現在も新型コロナウイルス感染症については、感染拡大が続いており、先が見通せない状況にあります。最近では、Go To トラベル事業に関して大阪市と札幌市が対象か ら除外となり、キャンセルが続出しているとの報道もありますが、事業者は、消費者からのキャンセルの問い合わせ対応で手がいっぱいの状況であります。前回も発言した通り 、新型コロナウイルス感染症に関する対応は極めて特異な事例であり、通常時のキャンセル対応とは分けて考えるべきだと思っています。今回は、消費者も予測不能の事態の変...
消費者契約に関する検討会第11回 議事録
消費者庁消費者制度課
第11回 消費者契約に関する検討会
1.日 時:令和2年12月2日(水)9:30~11:46
2.場 所:オンライン開催
3.議 題
不測の事態における消費者契約のキャンセルについて等
4.出席者
(委員)
xxxx委員(座長)、xx委員、xx委員、xx委員、楠委員、xx委員、xx委員、髙橋委員、xx委員、xx委員、xx委員、xx委員、xx委員、xxxx委員、xx委員
(参考人)
慶應義塾大学法学部 xxxxx 教授
(事務局)
xxxxx、xx消費者制度課長、xxxxx
(オブザーバー)
国民生活センター、法務省、最高裁判所
〇xxxx
それでは、定刻になりましたので、第 11 回消費者契約に関する検討会を開催いたします。本日も、皆様にはご多忙のところご出席賜りましてありがとうございます。本日の議題は、「不測の事態における消費者契約のキャンセル」についてです。
また、本日の検討会におきましては、消費者契約に関する検討会運営要領第
6項に基づきまして、参考人として慶應義塾大学法学部のxxxxx教授をお招きし、xx先生もオンラインでお繋ぎしています。xx先生、よろしくお願いいたします。
なお、本日は、xxxx委員が御欠席、xx委員が途中退席、x委員が途中からご出席の後、途中でご退席されるとのご連絡をいただいています。
まず、事務局から、接続と資料の確認をお願いします。
〇xx消費者制度課長
※接続確認を行う。
続いて資料の確認をさせて頂きます。議事次第に記載のとおり、資料1が国民生活センターご提出資料、資料2がxx先生ご提出資料、資料3がxx委員ご提出資料となっております。また、前回の消費者契約に関する検討会の意見交換の概要を参考資料としてお付けしています。資料につきましては、以上でございます。
〇xxxx
それでは、議事に入りたいと思います。本日は、まず、途中退席されるxx委員、楠委員からご意見をいただきたいと思います。続いて、国民生活センターから不測の事態におけるキャンセルの相談事例についてご報告いただいた 後、続けてxx先生から不測の事態におけるキャンセルに関してご見解を伺います。その後、国民生活センター及びxx先生に対する委員の皆様からのご質問をお受けし、委員間での意見交換に入りたいと思います。その際、xx委員より資料をご提出いただいておりますので、xx委員から資料のご説明も兼ねて、ご意見をいただきたいと思います。
それでは、まず、xx委員から、本日の議題についてご意見を伺いたいと思います。
〇xx委員
前回消費者庁にご説明頂いたアンケート調査結果にもありましたとおり、様々な業界で、新型コロナウイルスの感染拡大を事由としたキャンセルが、数多く発生していますが、事業者は経営の継続をはかりつつも、消費者のキャンセル等の要請について、可能な限り柔軟に対応している実態が浮かび上がったと思っています。
今回は、参考までに毎月行っている商工会地域の小規模事業者の、新型コロナウイルス感染症の影響によるキャンセルの実態について報告させていただきます。宿泊業、飲食業の影響は大きく、宿泊業につきましては1月から外国人特に、中国からの訪日観光客のキャンセルが相次ぎ、その後、国内観光客のキャンセルも急増していきました。そうした状況は、夏の観光シーズンまで続きました。飲食店については学校休業要請や自粛ムードにより、3月の行事が軒並み中止になる中、キャンセルが相次ぐ状況となりました。
また宿泊業、飲食業も共通して、近隣で感染者数が増えるとキャンセルの件数が急増する傾向にあります。宿泊業や飲食業に物販納入している小規模事業者は、予約がキャンセルされたことにより、食材やリネン関連のクリーニング等の発注が取り消される等、消費者のキャンセルを理由に、取引先から発注をキャンセルされる、二次的被害の影響を大きく受けています。
また、経営基盤の弱い小規模事業者は新型コロナウイルスの影響としたキャンセルの続出により、資金繰りが苦しくなっており、顧客基盤維持のために柔軟に対応したくても、事業者の経営状態が逼迫しているために対応できなかった事例もあります。
現在も新型コロナウイルス感染症については、感染拡大が続いており、先が見通せない状況にあります。最近では、Go To トラベル事業に関して大阪市と札幌市が対象から除外となり、キャンセルが続出しているとの報道もありますが、事業者は、消費者からのキャンセルの問い合わせ対応で手がいっぱいの状況であります。前回も発言した通り、新型コロナウイルス感染症に関する対応は極めて特異な事例であり、通常時のキャンセル対応とは分けて考えるべきだと思っています。今回は、消費者も予測不能の事態の変化に、どの時点でキャンセルするのか判断に迷うこともあり、いつキャンセルが発生するか分からない状況のため事業者は対応で疲れています。このような混乱の中で、どのような問題があるのかを調査し、解決の方向を探るのは難しい状況であります。そのため、現時点でキャンセルに関するルールを作成することは現実的ではないと考えていま
す。事態が収束したうえで、望ましい方法等について議論すれば良いと考えています。
○xxxx
ありがとうございました。xx委員は 10 時までのご出席とお伺いしておりますので、委員の皆様からxx委員へのご意見やご質問がありましたらお受けしようと思います。何かございますでしょうか。特にございませんでしょうか。
それでは、続きまして、楠委員からご意見をいただきたいと思います。楠委員、よろしくお願いいたします。
○楠委員
新型コロナウイルスの事例は、やはり特殊な事例であり一般化して論じることは難しい問題と思われます。いつまで新型コロナウイルスの影響が続くのか分からない状況で、影響が続く場合にどのように整理していくのかという点については、この検討会で議論する射程に入ってくるのかもしれません。また、感染抑止との関係も含めてキャンセルをどうすべきかについても場合によっては議論の対象になりうるように思います。
○xxxx
ありがとうございました。それでは、楠委員へのご意見やご質問がありましたらお受けしようと思いますが、何かございますでしょうか。
【3.国民生活センター提出資料の説明】
○xxxx
それでは、続きまして、国民生活センター様より、資料1の説明をお願いいたします。
○国民生活センター
国民生活センター相談情報部相談第 1 課のxxxxと申します。本日は私の方からご説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
それでは、資料に基づきまして国民生活センターに寄せられた、自然災害時・コロナ禍におけるキャンセルに係る消費生活相談事例のご紹介をさせていただきます。事例紹介に当たりましては、説明時間の都合上、恐縮ですが、全部の読み上げは省略をさせていただきます。また、資料には掲載はしていないんですけれども、斡旋結果等につきましても、適宜、ご紹介できればと考えています。
ただし、センシティブな内容が含まれる可能性があるため、斡旋結果につきましては、この場限りとさせていただき、議事録への記載も非公開とさせていただければと考えております。
では、まずは2ページ目の目次をご覧ください。今回ご紹介するのは熊本地震、2019 年台風 19 号、コロナ禍での事例になります。キャンセルに関しては様々な内容の相談が寄せられていますが、その中でも消費者の自己都合とするのは酷と思われる事例について、類似性を持つ事例ごとに、1.サービスを受けることが不可能な場合、2.消費者がキャンセルを申し込んだ後に催行や運行等が中止になった場合、3.消費者の事情によらずサービスを受ける目的がなくなった場合、4.サービスを受けることが社会的に推奨されていないと消費者が考えている場合と、独自に分類をしてみました。
それでは3ページより事例のご紹介をします。こちら、熊本地震の際、災害により、交通手段が失われてしまい、サービス提供を受ける会場まで消費者が行くことができなかったという事例でございまして、対応する業者の態度への不満もあって、相談があったというものです。この事例のように、サービスを受けるための手段が失われた場合でのキャンセル料について、「自分のせいでもないのに、払わなければいけないのは納得いかない」という相談が、災害 時、コロナ禍共に複数見受けられているところです。
続いて、4ページに飛びます。4ページは昨年の台風 19 号接近時の事例でして、内容としましては、先程の3ページの事例と類似しておりまして、交通手段が失われ、サービス提供が受けられないというものです。南関東の山間部ですが、当時 1,000mm を超える記録的な降水量、土砂崩れなどが発生している状況でした。
続いて5ページ目に移ります。こちら訪日観光客からの相談事例でして、新型コロナの影響で、訪日手段がなくなり、サービス提供が受けられないというものです。
続いて6ページですが、新型コロナの影響で飛行機が欠航になりサービスを受けることが不可能になったものの、実際には搭乗しないにもかかわらず、搭乗手続料の名目で支払いが発生することが納得いかないという事例です。
続いて7ページでは、コロナの事例ですけれども、緊急事態宣言下でサービスを受ける場所が失われたにもかかわらず、解約料が発生するのは納得がいかないというヨガ教室の事例です。こちら、当時、ヨガスタジオは自治体から休業要請がなされているという状況でした。
続いて8ページですが、消費者がキャンセルを申し込んだ後に、催行や運行が中止になった場合の事例です。コロナ禍で結果としてツアーが催行されなかった場合にキャンセルを申し込むタイミングでキャンセル費用が消費者負担と
なるか、事業者負担となるか分かれた事例でして、これに納得いかなかったというものになります。
続いて、9ページ、10 ページの事例ですけれども、消費者の事情によらずサービスを受ける目的がなくなった場合ということで、バスの定期券や学生寮の事例です。そして、サービスの提供はなされているものの、学校に通うという消費者の目的が新型コロナへの対応によりなくなってしまい、サービスを受ける意味がなくなっているというケースです。こちらも自身の原因ではなく、すでに不要なサービスとなっているのに、解約ができない、一部解除ができず料金が発生して納得できないということで相談が寄せられています。
続いて 11 ページ目ですが、サービスを受けることが社会的に推奨されていないと消費者が考えている場合ということでご紹介します。大型台風が接近 し、計画運休等の情報からサービスを受けることについて消費者が危険を感じている状況下でキャンセルを申し出たところ、中止が決定していない段階なので、一律キャンセル料を請求するという対応に納得がいかないという事例になります。
続いて 12 ページですが、消費者の認識としては 11 ページの事例と類似している事例かと思っております。こちら「緊急事態宣言を発令している状況下 で、結婚式場のキャンセルについて、全額支払うことが納得いかない」という事例になります。
そして最後に、国民生活センターで当該相談が寄せられた場合に行う一般的なアドバイスですが、まずは法律上のキャンセルの考え方をお伝えします。業者がサービスの提供が可能な場合は、原則は契約時の約款や規約に拘束されることをお伝えし、しかしキャンセル料が 100%であるなど平均的損害を超える恐れがあると思われる場合には消xxにより不当条項となる可能性もあるという考え方も、併せてお伝えします。そして相談者の申し出内容ですとか、相談者が被災しているとかそういう状況等を加味して斡旋に入ったり、弁護士会を紹介したりといった対応を行っています。以上になります。
○xxxx
ありがとうございました。
○xxxx
それでは、続きまして、xx先生より、資料2のご説明をお願いいたします。
○xxxx
はい、慶應義塾大学のxxxxxと申します。 資料のほう、よろしいでしょうか。それでは、「解除の事由と解約金等条項規制について~消費者契約 法・民法の検討からの問題提起」ということで報告をさせていただきたいと思います。
パワーポイントの2ページ、序のところにいきたいと思います。消費者契約における取消料条項や解約金条項等については、平時においてもその額や徴収すること自体に関して、消費者契約法9条1号の平均的な損害の額の問題として議論され、条項の性質によっては、同法 10 条で対応すべきではないかといったことも問題とされてきました。そのような中で、新型コロナウイルス禍に直面し、緊急事態宣言が出され、結婚式、旅行、フィットネスなど、様々な契約において、現場はキャンセル料や対価を徴収できるのか判断を迫られたと思います。緊急事態宣言の前後、結婚式などのキャンセルに、高額な取消料が徴収されるケースは消費者に酷とも思え、民民の問題ではあるものの、少なくとも自粛要請に従う形でのキャンセルについては、サービス提供の延期や内容の変更、減額等、柔軟な対応を消費者庁から事業者にお願いできないだろうかと思ったりしておりました。もっとも、それをするために感染拡大抑止だけでは十分な理由とならないとすれば、自己都合ではない解除原因によるキャンセルの問題について、自己都合の場合と別異に考える必要があるのかないのか。あるとしても、どのような事態を別異に考える必要があるのか理論的に詰めてみる必要があるのではないかということになります。
そして自己都合ではないキャンセルという問題は、コロナ禍に限らず生じるわけですけれども、コロナ禍を特別扱いするかどうかというのも含めまして、今回は第一に消費者契約法9条1号の考慮要因、第二に不測の事態等とデフォルトの民法規範、第三に消費者契約・消費者の特性を考慮した規範というのを考えられないかというこの順番で検討を進めまして、消費者法、民法の観点からの問題提起ということにさせていただきたいと思います。
それでは3ページのスライドに入りたいと思います。この問題に関連しまして、まずは消費者契約法9条1号の条文を見ますと、「当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分」に応じ、その区分ごとに平均的な損害の額を超えるものかどうかを検討するというふうになっております。9条1号に関しては、言及されている解除の事由や時期以外に、どのような要因を考慮要因とすべきかという問題はもちろん存在しますが、今回のトピックに関わる解除の事由にフォーカスして、少し検討を進めさせていただきたいと思います。まず、この当該条項において設定された解除の事由に関しましては、平均的な損
害を考える際に、着目すべき区分要素として条文に掲げられているものの、逐条解説では「消費者側の解除の事由という要素により、事業者に生ずべき損害の額が異なることは、一般的には考えにくい」と解説されております。「条文に掲げられているけど、損害の額に一般的に影響を与える要素ではない」というのはどういうことなのか、例外的には影響を与える要素という趣旨なのか、条文と逐条解説を見ただけでは、平均的な損害の額を考えるにあたって、解除の事由というものについてどう扱ってよいか、よく分からない状況になっていると思われます。
4ページに入りたいと思います。そこで9条1号の関連の裁判例において解除の事由がどのように扱われているのか見てみますと、このことそのものが争点となっている判決はないのですが、平均的な損害の額の一般的な考え方を示すものとしまして、いわゆるパーティ予約のキャンセル事件が挙げられます。この判決では平均的な損害の額を考える際の一般的な考慮要因の1つとして解除の事由が言及され、それに対応して「今回の事件は自己都合であった」という事実が認定されています。もっとも、この事件のキャンセルが自己都合だったから、利潤を含めた予約料金を基礎に平均的な損害の額が算定されたのか、自己都合でなければ何か平均的な損害が違ったのかということについて判決は言及するものではありませんので、この点は明らかになりません。
次のページですけれども、次の関連する判決として取り上げることができるのは、いわゆるラグビークラブの宿泊キャンセル事件です。これは旅行手配会社を通じて宿泊予約がされたのですけれども、部員の一部が新型インフルエンザに罹患したということを理由に前日に取消しがなされたというものです。旅行の手引書では「お客様都合による取消しには取消料がかかる」と記載されていたことから、顧客側で「これは自己都合ではないので、支払義務はない」と争ったところ、判決は、お客様都合というのは、旅行者に帰責事由がある場合に限定する趣旨ではなく、宿泊施設側の事情や天災事変等によることなく、旅行者側の事情によって取り消した場合を広く含むと解釈されるとしまして、部員の一部が新型インフルエンザに罹患したという事情は、お客様の都合に該当する、とされています。消費者契約法9条1号の平均的な損害の額の判断のほうについては、前日キャンセルのため 100%取るという条項であったものの、支出を免れる光熱費とか食費等を考慮した額が平均的な損害の額となるとしまして、減額を認めたものでございます。この判決は、宿泊約款の解釈としまして、インフルエンザの罹患というのは旅行者側の事由にあたるというふうに解釈したものです。9条1号の解釈として平均的な損害の額を考えるに際し、解除の事由を考慮要因とすべきかどうかを判断事由としているわけではありません。したがって、解除の事由と消費者契約法9条1号あるいは 10 条との関係
については、参照できる判決というのは、ほぼないと言っていいような状況にあると考えます。
次に6ページに入りたいと思います。解除の事由が9条1号の平均的な損害の額の算定に影響を与える要因となりうるかどうかに関して、次に学説の状況を眺めますと、学説の立場は消費者契約法9条1号にいう違約金条項等としまして、同条の適用対象となる条項の範囲を、どのようなものと捉えるのかの理解で整理できるように思います。1つの立場は、9条1号の平均的な損害の額というのは、消費者に責めに帰すべき事由がある場合の損害賠償の範囲について、定型化したものであるという理解で、この(a)の立場に立つと、そもそも消費者に帰責事由がある場合の違約金条項に9条1号というのは、適用は限定されますので、民法 416 条の定型化という観点からは、平均的な損害の額を考えるにあたって、解除の事由をさらに考慮する必要はないということになりそうです。
もう1つの立場は、9条1号は解除に伴って、事業者が消費者から金銭を徴収する場合の、一般条項的な規制規範となっており、例えば双方の責めに帰すべき事由がない履行不能の事態や、消費者に過失がない受領困難な事態において解除される場合についても、平均的な損害の額を基準に解約金条項等へ介入を予定する規範と捉える立場がありえます。
ただし、(a)の立場に立った場合でも、消費者の責めに帰すべき事由がない事態における解約金条項等については、消費者に帰責事由がないというだけで条項に基づく支払いを免れない場合には、消費者契約法 10 条の審査に服するということになりますし、(b)の発想を取った場合でも、平均的な損害の有無とか額というのは、約款や規約がなければ適用されるデフォルトの法規範を、不当性判断の基準の出発点として念頭に置くことになるのではないかというふうに考えられますので、不測の事態等におけるキャンセルにかかわるデフォルトの民法規範というのは、どういうものかということを次に確認をしていきたいと思います。
7ページのほうに入りたいと思います。さて、不測の事態のリスク分担にかかわるような民法規範を、ここですべて取り上げることはできませんが、主要なものをざっと見ていきますと、民法では 412 条の2によりまして、債務の履行が契約その他債務の発生原因及び取引通念上の社会通念に照らして、不能であるときは、その債務の履行を請求することができないとされており、債務の履行が双方の責めに帰すべき事由によらずに不能である場合には、536 条1項によりまして、その債務の債権者は反対給付の履行を拒否できるということになります。対価は払わなくていいという帰結になります。不能というのは物理的な不能のみならず、経済的な不能や法律的な不能、そのほか社会通念上の不
能を含むという概念になります。これに対して、債権者の責めに帰すべき事由による債務者の給付が不能になった場合、あるいは受領遅滞のため債務者が履行できなかったという事態においては、債権者は反対給付の履行を拒絶できないということになります。536 条2項です。この受領遅滞については、債権者の帰責事由がない場合でも、履行不能リスクは債権者が負担し、反対給付を免れない帰結となるというのが通説的な説明ではないかと思料します。
またこの不測の事態において履行ができないという事態は、サービス契約において発生することが多いと思いますが、役務提供契約については、割合的な報酬規定というものが用意されております。すなわち、役務受領者側の責めに帰することができない事由によって、役務の提供というのができなくなった場合、双方の責めに帰すべき事由がないような場合については、提供者側は既履行部分の割合報酬のみ請求できるということになり、役務提供開始前であれば役務提供型契約というのは報酬請求ができないという帰結となると思います。それに対して、役務の受領者側、顧客、債権者の責めに帰すべき事由による不能の場合については、先程述べました一般的な規定の場合と同じくなるというのが通説的な見解ではないかと思うのですけれども、役務受領者、債権者に帰責事由がない受領遅滞というのを1)に位置付けるのか、2)に位置付けるの か、また履行不能という評価をどのような事態にまで妥当させるのかというのは、実は議論の余地があるのではないかと思います。
少し抽象的な話になりましたので、今回のトピックに則して考えますと、例えば新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されて、外出の自粛が要請されている状況での、例えば結婚式のキャンセルにつきましては、大人数での会食を伴う結婚式というのは、履行不能と判断される余地というのはあり、そうであれば顧客から申し出たキャンセルであっても、すでにかかっていたような費用を除き、結婚式場は対価の請求ができないというふうに考えるのがデフォルトとなるという可能性があると思います。その一方で、例えば外出の自粛要請等はされていない時期に開催されるイベント、施設の利用が提供されるフィットネスなどに関して、契約はしていたのだけれども、例えば自身に基礎疾患があって感染リスクが高いからとか、あるいは自身の体調不良、不安感というのを理由にキャンセル・解約が申し入れられた場合はどうかというと、事業者からすればこれは履行不能ではないということになり、ただ消費者からすれば責めに帰すべき事由とまでは言えない役務不受領の事態とはなるんですけれども、民法の伝統的な考えからは、これは消費者が対価を負担するという事態になりそうです。ただ、そういった帰結でよいのかどうかというのは、議論の余地があるのではないかということは先程述べた通りでございます。
次のページにいきたいと思いますが。そのほかの不測の事態とリスク分配に関する民法規範としましては、過失がない限り損害賠償を支払わずに契約を解除できる権利としまして、やむを得ない事由による解除権などを挙げることができますが、ただ、このやむを得ない事由による解除権については、民法学においても、それほど議論が深まっているわけではございませんし、応用できるとしても継続的な債権関係までかなというふうに思いますので、ここではこれ以上立ち入らないということにしたいと思います。また、事情変更の原則というものは、一般的に知られているところでございますが、適用のハードルが高いというのは皆さんご承知の通りでございますし、契約の改訂や再交渉義務というものは、これまで主として事業者間契約を中心に検討されてきた印象がございますので、あまり消費者間契約に関しては、議論は深まっていないという印象があります。結論としましては、一対一の対等当事者間を念頭に置く、伝統的な民法の規範を参照軸にすると、まず事業者の給付が履行不能というふうに評価しうるような事態については、債権者である消費者に帰責事由がない限り、債務者である事業者は報酬や損害賠償は請求できないことになると、このように言えると思います。他方で、事業者側による給付やサービスの提供自体が履行不能になっていないような事態では、たとえ消費者に帰責事由がなく、不受領や解除をする事態となっても、報酬ないし報酬相当の損害賠償を、節約費は考慮することになるのですが、消費者は支払うということになりそうだということになります。
次のページに移りたいと思います。しかし、さらに消費者契約における大量性・消費者の特性を考慮して、あるべきリスク分配について考えるという発想を取る場合には、異なる考え方を採用できないかは問題としうるように思えます。参考となる議論としましては、直接的には継続的役務提供契約について呈示された視点なのですが、債務の内容あるいは履行に伴う不確実性について、その不確実性に伴うリスクの分配の不均衡が著しい場合に、これを考慮要因として法的介入を図るという発想、不確実性の均衡論という考え方が唱えられました。例えば病気・転勤等による顧客側の状態の変化から、サービスが継続できなくなるような事態についても、事業者は多数の顧客を相手としているの で、全体においてこのような事態が生ずる割合を予測し、一定の対応というのが可能であるけれども、顧客は自身に降りかかることとはいえ、リスク回避が困難な場合が多く、事業者の側のほうに不確実性を縮減したり対応できる可能性があるということを、約款条項の合理性判断などで考慮していくという発想でございます。こういった多数の顧客を相手とする事業者は、一定の範囲でリスクを回避ないし計算に入れる可能性があること、その一方で消費者は自分の側の事情であっても、リスクの回避策が取りにくいということ、また民法規範
においては帰責性というのがリスク損害を負担させるひとつの重要な要因とされていることなどに着目して、消費者契約におけるデフォルト的な規範というのを考えることができないかというのは、1つ問題としうる視点ではないかと思います。
次のページにいきたいと思います。最後になりますが、自己都合や消費者に帰責性があると言えるような場合に関しましては、契約のタイプによってはということになるのですけれども、利潤の部分、利益の部分も計算の基礎に入れた解約金条項を設けて良い、それは9条1項とか 10 条に照らしても許容されるという余地があるとしても、次の2)のところに書いている天災事変とか事業者側の領域の事由、これは双方無責の履行不能の事態も含む趣旨なんですけれども、これを解除原因とする場合については、たとえ消費者側からのキャンセルの申し出であっても、解約金とか取消料というのは徴収すべきではないということが言えるのではないでしょうか。つまり、少なくとも2)のような区分は、キャンセル料条項の規制というものを考えるときに、するべきではないのでしょうか、という問題提起です。さらに、3)で示しました消費者に帰責性のない解除原因の場合についても、もちろん予測可能性というようなことや計算可能性ということが問題となりますので、全部の事態ということではないかもしれませんけれども、利潤の部分を取らないというような考え方を、消費者契約のデフォルトの規範として出発点としながら、ただ証明とかコストの問題とかが関わるということになりますので、客観的に確認可能な事由とか、証拠に基づく申し出があるような場合に無料キャンセルを限定したり、契約内容を変えて代替を認めるということは許容されていいとは思うのですけれども、そういった発想を出発点にできないかと思っております。ただ、こういった柔軟な評価、対応というのをなしうるのは、本来は消費者契約法 10 条か、それに相応するようなガイドライン的なものを出すことかなと思っておりますの で、平均的な損害の額で判断する9条1号によって、こういった柔軟な対応をするのは、本来難しいのではないかなという印象を持っております。私からの問題提起的な報告は、以上ということにさせていただきたいと思います。
○xxxx
ありがとうございました。
○xxxx
それでは、委員の皆様から、国民生活センター及びxx先生へご質問をいただきたいと思います。ご質問がある方はお名前と発言を希望する旨をチャットでご送信ください。
それでは、xx委員、お願いいたします。
○xx委員
はい、ほかの方も希望されていると思いますので、手短に質問しますが。xx先生に質問させていただきたいのですが、大変詳細に整理をくださいまして私も大変参考になったんですけれども、一点、履行不能との関係というところで、事業者側の履行不能の場合には、対価は取れないのではないかというご発言があったわけですが、コロナとかも含めてですけれども、こういった不測の事態というのが、事業者側の事由による履行不能であるというふうに評価できるという点について、先生がどういう意味で事業者側の事由だというふうにおっしゃっているのか、もう一度ちょっとご説明いただけませんでしょうか。よろしくお願いいたします。
○xxxx
xx先生、お願いいたします。
○xxxx
はい、全ての事態について言ってるわけではないのですけれども、いずれにしても給付の提供として約束していたことが実現できなくなっていると言えるのであれば、社会通念上の不能の概念になるかもしれませんが、不能と評価する余地があるのではないかということです。結婚式の場合に、大勢の会食で病気が蔓延する状態なのに、そこで安全を確保しながら提供するということが、実際的にはもう無理であるということが客観的に言えるのであれば、それを提供・給付の不能、受領しないということではなくて、給付の不能と評価する余地というのはあるのではないかという趣旨でございました。
○xxxx
xx委員、よろしいでしょうか。
○xx委員
はい、ありがとうございます。事業者側としては「提供したい」という場合であっても、履行不能というのは社会通念で判断される以上は、それは履行不能と評価せざるを得ない場面というのがあって、それは消費者側の事情による
履行不能ではないから、対価は取れないのではないかと、そういう趣旨だと理解いたしました。
○xxxx
そうですね、そういう趣旨になります。ありがとうございます。
○xx委員
ありがとうございます。
○xxxx
ありがとうございました。それでは、xx委員、お願いいたします。
○xx委員
xx委員とxx委員が先に出されているようですけれども、私で大丈夫ですか。
○xxxx
失礼いたしました。きちんと見ることができていませんでした。申し訳ありません。まず、xx委員、そしてxx委員、次にxx委員でお願いいたしま す。どうもご指摘ありがとうございました。xx委員、お願いいたします。
○xx委員
xxです。よろしくお願いいたします。一点だけなんですけど、民法のデフォルトルールの考え方なんですが、私も先生が整理していただいた通りの理解をしております。また、8ページで書いていただいた民法 651 条2項ですが、私は、継続契約・委任契約については、これがデフォルトとなる部分であると理解しております。履行不能の場合は債務の危険負担的な問題となりますが、完全な履行と評価できる場面であっても、委任契約のデフォルトだと解除自身は可能となります。そして例外場面に該当する場合には、解除に伴い損害賠償がありますけど、やむを得ない理由による解除の場合は、再び本則に戻って、損害賠償のない解除となる、これがデフォルトと理解しております。先程、あまり深入りしないという話と、多分、学説がまだきちんと整理が、あまり論及されてない感じがしてまして、だから「論及してないから、置いとく」という考え方もひとつですが、もっと論及して、これをデフォルトとして捉える、あるいは消費者契約におけるデフォルトとしては、損害賠償がない、あるいは損害の範囲が限定されるといった点を重視するといったような考え方を取るべき
だとは私は考えておりますが。ちょっと質問になっておりませんが、先生のお考えはどうでしょうか。
○xxxx
xx先生よろしくお願いいたします。
○xxxx
そうですね。ちょっと難しい問題ですけれども、特に契約の種類とか、継続的な契約か一時的なものかというところの細分化は本当はして議論はしなければいけないことは重々承知でございますけれども、今回はそこに立ち入る時間もないので、不測の事態や解除の事由というものと、解約金、違約金の規制がどういうことになるかというところにフォーカスした説明をさせていただきました。契約の形態や種類などによって、考えるデフォルトが変わってくるのではないか、というのはその通りだと思います。ただ、やむを得ない事由がある場合に損害賠償をしないで解除ができるという場合のやむを得ない事由というのが、どういう事態にまで認定できるのかについては、一般的な規範がないため、日本の民法ではあまり検討が深まっていないということになると思いま す。そこは今回は、大上段に出していくのは控えたほうがよいという印象がありました。はい、以上です。
○xxxx
ありがとうございます。それでは、続いて、xx委員、お願いいたします。
○xx委員
ありがとうございます。xx先生もご報告ありがとうございました。1つ、お伺いしたい点があります。今回のコロナウイルスの状況というものを、どう捉えたらいいのかという点についてです。キャンセル料条項についての捉え方として、9条の平均的損害によるのか、10 条によるのかという観点を出していただいたのですが、この条項の効力を9条か 10 条かという形で判断するときに、その前提として、この条項が果たして、このような状況をカバーしているのか、という問題があるように考えております。一種、事情変更的な発想でもあるんですけれども、天災などについても知られている天災といいますか、そういうものというのは十分想定もできるし、場合によっては具体的な危険として保険等による処理ということもありうるように思っているのですが、今回は全く初めての事態で、しかも地域性がある部分もあるけども、全商圏というのでしょうか、ビジネスの範囲ということですが、全商圏がダメになってしまう
というような事態で、例えば代替取引の可能性とか、そういうものもないという状況であったり、これがまた状況が変化していってというようなことがあって、全くxxの事象・状態という感じがしております。そういった場合についても、やはりこのキャンセル料条項がカバーしていると見るべきなのかです。事情変更で言われる合意の外というか、それを越えたところに事情変更があるとすると、この条項がカバーする範囲という点からして果たしてカバー範囲なのかと、9条や 10 条に入る前の段階で何かあるような気もしております。それは従来の天災等と違う不測の事態ということで、このコロナウイルスの状況というものを捉えることでいいのか、ほかのものと同じように「不測の事態のひとつです」というふうに捉えることでいいのか、それとも全くxxで、かつxxであっても、例えば、新しいウイルスで、十分ほかのものとアナロジーで考えられるというのはありそうな気もするんですけれども、非常に特別な場合だということで、別に考える余地があるのかというのが気になっております。これは冒頭のxx委員や楠委員のご発言にもあったところですので、コロナといっても、これが大体どういうものかが分かってくれば、知ってる天災のランクになってくるような感じもします。ですので、その意味でも時期によるというのはかなり大きなスパンでの時期による考え方、あるいはカテゴライゼーションの違いというか、そういうものがありそうに思ってるんですけども、もしその点についてお考えをお聞かせ願えればと思います。以上です。
○xxxx
xx先生、お願いいたします。
○xxxx
はい、それはひとつの重要な視点だとは思います。そもそも、こういったキャンセル料条項に基づいて、実務ではお金を取ったり、あるいは取らなかったりということをしているわけなのですけれども。そもそも、そういった条項というのが、全くこの事態というのを予測しないで置かれているものだったとすると、その条項に基づくということにはならない。それでは何を手掛かりに解決するのかというと、こういった不測の事態における民法法理的なもの、不能とかの事情変更の場合というのは、究極的なところも想定してると思いますので、そういった発想というものを参考に問題の処理をしながら、ただ国としてどう対応できるのかというところも影響してくるでしょうし、時系列の流れが重要だという指摘もそのように思います。おそらく最初は全くこういった事態というのは分からなかったけど、段々分かってきて、それでも予約をしたり、キャンセルしたりという状況がありますので。時期によっても、あるべき行動
というのは違うというふうに思うのですけれども。なので不測の事態というふうにいった場合に、今回のコロナの問題と通常の事業者の考えているような自然災害とか顧客の病気とかいう事態というのを分けて考える必要があるのではないかというのは、その通りだとは思うのですが、ただコロナ禍でも、結局、取る取らないの判断が分かれておりまして、民事法的にはやはり取れるか取れないかの判断は結局できることにはなると思います。後から損害賠償不当利得で巻き戻す」というお話になるときに、一定の整理をしておく必要はあるのではないかと思っております。
なので、冒頭にご指摘いただいたように、そもそもキャンセル料条項というのが、今回のコロナの事態というのをカバーするものなのかというところは、確かに出発点としては吟味されてもいいのかなというふうに思うのですが、カバーしない場合は、民法の規範に落ちてくるのかなというふうに思うので、民法のデフォルト規範に照らして、その契約条項というか取り扱いが有効、無効というのはxxxとか9、10 条で判断しなければいけないというようなお話になるのかなあと伺っておりました。
○xxxx
ありがとうございます。おそらく、契約の解釈で、キャンセル料条項の射程が今回のコロナのような場合に及んでいないとなれば、そのキャンセル料条項は適用されないというだけになり、有効・無効の問題ではなくなることになりそうです。ただ、そうすると、どのような規範がこの場合に適用されるかが問題となり、この点についてxx先生がご指摘されるデフォルトルールというのでしょうか、それが問題になるという整理ではないかと思います。もちろん、そのデフォルトルールの内容が何かが大きな問題ですけれども。
どうもありがとうございました。それでは、xx委員、お願いいたします。
○xx委員
はい、ありがとうございます。国民生活センターの方に事例について質問をさせていただければと思っております。
二つの事例についてご質問したいのですが、まずひとつが資料5ページの新型コロナウイルスのホテル宿泊の事案、そして、資料9ページの新型コロナウイルスのバスの定期券の事案です。これは、どちらも、ホテルや旅行の業界ではよくあるのですが、「解約できない」ことを条件にして安い価格で提供する商品プランがあって、それをお客様が採用されているケースなのではないかと思います。その関係で、この5ページのケース、9ページのケースそれぞれ で、例えば「解約できる別のプランがあった」とか、「通常の通学定期券が別
途あり、それは解約できる」というような事情があったのかどうかについてお伺いしたいのが一点です。また、ホテルの宿泊の方については、「そういう返金できないという対応でよろしいのですか」といったことを、国民生活センターの方がおっしゃったと先程お話しされていたと思いますが、それは、こういうコロナのようなケースでは、解約できない商品であっても返金すべきだという趣旨でおっしゃっているのか、それとも、消費者契約法違反ということもおっしゃっていましたが、「解約できないけれども安いプランを提供すること自体がそもそも好ましくない」ということをおっしゃっているのか、どちらなのかが気になりましたので、教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○xxxx
どうもありがとうございました。それでは、お答えをお願いいたします。ミュートをオフにしていただけますでしょうか。音声がうまくいっていないようですが、ご回答をお願いしてよろしいでしょうか。
○国民生活センター
国民生活センターです。すみません、ちょっと途中で回線が切れてしまいまして、1つ目のご質問をいただいているところまでは聞こえていたので、そこについてまずご説明をさせていただければと思います。まず、5ページ目のホテル宿泊の事例でございますが、すみません、こちらはほかに解約可能なプランがあったかどうかというところまでは把握はできておりません。ただ事業者の話では破格のプランだったということであります。ただ、計算すると1人当たり1泊 8,000 円程度、3人で6日間 17 万円程度の契約なので、それが破格と言えるかどうかというのは、判断が色々あるかなというところです。
あと、もう1つ目のバスの事例ですけれども、こちらは複数のバス会社の路線が乗り放題の事例ということで、通常のバス定期券とは違うちょっと特殊なプラン・契約でございました。なので、通常のバスの定期券であれば、払い戻しされるケースも聞いておりますけれども、これはある種、特殊な定期券ということで、一切払い戻しがないというものでした。すみません、もうひとつ質問があったかもしれないんですが。
○xxxx
ありがとうございました。xx委員、もう一度、後半の質問をお願いしてよろしいでしょうか。
○xx委員
はい。ホテルのケースについて、「代金が一切返金できない」ということに対して、「それはおかしいのではないか」ということを、国民生活センターの方からお話しされて、「消費者契約法違反になる可能性があるのではないか」ということをおっしゃったと先程伺ったのですが、これがもし、解約できない代わりに安い価格で商品を提供しているプランであって、ほかに通常の価格のプランがあった場合に、「こういうコロナのようなケースでは、解約できない商品であっても、代金は少しでも返還すべき」ということでお話をされたということなのか、それとも、「そもそもコロナのような状況でなくても、解約できない代わりに安いという商品を提供すること自体が、解約できないということは返金できないということにつながるので、それ自体が好ましくない」と考えて、そういうご指導をされたのか、お伺いできればと思います。
○xxxx
それでは、お答えをお願いいたします。
○国民生活センター
はい。考え方としましては、土台としては消費者契約法の不当条項という形なんですけれど、ただそれだけを一本にしてお話をするというわけではなく て、コロナという状況だということですとか、訪日観光客ということで、多少の延期の条件は提示されてはいるんですけれども、やっぱりその望みはかなわないことですとか、そういったことを諸々考慮したうえで、お話し合いをさせていただいてるというところです。指導という言葉は出たんですけれど私たちとしてはお願いベースでお話ししている、検討してもらって、それについて対応の状況を聞かせていただく、というようなお話をさせていただいています。
○xxxx
ありがとうございました。xx委員がご指摘の問題はここでの検討課題かもしれませんね。
○xx委員
はい、ありがとうございました。
○xxxx
それでは、続きまして、xx委員、お願いいたします。
○xx委員
はい、経済学を専門にしておりまして、法律家の先生方の議論には極めて不案内で大変申し訳ないのですが、xx先生のご報告に関して2点質問がございます。1 点目はまず、帰責性というのは、広い概念であるというふうに理解しておりますので、この文脈の中で帰責性というのは一体どのように定義されるのかというのをちょっと伺いたいなというのが一点。もう1つの点は、自然災害とか不測の事態といった場合に、例えば国民生活センターのご報告にありました台風の災害ではですね。例えば 10 月上旬に、10 月中旬の山間部の施設の宿泊を予約するといった場合、この季節なんで山間部にあるところは台風のリスクは大きいだろう、当然、台風が来たら行けなくなるというリスクは大きいだろう、しかも台風が来る確率は低くはないだろうというのは予測できるといえばできます。しかしながら自然災害であるという意味で、地震と似たようなところもあります。つまり地震というのは、いつ何が起こるかというのは全く分からないことが多いと思うんですが、こういう台風に関しては季節、ないしは宿泊施設のある場所等から、ある程度リスクを消費者側が予想することができるというふうに考えます。正確に予想することはどちらも不可能なのですけども、確率ないしはそういった事象が起こりうる可能性というのは台風と地震では違うと思います。そういう違いというのは、法律家の先生方の議論の中で考慮されているのでしょうかという2点です。よろしくお願いします。
○xxxx
それでは、xx先生、お願いいたします。
○xxxx
ありがとうございます。帰責事由に関しましては、抽象的な定義というのは民法でされているところでございます。契約その他債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして、責めに帰することができるかどうかというのを考えるということで、締結されている契約の内容に応じて、考える必要があるという概念になっていて、抽象的なものになっているというのはその通りなんですけれども。確認としまして、どういうご質問でしたでしょうか。
○xx委員
それが今のお話だとちょっと抽象的すぎるので、もう少しこのキャンセル事由であるとかそういった文脈の中で落とし込むとどうなるのかな、自己都合との違いということを、ちょっとおっしゃられていたので。自己都合と帰責性と
いうのが違う。というふうになると、その帰責性というのは一体、何を指し示しているのか、もう少しちょっと理解したいなと思いまして。
○xxxx
基本的には、自己都合のような場合が、今回の文脈では消費者の方に帰責性があるキャンセルだというふうに位置付けていいのかなというふうには思っているのですけれども。そのほかのものとして、どういうものがちょっと挙げられるのかというのが、今回の文脈ではすみません、直ちには思い浮かばない状況です。
○xx委員
都合とは違うっていうようなことは、ちょっとおっしゃられていましたよね。その自己都合と帰責性は全く同じと考えていいんですか。
○xxxx
自己都合と帰責性が違う。
○xx委員
同じと考えてよろしいってことですか。そうすると。
○xxxx
完全なイコールにはならないとは思うのですけれども。
○xx委員
ちょっとその違いに興味がありまして。
○xxxx
違いに。分かりました。自己都合じゃなくて消費者に帰責性のあるキャンセルの事例というのが、すみません、今直ちには思い浮かばない状況ですね。
○xx委員
分かりました。
○xxxx
はい。もう1つの、台風とかで消費者も「もしかしたら、こういった宿泊というのができなくなるのではないか」ということは、ある程度予測ができるけ
れども、そういう場合にどう考えるのかというご質問だったと思うのですが。そういう場合についても、先程の不確実性の均衡といった観点からみると、宿泊側も一定程度のキャンセルは出るだろうということをお互い予測しあっているということになりますので、その場合に、今回は全く泊まれなくなったという場合、サービスの提供はされないということになります。その場合に、妥当なキャンセル料はどういうふうに考えたらよいのだろうかというところで、少なくとも、利潤をまるまる取るようなキャンセル料というのは、取らない対応を事業者の方に要求するという発想はできないだろうかという考え方を示したということにはなります。
○xx委員
すみません。消費者の側でリスクが十分にあると認識していた場合でも、利益をまるまる取ることはできないだろうという理解になるわけですね。
○xxxx
そうですね。リスクが一定程度あるということが分かっているような場合でも、そのような状況は結構あるのではないかと思うのですが、他方で提供する事業者側もそういったリスクによってキャンセルの事態があるということは分かるわけですよね。そういう場合に、全くサービスも何も提供してないのに、 100%利潤取りますよという対応というのを、全ての事例で貫徹していいの
か、そういう問題提起になります。
○xx委員
なるほど、分かりました。どうもありがとうございます。
○xxxx
それでは、xx委員、お願いいたします。
○xx委員
どうもありがとうございます。xxです。2点ご質問がありまして、いずれもxx先生のご報告に関連するんですけれども。一点目はですね、直前のご議論とも若干関連するかと思いますけれども、今日のご提示いただいた資料9ページのところで、中ほどに、事業者は多数の顧客を相手とするということなので、リスクを回避あるいは計算に入れる可能性があるということをご指摘されていて、このことが様々な規律の在り方にですね、とても大きな意味を持っているということなのではないかというふうに伺ったんですけれども。今回のコ
ロナのような事例を拝見していますと、非常に大量のキャンセルが同時期に発生するということになっており、事業者としてもそこまでのことを予測できたのかどうかという問題があると共に、そのリスクをとても負担できないのではないかということがあり、他方、消費者側は、確かに何と申しますか、被害を被るという側面はあるんですけれども、しかし個々の消費者にとっては、それがどこまで負担しうるコストなのかという観点から見ると、それが分散されているというような状況にあって、そういった点が今日お示しいただいた議論にとって、何か意味をもつことになるのか、それともそういったものも含めて、事業者の側で基本的にはリスク回避すべきもので、回避のための対応をとるべきであるということになるのか、ということが一点目です。
それから2点目なんですけれども、これは先程のxx先生の提起された問題に関わるので、従ってむしろxx先生にお伺いするのが良いかもしれないんですけれども。例えば今回のコロナのような問題というのは、一般的には全く予測できないような性質の事態であったと、一般的な解約条項のようなものが、こうした事態等に適用されないのではないか、カバーしていないのではないかといったような問題があるとしたときに、そのことというのは、xxxは本当に誰も予測していなかったんだとすると、誰も予測できなかったわけですか ら、いかなる条項も、このことはカバーしていないというように考えることになるのか、それとも条項の文言とかですね、趣旨とかそういったものによっては、こういうコロナのような事態もカバーしているかもしれないんだけれど も、していないような条項もあるといったような個々の条項の解釈の問題ということになるのか、そのあたりについて何かお考えがございますでしょうか、というのが2点目のご質問になります。よろしくお願いいたします。
○xxxx
それでは、xx先生、お願いいたします。
○xxxx
はい、ありがとうございました。確かに、事業者というのは多数の顧客を相手としているので、色んなリスクについて計算に入れて商品の価格設計できるだろうという発想を取った場合に、全くの予想外のリスクで、しかも損害が非常に莫大に生ずるような場合に、こういう発想というのは妥当しないのではないかというのは、重要なご指摘であると思います。こういった発想を取る場合については、例えば一般的にはこういう発想が取れるとしても、計算外の事態については、こういった考え方は及ばないので、デフォルトとして事業者が一定程度は引き受けるべきだという発想が妥当しなくなるのではないかというこ
とは言えるのではないかと思います。コロナとそれ以外を区別して考えるべきかどうかという問題提起に、こういった計算予測可能性の限界というのが響いてくるという可能性は、もちろん否定はしません。そういう場合については、しかしながら、コロナの問題につきましても、感染が拡大というふうになるとキャンセルが出る、どういうふうな事態になるみたいなことは事業者側でも経験が蓄積するような段階になったら、むしろコロナを理由にする場合については、こういう対応をするというような指針というのを示していっていただくというのが、消費者にとってもキャンセルの場合の納得というのはできる方向になるのではないかという意味で、ある程度、事態が進んだ場合については、情報提供と確認というのが、重要になるかもしれません。
あと、こういった予測できない事態の場合に、条項が何処までカバーするのかというのは、文言と個々の条項にもよるんだろうかというのは、私自身は不可抗力みたいな言葉が入っていることもあるので、場面と条項を、本来は、ひとつひとつ見る必要があるのかなというふうには思います。以上になります。
○xxxx
ありがとうございました。先程xx委員が指摘された、一切解約を認めない代わりに、こういう安いサービス等を提供する、しかしそれ以外の場合については、こういう代金でサービスを提供するというのは、ひょっとすると解釈の余地があるかもしれないですね。結論が分かれるかもしれません。
ついでにもう1つだけ、私の方からもお聞きしておきたいのですけれども、先程のお話で、キャンセル料条項がこのような異例の事態の場合には適用されないとすると、結局はデフォルトルールが何かで、それに従って判断がされるとするならばということですけれども、先程、xx委員から、651 条等で、やむを得ない事由がある場合については、解除ができるだけではなく、損害賠償をする必要もないとされているのが手掛かりになるのではないかというご指摘がありました。この条項ないしはデフォルトルールをどう理解するかということがひとつの問題だろうと思います。
その際に、私からの質問なのですけれども、契約をした以上、契約を守らなければならないけども、委任の場合は、委任者のための事務ですので、履行を受ける必要がなくなれば、解除はできる。ただ、契約はやはり守らなければならないので、損害賠償はしなければならない。ただ、やむを得ない事由がある場合には、その損害賠償もする必要がない。こういう構造になっていると思います。この場合の損害賠償というのは、契約は守らなければならないから、損害賠償という形で契約がされたのと同じ状態にしなければならないということだろうと思います。とすると、民法でいう履行利益に当たるものの損害賠償は
する必要がない。しかし、受任者、つまり事業者の側がすでに費用をかけている場合には、その費用の賠償はやはりしなければならないというように考える余地はあるのではないかと思います。もしこれがデフォルトルールだとする と、このキャンセル料条項が仮にそのまま適用されないとした場合の解決の手掛かりにもなるかもしれないと思います。
もちろん、そのような個別の民法のデフォルトルールの問題ではなくて、もっと大きい政策的な問題であって、民法のデフォルトルールに当たるものとは離れて考える余地があるということかも知れません。このあたりは、xx先 生、見通しはいかがでしょうか。
○xxxx
はい。なかなか見通しは難しいというふうに思うのですけれども、ひとつの考え方としましては、役務型の契約の場合についても、役務を受領する側の自己都合ではない事態について、全く役務の提供がないのであれば、既履行部分と、かかった費用だけは顧客に払ってもらうけれども、それ以上に履行していない部分についての対価的なものまでは取れないというのはひとつのルールとしてはありそうな気がしますので、そういうものをデフォルトとして考えるというやり方はありうるかもしれません。やむを得ない事由をどういう場合に認定していくのかというのは、おそらく民法学者が取り組まなければいけないことかもしれませんけれども、不能概念とどこまで違うのかというあたりを詰める必要があり、かつその不能概念、主観的不能、あるいはやむを得ない事由というのを考えるときに、契約の類型というのが物を渡すタイプのものとサービスの場合とでやはり違うのではないかという話は出てきそうな気がするので、そこのデフォルトによって、解決というのが違ってくる可能性は確かにあると思います。以上です。
○xxxx
どうもありがとうございました。それでは、xx委員とxx委員からお手が挙がっておりますので、このお二方で差し当たりここまでとさせていただきます。まず、xx委員、お願いいたします。
○xx委員
はい、xxxxありがとうございました。現場にいる消費生活相談員でございますので、法律の専門ではないので、大変勉強になりました。先生に、質問というか私として分からない部分なんですけれども、帰責性とか不能の事態ということに関連することでございます。何回か、社会通念という言葉が出てき
ておりまして、これを考えるには、社会通念という言葉がひとつのキーワードかと思っております。コロナ禍での現場の悩ましいところでもあります。完全に履行ができない、履行不能か。それとも履行は、こちらはできる。ただ交通手段がないから来られないだけではないか、ということではなく、今回のコロナの問題でございますと、例えば結婚式場の場合、特に比較的しっかりと言いますか、大手の場合ですと、かなり準備をきちんとされていて、事業者の裁量としては万全を期して対応をしている、これだけの対応をして皆様にしっかりと予定された挙式をしていただくことができるようにしているというふうな中で、やはり感染が心配であるとか、人々の考え方が二分している。かなり厳重にやっている中、やはりそこは、そうでもないところがあるという現象の中 で、これは履行ができる・できないの問題ではなく、すべきではないと考えるのか、してもいいと考えるのかという、かなり主観的な部分が影響してくるとき、こういった問題はどうやって考えたらいいかということがひとつ疑問に思いました。それから、この場でこういったことが想定されていなかったと思いますので、よくある業界団体のお作りになった約款、これは、業界団体も色々と消費者の苦情も鑑みて、お作りいただいているものでございます。その中にも通常、一般的に、例えば天災その他、会場側の責任に帰することのない事由により会場の使用ができない場合というのが、解約条項の中に入っておりま す。こういったことが今まであまりなかったからだと思いますが、天災その 他、会場側の責任に帰することのない事由というふうに、かなり、大雑把に十把一絡げにしているものもありますが、台風でもそれぞれの状況があったり、また地震も多くなっておりますし、こういったウイルスのこともある。なの で、こういったような不測の事態のルールを事前に作るという場合も、少しまた視点を変えて考えなくてはいけないと、現場で思っていますが、先生はそのあたりはどのようにお考えか、教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○xxxx
xx先生、お願いいたします。
○xxxx
はい、現場は非常に対応が大変であると思います。コロナに関しまして結婚式場も、その対策をしてるから、履行が不能というふうにこう評価する、しないというのはなかなか難しいんじゃないかというご指摘だったと思います。その通りかなというふうには思うのですけれども、春先に、国としても感染拡大というのを防止しなければいけないので、外出しないでくださいと緊急事態宣
言を出したという状況と、そうではない時期に入ってから、それでも、自分から契約したという状況では違ってくる可能性もあるかなと思っております。全部の事態を一律に評価するのは本当は民法的には非常に難しいということになりますので、その時期に応じた、考え方の整理と今後についてはご指摘の通 り、災害とかこういうウイルスとかが、世界的に避けられないというような状況になっているので、こういう天災事変その他不可抗力について、漠然と言及していた条項を、もう少し精査して、具体的な事例に則した考え方を整理しておく必要があるというのは、その通りではないかと思います。参考にならないかもしれませんが、このように考えております。
○xx委員
ありがとうございました。
○xxxx
それでは、最後に、xx委員、お願いいたします。
○xx委員
はい、私は全く専門が違うので、変な質問になって申し訳ないんですけど も、まず法的な、その基本的な考え方なんですけれども、社会通念っていう言葉が出てきましたが、それは社会心理学で考えますと、感情とか、関連する科学の知識とかが影響して、その時その時によって、社会的通念の形成に用いられる情報というのは変わるわけなんですね。ですから、「不測の事態」というのが、どう捉えられるのかというのは、時代時代で変わってしまう。つまり、
「キャンセル料金」の法的な考え方には、そういう日本の独自な社会的通念みたいなものが反映されているものなのか、それとも多くの国、世界の色んな 国々で共通している考え方なのかといった点を教えていただきたいと思いま す。
○xxxx
それでは、xx先生、お願いいたします。
○xxxx
はい、私がコメントできるところを超えてるような気もするのですが。ある程度は、やはり国際取引もありますので、共通する部分はあるのですけれど も、問題によっては日本における慣習とか考え方というのが、反映されることもあるのではないかと思います。そういう意味で、世間の人々がどう考えてい
るのかということに関して、消費者庁とかが今回アンケートをとったのは非常に重要であると思っております・また、消費者問題に関しましては、アンケートの結果を見させていただいたんですけども、消費者というのは書かれていることについて、苦情が述べにくかったり、書かれているから仕方がないというふうに思ってしまうので、それが必ずしも厚生とかxxとかに合致しているとは限らないので、そこは少し注意して考えていく必要があるのかなと、このように思っております。以上です。
○xxxx
どうもありがとうございました。それでは、国民生活センター様とxx先生に対する質疑はここまでとさせていただきます。
○xxxx
xxからは、本日の議題について意見交換を行いたいと思います。xx先生には検討会に最後までご参加いただけることになっておりますので、追加でご質問等がありましたら、意見交換においてご質問をいただくことも可能です。それでは、まず、xx委員から、資料3の説明をお願いいたします。
○xx委員
はい、xxです。お時間いただきまして、ありがとうございます。資料を共有していただけますでしょうか。はい、こちらですね、今回、前回からずっとコロナウイルスに関するお話をしておりますので、実際どういう相談事例があるのかということを消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会、通称 NACS さんの方へ問い合わせをいたしました。私共のところでは相談業務をやっておりませんので、相談を受け付けているというところで、問い合わせましたら、複数ご紹介いただきましたので、検討の参考資料として報告したいと思います。ずっと下をいっていただけますでしょうか。私は情報を提供していただいたという立場でご報告をいたします。時間もあれですので、簡単に読み上げたいと思います。
①です。通っているヨガ教室は新型コロナの影響で4月 10 日から5月末ま
で休業している、退会したいと思い連絡しましたところ、4月分の月謝 8,000円を支払わないと退会できないと言われた。事業者は「規約に『災害などでの休業の場合は月謝の支払いが必要』と書いてあるので、月謝は支払わないと退会できない」といっている。このような場合は、消費者が泣き寝入りしなけれ
ばならないのかということでした。これは斡旋不調に終わったということで、日弁連のコロナの無料相談をご紹介したということでした。
②です。2か月前に挙式予定だったがコロナの影響で延期した。最近、式場を予約したホテルから緊急事態宣言が解除されたのでコロナ収束の方向にもあるので延期していた挙式の日取りを決めてほしいと頻繁に催促されている。日取りの再設定は難しいと答えたが応じられず、キャンセルするならキャンセル料を請求すると、高圧的な態度だったので、キャンセルするつもりはなかったんですけれども、ホテルの対応に不満を感じてキャンセルをしたいという相談です。
次です。③ですね。3月にホットヨガ教室に入会をしたそうです。1年契約をすると3か月間はほぼ9割引きの優待価格で利用できるというので、年契約にしました。コロナの影響で3月は半分しか営業せず、4月は1週間のみ、5月は全く開いていませんでした。何の連絡もないのでホームページを見たら、
6月に急に再開すると表示があった。慌てて2日前に教室に行ったところ、優待は3か月なのであなたの優待はもう5月に終わっているというふうに言われたそうです。ですけれど、全然そのサービスを利用していないので優待期間を
1ヶ月でいいので繰り下げてほしいというご相談です。これに関してはこの優待に関する契約内容に記載がありませんでしたので、お願いベースでもう一度お話してみればというふうにアドバイスをされたそうです。
④です。新型コロナの影響で海外旅行2つがキャンセルになった。Aクレジットカードはリボ払いの手数料まで返金してくれたが、Bクレジットカードはリボ払いの手数料は返金されなかったということです。ここに不満を感じているということですね。
⑤です。昨年 11 月に今年5月2日から6日にタイ旅行に行く予定を立て、
往復の航空券の手配をネットで依頼した。代金 14 万円はクレジットカード一括払いで支払い済みである。飛行機が欠航になったため、全額返金すると手配業者から5月に連絡があったが、その後航空会社の規約が変わり、1年後まで利用可能の優待クーポンで返すと言われた。納得ができないということです。
⑥です。妻が看護師をしており、新型コロナの感染拡大に伴い、県を越えた移動を自粛する必要がある。予約取消を伝えたら規約に書かれているキャンセルポリシーの通りとなり、キャンセル料が発生すると言われた。料金はすでに支払い済み、社会情勢を考慮した配慮があってもいいのではないかということです。現在まだ予約状況のままキャンセルはしていないそうなんですが、キャンセルではなく、地元にある系列ホテルに変更してもいいかなとは思ってるということです。これは1つの情報提供としてお電話があったそうです。
⑦ですね。娘が5日前にスポーツジムのチラシを見て3日前にジムに出向 き、無料体験を受け、9万 7,260 円の年会費を支払って入会した。しかし、コロナ禍で心配で本人もやめたいと言っているがやめられるか、規約には1年契約なので途中ではやめられないと書いてあるようだ。まだジムには通っていないというご相談でした。これはですね、特商法の方で相談をして、途中解約が認められたということです。年会費の1割と手数料を払って退会ができたということでした。
⑧です。今年の2月、未xxの娘がネットの仲介サイトを通して、アイドルのコンサートチケットを2枚申込み、親である自分のカードで1万 6,000 円を決済した。コロナの影響で5月のコンサートが延期され、9月頃、中止の連絡が仲介サイトからメールで届いた。返金するので 10 月の決められた期限までに手続きするようメールに書いてあったようだが、娘がメールを最後まで読まなかったため返金手続期限が過ぎてしまった。仲介サイトに返金してほしいとメールを送ったができないと言われた。納得できない。このご相談では、xxxは届いて9月の末まで決められた期限までがちょっと短かったというようなご相談だったようです。
最後になります。⑨です。私立高校の入学試験要項には入試当日の注意として新型コロナウイルスに関する事項の記載がある。感染拡大防止の対応とし て、条件に当てはまれば受験できないことは理解できるが、受験できない生徒に対して後日追加の試験も行われず、入学検定料の返金も行われないと記載されている。入学試験要項には入学検定料については「一旦納入された入学検定料は理由の如何にかかわらず返還しません」となっている。コロナ禍で今後の状況は分からないが、自己都合ではなく受験できないのであれば受験料も高額であり、返還、また後日受験できるとの代替措置をとってほしい。代替措置をとっている学校もあり、情報提供をしたいということです。このご相談、またこれからまだコロナ収束しない中、また次の受験の時期にもなりますので、これは貴重な情報だったのかなというふうに私も感じましたので、ご報告させていただきます。以上です。
○xxxx
どうもありがとうございました。ここからは、委員の皆様からご意見やご質問をいただきたいと思います。これまでと少し違いまして、私の方から順にご指名するという方法ではなく、ご意見がある方はお名前と発言を希望する旨を先程と同様、チャットで送信いただけましたら、ご指名をさせていただきま す。なお、発言は、おおむねの目安ですけれども、3分程度まででお願いいたします。また、ご意見につきましては、意見そのものをチャットに入力するの
ではなく、私からの指名を待ってご発言いただきますよう、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
それでは、xx委員、お願いいたします。
○xx委員
xxです。不測の事態におけるキャンセル料の取扱いについて議論するにあたっては、まず、消費者による当該消費者契約の解除等が消費者側の事情によるものか、事業者側の債務不履行によるものかを考える必要があると考えま す。その上で、結論としては、事業者が法的な義務を超えた対応を行うか否 か、そして、その内容や程度は、状況に応じた当該事業者の自主的な判断によるしかないと考えています。
当該消費者契約の解除等がどのような事情によるのかを具体的に判断するにあたっては、例えば、コロナ禍においては、各地の感染状況や新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく政府・都道府県の措置等の状況などを踏まえ て、それが、消費者による任意解除なのか、または、各事業者の債務不履行なのかを具体的に検討する必要があると考えます。つまり、まず、時期の問題として、緊急事態宣言前、緊急事態宣言期間中、緊急事態宣言後では、それぞれ状況が異なると考えられるほか、また、新規感染者の状況など地域や事業者によっても状況が異なると考えられることから、それらを分けて考える必要があると考えます。
具体的には、緊急事態宣言前においては、大規模なスポーツや文化イベントの中止・延期等が政府から要請されたり、一斉休校が行われたりしたものの、そのような措置は社会活動の一部にとどまる一方、4月1日時点では、累計感染者数が未だ1桁の県が 20 あるなど、基本的に債務不履行とされる状況には
なかったものと考えられます。なお、令和2年3月 19 日付け厚生労働省医
薬・生活衛生局生活衛生課長、国土交通省観光庁観光産業課長周知依頼「新型コロナウイルスを理由とする個人の宿泊予約のキャンセルについて」では、
「国としては、コロナウイルスの拡大防止のため、あくまでも大規模なスポーツや文化イベントの中止、延期等の対応を要請したものであり、国内移動や宿泊の自粛を国民に求めたものではないことから、予約者の判断によるキャンセルである場合においては、当事者間で特約のない限り、キャンセル料を収受することができます。」とされています。
次に、緊急事態宣言については、4月7日に7都府県に対して発令されたのち、4月 16 日に全国に拡大されていますが、その後、5月 14 日には 39 県が
解除、5月 21 日には関西3府県が解除され、5月 25 日にいたって全面解除となっており、緊急事態宣言の適用の状況自体が都道府県ごとに異なっていま
す。さらに、新型インフルエンザ等対策特別措置法 45 条に基づく特定都道府県知事による施設使用制限等の措置要請についても、その有無、対象施設や期間が都道府県ごとに異なっています。また、緊急事態宣言下においても、医療関係者、生活支援関係事業者、そして、インフラ運営関係・飲食料品供給関係などの、国民が必要最低限の生活をするために不可欠なサービスを提供する 10類型の事業者、これには食堂、レストラン、喫茶店などを含みます、さらに、金融サービス・物流・運送サービスなどの、企業の活動を維持するために不可欠のサービスを提供する7類型の事業者、これには鉄道、航空などを含みま
す、その他の事業者については、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」によって、「三つの密」を避けるための取組を講じつつ、事業の継続が求められる事業者」とされており、事業者によっても状況が異なるものと考えられます。従って、4月7日から5月 25 日までの期間であっても、少なくとも、緊急事態宣言がまだ発令されていない地域や解除された地域、及び緊急事態宣言下における継続対象事業については、基本的に債務不履行とされる状況にはなかったものと考えられます。
次に、緊急事態宣言後においては、感染拡大防止と経済活動の両立がはかられており、5月中旬以降、23 類型の 250 を超える業界団体等がガイドラインを作成して、感染防止対策を行いつつ事業を行うほか、Go To トラベル、Go To イート事業に見られるように、事業活動の促進をはかる施策が行われており、基本的に債務不履行とされる状況にはないものと考えられます。なお、Go Toトラベル事業において、開始時のxxxや、今回の大阪市、札幌市が除外されるにあたり、政府がキャンセル料を負担・補償する旨を公表していますが、これは、キャンセル料を取得できることを前提としているものと考えられます。
前回申し上げた通り、不測の事態が生じた場合の消費者及び事業者の状況 は、生じた事態によって様々であるため、事業者は、不測の事態におけるキャンセルについて、不測の事態にかかるキャンセル規定の有無にかかわらず、事案に応じて柔軟に対応するよう努めています。しかし、このような柔軟な対応を行うことは、事業者にとって追加のコスト負担につながることから、その内容や程度は各事業者の判断に委ねざるを得ず、また、業種や事業規模により、まちまちとならざるを得ないと考えています。
これに関し、帝国データバンク「新型コロナウイルス関連倒産動向調査<11月 30 日 16 時現在判明分>」によると、新型コロナウイルスの影響を受けた倒
産は、全国で 754 件、負債総額 3,209 億 4,800 万円であり、業種別では、飲食
店が 119 件で最多、次いでホテル・旅館 63 件、以下、建設・工事業 51 件、ア
パレル小売店 48 件、食品卸 38 件などが続いているとのことです。前回のアンケート、ヒアリングやモニター調査で取り上げられた業種では、飲食店及びホ
テル・旅館が1位、2位を占める他、結婚式場・葬儀社は9件、旅行代理業は
9件、イベント業は7件、スポーツジムは5件、航空は1件が倒産しており、合わせて全体の3割近くを占めています。また、東京商工リサーチの 11 月 30
日 16 時時点の「「新型コロナウイルス」関連破たん」の調査によると、新型コロナ関連破たんのうち、従業員数、これは正社員になりますが、その数が判明した 675 件の従業員数の合計は、11,732 人にのぼるということです。事業者としてもギリギリの状態で対応していることはご理解いただきたいと思いま
す。
なお、前回申し上げた通り、ホテル・旅館、遊園地、結婚式場、スポーツクラブなど、サービスの提供において設備が重要な要素となる事業では、設備の維持に大きなコストがかかることから、契約が締結された上では、キャンセルの場合にも、実費だけでなく、設備の維持にかかるなにがしかの費用の負担もいただかなければ、事業の継続に支障を生じることとなります。不測の事態におけるキャンセルとはいえ、結果的にサービスを利用された方の負担だけでは事業が立ち行かなくなる点は、ご理解いただきたいと思います。
この点、日本私立大学連盟は、9月に「私立大学の「対面授業再開」と「授業料等」に関する見解」を公表し、「私立大学は、教育研究の安定性・永続性を目的に、授業料をはじめとする学生納付金等によって、教職員を構成するとともに校地、校舎等の施設・設備、その他教育上に必要な人的・物的資源を確保し円滑な運営を図っている。「授業料」については、オンライン授業や対面授業などの1授業科目の履修を単位として積み上げているものではなく、学位授与を見据え、その準備を含めた総合的な教育環境を提供するための経費である。また、「施設設備費」は、単なる利用料としての経費ではなく将来の設備充実のための投資資金と位置付けられ、私立大学の教育研究環境の充実に向けて、キャンパスや設備の維持、管理等に充てられており、授業料等と同様に減額・返還の対象となるものではない。」としています。2020 年度の全国の大学の学部学生数は 262 万人と言われており、報道によると、学費減免を求める署名活動も行われたようですが、各大学でも、経済的に困窮した学生に対しできる限りの支援をされているものと思われ、キャンパス閉鎖中の授業料や施設設備費などの返還、減額の求めに応じられないのは、先程の、ホテル・旅館、遊園地、結婚式場、スポーツクラブなどの事業者と同様の事情によるものと理解しています。以上です。
○xxxx
どうもありがとうございました。それでは、次に、xx委員、お願いいたします。
○髙橋委員
はい、ありがとうございます。xx委員のご報告にあったことに関連しまして、一点ご質問等をさせていただければと思っております。それはですね、事例でいいますと、この④のところではですね、クレジット会社によって、対応が異なっているということをご指摘いただいてるんですけれども、対応が異なっているということについて、これは「良くない」というニュアンスだと理解したほうがよろしいんでしょうか。と申しますのも、このあと⑥の事例などを拝見してますと、再交渉が可能なケースもありうるというふうに拝見していまして、そうすると再交渉できるかどうかというのは、やはり状況に応じて違うし、業種に応じても違うということでしょうか。これは当然、業者の方によって対応が変わりうることも当然、想定しているかと思っています。ですから、一律に皆、同じ対応をしなければならないとするのが良いことなのかどうかということが、まずコンセンサスとしてあるかなと考えているところです。そのように思いますのも、また先程からお話に挙がっておりましたどちらの領域での解除だったのかという認定ですね、これ、どちらとも言えるっていうんですかね、ケースによっては、どちらかの極に寄っている場合はあるんですけれども、大体どちらの側からも説明がつきうる話なので、どちらか一方だけの側の事情によってキャンセルしたのだということを説明するのが、やりやすい場合とやりにくい場合というのがあるなあというふうに思っています。そうしますと、結局、ケースバイケースで対応することになるのかなあと、私はそのような感触を持っている次第です。そういうわけで、もしよろしければご感触を教えていただければ幸いです。以上です。
○xxxx
ありがとうございます。それでは、xx委員、お願いしてよろしいでしょうか。
○xx委員
はい、ご質問ありがとうございました。④クレジット会社の件なんですけれども、聞きました話としては、助言として「クレジット業界に手数料の返金についてどうなっているのか、統一されたものがあるのかどうか問い合わせてみてはどうか」という助言をされたそうです。私もクレジット関係のこと、よくは知らないんですれども、そういう助言をされたということですね。それから
⑥も確かにこのあと相談されたご本人が、ホテル側の方と交渉されたということです。私も髙橋委員がおっしゃったように、ケースバイケースでコロナがこ
れだけ感染してきて、色々分かったこともありますし、状況に応じて、事業者側の対応もそれぞれまた変わってきているということも承知しておりますの で、交渉の余地があれば、まず本人が交渉していくことが大事だと思っております。先程の前段部分でのお話にもありましたように、これだけ色々、コロナに関しての消費者からの相談もありますし、事業者側からもできるだけ可能な対応をしているということも、お話に出てきておりますので、今後はですね、やむを得ない事情はどういうものなのかっていうことも、それぞれの業界のところで検討され、とにかく情報提供を、かかった費用はこれだけでキャンセルのときにはこれだけはいただくとか、そういうことも消費者も分かって契約をしていくなど、なかなか苦しい社会状況ではありますけれども、ともに乗り越えていかないといけないところだなと思っております。相談の事例を出させていただきましたのも、この機会に、それぞれの業界のところでどう対応していくかってことをもう一段、話を進めていっていただく参考になればと思っていたしました。以上です。
○xxxx
ありがとうございました。それでは、xx委員、お願いいたします。
○xx委員
はい、xxです。ちょっと質問ではなく、私の意見になります。繰り返しになる部分もありますが、ご容赦ください。
基本的に、今日、xx先生が整理していただいた民法におけるルールとはなんぞやということの関係がまず必要だという点に強く賛成をいたします。場面を整理しますと、まず債務履行ができない、不完全な場合というのは、本来、代金支払いの債務は消滅するはずだということなんですが、国センの資料を見てますと、「1.サービスを受けることが不可能な場合」を色々見てますとイメージがよく湧くのかなというふうに思いまして。このあとの(1)から(5)でありますが、(5)事例なんか見てますと、店舗が閉鎖してしまい、サービス提供がそもそもできないというような場面です。これは今、言ったそもそも代金支払請求xxxも発生しない場面じゃないのかなというふうに思います。それから、次に、完全な債務履行、サービス提供ができたとして、不可抗力によ り、消費者が履行を受領できないような場合。これはコロナだけじゃなくっ て、国センの資料を見ましても、自然災害でサービス提供が受けられないというような場合は多々あるわけでして。xxxは予測不可能だからという議論はその通りなんですけれども、それをきっかけに、こういった自然災害のような場合で、どう考えるべきかというのを今一度、整理すべきと思います。ここで
不可抗力といった場合なんですが、先程もちょっと議論ありましたが、帰責性と、もうちょっと広い概念でどちらの支配領域に属する事情かというものもありますが、消費者の支配領域、事業者の支配領域のどちらでも入らない場面、どちらの支配領域でもないんじゃないかという場面でもやはり、有り得るのかなあと思っています。そういった場合のルールというのを検討、もっとxxしていく必要があるのかなと思っていまして、先程、xx先生は「一時的契約と継続的契約は区別すべきである」とおっしゃられて、それはその通りだと思います。ただ、実際、消費者契約において問題事例としてあがってくるのは大 体、サービス提供で、継続的契約の場面がほとんどですので、まずはそこに焦点を絞って、デフォルトルールを探求していくということが重要なのかなと理解しております。
繰り返しになりますが、民法では 651 条というのがあり、これを手掛かりにして考えていくのが良いと私も思っています。不可抗力の解約の場面に限定することなく、やはりこれは、全般的に、解約の際の平均的な損害の定義の話になっていきますが、その場面では 651 条が手掛かりになりまして、逸失利益、得べかりし利益をすべて含めていいのか、それとも実費だけを損害の基礎と捉えるべきではないのか、民法のルールがどうかと、それから消費者契約法に転換して考えた場合に、どう考えるかという、その場合を整理した方がいいのかなと思っています。たとえば委任と請負との違いもあろうかとは思います。請負のように、その人にオーダーメイド的に作り上げたサービスというのであれば、ある程度、損害は広く入ってくるとしても、大量生産されているという か、多数の消費者に提供されるような契約であれば、逸失利益というのをそもそも入れる必要がなく、私は入れるべきではないと考えています。そういったところの議論を、651 条を手掛かりにしてできるのではと思っております。
あと何点か感想を言わせてください。やはり法の整理といいますか、消費者契約法に新たに作るかどうかさておき、今の現行法で解釈できる部分があると思いますので。また、消費者契約法のような強行法規で、任意に作成された規約を、本当にその内容を認めていいのかをチェックするというのが、非常に重要だと思っています。自主的解決に委ねるべきかどうかという議論で色々、事業者の方が自主的に苦労されてやっていただいているのは、それは非常に理解しますし、歓迎すべきことだと思っております。ただ、自主的解決が、ある程度図られているから、ルールがいらないというのは、ちょっとそれは議論のレベルが違うと思っています。例えば8割の事業者がきちんとしていたとしても
2割のきちんとしていない人がいれば、やはりルールが必要というのが私の考え方です。2割を放置しておけばいいという議論には多分ならないと思いますので、自主的解決で、もちろん図られるべきですけれども、ルールはルールと
してきちんと議論して現行法の解釈でいける部分や、さらに新しい規定も必要ならそれを作る必要が議論すべきだと思っています。
最後にもう一点だけ、今回のようなコロナの事態は天災とか今までの不可抗力とちょっとまた違う特殊な場面かもしれません。またコロナの影響で、事業者のみなさんや経済界が、かなり疲弊しているというのもよくわかります。ただ、これをキャンセル料として消費者に転嫁すべきかどうかという議論は別 で、事業者の経営の悪化というのは、これは本来は国の補償であったり、あるいは保険の部分でカバーするといったものです。それがあるから消費者にキャンセル料として転嫁していいんだというのは、次元の違う話だと私は思っている。感想めいたことで申し訳ございませんでしたが、以上でございます。
○xxxx
ありがとうございました。それでは、xx委員、お願いいたします。
○xx委員
この不測の事態における消費者契約のキャンセルなんですけども、結局、消費者と事業者との間のですね、相互の、コミュニケーションがうまく取れていないことによって、問題になっている場合が多いということが、今回の皆さんのプレゼンをお聞きして分かった気がするんですね。そうするとですね、やはりそこは、私のような社会心理学を学んでいる者からすると、「なるほどな」と思うのが、やっぱり先程出てきた言葉でいえば社会的通念ですし、そもそもこの不測の事態というのを、人はどのように認知して理解するのか、という思考のプロセスなんですが、その心のプロセスというのは、もはやもう 50 年もの間、色んな研究がなされていて整理されているんです。つまり、「人、それぞれ」ではなく、人はどんな情報を受け取って、どのように推論して、どういう結論に至るのか、つまり、自己責任、自己都合なのか、特に天災のような場合は、事業者に帰属する場合もあり、それら両方に原因を帰属する場合もありますが、そういったパターンというのは、整理されてきている事実があるの で、それを考慮した法整備ないし、あるいは、そこまでしないにしても、この事業者がその理解をして、あるいは消費者がそれを理解して、お互いのコミュニケーションに役立てればトラブルは減るはずだというふうに感想を持ったんです。残念ながら、今までのところ法の解釈というのは、たいてい、感情と か、科学の発展によって変化する知識など、時代とともに思考に用いられる情報の変化に追いついてないというか、まだ依然として法は変わっていないのかなっていう感じがして「古い」と思わざるを得ない。例えば、コロナに関しては、この半年の間にも大変事情が変わりました。「もう本当に怖い病気だ」と
思っていた人が多かったかもれないけれど、「たいしたことない」と判断する人さえも出てきているし、そもそも対策に何をすべきなのかという点で、科学的な情報と政策的な情報とが矛盾していたりするように、今色んな意見が社会の中で出ていると思うんですね。そういった中で、「不安だからキャンセルしておこう」とか、あるいは「行こう」というふうに人は判断している。そこのプロセスっていうのは、事業者も消費者もどっちも人間なので、そこの思考プロセスでは、同じ情報を共有さえすれば、たいして変わらない推論に至るはずなんです。なので、情報の乖離が起きているっていうところが原因で、一番トラブルになっているんじゃないかって思ったんですね。ですから、そういった情報共有の方向に進んでいくのも大事なんじゃないかなというふうに思いました。以上です。
○xxxx
ありがとうございました。それでは、xx委員、お願いいたします。
○xx委員
はい、ありがとうございます。直接キャンセル料とすぐに結びつく問題ではないかもしれませんが、今、現場で感じていることを申し上げます。このコロナに関しましては、延期ということで、対応いただいていることがあります。国民生活センターのご報告を読みますと、例えば、1.(3)5ページに書いてあるものですけれども、この場合ですと、消費者の方が「1年後の桜の季節への変更を認めてほしい」と、こういうふうに変更してくれればいいという希望者もいらっしゃいます。また、12 ページにありますけれども、この場合は来年の3月までであれば、延期をすればということですが、やはり 30 万円もかかっているということです。これはかかってますけれど、実際、延期をすればあまり負担がないですから、という対応をしてくださっているところもありま
す。ところが、例えばこの延期もどのくらい先の延期までが認められるかということがひとつあります。イベントといいますか、発表会のようなものがあ る、例えば小学校の時に習い事の発表会をする。今年、多分6年生だと思います。来年は中学校に入るので、やめようと思って、今年が最後の発表会だと思っていた。来年に延期されても自分はそれをやらないのであるということで す。結婚式場の場合は、今、場所によってですけれど1年くらい前から予約をしているというのがあります。それで今、延期をするとなると、また1年後になるわけです。そういうふうになりますと、結婚式をいつやるかというのは本人の自由ですけれども、実際は2年ぐらい経ってから結婚式をするとなると、やはりそこはもう、こういう形ではなくても、という方も出てくる。簡単に延
期をするのでキャンセル料はかかりませんという対応で、キャンセル料の問題を今のところは、対応ができていても、今後、そうはいっても、キャンセルの代わりの延期でも、やっぱり納得いかないです、やっぱりキャンセルをしたいのです、というときには、同じ問題にあたってしまう。今の現場の対応の中から、この辺が今後出てくる問題かなと思っています。延期の場合の延期後のキャンセルです。このあたりも考えていけたらと思っておりますので、法律の専門家の方々のおxxをいただければと思っております。以上です。
○xxxx
ありがとうございました。お申し出いただいている委員の方は以上ですが。xx委員、どうぞ。
○xx委員
二度目で申し訳ありません。二点ほど、感想のような話になります。
一点目は、先程、「コロナで破綻した事例が結構ある」というお話しをさせていただいたのですが、「破綻することによって事業者が困る」という趣旨で申し上げただけではなく、継続的なサービスを提供している事業では、キャンセルされていないお客様に対してサービスが提供できなくなり、例えば、結婚式をやろうと思っておられたお客様に対しても、サービスが提供できなくなってしまい、結果的に、消費者全体にマイナスの影響があるということも含め て、事業の継続に努力されている企業がたくさんあるということをご理解いただきたいということです。
もう一点は、xx委員ご提出資料の9番目ですが、受験生を持つ親として は、新型コロナウイルスの感染症に罹患してしまったり、移動自粛になったりした場合、試験はどうなるのか、受験料は返ってくるのかということがとても気になるところです。この点、ある大学では、試験日までに感染症が治らず、また、追試日に治ったと証明できる場合には、検定料の再徴収をせずに追試を行うとしながらも、複数の学部の出願があっても、追試は1学部のみとし、他の学部の分は検定料を返金しないとしており、一方、それについて何も書いていないところもあります。この対応をありがたいと思うか、仕方がないと思うか、いや、全額返すべきと思うかは人それぞれだと考えられますが、これを
「社会通念」という形で一般化して、この対応の良し悪しをルールとして、法律問題として、一刀両断にしてしまうことが本当に良いのかどうかは、xxのところよく分かりません。その意味でも、先程申し上げたように、各事業者 が、消費者と事業者のそれぞれの状況を考えて、できる限りの努力をしていくしかないと考えています。以上です。
○xxxx
ありがとうございました。xx委員、どうぞ。
○xx委員
はい、ありがとうございます。今日、xx先生のご意見を拝聴しながら、大変参考になるなと聴いていたんですが、改めてやはりそのキャンセル条項の何が問題なのかを考える必要を感じました。予測不能なリスクを負わされているという不当性を感じている点が問題なのか、それとも、消費者の自己都合でないのに、責任を負わされているということが問題なのかといった点は、これから整理していかなければいけないかなと思います。将来の予測はできないから不当なのだということであれば、キャンセル条項に将来予測できる事態といいますか、こういう事態のときもキャンセル料はかかりますといったことを丁寧に説明してあれば有効になる可能性があるということになりそうですが、そうではなくて、消費者の自己都合でないものについては、やはり基本的にキャンセル料は取れないというところが出発点で、それを取ろうとするのにはその合理的な理由というものが求められるのか、この辺をどういうふうに考えていくべきなのかといったことが、今回非常に問題になっているかなと思っていま す。今後、コロナの問題が長期化していった場合に、例えば、緊急事態宣言が出たとしてもキャンセル料はいただきますとか、必要な準備にかかった費用はいただきますといったような条項が作られた場合に、その条項の有効性はどうなるのかとかいった問題が出てくる可能性があるかなと思っておりまして、そういうものについてどう対応していくかといったことも、少し考えていく必要があるかなというふうに感じた次第です。感想ですが、以上です。
○xxxx
ありがとうございました。たくさんのご意見をお出しいただきまして、どうもありがとうございました。お申し出いただいている委員は、以上の通りと思いますので、意見交換はここまでとさせていただきます。
前回と今回の2回にわたる検討会で、今回の新型コロナウイルスを題材にして、不測の事態におけるキャンセルについて様々なご意見をいただくことができました。この委員の皆様からいただいたご意見あるいはヒアリングの結果や参考資料は、様々な災害等によって、同じように不測の事態が発生した場合のキャンセルについてどう対処していくのかという点について、消費者及び事業者の双方が考える際の参考としていただけるのではないかと思います。前回及
び今回の検討会で委員の皆様からいただきましたご意見につきましては、事務局でもう一度内容を整理した上で、資料を作成するようにお願いいたします。今後は、新型コロナウイルスの感染状況の推移によっては、また少し違った 形で問題が生じてくる可能性もありますし、場合によってはより大きな、もちろんそうなってほしくはありませんが、より大きな規模で問題が深刻化する可能性もないわけではありません。そうした状況の推移に応じて、改めてご検討いただく機会を設ける必要が出てくるかもしれません。その折には、前回及び今回の議論でいただきましたご意見を踏まえて、改めて検討を進めていただき
たいと思います。
不測の事態におけるキャンセルについての検証は、差し当たり今回の検討会で終了とさせていただきまして、次回以降の検討会につきましては、再び消費者契約法の改正について検討を進めていこうと思います。
それでは、最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。
○xx課長
本日も貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。次回の日程、議題等の詳細につきましては、改めてご連絡をさせていただきます。また先程、座長からご指示いただきました今回のご議論状況につきましては、今 回、参考資料として前回のご意見の概要をおまとめいたしておりますけれど も、こちらに今回の議論状況も加えたような形の資料としてお作りをさせていただければというふうに考えております。以上でございます。
○xxxx
ありがとうございました。本日の議論につきましては、運営要領に基づきまして、事務局と私で議事録を作成して、委員の皆様、そしてxx先生にご確認いただいた上で、公表したいと考えています。
それでは、本日は、これにて閉会とさせていただきます。お忙しいところ、お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。xx先生には最後まで大変なご負担をおかけいたしましたが、貴重なご意見いただきまして、大変ありがとうございました。改めてお礼を申し上げます。皆様には、今後ともどうかよろしくお願いをいたします。それでは、これで第 11 回検討会を終了いたします。