では、進めさせて頂きます。まず、私が2月 10 日に示した、案のコンセプトから説明させていただきますと、まず確定的な認知症診断には至らない、軽度認知症、MCI というものですけれども、それとかうつ病などで判断力が低下している人に対して、不合理な内容の契約を勧誘する場合を救済対象とすべ き、これがコンセプトになります。平成 30 年の改正の際、附帯決議でも、創設すべき規定としては、知識、経験、判断力の不足など、消費者が合理的な判断をすることが...
消費者契約に関する検討会第5回 議事録
消費者庁消費者制度課
第5回 消費者契約に関する検討会
1.日 時:令和2年6月17日(水)9:30~12:00
2.場 所:オンライン開催
3.議 題
(1)いわゆる「つけ込み型」勧誘に関する取消xxの規律について等
(2)意見交換
4.出席者
(委員)
xxxx委員(座長)、xx委員、xx委員、楠委員、xx委員、xx委員、髙橋委員、xx委員、xx委員、xx委員、xx委員、xx委員、
xxxx委員、xxxx委員、xx委員
(事務局)
xxxxx、xx消費者制度課長、xx課長補佐
(オブザーバー)
国民生活センター、法務省、最高裁判所
〇xx消費者制度課長
おはようございます。事務局でございます。それでは、定刻になりましたので、第5回消費者契約に関する検討会を開催いたします。本日も前回同様、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、座長含め、委員・オブザーバーの皆様をオンラインでお繋ぎしております。委員の皆様にはご多忙のところ、ご出席賜りましてありがとうございます。
本日は、xx委員がご欠席、xx委員とxx委員が途中で退席される、ということでご連絡をいただいております。それでは、以降の進行はxxxxにお願いいたします。
〇xxxx
はい、xxです。おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。本日の議題は、いわゆる「つけ込み型」勧誘に関する検討になります。まず、事務局から接続と資料の確認をお願い致します。
〇xx消費者制度課長
※接続確認を行う。
続いて資料を確認させていただきます。本日の資料ですが、議事次第に記載の通り、事務局からの資料を一点とxx委員から第3回の会合におきましてご提出いただいた資料を参考としてお付けしております。
それから一点、本日、私ども消費者庁の方で、 緊急地震速報の放送訓練がございます。10 時頃からの予定でございますが、私どもがおります会議室でも音声が流れますので、その訓練放送中は事務局のマイクをオフにする場合がございます。ご迷惑をおかけして恐縮ですけども予めご承知おきいただければ幸いでございます。事務局からは以上でございます。
【2.事務局資料の説明(いわゆる「つけ込み型」勧誘について)】
〇xxxx
ありがとうございました。それでは、議事に入りたいと思います。
今日の議事である、いわゆる「つけ込み型」勧誘については、2月に開催されました第3回の検討会で検討を行いました。この時は事務局提出資料及びx
x委員から提出された資料について、それぞれ説明がありましたものの、時間切れとなり、十分な意見交換を行うことができませんでした。そこで、本日 は、まず、事務局から、本日提出があった資料を説明していただき、その後、xx委員には、改めて第3回の検討会にご提出いただいた資料についてご説明をいただきたいと思います。その上で、意見交換を行いたいと思います。それでは、事務局から説明をお願いいたします。
〇xx課長補佐
それでは事務局から資料を説明させていただきます。宜しくお願いします。資料の方は、いわゆる「つけ込み型」勧誘について、というところでして、1ページおめくりいただきまして、本日検討するのは、消費者の判断能力の不足につけ込む勧誘への対応になります。これまで「困惑」あるいは「浅慮」、
「幻惑」といった形で検討してまいりましたものにつきましては、消費者の心理状態につけ込む勧誘として、次回以降に検討したいと思っております。
1枚おめくりいただきまして、1として本日の検討課題をお示ししております。高齢化社会が進展する中で、認知症高齢者等の消費者被害が深刻化しております。そういう状況を踏まえて、消費者契約法の改正も行われていまして、 2016 年では過量契約取消権の規定が設けられ、また、2018 年には判断力、判断能力という意味での判断力の低下に関する規定が条文としてより明確な形で設けられました。それでもなお、国会の附帯決議などで検討を求められているところでして、更なる対応が必要ではないかというのが大きな問題意識として持っているところになります。下の※印のところに書きましたのは、これまでの検討会では、判断能力が著しいとまでは言えない程度低下している場合、あるいは知識不足につけ込む場合もあるのではないか、というご指摘があったところでして、こういったものにつきましては、次回以降の消費者の心理状態につけ込む勧誘への対応という形で検討してまいりたいと思っております。
1ページ先に行きまして、(2)で、事例の検討を若干しております。認知症高齢者の消費者被害のうち、現行法による救済が困難なもの、現行法では必ずしも救済が十分ではないと考えられるものとして、次のものがあるのではないかと考えております。まず事例1をご覧いただければと思いますが、認知症高齢者に対し複数の生命保険契約を締結させて生活に支障が生ずるほどに高額な保険料を支払われた事例をご紹介しております。事案の概要を若干紹介しますと、ここに兄嫁と書いてありますが、この方が認知症の高齢者でして、この方が勧誘されるまま新規や転換で複数の生命保険の契約をしていた。それで、毎月、生活に支障が生じるほど高額な保険料を支払い続けていた、という事案
になります。参考というところに若干書いているとおり、この事案における事業者に対しては、行政処分も行われています。
次のページへ行っていただきまして、事例2の方をご紹介します。こちらは認知症高齢者から自宅を含む不動産を購入した事例になります。こちらも事案の概要を若干かいつまんでご紹介しますと、Xは、とありまして、この方が認知症の高齢者にあたるわけですが、この方が、少なくとも客観的な価値として
1億3千万円くらいはある不動産、この中にはXさんの生活の本拠を含んでいるのですが、これを事業者であるYに 6,000 万円で売却したというものです。その背景事情として、競売等にされるかもしれないなどの切迫した状況があ り、また認知症を発症していた、ということがある中で、買主で事業者である Yはこれらの事情を知っていた、というものです。この点、タイトルでは認知症高齢者から自宅を含む不動産を購入した事例という形でご紹介しているところ、先ほど若干ご紹介したように、競売のおそれがあった、買取価格が市場価格の約半分であった、といった事情もある事例ですが、最近の裁判例で公表されているものということで、この事例を特にご紹介させていただきました。この事例は、参考というところにありますように、近年の裁判例において、公序良俗に反する暴利行為であり無効という判断が下されたものです。
さらに、次に参りまして、事例3をご紹介したいと思います。認知症高齢者に対して、服・バッグ・ネックレス等を大量に次々と販売したという事案でして、いわゆる次々販売の事案です。ここも事案の概要を若干かいつまんでご紹介しますと、実家で一人暮らしの母、この方が認知症の高齢者にあたるわけですが、高額の買い物を繰り返していた。具体的には、馴染みの呉服店から和・洋服、その他和装小物やバッグ、真珠のネックレスなど、高価なものから 1,000 円くらいのものまで総額 999 万円も購入していて、定期預金の残高は、すっかりなくなっていた、そして認知症の診断がされている、という事案で す。以上、代表的なものとして3つご紹介させていただきました。
それで、次のページに行っていただきまして、考えられる規律について、まず、表では、冒頭の検討課題というところでご紹介した 2016 年および 2018 年の改正で設けられた認知症高齢者等を念頭に置いた規定をご紹介しています。上の方が、判断力低下の不当利用によって消費者が困惑した場合の取消権でして、4条3項5号という形で 2018 年の改正で設けられたものになります。まず、消費者の事情というところで、この規定では、加齢または心身の故障により、判断力が著しく低下したことが要件とされています。では、この判断力が著しく低下とは何かというところについては、国会の答弁があるところでし て、※印にあるように、消費者が認知症を発症している場合には、一般的にはこの要件に該当する。では、認知症ではない場合にどうなるのかというところ
が、ⅱのところでして、軽度認知障害の場合あるいはうつ病に罹患している場合については、個別具体的な事情を踏まえて判断されるべきものと解されています。この規定は、このような判断力が著しく低下した消費者について、現在の生活に不安を抱いていて、事業者が不安を知っていた中で、ここからがこの規定の特徴的と申しますか、事業者の行為態様の客観面をかなり特定しているところなのですけれども、客観的な事業者の行為として、不安をあおり、契約しないと生活の維持が困難であると告知した、こういう場合の取消権というものが 2018 年改正で入ったところです。
これに対して、下の過量契約取消権というものは 2016 年の改正で入った規定になります。こちらの方は、2018 年改正の規定とは異なりまして、契約内容として、通常の分量等を著しく超える、すでに同種契約を締結していた場合にはこれらを合算するという形で、契約内容を縛っております。その代わりという形で、事業者の行為態様としては、先ほど申し上げた 2018 年改正の規定のような、事業者の行為を厳しく特定することをせずに、勧誘とした上で、事業者の主観面として、通常の分量等を著しく超えることを知っていたことを要件にしています。
このような規定が 2016 年、2018 年の改正を経て設けられたという状況でして、ではどうするのかというところで、このページの一番上の黒丸のところになりますけれども、事業者が消費者の判断力の著しい低下を知りながら、なおかつ不当な内容の契約を締結した事例。判断力低下を知りながら、しかも、不当な内容の契約を締結させるような場合が、不当勧誘と言えるわけですけれども、その中でも、過量契約取消権では対応できないような、通常の分量等を著しく超えているとは言い難いものが、救済の狭間になっているのではないかと考えているところです。
次のページに行っていただきまして、今しがた、不当な内容の契約を締結したというお話をしたわけですけれども、問題は、この不当の内容の契約をどのように規律するのかというところです。先程ご紹介しました事例1から事例3に照らしますと、特に当該消費者の生活に著しい支障を及ぼすものについて は、契約の取消しを認めることで被害救済を図る必要があるのではないかと考えられます。他方で、というところで、事業者からしますと、当該契約が当該消費者の生活に著しい支障を及ぼすか否かは、必ずしも明らかではないところかと思います。この点について、発想が似ているともいえる制度として、参考として、貸金業法における総量規制をご紹介しています。貸金業法は、年収等を基準にして、3分の1を超える貸付を原則禁止しています。しかし、貸金業法におきましては、その前提として、貸金業者に対して、顧客の資力等に関する調査義務を課しています。これに対して、消費者契約全般について、事業者
に調査義務を課すことは困難ではないかと考えられるところでして、そのことも考えますと、取引の安全を図るという観点から、当該契約が当該消費者の生活に支障を及ぼすことについて、事業者の認識も要件とすべきではないかと考えられるところかと思います。この点については、先ほどご紹介した過量契約取消権におきましても、通常の分量等を著しく超える契約内容について事業者が知っていたことが要件とされているところです。
では、具体的にどういう規定案が考えられるのかというところで、次のページに行っていただきまして、今回具体的に規定案1というものを考えました。まず、客観的な要件としては、(ⅰ)と(ⅱ)の二つに分かれておりまして、まず、消費者の判断力が著しく低下していること。それから、当該契約が当該消費者の生活に著しい支障を及ぼすこと。この二つが客観的な要件としてある中で、事業者がこれらの(ⅰ)及び(ⅱ)の両方について知りながら勧誘し、これによって消費者が契約を締結した時は、契約を取り消すことができるというルールが考えられるのではないかと思っております。この場合、「誤認」とか「困惑」といった消費者の心理状態は要件としないことが考えられるかと思います。
では、この(ⅱ)の、契約が当該消費者の生活に著しい支障を及ぼすというのはどのように判断するのかというところですが、例えばという形で、一つの案をお示ししているところです。例えばとして、①当該消費者が居住している不動産を処分するときや、②消費者が継続的支払義務を負う場合において、毎月の支払額が月収の一定割合を超えるとき、③として、その他消費者の生活を著しく困難にするときについて、通常こういう場合であれば消費者の生活に著しい支障を及ぼすと言えるのではないか。そういう考え方が一つあり得るのではないかということで、今回、問題提起としてお示しさせていただきました。では、これが具体的にどうなるのかということで、若干ですが、先ほどの事 例を用いて検討したいと思います。それが、次のページに参りまして、9ページになります。まず事例1は、保険料支払事案であったわけですけれども、この事案におきまして、消費者は毎月生活に支障が出るほど高額な保険料を払い続けていたという事案ですので、先ほどご説明した、※印のところで申しますと、②の継続的に支払義務を負う場合において、毎月の支払額が月収の一定割
合を超えるときに当たるのではないかと考えております。
それから事例2について、認知症高齢者から、自宅を組む不動産を購入したという事例におきましては、自宅を含む不動産の売却であれば、契約が消費者の生活に著しい支障を及ぼすということで、①に当たると言えるのではないかと考えております。
それから事例3で次々販売の事例をご紹介したわけですけれども、定期預金の残高はすっかりなくなっていたというところからしますと、契約金額は消費者の月収を上回っていると考えられますので、継続的なものであれば②に当たることが考えられますし、継続的な支払い義務を負わない場合、つまり1回の契約であっても、ある程度高額のものであれば③に当たるという形で、消費者の生活に著しい支障を及ぼすという要件の該当性を満たす場合もあるのではないかと考えています。
以上が、消費者の生活に著しい支障を及ぼすというところの一つの考え方として、事案に当てはめてみた次第でして、こういった事情を事業者が知りながら、かつ、消費者の判断力の著しい低下を知っていれば、消費者は契約を取り消すことができるという規律になるのではないかと考えております。
以上が、規定案1のご紹介でして、最後に、次のページにいって頂きまし て、過量契約取消権の「同種」に関する解釈における考え方もご紹介したいと思います。一番上の黒い丸が、現在逐条解説でご紹介しているものでして、消費者契約の目的となるものが同種であるか別の種類であるかは、目的なるものの種類、性質、用途等に照らして、別の種類のものとして並行して給付を受けることが通常行われているかどうかというところを、一般的な解釈としてお示ししています。その際、同種の範囲を過度に細分化して解すべきではなくて、過量性の判断対象となる分量等に合算されるべきかどうかという観点から、最終的には社会通念に照らして判断されるべきであろうというところで、事例の検討としていくつかご紹介しています。
まず、二つあるうちの一つ目ですけれども、これは既に消費者庁の一問一答でご紹介しているものでして、ネックレスとブレスレットというものであれ ば、いずれも身を飾るための装身具ですので、通常は同種と言えるのではないかということをご紹介しています。
それから、事例3ですけれども、和服、洋服、その他和装小物やバッグ、真珠のネックレスなどが契約の目的となっているところでして、このうち、少なくとも和服と洋服は、服という同じ種類のものですし、他の物とかと見比べますと、この事案におきましては、「同種」に該当するものと考えられるのではないかというところで、過量契約取消権の適用があり得ることを一つの考え方としてお示ししています。事務局からは以上です。
〇xxxx
ありがとうございました。それでは、引き続き、参考資料について、xx委員から説明をお願いします。第3回にご説明いただいたものでもありますの で、恐縮ですけども、10 分ぐらいでお願いいたします。
〇xx委員
はい。聞こえますでしょうか。
〇xxxx
はい、聞こえています。
〇xx委員
では、進めさせて頂きます。まず、私が2月 10 日に示した、案のコンセプトから説明させていただきますと、まず確定的な認知症診断には至らない、軽度認知症、MCI というものですけれども、それとかうつ病などで判断力が低下している人に対して、不合理な内容の契約を勧誘する場合を救済対象とすべ き、これがコンセプトになります。平成 30 年の改正の際、附帯決議でも、創設すべき規定としては、知識、経験、判断力の不足など、消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用という事を言っておりまして、認知症の確定診断に限定をしているわけではございません。令和元年の研究会の報告書でも、認知症の症状は段階的に表れるものであって、認知症の診断を受けていなくてもやはり救済すべきではないかということが検討されていたところです。
私が第2回の検討会で、パワーポイントで、示させていただいた被害事例がございます。救済が必要な被害の実例は、第2回検討会資料4-2で挙げた通りでございまして、生命保険の不適切勧誘や意向把握義務違反のような事例、スマートフォン契約のような事例、光回線、あるいは身元保証契約、ライフラインの不利益な内容の変更契約、こういった実例でございます。
こういったものが取消で救済されるということが、まずもって必要だと考えております。その方向性として、2月 10 日の資料で二つのものを挙げさせていただきました。一つ目は契約の目的・動機に合致しない場合を契約の取り消し対象とできないか、という提案でございます。これは、現行の民法 95 条2項、いわゆる動機の錯誤と言われているものと、若干重なるところがあるのかなと思います。民法の規律を柔軟に解釈する、あるいは、要件を緩和する内容になろうかと思います。
改正後の 95 条2項では、いわゆる動機の錯誤については、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたものという、要件が文言化され
ております。ここの解釈については、多種見解があるようでございまして、厳しい見解としては、当事者が合意ないし承認することまでが要求されるんだという見解もあれば、他方では、相手方が当該事情がxxでなかった場合、法律行為による拘束をしないことについての、認識ないし認識可能性で足りるのではないかという見解もあるとのことでございます。
私の一つの方向性としましては、この後者の見解のように、柔軟に解釈をする方法でなんらか要件化ができないかという事を提案しているものでございます。
もう一つは、第3回検討会の資料3の2ページ目の真ん中以降になります が、もう一つの提案というふうに記載しているところでございますが、これ は、過量契約のように客観的に見て、不合理な内容の契約で、すでに合理的な判断ができない場合の一つの徴表があらわれているような場面の取消規定で す。契約内容の不合理性に着目する。そこから始まっていく規定内容でございまして、今回示された消費者庁の事務局提案と、方向性としては似ているのかな、と思っております。
この場合ですけれども、過量契約の規定、先ほどもご紹介がありましたが、判断力不足につけ込んだということが既に推定されている場面でございまし て、このような方向でいく場合は、判断力不足といった要件を別途設けることは本来は不要であるのではないかと考えています。既にそういった徴表があらわれている、契約性の不合理性によってあらわれている、という場面でございます。
この方向を考える場合は、今回事務局提案でもありましたが、現行の過量契約の射程範囲をどのように理解するのかというのが、前提にはなろうかと思います。その上で、現行の過量契約では、捕捉できないものをどう捉えるかという話になってくるかと思います。
そこで、現行法をどう考えるかなんですけれども、2ページ目の一番下に
「なお過量な内容の取消権が既に存在する」という風に書かせていただきまして、現行法の解釈ですけれども日弁連の解釈をご紹介させていただきますと、現行の過量契約取消は、量的な過量だけにとどまらず、質的な過量といった場合にも捕捉されるという風に解釈しております。例えば、当該消費者に不要なほどのハイスペックなコンピューター、あるいは事業用スペックなど、過度に性質が高く高価なもの、そういった場合でも過量という概念に含まれるのではないかと考えております。現行法でも捕捉されるべきと考えております。ま た、今回説明がありました同種の基準ですけれども、既に消費者庁での解説でも示されている通り、ブレスレットやネックレスが同じく装飾品として、同種にあたることは、現行法でも同然だと考えております。それから洋服やバッグ
も同じく服として同種にあたる。現行法の解釈でもやはりそうなると考えております。
こういった、現行法で現行の過量契約を捕捉できるものは、それで考える。しかし、それでも捕捉できないものをどう要件化していくか、ということが重要課題だと考えておりまして、一つの提案としましては、第3回検討会の資料
3の3ページ目に要件を示させております。電気事業通信法 19 条を参考にしたものでございまして、「社会的経済的事情に照らして、著しく不適当であるため、消費者の利益を阻害する」、そういった契約内容を要件化しておりま す。こういった文言化と考えられるのではないかと提案させていただいているところでございます。
繰り返しになりますけれども、こういった契約内容で捕捉していった場合 は、本来は、判断力不足につけ込んで契約しているということが、推定されていると考えております。ですので、本来は、判断力不足といった要件を別途設けることは、不要であるはずと考えております。ただし、そうとはいえ、付加的な要件を加えるという考えもあるとは思っております。そこで付加的に判断力不足や事業者の認識を加えるとしても留意すべき点を若干述べさせていただきます。
まず、判断力不足の要件化をするにしても、最初に述べさせていただいた通り、軽度認知症の人もそれで判断力が低下している人も、救済の対象とすべきです。そういった意味では、果たして著しい不足といった文言を加えることが妥当なのか、それによって救済に漏れが生じないかということを慎重に検討することが必要だと考えております。
それからもう一点、事業者の認識について。これは、契約の認識なのか、判断力不足の認識なのか、それによってまた議論が分かれるところではございますけれども、仮に判断力不足についての認識を要件とするのはいかがなものかな、という考えを持っております。特に、認識、知っていたということを要件としてしまえば、悪質な事業者であればあるほど、いやいや知りませんでし た、と言ってかわせば済む話になってきます。
この辺の実情は、消費生活センターの相談員さんの具体的事例をもっと聞いて、その上で議論したほうがいいかとは思います。消費者契約法の、相談の現場で使える紛争解決規範という点も重視するというのであれば、やはりこういった観点は、きちんと検討して、その上で、認識という要件をどこまで要求するのかしないのかを慎重に検討すべきと考えております。
最後にもう一点ですけれども、取引安全のために、認識を要件とするというのは、事業者の主観面を考慮するということは、裁判規範的にはありですが、
元々取引安全においては、相手方の保護要件は、通常は善意かつ無過失ではないかと思います。
例えば、新しい民法で、第三者詐欺の規定ですね、96 条2項でも、相手方がその事実を知り、または、知る事ができたときには取消が可能とされております。取引安全で考える場合は、善意無過失、認識可能性ということを、要件として付加すべきではないかと考えております。有過失であっても、相手方を保護するのは民法 94 条の通謀虚偽表示のような場面です。これは通謀して、しかも表意者が嘘を言っているといった、極めて帰責性が高いような場面を念頭に置いて、その場合は、相手方が有過失であっても、善意であれば保護を考えるわけですが、これに対して、今回つけ込み型の被害において想定されている場面は、表意者にそれほど帰責性があるのかなという疑問があります。表意者に帰責性があるので、相手方に過失があっても保護するという方向は、ちょっと私はそうではない、そうではなくて、通常の取引安全と同じように、仮に主観面を考慮するとしても、善意無過失といった内容で検討すべきだと考えております。以上が前回の資料の説明でございます。以上です。
〇xxxx
ありがとうございました。それでは、意見交換に入りたいと思います。
差し当たり、議題を大きく二つに分けて、まず、事務局から提出された資料について、それから、xx委員から提出された資料について意見交換を行いたいと思います。
そこでまず、事務局の規定案について、委員の皆様からご意見やご質問をいただきたいと思います。前回と同様に、私から順番に指名をさせていただい て、5名程度ご意見を伺った後、一度切って、事務局で、お答えすべきものがあれば、ご説明をするということにさせていただきたいと思います。もちろ ん、一通りご発言をいただいた後、他の委員のご発言に対してご意見やご質問があれば、発言をしていただく機会を設けたいと思います。
なお、発言される委員におかれましては、円滑な進行のために、おおよその目安ですけども、3分以内でご説明いただきますようご協力の程宜しくお願いいたします。順序としましては、グループを三つに分けます。xx委員、xx委員、楠委員、xx委員、xx委員が第一グループ。続いて、第二グループ が、髙橋委員、xx委員、xx委員、xx委員、xx委員。第三グループが、
山下委員、山本和彦委員、山本龍彦委員、 そして渡辺委員とさせていただければと思います。
それでは、まず、第一グループから始めたいと思います。最初に、沖野委員からお願いいたします。
〇沖野委員
ありがとうございます。三点を申し上げたいと思います。
事務局のご提案は、色々工夫をされていて、その点有難いことだと思っております。要件化自体はまだ色々考える点はあると思いますけれども、ご提案を踏まえてということなんですが、一つは平尾委員もおっしゃった、主観面についてです。事業者からすると、取引を不安定にするということですが、他方 で、知っていたということをすべてにおいて要求するということでよろしいのか、という点は、尚、気になります。6ページに整理していただいた、これまでの内容でも主観面を要求しているということではあるのですけれども、判断力低下の方ですと、不安を知っていたという消費者の状態ではありますが、しかし同時に不安を煽るという行為をやっていますので、普通は知っていたと考えやすいところでしょうし、過量の方は、当該消費者にとってという面はありますけれども、通常の分量を著しく超えるだろうという場合ですので、そういう点では、態様からも基礎づけられるような面があったと思います。他方で、今回のご提案の方ですと、判断能力の低下について知っていたということになりますと、容易にわかったはずじゃないかという場合も、それに対し知らなかった、という話が出てきそうですので、そこの主観というのは、重過失なり過失なりということを考えなくていいのだろうかというのが気になっておりま す。
二つ目が行為の類型化ということで、類型化について個別類型二つ、それからいわば、一般的な類型として、③類型を立てるということで。特にこの一般類型的なものというのは、やはり必須ではないかと思われるところです。それでその場合に、生活に著しい支障でいいのかどうかという問題はありますけれども、少なくともこういう類型というものは立てるべきじゃないかと思っております。
三つ目はさらに個別の類型といったことなのですが、気になりますのは、特に不動産の処分についてです。居住不動産の処分というのは、それが本当に客観的にも一般の市場価格であって、リロケーションとかですね、別のところへの住み替えだとか、老人ホームに入るとか、そういったときの処分という場合もありえますので、これだけを類型として立てるときにそういった場合がどうなるのかということが気になります。一つには、③類型がありますので、結局
生活に著しい支障が及ぶような場合であることが想定されているんだということで、そうではないような場合は実は当たらないというような形でかわしていくのか。もう一つはですね、もう居住不動産の処分は一定の判断力に達しないような場合には、単独ではできないという割り切りをしてしまうのか、ということです。そうした場合に、しかし必要な場合はどうするかと言いますと、もちろん本当に必要であれば取消しはしないということにはなると思いますけれども、安定的に相手方も対応してくれるということにするためには、あるいは補助で代理類型を使うとか、そういうようなことを想定するのか。ただ、この類型は一部行為能力の制限を部分的に消費者について、こういう能力の人については、拡張する意味をもつことになるので、それでいいか、という決断をしなければならないのではないかと思っております。以上です。
〇山本座長
ありがとうございました。それでは続いて、河村委員お願いいたします。
〇河村委員
はい。河村でございます。経済学の立場から3点程申し上げさせていただきます。まず一点目。事業者が判断力の著しく低下していること及び消費者の生活に著しい支障を及ぼすことを知りながらということ、まあ知っていると、業者が知らなきゃいけないという点でありますが、前に申し上げたように経済学では、両者が得をしないような契約すべきではない。得をしないようなというのは、事前の意味、契約締結時において、期待値の限りにおいて、得をしないような契約は、事後的にも取り消されるべきだというのに考えるわけですが、その観点からするとですね、そもそも事業者の判断力低下を知ってるかどうかっていうのはその枠組みに入ってこない話でありまして、なかなか経済学的に解釈するのは不可能、つまりこれがあるっていうことの意味が、なかなか経済学の人間としては知ってなきゃいけないっていうのが、そのすごくある意味がその経済学の枠組みからすると、判断できないと。ちょっと入ってこないんじゃないかというところであります。
もう一つはですね、これは平尾委員もおっしゃっていた事なんですが、経済学では、人はですね、嘘をつくことが得をする時は嘘をつく、という風に考えますので、我々が今考えてるようなですね、悪徳業者ないしそれに近いような事業者がですね、知ってましたかと言われて、知ってなかったと言うに決まってるわけですよね。それに対してちゃんとそれを踏まえた上でこういう消費者法の枠組み、というのを考えているのか。とりあえず、少なくともですね、問題になるような業者は否定してくる。それに対して、やっぱりその今の消費者
契約といい、改正していく、消費者保護の観点から解析していくというところで、ちゃんと考えられてるのかなって。そこは法律の先生方のお話になると思うんですが、ちょっと気になるというところであります。
第2点目。判断力が著しく低下、ということですが、これはですね、平尾委員それから沖野委員がおっしゃった事と重なりますが、これが否定してきた場合に、そうすると、既に重い症状があると、医師の診断があるとかですね、それからですね、行政処分に伴って家宅捜索を行われてですね、カモリストであるとか、半ボケであるとか、そういうようなですね、資料が見つかった場合には、例え事業者が否定しても、知っていただろうとできることは容易に想像がつくわけですが、かなり特殊な場合のように思われます。ですので、現行法に照らし合わせて、有効な消費者保護を提供できるのかっていうところが非常に気になります。
第3点。生活に著しい支障を及ぼす場合ということですが、これは、本当に経済学の観点から、余計に理解が難しいところであります。先ほど申し上げたように、経済学では双方が、事前の意味で少なくとも得をしないような、契約締結において得をしないような契約はすべきでない、取り消されるべきだ、このようなことは可能であるべきだという風に考えます。そこにですね、その消費者に対する損害のサイズというのは入ってきません。これは、生活に著しい支障が生じるということは、消費者の損害のサイズが大きい場合、レベルが大きい場合、ということにその、取り消し可能であるということが出てくるということだと思うんですが、そういう風に考えるとですね、これがこの生活に著しい支障を及ぼす場合と規定することは、小さい損害は我慢しろと、消費者に対して、我慢してくれ、という風に言う以上、その事業者にとって若干有利になる、大きく有利になるっていう以上のですね、意味が、経済学の観点から見出せないというところであります。以上です。
〇山本座長
ありがとうございました。それでは、楠委員、お願いいたします。
〇楠委員
つけ込み型勧誘の点で色々事務局でおまとめいただいた中で、ご苦労の跡を見られるんですけれども、一つはやっぱり、契約の不当性というものを、どうやって主観ではなくて、外形的にいって、これを立証できるようにしていくかというのは、非常に、そもそも難しいことのように思われるんですね。その中で、実際にはなかなかやっぱり裁判まで至る例というのは、非常に限られているという風に思いますので、そうすると、裁判まで至らない中で、どのように
調停なり和解なり仲介なりをして解決していくかというところにおいては、ある程度、基準というものが当事者双方にとって、特に悪徳業者側から見て、これは仕方ないなっていうのに納得できるところが、必要であるように思われますし、その点で言うと、事務局で出して頂いている内容というのは、一定の合理性があると。例えば、生活に著しい支障を及ぼすような契約というのは、合理的であればやらないだろう、ということであったりとか、またその一方で、そういう風に制限することによって、本来であれば不当な契約であったとしても救われない部分っていうのも出てきてしまう。ここのその線というものを、どういう風に引いていくかというのは、難しさがあるのかなという風には思います。
もう一点、最後のページで同種の解釈についての議論がありましたけれど も、ここは一方で、何でもかんでも服は服だろうみたいな整理をしてしまう と、本来正当な商行為であったとしても、不当な取引として扱われてしまう例も出てくるんじゃないかという風に懸念をしています。例えばこれ、和服か洋服かという例で言えば、どっちも服じゃないか、という議論って成り立つのかもしれないですけど、例えばこれが寝る時に着る寝巻と、葬式に着ていく喪服であればこれ全く違うものなので、洋服であったとしても、財としての代替性というのは非常に無いと思うんですね。
良く経済学で代替財という考え方がありますけれども、実際製品のカテゴリーによってそれを同じと見るかどうかよりも、その時に消費者の置かれた状況において、その財が代替性を持っているかどうか、例えば、車を3台持ってる人がよくいらっしゃって、一つは例えば生活の足として使う車も、スポーツカーみたいな娯楽として使う車も持っていて、これは必ずしも両方持ってることというのは、合理的な契約である場合も十分にあるので、定義のカテゴリーで見ることよりは、消費者の立場に立ってその財が代替性を持っているかといってみていく必要があるのかなという風に思います。以上です。
〇山本座長
ありがとうございました。では、小浦委員、お願いいたします。
〇小浦委員
小浦でございます。私もですね、これまでの方もおっしゃいましたけれど も、規定案のところで、まず第一に判断力が著しく低下というところがやはり気になりました。平尾委員もおっしゃってましたけれども、そうすると軽症の認知症の人達の被害はどうなるのか、という風に思いますと、やはりここはもっと広く対象を広げるような書きぶりにできないかなって思っております。
第2点目はですね、やはり生活に著しい支障、ここでも著しいが出てくるんですけれども、生活が成り立たなくなるほどではないけどやはり客観的に見てその契約が不当なものであれば、取り消しができる対象としていくべきではないかなという風に思っております。
最後ですけれども、この知りながらは私も気になりました。どうしてもこういう要件が入りましたら、取り消しを求めた場合には、知らなかったというのは当然想定できることでありますので、ここのところは慎重に検討していただきたい。消費者からははっきりこれは入れないで欲しいなという意見にはなるんですけれども、どうしても事業者から逆に安全を求めるためにこれは入れて欲しいという意見もあるかと思いますけれども、これは消費者にとって、それから相談現場でお仕事されている相談員の方たちにも使い勝手の悪いものになると思います。2月 10 日の国民生活センターの方からも資料を提供していただきまして、ご発言の中にもありましたけれども、あまりにも細かい要件を規定しようとすると、非常に限定的になり、そういう場面でしか活用できなくなる。またそれを逆手に取った脱法的な勧誘等も起こる恐れがあるという風に、資料の中では書かれてありました。今回のこの規定案はあまりにも限定的になっているのではないかなという事が今思っているところでございます。以上です。
〇山本座長
ありがとうございました。それでは、後藤委員、お願いいたします。
〇後藤委員
今回の事務局案についてはですね、私は概ね賛成でございます。事例とし て、3事例ほど挙げておられますけれども、議論の主旨とは必ずしも合致していない事例ではないかと思います。今回の問題というのは、生活に支障がどういうことかはあまり関係がないと思います。特に第2の事例はですね、社会通念に照らして著しく不当な価格で購入したというのが問題だと思います。これはですね、我々は従来から主張してきておりましたように、いわゆる犯罪に近いような行為を行う人と、真っ当な事業をやっている人たちとはまるで別ものの世界だと。それを一律にして、同じ規制をかけてしまうというのは、経済活動の観点からも、大分大きな社会的な問題になりかねないということです。ですから、この事例では著しく不当と言われる事業者の行為をどのように防止するのかということを中心に考えていくこととなると思っております。
次の事例というのは、保険の場合ですけれども、保険商品そのものはです ね、規制に則っているものですから、社会通念に照らしてもその値段とその価
値というものは大体見合っている、イコールだろうと思います。ただ、それを沢山買わせるというようなことに問題があったということですので、それはまさしく判断能力が著しく低下している人に不必要な額の保険商品を販売する行為が問題だったと、これは理解できます。では、どういう場合が不当にあたるのかというところで考えるなら、それは判断能力の著しい低下を知っていた、ということの他に、社会通念に照らして、著しく不当だということが商品によっても違うんだのだと思います。ですから、色々な商品によって基準を設けていくということにしてはどうかという風に思っております。以上です。
〇山本座長
ありがとうございました。それでは、ここまでのところで事務局からコメント等はありますでしょうか。
〇加納消費者制度課長
特にございません。
〇山本座長
ありがとうございました。それでは続きまして、第2グループに移りたいと思います。髙橋委員、坪田委員、遠山委員、西田委員、平尾委員です。まず、髙橋委員からお願いいたします。
〇髙橋委員
はい、髙橋です。よろしくお願いします。
私からは2点なんですけれども、一つは皆様からもご指摘のあった、事業者の主観面の話ですね。不安を知っていたという話なんですけれども、事業者が知っているという立証を消費者側が負うということになれば、なかなか確定的に知っていたと言えるかは難しいというご指摘は本当にその通りかと思いま す。ただ、商行為法の判例などではですね、悪意プラス重過失という基準を取っていることが多くて、しかも重過失を知り得るべしという、調査義務を前提としたような話を考えているというよりかはですね、状況を総合的に判断し て、これであったら知っていてもおかしくはないのではないかというようなケースについて責任を認めるという方針で、重過失という要件を入れているというケースが時々見られます。もちろん消費者ですとか、売買の場面ではなく て、今まででしたら運送関係の法律問題でよく話題になっていた事かと思います。ここでも、そのような少し柔軟な、知ってるか、過失があるか、知らない
か、というような切り分けじゃなくて、もう少し柔軟な、切り分け方ができればいいかなという風に思っております。それが一点目です。
続きまして、これも先ほどからのご指摘になっている、消費者の生活に著しい支障を及ぼすことを知りながら勧誘し、というところです。確かにその判断力が低下しているという方がいらして、そして何かこう、必要でないものを買ってしまうということがあり得るかと思いますが、すべての売買に限らず、すべての取引に関して、何らかの注意を事業者の方もしなければならない、あるいは、一人では買えない人なのではないかと思わなければならないということになると、それはやはり消費者の方にとっても、あまり良いことではないの で、何かこう、契約類型的に、気をつけるべき契約がわかればいいんです。けれども契約類型を絞るというのは、金融商品とかある程度危険性が高いと類型的に分かるものであれば、そういうことできると思うんですけれども、日用品のレベルからということになってくると、大変なので、ある程度の縛りということで、生活に著しい支障という事を考えているのかな、という風に思っています。ですので、これにこだわるつもりはないのですけれども、契約の類型として、ここの契約は注意すべきだ、たとえば不動産の話に挙がっておりましたけれども、不動産だったら一律にというのはなかなか難しいところもあるかと思いますので、何かいい基準があろうかな、というので、かなり迷っているところでございます。私からは以上です。よろしくお願いします。
〇山本座長
どうもありがとうございました。それでは続いて、坪田委員、お願いいたします。
〇坪田委員
はい。坪田です。よろしくお願いいたします。
消費者の判断力が著しく低下していることを知りながらという要件は、要件の範囲が狭すぎて相談現場では救済されない相談者が多いと考えております。と言いますのは、高齢者からの相談で、既に認知症の診断書がある方はほとんどいないと言ってもいいくらいです。さすがに診断書がありますと解決には結びつきやすくなります。一方で、家族や周囲が少し、年を取ったかな、心配だなと思っていても、特に診断書もなく、自分の身の回りのことも取りあえず行っている、こういう相談者がほとんどでございます。ちょっと話しただけで は、加齢による物忘れかと思われる程度です。中高年で身近に高齢者と接している世代でありますと、受け答えの中で、小さな違和感に気がつくこともありがちですが、高齢者自体とあまり接触がない方、こういった世代にとっては、
認知症によるものかどうか、特に判断がつきにくい状況があると思います。販売員の前で、高齢者の方もしっかりした、元気な姿を見せたいという思いが働くこともあります。例えば着物を着て、お出かけに行く話をされますと、つい自分が足が悪くて出かける先もあまりなかったりとか、また、着物を着るというのはかなり体力がいります。洋服のような簡易な服装ではございません。しかし、そういう話を聞くと、そのつもりになってしまって、 理解をしたような話になってしまうこともありがちです。販売の担当者からは、しっかりした元気な様子を見せていたという様な思いが働くことがあります。お年の割にはとても元気で、お話もちゃんとできてご理解いただいて、契約しています。無理には決してしていません。という返答を貰うことが多々あります。このように、ここでいう、「著しく低下」が分かりにくいと考えております。この場合ですと、医療機関に行くことをためらったり、その機会がなくて認知症の診断書をまだ取っていないが、既に明らかに認知症である方々というような、ごく限られた方しか対象にはならないのではないかと感じております。
それから消費者の生活に著しい支障を及ぼすことを知りながら、についてですが、著しい支障という条件も分かりにくく、※印に、居住している不動産を処分するとき、などとありますけれども、これは生活である住居を手放すわけですから、むしろ公序良俗違反とも考えられる状況だと思います。
月収を超える、本来生活にそぐわない金額であるわけで、これにつきましても、消費者契約法によって救済するというよりは、むしろ、公序良俗違反の規定を消費者契約法に取り入れるに近いレベルだと思います。また、通信関係の契約など、一件あたりの契約金額はそれほど大きくない場合は救済されず、少額なら我慢をしなさい、家がなくなったり、日常生活に困る事がおきる理由なら取消しできますよ、ということになってしまうと思います。ここでも知りながら、という認識ですが、著しい支障とまでとはなっていないという認識で す、という一言で終わってしまいます。深刻な被害に陥っているケースというのは、いわゆる問題事業者でありまして、著しい支障ではないと思った、判断力が著しく低下しているとは思わなかったと主張される場合です。特に高齢者の場合、裁判で争って解決する時間的な余裕、さらにはそのエネルギーがありません。消費者契約法のいう、消費者と事業者との格差が大変大きい典型で す。こういった消費者の被害救済に役立つ規定にしていかないと、高齢者の救済は進まないと思っております。
また、着物等の販売ですけれども、例えば洋服と着物を、着るものとして考えるというのは、やはり現状にはそぐわず、例えば和服の場合ですと、洋服のようなデザイン性があまりありませんので、帯ですとか、帯留めですとか、 様々な小物を一緒にすることによって、トータルの衣装ということで、また普
段着るものではございませんので、単に身に着ける衣服ということで一緒には考えられないと思います。こういったところを一つ一つ考えていかないと、やはり事業者の抜け道を作ってしまうことになるのではないかと心配していま す。以上です。
〇山本座長
どうもありがとうございました。それでは続きまして、遠山委員からお願いいたします。
〇遠山委員
はい。よろしくお願い致します。
判断力が低下した方への対応については、この場もそうですが、他にも様々な場で議論されています。例えば、昨年4月に日本認知症官民協議会が立ち上げられ、今年3月に傘下の認知症バリアフリーワーキング・グループで報告書が取りまとめられています。そこでは、「接遇」と「契約」について、認知症バリアフリー社会の実現に向けて何がバリアになっているのかという課題を抽出し、来年度に向けて認知症バリアフリー社会の実現に関するガイドラインを作成するとされています。また、 昨年 10 月に金融審議会の市場ワーキング・グループが再開され、再開後の第3回会合から、高齢者など認知・判断能力の低下した顧客への対応について、「顧客対応の観点やビジネスニーズの取り込みといった観点から、金融機関にはどのような対応が考えられるか」について議論されています。
このように、近年、事業者に対しては、お客様の判断能力を測りましょう、お客様の状況を確認しましょう、ということも含めて、認知症など判断力の低下した方々に寄り添った対応が求められています。そうした観点からは、消費者契約法の中でつけこみ型勧誘として規制するにあたって、「消費者の判断力が著しく低下していることを知っている」だけで不当勧誘とするのではなく、
「消費者の生活に著しい支障を及ぼすことも知って」勧誘した場合は取り消しの対象とするという、消費者庁のご提案の方向性は理解できます。
ただ、「老後 2,000 万問題」と言われたように、多くの高齢者がリタイア後は預貯金など金融資産を取り崩して生活しておられるという実態があるため、
「生活に著しい支障を及ぼす」か否かについては、収入との関係だけでなく、資産状況や生活様式なども含めて総合的に判断する必要がありますし、また、不動産の処分についても、他の委員のお話にもありましたが、資産が持ち家しかない場合は、リバースモーゲージや住み替えの為の持ち家の売却などは、適正な価格や担保評価などであれば問題なく行われているものもあるので、例え
ば、「相場に比べて著しく乖離して、消費者に不利益な場合」とするなど、限定する必要があると考えています。
8ページの※印に記載のとおりの判断基準となると、通常の取引を行いたい事業者は、自宅の処分や月収の一定割合を超えるような取引では、成年後見制度等の利用を待って取引を見合わせるといったケースが生じると懸念しています。
なお、最終ページの過量販売取消権の「同種」の解釈については、枠内に書かれていることについては、特段の異論はありません。ただ、<事例の検討>のところで、和服と洋服は「同種」に該当するとされていますが、普段着と喪服では用途が異なるとも考えられるので、事案に応じて、購入の経緯なども踏まえるなど、「同種」の範囲が、逆に、過度に広範にならないことが必要と考えます。以上です。
〇山本座長
ありがとうございました。それでは、西田委員、お願いいたします。
〇西田委員
はい、います。よろしくお願い致します。30 分も遅れてすいません。
それで途中からなので、皆さんが既に言ってしまっている可能性が高いのですけれども。やはり著しく低下という表現とか、知りながらっていうところがやっぱり気になりました。そもそも私からすると「著しく」というのはいるのだろうか、とか、こういう法律的な文言は専門ではないのですけれども、判断力が低下してっていう事を、程度の問題なく、知っていながら勧誘するということ自体、問題じゃないかと思うんですね。ですから、著しくなくても低下を知っていたら、もうそれは違法とみなすっていう事の方が明瞭な気がいたしまして。私はその「著しい」という言葉がどうも主観的な判断になっていくので、なくてはいいんじゃないか。
もう一つそれに対して言えることは、かなりその消費の場において、たまたまその低下していたり、あるいはしっかりしていたりということが起こる問題だろうと、場の影響力によって、そういう判断が変わるので、今の場合を含めて、「著しい」という言葉を入れると、どうも救済に繋がりにくいという現場の声はわかるような気が致します。つまり、私としては、「著しく」は取る。もう一つは、「知りながら」の方なんですけども、もう少し積極的に、業者 の責任を重くできないかな、という思いがありまして。例えば、知ろうと思えば知れたのに、というところですかね。知りながらって言うのは、きっと知らなかったって業者側は言うに決まっていますので、あなたは知り得ることがで
きたはずだ、というような、そういうニュアンスを盛らせることができないだろうかという意見です。以上です。
〇山本座長
どうもありがとうございました。それでは、平尾委員、お願いいたします。
〇平尾委員
それでは、まず事務局提案に関してに、限定しますけれども、やはり繰り返しは避けますけれども、やはり事例の出し方が、あまりにも限定過ぎるのではないかという気はしております。事例1は生命保険契約の事例ですが、その人に合わない契約、意向に即してない契約が多数あって、それが不適切勧誘事案として、問題になっていると私は理解しております。ここで挙げられている例は、高額な保険料とか生活に著しい支障とか、そういったちょっとまだその中のごく一部だけを捉えた事例になっていると思われます。それを分析して、要件化だけをした結果が、生活に著しい支障ということになってしまうのでしょうけれども、やはりこれは、狭すぎるという印象を持っております。他の不適切事案が一切救済対象とならないかのような、状況になってしまうというの は、極めて不適切だと考えております。
同じような話は自宅の不動産ですとか。これは、廉価販売、本来の価値よりも安く売らされてしまったところが問題の本質で、どちらかというと対価的な不均衡の話だとは思っております。それにさらに、生活に著しい支障ということを要件として加えてしまうと、他に余剰資産があればどうなのか、他に不動産を持っていたら救済の対象にならないのではないか。そういった懸念が考えられます。例えば、自宅を売却、廉価販売させられて、高齢者施設に入所しました。結果的に施設には入所できました、というような事案は、生活できているからいいでしょう、というような結論に仮になってしまうのであれば、それは問題の本質の捉え方が違うのではないかという気がしております。そういった意味で、生活に著しい支障という契約内容での不合理性の縛り方というの は、かなり限定的に過ぎると考えております。
それから、今回の消費者契約法の改正でやってほしいと言われている、国会からのタスクをもう一度我々は理解すべきだと考えております。これまで作った改正法あるいは現行法でできているものでは足りないから、新たな制度を創設してくださいというのが、附帯決議の内容と私は理解しております。それに対するアンサーが、現行法でできますよ、あるいは、今回の規定案のように、これはもう、完全な公序良俗違反だと思いますが、公序良俗違反でできるもの
を条文化しました、これで制度を創設しましたというのは、私は、これでは答えになっていないと思います。
他の法制度で手当をしますよとか、あるいは事業者側の自主的な規制でなんとかしますというのも同じで、これでは、国会からのタスクに対する答えにはなっていない。国会に対して今回附帯決議を挙げられたことに対して、それでは答えませんという結論をここで出すことは、私は、それはやるべきではないと考えています。あるいは、現行法公序良俗違反で手当できるようなものを立法化して、これで条文案としてどうですか、というのもこれは答えになっていないと思います。
最後に今回色々考えていただいたところは、非常にありがたい提案だと思っているんですけれども、契約内容をこれだけ絞り、さらに判断力の著しい低下というさらなる要件を絞り、さらに知りながら、というような要件を加えるというのは、完全にこれは犯罪に近い、公序良俗違反の類型になると思います。これが違反取り消しというのはむしろ当たり前の話だと思います。もう一つ言わせていただければ、これを作りました、だけで終わろうとしたら、じゃあこれに外れるものはやってもいい んですよね、という誤ったメッセ―ジを発信することにならないかという懸念を感じております。軽度認知症の方への勧誘は、生活に著しい支障があるものであっても、別に大丈夫でしょうとか、あるいは、認知症に入っているような、判断力不足の方への勧誘でも、生活に著しい支障があるものではないからオーケーですね、といった誤ったメッセージを出すことはいかがなものかな、と思います。以上が私の意見です。
〇山本座長
ありがとうございました。それでは、ここまでのところで事務局からお答えいただくことはありますでしょうか。
〇加納消費者制度課長
特にございません。色々とご指摘いただいたところもありますので、まとめて折り返しをさせていただければ、という風に思います。
〇山本座長
分かりました。それでは続きまして、第3グループに移りたいと思います。山下委員、山本和彦委員、山本龍彦委員、渡辺委員です。まず、山下委員からお願いいたします。
〇山下委員
それでは私からはですね。今の平尾委員のご発言とも関連するお話なんですが、事例の1~3というのはおそらく他の制度でも常に救済がある程度与えられているという認識は平尾委員とわたくしは同じ認識をもっております。ただですね、やはりその公序良俗違反、あるいはその過量販売の過量の解釈など を、同種という文言の解釈などをどのように、どこまで広げるかというのは、必ずしも明確でない点が問題でして、これは救済にとってはやはり裁判までいかないと結論が分からないという可能性というものがあります。そういう意味では今回、既に救済がある程度はある、という事例を挙げていただいたとしても、これを別の切り口から救済するという別の要件を立てることには一定の意味があると私自身は考えています。生活に著しい支障を生じるということの認識という、明確な要件を立てたうえで別の救済手段として設けておくということ自体は私はそれはそれで意味があると考えているところです。ただ生活の支障という要件がこれでよいのか、というのはまだこれから議論する必要があるかと思うのと、既に多くの委員からお話があったわけですが、判断力の低下と生活の著しい支障の認識、両方の認識として要件とすると、少し救済の幅が狭すぎるのではないかという点が私の認識です。生活の著しい支障の認識がおそらくあるような、つまりこの契約をしたらこの消費者は生活に支障をきたすことは明らかだというような状況では、その消費者の判断力の低下というものについては認識していることが推定されるなど、そういった形で要件を工夫する必要性はあるのではないかと感じております。以上です。
〇山本座長
ありがとうございました。それでは、山本和彦委員、お願いいたします。
〇山本和彦委員
はい。私は、この資料8ページにある規定案1の内容、それ自体については特段異論はありません。その下の※に書かれている所なんですけれども、この趣旨ですけれども、多分③の最初のところが「その他」になっている。「その他の」ではなく「その他」になっているということは①②は単独の要件で、当該消費者の生活に著しい支障を及ぼすということになる。というご趣旨だとおもわれますが、それについては若干本当かという感想をもっています。基本的には先ほど遠山委員が言われたことと同じようなことになるのかもしれませ ん。
①の居住不動産の処分ですけれども、もちろん居住している不動産を処分するについては、様々な理由というか動機があって、そのなかには非常に合理的な、つまり判断能力は低下したので、これからは子供の近くに住みたい、ある
いは介護サービス付きの住宅に転居したいということで居住不動産を処分したいというふうに思うのは、世の中に良くあるのではないかと思うのですが、そういう事情を相手方が知っていればいつ取り消されるか分からないという状況になるということで本当に大丈夫なのかという感じはします。もし、そういう切り口にするとすればおそらく沖野委員が言われたように、こういう取引については保佐とか補助を事実上強制するという事になるのではないかと思うんですけれども、それだけの基盤、そのこと自体は政策判断としてあり得るとおもうのですが、そういう基盤が日本社会にありうるのかということはやはり慎重に考えないといけないのではないかと考えます。
それと②の月収の一定割合ということですが、これも判断力が著しく低下した方については収入額がかなり低い方が当然おられる、年金だけで生活しているとかそういう方はおられるのではないかと思うのですが、それと比較して取引の価格を計ることがはたして適正なのかということもやや疑問に思うところもあります。貸金業法の場合はどちらかといえば資産がほとんどない人が自分の将来の収入を引き当てとしてお金を借りるというのが基本的なビジネスモデルの業界ですので、これを収入の一定割合を超えた金額を貸すというのが過剰な貸付になるというのは合理的な規制だろうと思うのですが、様々な取引が考えられるような場合に月収だけで計ると、特に判断力の低下している高齢者のような場合には資産は非常に多くあるのだけども、収入は非常に少ないという方は、定形的に存在するような気がするので、それを収入だけを基準として、生活に著しい支障を及ぼすということを計ることに合理性があるのだろうかという感想をもっている。以上です。
〇山本座長
ありがとうございました。それでは、山本龍彦委員、お願いいたします。
〇山本龍彦委員
はい。山本龍彦です。私の方から大きく2点お話させていただきたいと思います。1点は、消費者法の専門外の観点からの感想と申しますか、質問ということになるかもしれないのですが、認知症の方の保護というのが一つ今回の目的なのかなと思いましたが、この認知症の方の保護ということと、知りながら要件との相性がどうなんだろう。要するに認知症の方は、私は認知症ですという診断書を示すということはあまり考えられない。客観的に自分の状況を伝えるということを普通の人よりも期待できないわけで、知りながらということが現実に期待できないようにも思えます。
もう一つ仮に認知症の方が、外見的に認知症らしく行動するので知ることができるだろうと考えると、これは差別的な側面もでてくるのかなと。そうすると、やはり両者の相性があまり良くないように感じます。外見的に分かるだろうということになると若干差別的な感じもするのですが、もしこのアプローチをとる場合でも、その外見というのは何かというのは明確に記さないと、やはり事業者からするとそれは知らなったという話になってしまいます。いずれにせよちょっと相性がどうなのかなというふうに感じたという所がございます。
2点目ですけれども、生活に著しい支障を及ぼすものという概念と、4条4項の過量契約における通常の分量を著しく超えるものという概念の関係がどうなっているのかがよく分かりませんでした。両者の違いは、消費者に与える損害のサイズなのかどうかということなんです。損害のサイズだというふうに考えると、どちらの方がそのサイズが大きいと考えられているのか。資料の6ページをみると、「通常の分量を著しく超えるものとは言い難いもの」と記述されているので、この記述からみると、サイズ感としては今回の生活に著しい支障を及ぼすものというのが、小さいように読めるんですけれども、実際に挙げられている例からすると逆に過量契約の場合よりも大きいとなってしまっているようにも思います。両者の関係がなにかねじれている感じがする。簡単にいうと牛乳パック 500 本という過量契約よりも不動産の方がサイズ感は大きいというか重いわけですので、そこで何を保護したいのかが分かりにくくなっているかなと印象を持ちました。
以上です。ありがとうございました。
〇山本座長
ありがとうございました。それでは最後に、渡辺委員からお願いいたします。
〇渡辺委員
はい。アジアインターネット日本連盟の渡辺です。今回の事務局のご提案ですけれども、1と2、つまり消費者の判断力は著しく低下していること、それから2として消費者の生活に著しい支障を及ぼすことをこの二つを知りながらということをご提案いただいているわけなんですけれども、非常に良くこれまでの議論を整理されて練られた案だと思っておりますので、このご提案に関しては異論がございません。
むしろ大事なのはこの1と2のことについて、どのように運用されるのかということが重要なのかなという風に思っております。1の消費者の判断力が著しく低下していることに関しましては、スライド6の下の方にちょっと紹介が
ありますけれども、現行法の4条3項5号の判断力低下に係る取消権の解釈として国会答弁がスライド6の下の方に引用されてますけれども、基本的にこの解釈が今回も適用されるのかなと理解をしているんですけれども、実際の実務では、例えば事業者が消費者と話をしてる時にはしっかりしていたんだけれども、後になって実は認知症だったというようなケースもあるという風に伺っておりますので、この認知機能について事業者に対して積極的な調査義務を課すものではないということは確認したいと思っております。
それから2の方の当該消費者の生活に著しい支障を及ぼすこと、に関しましては、遠山委員ですとか、あるいは山本和彦委員がおっしゃったことと同様なんですけれども、やはり消費者の資産とかあるいは個別の抱えておられる事情などで、不動産を処分したりとか、嗜好品を購入するということに関して、何ら問題のないケースもあるかと思いますので、スライド8の下の※で書いてある①、②の具体的な例えばという例に関しましては、あまりこのような形で断定的に記載することはされない方がいいのかなという風に思っております。以上です。
〇山本座長
どうもありがとうございました。少し、整理をさせていただければと思います。
皆様からの御意見をお聞きしていますと、事務局の規定案、つまり客観的な要件として、①判断力が著しく低下していることに加えて、②生活に著しい支障を及ぼすものを加える。さらに、それらについて事業者側の主観的要件を課すという方向性について、主観的要件については留保される方もおられましたけれども、全体としていますと、方向性としては支持されているのではないかと受け止めました。
その上で、まず、消費者の判断力が著しく低下していることについては、それをどのように判断するか。例えば認知症という診断書があるという場合だけだとすると、限定されすぎる。外見から判断するほかないわけですけども、その場合の外見とは一体どのようなものか。こうした点を詰めていく必要があ る。おそらく、判断力が著しく低下していなければ、取らないはずの行動をとっていることや、判断力が著しく低下していなければ、するはずのないことをしていること等、そうした外形を特定していく必要があるのではないかと思います。ただ、「著しく」という点に関しては、軽症の場合も保護を要するのであって、「著しく」が入るとその点が落ちてしまうのではないかというご指摘もあったところです。
次に、二つ目の生活に著しい支障を及ぼすという点については、何人もの方から8ページの※の部分、特に、③はともかくとして、①②だけで当然に生活に著しい支障を及ぼすことにはならないのではないか。資産あるいは個別的な事情、目的等から、そうでない場合もありうるのではないか。要するに、生活に著しい支障を及ぼす場合という要件は、評価を要する事実であって、①②がその評価を基礎付ける方向に働く事実であることは、確かかもしれないけれども、その評価を退ける事情も考慮して判断しないとおかしいのではないか。そういったご指摘があったところではないかと思います。
さらに、①②の両方について「知りながら」という要件については、何人もの方から懸念が示されていたところです。事業者は知らなかったと否定するはずであって、事業者の主観の証明も難しい、というようなご指摘がたくさんあったように思います。したがって、少なくとも重過失という要件を課していくことが考慮に値するのではないか、というご指摘もされていたと思います。おそらく、先ほどの判断力は著しく低下というのも、そしてまた、生活に著しい支障を及ぼすということも、どちらも評価にかかる要件ですので、外形を含めて、それらを基礎づける事実があり、その事実を知っていれば、それで基本的にはこの「知りながら」という要件を満たす、と考える余地があるわけですけれども、そしてまた、生活に著しい支障をきたすことを知っていれば、通常、消費者の判断力が低下してなければ、そのようなことをするはずがないので、消費者の判断力が低下していることも知りうる、というように、両者が連動するかもしれません。このような点について、さらに詰めて検討する必要があると受け止めました。
このほか、最後のページに出ている過量販売の同種性については、経済学でいう代替財の考え方が参考になるのではないかというご指摘があったと思います。一方の価格が下がれば他方の需要が減るという関係にある場合について、同種性が考えられるのではないか。少なくとも、同種性を判断する一つの目安になるのではないか、というご示唆をいただいたと受け止めました。
かなりたくさん漏れているかもしれませんが、以上を受けて、事務局の方からお答えいただくことはありますでしょうか。
〇福島課長補佐
よろしいでしょうか。そうしましたら、私の方から山本龍彦先生のご質問にお答えしたいと思います。今回の我々の提案と、2016 年の改正で設けられました過量契約取消権の関係はどうかというご指摘だったかと思います。
この点につきまして、基本的には別の切り口の規定だと考えているところです。具体的に申しますと、過量契約取消権の方は、契約の目的物、契約の対象
となるもののみに着目して、それが過量である場合には、通常の分量を著しく上回るような場合には取り消すことができるという規定になります。そういう意味で、契約の目的物を念頭に置いた規定であるのに対して、今回の規定案 は、消費者の方に着目しまして、消費者の生活にどの程度契約がダメージ、損害を与えるのか、という観点でみたものです。過量契約取消権が念頭に置いている事案においても、消費者の生活に著しく影響を及ぼすようなものもあるかと思いますけれども、そうではないものもあるわけでして、そこは切り口が変わっているところかと思います。
そういう意味で、今回の規定案は、過量契約取消権のサイズを小さくしたとか、そういう関係にあるものではないのかなと考えているところです。私から以上です。
〇山本座長
そのほか、事務局からよろしいでしょうか。
〇加納消費者制度課長
すみません。先ほど座長からまとめて頂きました、色々と委員からご指摘がありまして、判断力低下のことでありますとか、生活に支障とか、また「知りながら」のところの該当性をどういう風に判断していくのか、ということと思いますので、この規定案1をベースに検討していくということでよろしければですね、さらに事務局においてですね、その「知りながら」っていうのはどういう場合だったら認められるのかとかですね、その辺は解釈の話になるかもしれませんけれども、ちょっと詰めておきたいという風に思います。
他方で、この規定案1の方向性で設けた所であまり意味がないんじゃないかとかですね、そういったご指摘もあったかと思いますが、その点は私どもとしてはこういう規定案のような形で、一定の事案を念頭におきつつ、従前は公序良俗上、無効で処理されていたのかもしれませんが、取消事由として明確化していくということについては、一定の意味があるのではないかというふうに考えていたところでありますけども、その点は方向性としてどうなのかと。あまり意味がないんじゃないかって言うことになりますと、方向性をシフトさせないといけないということになりますので、その辺はもう一度委員などのご意見を伺えればと思います。
〇山本座長
ありがとうございました。この段階でご意見おありの方はお申し出くださいとチャットでとお伝えしたのですが、河村委員の方から手が挙がっています。河村委員、お願いいたします。
〇河村委員
一言だけなんですが、代替財の考え方、経済の考え方ということで、同種というのはどういう風に判断するかということで一言コメントさせていただく と、まず代替財・補完財というのは、個人的な効用関数から導き出されるものでして、一点目はその客観的にどうというものでは基本的にない概念でして、そのなにか代替か、その対になる概念は補完というものなんですが、それがどういう場合にその個人にとってその消費者にとって、同種かどうかという判断は、私のように経済をやっている人間にとっては寧ろちょっとわかりにくいなというのが一点です。もう一点はですね、代替財・補完財って考え方はそもそも、合理的意思決定の中で出てくる話でして、そもそも判断力が低下している個人に対して、その考えを適用するっていうのは、相当経済学的には慎重にならざるを得ないところではないかというふうに考えます。以上です。
〇山本座長
ご指摘どうもありがとうございました。それでは、ほかに、沖野委員と山本龍彦委員から手が挙がっています。まず、沖野委員からお願いいたします。
〇沖野委員
ありがとうございます。2点申し上げたいと思います。一つは先程申し忘れました点で、過量販売の同種性ということについてです。
喪服や寝巻だとか他の洋服等の話は、確かにそうだなと思いました。けれども、ここでのポイントは、最終的には当該消費者にとって通常の分量を著しく超えるかどうかという要件ですので、それからすれば、喪服と寝巻であれば通常の分量は超えないということになるんだと思います。ただ、そこに入る前の入り口のところが、あまりに起草なり立法の意に反してというか、狭く解されているところをそうではないことを明らかにしておくということだと思いますので、そういったご提案だと思います。それはそのようにお願いするのでは良いのではないかなと思っております。
2点目は、提案されたようなこういう規定を設けるのに意味はあるのか、ないのかということなんですけれども、これは山下委員がご指摘になったところですが、確かに出されたような事例を処理する手法が現行でも全くないのかと言われれば、そうではないということになるのかもしれません。しかしながら
例えば平成 30 年の例ですと、自宅の売却だということで、しかもそれが半額以下だということだけではなく、ご説明にもありましたように、競売を迫られていたとか、それから店舗兼住宅を売却していて、それで自分も仕事ができなくなるとか、賃貸目的物も全部渡してしまうということで、およそその生活の収入がなくなってしまうとか、いろいろなことが総合判断されて、公序良俗とされているようですので、総合判断に委ねるばかりでなく、そういう判断につながる、問題となる行動を浮き彫りにするとか、類型を明確にして、それらの該当性だけで取り消しなどを導くことができるようにすることには意味があるのではないかと思っております。ただ繰り返しですが、要件化がこういう形がいいのかどうかという話は今後詰めていくことだと思いますけれども、方向としては、こういうものを一つ設けるということには意味があると思っております。
なお、このことはこれですべてをカバーするということではなくて、この 後、例えば困惑類型の拡大の話ですとか浅慮類型ですとか、そういうものも併せて検討する中で最終的にどういうルール化が望ましいかという、それぞれの規律内容を相互に見ながら検討していくことになるかと思っておりまして、今回の規律のみではないと理解しております。以上です。
〇山本座長
ありがとうございました。山本龍彦委員、お願いします。
〇山本龍彦委員
すみません。一言だけ。先ほど福島さんのほうから、ご丁寧に質問いただきましたところですけれども、わたしもそのように理解しておりました。ただ6ページの上の方の記述なんですけれども、「通常の分量等を著しく超えるものと言い難いものが救済の狭間になっている」と。これを見ると、過量契約との比較の問題として読めてしまいます。本来は、分量に関わらず、消費者の生活に支障を与えるものということなのかな、と思います。今後、どういうふうにこの資料が出るかわからないんですけれども、ちょっとそういう量の問題に読めてしまうように思えたので、一言申し上げたかったということでございま す。ありがとうございました。
〇山本座長
ありがとうございました。では、坪田委員、お願いいたします。
〇坪田委員
はい、ありがとうございます。まず、公序良俗にも関することで、これまでの法律でも手当ができるのではないか。ということもあるわけですけれども、やはりこの消費者契約法の中に盛り込まれることは非常に意義があると感じております。と、申しますのは一般的な方は、民法についてはとりあえずご存知であって、その厳格な解釈に基づいて、これは問題がないというふうなお話をされます。
最近は事業者の方でも顧問弁護士が出て来まして、弁護士さんとお話しする場面も結構ございます。その時に消費者契約法というものがあります、ここではこういうことが書かれています。ということをお話して交渉する場面があります。そうしますと、やはりこの消費者契約法の中に盛り込んでいただきまして、逐条解説の中にこの立法趣旨を盛り込んでいただきますと、こういうふうにこの条文は解釈し、また、趣旨からできているんですよということをお話できますので、是非そこはお願いしたいところです。
それから、その事業者の方が判断力の低下であるとか、生活に著しい支障があるということを、わかっていたかどうかの問題ですけれど、これは今までの先生方のお話と同様です。基準を設けることも、外見的にも難しいところでございます。
斡旋の場では、総合的に外見的に非常に元気な様子が見られたとしても、しっかりとしたものの言い方ができたとしても、実際こういうふうな状況があれば、ここからはやはり疑問を感じないわけはないでしょうか、と様々総合的なところからお話をして、それでも判断力についてなにかお気づきにはならなかったのでしょうか、というような交渉をしております。そうしますと、そういったことを総合的に判断する部分で、事業者のほうが気付いて当然然るべきである、ビジネスをするために自らの取引の安全のためには、ここまではやはり確認してもよいのではいか、というレベルのところで、重過失の話もありましたけれども、書き込んでいただくことも一つの方法かと思っております。次の過量のとこでございますけれども、喪服と寝巻を一緒に販売した過量販売という相談事例は、私は今まで聞いたことはございません。着物の場合は、帯、帯留め、帯揚げ、襦袢であるとか、こういったお召し物にはこういった襦袢を着た方がいいとか様々なことをいわれて、結果的にトータルとして和装小物一式となり、洋服小物一式という言葉としてはございません。
洋服はお外に着るもの、下着、肌着それぞれ別として皆さんお買いになるんですけれども、着物の場合は日常生活になっておりませんので、和装一式という形で展示会販売なので行われている実態がございます。ですので、過量のところもどこで判断をするかというのが難しいところはありますが、実際の現場のことを踏まえた上で考えていただきたいと思いました。
それから不動産の売却ですけども、これは確かに自分の不動産売却をして違うライフスタイルを送るという考えの方がいらっしゃって、その時になかなか後見制度が普及していませんので、取引ができないというのは不便なところがあるというのは認識しております。ですが、消費生活センターに入る相談というのはそうではなくて、生活をしていくには自分の住んでいる家を手放して、どこかこれから住むところを探す、残されたお金の中で将来暮らしていく事を考えなければならない実情がございますので、このあたりどういうふうな切り分けをするかというのは、難しい所はありますけれど、やはり消費者契約法は大きな格差のある脆弱な消費者を救済するためにあるというところを踏まえていただいて、ご検討いただければと感じております。以上でございます。
〇山本座長
ありがとうございました。楠委員、お願いいたします。
〇楠委員
代替財のところにつきまして河村委員からコメントいただいたように、確かにその個人の効用関数に関するものであって、それをどこまで外形的に推定できるのかという点は議論を要するところではあると思うんですけれども、一方でそのカテゴリーが同じであれば本人にとって同じものであるかということよりも、推定の基準としては本人の目的に対して代替性があるのかないのかというのは、ある程度は外形的に推定できる部分もあるとは思いますので、ちょっとどういった工夫をしていけば経済学的に見ておかしくない、整理にできるのかというところは、ちょっと今後も議論をさせていただければという風に思いました。ありがとうございます。
〇山本座長
ありがとうございます。今後もご示唆をいただければと思います。
規定を設けることに意味があるのかという平尾委員からのご指摘に関しましては、何人の方からも既にご意見が出ているところですが、公序良俗を専門にしてきた者から一言だけ付け加えて申し上げておきたいと思います。
確かに、特に比較的新しい下級審の裁判例を見る限り、判断力の低下を一つの考慮要因として公序良俗違反で無効とする裁判例が、資料でお示しいただいているもののほかにも、いくつか出ています。
ただ、ここから先が問題で、2点申し上げたいのですが、1点はもうすでに沖野委員がおっしゃられましたように、公序良俗違反の判断というのは、様々な事情を考慮して、総合判断をするところがありますので、一義的にこの場合
には公序良俗違反で無効だという判断がしにくいことになっています。そのようなことを考えますと、スコープを絞り、考慮要因を可能な限り明確にしたルールを設けることは、実務で問題を扱っていく上で、大変意味があることだろうと思います。
もう 1 点は、公序良俗に関しては、これは極めて例外的な場合に使われる規定であって、その意味で、原則としては契約は有効であるとお考えになる法律家が今も非常に多いのではないかと推察します。その意味では、実際の紛争で救済を図ろうとする場合に、90 条があるから最後は大丈夫であるというだけでは、必要な救済を十分に図っていくことはなかなかできないのではないかと思います。
その意味では、個別化・具体化が可能なものであれば、そしてまた消費者契約に特有の考慮要因があるならば、それを明示したルールを設けることには、大きな意味があるだろうと思います。
最後は余計なことを申し上げましたが、それでは、事務局提案に関するご意見は以上のとおりとさせて頂きます。
もう少し早く終わる予定だったのですけども、そうしますと休憩を取ろうかなと思っていました。しかし、もうすでに2時間近くかかっていますので、5分間だけ休憩を取らせていただいて、5分後に再開し、平尾委員のご提案について意見交換をしたいと思います。それでは、25 分に再開ということとさせていただきます 。
(5分間休憩)
〇山本座長
皆様そろそろお戻りでしょうか。25 分になりましたので再開をさせていただきます。それでは次に、平尾委員からご提出いただいた資料について、委員の皆様からご意見やご質問をいただければと思います。
今回は順に皆様をご指名するという方法ではなく、ご意見やご質問がある方はその旨チャットでご送信いただきましたら、こちらの方からご指名をさせていただきます。いかがでしょうか。
では、山下委員お願いいたします。
〇山下委員
ありがとうございます。平尾委員のペーパーにつきまして、第1回のほうのご提案のほうについてのみ発言をさせて頂きますが、動機の錯誤と呼ばれる類型について、その解釈を明確にするという可能性をご示唆いただいたものと理解しております。ただ、平尾委員がご指摘くださった通り、動機の錯誤については、動機の表示、今の条文では、法律行為の基礎とされている事情が表示されているという要件が 95 条に含まれております。表1の要件につきまして
は、少し解釈が分かれているということがご指摘の通りだと思います。そのうえでおそらく、今回問題になっているような判断力の不足している消費者との関係で、消費者が明らかに真実と異なる思い込みをしたうえで、契約締結に至っているということを認識、あるいは認識可能な場合に、その事実がここでいう表示に当たらないかという事については、当たらないという考え方もありうるかもしれませんが、おそらく当たるという可能性が現行法の解釈に十分にありうるということではないかと思います。
その前提で、消費者契約法の規定として錯誤の解釈について、どのような形でより明確な要件を立てられるかといいますと、かなり難しいのではないかという風に私自身は感じているところではありますが、もう少し、平尾委員のほうからご提案されている解釈を明確化するところについて消費者契約法でどのような規定をお考えなのかという事を補足していただければなという風に思っております。
〇山本座長
ありがとうございます。平尾委員からお答えがあるでしょうか。
〇平尾委員
はい。私もちょっと研究者ではありませんので、動機の錯誤の学説状況を解説する立場ではありません。実務家から見た場合に、私が1月 27 日のパワーポイントで上げさせていただいた事案、こういったものを私は救済の対象として入れるべきではないかと考えております。
そうした場合、契約内容、対価的不均衡とか過量とか、そういったものだけで縛っていくと、どうしても漏れが生じるものがでてくるのではないかと。それをひとつ真意と合致しているかどうかという視点でみることができないか と。ある意味問題定義をさせていただいたというような状況ではございます。もちろん改正された現行法で、これらが救済される場面があるというのであれば、そちらの解釈の問題になろうかと思いますけども、果たしてそのような解釈が一般的なのかどうかという所が懸念はございますので、なんとかこちらの消費者契約法でなんらか補足ができないかということで提案をさせていただき
ました。もちろん、民法の解釈を消費者契約法でいじるというのがなかなか難しいという事は、私も重々承知しております。それがそのまま、使えるかどうかと言われると、分からないところがございますが、ただ、何らかの今後立法化するにあたってのサジェスチョンになればと思い提案させていただきまし た。
その中で、「基礎となる事情が表示されていた」の解釈において、契約内容になることまでは求めずに、相手方の認識あるいは認識可能性で足りるとすることは、今回、救済事案を捕捉するにあたってのなんらかヒントになるのではないかということを考えております。また、 事務局の提案で進めていった場合、どうしても、認識だけでいいのかというのは、私は凄い疑問をもっております。少なくとも認識可能性という要件にするべきです。
今回、 動機の錯誤では有力説として不一致の認識可能性というような見解があります。これとパラレルかどうか分かりませんが、不合理な内容の契約について、認識だけではなくって、認識可能性というものは、私はもっと検討すべきではないかと考えております。もちろん、他の委員も言われた重過失で対応ということも、ひとつだとは思うんですが、商法では基本的には重過失ですが、民法の世界で、しかも表意者、つけこまれた人にそれほど帰責性が認められないと思われる場面で、相手方の保護要件を善意だけでいいとするのが、私は取引安全の見解は分かるんですけれども、消費者の保護をやはり薄めすぎではないかと思います。
主観要件を出すとしたらやはり認識可能性という有過失なところは、やは り、そこをもっと慎重に考えるというか、過失があったら取引安全ではなく消費者の保護をすべきではないかというような考えが動機の錯誤の有力な見解のなかでも出ているのではないかと思って、紹介させていただいたという次第でございます。これが消費者契約法でどう要件化するかということに関して確定的な答えになっていない所はありますが、申し訳ございません。私もあくま で、方向性を叩き台として挙げたものですので、条文案として練り混んで記載したものではありませんので、その点はご容赦ください。それから、この際ついでなんですけれども、あまり練り混んでない所がありまして、第2の提案の所で、このペーパーでは、判断力不足に関しても、認識ないし認識可能性を提案させていただいていますが、私の本来の真意は、契約の不合理性を要件とするのであれば過量契約のように、本来推定されるべきであって、この要件は本来は不要であるというのが私の考えです。
〇山本座長
ありがとうございました。それでは、遠山委員、お願いします。
〇遠山委員
ありがとうございます。まず、平尾委員ご提案の第1「前回の提案」、それから、第2「もう一つの提案」について、考えていることを申し上げます。
まず第1の提案では、対象を「判断力の不足する者」として、「著しく」がない形とされています。この点、平尾委員もおっしゃっていた通り、認知機能というのは、認知症という病気でなくても、加齢で低下していくと言われていて、六十歳を過ぎると認知機能が少しずつ衰えると言われています。
ただ、その程度は個人ごとに当然差がありますし、また、波があるなど、これを測ることが難しいことは、これまで「判断力の著しく低下している者」、つまり認知症の方について申し上げてきたとおりです。ちなみに、現在、認知症の方がおよそ 600 万人、そして、軽度認知障害(MCI)の方が 400 万人おられると言われており、また、60 歳をすぎて認知機能が少しずつ衰えると考えると、60 歳以上の人口は 4,300 万人となっており、そういった方々がこの要件にあたりうることになる、そうであるとすると広すぎるのではないかと懸念しています。
また、ここでは「当該消費者の契約目的、動機に合致しない」、つまり「ニーズに合わない」契約であることの認識、またはその可能性を問題とされていますが、お客様のニーズは、収入、資産状況、世帯構成、生活習慣、好みなどを反映した非常に多様なものであって、それを事業者が推し測り、それに完全に合致した商品・サービスを提供することは不可能であって、また、その表示がなければ、結果的に合理性のある契約をご提案していたとしても、後からニーズに合わないと言われてしまうことが懸念されます。
したがって、「判断力が不足する方」であっても、意思や動機を伝えることができるのであれば、それを表示していただく必要があると思いますし、そのほうが結果として、よりニーズに合った契約ができ、お互いの幸せに繋がるものと考えています。そういったことがなく、取り消しが可能という規定となると、取引内容に応じてニーズを確認するために情報提供を求めるとか、場合によっては、成年後見制度などの利用を待って取引を見合わせるといったケースが生じると考えています。
そのため、本来であれば、少なくとも認知症の方 600 万人、場合によって
は、軽度認知障害(MCI)の方 400 万人については、成年後見制度などの利用促進が、本人意思の尊重からも必要だと考えていますが、その上で、消費者契約法において、取り消しの要件として規定するのであれば、それは、「ニーズの認識やその可能性」ではなく、例えば「人を騙す」、「嘘をつく」、「根拠のないことを言う」、「出来そうにないことを出来ると言う」、「手段やノウ
ハウを提供するだけなのに結果が確実だと言う」など、事業者の行為が明らかに不当なものとなると考えています。
次に、ご提案の第2「もう一つの提案」ですが、「判断力の著しく不足する者」には、意思無能力の方から補助に相当する方々まで、また、認知症を発症されている方もこれに該当すると考えられます。政府の高齢社会対策大綱や認知症施策推進大綱では、成年後見制度の利用促進や認知症バリアフリーの推進が挙げられていますが、いずれも、自己決定権の尊重、本人意思の尊重、そしてノーマライゼーションを理念としており、いずれも、ご自身でできることはご自身で決め、認知症などになったとしても、出来るだけそれまでと同じ生活を続けていくということを推進しようとするものであり、これは、これからの超高齢化社会における経済取引でも必要とされていくものと考えています。
このことを前提とすると、あらゆる消費者契約に適用される消費者契約法に おいて取り消しとすべき、「客観的にみて不当な内容の契約」というのは、「様々 なニーズを踏まえても、どのような消費者も締結しないような契約」になると考 えています。その点、例示として、電気通信事業法などの「社会的経済的事情に 照らして著しく不適当」を挙げておられますが、これは許認可事業の料金など取 引条件を、競争制限や公共の利益の観点から規制するものであって、消費者契約 法にはなじまないものと考えています。また「対価的にみて不均衡」については、専門技術的側面の研究会の報告書の 18 ページで、これについて、「契約内容の 適否に関する基準を公序良俗違反よりも具体的な形で定めることができるのか」などの課題が挙げられており、その結果、「消費者の生活に著しく支障を生じさ せる契約」という形で報告書で取りまとめられたものと理解しています。以上で す。
〇山本座長
ありがとうございました。平尾委員から答えになることはありますでしょうか。
〇平尾委員
特にはございません。
〇山本座長
拝見する限りお手があがっていないようにみえます。よろしいでしょうか。それでは事務局の方から何かコメント等はありますでしょうか。
〇加納消費者制度課長
はい、ありがとうございました。平尾委員のご提案はご提案のひとつという風に私どもとして考えてございますけれども、事務局としては事務局が本日お示した提案につきまして今日委員から様々なご意見を頂戴いたしましたので、座長にもまとめいただいたところを踏まえてですね、さらにどういった場合がその知りながらに該当するのかとかですね、そういった所を詰めた上でです ね、例えば、坪田委員などから相談現場でどういう風に使えるかっていうご指摘もありましたので、それと知りながらの要件と、こういう場合だったら該当するという風に判断されることがあるのではないかとかですね、そういった形でその要素とかですね、その評価を基礎付ける事実としてどんなのがあるかどうかですね、そういった所をさらにつめた上で、この提案①についてさらにブラッシュアップするという形で検討させていただけばというふうに思っております。事務局からは以上でございます。
〇山本座長
ありがとうございました。それでは少し時間がまだ残っておりますけれど も、今日のところは、意見交換はここまでとさせていただければと思います。事務局からありましたように、本日いただきましたご意見は、事務局の方で整理をしていただいて、次回以降の検討につなげていきたいと思います。
最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。
〇加納消費者制度課長
はい、次回でございますけれども、来週となって恐縮ですけども来週の6月 25 日木曜日の 17 時から 19 時 30 分ということで、時間も夕方で大変恐縮でございますがお願いできればと思います。また議題等の詳細につきましてはまた改めてご連絡申し上げます。
〇山本座長
ありがとうございました。
なお、本日の議論については、運営要領に基づいて事務局と私で議事録を作成し、委員の皆様にご確認いただいた上で公表したいと考えています。
それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。今後ともどうかよろしくお願いいたします。それではこれで第5回検討会を終了いたします。