカルの製造部門が独立して設立された会社であること、②ダイケミ発足時の従業員は、大阪ケミカルの従業員を従前の労働条件のままで移籍させたものであったこと、③ダイケミのB1社長は、大阪ケミカルの社長も兼ねていること、④大阪ケミカルとダイケミは同一の所在地にあり、通常ダイケミと組合との団交場所は大阪ケミカルの会議室を使用していたことが認められる。
また、前記第1.3(2)認定のとおり、xxx年度賃上げにかかる団交において、ダイケミは組合に対し、ダイケミとともに大阪ケミカルが赤字であるので、既に回答した額以上の増額はできない旨述べていることから、大阪ケミカルの経営状況がダイケミの従業員である組合員3名の賃上げを実施するに当たって、重大な影響力をもつものと認められる。
しかしながら、前記第1. 2(2)認定のとおり、昭和60年5月24日、組合と大阪ケミカル及びダイケミとの間で締結された和解の際の協定書によれば、団交当事者はダイケミと組合とし、合意の整った事項について両者で協定書を締結するものとされ、大阪ケミカルは、その協定事項をダイケミが履行できない場合に、履行を保証する義務を負うに過ぎないものとされている。したがって、本件において大阪ケミカルは、協定書の作成についてまで責任を負っているとはいえず、この点に関する組合の申立ては棄却せざるを得ない。
イ 次に大阪ケミカルがダイケミの債務を保証していないとの組合の主張について検討するに、前記ア記載の協定書によれば、大阪ケミカルは、ダイケミがその協定事項について履行できない場合にのみこれを保証しなければならないものであるが、xxx年度賃上げ及び同年xx一時金の支払いについてダイケミが履行不能の状態に陥っていると認めるに足る疎明はないので、この点に関する組合の申立ては棄却せざるを得ない。
ウ 会社文書については、その内容が組合とダイケミとの団交のやりとりに関するものであり、しかも、ダイケミのB1社長名で出されていることからすれば、これを大阪ケミカルの不当労働行為とみることはできず、この点に関する組合の申立ては棄却せざるを得ない。
4 救済方法
前記第1 .3 (8)及び(9)認定並びに1(2)ア判断によれば、①xxx年xx一時金については「組合員各人の基本給の1.5378か月分+ 一律1,000円+一律α」で合意していること、②同年xx一時金の算定対象となる基本給は同年度賃上げ前の基本給に同年度賃上額7,800円を加え、A1 192,913円
( 185, 113 円+ 7 , 800 円)、A 2 184,758円( 176, 958 円+ 7 , 800 円)、A
3 182,207円( 174,407円+ 7,800円)となること、③ダイケミは審問において、α分は500円であることを明らかにしていることが認められる。
以上からダイケミが支給すべき同年xx一時金は、A1298,161円、A
2 285,620円、A3 281,697円となるので、主文2のとおり命令するのが相当である。
以上の事実認定及び判断に基づき、当委員会は、労働組合法第27条及び労働委員会規則第43条により、主文のとおり命令する。
平成4年10月9日
大阪府地方労働委員会会長 xxxx ㊞