Contract
2022 年 3 月 31 日
各 位 株式会社 三十三銀行
三昌物産株式会社との「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約締結について
株式会社三十三銀行(頭取:xx xx)は、持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、三昌物産株式会社(社長:xx xx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたのでお知らせいたします。
本件の取り組みにあたっては、株式会社三十三総研(社長:xx xx)がインパクト分析・特定のうえ評価書を作成し、株式会社日本格付研究所がポジティブ・インパクト金融原則との適合性を確認しました。今後も「三十三フィナンシャルグループSDGs宣言」のもと、企業活動を通じてSDGsの達成に貢献することで、持続可能な社会の実現に努めてまいります。
(※) 企業活動が「社会・経済・環境」のいずれかに与えるインパクトを包括的に分析・特定し、ポジティブインパクトが期待できる活動と、ネガティブインパクトを低減する活動を支援するもので、借入人様によるSDGs達成への貢献度合いを評価指標とし、借入人様から情報開示を受けながら当行がその過程を定期的にモニタリングするものです。
1. 融資概要
(1) | 契約日 | 2022年3月31日 |
(2) | 融資金額 | 310百万円 |
(3) | 期間 | 5年 |
(4) | 資金使途 | 運転資金 |
2. 借入人概要
(1) 企業名 三昌物産株式会社
(2) 所在地 xxxxxxxxx000xx
(3) 事業内容 食品製造業
1948年創業、鶏肉および加工品、鶏卵を主力商品とする「食の総合カンパニー」として、東海地方を中心に幅広く販路を拡大している食品製造会社。同社は運送業を営む三昌運輸倉庫株式会社および鶏卵・液卵・鶏卵加工品製造業を営む三昌鶏卵株式会社をグループ会社にもつほか、様々なセクションに複数の関連会社をもち、商品の製造から物流まで一貫したサービスの提供を可能にする強みを持つ。
伊勢名物 鶏めしの素
(4) 従業員数 グループ 250名 (2021年3月末)
(5) 資本金 8,000万円
(6) 売上高 グループ 152億円(2021年3月期)
3. 特定インパクトと測定するKPI
(1) 経済面 経済収束(ポジティブ)
・コーチンミライズ株式会社におけるクラウドファンディングの取り組みを2027年3月末までに5回以上実施する
(現状:2021年に初めて1回実施し、目標金額400,000円に対し、539,000円の支援総額)
(2) 社会面 教育(ポジティブ)
・地元である三重大学生物資源学部へ返還を要しない奨学金制度「xxxx奨学金」を継続していく(年間2名)
雇用(ポジティブ)
・2027年3月末までに女性従業員比率70%以上を達成。
・2027年3月末までに高齢従業員比率20%以上を達成。
(2021年:女性従業員比率63%、高齢従業員比率14%)
xx・xx(ネガティブ)
・パックセンターで取得しているFSSC22000の認証を継続し維持していく。
(3) 環境面 資源効率・安全性・廃棄物(ネガティブ)
・真空パック包装機の導入により、2027年3月末までに月間平均80万パック(トレー)の使用から月間平均70万パック(トレー)の使用に削減する。
気候(ネガティブ)
・2027年3月末までにxxx発電による発電量を年間1,50 0,000kWh以上とする。(2021年:1,200,000kWh)
4. お問い合わせ先
(1) 三十三銀行
担当部署
担当者連絡先
ソリューション営業部
xx・xx 059-354-7125
営業企画部
xx・xx 059-354-7120
(2) 三十三総研
担当部署
担当者連絡先
調査部
xx
059-354-7102
コンサルティング部
xx
059-351-7417
以 上
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2022 年 3 月 31 日 株式会社三十三総研
三十三総研は、三十三銀行が、三昌物産株式会社に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するにあたって、三昌物産株式会社の活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価にあたっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」及びESGハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブ・インパクト・ファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則ったうえで、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
目次
1.評価対象の概要 2
2.三昌物産株式会社の概要 2
2-1.基本情報
2-2.事業内容
2-3.経営方針 事業活動
3.UNEP FI インパクトレーダーとの関連性 18
3-1.経済面のインパクト
3-2.社会面のインパクト
3-3・環境面のインパクト
4.測定するKPIと SDGsとの関連性 23
4-1.経済面(ポジティブ)
4-2.社会面(ポジティブ)
4-3.社会面(ネガティブ)
4-4.環境面(ネガティブ)
4-5.その他 KPI を設定しないインパクトについて SDGsとの関連性
5.サスティナビリティ管理体制 30
6.モニタリング 30
7.総合評価 30
1.評価対象の概要
企業名 | 三昌物産株式会社 |
借入金額 | 310,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
契約日及び返済期限 | 2022 年 3 月 31 日 ~ 2027 年 3 月 25 日 |
2.三昌物産株式会社の概要
2-1.基本情報
本社所在地 | xxxxxxxxx 000 xx |
従業員数 | グループ 250 名(2021 年 3 月末) |
資本金 | 80 百万円 |
業種 | 食品製造業 |
沿革 | 1948 年 12 月 創業者のxxxxxが魚油の集荷を開始 1950 年 12 月 三昌物産有限会社設立 1955 年 10 月 三昌物産株式会社に組織変更 1958 年 3 月 xx出張所を開設 1959 年 2 月 xx漁業株式会社(現・株式会社マルハニチロ食品)配合飼料の三重xx売代理店となる 1963 年 11 月 ブロイラー処理場開設 1966 年 9 月 フィッシュミールの製造開始 1968 年 5 月 運輸部を設立、運送事業開始 1969 年 10 月 本社社屋完成、現在地に移転 1970 年 6 月 運輸部を独立、三昌産業株式会社に移す 1973 年 1 月 鶏卵の集荷販売を開始 1974 年 4 月 チキン加工部の製造開始 鶏卵GPセンターを設立 1982 年 6 月 鶏卵部門を農事組合法人中部農興に移す 1986 年 2 月 冷凍食品加工の製造開始 1988 年 9 月 食品第二工場を新設 冷凍食品加工を移転 1988 年 12 月 本社新社屋完成 1991 年 3 月 スモーク工場を新設 1992 年 12 月 新食品第二工場完成 1995 年 7 月 新食品工場完成 鶏肉パックセンター完成 |
1996 年 7 月 第三工場(スモーク工場)を移転稼働 1998 年 7 月 新食品第三工場を移転稼働 2002 年 11 月 ISO9001 認証取得 2004 年 10 月 創業者xxxxxが、国立三重大学に奨学金基金を寄付、これを基に生物資源学部学生のためのxxxx基金を開設 2009 年 10 月 設立 60 周年を記念し、地元自治体に寄付金交付 2010 年 5 月 鶏ささみくんせい・燻製名人等モンドセレクション受賞 ※4 年連続で受賞(平成 22~25 年) 2013 年 1 月 FSSC22000、ISO22000・2005 畜産加工事業部パックセンターで認証取得 2013 年 4 月 「伊勢赤鶏の燻製」が三重県よりみえセレクションに選定 2014 年 7 月 売電事業開始 2016 年 11 月 FC店舗「大分唐揚げ専門店とりあん」を日永カヨー内にオープン 2017 年 9 月 誠興物産株式会社と資本業務提携 2017 年 11 月 有限会社xx飼料と資本業務提携 2018 年 1 月 東京日本橋 誠興物産内に東京オフィス開設 2018 年 3 月 FC店舗「浅草グリルバーグ」をイオンモール鈴鹿内にオープン 2018 年 4 月 新潟市株式会社xx商会内に、新潟支店開設同社飼料販売部門を譲受 2018 年 5 月 ササミスティックがイオントップバリュ商品として全国販売開始 2018 年 7 月 食品第 2 工場加工設備を大規模更新 2019 年 1 月 中部経済新聞において、同社 70 年史「信なくば立たず」連載開始 2020 年 2 月 香川県の株式会社ファインフーズと資本業務提携 2020 年 7 月 xx市南濃町にコーチンミライズ株式会社設立 2020 年 9 月 FC店舗「大分唐揚げ専門店とりあん」xx街道店オープン 2020 年 10 月 三昌物産株式会社工場直売所「サンショウ・マルシェ」オープン 2021 年 6 月 きららのさと有限会社と資本業務提携 |
2-2.事業内容
三昌物産株式会社(以下、三昌物産)は 1948 年に三重県で創業し、現在では鶏肉および加工品、鶏卵を主力商品とする「食の総合カンパニー」として、東海地方を中心に幅広く販路を拡大している地元トップクラスの食品製造会社である。
主力である鶏肉および加工品の製造に加え、創業当時から続く油肥糧の製造および飼料の製造も行っており、創業 70 年以上におよぶ長い歴史のなかで培ってきた「三昌プライド」を胸に、地域に愛され社員に信頼される会社づくりをめざしている。
同社は、運送業を営む三昌運輸倉庫株式会社および鶏卵・液卵・鶏卵加工品製造業を営む三昌鶏卵株式会社をグループ会社にもつほか、様々なセクションに複数の関連会社をもち、商品の製造から物流まで一貫したサービスの提供を可能にする強みをもつ。
油肥糧部
【事業ミッション】
・ひとりひとりが成長し続け、やりがいを感じることで生まれる力を結集した、魚油をはじめとする養魚飼料原料を提供する
【業務内容】
養殖魚用魚油生成加工
余剰資源再生事業の企画・製造・販売のプロデュース
【施設】
<自社工場>
・スケトウダラの肝油を原料とした養殖用油脂「サンオイル」ブランドの製造
飼料部
【事業ミッション】
・地域に欠かせない畜産のリーディング企業として、増量、増客を達成し、成果の上がるチームを作る
【業務内容】
畜産飼料の販売、配送
【施設】
<松阪配送センター>
・主に松阪牛の肥育農家の方々へ配合飼料や牧草類、畜産環境資材を提供
<新潟支店>
・主に新潟県や上越地域の畜産農家様に向けて、豚・鶏・牛の配合飼料などを供給
畜産部
【事業ミッション】
日本一のプロセスセンターとなり雇用の拡大と社会課題を解決する
【業務内容】
鶏肉製品の加工
【施設】
<パックセンター> ※FSSC22000、ISO22000 認証取得
・東海地区最大級の規模を誇り、1 日に約 3 万パックを製造
・アレルギー物質を含む原材料への対応のため、1・2 階の階層分けを行っている
《設備》
名称 | 能力 | 名称 | 能力 |
高速包装値付ライン | 1500P/h ×3 本 | マルチスライサー | 200 ㎏/h |
中速包装値付ライン | 700P/h ×2 本 | ミートチョッパー | 300 ㎏/h |
低温高速ミスト解凍 システム | 8 トン/日 | ニーダー (ミキサー) | 200 ㎏/回 |
陽圧空調設備 | 2 式 | エアー充填機 | 800 ㎏/h |
食品部
【事業ミッション】
『ひとのやらんことをやる』チキン加工品を中心とした独自性の高い商品・サービスの構築
【業務内容】
加工食品の製造
【施設】
<第二工場> ※ISO9001 認証取得
・鶏肉が原料となる唐揚げや肉団子を製造し、大手量販店などに惣菜商品として出荷
・唐揚げは 1 日に約 2 トン、主力商品「ローストレッグ」はクリスマスシーズンには 1 日に約 2万本を生産
《設備》
名称 | 能力 | 名称 | 能力 |
解凍機 | 500 ㎏/h ×2 基 | ジェットオーブン | 300 ㎏/h |
真空タンブラー | 500 ㎏/h ×2 基 | トンネルフリーザー | 350 ㎏/h |
団子成型機 | 500 ㎏/h | 真空包装機 | 一式 |
トンネルスチーマー | 500 ㎏/h | 金属探知機 | 一式 |
MPOオーブン | 350 ㎏/h |
<第三工場> ※ISO9001 認証取得
・当社人気商品「伊勢名物鶏飯の素」のほか、百貨店向けのギフト商品や大手量販店のプライベートブランド商品を製造
・ISO9001 認証取得
《設備》
名称 | 能力 | 名称 | 能力 |
レトルト殺菌機 | 2,000 ㎏/日 | 斜軸ニーダージャケット付き | 300 ㎏/回×2 基 |
スモークハウス | 4,000 ㎏/日 | 自動計量器 | 一式 |
真空タンブラー | 100 ㎏/回 | X線探知機 | 一式 |
ロータリー真空包装機 | 1,000 袋/h | 金属探知機 | 一式 |
<三昌物産グループの構成>
<グループ会社>
企業名 | 主な事業内容 | 所在地 |
三昌運輸倉庫(株) | 運送業 | xxxxxxxxxx |
xx鶏卵(株) | 鶏卵・液卵・鶏卵加工品製 造販売 | 三重県四日市市xxx町 |
<関連会社>
企業名 | 主な事業内容 | 所在地 |
招福亭(株) | 食品小売 | 近鉄百貨店四日市店 他 4 店舗 |
三昌エコロジー(株) | 飼料製造 | 三重県四日市市xx |
x興物産(株) | 飼料添加物製造・販売 化粧品原料等販売 | xxx中央区日本橋本町 |
(有)xx飼料 | 畜産飼料販売 | 新潟県xxx市下羽津 |
(株)ファインフーズ | 食肉・食肉加工品販売 | 香川県xx郡三木町 |
コーチンミライズ(株) | 名古屋コーチン飼育・加工 | 岐阜県xx市南濃町 |
きららのさと(有) | 鶏卵生産・販売 | 三重県四日市市桜町 |
2-3.経営方針 事業活動
【企業理念】
『「三昌プライド」を胸に、地域社会に愛され社員に信頼される会社作りを』
三昌物産は、企業理念として、「地域社会に愛され社員に信頼される会社」と掲げている。 同社は、1948 年創業者であるxxxxxが、戦後間もない頃に魚油の集荷からスタートし、
魚油の納入先から提案を受け配合飼料の販売を開始するなど、常にお客様のニーズに応えるかたちで事業を展開してきた。「創業 70 年以上におよぶ長い歴史のなかで培ってきた企業ブランド力を誇りに真心を尽くす」との思いを“三昌プライド”という言葉に込め、安心、安全、xxに生産者に寄り添いながら、三昌物産にしかできないサービスの提供を通じ、様々な地域の畜産業界の発展に寄与することを目指している。
【経営理念】
同社は、「食」を通じて生産者支援や食文化を創造するとともに、自然環境との調和を図り、総合的な食品事業を展開している。
xxxx社長は、従来の企業フレームにとらわれず、各セクションを有機的に結び、社内各部署、関連会社を含め、それぞれの役割を明確にしながら、すべての機構がひとつの目標に向けて機能するシステムの形成を進めている。また、食に関わる様々な事業の拡大を通して、そこで働く個人の成長も志しており、ストーリーある事業展開への挑戦に意欲を燃やしている。
【行動指針】
一、商品・サービスづくり
①常に業界や地域に先駆けることを心掛け、変化する顧客ニーズに 300%対応する
②安全な素材と原料の供給
③安心な商品・サービスの提供
④xxな姿勢と心構え二、人づくり
①スピードを重視し、xxを絞った丁寧な仕事を心掛ける
②リーダーシップを志し、責任感を持って成し遂げる
③当事者意識を持ち、様々な人や物事に関心を寄せる
④常に目的意識を持って、自らを成長させる三、チームづくり
①イノベーションを生み出す活発なコミュニケーションの場をつくる
②部門横断的なシナジー効果を追求する
③次々と新しいことにチャレンジできる風土をつくる
④他部署、他部門に対する相互理解を深める
【海外研修生の受け入れによる国際的な人材の供給】
同社では企業としての国際貢献を目的として、開発途上国から外国人研修生の積極的な受け入れを行っている。同社で勤務し、研修期間を終えた研修生は習得した知識を活かして出身国の産業発展に寄与している。
【地域・社会・顧客の発展によるおもてなし経営の実践】
三重県では、県内の中手企業・中規模企業のうち、社員の意欲と能力を最大限に引き出し、地域・社会とのxxx大切にしながら、顧客にとって高付加価値で差別化された製品やサービスを提供している企業を「三重のおもてなし経営企業」として 2014 年度から表彰している。同社の従業員、地域・社会、顧客の三者を大切にした事業活動が認められ、2021 年度には同社が
「三重のおもてなし経営企業選」として表彰されている。
【コロナ禍における地域経済の支援】
新型コロナによる消費の落ち込みをカバーするため、従業員に一時金を支給(正社員 3 万
円、パート・アルバイト 2 万円で総額 280 万円)し、地域経済活動を下支えするための取り組みを行っている。
また、コロナ禍で苦しむ家計を食の側面からサポートするために、コロナ対策子供応援弁当
を低額(300 円)で販売した。
【飼料供給を通じて水産・畜産業の発展に貢献】
(1)魚油の精製加工・販売による養殖業の発展への支援
同社のルーツでもある魚油について、自社工場で精製加工し、主に養殖業用飼料の原料として四国、九州や海外へ出荷している。スケソウダラの油を原料とした水産用油脂「サンオイル」のブランドが業界内でも広く認知されており、魚の健康を守るオイルとして養殖業者で広く用いられている。ブリ、ハマチ、タイやうなぎなど安全で美味しい食材提供の一旦を担っており、魚大国である日本の食文化を支え続けている。
(2)様々な飼料提供を通じた畜産業の発展への支援
三重県下最大の飼料特約店として、鶏・豚・牛などの畜産用配合飼料や単味飼料をはじめ、牧草類・畜産用資材を幅広く生産農家に供給している。
また、強固な供給体制の構築も同社の強みであり、三重県を中心に、東海地方、関東甲信越などにも畜産業界のネットワークをつなげ、日本の幅広い地域に食品を効率的に供給する体制を構築している。
(3)畜産アドバイザーによる生産者の支援
同社には畜産アドバイザーなど専門スタッフが配置されており、日本三大ブランドの一つである松阪牛、肉の横綱と称されるxx牛の生産者や肥育牛に寄り添い、生産者が抱える様々な課題や悩みに対して、ソリューションを提供するなど課題解決型の支援を行っている。
【地元食材のブランド向上・普及促進による地域食品業界の発展】
ブランド地鶏である「名古屋コーチン」の知名度・イメージ向上のため名古屋コーチン協会とともに普及に取り組んでいる。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で飲食店の営業縮小が続き、取引量が減少していることを受けて、グループのコーチンミライズ㈱において、クラウドファンディングを活用した名古屋コーチンの販売を行い、名古屋コーチンのブランド力を維持・向上させて、xxへつなげていく取り組みを進めている。
地元名産品である「伊勢名物鶏めし」については、鶏めしの素を製造しており、地域名産の料理を全国に広げるため、首都圏での販促アピール
を行っている。
鶏めしの素と出来上がりのイメージ
【品質の高い食の提供】
(1)仕入れ先の評価の徹底
同社では仕入れ取引をスタートする際には事前に必ず現場確認を行い、原料規格書・原料
の細菌検査報告書・通関証明書等の確認などさまざま観点から品質や対応についての評価を実施している。厳しい基準をクリアした優良なパートナーからの仕入れを実現し、安心・安全、確かな品々を顧客に提供している。
(2)高レベルでの品質の認定
モンドセレクション、みえセレクションなど外部機関により評価・認定された品質の高い食品の提供を行っている。
(3)ロングライフ製品の開発
同社では一部製品において、賞味期限を半年から 1 年に延ばし、長期保存の開発に成功している。賞味期限の長期化により食品ロスの軽減に寄与している。
【食品の安全衛生管理の徹底】
同社は東海地区最大級の鶏肉パックセンターを有しており、同センターでは適正な製造システムにより安全な鶏肉・鶏肉加工品に関する製造・販売を行っている。同センターでは、食品安全システムの国際規格である FSSC22000※1 を取得している。本認証は、食品業界のあらゆる組織に向けた食品安全マネジメントの国際規格であり、同社では 2010 年 2 月に GFSI
(Global Food Safety Initiative)によって承認されている(同時に ISO22000も取得)。365 日稼働の生産体制と万全のスタッフ配置、高速ライン導入により、1 日に約 3 万パックを製造するなど、効率化やスピード化にも対応している。また、パックセンター以外の工場においても、同レベルの食品安全システムとなるよう取り組みを行っている。
また、商品開発専任の人員を採用し、製品の差別化や新たな雇用創出につなげている。
※1 FSSC22000 は ISO22000 をベースとした、より確実な食品安全管理を実践するための国際規格のマネジメントシステム。ISO22000 に比べて要求事項がより具体的な安全衛生管理の手法が追加されている。
<FSSC22000 の位置づけ>
(出所)一般財団法人日本品質保証機構
<同社工場ごとの認証取得状況>
工場 | 取得認証 |
パックセンター | FSSC22000、ISO22000 |
第二工場 | ISO9001 |
第三工場 | SQF ファンダメンタルズ、ISO9001 |
【奨学金を通じた地元人材の育成支援】
同社の創設者である渡邉文二氏が地元の農水業界の発展を願う気持ちから、地元の国立大学である三重大学に奨学金基金を寄付し、これを基に三重大学生物資源学部の 3 年生を対象に返還不要の奨学金制度として、2004 年に「渡邉文二奨学金」を開設している。毎年 2 名を対象とし、これまで約 30 人以上の学生に奨学金が交付され、地元大学の優秀かつ経済的に厳しい学生を支援し、卒業後に地域社会で活躍する奨学生を支え、農水産業の発展と地域社会への貢献を図っている。
【地元学校給食・食育の支援】
同社では地元に根ざし、食育に関わる企業として供給責任を果たすべく、安心安全で美味しい鶏肉・鶏肉加工品の製造・販売に努めている。地元四日市市の保育園や小学校に日々鶏肉を提供し、地元学校の給食や食育の支援を行っている。
【ダイバーシティ経営の推進】
同社ではジェンダー平等の考え方のもと、個々が希望するキャリアの実現に向け、コンサルティングを導入している。持続的な経営のためには、幅広いキャリアと考え方を持った人材が必要であるという認識のもとで、女性や高齢者などの活用を積極的に行っている。
なお、同社の本社従業員(パート・アルバイト・研修生を含む)の女性比率は 65.3%(内訳:全従業員 170 名のうち男性 62 名、女性 108 名)、65 歳以上の比率は 14%(24 名)となっている。
【充実した従業員教育制度】
同社では従業員の能力向上のために、以下の研修の実施や資格取得の奨励、社内の表彰制度を設けている。
<主な研修一覧>
・新入社員研修(社会人マナー・衛生講習)
・食品衛生講習
・経営理念浸透研修
・経営戦略研修
・若手リーダー研修
・幹部候補生スクール
・女性リーダー養成研修
・ハラスメント講習
なお、上記の他にも色々な研修・講習を都度検討している。
<主に取得を奨励している資格>
・フォークリフト運転
・簿記
・販売士
・表示検定
<主な社内表彰制度の例>
・SQF(Safe Quality Food:食品安全衛生の国際規格)取得の取り組みとその評価
・改善提案の最優秀賞・優秀賞
・営業新規獲得優秀賞
・商品開発優秀賞
【適正な労働管理による働き方改革の推進】
同社では時間外労働の削減や有給休暇取得の促進など働き方改革を進めている。具体的には、各作業へDXを取り入れ業務改善を行い、社員からの改善提案にて業務改善につながるものは積極的に取り入れ残業時間の削減を行っている。
また、有給取得の促進については、従業員ごとに有給休暇を5日以上取得できているかどうかを確認し、5日未満になりそうな従業員については有給休暇の取得日を指定する方法を取り入れている。
【地産地消を通じた食文化の伝統継承】
鈴鹿市の学校給食として鈴鹿市の市制記念日に郷土料理である「鶏めし」を広く地域の子どもたちに食してもらうために、同社が製造する「鶏めしのもと」を納品している。これにより、次世代を担う地元の若者に対して、地域における食文化の伝統継承を推進する取り組みを行っている。
(出所)鈴鹿市第二学校給食センター
【地域貢献活動】
(1)地域の文化・スポーツ活動の支援
①地域文化支援
同社では三重県の地域文化の発展を支援するため、伊勢神宮外宮の御祭神で食と産業を司る豊受大神(外宮)に
「正直なものづくり」を誓い奉納を行っている。令和元年の第 28 回伊勢神宮外宮奉納市では、同社の「伊勢名物田舎風鶏めしの素」「スモークササミパトリシャン」「サラダチキンパトリシャン」を奉納している。
②地域スポーツ活動支援
地元四日市市を拠点に活動するサッカークラブチームである「TSV1973 四日市」の公式スポンサーとなっている。トップパートナーとして協賛を行っており、地域に根差したクラブ活動を支援している。
三重県が開催している「美し国三重県市対抗駅伝」の実施にあたって、本社がある四日市市のチームに同社商品の差し入れを続けており、地域スポーツの支援を通じて地域のスポーツ文化の発展を支援している。
伊勢神宮外宮奉納の様子
同社の企業ロゴが入ったユニフォーム
(2)地域福祉への貢献
同社では 2009 年から毎年、四日市市内の 2 か所の児童福祉施設の子どもたちへのクリスマスプレゼントとして、自社商品のローストチキンレッグを寄贈するなど、地域の福祉に貢献を続けている。
また、2021 年 11 月からは、毎週土曜日にひとり親家庭等の原則小学生を対象にお茶と同社の弁当を無償提供している。
写真上:クリスマスチキン写真下:子ども食堂の運営
【徹底した排水管理による水質汚濁の防止】
食品製造における排水においては、水質への汚染を防止するため、2018 年に凝集加圧浮上処理装置を設置し、工場から出る汚水による水質汚濁の防止に努めている。本装置は凝集反応装置・加圧発生装置・浮上分離装置により構成された、一般排水の凝集加圧浮上処理を行う装置となっている。また、電力消費の少ない省エネタイプで、環境への配慮も行っている。
【水産資源の保護管理の研究を通じた生物多様性の取り組み推進】
採捕する漁業から育てる漁業への研究に対する協力を積極的に行い、水産資源の持続的生産に寄与している。
また、(一社)日本養魚飼料協会に加盟し、養殖業界の活性化や課題解決を議論すると共に、国際基準に準拠した MSC、ASC、MEL 等多くの水産エコラベルについて協議している。
さらに、同業者で構成される水産油脂協議会で有害物質の分析研究を実施し、安定した製品供給のための情報を共有化している。
【自社燃料として廃棄物リサイクル燃料を使用し資源効率化】
製造過程で発生する有機性の魚油廃棄物を再加工し、他社へのボイラー燃料としての販売や自社工場内のボイラー燃料として活用している。こうしたリサイクル燃料を活用することで、化石燃料の使用削減や廃棄物の排出量を大幅に削減している。
【省エネ機器への見直し推進】
冷媒装置などの検査機器において、法律遵守のもと省エネタイプを導入できるように見直しを進めている。具体的には本社のパックセンターにおいて、冷凍機の冷媒装置を順次、省エネタイプの高効率の機器へ入れ替えを行っている。
【真空パック包装(ノントレー包装)の推進】
現在、スーパーなどで販売される食肉等において、ノントレーの真空パック包装で提供される機会が増えている。一般的なトレーパックに比べ、真空パック包装では、①食品が酸素に触れにくく、より長く鮮度が保てるため、消費期限の拡張ができること、②プラスチック使用量が少ないフィルム包装のため、トレーに比べて重量・容積が小さくなり、家庭ごみ削減につながること、などの効果が期待できる。同社においても、新たにノントレー大型包装機を導入し、ノントレーによる真空パック包装を進めていくことを予定している。
【太陽光発電による再生可能エネルギーの創出】
太陽光発電所を 2014 年より順次稼働し、現在、本社パックセンター(四日市市)、高野尾(津
市)、采女(四日市市)、西庄内(鈴鹿市)の 4 箇所で太陽光発電により再生可能エネルギーを創出している。上記 4 箇所の発電施設において、2021 年の総発電量は約 1,200,000kWh となっている。
<太陽光発電施設別の発電量>
設置場所 | 稼働開始時期 | 発電量(年間) |
本社パックセンター | 2014 年 3 月 | 38,000kWh |
高野尾 | 2014 年 7 月 | 380,000kWh |
采女 | 2015 年 6 月 | 450,000kWh |
西庄内 | 2016 年 5 月 | 330,000kWh |
【廃棄物リサイクルの推進】
(1)鶏肉焼成時に発生する油脂のリサイクル燃料化
鶏肉加工品の焼成時に鶏から出る油脂を回収し、提携するリサイクル専門業者に提供することで、リサイクル油(再生油)としてさまざまな燃料に利用されており、製造時における廃棄ロスの削減を進めている。
(2)廃プラスチックの燃料化と廃金属・廃蛍光管のリサイクル推進
廃プラスチック類の燃料化、廃金属・廃蛍光管リサイクルの推進を行っている。また、食品工場から出た原料が入っていたビニール袋(廃プラスチック)などを回収し、産業廃棄物業者に処理依頼を行っている。
(3)鶏糞の堆肥化への取り組み
畜産を取り扱ううえで重要となる糞尿の処理についてのアドバイスやその後の堆肥販売を行っている。畜産農家と協力して、鶏糞の軽減飼料や牛糞・鶏糞を利用した堆肥醗酵施設を使用して、それらを堆肥化し、大地に循環させる取り組みを行っている。
(4)食品ロスの削減
①魚油原料の魚の残渣を削減
同社では限りある水産資源を守るために、魚油の原料としてスケソウダラなどの天然魚の加工残渣である魚アラを余すことなく活用し、魚のアラから絞られた魚油原料を精製加工している。このように、食品流通・加工段階の残渣を活用することで、食品ロスの削減に寄与している。
②エコフィード(食品準資源利用飼料)の製造
同社ではグループ会社である三昌エコロジー㈱を通じて、環境に配慮したエコフィード
※2 の製造により食品ロス削減の取り組みを行っている。具体的には、食パン等の製造副産物やカットくずなどを乾燥・粉砕の手法で豚を対象とする飼料化を行っている。2020 年度の実績をみると、食品残渣の飼料化仕向量は 2,890 トン、エコフィード生産量は 2,130 トンとなっている。
※2 エコフィード(eco-feed)とは、食品残渣等を利用して製造された飼料をいう。食品リサイクルによる資源の有効利用のみならず、飼料自給率の向上等を図るうえで重要な取り組みとされている。
<エコフィード製造の流れと主な分類>
(出所)農林水産省畜産局飼料課「エコフィードをめぐる情勢」
3.UNEP FI インパクトレーダーとの関連性
※色の濃い項目が同社のインパクト領域
本ファイナンスでは、三昌物産の事業について、国際標準産業分類における「調理食品製造業」及び「加工飼料製造業」として整理された。その前提のもとでの UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた結果、「包摂的で健全な経済」「食料」「雇用」「文化・伝統」に関するポジティブ・インパクト、「保健・衛生」「雇用」「水(質)」「資源効率・安全性」「気候」「廃棄物」に関するネガティブ・インパクトが分析された。
一方、事業活動等を踏まえ、本ファイナンスで特定された同社のインパクトは以下の通りである。
経済面では、海外研修生の受け入れによる国際的な人材の供給や地域・社会・顧客の発展によるおもてなし経営の実践、コロナ禍における一時金の支給による経済支援が「包摂的で健全な経済」、飼料供給を通じた国内畜産業の発展への貢献や地元食材のブランド向上・普及促進による地域食品業界の発展が「経済収束」に関するポジティブ・インパクトとして想定される。
社会面では、品質の高い食品の提供が「食料」、地元国立大学における奨学金制度の実施が「教育」、ダイバーシティ経営の推進や充実した従業員教育制度が「雇用」、地元食文化の承継に向けた活動や地域の文化やスポーツ活動および地域福祉など地域貢献活動が「文化・伝
統」に関するポジティブ・インパクトとして想定される。また、FSSC22000 を中心とした食の安全
衛生管理の取り組みが「保健・衛生」、適正な労働管理による働き方改革の取り組みが「雇用」に関するネガティブ・インパクトを低減させている
環境面では、適正な排水管理の実施が「水(質)」、水産エコラベルなど持続的な水産資源の維持・確保が「生物多様性と生態系サービス」、魚油廃棄物のリサイクル燃料を自社活動エネルギーとしての利用や食肉における食品トレーから真空パック包装への切り替え推進が「資源効率・安全性」、太陽光発電による再生可能エネルギーの創出が「気候」、廃プラ等のリサイクルや鶏糞の堆肥化、食品残渣の飼料・堆肥化の取り組みが「廃棄物」に関するネガティブ・インパクトを低減させている。
3-1.経済面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
〈ポジティブ〉 包摂的で健全な経済 | 海外研修生の受け入れによる国際的な人材の供給 | ・開発途上国から外国人研修生の受け入れ (研修生は習得した知識を活かして出身国の産業発展に寄与) |
地域・社会・顧客の発展によるおもてなし経営の実践 | ・2021 年度「三重のおもてなし経営企業選」として表彰 | |
コロナ禍における地域経済の支援 | ・新型コロナによる消費の落ち込みをカバーするため、従業員に一時金支給 | |
経済収束 | 飼料供給を通じて水産・畜産業の発展に貢献 | ・魚油の精製加工・販売による養殖業の発展への支援 ・様々な飼料提供を通じた畜産業の発展への支援 ・畜産アドバイザーによる生産者の支援 |
地元食材のブランド向上・普及促進による地域食品業界の発展 | ・「名古屋コーチン」の普及への取り組み ・地元名産品(伊勢名物鶏めし)の製造と首都圏での販促 |
3-2.社会面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
〈ポジティブ〉食料 | 品質の高い食の提供 | ・仕入れ先評価の徹底 ・モンドセレクション、みえセレクションなど高いレベルでの品質の認定 ・ロングライフ製品の開発 |
教育 | 奨学金を通じた地元人材の育成支援 | ・三重大学生物資源学部に「渡邉文二奨学金」を開設し、優秀かつ経済的困窮の学生を支援 |
地元学校給食・食育の支援 | ・学校給食への鶏肉の納品を通じて食育に寄与 | |
雇用 | ダイバーシティ経営の推進 | ・女性や高齢者の活用 |
充実した従業員教育制度等 | ・研修・講習の実施 ・資格取得の奨励 ・社内表彰制度 | |
文化・伝統 | 地産地消を通じた食文化の伝統継承 | ・郷土料理である「鶏めしのもと」を地元(鈴鹿市)の小学校へ納品 |
地域貢献活動 | ・伊勢神宮外宮への奉納 ・地元サッカークラブチームである「TSV1973四日市」の公式スポンサー ・「美し国三重県市対抗駅伝」において地元四日市市チームに同社商品を差し入れ ・児童福祉施設の子どもたちへのクリスマスプレゼントとして、自社商品のローストチキンレ ッグを寄贈 |
〈ネガティブ〉保健・衛生 | 食品の安全衛生管理の徹底 | ・パックセンターにおいて食品安全システムの国際規格である FSSC22000 を取得 ・その他工場も同レベルの食品安全システムの取り組み |
雇用 | 適正な労働管理による働き方改革の推進 | ・時間外労働時間の削減推進や有給休暇の取得促進 |
3-3.環境面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
〈ネガティブ〉水(質) | 徹底した排水管理による水質汚濁の防止 | ・水質への汚染を防止するため排水の管理を徹底 |
生物多様性と生態系サービス | 水産資源の保護管理の研究を通じた生物多様性の取り組み推進 | ・水産資源の持続的生産の研究 ・(一社)日本養魚飼料協会に加盟し、国際基準に準拠した水産エコラベルについて協議 |
資源効率・安全性 | 自社燃料として廃棄物リサイクル燃料を使用し資源効率化 | ・有機性の魚油廃棄物のリサイクルによる燃料化と自社エネルギーとしての活用による資源効率化へ取り組み |
省エネ機器への見直し推進 | ・冷媒装置などの検査機器について省エネタイプを導入 | |
真空パック包装(ノントレー包装)の推進 | ・食肉等において食品トレー包装から真空パック包装への切り替えを推進 | |
気候 | 太陽光発電による再生可能エネルギーの創出 | 太陽光発電所を 2014 年より順次設置し、パッ クセンター、高野尾、采女、西庄内、の4 か所で稼働 |
廃棄物 | 廃棄物リサイクルの推進 | ・鶏肉焼成時発生油脂のリサイクル燃料化 ・廃プラスチックの燃料化と廃金属・廃蛍光管のリサイクル推進 ・鶏糞の堆肥化への取り組み ・食品ロスの削減(魚油原料の魚の残渣、エコフィードの製造) |
4.特定インパクトと測定するKPI
三昌物産は本ファイナンス期間において以下の通り KPI を設定する。
経済面では、地元食材のブランド向上や普及促進を通じて、地域の食品産業の発展に貢献することが期待されることから、クラウドファンディングの実施により、広く商品情報を発信し、購買層の拡大につなげていくことを目標として設定する。
社会面では、①郷土に役立つ人材の輩出に寄与するため、地元三重大学生物資源学部の学生に対し、返還を要しない奨学金を授与していくこと、②ダイバーシティ経営をさらに推進していくため、女性及び高齢従業員の比率を向上させていくこと、③同社が提供する食品の安全性をさらに高めていくため、パックセンターで取得しているFSSC22000 の認証を維持していくこと、の3つを目標として設定する。
環境面では、①食品の消費期限の拡大と家庭ごみの排出量の削減を目的に、食肉等において食品トレー包装にから真空パック包装への切り替えを推進していくこと、②再生可能エネルギーの創出を通じて、カーボンニュートラルの推進を図るため、太陽光発電による発電量を拡大していくこと、の2つを目標として設定する。
その他、同社がインパクトとして特定した項目の中でKPIとして目標を設定しなかったものについては以下の考え方に基づいている 。
ポジティブ・インパクトについては、社会面の「食料」は品質の高い食の提供を通じて、「文化・伝統」は地域文化やスポーツ活動への支援を通じて、引き続きそれぞれの取り組みを確認していく。
ネガティブ・インパクトについては、社会面の「雇用」は適正な労働管理を通じて、環境面の
「水(質)」は徹底した排水管理による水質汚濁の防止を通じて、「生物多様性と生態系サービス」は水産資源の保護管理の研究等を通じて、引き続きそれぞれの取り組みを確認していく。
4-1.経済面(ポジティブ)
特定インパクト | 経済収束 | |
取組、施策等 | 【地元食材のブランド向上・普及促進による地域食品業界の発展】 地元食材のブランド向上や普及促進を通じて、地域の食品産業の発展に貢献するため、グループ会社のコーチンミライズ㈱において、クラウドファンディングの取り組みを推進して いく。 | |
借入期間におけるKPI | コーチンミライズ㈱におけるクラウドファンディングの取り組みを 2027 年 3 月末までに 5 回以上実施する(現状:2021 年 に初めて 1 回実施し、目標金額 400,000 円に対し 539,000 円 の支援総額) | |
関連するSDGs | 2.3 2030 年までに、土地、その他の生産資源 や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の 農業生産性及び所得を倍増させる。 |
4-2.社会面(ポジティブ)
特定インパクト | 教育 | |
取組、施策等 | 【奨学金を通じた地元人材の育成支援】 地元三重大学生物資源学部の未来ある優秀かつ経済的に厳しい状態にある学生を支援し、郷土に役立つ人材の輩出に寄与するため、返還を要しない奨学金制度を設立し、毎年奨学金を授与していく。 | |
借入期間におけるKPI | 三重大学生物資源学部への「渡邉文二奨学金」を継続して いく(年間 2 名) | |
関連するSDGs | 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進 する。 |
特定インパクト | 雇用 | |
取組、施策等 | 【ダイバーシティ経営の推進】 ダイバーシティ経営をさらに推進していくため、女性及び高齢者の従業員比率を向上させていく。 | |
借入期間におけるKPI | 2027 年 3 月末の女性従業員比率 70%以上(現在:63%) 2027 年 3 月末の高齢従業員比率 20%以上(現在:14%) | |
関連するSDGs | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、な らびに同一労働同一賃金を達成する。 |
4-3.社会面(ネガティブ)
特定インパクト | 保健・衛生 | |
取組、施策等 | 【食品の安全衛生管理の徹底】 同社が提供する食品の安全性をさらに高めていくため、パックセンターで取得している FSSC22000 の認証を維持する。 | |
借入期間におけるKPI | パックセンターにおける FSSC22000 の認証の維持 | |
関連するSDGs | 2.4 2030 年までに生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大 気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 |
4-4.環境面(ネガティブ)
特定インパクト | 資源効率・安全性 廃棄物 | |
取組、施策等 | 【真空パック包装(ノントレー包装)の推進】 食肉等において食品トレー包装から真空パック包装への切り替えを推進することで、酸素に触れにくい真空パック包装により、食品の消費期限の拡大とトレーを使わないフィルム包装によるパッケージの重量・容積の縮小によって家庭ごみの排出量を削減する。 | |
借入期間におけるKPI | 真空パック包装機の導入により、2027 年 3 月末までに月間平均80 万パック(トレー)の使用から月間平均70 万パック(ト レー)の使用に削減する。 | |
関連するSDGs | 9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取り組みを行う。 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 12.3 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物 の発生を大幅に削減する。 |
特定インパクト | 気候 | |
取組、施策等 | 【太陽光発電による再生可能エネルギーの創出】 再生可能エネルギーの創出を通じて、カーボンニュートラルの推進を図るため、太陽光発電による発電量を拡大していく。 | |
借入期間におけるKPI | 2027 年 3 月末までに太陽光発電による発電量を年間 1,500,000kWh 以上とする(2021 年:約 1,200,000kWh)。 | |
関連するSDGs | 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大 幅に拡大させる。 |
4-5.その他KPIを設定しないインパクトについて SDGsとの関連性
事業活動 | 関連するSDGsのターゲット | SDGsの ゴール |
〈経済面〉 海外研修生の受け入れによる国際的な人材の供給 | 10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 17.16 すべての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パート ナーシップを強化する。 | |
地域・社会・顧客の発展によるおもてなし経営の実践 | 8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成す る。 | |
コロナ禍における地域経済の支援 | 1.2 2030 年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状況にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。 |
飼料供給を通じて水産・畜産業の発展に貢献 | 2.3 2030 年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。 2.4 2030 年までに生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭 (レジリエント)な農業を実践する。 | |
〈社会面〉 品質の高い食の提供 | 2.4 2030 年までに生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭 (レジリエント)な農業を実践する。 | |
地元学校給食・食育の支援 | 2.1 2030 年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるように する。 | |
充実した従業員教育制度 | 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 | |
地産地消を通じた食文化の伝統継承 | 11.4 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。 17.7 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。 | |
地域貢献活動 | 17.7 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナ ーシップを奨励・推進する。 | |
適正な労働管理による働き方改革の推進 | 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇 用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 |
〈環境面〉 徹底した排水管理による水質汚濁の防止 | 14.1 2025 年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。 | |
水産資源の保護管理の研究を通じた生物多様性の取り組み推進 | 14.4 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020 年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、 科学的な管理計画を実施する。 | |
自社燃料として廃棄物リサイクル燃料を使用し資源効率化 | 9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取り組みを行う。 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減 する。 | |
省エネ機器への見直し | 9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取り組みを行う。 | |
廃棄物リサイクルの推進 | 12.3 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発 生を大幅に削減する。 |
5.サスティナビリティ管理体制
三昌物産では、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、総務部を中心に組織横断的なプロジェクトチームを結成。渡邉社長を責任者とし、日々の業務やその他活動を棚卸することで、自社の事業活動とインパクトレーダーとの関連性について検討をした。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの実行後、返済期限までの間においても、渡邉社長や
プロジェクトチーム、総務部などとの連携体制を構築することでKPIの達成を図っていく。
最高責任者 | 代表取締役社長 渡邉 大雄 |
管理責任者 | 取締役本部長 安田 昌弘 |
担当部 | 総務部 |
6.モニタリング
本件で設定したKPIの進捗状況は、三昌物産と三十三銀行の担当者が年に1回以上の会合を設けることで確認する。モニタリングの結果、当初想定と異なる点があった場合には、三十三
銀行は、同社に対して適切な助言・サポートを行い、KPIの達成を支援する。
7.総合評価
本件はUNEP FIの「ポジティブ・インパクト金融原則」に準拠した融資である。三昌物産は、
上記評価の結果、本件融資期間を通じてポジティブな成果の発現とネガティブな影響の低減に努めることを確認した。また、三十三銀行は年に1回以上その成果を確認する。
本評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、三十三総研が、三十三銀行から委託を受けて作成したもので、三十三総研が三十三銀行に対して提出するものです。
2.三十三総研は、依頼者である三十三銀行および三十三銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する三昌物産から供与された情報と、三十三総研が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
〈本件問合せ先〉
株式会社三十三総研
調査部長 主席研究員 別府 孝文
〒510-0087
三重県四日市市西新地 10 番 16 号第二富士ビル4階
TEL:059-354-7102 FAX:059-351-7066
第三者意見書
2022 年 3 月 31 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 三昌物産株式会社に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社三十三銀行 |
評価者:株式会社三十三総研 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、三十三銀行が三昌物産株式会社(「三昌物産」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、株式会社三十三総研による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定したPIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシア ティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、イ ンパクト分析ツールを開発した。三十三銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際 し、三十三総研と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国 内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分 析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、 中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、三十三銀行及び三十三総研 にそれを提示している。なお、三十三銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義 を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義 する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
三十三銀行及び三十三総研は、本ファイナンスを通じ、三昌物産の持ちうるインパクトを、 UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析 を行った。
この結果、三昌物産がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、三十三銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 三十三銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:三十三銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、三十三銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、三十三銀行からの委託を受けて、三十三総研が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めたPIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て三十三総研が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、三十三総研が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である三昌物産から貸付人である三十三銀行及び評価者である三十三総研に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
Japan Credit Rating Agency, Ltd.
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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