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6 児童の権利に関する条約(概要)等
6 児童の権利に関する条約(概要)等
◇児童の権利に関する条約(概要)
この条約は,我が国が締約国となっている「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」及び「市民的及び政治的権利に関する国際規約」において定められている権利を児童についてxxに規定するとともに,更に,児童の人権の尊重及び確保の観点から必要となる詳細かつ具体的な事項をも規定したものであって,前文,本文54箇条及びxxから成り,その概要は,次のとおりである。
1 児童の定義
児童とは,18歳未満のすべての者をいう。ただし,当該児童で,その者に適用される法律によりより早くxxに達したものを除く(第1条)。
2 締約国の義務
m 一般的義務
イ 締約国は,児童又はその父母若しくは法定保護者の人種,皮膚の色,性,言語,宗教,政治的意見その他の意見,国民的,種族的若しくは社会的出身,財産,心身障害,出生又は他の地位にかかわらず,いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し,及び確保する(第2条)。
ロ 児童に関するすべての措置をとるに当たり,児童の最善の利益が主として考慮される(第3条)。
ハ 締約国は,この条約において認められる権利の実現のため,すべての適当な立法措置,行政措置その他の措置を講ずる
(第4条)。
ニ 締約国は,父母,法定保護者等が児童の発達しつつある能力に適合する方法で適当な指示及び指導を与える責任,権利及び義務を尊重する(第5条)。
Ж 生命に対する権利
締約国は,生命に対する児童の固有の権利を認めるものとし,児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する(第6条)。
Ж 登録,氏名,国籍等についての権利
第 1
部
第 2
部
資料編
イ 締約国は,児童が出生後直ちに登録され,氏名を有し及び国籍を取得する権利の実現を確保する(第7条)。
ロ 締約国は,児童が国籍,氏名及び家族関係を含むその身元関係事項を保持する権利を尊重し,その身元関係事項が不法に奪われる場合には,これを回復するため,適当な援助及び保護を与える(第8条)。
家族から分離されない権利
イ 締約国は,児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保し,また,父母の一方又は双方から分離されている児童が父母との接触を維持する権利を尊重する(第9条)。
ロ 家族の再統合のための児童又はその父母による締約国への入国又は締約国からの出国の申請については,締約国が積極的,人道的かつ迅速な方法で取り扱う(第 10条)。
ハ 締約国は,児童が不法に国外へ移送されることを防止し及び国外から帰還することができない事態を除去するための措置を講ずる(第11条)。
9 意見を表明する権利
締約国は,児童が自由に自己の意見を表明する権利を確保する。児童の意見は,その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮される(第12条)。
表現の自由についての権利
児童は,表現の自由についての権利を有する(第13条)。
思想,良心及び宗教の自由についての権利
締約国は,思想,良心及び宗教の自由についての児童の権利を尊重する(第14条)。
⅛ 結社及び集会の自由についての権利
締約国は,結社の自由及び平和的な集会の自由についての児童の権利を認める(第15
参考資料
条)。
干渉又は攻撃に対する保護
第 1
部
第 2
部
資料編
いかなる児童も,その私生活,家族,住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない(第16条)。
情報及び資料の利用
締約国は,大衆媒体(マス・メディア)の果たす重要な機能を認め,児童が多様な情報源からの情報及び資料を利用し得ることを確保する(第17条)。
家庭環境における児童の保護
イ 締約国は,児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するとの原則の認識を確保するために最善の努力を払う
(第18条)。
ロ 締約国は,虐待,放置,搾取(性的虐待を含む。)等から児童を保護するためのすべての適当な措置をとる(第19条)。
ハ 家庭環境を奪われた児童は,国が与える特別の保護及び援助を受ける権利を有する(第20条)。
ニ 締約国は,児童の養子縁組に当たり,児童の最善の利益について最大の考慮が払われること,また,権限のある当局によってのみこれが認められることを確保する(第 21条)。
難民の児童に対する保護及び援助
締約国は,難民の地位を求めている児童又は難民と認められている児童が適当な保護及び人道的な援助を受けることを確保するための適当な措置をとる(第22条)。
医療及び福祉の分野における児童の権利
イ 締約国は,精神的又は身体的な障害を有する児童が,その尊厳を確保し,自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める(第23条)。
ロ 締約国は,到達可能な最高水準の健康
を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての児童の権利を認める(第24条)。
ハ 締約国は,養護,保護又は治療を目的として収容された児童に対する処遇等に関する定期的な審査が行われることについての児童の権利を認める(第25条)。
ニ 締約国は,すべての児童が社会保障からの給付を受ける権利を認めるものとし,このための必要な措置をとる(第26条)。
ホ 締約国は,相当な生活水準についての児童の権利を認める(第27条)。
教育及び文化の分野における児童の権利
イ 締約国は,教育についての児童の権利を認めるものとし,この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するための措置をとる。また,締約国は,学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で運用されることを確保するためのすべての適当な措置をとる(第28条)。
ロ 締約国は,児童の教育が,児童の人格,才能等を最大限度まで発達させること,人権及び基本的自由並びに国連憲章にうたう原則の尊重を育成すること,児童の父母,児童の文化的同一性,言語及び価値観,児童の居住国及び出身国の国民的価値観並びに自己の文明と異なる文明に対する尊重を育成すること等を指向すべきことに同意する(第29条)。
ハ 少数民族に属し又は原住民である児童は,自己の文化を享有し,自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない(第30条)。
ニ 締約国は,休息及び余暇についての児童の権利並びに児童が遊び及びレクリエーションの活動を行い並びに文化的な生活及び芸術に参加する権利を認める
(第31条)。
搾取等からの児童の保護
6 児童の権利に関する条約(概要)等
イ 締約国は,児童が経済的な搾取から保護され及び危険となり若しくは教育の妨げとなり又は健康若しくは発達に有害となるおそれのある労働への従事から保護される権利を認める(第32条)。
ロ 締約国は,麻薬及び向精神薬の不正な使用からの児童の保護等のためのすべての適当な措置をとる(第33条)。
ハ 締約国は,あらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から児童を保護することを約束する(第34条)。
ニ 締約国は,児童の誘拐,売買又は取引を防止するためのすべての適当な措置をとる(第35条)。
ホ 締約国は,いずれかの面において児童の福祉を害する他のすべての形態の搾取から児童を保護する(第36条)。
自由を奪われた児童,刑法を犯したと申し立てられた児童等の取扱い及び武力紛争における児童の保護
イ 締約国は,いかなる児童も,拷問又は他の残虐な,非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないこと,不法に又は恣意的にその自由を奪われないこと等を確保する。締約国は,また,自由を奪われた児童が,人道的に,人間の固有の尊厳を尊重して,かつ,その年齢の者の必要を考慮した方法で取り扱われること,特に,成人とは分離されないことがその最善の利益であると認められない限り成人とは分離されること等を確保する
(第37条)。
ロ 締約国は,武力紛争の影響を受ける児童の保護及び養護を確保するためのすべての実行可能な措置をとる(第38条)。
ハ 締約国は,放置,搾取若しくは虐待,拷問若しくは他の残虐な,非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰又は武力紛争による被害者である児童の回
復及び社会復帰を促進するためのすべての適当な措置をとる(第39条)。
第 1
部
第 2
部
資料編
ニ 締約国は,刑法を犯したと申し立てられ,訴追され又は認定されたすべての児童が尊厳及び価値についての意識を促進させるような方法等で取り扱われる権利を認め る(第40条)。
3 条約と国内法及び他の国際法との関係
この条約のいかなる規定も,締約国の法律及び締約国について効力を有する国際法に含まれる規定であって,児童の権利の実現に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない
(第41条)。
4 条約の広報義務
締約国は,この条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する(第42条)。
5 委員会の設置等
m この条約において負う義務の履行の達成に関する締約国による進捗の状況を審査するため,児童の権利に関する委員会(以下
「委員会」という。)を設置する(第43条)。
Ж 締約国は,この条約において認められる権利の実現のためにとった措置等に関する報告を国連事務総長を通じて委員会に提出することを約束する(第44条)。
Ж 委員会は,専門機関及び国連児童基金その他の国連の機関からこの条約の実施についての報告を提出するよう要請することができる。また,委員会は,提案及び一般的な性格を有する勧告を行うことができる(第45条)。
6 最終条項
署名,批准,加入,効力発生,改正,留保等について規定している(第46条から第54条まで)。
(注)1989年の第44回国連総会において採択, 1990年9月2日発効。192か国が締結(2005年
4月末現在)。我が国は,1990年9月署名,
1994年3月国会の承認を得て,同年4月22日批准。同年5月22日から我が国について発効。
参考資料
(仮訳)
児童の権利委員会の最終見解:日本 2004年2月26日
第 1
部
第 2
部
資料編
CRC/C/15/Add.231(最終見解/コメント)
条約略称:CRC
児童の権利委員会
第35回会期
条約第44条に基づき
締約国から提出された報告の審査最終見解:日本
(訳注:本文中,特段の断りがない限り,条約は『児童の権利に関する条約』を,委員会は『児童の権利委員会』を指す。)
1.委員会は,日本の第二回定期報告(CRC/C/ 104/Add.2)を2004年1月28日の第942及び943回会合(CRC/C/SR.942-943参照)において審査し,2004年1 月3 0日の第946回会合
(CRC/C/SR.946)において,以下の最終見解を採択した。
A.序論
2.委員会は,締約国における児童の状況について明確な理解を与えた,締約国による包括的な定期報告及びその質問リスト(CRC/C/ Q/JAP/2)に対する詳細な書面回答の提出を歓迎する。更に委員会は,多くの省庁にまたがる代表団の構成に好意的に留意するとともに,率直な対話及び討議中になされた提案及び勧告への前向きな対応を歓迎する。
B.肯定的側面
3.委員会は,
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法(1999年)及び児童虐待防止法(2000年)の制定,
2001年の児童の商業的性的搾取に反対する国内行動計画の策定,
€ 2003年の青少年育成施策大綱の策定,について好意的に留意する。
4.委員会は,締約国が政府開発援助の絶対額において最大のドナー国であること,及びその援助の相当額が保健や教育を含む社会開発に配分されている点につき,好意的に留意する。
5.委員会は,2000年の就業が認められるための最低年齢に関するILO条約第138号及び, 2001年の最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する同条約第 182号の締約国による批准を歓迎する。
C.懸念の主要分野及び勧告
1.一般的実施措置委員会の前回勧告
6.委員会は,締約国の第一回報告(CRC/C/ 41/Add.1)を審査した結果作成された懸念及び勧告(1998年6月24日付CRC/C/15/Add.90)の幾つかが法的措置及び諸政策を通じて対処されたことについて留意する。しかしながら,特に,差別の禁止(パラ35),学校制度の過度に競争的な性格(パラ43),そしていじめを含む学校での暴力(パラ45)に関する勧告については,十分なフォローアップが行われなかった。委員会は,本文書において,これらの懸念及び勧告が繰り返されていることについて留意する。
7.委員会は,締約国に対し,第一回報告に関する最終見解に含められた勧告で未だに実施されていないものにつき対処し,また,第二回定期報告に関するこの最終見解に含まれる懸念リストに対処するために,あらゆる努力を行うよう求める。
解釈宣言及び留保
8.委員会は,締約国による第9条及び第10条に
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関する解釈宣言並びに第37条€に関する留保について懸念する。
9.1993年の世界人権会議で採択されたウィーン宣言及び行動計画(A/CONF.157/23)に従い,委員会は,締約国が条約に付している解釈宣言及び留保を撤回することを求める勧告を繰り返す。
法制度
10.委員会は,国内法制度が条約の原則及び規定を十分に反映していないこと(例えば本最終見解パラ22,24,31参照)及び,裁判所が条約を直接に援用できるのにもかかわらず,実際には行われていないことを懸念する。
11.委員会は,締約国が,その法制度について包括的に再検証すること,また,その制度が条約の原則及び規定並びにそこで記されている権利に基づくアプローチの整合を確保すべく必要な全ての措置をとることを勧告する。
調整及び国内行動計画
12.委員会は,内閣府における,児童及び青少年に関する諸施策の調整を行う権限を持つ青少年育成推進本部の設立及び,上述の青少年育成施策大綱の策定を留意する。しかしながら,委員会は,同大綱が包括的な国内行動計画ではないこと,及び同大綱の作成及び実施において児童及び市民社会の参加が不十分であったことを懸念する。
13.委員会は,締約国が,
市民社会や青少年組織との協力により,青少年育成施策大綱が権利に基づいたものであり,条約の全ての分野を包含し,かつ,国連子ども特別総会の成果文書である
「子どもにふさわしい世界」におけるコミットメントを考慮に入れたものであるよう確保すべく同大綱を強化すること,
青少年育成施策大綱が新たに生じる課題や問題に効果的に対処できるよう確実に
するため,市民社会や児童と共に絶えず検証していくこと,
を勧告する。
第 1
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第 2
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資料編
独立した監視
14.委員会は,条約の実施状況を監視するための全国的な独立した制度が存在しないことを懸念する。また同時に,委員会は,3つの県が地元でオンブズマンを設立したとの情報及び人権委員会設立に関する法案が次期国会に再提出されるとの情報を歓迎する。代表団によって提供された,法案では人権委員会が法務大臣に対し責任を負うことを想定しているとの情報に照らし,委員会は,その機関の独立性につき懸念を有する。加えて,計画されている人権委員会が,条約の実施の監視に関して明確な権限を付与されていない点につき懸念を有する。
15.児童の権利の保護及び促進における国内人権機構に関する一般コメント第2号(2002年)に照らし,委員会は,締約国が,
人権の保護及び促進のための国内機構の地位に関する原則(パリ原則,総会決議 48/134,別添)に従い,予定されている人権委員会が独立かつ効果的な機関を確保するよう,人権擁護法案を再検証すること,
人権委員会が,条約の実施を監視し,児童からの申し立てに対して,児童の立場にたって,迅速な手法で対応し,また,条約に基づく児童の権利の侵害に対する救済方法を提供するための明確な権限を付与されるよう,確保すること,
€ 都道府県における地方オンブズマンの設立を促進し,それらオンブズマンと人権委員会と調整するための制度を設立すること,
人権委員会と地方レベルのオンブズマンに適切な人材と財源を供給し,児童が利用しやすいものとするよう確保すること,
を勧告する。
参考資料
データ収集
16.委員会は,条約における全ての分野に関する
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資料編
0歳から18歳までの全ての児童についての包括的データの欠如について懸念を有し,また, 0歳から18歳までの児童に配分されている財源に関し情報が欠如している点について懸念する。
17.委員会は,締約国が,既存のデータ収集メカニズムを強化し,必要ならば,条約における全ての分野に関するデータを収集し,特に18歳未満の全ての者について年齢別に,性別,民族,先住民族別により分類するよう確保するために,新たな追加的なデータ収集メカニズムを設立することを勧告する。また,委員会は,締約国が,支出の影響,そしてコストを考慮して,様々な分野における児童のための各種サービスのアクセス度,質及び効果を評価するために,公共,民間,NGOの分野において,0歳から18歳までの児童のために使用されている国家予算額及びその比率を明らかにし,児童のための予算配分に関するデータを収集することを勧告する。
市民社会との協力
18.市民社会との協力関係が改善傾向にあるとの代表団からの情報に留意しつつも,委員会は,特に児童の権利の分野において,政府と NGOとの間の対話の欠如について懸念する。
19.委員会は,条約及び委員会の最終見解の実施において,締約国が,計画的に市民社会と協力することを勧告する。
ている権利に基づいたアプローチを十分に認識していないことについて懸念する。
21.委員会は,締約国が,
社会一般及び児童に対し,条約について,特に,児童が権利の主体である事実についての啓発キャンペーンを強化すること,
条約の原則及び規定に関する教育及び研修を,児童と共にまた児童のために働く全ての人々,特に,教師,裁判官,弁護士,国会議員,法執行者,公務員,地方自治体職員,児童を拘禁する施設で勤務する職員,心理学者やソーシャル・ワーカーを含む保健関係職員に対し引き続き,組織的に実施すること,
€ 意識啓発キャンペーン,研修,教育プログラム,児童の態度の変化,行動,扱いに対する影響について評価すること,
学校のカリキュラムの中に,人権教育,特に児童の権利に関する教育を盛り込むこと,
を勧告する。
2.児童の定義
22.委員会は,婚姻最低年齢が少年(18歳)と少女(16歳)とで異なること及び性交同意最低年齢(13歳)が低いことについて懸念する。
23.委員会は,締約国が,
少女の婚姻最低年齢を少年の最低年齢にまで引き上げること,
性交同意最低年齢を引き上げること,を勧告する。
3.一般原則
広報及び研修
20.委員会は,裁判官,教師,警察官,矯正職員,保護観察官及び入国管理局職員に対する研修が締約国により実施されていることを歓迎する。しかしながら,委員会は,児童や社会全般,児童と共に又は児童のために働いている職業従事者が,条約及びそこに記述され
差別の禁止
24.委員会は,法制度が婚外子を差別していること,および女児,障害のある児童,アメラジアン,韓国・朝鮮人,被差別部落民,アイヌや他の少数民族の子どもそして移民労働者の子どもに対する社会的差別が現存していることについて懸念する。
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25.委員会は,締約国が,婚外子に対するあらゆる差別,特に相続や市民権,出生登録における差別や「非嫡出」なる差別的用語を法律及び規制から撤廃するために法律を改正するよう勧告する。また,委員会は,締約国に対し,特に公教育や意識啓発キャンペーンを通じ,特に女児,障害のある児童,アメラジアン,韓国・朝鮮人,被差別部落民,アイヌその他の少数民族,移民労働者や難民の児童のために,社会的差別と闘い,基本的サービスへのアクセスを確保するよう,全ての必要で将来を予見した措置をとるよう勧告する。
26.委員会は,次回定期報告において,人種主義,人種差別,外国人排斥および関連する不寛容に反対する2001年世界会議のフォローアップのために締約国により行われた条約に関連する措置及び計画に関し,第29条についての一般コメント(教育の目的)を考慮しつつ,特定の情報を盛り込むことを要請する。
児童の意見の尊重
27.児童の意見の尊重に関し,締約国が改善に向けて努力している点につき留意しつつも,委員会は依然として,児童に対する社会の旧来の態度によって,彼らの意見の尊重が家庭,学校,その他の施設,そして社会全体において制限されている点について懸念する。
28.委員会は,締約国に対し,条約第12条に鑑み,
児童の意見の尊重を促進し,家庭,裁判所,行政組織,施設及び学校において,児童に影響を及ぼす全ての事項や政策策定への児童の参加を円滑にすること,又,児童がこの権利を認識するよう確保すること,
児童の意見の尊重に関する児童の権利及び児童に影響を及ぼす事項への児童の参加についての教育面の情報を,特に親,教育者,政府職員,司法官,そして社会全体に提供すること,
€ 児童の意見がどの程度政策に反映されて
いるか,及び政策や計画,そして児童自身への影響について定期的に検証すること,
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資料編
児童が,学校及びその他の教育機関,余暇その他の児童活動のための施設における施策を決定する理事会,委員会,及びその他の集団に定期的に参加することを確保すること,
を勧告する。
4.市民権及び自由表現及び集会の自由
29.委員会は,学校の内外で児童により行われる政治活動への制限について懸念する。委員会はまた,18歳未満の児童が集会に参加する際に両親の同意を必要とする点についても懸念する。
30.委員会は,締約国に対し,条約第13,14,15条の完全な実施を確保するため,学校内外で児童により行われる活動を制限する法律及び規則及び集会への参加について親の同意の必要とすることを再検証することを勧告する。
氏名及び国籍
31.委員会は,日本人の父と外国人の母の間に生まれた児童は,父親が出産前にその児童を認知しない限り日本の市民権を取得できず,それがしばしば,児童の無国籍化につながったことについて懸念する。また,委員会は,不法移民が彼らの児童の出生を登録することができず,それが無国籍につながったことについて懸念する。
32.委員会は,締約国に対し,日本で生まれた児童が無国籍にならないよう,条約第7条と適合させるべく国籍法及び関連法及び規則を改正することを勧告する。
プライバシー権
33.委員会は,児童のプライバシー権が完全に尊重されていないこと,特に,児童の持ち物に
参考資料
対する検査や施設職員が児童の私信に介入する点について懸念する。
34.委員会は,締約国に対し,
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資料編
私信の尊重や持ち物検査の点も含み,児童のプライバシー権が完全に実施されるよう確保すること,
児童養護施設の最低基準を条約第16条と適合するよう改正すること,
を勧告する。
体罰
35.委員会は,体罰が,学校において法律にて禁止されているのにもかかわらず,依然学校,施設,そして家庭において広く行われている点について懸念を以て留意する。
36.委員会は,締約国が,
施設及び家における体罰を禁止すること,
体罰に対する姿勢を変えるために,虐待の児童にもたらす悪影響についての啓発キャンペーンを実施し,また,こうした体罰の代替として,学校,施設,及び家庭において,積極的で非暴力的な方法のしつけを推進すること,そして
€ 施設や学校の児童のための虐待申し立てメカニズムが,効果的かつ児童に配慮した方法で,虐待の申し立てに対応するよう強化すること,
を勧告する。
5.家庭環境と代替的ケア児童虐待及び放置
37.委員会は,児童虐待の通報及び調査を改善するために執られた措置が,大きな成果を挙げたことを歓迎する。しかしながら,委員会は,
児童虐待の予防に関し,包括的かつ他分野に亘った戦略の欠如,
訴追件数の少なさ,
€ 被害者への回復及びカウンセリングサービ
スが増加する需要を満たさず不十分であること,
について懸念する。
38.委員会は,締約国に対し,
特に市民社会,xxxxx・xxxx,親そして児童と協力の上,児童虐待の防止のための多くの分野に亘る国家戦略を策定すること,
家庭での児童虐待の被害者に対する保護措置を改善するために法制度を再検証すること,
€ 児童相談所において,多くの分野に亘る方法で,心理学的カウンセリングや他の回復措置を被害者に提供する,訓練された職員の数を増加すること,
法執行機関職員,xxxxx・xxxx,児童相談所職員,検察官らに対し,児童に配慮した形でどのように申し立てを監視し,調査し,提訴するかについての研修を増やすこと,
を勧告する。
養子縁組
39.委員会は,国内及び国際養子縁組に関する監視および規制が不十分であること,そして,国内及び国際養子縁組に関するデータが極めて限られている点について懸念する。
40.委員会は,締約国が,
国内及び国際養子縁組の監視システムを強化すること,
1993年国家間にまたがる養子縁組に関する子の保護及び協力に関するハーグ条約を批准し,実施すること,
を求める。
子の奪取
41.委員会は,子の奪取に関する保護措置が十分でない点について懸念する。
42.委員会は,締約国に対し,1980年国際的な子
6 児童の権利に関する条約(概要)等
の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約を批准し,実施することを勧告する。
6.基本的保健及び福祉障害のある児童
43.委員会は,精神的な障害を含む障害のある児童が,条約で保障された権利を享受するにあたり,依然として不利な立場にあり,また,これら児童が教育制度及びその他の余暇・文化的活動に十分に統合されていない点について懸念する。
44.障害のある児童に関する1997年の委員会の一般討論日(CRC/C/66,補足V)及び国連障害者の機会均等化に関する標準規則(1993年12月20日付総会決議48/96)を考慮しつつ,委員会は,締約国が,
障害のある児童や関連の非政府組織と協力し,障害のある児童に影響を及ぼす全ての施策について,それらが障害のある児童のニーズに適合し,条約や障害者の機会均等化に関する標準規則に沿うものとなるよう見直しを進めること,
教育及び余暇・文化的活動において障害のある児童の統合をさらに促進すること,
€ 特殊教育や障害のある児童へのサービスへの人的財政的資源を増加させること,
を勧告する。
青少年の健康
45.委員会は,青少年の間にストレスや鬱を含む精神的感情的障害が多く見られること,及び青少年の精神面の健康について包括的な戦略が欠如していることについて懸念する。委員会はまた,青少年の間に性感染症が増加しつつあることについて懸念すると共に,青少年の薬物中毒についての締約国の懸念を共有する。委員会はまた,18歳未満の児童が医学的治療及びカウンセリングを受ける際に親の同意を必要とする点について懸念する。
46.委員会は,締約国に対し,
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資料編
青少年の健康に関し,適当な場合には予防措置も含む,精神面の健康,性と生殖面の健康,麻薬中毒及びその他の関連問題に対処する包括的政策を策定するために,青少年の健康に関する調査を実施すること,
18歳未満の児童が,親の同意なしでも医学的カウンセリングや情報にアクセスできるよう法制度を改正すること,
€ 青少年における精神的感情的障害に関する予防プログラムを策定,実施するとともに,教師,xxxxx・xxxx,及びその他の児童に関わる業種の人々に対し,こうした青少年の精神的な健康問題に児童に配慮した形で対処する方法について研修を実施すること,
を勧告する。
若者の自殺 47.委員会は,
急増する若者の自殺率の高い水準,
自殺や自殺未遂及びその原因に関する量的質的データの欠如,
€ 警察が若者の自殺問題に対処する主要機関の一つとして指定されている事実,
について極めて憂慮する。
48.委員会は,締約国が,児童相談所,xxxxx・xxxx,教師,保健従事者その他関連職業従事者との協力により若者の自殺及びその原因について詳細な調査を実施し,そこで得られた情報を,若者の自殺に関する全国的な行動計画の策定及び実施に活用することを勧告する。
7.教育・余暇そして文化的活動
49.委員会は,締約国の,教育制度を改革し,条約により適合させるための努力について留意する。しかしながら,
参考資料
教育制度の過度に競争的な性格が児童の心身の健全な発達に悪影響をもたらし,児童の可能性の最大限な発達を妨げること,
第 1
部
第 2
部
資料編
高等教育への入学の過度な競争が,公的な学校教育が私教育により補完されていることを意味し,それは貧困家庭の児童が受けることのできない教育であること,
€ 児童の問題や学校での争いに関する親と教師の間の連絡及び協力が極めて限られていること,
日本における外国人学校卒業生の大学入
使用する機会を拡充すること,
教科書がxxな見方を提供するよう,教科書の検定手続きを強化すること,
を勧告する。
8.特別な保護措置性的搾取及び人身取引
51.パラ3でも明記したように,委員会は,児童買春,児童ポルノ及び児童の保護に関する法律の採択(1999年)及び実施を歓迎する。しかしながら,委員会は,
学資格が広げられたのにもかかわらず,未 |
| 刑法が,男性による女性に対する行為とし | |
だに高等教育へのアクセスを拒否されてい | ての強姦罪の狭い定義を維持しているこ | ||
る者がいること, | と, | ||
| xxxの定時制学校は,特に中途退学者 |
| 性的搾取を受けた被害者の全てが適切な |
などに対し柔軟な教育機会を提供するも | 回復及び支援サービスへのアクセスを得 | ||
のであるが,それらが閉鎖されつつあるこ | ているわけではないこと, | ||
と, | € | 被害児童が犯罪者として取り扱われてい | |
| 少数民族の児童が彼ら自身の言語で教育 | るとの報告があること, | |
を受ける機会が極めて制限されているこ |
| 「援助交際」すなわち代償のある交際の実 | |
と, | 例があるとの報告があること, | ||
| 検定制度にも拘わらず,いくつかの歴史教 |
| 低い性交同意最低年齢,それが「援助交 |
科書が不完全乃至一方的な内容であるこ | 際」の実践に寄与し,児童の性的虐待の | ||
と, | 訴追を妨げうること, |
について懸念する。 50.委員会は,締約国が,
生徒,親及び関連するNGOの意見を考慮しつつ,全ての高校卒業生が等しく高等教育を受けられるよう,高い教育の質を維持しつつ,学校制度の競争的性格を軽減するためにカリキュラムを再検証すること,
生徒,親の協力により,学校における諸問題や争い,特にいじめを含む校内暴力に効果的に取り組むための手段をとること,
€ xxxに対し,定時制学校の閉鎖を再考し,代替的教育を拡充することを推奨すること,
少数民族の児童が自らの文化を享受し,自らの宗教を公言乃至実践し,自らの言語を
を懸念する。
52.委員会は,締約国が,
少年と少女との等しい保護を確保するために,性的搾取や虐待に関する法制度を改正すること,
児童相談所において,被害者に対して心理的カウンセリングや他の回復サービスを提供する訓練された職員を増加すること,
€ 法執行機関職員,xxxxx・xxxx,そして検察官に対し,申し立てを,児童に配慮した方法で,受け付け,監視し,調査し,訴追する方法を訓練すること,
未xx者相手の性的虐待や搾取に関連する法制度や,健康的なライフスタイルについての学校でのプログラムを含む教育プ
6 児童の権利に関する条約(概要)等
ログラムについての資料など,性的サービスの需要者及び供給者を対象にした予防措置を策定すること,そして
性交同意最低年齢を引き上げること,を勧告する。
少年司法
53.委員会による第一回政府報告審査以降,締約国が少年法の改正を実施した点につき留意しつつも,委員会は,改正の多くが条約の原則や規定,そして少年司法の国際的基準,特に刑事責任の最低年齢を16歳から14歳に引き下げたこと,そして司法前拘留が4週間から8週間に延長されたことについて懸念する。委員会は,成人として裁判にかけられ,懲役を宣告された未xxが増えつつあること,そして,未xxが終身刑を宣告されうることを懸念する。最後に,委員会は,疑わしい評判がある場所に頻繁に出入りするなどの問題ある態度をとる児童が少年犯罪者として扱われることについて懸念する。
54.委員会は,締約国が,
少年司法基準,特に条約第37,39,40条,また,少年司法運営に関する国連最低基準規則(北京ルールズ)や少年非行防止のための国連ガイドライン(リヤド・ガイドライン),また1995年の少年司法運営に関する,委員会の一般討論,などの完全な実施を確保すること,
未xx者の終身刑を禁止するよう法制度を改正すること,
€ 自由の剥奪の最終手段としてのみの使用を確保するために,司法前勾留を含む勾留措置の代替措置の使用を強化し,増加すること,
16歳以上の児童を家庭裁判所が成人刑事裁判所へ送致できることをその廃止の観点から再検証すること,
法令に違反する行為をした児童に対し,
その法的手続きの間,法的支援を提供すること,
第 1
部
第 2
部
資料編
問題のある態度をとる児童を犯罪者として取り扱わないよう確保すること,
リハビリ及び再統合プログラムを強化すること,
を勧告する。
9.児童の権利に関する条約選択議定書
55.委員会は,締約国が,児童の売買,児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書及び武力紛争の児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書を批准していないことに留意する。
56.委員会は,締約国に対し,児童の売買,児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書及び武力紛争の児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書を批准するよう勧告する。
10.文書の広報
57.条約第44条パラ6に照らし,委員会は,締約国による第二回定期報告及び書面での回答が,広く公衆一般に提供され,報告を,関連の議事要録及び委員会により採択された最終見解とともに出版することを検討するよう勧告する。このような文書は,政府,国会,及び関連のNGOを含む国民一般において,議論を促進し,条約を認識させ,そして条約の実施及び監視を促進するためにも広く配布されるべきである。
11.次回報告
58.委員会は,2006年5月21日までに,締約国から,
120ページ(CRC/C/118参照)を超えない第三回定期報告を受領することを期待する。
(了)