(例1) コンクリート設計基準強度18N/㎟に対し、現場で21N/㎟のコンクリートでの打設を承諾した場合。
工事請負契約における設計変更ガイドライン
【建築・設備工事】
令和4年10月
霧島市
目 次
1.ガイドラインの目的
2.設計変更が不可能なケース
3.設計変更が可能なケース
(1) 設計図書に誤り又は脱漏がある場合 【契約書第18条第1項第2号】
(2) 設計図書の表示が明確でない場合 【契約書第18条第1項第3号】
(3) 設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しない場合
【契約書第18条第1項第4号】
(4) 設計図書に示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じた場合
【契約書第18条第1項第5号】
(5) 発注者が変更を必要と認める場合 【契約書第19条】
(6) 工事中止の場合 【契約書第20条】
(7) 請負代金額の変更に代える設計図書の変更 【契約書第31条】
(8) 設計変更・変更指示にあたっての留意事項
4.設計変更手続きフロー
(1) 契約書第18条(条件変更等)関連
(2) 契約書第19条(設計図書の変更)関連
5.工期・請負金額の変更
(1) 概算額明示の考え方
(2) 設計変更協議会での協議
6.関連事項
(1) 指定・任意の正しい運用
(2) 入札・契約時の設計図書等の疑義の解決
7.用語の定義
1.ガイドラインの目的
建築工事及び設備工事は、不特定多数の利用者や施設管理者等の様々な要望を総合的に勘案し設計された一品受注生産である目的物を、多種多様な自然・社会・環境条件のもとにおいて生産する特殊性を有しており、工事の進捗と共に、当初発注時に予見できない施工条件や環境の変化等が起こり得ることから、工事内容の変更(設計変更)が避けられない場合がある。
設計変更に関しては、霧島市建設工事請負契約書(以下「契約書」という。)に定められているが、国が策定しているガイドラインを踏まえ、本市においてもガイドラインを策定し、受注者・発注者双方の留意事項や具体例を示すことで、設計変更に係る手続きの円滑化を図ることを目的とする。
設計変更が不可能なケース
● 下記のような場合においては、原則として設計変更の対象とならない。
(但し、契約書第27条(臨機の措置)による対応の場合はこの限りではない。)
① 設計図書に定めのない事項において、発注者と「協議」を行わず受注者が独自に判断して施工を実施した場合。
② 発注者と「協議」をしているが、協議の回答がない時点で施工を実施した場合。
③ 「承諾」で施工した場合。(xxとは、受注者が自らの都合による施工方法等について、監督職員に同意を得るもの。)
(例1) コンクリート設計基準強度18N/㎟に対し、現場で21N/㎟のコンクリートでの打設を承諾した場合。
(例2) コンクリート打設による基礎施工の設計に対し、二次製品で施工することを承諾した場合。
④ 契約書・公共建築工事標準仕様書(以下、「標準仕様書」という。)に定められている所定の手続きを経ていない場合。(契約書第18条~25条、標準仕様書1-1-8~1-1-10)
⑤ 正式な書面によらない事項(口頭のみの指示、協議等)の場合。
⑥ 当初の設計図書に従って施工しても支障がない場合。
⑦ 指定されていない任意の仮設、施工方法を変更する場合。(但し、設計図書に示す条件と実際の現場条件が一致しない場合は除く。)
(参考) 任意仮設は、契約書第1条第3項により、受注者がその責任において定めるものとされているため、設計変更の対象とならない。
⑧ 総合評価落札方式における技術提案等の場合。
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3.設計変更が可能なケース
● 下記のような場合においては、設計変更の対象となる。
(1) 設計図書に誤り又は脱漏がある場合 【契約書第18条第1項第2号】
〈具体例〉
① 工事施工上必要な材料名について、図面毎に一致しない場合。
② 建築、電気設備及び機械設備の各分野の設計内容が互いに整合していない場合。
(2) 設計図書の表示が明確でない場合 【契約書第18条第1項第3号】
〈具体例〉
① 図面の記載内容が読み取れない場合。
② 仕様や性能が不明確な場合。
(3) 設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しない場合 【契約書第18条第1項第4号】
〈具体例〉
① 設計図書に明示された想定支持地盤と実際の工事現場が大きく異なる事実が判明した場合。
② 施工中に設計図書に示されていないアスベスト含有建材を発見し、調査及び撤去が必要となった場合。
③ 設計図書に明示された配管・配線等と実際の工事現場における配管・配線が大きく異なる事実が判明した場合。
(4) 設計図書に示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じた場合 【契約書第18条第1項第4号】
〈具体例〉
① 施工中に地中障害物を発見し、撤去が必要となった場合。
② 施工中に埋蔵文化財を発見し、調査が必要となった場合。
③ 仮設(任意を含む)において、条件明示の有無に係らず当初発注時点で予期しえなかった土質条件や地下水位等が現地で確認された場合。
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(5) 発注者が変更を必要と認める場合 【契約書第19条】
〈具体例〉
① 施設管理者等との調整の結果、施工範囲、施工時間、施工期間を変更する場合。
② 同時に施工する必要がある工種が判明し、その工種を追加する場合。
③ 警察・河川・鉄道等の管理者、電力・ガス等の事業者、消防署等との協議により、施工内容の変更、工事の追加をする場合。
④ 当初設計で指定していた建設副産物の処分先を変更する場合。
⑤ 使用材料を変更する場合。
⑥ 関連する工事の影響により施工条件が変わったため、施工内容を変更する場合。
⑦ 隣接工事との調整で、交通誘導警備員の人数を変更する場合。
(補足) 発注者は予定している追加工事がある場合には、その内容を予め設計図書で示すことが望ましい。
(6) 工事中止の場合 【契約書第20条】
受注者の責めに帰することができない自然的又は人為的事象により、受注者が工事を施工出来ないと認められる場合は、発注者は工事の全部又は一部の施工を一時中止させなければならない。 また、その場合必要があると認められる時は、工期を延長し、受注者が一時中止に伴う増加費用を必要とした時はその費用を負担しなければならない。
※「工事を施工出来ないと認められる場合」とは、客観的に認められる状態を意味し、発注者又は受注者の主観的判断によって決まるものではない。
〈具体例〉
① 設計図書と実際の施工条件の相違又は設計図書の不備が発見(契約書第18条)されたため施工を続けることが不可能な場合。
② 設計変更等により計画通知手続きが必要になり、工事の施工を止める必要がある場合。
③ 同一現場内に、建築、電気設備、機械設備等複数の工事があり、一部の工事の契約が成立せず、他の契約済みの工事の施工ができない場合。
④ 同一現場内に、建築、電気設備、機械設備等複数の工事があり、一部の工事で大幅な施工の遅延が生じ、他の契約済みの工事の施工ができない場合。
⑤ 同一現場内に、建築、電気設備、機械設備等複数の工事があり、一部の受注者に倒産等の施工できない状況が発生し、他の契約済みの工事の施工ができない場合。
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⑥ 地中障害物・埋設物等の調査及び処理を行う場合。
⑦ 埋蔵文化財の調査、発掘を行う場合。
⑧ 天災等により地形等に物理的な変動があった場合。
⑨ 妨害活動を行う者による工事現場の占拠及び著しい威嚇行為があった場合。
(7) 請負代金額の変更に代える設計図書の変更 【契約書第31条】
発注者は、予算制度に基づいて公共工事を執行し、予算の範囲内でのみ契約を締結できる。
しかし、約款では、一定の場合に請負代金額の増額又は発注者が必要な費用等を負担しなければならないとしているため、当初の請負代金額を上回ることがある。
このような場合には、設計図書を変更し、当初の請負代金額又は発注者の負担できる範囲内の増額に対応する工事量とすることができるようにしている。
(8) 設計変更・変更指示にあたっての留意事項
① 当初設計の考え方や設計条件を再確認したうえで、設計変更「協議」を行うこと。
② 当該事業(工事)での変更の必要性を明確にすること。
(規格の妥当性、変更対応の妥当性(別途発注ではないか)を明確にすること。)
③ 設計変更に伴う契約変更の手続きは、その必要が生じた都度、遅延なく行うこと。但し、軽微な設計変更に伴う契約変更手続きについては、工期末に一括して行うこともできる。
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4.設計変更手続きフロー
(1) 契約書第18条(条件変更等)関連
① 図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと。
② 設計図書に誤り又は脱漏があること。
③ 設計図書の表示が明確でないこと。
④ 工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと。
⑤ 設計図書で明示されていない施工条件について、予期することのできない特別な状態が生じたこと。
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(2) 契約書第19条(設計図書の変更)関連
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5.工期・請負代金額の変更
(1) 概算金額明示の考え方
① 発注者は、設計変更を行うために契約変更に先立って指示を行う場合、指示書(緊急の場合は工事打合簿)にその内容に伴う増減額の概算額を記載するように努める。但し、受注者からの協議により変更する場合で、協議時点で受注者から見積書の提出を受けた場合は、概算金額を提示する。(次頁の記載例を参照)
② 発注者が提示する概算金額は、類似する他工事の事例や設計業務委託等の成果、協会資料及び受注者からの見積書(妥当性を確認したもの)などを参考に記載することも可とする。
③ 記載した概算金額の出典や算出条件等についても明示する。
④ 記載する概算金額は、「参考値」であり、契約変更額を拘束するものではない。
⑤ 緊急的に行う場合又は何らかの理由により、概算金額の算定に時間を要する場合は、後日通知することができる。
(2) 設計変更協議会での協議
① 設計変更協議会(以下「変更協議会」という。)は、設計変更手続きの透明性とxx性の向上を目的として、設計変更に関する意見相違等の案件が発生した際、発注者と受注者が設計変更の妥当性の協議・審議等を行い、相互の合意形成を図る場として実施するものである。
② 契約事項第24条に基づく工期の変更方法等、第25条に基づく請負代金額の変更方法等、第31条に基づく請負代金額の変更に代える設計図書の変更の協議として位置付けられるものである。
③ 変更協議会は、全ての工事において、以下の(ア)又は(イ)の案件が発生した場合、適宜開催できるものとする。 但し、通常の監督行為で解決されるような設計変更等までが発議されるものではないことに留意するものとする。
(ア) 発注者と受注者間において、設計変更に関する意見の相違する案件が発生した場合。
(イ) 設計変更に関して、変更協議会の開催が必要と判断した場合。
④ 変更協議会は、下記のメンバーを標準として開催するものとする。 なお、必要に応じて他の出席者を追加できるものとする。
◆発注者 : 担当課長、担当グループ長、総括監督員、監督員
◆受注者 : 現場代理人、xx(監理)技術者、予算担当者
⑤ 変更協議会開催の発議は、発注者又は受注者を問わず可能とし、事前に相手方と調整したうえで、工事打合簿により通知するものとする。
(ア) 開催場所は、原則として発注公所にて開催するものとし、適宜現場においても開催できるものとする。 なお、1回の開催で協議が調わない場合は、複数回開催することができるものとし、協議期間は協議が十分に行える期間とする。
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(イ) 協議資料については、発注者と受注者がそれぞれ協議に必要な資料を準備するものとする。
(ウ) 協議記録は、発注者が作成するものとする。 また、協議結果については、最終的に発注者が協議記録と協議資料を取りまとめ、工事打合簿に添付し、発注者から受注者に対して通知するものとする。
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6.関連事項
(1) 指定・任意の正しい運用
指定・任意については、契約書第1条第3項に定められているとおり、適切に扱う必要がある。
① 仮設、施工方法等には、指定と任意があり、発注においては、指定と任意の部分を明確にする必要がある。
② 任意については、その仮設、施工方法の一切の手段の選択は、受注者の責任で行うもの。
③ 任意については、その仮設、施工方法に変更があっても、原則として設計変更の対象としない。但し、任意であっても、設計図書に示された施工条件と実際の現場条件が一致しない場合は、設計変更の対象となる。
④ 発注者(監督員)は、任意の趣旨を踏まえ、適切な対応をするように注意が必要である。
※不適切な対応例
・〇〇工法で積算しているので、〇〇工法以外での施工は不可と対応すること。
・標準歩掛ではバックホウでの施工であるが、クラムシェルでの施工は不可と対応すること。
・新技術の活用について受注者から申し出があった場合に、積算上の工法で施工するように指示すること。
(2) 入札・契約時の契約図書等の疑義の解決
契約図書等についての疑義については、入札前の段階、設計照査の段階で解決しておくことが、円滑な設計変更につながることになる。
【入札前】
入札参加者は、閲覧設計図書を熟覧の上、入札しなければならない。
この場合において、設計図書等について疑義があるときは、質問期限内に発注者に書面で説明を求めることができる。(工事担当課は、回答書を回答期限までに提示できるように工事契約検査課に提出。なお、質問があった場合は事前に報告。)
【契約後】
受注者は、施工前及び施工途中において、自らの負担により契約書第18条第1項第1号から第5号に係わる設計図書の照査を行い、該当する事実がある場合は、監督員にその事実が確認できる資料を書面により提出し、確認を求めなければならない。
なお、確認できる資料とは、現場地形図、設計図との対比図、取り合い図、施工図等を含む。
また、受注者は監督員から更に詳細な説明又は書面の追加の要求があった場合は従わなければならない。(共通仕様書1-1-1-3 設計図書の照査等)
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7.用語の定義
(1) 設計変更 (「公共工事契約の実務」昭和44年官房長回答)
工事請負契約書第18条、第19条、第20条の規定に基づき、図面又は仕様書を変更することとなる場合において、契約変更の手続きの前に当該変更の内容を予め受注者に指示すること。
(2) 設計図書 (標準仕様書1-1-1)
契約書第1条に示す図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書をいう。
・ 仕様書
特記仕様書及び標準仕様書の総称。
・ 工事費内訳書
建築工事積算基準に基づき、予定価格の算出の根拠となるものであり、設計図書には含まれない。 但し、設計変更が生じた場合は、請負代金額の変更にあたって、受注者と協議する根拠資料となる。
・ 参考数量書
予定価格のもととなる工事費内訳書から単価及び金額等を削除するなどの加工・編集をしたもので、入札時等に見積りを行うための参考資料として提供するものであり、契約書第1条に定める設計図書ではなく、参考資料として扱うもの。 よって、入札参加者等からの参考数量書に対する質問回答も設計図書には、含まれない。
全ての設計図書は相互に補完するが、相違がある場合の優先順位は、次の①から⑤の順番。
①質問回答書(②から⑤に対するもの)
②現場説明書
③特記仕様書
④図面
⑤標準仕様書
(3) 書面 (標準仕様書1-1-2)
発行年月日が記載され、署名又は捺印がされた文書。
(4) 承諾 (標準仕様書1-1-2)
受注者等が監督職員に対し、書面で申し出た事項について、監督職員が書面をもって了解すること。
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(5) 指示 (標準仕様書1-1-2)
監督職員が受注者等に対し、工事の施工上必要な事項を書面によって示すこと。
⑥ 協議 (標準仕様書1-1-2)
協議事項について、監督職員と受注者等とが、結論を得るために合議し、その結果を書面に残すこと。
⑦ 提出 (標準仕様書1-1-2)
受注者等が監督職員に対し、工事に係わる書面又はその他の資料を説明し、差し出すこと。
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