Contract
建設工事における下請契約の適正化等について
xx県土木建築部監理課
(令和3年10月改訂版)
Ⅰ 建設工事における下請契約の締結等については、以下の点に特に留意されるようお願いします。
1 書面による下請契約
建設工事標準下請契約約款又はこれに準じた内容を持つ契約書等により必ず書面 で、下請負人が工事を着手する前に下請契約を締結してください。(建設業法(以下
「法」という。)第19条第1項)
契約を変更する場合も同様です。(法第19条第2項)
2 無許可業者との下請契約の禁止
下請契約の相手方は、軽微な建設工事を除き、建設業の許可を受けていなければなりません。軽微な建設工事とは、次のとおりです。(法第3条第1項)
① 建築一式工事では、1,500 万円未満の工事又は延べ面積が 150 ㎡未満の木造住宅工事
② 建築一式工事以外では、500 万円未満の工事
3 不当に低い請負代金の禁止
自己の取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額 を請負代金の額とする請負契約を締結してはいけません。(法第19条の3)
4 不当な使用資材等の購入強制の禁止
自己の取引上の地位を不当に利用して、工事に使用する資材、機械器具を強制的に購入させることや、購入先の指定を行い、下請負人の利益を害してはいけません。
(法第19条の4)
5 建設工事の見積り等
建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際して、工事内容に応じ、工事の種別ごとに材料費、労務費その他の経費の内容を明らかにして、建設工事の見積りを行うよう努めなければなりません。(法第20条第1項)
また、注文者(元請を含む)は、契約締結前に契約の内容を具体的に提示し、受注
者(下請を含む)に適切な見積り期間を与えてください。(法第20条第3項)
6 一括下請負の禁止
一括下請負は、発注者の信頼に反するものであり、また、工事施工上の責任の所在が不明確となり、かつ、請負代金の増額又は工事の質的低下を招く恐れがあるため、禁止されています。(法第22条)
特に、共同住宅を新築する民間工事や公共工事等、多数の者が利用する施設又は工作物に関する建設工事については、元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得ても一括下請負は禁止されていますので、注意してください。
(法第22条第3項)
7 下請負人の意見の聴取
元請負人(下請契約における注文者で建設業者であるものをいう。以下同じ。)は、請け負った工事を施工するために必要な工程の細目、作業方法その他の事項を定めようとするときは、あらかじめ下請負人の意見をきかなければなりません。(法第
24条の2)
8 下請代金の支払
元請負人は、その注文者から出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、その支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対して、相応する下請代金を、当該支払を受けた日の翌日から起算して1か月以内で、かつ、で
きる限り短い期間内に、支払わなければなりません。(法第24条の3第1項)
9 前払金の支払
元請負人は、その注文者から前払金の支払を受けたときは、下請負人に対して資材
の購入、労働者の募集その他工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしてください。(法第24条の3第3項)
10 下請代金の支払方法
ア できるだけ現金払とし、現金払と手形払を併用する場合であっても、支払代金に占める現金の比率を高めるとともに、少なくとも労務費相当部分については、現金で支払ってください。(平成3年2月5日建設省経構発第2号「建設産業における生産システム合理化指針について」(以下「合理化指針」)という。)
イ 手形等による場合は、割引料を下請事業者に負担させることがないよう、下請代金の額を十分協議してください。(建設業法令遵守ガイドライン)
ウ 手形期間は、60日以内としてください。(建設業法令遵守ガイドライン)
11 下請代金等への消費税等(消費税及び地方消費税)の適正な転嫁
自己の取引上の地位を不当に利用して、下請負人等に消費税等を負担させたりすることがないようにしてください。
なお、免税業者である下請負人等であっても、その仕入れに消費税等分が上乗せさ
れていることに留意してください。(平成9年3月24日建設省経入企発第1号「消費税率の引上げ及び地方消費税の導入について」)
12 標準見積書の活用等による法定福利費の適正な確保
元請負人及び下請負人は、見積の段階から法定福利費を必要経費として適正に考慮しなければなりません。
下請負人は、自ら負担しなければならない法定福利費を適正に見積もり、標準見積書の活用等により法定福利費相当額を内訳明示すべきとされており、元請負人は、下請負人の見積書に法定福利費相当額が明示されているにもかかわらず、これを尊重せず一方的に削減することや、法定福利費相当額を含まない金額で下請負人と建設工事の請負契約を締結することがないよう以下の2点に注意してください。
① 法定福利費を内訳明示した見積書が、建設業法第20条第1項に規定する見積に該当します。
② 再下請負の場合でも、元請・1次下請間の場合と同様に、法定福利費を内訳明示した見積書を提出・尊重してください。
(建設業法令遵守ガイドライン、社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン)
13 下請工事の検査及び目的物の引取り
元請負人は、下請工事が完成した旨の通知を受けたときは、その日の翌日から起算して 20 日以内で、かつ、できるだけ早期に完成検査を完了しなければなりません。
(法第24条の4第1項)
また、その検査が完了した後、下請負人が申し出たときは、直ちに下請工事の目的物の引渡しを受けなければなりません。(法第24条の4第2項)
14 帳簿の備付け等
建設業者は営業に関する事項を記載した帳簿を備え、5年間保存しなければなりません。(新築住宅に係るものは、平成21年10月から10年間保存に変更。)
また元請業者は、営業に関する図書として、以下の3点の図書を、目的物の引き渡しをしたときから10年間保存しなければなりません。
①完成図、②発注者との打合せ記録、③施工体系図(法第40条の3)
15 下請負人への指導
一般建設業者においても、下請負人に対し、19と同様の指導を行うことが望まれます。
16 下請負人の社会保険への加入確認・指導
元請負人は、施工体制台帳(再下請負通知書を含む 18参照)や作業員名簿等を用いて、下請負人の社会保険(健康保険、厚生年金保険及び雇用保険)の加入状況を確認し、未加入の場合には加入するよう指導してください。(社会保険の加入に関する
下請指導ガイドラインに関するQ&A)
Ⅱ 発注者から直接工事を請け負った元請負人が合計で4,000 万円(建築一式工事の場合6,000 万円)以上の下請契約を締結することは、特定建設業の許可を受けたもの(特定建設業者)でなければ、できないことになっています。(法第 16 条)
17 下請代金の支払
特定建設業者が工事を下請に出す場合には、その注文者からの代金支払の有無にかかわらず、下請代金の支払期日は、工事完成検査完了後、下請負人(特定建設業者及び資本金額が 4,000 万円以上の法人は除く。)からの工事目的物の引渡しの申出の 日から起算して50日を経過する日以前において、かつ、できるかぎり短い期間内において定めなければなりません。(法第24条の6第1項)
なお、下請契約で支払期日を定めなかったときは、引渡しの申出の日が、また、仮に契約で申出の日から起算して 51 日以降の日を支払期日と定めたときは、申出の日
から起算して 50 日を経過する日が支払期日と定められたものとみなされます。(法第24条の6第2項)
ただし、特定建設業者が、注文者から完成払を受けていて、さらに下請負人から引渡しの申出を受けているときは、完成払を受けた日から1か月以内(8参照)か、引渡しの申出から50日以内の支払期日(支払期日の定めがなければ引渡し申出日)の
いずれか早いほうが、実際の支払日となります。
この特定建設業者が工事を下請負人に施工させる場合、以下の点に留意されるようお願いします。
18 施工体制台帳及び施工体系図の作成
発注者から直接工事を請け負った特定建設業者が元請となって、4,000 万円(建築一式工事の場合は6,000 万円)以上を下請に出すときには、次の書類を作成しなければなりません。
ただし、公共工事については下請金額にかかわらず、下請契約を締結するすべての元請業者が施工体制台帳を作成し、その写しを発注者に提出することが必要となります。(入札契約適正化法第15条第1項)
○ 施工体制台帳(※)(法第24条の8第1項)
下請、孫請などその工事に係わるすべての下請負人名、それぞれの工事の内容、工期などを記載したもので、工事現場ごとに備え置かなければなりません。
○ 施工体系図(法第24条の8第4項)
各下請負人の施工の分担関係を表示したもので、工事現場の見やすい場所に掲げなければなりません。
また、公共工事については、公衆が見やすい場所にも掲げなければなりません。
(入札契約適正化法第13条第3項)
※ 施工体制台帳が作成される建設工事において、請け負った工事を下請に出したすべての下請負人は、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者に再下請負通知を行わなければなりません。(法第24条の8第2項)
19 下請負人への指導
発注者から直接工事を請け負った特定建設業者は、1次下請負人から末端の下請負人までのすべての下請負人に対して、建設業法等の法令に違反しないよう指導してください。(法第24条の7第1項)
また、下請負人がこれらの法令に違反していると認めたときは、違反事実の是正を求めてください。(法第24条の7第2項)
20 外国人建設就労者・外国人技能実習生の施工体制台帳への記載
工事現場に従事する外国人技能実習生及び外国人建設就労者の状況について、施工体制台帳に記載してください。(再下請通知にも記載が必要)
Ⅲ 建設工事における下請契約における労働災害防止対策の実施等については、以下の点に特に留意されるようお願いします。
21 建設工事の下請契約における労働災害防止対策の実施者及びその経費負担者区分の明確化
① 下請負人が労働災害防止対策を講ずることに要する経費は義務的に負担しなけ
ればならない費用であることから、「通常必要と認められる原価」に含まれることとなります。
② 請負人は、見積条件の提示の際、労働災害防止対策の実施者及びその経費の負担者の区分を明確にしなければなりません。
③ 下請負人は、元請負人により明確化された労働災害防止対策の実施者とその経費の負担者の区分を踏まえ、適正に労働災害防止対策に要する経費を見積もった上で、見積書に明示しなければなりません。
④ 元請負人は、労働災害防止対策経費が明示された見積書を尊重し、下請負人と対等な契約交渉を行わなければなりません。
⑤ 請負人と下請負人は、契約書面の施工条件等に、労働災害防止対策の実施者及びその経費の負担者の区分を明確化しなければなりません。
⑥下請負人が負担しなければならない労働災害防止対策に要する経費は、施工上必要な経費と切り離し難いものを除き、契約書面の内訳書などに明示することが必要です。
⑦下請負人の見積書に、適正な労働災害防止対策に要する経費が明示されているにも関わらず、当該経費を一方的に削減したり、当該経費相当額を含めない金額で請負契約を締結し、「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがあります。
⑧あらかじめ見積条件や契約書面に、下請負人の負担であることを明示していないにも関わらず、元請負人が下請負人と合意することなく、一方的に提供・貸与した安全衛生保護具等の費用を下請代金の支払時に差し引く行為は「赤伝処理」に該当し、法第19条、第20条第3項等に違反しますので注意してください。
(建設業法令遵守ガイドライン)