・労働契約の承継(第3条の概要) P5
労働契約承継法は会社分割時における労働者の保護を図ることが目的です
会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(労働契約承継法)の概要
会社法に基づく会社分割制度(株式会社及び合同会社が対象)においては、分割会社と承継会社等※1が締結又は作成した分割契約等※2の定めに従って、分割会社の権利義務が承継会社等に包括的に承継されます。しかし、労働契約の承継については、そのまま承継されるとした場合、労働者に与える影響が大きいため、会社分割時における労働者保護のため、
・労働契約承継法に
① 労働者及び労働組合への通知
② 労働契約の承継についての会社法の特例
③ 労働協約の承継についての会社法の特例
④ 会社分割にあたっての労働者の理解と協力を得る手続についての規定、
・商法等改正法附則第5条※3に労働者との協議の規定
を設け、更に法施行規則及び分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針(以下「指針」といいます。)によりこれらの手続等を具体化しています。
関係者の方々は、このパンフレットを参考に労使協議や労使の相互理解の促進を図り、お互いの十分な理解と協力の下、労働者の保護と円滑な組織再編とがともに図られるよう、適切にご対応下さいますよう、お願いいたします。
※1※2 吸収分割における承継会社と新設分割における設立会社をひとまとめに「承継会社等」、吸収分割における分割契約と新設分割における分割計画をひとまとめに「分割契約等」といいます。
※3 会社分割制度が平成 12 年の商法等改正により創設された際、併せて会社分割を行う際、会社は労働者との協議をしなければならないとする規定が商法等改正法附則に設けられました。
○ 労働契約承継法の関係法令等は、厚生労働省ホームページ(xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/)上でご確認いただけます。
▶(ホームページ)ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 雇用・労働 > 労使関係 > 企業組
織の再編(会社分割等)に伴う労使関係(労働契約の承継等)について
○ ご不明の点などがありましたら、厚生労働省 労働基準局 労働関係法課 法規第1係又は最寄りの都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)にお問い合わせください。
都道府県労働局の所在地はこちらの厚生労働省ホームページ上でご確認いただけます。
(xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxxxxxxxxx/xxxxxxxxxxx/xxxxxxxxxxx/)
厚生労働省・都道府県労働局
平成 28 年8月作成
目次
・会社分割手続の流れ・概要 P1
・目的(第1条の概要) P3
・労働者及び労働組合への通知(第2条の概要) P3
(1)通知対象
(2)通知事項
(3)通知日・通知期限日等
・労働契約の承継(第3条の概要) P5
〈労働契約の承継に関する関連事項〉
(1)主従事労働者の範囲
(2)分割会社と労働者との間で見解の相違がある場合
(3)労働条件の承継
(4)会社分割を理由とする解雇等
(5)転籍合意等と法律上の手続との関係
・異議の申出(第4条・第5条の概要) P9
(1)異議申出事項
(2)異議申出期限日等
・労働協約の承継(第6条の概要)
(1)合意による労働協約の承継
(2)労働協約の承継に係るみなし規定
P10
・労働者の理解と協力を得る努力(第7条の概要) P11
(1)理解と協力を得るよう努める事項
(2)労働組合法上の団体交渉xx
(3)開始時期等
(4)その他の留意事項
・労働者との協議(平成 12 年商法等改正法附則第5条の概要) P13
(1)協議の対象となる労働者の範囲
(2)協議の対象事項
(3)協議に当たっての代理人の選定・労働組合法上の団体交渉権との関係
(4)協議開始時期
(5)会社分割の無効の原因となる協議義務違反等
・指針(第8条の概要) P15
(参考資料)
・ 主な裁判例・命令
・ 参考様式1~4(通知書の例)
・ 参考様式5 異議申出書の例
P16 P22 P26
会社分割手続の流れ・概要【株式会社で株主総会の承認を要する場合】
労働契約承継法等に基づく手続の流れについて、株式会社が株主総会の承認を要する会 社分割を行う場合の一連の手続の流れについて、法令上の規定を勘案の上、具体的なスケジュールを仮定し整理しています。一連の流れや日程の目途をご確認いただいた上で、適切な対応をお願いいたします。
【会社分割を承認する株主総会を6月 29 日に開催する場合】
労働契約承継法・平成 12 年商法等改正法附則第5条 (参考)会社法上の手続
労働者の理解と協力を得る努力
【法第7条】
(日付は仮定)
労働協約の債務的部分の承継に関する労使同意
【法第6条】
手続の流れ
分割契約・分割計画の準備
・遅くとも労働者との協議の開始までに開始することが望まし い。その後も必要に応じて適宜行う【指針第2 4(2)二】
・分割契約等の締結前又は作成前にあらかじめ労使間で協議することにより合意しておくことが望ましい【指針第2 3(1)イ】
労働者との協議【商法等改正法附則第5条】
・通知期限日までに協議【商法等改正法附則第5条、指針第2 4(1)イ】
・通知期限日までに十分な協議ができるよう、時間的余裕をみて協議を開始【指針第2 4(1)ホ】
労働者・労働組合への通知【法第2条】
⇒5/25
・通知日:事前開示事項の備置開始日又は株主総会招集通知発出日のいずれか早い日と同じ日が望ましい
⇒6/14
【指針第2 1(1)】
・通知期限日:株主総会の2週間前の日の前日
【法第2条第3項第1号】
5/25
6/1
事前開示事項の備置開始日
株主総会招集通知発出日
該当労働者による異議の申出【法第4・5条】
・異議申出期限日:通知期限日の翌日から株主総会の日の前日まで
6/24
の期間の範囲内で分割会社が定める日
【法第4条第3項第1号】 ⇒例えば
※通知日と異議申出期限日との間に少なくとも 13 日間置く必要がある
【法第4条第2項】
6/29
8/1
株主総会
承認
分割の効力発生日
労働契約の承継・不承継【法第3~5条】
・分割の効力が生じた日に、分割契約等に承継の定めのある労働契約が承継会社等に承継。一定の労働者が異議の申出を行った場合、 分割の効力が生じた日に、労働契約の承継・不承継が覆る。
・吸収分割の場合は分割契約で定める日
・新設分割の場合は登記の日
1
会社分割手続の流れ・概要【株式会社で株主総会の承認を要しない場合・合同会社の場合】労働契約承継法等に基づく手続の流れについて、株式会社が株主総会の承認を要しない
会社分割(簡易分割等)を行う場合と、合同会社が会社分割を行う場合の一連の流れについて、法令上の規定を勘案の上、具体的なスケジュールを仮定し整理しています。一連の流れや日程の目途をご確認いただいた上で、適切な対応をお願いいたします。
【分割契約の締結又は分割計画の作成を6月1日に行う場合】
労働契約承継法・平成 12 年商法等改正法 (参考)会社法上の手続
労働協約の債務的部分の承継に関する労使同意
【法第6条】
労働者の理解と協力を得る努力
【法第7条】
(日付は仮定)
手続の流れ
分割契約の締結【吸収分割】
6/1
分割計画の作成【新設分割】
・遅くとも労働者との協議の開始までに開始することが望ましい。その後も必要に応じて適宜行う
【指針第2 4(2)二】
・分割契約等の締結前又は作成前にあらかじめ労使間で協議することにより合意しておくことが望ましい【指針第2 3(1)イ】
労働者との協議【商法等改正法附則第5条】
・通知期限日までに協議【商法等改正法附則第5条、指針第2 4(1)イ】
労働者・労働組合への通知【法第2条】
・通知期限日までに十分な協議ができるよう、時間的余裕をみて協議を開始【指針第2 4(1)ホ】
・通知日:株式会社にあっては事前開示事項の備置開始日 ⇒6/8合同会社にあっては会社法に掲げられた事項を官報公告し、又は知れている債権者に催告する日と同じ日が望ましい⇒6/9
【指針第2 1(1)】
6/8
6/9
【株式会社の場合】
事前開示事項の備置開始日
【合同会社の場合】
官報公告し、又は知れている
⇒6/14
・通知期限日:分割契約が締結された日又は分割計画が作成された日から起算して、2週間を経過する日
【法第2条第3項第2号】
債権者に催告する日
該当労働者による異議の申出【法第4・5条】
6/30
・異議申出期限日:分割の効力が生ずる日の前日までの日で分割会社が定める日 【法第4条第3項第2号】⇒例えば
※通知日と異議申出期限日との間に少なくとも 13 日間置く必要がある
【法第4条第2項】
8/1 分割の効力発生日
労働契約の承継・不承継【法第3~5条】
・分割の効力が生じた日に、分割契約等に承継の定めのある労
働契約が承継会社等に承継。一定の労働者が異議の申出を行った 場合、分割の効力が生じた日に、労働契約の承継・不承継が覆る。
・吸収分割の場合は分割契約で定める日
・新設分割の場合は登記の日
◇目的(第1条の概要)
この法律は、会社分割が行われる場合における労働契約等の承継に関し会社法の特例等を定めることにより、労働者の保護を図ることを目的としています。
労働契約承継法(以下「法」といいます。)は、平成 12 年の商法等改正による会社分割制度の導入に伴い、分割会社と承継会社が締結又は作成(以下「締結等」といいます。)した分割契約等の定めに従って、分割をした会社の権利義務が、承継会社等に包括的に承継されることを踏まえて、労働者保護の観点から、労働契約の承継等についての特例を定めるために制定されました。
法が適用されるのは、株式会社又は合同会社が会社法に基づく会社分割を行う場合です。会社分割を行う場合は、法等の関係規定に従わなければなりません。
また、法における「労働者」とは、分割会社が雇用する労働者のことであり、分割会社との間で労働契約を締結している労働者すべてを指します。このため、正社員だけでなく、パートや嘱託職員の方々に対しても法等の定める所定の手続が必要となります。
◇労働者及び労働組合への通知(第2条の概要)
会社分割をする会社(分割会社)は、会社分割に当たって、労働者及び労働組合に対して、当該会社分割に関する事項を通知することが必要です。
(1)通知対象
分割会社が通知する必要がある労働者及び労働組合は、
・承継される事業に主として従事する労働者(以下「主従事労働者」といいます。)
・上記以外の労働者であって承継会社等に承継される労働者(以下「承継非主従事労働者」といいます。)
・分割会社との間で労働協約を締結している労働組合
です(主従事労働者の範囲については、「P5 ◇労働契約の承継(第3条の概要)<労働契約の承継に関する関連事項>(1)主従事労働者の範囲」を参照してください。)。
(2)通知事項
分割会社は、通知対象の別に応じ、次ページの通知事項を通知期限日までに書面で通知する必要があります。なお、労働者・労働組合の別に応じた通知の参考様式を文末に添付しておりますので参考にしてください。
通知事項 | 労働者 | 労働組合 | |
① | 通知の相手方たる労働者が承継会社等に承継されるか否かに関する分割契約等 | ○ | × |
の定めの有無 | |||
② | 当該労働者の異議申出期限日 | ○ | × |
③ | 当該労働者が主従事労働者又は承継非主従事労働者のいずれに該当するかの別 | ○ | × |
④ | 当該労働者が分割会社と締結している労働契約であって、分割契約等に承継す | ○ | × |
る旨の定めがある場合には、その内容である労働条件はそのまま維持されること | |||
⑤ | 承継される事業の概要 | ○ | ○ |
⑥ | 会社分割の効力発生日以後における分割会社及び承継会社等の商号・住所(設 | ○ | ○ |
立会社については所在地)・事業内容・雇用することを予定している労働者の 数 | |||
⑦ | 会社分割の効力発生日 | ○ | ○ |
⑧ | 効力発生日以後における分割会社又は承継会社等において当該労働者が従事す | ○ | × |
る予定の業務内容・就業場所その他の就業形態 | |||
➃ | 効力発生日以後における分割会社及び承継会社等の債務の履行の見込みに関す | ○ | ○ |
る事項 | |||
⑩ | 承継(不承継)に異議がある場合には、異議申出を行うことができること、当 | ○ | × |
該異議申出を受理する部門の名称・住所又は担当者の氏名・職名・勤務場所 | |||
➃ | 分割会社と労働組合との間で締結している労働協約が承継会社等に承継される | × | ○ |
か否かに関する分割契約等の定めの有無 | |||
⑫ | 承継される労働者の範囲(当該範囲の明示によっては当該労働組合にとって労 | × | ○ |
働者の氏名が明らかとならない場合には当該労働者の氏名) | |||
➃ | 労働協約を承継させる場合には、承継会社等が承継する労働協約の内容 | × | ○ |
(3)通知日・通知期限日等
通知日(指針上、通知を行う日として望ましいと規定している日)や通知期限日(法上、通知を行うべき期限を規定している日)は、株式会社(株主総会を要する場合・要しない場合)と合同会社の別により異なります。なお、一例ではありますが、株式会社である分割会社が、6月 29 日に分割契約等を承認する株主総会を開催する場合、通知期限日は分割契約等を承認する株主総会の日の2週間前の日の前日ということで、6 月14日となります。会社分割時の流れ・概要も併せてご覧ください。
株式会社 | 合同会社 | |
通知日 | 以下のいずれか早い日と同じ日が望ましい。 ・ 分割契約等の内容その他法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置く日 ・ 株主総会招集通知を発する日 | 以下と同じ日が望ましい。 債権者の全部又は一部が会社分割について異議を述べることができる場合に、当該分割会社が、会社法に掲げられた事項を官報に公告し、又は知れている債権者に催告する日 |
通知期限日 | 【株主総会を要する場合】 分割契約等を承認する株主総会の日の2週間前の日の前日 【株主総会を要しない場合】 分割契約等が締結又は作成された日から起算して2週間を経過する日 | 分割契約等が締結又は作成された日から起算して2週間を経過する日 |
◇労働契約の承継(第3条の概要)
主従事労働者の労働契約は、会社分割の効力発生日に分割契約等の定めどおりに承継会社等に承継されます。
会社法上、分割契約等に定めた事項は、その定めに従って承継会社等に包括的に承継されます。これに対して、法は、労働者保護の考えに基づく特例を定めていますが、主従事労働者については、分割契約等に労働契約が承継される旨の定めがあれば、その労働契約は会社法の原則どおり承継会社等に承継されます。
承継される主従事労働者に、法第4条の異議を申し出る権利がないのは、承継会社等に当該労働者の労働契約が労働条件を「維持したまま承継」され、現在従事している職務から切り離されることはないとの法制定時の考えからです。
<労働契約の承継に関する関連事項>
(1)主従事労働者の範囲
① 主従事労働者とは、基本的には、分割契約等を締結等する日において、承継される事業に専ら従事している労働者をいいます。
主従事労働者に関する基本的考え方としては、「会社分割は、会社の事業に関して有する権利義務を単位としてなされるものであるが、法第2条第1項第1号の労働者に該当するか否かについては、承継会社等に承継される事業を単位として判断するものであること。その際、当該事業の解釈に当たっては、労働者の雇用及び職務を確保するといった法の労働者保護の趣旨を踏まえつつ、『一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産』であることを基本とすること。」と指針に規定しています。
これは、平成 17 年の会社法の制定で、これまで「事業」単位でしか会社分割ができなかったものが、「権利義務」単位でも分割することが可能になったことに伴い、法としての「主従事労働者」に関する基本的考え方を規定したものです。
② 労働者が承継される事業だけでなく他の事業にも従事している場合には、それぞれの事業に従事する時間、果たしている役割等を総合的に判断して、「主従事労働者」か否かを決定することとなります。
③ 総務、人事、経理等のいわゆる間接部門に従事する労働者(以下「従従事労働者」といいます。)であっても、承継される事業のために専ら従事している労働者は、「主従事労働者」となります。なお、従従事労働者が承継されない事業の業務も行っている場合には、上記②によって判断してください。
労働者が、いずれの事業のために従事するのか区別なく間接部門に従事している場合で、上記②によって判断できないときは、原則として、判断することができない労働者(A)を除いた分割会社の雇用する労働者の過半数の労働者(B)が承継会社等に承継される場合に限って(C)、その労働者は、「主従事労働者」となります。具体的な計算例は以下のとおりです。
家電製造部門(500 人)、パソコン製造部門(250 人)及び両部門の人事労務管理等を行う総務部門(100 人)を持つA社(計 850 人)がパソコン製造部門の一部の労働者(200 人)と総務部門の労働者(30人)を分割します(計 230 人)。なお、この会社では総務部門は製造部門の区別なく人事労務管理等を行っています。
(A):パソコン製造事業に主従事か否かを判断することができない総務部門の労働者:100 人
(B):Aを除いた分割会社の雇用する労働者の過半数の労働者:376 人(※)
※850(全労働者数)-100(主従事の判断ができない労働者数(A))÷2=375 人 ⇒過半数は 376 人
⇒ 今回承継される労働者は 230 人であり、過半数の 376 人に満たない。このため、承継され
る総務部門の 30 人は、パソコン事業の「主従事労働者」には当たらないと判断されます。
計算例(イメージ)
④ 分割契約等を締結等する日において承継される事業に主として従事していても、研修・応援等のように一時的に承継される事業に従事している場合で、当該業務の終了後には承継される事業に主として従事しないことが明らかである人や、育児等のために配置転換することを分割会社と合意している人等であって、分割契約等を締結等する日以後には承継される事業に主として従事しないことが明らかである人は、「主従事労働者」に当たりません。
逆に、研修・応援等のように一時的に承継されない事業に従事している場合で、当該業務の終了後には承継される事業に主として従事することが明らかな人や、分割契約等を締結等する日においては休業していたが、復帰後は承継される事業に主として従事することが明らかである人や、採用内定者や育児等のための配置転換希望者等であって分割契約等を締結等する日以後に承継される事業に主として従事することが明らかである人は、「主従事労働者」に当たります。
Q 会社が労働者を承継会社等又は分割会社から排除する目的で意図的に配置転換を行った場合、どうなるのでしょうか。
A 過去の勤務実態から判断してその労働契約が承継会社等に承継されるべき又は承継されないことが明らかな労働者について、分割会社が合理的理由なく労働者を承継会社等又は分割会社から排除することを目的として、会社分割の効力発生日前に意図的に配置転換を行ったような場合には、その労働者が「主従事労働者」に当たるか否かは、当該労働者の過去の勤務の実態をみて判断することとなります。
その上で、分割会社が、こうした配置転換を行ったような場合には、当該労働者は配置転換の無効の主張を行うことができます。
(2)分割会社と労働者との間で見解の相違がある場合
分割会社と労働者との間で、「主従事労働者」に該当するか否かについて見解の相違があるときには、法第7条の労働者の理解と協力を求める努力や商法等改正法附則第5条の労働者との協議により見解の相違の解消に努める必要があります。それでもなお解決しない場合には、最終的には裁判によって解決を図ることができますが、都道府県労働局で実施をしている「個別労働紛争解決制度」により解決に向けた話合いをすることも可能です。
(3)労働条件の承継
会社法の規定に基づき承継会社等に承継された労働契約は、分割会社から承継会社等に包括的に承継されるため、その内容である労働条件についても、そのまま維持されます。
労働条件の変更を行う際には、労働組合法や労働契約法における労使間の合意が必要であることから、会社分割の際には、分割会社は会社分割を理由とする一方的な労働条件の不利益変更を行ってはいけません。また、会社分割の効力発生日又はその前後において労働条件の変更を行う際には、労働契約法第 10 条の要件を満たす就業規則の合理的変更による場合を除き、労使間の合意(労働組合法上の合意(労働協約)や労働契約法における労使間の合意)が必要となります。
(参 考)労働契約法第 10 条(就業規則の合理的変更)
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、①変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、②就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度等に照らして合理的なものであるときは、就業規則の変更による労働条件の不利益変更が認められます。なお、②の合理性の判断は、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情を総合考慮して判断されることとなっています。
Q 労働契約の承継に当たり、社宅の貸与制度、社内住宅融資制度等の福利厚生の取扱いはどうなるのでしょうか?
A 福利厚生についても、労働協約や就業規則に規定されているものなど分割会社と労働者との間で権利義務の内容となっているものについては、労働条件として維持されます。
この場合において、承継会社等が同一の内容で引き継ぐことが難しいものは、分割会社は当該労働者等に対して情報提供を行うとともに、法第7条の労働者の理解と協力を求める努力や商法等改正法附則第5条の労働者との協議等により、代替措置等を含め協議等を行い、妥当な解決を図ってください。
(4)会社分割を理由とする解雇等
普通解雇や整理解雇については、労働契約法第 16 条の規定が定められているとともに、判例法理が確立しており、会社は会社分割のみを理由とする解雇を行うことは許されません。
また、分割会社の債務の履行の見込みがない事業とともに労働者を承継する場合や、債務の履行の 見込みがない事業に引き続き雇用する場合も含め、特定の労働者を解雇する目的で、会社制度を濫用 した等の場合は、いわゆる法人格否認の法理やいわゆる公序良俗違反の法理等の適用がありうること、また、労働組合員に対して不利益取扱いをした場合には、不当労働行為として救済がされうることに 留意する必要があります。
(参 考)「債務の履行の見込み」について
会社法及び同法施行規則の制定により、会社分割に当たっての事前開示事項が「債務の履行の見込みに関する事項」とされ、これにより、債務の履行の見込みがない場合であっても会社分割の効力は否定されないと説明されています(学説上は反対説もあります。)。
(参 考)労働契約法第 16 条(解雇の無効)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
(参 考)整理解雇の四要件(四要素)(累次の裁判例により確立)
① 経営上の事情により人員整理をする必要があること(人員削減の必要性)
② 解雇を回避するための努力を十分に行ったこと(解雇回避の努力)
③ 解雇対象者の人選が合理的であること(人選の合理性)
④ 対象労働者や労働組合に対し十分な説明と協議を行ったこと(手続の妥当性)
【事業譲渡の事案ではありますが、次の裁判例等が参考になります】
・ 法人格否認の法理により雇用関係の承継を認めた事案として、日本言語研究所ほか事件
(東京地裁平成 21 年 12 月 10 日 判決)(→P16 参照)
・ 法人格否認の法理により雇用関係の責任を親会社に認めた事案として、第一交通産業ほか(xx第一交通)事件(大阪高裁平成 19 年 10 月 26 日 判決)(→P16 参照)
・ 従業員を個別に排除する目的で合意した不承継特約の合意を民法第 90 条違反として無効とし、承継合意のみを有効とした事案として、xx自動車学校(大船自動車興業)事件(東京高裁平成 17 年 5 月 31 日 判決)(→P17 参照)
・ 組合員を不採用とした譲受会社の不当労働行為を認めた事案として、
👉山会事件(東京高裁平成 14 年 2 月 27 日 判決)(→P17 参照)
xx自動車交通不当労働行為再審査事件(中労委平成 21 年 9 月 16 日 命令)(→P18 参照)
Q 採算部門が吸収分割されてしまい、債務の履行の見込みがない事業に引き続き雇用されることになりました。未だ支払われていない賃金があるのですか、今の会社に請求しても支払われる見込みはないので、この分については支払いを諦めるしかないのでしょうか。
A 平成 26 年の会社法改正(平成 27 年5月施行)により、こうした詐害的会社分
割(吸収分割において分割会社が残存債権者を害することを知って行った会社分割)の場合には、債権者の保護のため、未払賃金等の弁済期の到来した債権を有する場合に限 れば、労働者は、承継会社に対して承継した財産の価額を限度として、債務の履行を請求することが可能となっています。(新設分割の場合も同様です。)
(5)転籍合意等と法律上の手続との関係
① 転籍合意について
会社分割の際、労働者については会社分割の対象とせず、労働者から個別に同意を得ることによって承継会社等に転籍させる、いわゆる「転籍合意」という手法が見受けられます。しかし、転籍合意により、承継会社等に主従事労働者を転籍させる場合であっても、分割会社は、法に基づく通知や商法等改正法附則第5条の労働者との協議等の手続を省略することはできません。
また、当該主従事労働者に関しては、
・ 分割契約等に主従事労働者の労働契約を承継する旨の定めがある場合には、分割会社との間で締結している労働契約の内容である労働条件はそのまま維持されること
・ 当該主従事労働者の労働契約を承継させる旨の定めが分割契約等にない場合には、労働契約の不承継について異議の申出をすることができることを説明すべきこと
・ 異議の申出がなされた場合には、分割会社との間で締結している労働契約の内容である労働条件がそのまま維持されるため、これに反する転籍合意部分は、その効力が否定されること
に留意が必要です。
【参考となる裁判例】
・ 転籍合意と法の手続との関係等について判示した事案として、阪神バス(勤務配慮・本訴)事件(神戸地裁尼崎支部平成 26 年4月 22 日 判決)(→P18 参照)
② 出向について
主従事労働者について、転籍合意の場合と同様に会社分割の対象とせず、分割会社との労働契約を維持したまま、承継会社等との間で新たに労働契約を締結し出向させる場合も、通知や商法等改正法附則第5条の労働者との協議等の手続を省略することはできません。
◇異議の申出(第4条・第5条の概要)
会社が
① 主従事労働者を分割会社に残留させる場合(分割契約等に承継する旨の定めがない場合)
② 非主従事労働者(承継される事業に主として従事していない労働者)を承継会社等に承継させる場合(分割契約等に承継させる旨の定めがある場合)
には、これらの労働者は、異議の申出を行うことができます。その法的効果として、労働条件を維持したまま労働契約が承継又は、分割会社に残留することとなります。
異議の申出は、労働者がこれまで主として従事してきた業務から切り離されるといった不利益から労働者を保護するという考えに基づき規定されたものです。
①の労働者が、当該労働契約が承継されないことについて異議を申し出た場合には、その効果として、労働条件が維持されたまま、承継会社等に当該労働契約が承継されることになります。また、②の労働者が、当該労働契約が承継されることについて異議を申し出た場合には、その効果として労働条件が維持されたまま、分割会社に残留することとなります。
異議の申出は、分割会社が指定した異議申出先に①・②の労働者が書面で通知します。
(1)異議申出事項
異議申出事項は、
・ 主従事労働者の場合、氏名、労働契約が承継されないことについて反対である旨の記載
・ 承継非主従事労働者の場合、氏名、労働契約が承継されることについて反対である旨
をそれぞれ書面に記載する必要があります。異議の申出の様式は文末の参考様式を参考にしてください。
(2)異議申出期限日等
分割会社が定める異議申出期限日は、通知期限日の翌日から承認株主総会の日の前日までの期間の 範囲内で分割会社が定める日です(株主総会の承認を要しない場合又は合同会社の会社分割の場合は、吸収分割契約又は新設分割計画に係る分割の効力発生日の前日までの日で分割会社が定める日です)。なお、分割会社が異議申出期限日を定めるときは、通知がされた日と異議申出期限日との間に少なく とも13日間を置かれなければなりません。これは労働者が異議の申出を行うか否かを判断する期間 として、分割会社からの通知が到達した日から起算して最低2週間は確保する必要があると考えられ るためです。
異議申出期限日までに適切に異議申出がなされた場合には、会社分割の効力が生じた日に、異議申出の効果が発生します。
Q 労働者は、異議の申出を行ったことによって不利益な取扱いを受けますか。
A 異議の申出は、これまで従事していた職務から切り離されないようにするために必要な、法に基づく労働者の権利です。このため、会社は、労働者が異議の申出を行おうと していること又は行ったことを理由として、解雇等の不利益取扱いを行ってはなりません。
◇労働協約の承継(第6条の概要)
・ 労働協約のうち債務的部分は、労使双方の合意があれば、分割契約等に記載する ことにより、承継会社等に承継させることができます。
・ 労働協約の規範的部分・債務的部分(合意により承継された部分を除く。)は、会
社分割時に、労働組合員に係る労働契約が承継会社等に承継されるときは、当該承継会社等と労働組合との間で、同一の内容の労働協約が締結されたものとみなされます。
(1)合意による労働協約の承継
労働協約のうち債務的部分(ユニオン・ショップ協定や労働組合への便宜供与等)については、分割会社と分割会社との間で労働協約を締結している労働組合とが合意すれば承継会社等に承継させる部分を定めることができます。これは、債務的部分については分割会社の権利義務を規定するものであり、会社分割の対象となる「権利義務」に含まれるためです。
例:「『会社は、労働組合に対し、100 平方メートルの規模の組合事務所を貸与する。』という労働協約の内容のうち 40 平方メートル分の規模の組合事務所を貸与する義務については当該会
社に残し、残り 60 平方メートル分の規模の組合事務所を貸与する義務については承継会社に承継する。」
(2)労働協約の承継に係るみなし規定
①労働協約の規範的部分(労働協約の規定のうち、労働条件その他労働者の待遇を定める部分)と
②労働協約の債務的部分のうち承継について合意がなされなかった部分については、会社分割時に、当該労働組合の組合員に係る労働契約が承継会社等に承継されるときは、当該承継会社等と労働組合との間で、同一の内容の労働協約が締結されたものとみなされます。つまり、承継会社等は当該労働協約と同一の内容を有する労働協約の当事者たる地位に立つことになり、承継会社等には、新たに分割会社と労働協約を締結していた労働組合との間で当該労働協約に定められた権利義務関係の本旨に従った権利又は義務が生じることとなります。
(イメージ) 労働協約の承継に係るみなし規定
Q 会社の分割が吸収分割のとき、承継会社において既存の1つの労働組合との間で労働協約を締結していた場合、法第6条第3項(承継会社等と当該労働組合との間での労働協約締結のみなし規定)が適用された結果、承継会社の中に複数の労働協約が存在することになるのですか。
A 1 つの会社に 2 つ以上の労働組合が存在するとき、それぞれの労働組合が同一の事項に関し異なる内容の労働協約を使用者と結ぶことは可能であることから、複数の労働協約が 1 つの会社に存在することは当然あり得ます。
したがって、吸収分割の場合で、法第 6 条第 3 項の規定が適用された結果、分割会社との間で締結されている労働協約と同一の内容の労働協約が承継会社と当該労働組合との間で締結されたものとみなされるときは、当該承継会社は既存の複数労働組合と締結している労働協約とは異なる労働協約を締結したことになります。この結果、異なる組合に属する同種の労働者の間で、労働条件が異なることは起こり得ます。
◇労働者の理解と協力を得る努力(第7条の概要)
分割会社は、会社分割に当たって、労働者の理解と協力を得るように努めなければなりません。
会社分割に当たって、労働者の理解と協力を得るため、すべての事業場において、当該事業場の労 働者の過半数で組織する労働組合と協議、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては、労働者の過半数を代表する者との協議その他これに準ずる方法(名称のいかんを問わず、労働者の理 解と協力を得るために、労使対等の立場に立ち誠意をもって協議が行われることが確保される場にお いて協議することが含まれます。)を行う必要があります。
その他これに準ずる方法とは、例えば、全社レベルで労使協議会が設置されている場合に、ここで誠意をもって協議が行われたり、ユニオン・ショップ協定が締結されている会社において、当該協定を締結した労働組合の代表と会社の代表が全社レベルで協議すること等が考えられます。
このように労働者の理解と協力を求める努力を規定したのは、会社分割は、分割される事業部門に従事する労働者のみならず、当該分割会社の全労働者に少なからず影響を与えることを考慮し、労働者保護の観点から、分割会社にその雇用する労働者の理解と協力を得るよう求めるべきとの判断からです。
なお、当該分割会社と労働組合等との協議等では、協議事項について必ず「同意」を得ることまでは求められませんが、労使の相互理解の促進を図り、お互いの十分な理解と協力の下、労働者の保護と円滑な組織再編とを図るためにも十分な協議等が必要です。
(1)理解と協力を得るよう努める事項
労働者の理解と協力を得るよう努める事項としては、
① 会社分割をする背景及び理由
② 会社分割の効力発生日以後における分割会社及び承継会社等の債務の履行の見込みに関する事項
③ 承継される事業に主として従事する労働者に該当するか否かの判断基準
④ 労働協約の承継に関する事項
⑤ 会社分割に当たり、労働者との間に生じた問題の解決手続
などがあります。とくに②については、債務の履行の見込みのある•なしに関わらず、労働者の理解と協力を得るよう、分割会社は適切に説明する必要があります。なお、ここに掲げたものはあくまで例示であり、分割会社がその雇用する労働者の理解と協力を得ることが必要と認められる事項が他にある場合については、その事項についても、労働者に対して理解と協力を得るよう努めることが必要です。
(2)労働組合法上の団体交渉xx
分割会社は、会社分割に伴う労働者の労働条件等に関する労働組合法第 6 条の団体交渉の対象事項については、労働者の理解と協力を得る努力を行っていることをもって労働組合による適法な団体交渉の申し入れを拒否することはできません。
また、団体交渉の申し入れがあった場合には、分割会社は、その労働組合と誠意をもって交渉に当たらなければなりません。
団体交渉に応ずべき使用者の判断に当たっては、「最高裁判所の判例において、『一般に使用者とは労働契約上の雇用主をいうものである』が、雇用主以外の事業主であっても、『その労働者の基本的な労働条件等について雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて』使用者に当たると解されていること等、これまでの裁判例等の蓄積があることに留意すべきであること」としています。使用者の判断については、個々の事例での判断となりますが、以下の裁判例を参考にしてください。
【団体交渉に応ずべき使用者について、参考となる裁判例等】
• 労働組合法上の使用者に当たるかどうかの判断の枠組みを示した最高裁判決として、朝日放送事件(最高裁第3小法廷平成7年2月28日 判決)(→P19 参照)
• 近接した時期に使用者となりうるものを労働組合法上の使用者として認めた事案として、盛岡観山荘病院不当労働行為再審査事件(中労委平成 20 年 2 月 20 日 命令)(→P19 参照)
(3)開始時期等
労働者の理解と協力を求める努力は、遅くとも商法等改正法附則第5条の労働者との協議の開始
(分割契約等を承認する株主総会の日の2週間前の日の前日等)までに労働組合等との協議に着手する必要があります。なお、協議事項によってはその後も適宜協議を行う必要があります。
(4)その他の留意事項
分割会社は、会社分割に伴う労働組合法上の不当労働行為責任や使用者責任が承継会社等に承継されるとする裁判例や中央労働委員会の命令があることに留意する必要があります。
【参考となる裁判例等】
• 設立会社が労働組合員の労働契約を承継したことに伴い、支配介入に関する不当労働行為責任を承継する、また、分割会社は分割を理由として使用者の地位を失うことはないと判示した事案として、モリタ•モリタエコノス•中央労働委員会事件(東京地裁平成 20 年 2 月 27 日 判決)
(→P20 参照)
• 会社分割による派遣就業関係の承継に伴い、労働組合法上の使用者としての地位も、労働組合員との間の派遣就業関係に付随して承継会社に承継されると判示した事案として、国•中労委(阪急交通社)事件(東京地裁平成 25 年 12 月 5 日 判決)(→P21 参照)
◇労働者との協議(平成12年商法等改正法附則第5条の概要)
分割会社は、承継される事業に従事している労働者と、労働契約の承継に関して協議しなければなりません。
会社分割制度が平成 12 年の商法等改正により創設された際、併せて、会社は、会社分割を行う際には労働者と協議をしなければならないとする規定が設けられました。分割会社は、労働者保護のため、当該手続により承継される労働者の労働契約を承継会社等に承継させるか、分割会社に残留させるかについて、労働者に必要な説明を十分に行い、労働者の希望を聴取した上で決定する必要があります。
(1)協議の対象となる労働者の範囲
協議の対象となる労働者は以下のとおりです。
• 承継される事業に従事している労働者
• 承継される事業に従事していない労働者であって分割契約等にその者が当該分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがあるもの
(2)協議の対象事項
分割会社等は、以下①~③の事項等を十分説明し、本人の希望を聴取した上で、以下④•⑤について協議することが必要です。特に②については、債務の履行の見込みのある•なしに関わらず、分割会社は労働者に適切に説明する必要があります。なお、以下に掲げたものはあくまで例示であり、他にも協議が必要と認められる事項がある場合については、その事項についても、当該労働者に対して協議を行うことが必要です。
【十分に説明を行うべき事項】
① 会社分割の効力発生日以後、当該労働者が勤務することとなる会社の概要
② 会社分割の効力発生日以後、分割会社及び承継会社等の債務の履行の見込みに関する事項
③ 承継される事業に主として従事する労働者に該当するか否かの考え方 等
【本人の希望を聴取した上で協議事項】
④ 本人の希望を聴取した上で、当該労働者の労働契約の承継の有無
⑤ 承継するとした場合又は承継しないとした場合に、当該労働者が従事することを予定する業務の内容、就業場所その他の就業形態 等
また、「事業」を構成するに至らない権利義務の分割の場合において、分割契約等に労働契約の承継の定めのない労働者のうち、当該権利義務の分割が当該労働者の職務の内容等に影響しうるものに対しては、法第7条の労働者の理解と協力を得る努力とは別に、職務の内容等の影響があればその説明を行うなど一定の情報を提供することが望まれます。たとえば、A 社の不動産管理部門が所有する複数の不動産のうち B 土地を会社分割により売却することになった場合、当該不動産の管理を担当していた労働者の職務から B 土地の運用管理という業務はなくなりますので、その旨情報提供を行うことが望まれます。
(3)協議に当たっての代理人の選定•労働組合法上の団体交渉権との関係
協議に当たり、協議の対象となる労働者は、民法の規定(民法第1編第5章第3節代理)に基づき、労働組合を当該協議の全部又は一部に係る代理人として選定することができます。この場合、分割会社は、当該労働組合と誠実に協議をする必要があります。なお、民法上、原則として禁止されている双方代理となるため、分割会社の代理人が労働者の代理人となること、分割会社の管理•監督的立場の者を代理人にすることはできません。
分割会社は、会社分割に伴う労働者の労働条件等に関する労働組合法第 6 条の団体交渉の対象事項については、当該協議を行っていることをもって労働組合による適法な団体交渉の申し入れを拒否することはできません。また、団体交渉の申し入れがあった場合には、分割会社は、その労働組合と誠意をもって交渉に当たらなければなりません。
(4)協議開始時期
分割会社は、通知期限日までに十分な協議ができるよう、時間的余裕をみて協議を開始することとされています。つまり、分割会社は、当該協議の対象事項につき、承継される労働者に対し十分に説明し、労働者の希望を聴取した上で、労働契約の承継の有無等について十分協議できるような時間を確保する必要があります。
(5)会社分割の無効の原因となる協議義務違反等
当該協議を全く行わなかった場合又は実質的にこれと同視し得る場合における会社分割については、会社分割の無効の原因となり得ます。また、最高裁判所の判例(日本アイ•ビー•エム事件)において、当該協議が全く行われなかった場合又は協議が行われた場合であっても著しく不十分であるため、法が当該協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、主従事労働者は、労働契約の承継の効力の有無を個別に争うことができるとされています。
こうした事態にならないよう、分割会社は、適切に労働者と協議をする必要があります。
【参考となる裁判例】
日本アイ•ビー•エム事件(最高裁平成 22 年7月 12 月 判決)(→P21 参照)
(参考)会社分割に伴う個別労働者に係る手続•権利
非主従事労働者
主従事労働者
従従事労働者
不従事労働者
承継の定め 承継の定め 承継の定め 承継の定め 承継の定め 承継の定め
有 無 有 無 有 無
5条協議
○
○
○
○
○
×
通知
○
○
○
×
○
×
異議申出
×
○
○
×
○
×
(参考)「労働者の理解と協力を得る努力」と「労働者との協議」の違い
労働者の理解と協力を得る努力 | 労働者との協議 | |
根拠規定 | 法第7条 | 商法等改正法附則第5条第1項 |
実施時期 | 右記の協議開始までに開始 | 法第2条第1項の通知をすべき日まで |
対象労働者 | 分割会社が雇用する労働者 | •承継される事業に従事している労働者 •承継される事業に従事していないが、分 割契約等にその労働契約を承継する定めのある労働者 |
協議事項等 | ① 会社分割をする背景及び理由 ② 分割会社及び承継会社等の債務の履行の見込みに関する事項 ③ 承継される事業に主として従事する労働者に該当するか否かの判断基準 ④ 労働協約の承継に関する事項 ⑤ 会社分割に当たり、労働者との間に生じた問題の解決手続 等 | ○ 十分に説明すべき事項 ① 会社分割の効力発生日以後、当該労働者が勤務することとなる会社の概要 ② 会社分割の効力発生日以後、分割会社及び承継会社等の債務の履行の見込みに関する事項 ③ 承継される事業に主として従事する労働者に該当するか否かの考え方 等 ○ 本人の希望を聴取した上で協議を行う事項 ④ 労働契約の承継の有無 ⑤ 承継するとした場合又は承継しないとした場合に従事することを予定する業務の内容、就業場所その他の就業形態 等 |
協議手続 | すべての事業場において、 •当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合と協議、 •労働者の過半数を代表する者との協議(労働者の過半数で組織する労働組合がない場合)を行う ※ その他これに準ずる方法(名称のいかんを問わず、労働者の理解と協力を得るために、労使対等の立場に立ち誠意をもって協議が行われることが確保される場において 協議することが含まれる。 | 当該労働者との協議による。ただし、当該労働者が労働組合を代理人に選定した場合、当該労働組合と誠実に交渉する義務あり。 |
◇指針(第8条の概要)
法の適切な実施を図るために、厚生労働大臣が指針を定めています。
法に規定されている内容をさらに明確なものとし、その適切な実施を通して会社分割に当たっての労働者保護の実現に資するものとして、指針を策定しています。
指針で定めている事項のうち、主な内容は本パンフレットの中に記載しています。
主な裁判例•命令
▶ 法人格否認の法理により雇用関係の承継を認めた事案【事業譲渡】
◇ 日本言語研究所ほか事件(東京地裁平成 21 年 12 月 10 日 判決)
【事案の概要】
• Aはかつて雇用されていたX社が倒産したことから、X社に対する雇用契約上の地位確認及び未払賃金等の支払を命じる確定判決の実現が不可能になった。X社は、Aその他の債権者に対する未払賃金等の債務を免ずる目的で自社を事実上倒産させ、経営実態がほとんど同一のY1社及びY2社に営業等の大半を譲渡するなどして、法人格を濫用したものであるとして、法人格否認の法理に基づき、AがY1社に対し雇用契約上の権利を有する地位の確認等を求めた事案。
【判決の要旨】
• もともとY1社•Y2社はX社の一営業部門たる性質を有し、(略)B(X社代表取締役)は、X社及びY1社•Y2社を自己の意のままに管理支配できる地位にあったというべきである。
そして(略)X社は、(略)その営業権のすべてをY1社•Y2社に譲渡し、その結果、X社は多額の累積未払賃金債務を残したまま倒産し、Y1社•Y2社は、従前、X社が行っていたものと実質的に同一の事業を継続しているのであって、これらの事実に鑑みれば、X社は、Aその他の債権者に対して負担する多額の未払賃金等の債務を免れる目的で、営業権のすべてをY1社•Y2社に承継させ、自らを倒産させたものと認めるのが相当である。したがって、X社の倒産及びY1社•Y2社への営業権の承継は、Aその他の債権者に対するX社の債務の逸脱を目的としてされた会社制度の濫用というべきである。
そうすると、法人格否認の法理により、Y1社は、Aに対しては、xxx上、X社とは別異の法人格であることを主張することができず、Aに対してX社が前訴判決で命じられた内容について、X社と並んで責任を負わなければならない。
▶ 法人格否認の法理により雇用関係の責任を親会社に認めた事案【事業譲渡】
◇ 第一交通産業ほか(xx第一交通)事件(大阪高裁平成 19 年 10 月 26 日 判決)
【事案の概要】
• タクシー事業を営むX社は株主総会の決議により解散し、その従業員であったAらが、X社の解散及びそれを理由とする組合員であるAらの解雇について、
① X社の親会社であるZ社(X社及びY社の全株式を所有)が労働組合を壊滅させる目的で行った不当労働行為であると主張して、Z社に対し法人格否認の法理に基づき、労働契約上の権利を有する地位の確認等を求めるとともに、
② X社と同じ営業区域においてタクシー事業を営むY社に対し、Y社はZ社の指示の下、X社の事業を承継したものであるなどと主張して、法人格否認の法理に基づき、労働契約上の権利を有する地位の確認等を求めた事案。
• 1審(大阪地裁堺支部)は、Z社は組合を排斥する目的でX社の法人格を違法に濫用しX社を解散し、また、X社と同一の事業をY社が継続していることから偽装解散に当たるとした上で、X社と同一の事業を継続し、法人格が形骸化しているとは認められないY社に対して雇用契約上の責任を追及することはできるが、Z社に対しては雇用契約上の責任を追及することはできないとした。Aら及びY社•Z社はこれを不服として双方控訴した。
【判決の要旨】
• 本件においては、X社の法人格が完全に形骸化しているとまではいえないけれども、親会社であるZ社による子会社であるX社の実質的•現実的支配がなされている状況の下において、組合を壊滅させる違法•不当な目的で子会社であるX社の解散決議がなされ、かつ、X社がxx解散されたものではなく偽装解散であると認められる場合に該当するので、組合員であるAらは、親会社であるZ社による法人格の濫用の程度が顕著かつ明白であるとして、Z社に対して、X社解散後も継続的、包括的な雇用契約上の責任を追及することができる。
▶ 従業員を個別に排除する目的で合意した不承継特約の合意を民法第 90 条違反として無効 とし、承継合意のみを有効とした事案【事業譲渡】
◇ xx自動車学校(大船自動車興業)事件(東京高裁平成 17 年 5 月 31 日 判決)
【事案の概要】
• X社は、Y社との間でY社へ営業の全部を譲渡する契約を締結し、また、その日に株主総会でその営業譲渡契約を承認するとともにX社の解散を議決した。同契約4条において、Y社は、X社の従業員の雇用を引き継がないが、X社の従業員でY社での再就職を希望し、かつX社がY社に通知した者については新たに雇用することが定められた。
また、X社とY社との間で、本件営業譲渡契約の締結時までに、①X社と従業員との労働契約をY社との関係で移行させる、②賃金等の労働条件がX社を相当程度下回る水準に改訂されることに異議のあるX社の従業員については前記移行を個別に排除する、③この目的を達成する手段としてX社の従業員全員に退職届を提出させ、退職届を提出した者をY社が再雇用するという形式を採るものとし、退職届を提出しない従業員に対しては、X社において会社解散を理由とする解雇に付する、との合意がなされた。
退職届を提出しなかったAらは、X社から解散を理由に解雇され、Y社に雇用されなかったことから、 AらがY社との労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた事案。
• 1審(横浜地裁)は上記合意の②、③は民法90条に違反するとして無効とし、①のみが有効として雇用の承継を認めた。Y社はこれを不服として控訴した。
【判決の要旨】
• 本件解雇は、会社解散を理由としているが、実際には、Y社の賃金等の労働条件がX社を相当程度下回る水準に改訂されることに異議のある従業員を個別に排除する目的に行われたものであり、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができないから、解雇権の濫用として無効である。
• 上記の合意の②、③の合意部分は、民法90条に違反して無効である。上記合意の目的と符節を合わせた本件営業譲渡契約4条も民法90条に違反して無効になる。
したがって、上記合意は、X社と従業員との労働契約を、(略)Y社との関係で移行させるという原則部分のみが有効なものとして残存することとなる。
• 本件解雇が無効となることによって本件解散時においてX社の従業員としての地位を有することとなるAらについては、上記合意の原則部分に従って、Y社に対する関係で、本件営業譲渡が効力を生じる日をもって、本件労働契約の当事者としての地位が承継される。
▶ 組合員を不採用とした譲受会社等の不当労働行為を認めた事案【事業譲渡】
◇ 👉山会事件(東京高裁平成 14 年 2 月 27 日 判決)
【事案の概要】
• 医療法人 X 経営のx病院が閉鎖され、医療法人 Y がx病院の施設、業務等を引き継いでy病院を開設した際、x病院に勤務していた労働組合員 A1、A2の2名(看護助手•准看護婦)がy病院に採用されなかった。
この不採用が労働組合法の不当労働行為であるとして地方労働委員会が採用等を命ずる救済命令を発し、中央労働委員会も再審査申立てを棄却する旨の命令を発したため、Y がその取消しを求めて提訴した事案。
• 1審(東京地裁)は中央労働委員会の命令に違法はなく、Yの請求に理由はないものとして棄却した。Yはこれを不服として控訴した。
【判決の要旨】
• 本件譲渡は、病院経営という事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する X の財産の譲渡を受け、事業を受け継いだものということができるから、商法上の営業譲渡に類似するものということができる。
• 営業譲渡の場合、譲渡人と被用者との雇用関係を譲受人が承継するかどうかは、原則として、当事
者の合意により自由に定め得るものと解される。しかしながら、契約自由の原則とはいえ、当該契約の内容が我が国の法秩序に照らして許容されないことがあり得るのは当然である。
• y病院の採用の実態をみると、x病院の職員、特に数も多数を占める看護課の職員については、A1、 A2 を除いて、採用を希望する者全員について採用面接し、採用を希望し、賃金等の条件面の折り合いが付いた者全員を採用しているのであって、採用の実態は、新規採用と言うよりも、雇用関係の承継に等しいものとなっている。
• X と Y との契約において、X の職員の雇用契約上の地位を承継せず、雇用するかどうかは Y の専権事項とする旨が合意されているが、採用の実態にかんがみれば、この合意は労働組合及び A1、A2 を嫌悪した結果これを排除することを主たる目的としていたものと推認され、かかる目的をもってされた合意は、労働組合法の規定の適用を免れるための脱法の手段としてされたものと見るのが相当である。したがって、本件不採用は従来からの組合活動を嫌悪して解雇したに等しく、不利益取扱いとして不当労働行為に当たる。
◇ xx自動車交通不当労働行為再審査事件(中労委平成 21 年 9 月 16 日 命令)
【事案の概要】
• X社が解散しその組合員を解雇し、さらに、X社の事業の一部を引き継いだY社がX社の組合員以外の者を雇い入れる一方で組合員のみを雇い入れなかったことが、不当労働行為であるとして救済申立てを行った事案。
• 初審は、X社の解散及び組合員の解雇は偽装解散であり不当労働行為に該当するとして、その責任を承継したY社に対し組合員への解雇がなかったものとして取り扱う旨の救済命令を発した。これに不服としてYは再審査を申し立てた。
【命令の要旨】
• X社及びY社の両社は、X社解散前より長らく A 社長(両社の代表取締役)の強力な支配力•影響力の下で、実質的に一つの経営体として運営されてきた(略)、X社が従業員全員を解雇し、Y社が組合員以外の者を雇い入れる一方で、組合員のみを雇い入れなかったことは、一つの経営体としての両社が A 社長の組合嫌悪の念に基づき、X社の事業の一部をY社に事実上引き継ぎ両社の事業を実際上Y社に集約する施策を利用して、組合及び組合員の排除を行ったものとみざるを得ない。
よって、両社における本件会社解散•事業の一部引継ぎを利用した本件解雇及び本件雇入れ拒否は不当労働行為に該当する。
▶ 転籍合意と法の手続との関係等について判示した事案【会社分割】
◇ 阪神バス(勤務配慮•本訴)事件(神戸地裁尼崎支部平成 26 年 4 月 22 日 判決)
【事案の概要】
• X社のバス運転士であって排便•排尿が困難となる障害があるAは、X社から勤務シフト上の配慮を受けていたが、会社分割(吸収分割)によりX社のバス事業を承継したY社(承継会社)に転籍した後、従前受けていた勤務配慮を受けられなくなった。Aはこのことが公序良俗に反するなどと主張して、Y社に対し、従前どおりの配慮された勤務シフトにもとづく勤務以外の勤務をする必要のない地位にあること等を求めた事案。
なお、Aは、X社と労働契約(労働契約1)を締結していたが、会社分割によるY社への転籍の際、労働契約書が作成された(労働契約2)。
【判決の要旨】
• AとX社との間で、Aの勤務シフトについて、本件排便障害等を理由として勤務配慮を行うことが労働契約1における労働条件として黙示的に合意されていたと認めるのが相当である。
• X社が会社分割に当たって行った手続は、Y社に承継される自動車運送事業に主として従事する労働者であるAに対し、(略)X社との間の従前の労働契約をそのままY社に承継させるという選択肢はなく、そのような選択が可能であるとの説明もなかった。
本件分割契約では、X社が自動車運送事業に主として従事する労働者と締結した労働契約はいずれも Y社に承継されないこととされたが、X社は、Aに対し、承継法2条1項所定の通知の手続を行わず、本件労働契約1がY社に承継されないことについて同法4条1項に基づく異議を申し出る機会があることを知らせなかった。
労働契約承継法上、通知義務の規定(同法第2条第1項)に例外規定はないから、転籍に係る同意が
得られたからといって上記通知等の手続の省略が当然に許されるものとは解されない。しかも、本件会社分割に際してX社が行った上記手続は、(略)労働契約1がそのままY社に承継され得ることについてAに一切説明せず、そのような承継の利益をAに意識させないまま、形式的に個別に転籍の同意を得て、異議の申出の前提となる同法所定の通知の手続を省略し、本来会社分割の際に同法によって保障されているはずの、本件労働契約1がそのままAに承継されるというAの利益を一方的に奪ったものというべきである。
以上によれば、(略)本件同意書を提出させることによってX社との間で本件労働契約1を合意解約させてX社から退職させ、Y社との間で本件労働契約2を締結させてY社に転籍させるという手続は、同法によって保障された、本件労働契約1がそのままY社に承継されるというAの利益を一方的に奪うものであり、同法の趣旨を潜脱するものといわざるを得ない。したがって、本件労働契約1の合意解約及び本件労働契約2は、いずれも公序良俗に反し無効と解するのが相当である。
• 承継法2条1項所定の通知がなされず、その結果、適法な異議申出を行う機会が失われた場合には、当該労働者は、適法な異議申出が行われた場合と同様の効果を主張することができるというべきである。したがって、AがX社との間で締結していた本件労働契約1は、Aが適法に同項所定の異議申出を行っ た場合と同様に、そのまま承継会社であるY社に承継されるというべきである(同法4条4項)。
• 上記同意による勤務配慮に係る労働条件の不利益変更は、公序良俗に反し無効と解するのが相当である。したがって、本件労働契約1における本件勤務配慮に係る合意は、上記Aの同意によっては変更されない。
▶ 団体交渉に応ずべき使用者に関する裁判例
◇ 朝日放送事件(最高裁第3小法廷平成7年2月28日 判決)
【事案の概要】
本件は、テレビの放送事業等を営む会社(被上告人)が、組合から申入れのあった下請労働者に関する事項を議題とする団体交渉を、同人らの使用者ではないとの理由で拒否したこと、会社の職制が組合員に対して行った脱退勧奨等が不当労働行為であるとして申立てがあった事案である。初審の一部救済命令に対し、当該会社から再審査の申立てがなされ、中労委は、同命令を一部変更し、就労にかかる諸条件に関する団交応諾等を命じた。当該会社は、これを不服として、東京地裁に訴えを提起したが、棄却されたため、さらに控訴していたところ、東京高裁は原判決及び中労委命令を取り消すとの判決を言い渡し、中労委が上告していた。
【判決の要旨】
本件請負3社は、被上告人とは別個独立の事業主体として、テレビの番組制作の業務につき被上告人との間の請負契約に基づき、その雇用する従業員を被上告人の下に派遣してその業務に従事させていたものであり、もとより、被上告人は当該従業員に対する関係で労働契約上の雇用主に当たるものではない。しかしながら、被上告人は、本件請負 3 社から派遣される従業員が従事すべき業務の全般
につき管理しており、当該従業員の基本的な労働条件について、雇用主である請負 3 社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったものというべきであるから、その限りにおいて、労組法 7 条の「使用者」に当たると解するのが相当であり、自ら決定できる勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等に関する限り、正当な理由がなければ団交を拒否できないというべきである。よって、使用者でないことを理由とする本件団交拒否は正当な理由がなく、労組法 7 条 2 号の不当労働行為に当たる。
◇ 盛岡観山荘病院不当労働行為再審査事件(中労委平成 20 年 2 月 20 日 命令)
【事案の概要】
• 個人病院(旧病院)の開設者Xの死亡に伴い、その相続人から裁判所の競売手続を通して病院資産を取得した上、同じ名称を使用して病院経営を引き継ぎ新たに開設したY(それまで非常勤医師として旧病院で勤務)が、旧病院の従業員で組織する労働組合が申し入れた採用問題等に関する団体交渉に、組合の組合員と雇用関係にないとの理由でYが応じなかったことが不当労働行為であるとして救済申立てがあった事案。
• 初審は団交拒否に正当性はないとして不当労働行為とした。これを不服としてYは再審査を申し立てた。
【命令の要旨】
• 本件団交申入れ(注;新病院開設前の段階のもので、その内容は新病院における従業員の労働条件に関するもの)の時点において、Yは本件申入れから 15 日後には新病院の労働契約上の使用者となることが予定され、組合員を含む旧病院の従業員は引き続き雇用される蓋然性が大きかったといえる。そうすると、Yは近接した時期に、組合員らを引き続き雇用する可能性が現実的かつ具体的に存する者ということができるのであり、本件団交申入れ時点において労働契約上の使用者と同視できる者である。
したがって、Yは本件申入れに応ずべき者として労組法第 7 条第2号の使用者に該当する。
• Yによる新病院の開設は、新規開設の形式は取っているものの、その実質は旧病院の事業の承継であるということができること、Y主導の下に行われた採用方針の決定から具体的な採否の決定に至る一連の行為の実態は、旧病院から新病院への事業の承継に当たって、新病院の従業員として継続して雇用する者と新病院開設を契機に解雇する者とに選別するものであったといえることから、本件における不採用は労組法第 7 条第2号の適用に当たっては、新病院開設に伴う従業員の新規採用の場合の不採用と同視することは相当ではなく、実質的には Y による解雇と同視すべきものである。
本件団交申入れ(注;新病院開設時の段階のもの)は、応募した希望者全員の採用を求める形式になっているものの、その実質は、上記のとおり解雇と実質的に同視すべき採用拒否を争って団交を求めるものである。したがって、Yは上記団交申入れにおける団交事項との関係では、労働契約上の使用者と同視すべき者であって、労組法第 7 条第2号の使用者に該当する。
▶ 労働組合法上の使用者•不当労働行為責任の承継に関する裁判例
◇ モリタ•モリタエコノス•中央労働委員会事件(東京地裁平成 20 年 2 月 27 日 判決)
【会社分割】
【事案の概要】
• X社は会社分割(新設分割)し、分割会社X’社と新設会社Y社に分割した。この会社分割に伴い、 A労働組合分会の分会員全員がY社に移籍した。
• これに関し、①X社が従前から別組合に事務所等を貸与していながら新たに結成されたA労働組合分会に事務所等を貸与せず、②本件会社分割に関する団体交渉に誠実に対応しなかったことが労働組合法の不当労働行為であるとして、都道府県労働委員会がY社に対する事務所等の貸与等を命ずる救済命令を発し、中央労働委員会もこれを維持したため、X’社及びY社はその取り消しを求めて提訴した事案。
【判決の要旨】
• 支配介入(事務所等の貸与についての別組合との異なる取扱い)について
① A組合分会の分会員は、本件会社分割により、X社の従業員から、Y社のそれとなり、X社と A組合分会の分会員間の労働契約関係はY社に承継されたというべきであるから、Y社は、X社の支配介入に関する不当労働行為責任を承継したというべきである。
② 労組法にいう使用者性を基礎づける労働契約関係とは、必ずしも現実の労働契約関係のみをいうものではなく、これに近接する過去の時点における労働契約関係の存在もまた、労組法上の使用者性を基礎づける要素となると解するのが相当であるから、(略)本件会社分割後の法律関係の変動を理由として、X’社がA組合分会の分会員に対する関係で使用者たる地位を失うことはない。
• 会社分割に関する不誠実な団体交渉について
前記のとおり、本件会社分割後の法律関係の変動を理由として、X’社がA組合分会の分会員に対する関係で使用者たる地位を失うことはない。
◇ 国•中労委(阪急交通社)事件(東京地裁平成 25 年 12 月 5 日 判決)【会社分割】
【事案の概要】
• X社は会社分割(吸収分割)し、旅行事業を承継会社Y社に承継させた。X社は、この会社分割の前に、同事業で受け入れている派遣労働者(派遣添乗員)に係る労働時間管理等についての団交の申入れを拒否した。
• この団交拒否のうち労働時間管理に関する事項の団交拒否が労働組合法上の不当労働行為であるとし、その責任はY社が承継したとして都道府県労働委員会が救済命令を発し、中央労働委員会も再審査申立 を棄却する旨の命令を発したため、Y社がその取り消しを求めた事案。
【判決の要旨】
• X社は、本件団交申入れに係る団体交渉事項につき、派遣添乗員の所属する労働組合との関係で労組法7条の使用者に当たる。そして、Y社は、本件吸収分割により、X社から、その旅行事業に関する権利義務を承継し、派遣元会社との間の労働者派遣契約の当事者たる地位に付随する労働組合員との間の派遣就業関係をも承継したというべきである。そして、それに伴い、Y社は、労働時間管理に関する労組法7条の使用者としての地位も、労働組合員との間の派遣就業関係に付随するものとしてX社から承継したものと解するのが相当である。
▶労働者との協議等の法的意義等について示した事案
◇ 日本アイ•ビー•エム(会社分割)事件(最高裁平成 22 年 7 月 12 日 判決)
【事案の概要】
• X社(分割会社)は新設分割によりY社(新設会社)を設立した。Y社に主従労働者として承継されることとなったAらは、同人らの労働契約は、その承継手続に瑕疵があるのでY社に承継されず、本件会社分割はAらに対する不法行為に当たるなどと主張して、X社に対し、労働契約上の地位確認及び損害賠償を求めた事案。
• 1審及び2審は、それぞれAらの請求及び控訴を棄却し、Xxはこれを不服として上告した。
【判決の要旨】
• 特定の労働者との関係において5条協議(平成12年商法等改正法附則5条1項に定める労働契約の承継に関する労働者との協議)が全く行われなかったときには、当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるものと解するのが相当である。
また、5条協議が行われた場合であっても、その際の分割会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため、法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、分割会社に5条協議義務の違反があったと評価してよく、当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるというべきである。
• 他方、分割会社は、7条措置として、会社の分割に当たり、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとされているが(承継法7条)、これは違反したこと自体は労働契約承継の効力を左右する事由になるものではない。7条措置において十分な情報提供等がなされなかったがために5条協議がその実質を欠くことになったといった特段の事情がある場合に、5条協議義務違反の有無を判断する一事情として 7 条措置のいかんが問題になるにとどまるものというべきである。
• なお、7条措置や5条協議において分割会社が説明等をすべき内容等については、「分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針」が定めている。(略)その定めるところは、以上説示したところに照らして基本的に合理性を有するものであり、個別の事案において行われた7条措置や5条協議が法に求める趣旨を満たすか否かを判断するに当たっては、それが指針に沿って行われたものであるか否かも十分に考慮されるべきである。
• これを本件についてみると、(略)7 条措置が不十分であったとはいえない。(略)5条協議が不十分であるとはいえず、AらのY社への労働契約承継の効力が生じないということはできない。また、5条協議等の不十分を理由とする不法行為が成立するともいえない。
○○○○殿
【参考様式1】労働者への通知(吸収分割の場合)
会社分割に伴う労働契約の承継に関する通知
平成○○年○月○日
株式会社○○○○人事部長○○○○
当社は、会社分割をすることとし、○○○○株式会社との間で、当社を吸収分割会社、○○○○株式会社を吸収分割承継会社 (以下「承継会社」という。)とする吸収分割契約を締結しました。当該会社分割に関し、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(以下「法」という。)第2条第1項の規定に基づき、下記のとおり通知します。
施行規則第1条第 3 号の事項
記
1 承継会社に承継される事業の概要
当社の○○部門に関する事業
施行規則第1条 2 会社分割がその効力を生ずる日(以下「効力発生日」という。)以後における商号、住所、事
第4号の事項 業内容及び雇用予定労働者数
当 社 承継会社
商号 株式会社○○○○ ○○○○株式会社
住所 xxx○○区○○ ○丁目○番○号 xxx○○区○○ ○丁目○番○号事業内容 ○○に関する事業、○○に関する事業及 ○○に関する事業、○○に関する事
び○○に関する事業 等 業及び○○に関する事業 等
雇用予定労働者数 ○人
○人
施行規則第1条第5号の事項
(平成○年○月○日現在)
3 効力発生日
雇用予定労働者数は、効力発生日以後に雇用することを予定している全労働者数(正社員に限らず、短時間労働者等や新規に雇用される労働者も含む。)を記載します。
平成○年○月○日
施行規則第1条第7号の事項
4 効力発生日以後における債務の履行の見込みに関する事項
当社及び承継会社は、効力発生日以後における債務の履行の見込みについて問題がありません
このほか、会社法の規定に基づいて事前開示する債務の履行の見込みに関する事項の要旨等を記載することも考えられます。
法第2条第1項柱書きの事項
5 労働契約を承継する旨の吸収分割契約における定めの有無
施行規則第1条第2号の事項
当社と承継会社との間で締結した吸収分割契約には、貴殿の労働契約を承継会社が承継する旨の定めが あります/ありません。
6 会社分割による労働条件の承継
当社が、当社の労働者との間で締結している労働契約であって、分割契約に承継会社が承継する旨の定めがあるものは、効力発生日以後、当社から承継会社に包括的に承継されるため、その内容である労働条件は、そのまま維持されます。
施行規則第1条第1号の事項
7 法第2条第1項各号のいずれに該当するかの別
追加されました!
法においては、 吸収分割会社が雇用する労働者について、以下①、②の区分があります。
① 承継会社に承継される事業に主として従事する者 …「法第2条第1項第1号の労働者」
② 吸収分割契約に、承継会社が労働契約を承継する旨の定めがある者(①の者を除く)
施行規則第1条第6号の事項
…「法第2条第1項第2号の労働者」貴殿は、法第2条第1項第○号の労働者に該当します。
8 効力発生日以後において従事する業務の内容、就業場所その他の就業形態
施行規則第1条第8号の事項
貴殿は、承継会社の○○部門に関する事業に従事する予定です(○○営業所に配属)。
9 法第4条第1項又は第5条第1項の異議申出ができる旨及び異議申出先
法においては、
・ 承継会社に承継される事業に主として従事する労働者が、労働契約を承継会社に承継されないこと
就業場所その他の就業形態は、承継される労働条件の範囲内で変更される可能性があるので、通知する必要があります。
・ 承継会社に承継される事業に主として従事しない労働者が、労働契約を承継会社に承継されることについて、書面により異議を申し出ることができます。
この異議申出を行う場合には、以下に宛てて提出して下さい。株式会社○○○○ 人事部
法第2条第1項柱書きの事項
xxx○○区○○ ○丁目○番○号
10 異議申出期限日
9の異議申出の期限日は、平成○年○月○日です。
異議申出先としては、その担当部門ではなく、その担当者(氏名と職名と勤務場所)を通知することもできます。
○○○○殿
【参考様式2】労働者への通知(新設分割の場合)
会社分割に伴う労働契約の承継に関する通知
平成○○年○月○日
株式会社○○○○人事部長○○○○
分割計画では所在地を定めることとなっていることによりますが、○○ ○丁目○番○号まで通知が可能であるときは、これを通知することも差し支えないと考えられます。
当社は、会社分割をすることとし、当社を新設分割会社、○○○○株式会社を新設分割設立会社(以下「設立会社」という。)とする新設分割計画を作成しました。当該会社分割に関し、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(以下「法」という。)第2条第1項の規定に基づき、下記のとおり通知します。
施行規則第1条第 3 号の事項
記
1 設立会社に承継される事業の概要
当社の○○部門に関する事業
施行規則第1条第4号の事項
2 会社分割がその効力を生ずる日(以下「効力発生日」という。)以後における商号、住所・所在地、事業内容及び雇用予定労働者数
当 社 設立会社
商号 株式会社○○○○ ○○○○株式会社住所・所在地 xxx○○区○○ ○丁目○番○号 xxx○○区
事業内容
雇用予定労働者数
○○に関する事業、○○に関する事業及び○○に関する事業 等
○人
○○に関する事業、○○に関する事業及び○○に関する事業 等
○人
施行規則第1条第5号の事項
3 効力発生日
(平成○年○月○日現在)
雇用予定労働者数は、効力発生日以後に雇用することを予定している全労働者数(正社員に限らず、短時間労働者等や新規に雇用される労働者も含む。)を記載します。
平成○年○月○日
施行規則第1条第7号の事項
4 効力発生日以後における債務の履行の見込みに関する事項
当社及び設立会社は、効力発生日以後における債務の履行の見込みについて問題がありません
このほか、会社法の規定に基づいて事前開示する債務の履行の見込みに関する事項の要旨等を記載することも考えられます。
法第2条第1項柱書きの事項
5 労働契約を承継する旨の新設分割計画における定めの有無
施行規則第1条第2号の事項
当社が作成した新設分割計画には、貴殿の労働契約を設立会社が承継する旨の定めがあります/ありません。
6 会社分割による労働条件の承継
当社が、当社の労働者との間で締結している労働契約であって、分割計画に設立会社が承継する旨の定めがあるものは、効力発生日以後、当社から設立会社に包括的に承継されるため、その内容である労働条件は、そのまま維持されます。
施行規則第1条第1号の事項
7 法第2条第1項各号のいずれに該当するかの別
追加されました!
法においては、 新設分割会社が雇用する労働者について、以下①、②の区分があります。
① 設立会社に承継される事業に主として従事する者 …「法第2条第1項第1号の労働者」
② 新設分割計画に、設立会社が労働契約を承継する旨の定めがある者(①の者を除く)
施行規則第1条第6号の事項
…「法第2条第1項第2号の労働者」貴殿は、法第2条第1項第○号の労働者に該当します。
8 効力発生日以後において従事する業務の内容、就業場所その他の就業形態
施行規則第1条第8号の事項
貴殿は、設立会社の○○部門に関する事業に従事する予定です(○○営業所に配属)。
9 法第4条第1項又は第5条第1項の異議申出ができる旨及び異議申出先
法においては、
・ 設立会社に承継される事業に主として従事する労働者が、労働契約を設立会社に承継されないこと
就業場所その他の就業形態は、承継される労働条件の範囲内で変更される可能性があるので、通知する必要があります。
・ 設立会社に承継される事業に主として従事しない労働者が、労働契約を設立会社に承継されることについて、書面により異議を申し出ることができます。
この異議申出を行う場合には、以下に宛てて提出して下さい。株式会社○○○○ 人事部
法第2条第1項柱書きの事項
xxx○○区○○ ○丁目○番○号
10 異議申出期限日
9の異議申出の期限日は、平成○年○月○日です。
異議申出先としては、その担当部門ではなく、その担当者(氏名と職名と勤務場所)を通知することもできます。
【参考様式3】労働組合への通知(吸収分割の場合)
○○労働組合 御中
会社分割に伴う労働協約の承継に関する通知
平成○○年○月○日
株式会社○○○○人事部長○○○○
当社は、会社分割をすることとし、○○○○株式会社との間で、当社を吸収分割会社、○○○○株式会社を吸収分割承継会社 (以下「承継会社」という。)とする吸収分割契約を締結しました。当該会社分割に関し、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(以下「法」という。)第2条第2項の規定に基づき、下記のとおり通知します。
記
施行規則第3条第1号→同第1条第3号の事項
1 承継会社に承継される事業の概要
当社の○○部門に関する事業
範囲を明示するだけでは労働者の氏名が明らかにならない場合には、当該労働者の氏名を通知します。
施行規則第3条第2号の事項
2 労働契約が承継会社に承継される労働者の範囲
当社の○○部門に関する事業に従事している労働者
施行規則第3条第1号→同第1条第4号の事項
当 社 | 承継会社 | |
商号 | 株式会社○○○○ | ○○○○株式会社 |
住所 | xxx○○区○○ ○丁目○番○号 | xxx○○区○○ ○丁目○番○号 |
事業内容 | ○○に関する事業、○○に関する事業及び○○に関する事業 等 | ○○に関する事業、○○に関する事業及び○○に関する事業 等 |
雇用予定労働者数 | ○人 | ○人 |
3 会社分割がその効力を生ずる日(以下「効力発生日」という。)以後における商号、住所、事業内容及び雇用予定労働者数
(平成○年○月○日現在)
雇用予定労働者数は、効力発生日以後に雇用することを予定している全労働者数(正社員に限らず、短時間労働者等や新規に雇用される労働者も含む。)を記載します。
施行規則第3条第1号→同第1条第5号の事項
4 効力発生日
施行規則第3条第1号→同第1条第7号の事項
平成○年○月○日
5 効力発生日以後における債務の履行の見込みに関する事項
当社及び承継会社は、効力発生日以後における債務の履行の見込みについて問題がありません
このほか、会社法の規定に基づいて事前開示する債務の履行の見込みに関する事項の要旨等を記載することも考えられます。
法第2条第2項の事項
6 労働協約を承継する旨の吸収分割契約における定めの有無
当社と承継会社との間で締結した吸収分割契約には、貴労働組合と締結している労働協約を承継会社が承継する旨の定めが あります/ありません
施行規則第3条第3号の事項
7 労働協約を承継する旨の吸収分割契約における定めの内容(定めがある場合のみ)
・ 貴労働組合に対し貸与している組合事務所100平方メートルのうち、
40平方メートル分の貸与義務を分割会社に残し、60平方メートル分の貸与義務を承継会社に承継すること
【参考様式4】労働組合への通知(新設分割の場合)
○○労働組合 御中
会社分割に伴う労働協約の承継に関する通知
平成○○年○月○日
株式会社○○○○人事部長○○○○
当社は、会社分割をすることとし、当社を新設分割会社、○○○○株式会社を新設分割設立会社 (以下「設立会社」という。)とする新設分割計画を締結しました。当該会社分割に関し、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(以下「法」という。)第2条第2項の規定に基づき、下記のとおり通
知します。
施行規則第3条第1号→同第1条第3号の事項
1 設立会社に承継される事業の概要
当社の○○部門に関する事業
範囲を明示するだけでは労働者の氏名が
記 明らかにならない場合には、当該労働者の氏名を通知します。
施行規則第3条第2号の事項
分割計画では所在地を定めることとなっていることによりますが、○○ ○丁目○番
○号まで通知が可能であるときは、これを通知することも差し支えないと考えられます。
2 労働契約が設立会社に承継される労働者の範囲
当社の○○部門に関する事業に従事している労働者
施行規則第3条第1号→同第1条第4号の事項
当 社 | 設立会社 | |
商号 | 株式会社○○○○ | ○○○○株式会社 |
住所・所在地 | xxx○○区○○ ○丁目○番○号 | xxx○○区 |
事業内容 | ○○に関する事業、○○に関する事業及び○○に関する事業 等 | ○○に関する事業、○○に関する事業及び○○に関する事業 等 |
雇用予定労働者数 | ○人 | ○人 |
3 会社分割がその効力を生ずる日(以下「効力発生日」という。)以後における商号、住所・所在地、事業内容及び雇用予定労働者数
(平成○年○月○日現在)
雇用予定労働者数は、効力発生日以後に雇用することを予定している全労働者数(正社員に限らず、短時間労働者等や新規に雇用される労働者も含む。)を記載します。
施行規則第3条第1号→同第1条第5号の事項
4 効力発生日
施行規則第3条第1号→同第1条第7号の事項
平成○年○月○日
5 効力発生日以後における債務の履行の見込みに関する事項
当社及び設立会社は、効力発生日以後における債務の履行の見込みについて問題がありません
このほか、会社法の規定に基づいて事前開示する債務の履行の見込みに関する事項の要旨等を記載することも考えられます。
法第2条第2項の事項
6 労働協約を承継する旨の新設分割計画における定めの有無
当社が作成した新設分割計画には、貴労働組合と締結している労働協約を設立会社が承継する旨の定めが あります/ありません
施行規則第3条第3号の事項
7 労働協約を承継する旨の新設分割計画における定めの内容(定めがある場合のみ)
・ 貴労働組合に対し貸与している組合事務所100平方メートルのうち、
40平方メートル分の貸与義務を分割会社に残し、60平方メートル分の貸与義務を設立会社に承継すること
【参考様式5】分割会社への異議申出書の例
平成○年○月○日
会社分割に伴う労働契約の承継に関する異議の申出
株式会社○○○○ 人事部 御中
株式会社 ○○○○
○○部 ○○課
○○○○(氏名)
承継される事業に主として従事しているが、承継会社等に労働契約が承継されない場合
私は、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律第4条第1項の規定に基づき、労働契約が承継会社等に承継されないことについて、異議を申し出ます。
承継される事業に主として従事していないが、承継会社等に労働契約が承継される場合
私は、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律第5条第1項の規定に基づき、労働契約が承継会社等に承継されることについて、異議を申し出ます。
なお、私は、承継される事業に主として従事していないものと考えています。
法第5条第1項の異議申出を行う場合は、法第4条第1項の場合と異なり、分割会社が当該労働者を「承継される事業に主として従事する」と判断する一方で、労働者は「承継される事業に主として従事していない」と判断している場合があります。このときは、まずその判断の相違を解消することが急務であるので、労働者は以上の旨を明記することが適当と考えられます。