Contract
PFI標準契約(案)の諸論点
1 標準契約(案)と契約ガイドラインとの対応一覧 … 1
2 設計・建設に関する管理者等の関与について … 9
3 不可抗力による損害について … 13
4 管理者等の費用負担を伴う法令変更について … 16
4-2 任意解除と逸失利益について … 16-2
4-3 利益について … 16-8
4-4 公共用地の取得に伴う営業補償の考え方(国土交通省の例) … 16-9
4-5 国・公共団体の違法行為について …16-12
4-6 不可抗力について …16-13
4-7 天災等の基準 …16-15
4-8 事業者の帰責事由による契約解除の際の違約金等について …16-16
4-9 第三者に及ぼした損害について …16-23
4-10 協議が整わない場合について …16-31
4-11 違約金の相殺決済等について …16-35
4-12 遅延利息について …16-39
4-13 紛争解決手続きについて …16-45
4-14 中央合同庁舎第8号館整備等事業 事業契約書(案)の例 …16-46
4-15 金融(資金調達)・保険等に関する規定について …16-54
4-16 「通常妥当」について …16-66
4-17 違約金への充当について …16-69
5 PFI標準契約(案)に関する主要な論点(例) | … | 17 |
6-1 PFI事業契約書例等における条項の比較 | … | 31 |
6-2 設計、設計図書等の変更、完工検査に関する規定 | … | 39 |
6-3 不可抗力の定義に関する規定 | … | 68 |
6-4 不可抗力による損害額の費用負担の考え方 | … | 72 |
6-5 不可抗力による損害に関する規定 | … | 73 |
6-6 法令変更における法令の定義に関する規定 | … | 95 |
6-7 情報共有に関する規定 | … | 96 |
6-8 監視職員、事業代理人等に関する規定 | … | 113 |
・本資料は、「PFI標準契約(案)」の議論を進める際に想定される論点について、議論のための参考資料として事務局にて作成しているものです。
・資料中の意見・考え方を記述した部分は、あくまで議論の素材を提示するため主な意見等を例示したものであり、事務局の考え方を示したものではない点ご留意ください。
・また、本資料はあくまで条項例の作成作業のため、議論の材料を集めたものであり、これ自体を何らかの成果物とすることは意図しておりません。
・資料の内容につきましても、今後の総合部会における議論・指示を踏まえ必要に応じて
追加するとともに、不備な点などあれば適宜修正していくことを想定しております。
※1、4-15~17 以外については、条項例の修正は反映されておりません。
PFI標準契約(案)―施設整備型・サービス購入型を中心に―と契約ガイドラインとの対応一覧
ガイドライン | 比較 |
1 | 第1条 |
1-1 | 鏡 第2段落 |
1-2 | 鏡 第3段落 |
1-3 | 鏡 3 契約期間 |
1-4 | 第2条 |
1-5 | 第4条 |
1-6 | 第5条 ガイドライン1―6 3.第2段落「入札参加者提案と入札説明書等の業務要求水準書との適用関係については、入札参加者提案において提案されたサービス水準が入札説明書等のそれを上回る場合に限り、入札参加者提案が優先して適用される旨規定する」については、仮に業務要求水準が客観的な性能水準で規定されており、それを上回る提案を出された場合に提案が優先するという趣旨であれば、当然のことであるので、あえて規定する必要はないと考えられる。一方、業務要求水準書と入札参加者提案が細部において矛盾していることが設計協議などで判明した場合には、業務要求水準書を変更することなどにより明確化を図るべきと考えられ、あえてガイドライン1―6 3.第2段落に対応する条文は設けなかった。 |
1-7 基本的考え方第 3章 | 第8条 ・第2項で規定する融資及び担保設定についての管理者等との情報共有については、ガイドラインでは、6-6で守秘義務について規定するのみ。 |
1-8 | 国有地の貸し付けの方法は事業によって異なる部分が大きいため、PFI標準契約 (案)には盛り込まず。 |
1-9 | 第9条 |
1-10 | 第 15 条 ・ガイドラインにはPFI事業の内容及びPFI施設の規模に関する事項に関する説明については入っていないが、第 15 条第3項には、これらは管理者等の責任とする旨を規定した。 |
2-1-1 | 第 16 条 ・実施設計が選定事業に含まれるとしても、管理者等の確認を受けるべき範囲については事業によって異なるため、あらかじめ業務要求水準書で示す旨を(注2)で規定した。 ・第5項の業務要求水準書の修正については、「設計、建設に関する管理者等の関与について」参照。 ・事業日程が遅延した場合の扱いについては第 25 条参照。第 17 条 ・入札の競争参加者の資格確認の際に構成企業等について確認している場合には、 全部を委託することは認められないので、(注2)においてその旨を規定した。 |
2-1-2 基本的考え方第 1章第2節 | 第 12 条 ・ ガイドラインには入っていない(但し、土地については2-2-2参照)。 ・ 電波障害についてはガイドラインには記載がないが、入札前に解析を行うことは事業者側にとって大きな負担となるため、業務要求水準書に示した条件と実測が異なる場合には条件変更として措置することも考えられる旨を(注)において規定した。 第 13 条 ・2-1-2 2.では「管理者等の求めによる設計変更」として扱われているが、第 13 条では「業務要求水準の変更」という形となっている。この点については、「設計、建設に関する管理者等の関与について」参照。 ・2-1-2 2.第1段落では、「その際、設計変更の限界として、民間事業者の入札参加者提案を逸脱する設計変更、又は工期の変更を伴う変更を求めることはできない旨規定されることが通例」とされているが、PFI標準契約(案)では特に制限を設けていない。この点については、「設計、建設に関する管理者等の関与について」参照。・業務要求水準書で適用することとされているガイドライン、基準等であって行政手続法第二条第八号に規定する命令等に該当しないものの変更については、法令変更等ではなく、業務要求水準書の変更として取扱われる旨を(注2)で規定した。 ・第3項は、2-1-2 2.第2段落と同様、当事者間による協議において一定期間以内に合意が成立しない場合は、管理者等が必要があると認めるときは業務要求水準書、事業日程又はサービス対価を変更し選定事業者に通知することができるとしたが、これは当面の措置であり選定事業者に不服がある場合には紛争解決の手続に移行する旨を(注3)で規定した(第 14 条第3項、第 22 条第4項、第 26 条第 1項、第 40 条第4項、第 44 条第5項、第 54 条第1項及び第 55 条第3項において同じ。)。 第 14 条 |
・2-1-2 3.では「選定事業者の求めによる設計変更」として扱われているが、PFI標準契約(案)第 14 条では第 13 条に続き「業務要求水準の変更」という形となっている。 第 16 条 第 55 条 | |
2-2-1 | 第 18 条 ・2-2-1 1.第2文(「施設の施工方法その他施設を完成するために必要な一切の手段を自己の責任において定める」)に該当する文言は第 18 条については、工事により第三者に損害が生じた場合と併せて検討する必要があり、論点例[6]参照。 ・監視職員及び事業代理人について、(注2)で規定した。 |
2-2-2 | 第 10 条第 23 条 ・ガイドラインには入っていないが、業務要求水準書の変更(論点例[1][2]参照)を規定したことに伴い、事業用地等の一部が不用になることがありえるため挿入した。 第 29 条 |
2-2-3 | 第 11 条 ・2-2-3 2.では、「施設の建設工事のために必要な測量、地質調査等の調査が選定事業に含まれる場合、選定事業者は自らの責任と費用負担において、必要な調査を実施し、その不備及び誤謬等から生じる一切の責任及び増加費用を負う旨規定される。」とされているが、この部分については、選定事業者が業務要求水準書に従った調査を怠ったことにより生じた損害は選定事業者が負うという趣旨と解釈し、第 11 条第1項の「その責任及び費用負担において」という部分でカバーできると解釈した。 第 12 条 |
2-2-4 | 第 18 条第2項及び第3項 第3条 |
2-2-5 | 第 19 条 ・入札の競争参加者の資格確認の際に構成企業等について確認している場合には、全部を委託することは認められないので、(注2)においてその旨を規定した。 |
2-2-6 | 第 20 条 |
2-2-7 | 第 25 条 ・ 工期の変更については、引渡予定日の変更と密接に関連することから、第 25 条で引渡予定日の変更とまとめて規定している。 第 26 条 |
・設計着手予定日又は工事着手予定日の変更については、ガイドラインには入って いないが、PFI標準契約(案)では第 24 条、第 26 条において規定した。 | |
2-2-8 | 第 28 条 ・2-2-8 1.では、損害額について「選定事業者がそれを負担する旨規定される。」とされているが、PFI標準契約(案)では表現を整理し、「選定事業者がその損害賠償額を負担しなければならない。」とした。 |
2-2-9 | 第 22 条 ・PFI標準契約(案)では、不可抗力の場合とそうでない場合を併せて規定している。第 33 条 ・2-2-9 5.引渡予定日の変更については第 25 条参照。 ・2-2-9 4.第2段落では、「具体的には、損害の範囲を積極損害(施設、仮設物等のみを対象とした損害)のみとするか、あるいはこれらに関連する選定事業者の損害と増加費用一般まで含むか、という点を明確にすることが望ましい。」とされているが、この点については、「不可抗力による損害について」参照 ・2-2-9 6.の保険との関係については、論点例[7]参照第 27 条 ・2-2-9 3.第1段落最後で損害を最小限にする義務が規定されていること をふまえ、「臨機の措置」について規定した。 |
2-3-1 | 第 21 条 第4項の業務要求水準書の修正については、「設計、建設に関する管理者等の関与について」参照。 |
2-3-2 | 第 31 条第 32 条 ・第4項の業務要求水準書の修正については、「設計、建設に関する管理者等の関与 について」参照。 |
2-3-3 | 第 34 条 ・維持管理・運営業務の体制業務及び計画書の提出日については、ガイドラインには規定がないが、明確にする必要があるため、規定した。 |
2-4-1 | 第 33 条 |
2-4-2 | 第 25 条 |
2-4-3 | 第 35 条 ・2-4-3 6.では「選定事業者が、建設企業をして、本瑕疵担保債務を履行する旨を定めた保証書を管理者等に提出させる義務を負うことを規定することも考えられる」とされているが、これについては論点例[8]参照。 |
3-1 | 第 36 条 |
3-2 | 第 37 条 |
・入札の競争参加者の資格確認の際に構成企業等について確認している場合には、 全部を委託することは認められないので、(注)においてその旨を規定した。 | |
3-3 | 第 34 条 ・3-3 3.では、「当事者のいずれか一方が業務要求水準を満たす業務を履行するために必要かつ適切と合理的に判断した場合、随時、協議により業務別仕様書を変更できる旨規定される。」と規定されているが、誰がどのような手続で業務別仕様書を変更するのか、業務別仕様書と業務要求水準書との関係がどうなるのかという問題があり、これについては論点例[9]参照。 |
3-4 基本的考え方第 6章 | 第 38 条 ・3-4 5.では、施設利用者からのアンケート等にも言及されているが、これについては論点例[11]参照。 ・基本的考え方第6章に該当する部分など、詳細については別途規定することが想 定されている。 |
3-5 | 第 39 条 ・3-5 2.「近隣対策にかかる費用負担」については、論点例[5]参照。 ・3-5 3.では、「選定事業者はその損害を当該第三者に対して賠償する旨規定される。」とされているが、PFI標準契約(案)では表現を整理し、「選定事業者がその損害賠償額を負担しなければならない。」とした。 |
3-6 | 第 27 条第 40 条 第 41 条 ・なお、維持管理・運営期間中の第三者の責に帰すべき事由によるPFI施設の損害については、ガイドラインには規定がないが、PFI標準契約(案)では第 42 条、 第 43 条において規定した。 |
3-7 | 第 63 条 ・3-7 3.には、BTO方式の場合の修繕費用の負担については規定がないが、第 63 条第2項では規定した。 |
4-1 | 第 47 条第 48 条 第 49 条 |
4-2 | 4-1と同じ |
4-3 基本的考え方第 1章第4節 | 第 50 条(4-3 3.)第 52 条(4-3 4.)第 53 条(4-3 5.) ・基本的考え方では、より広い範囲でサービス対価の見直しを想定しているが、P FI標準契約(案)は建設維持管理を中心とする事業を想定しているため、ガイド |
ラインに沿った記載にとどめている。第 54 条 ・ガイドラインにはなし。本条については、紛争解決や解除権ともあわせて検討する必要がある。論点例[16]参照。 第 55 条 ・ガイドラインには設計変更についてのみ記載があるが(2-1-2 5.)、類似の状況は他の場合でも生じるために、範囲を拡大した。 | |
基本的考え方第 1章第3節 | 第 51 条 ・51 条では、(注2)で考え方を示している。条項の形にするには、さらに具体的な内容を検討する必要がある。 |
5-1 基本的考え方第 2章 | 第 56 条 ・ ・5-1 6.は、第 72 条第 57 条 ・論点例[13]参照 ・(注)の逸失利益については、論点例[14]参照 |
5-2 | 第 58 条 ・2項の損害賠償の範囲については、5-4 5.参照。第3段落では、「損害賠償の範囲に、選定事業者が既に支出した費用に加え、解除されなければ選定事業者が得たであろう利益を含むものと解されるものの、これに含める具体的範囲については(例えば、得べかりし利益のうち、解除時以降に管理者等が支払う予定であった 「サービス対価」の数ヶ月分とするなど)当事者間での検討が必要な点である。」とされているが、これについては、論点例[14]参照 |
5-3 基本的考え方第 5章 | 第 59 条 ・不可抗力による管理者等による解除の場合の費用負担について、5-3 2.第 5段落は、「管理者等が施設を買い受けることとし、かかる対価とその他選定事業者に生じる合理的費用を負担することが考えられる。その他合理的費用については、選定事業者が開業に要した費用及び解散に要した費用があげられる。」とされているが、第 59 条では、法令変更等の場合と合わせて、第2項で具体的に規定した。(法令変更) 第 44 条 ・(注)で規定する、契約時に法令変更等が予定され、又は予想される場合については当該法令変更等の取扱いについて別途規定する点については、ガイドラインには入っていない。 第 45 条 第 46 条 |
5-4 | 第 57 条第2項 第 58 条第2項・5-4 5.第3段落では、管理者帰責の解除について、「損害賠償の範囲に、選定事業者が既に支出した費用に加え、解除されなければ選定事業者が得たであろう利益を含むものと解されるものの、これに含める具体的範囲については(例えば、得べかりし利益のうち、解除時以降に管理者等が支払う予定であった 「サービス対価」の数ヶ月分とするなど)当事者間での検討が必要な点である。」とされているが、第 57 条(注)及び論点例[14]参照 第 60 条(5-4 3.) ・第3項に規定する違約金の充当・相殺については、5-5 6.参照第 61 条第 62条 ・完工後の解除時の修補の請求に関する費用の負担について、5-4 4.第1段落では、選定事業者の帰責事由による解除の場合については「選定事業者は管理者等に対し必要な修繕費を支払うこと、若しくは、必要な修繕を実施することを規定する必要がある。」とされているが、第 62 条では、第2項でその他の場合も含めて明記した。 ・ 第5項については、5-5 6.参照 |
5-5 | 第 56 条第2項及び第3項(5-5 5.) ・履行保証保険と違約金との調整については、5-5 5.第1段落では、「管理者等は、当該履行保証保険契約の保険金を受領した場合、これをもって違約金に充当する規定を設ける。」とされているが、第 56 条第3項では、「違約金に充当することができる。」とした。 第 60 条第3項(5-5 6.) ・管理者等の金銭債務と違約金との相殺については、5-5 6.第3段落では、「ここで、サービス対価請求債権が融資金融機関等に対し担保に供されている場合にも、管理者等が相殺により損害の賠償を受けるためには、サービス対価請求債権の譲渡担保等の後であっても、「サービス対価」の支払い債務と選定事業者が負担する損害賠償債務を対当額につき相殺できるとし、その協議の手続きをあらかじめ定めておくことなどが考えられる。」とされているが、第 60 条第3項では、「相殺することができる。」とした上で、(注)において、「第三項のサービス対価と違約金の相殺については、第七十二条の直接協定に規定する。」とした。 |
5-6 | 第 63 条 ・第2項に規定する修補の費用負担については、3-7 3.参照第 64 条 |
6-1 | 第 7 条 |
6-2 | 第 69 条 |
6-3 | 第 66 条 ・6-3 2.第3段落では、「国の債権の管理等に関する法律において、国の金銭債権の履行の遅延にかかる賠償金その他の徴収金を延滞金という。選定事業者が管理者等に対して支払う延滞金の額は、国の債権の管理等に関する法律施行令第37条第1項に規定する財務大臣が定める額(平成15年5月現在、年率5%)で算出した額を下回ってはならないと定められている。」とされているが、第 66 条第4項に規定する、選定事業者の責に帰すべき事由により引渡予定日にPFI施設を管理者等に引渡すことができない場合において管理者等が選定事業者に対して請求する損害金については、延滞金に含まれないと考えられるため、(注3)ではここで使う率の例として、同条第1項に合わせて政府契約の支払遅延防止等に関する法律第八条第一項の規定に基づく率を規定した。 |
6-4 | 第6条 ・6-4 2.第2段落では、「②・・・かかる保証証券又はその写しを速やかに管理者等に提出すること」とされているが、履行保証保険契約は第三者のためにする契約であることから、発行者が保険金を確保するに当たり保険契約が正式に締結していることを証する証拠書類を確保する必要があるため、第6条第1項では「寄託しなければならない。」とした。 |
6-5 | 第 67 条 ・6-5 5.は、「選定事業者が保険加入義務を履行していることを確認するため、選定事業者は保険契約の内容について管理者等の確認を受けてから保険に加入し、」とされているが、第 67 条は確認までは義務づけていない。 第 65 条 ・ガイドラインには規定がないが、PFI標準契約(案)では、選定事業者が第三者と締結する損害賠償額の予定等に関する規定を追加した。 |
6-6 基本的考え方第 3章 | 第 70 条 |
6-7 基本的考え方第 4章 | 第 68 条 ・論点例[16]参照 |
6-8 | (再掲のため不要) |
設計・建設に関する管理者等の関与について
1 契約ガイドラインの記述
(1) 設計図書の確認(契約ガイドライン2-1-1)
管理者等は、PFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案に適合していることを確認した上で、その旨通知する。
(2) 設計変更(契約ガイドライン2-1-2)
管理者等は、必要があると認める場合、設計変更を選定事業者に求める ことができる旨規定される。その際、設計変更の限界として、民間事業者の入札参加者提案を逸脱する設計変更、又は工期の変更を伴う変更を求めることはできない旨規定されることが通例である。場合によっては、工期の変更を伴う設計変更等に関し、管理者等が選定事業者に対し協議を求めることができる旨の規定が置かれる場合がある。
(3) 完工検査(契約ガイドライン2-3-2)
管理者等は、……施設がPFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者 提案に従い要求水準の内容を満たしていることを確認するための検査を速やかに実施し……。
(注1)入札説明書等とは、入札説明書及び業務要求水準書。業務要求水準書については、実施方針公表段階等に管理者等が業務要求水準書(案)を示し、質問回答を経て必要な修正を行い、入札公告の段階では、入札説明書の付属資料として業務要求水準書を、(案)を削除した文書として示し、その時点以降は基本的には変更しないとの取扱が行われている。また、選定事業者は当初の業務要求水準書に記載されている内容を前提として業務を受託していることに留意する必要がある。
2 各種契約等における取扱い
(1) 設計図書の確認については、概ね、契約ガイドラインに沿った条項が設けられている。
(2) 設計変更については、契約ガイドラインに沿った条項が設けられているもののほか、次の例がある。
① 契約ガイドラインに沿った設計変更の規定に加えて、必要な場合における設計業務内容の変更の規定を有するもの(国土交通省庁舎事業契約書例)。
② 契約ガイドラインに沿った設計変更の規定に加えて、入札提案の範囲を逸脱し又は工期の変更を伴う設計変更についての協議の規定を有するもの(文部科学省事業契約書例)。
③ 契約ガイドラインに沿った設計変更の規定に加えて、必要な場合における業務要求水準書の変更の規定及び併せて変更された業務要求水準書に沿った設計図書の変更について規定しているもの(東京国際空港エプ
ロン)。
④ 設計図書の変更について契約ガイドラインに沿った制約条件を付すことなく必要な場合に可能とするとともに、業務要求水準書の変更の規定を設けているもの(xx浄水場)。
⑤ 必要な場合における業務要求水準書の変更について規定し、併せて変更された業務要求水準書に沿った設計図書の変更について規定しているもの(東京税関xx出張所)。
(3) 完工検査については、契約ガイドラインに掲げられている事項のほか、設計図書との整合性を確認する契約等が多い(文部科学省事業契約書例、国土交通省庁舎事業契約書例、公務員宿舎朝霞住宅、東京国際空港エプロン、xx市新港学校給食センター、xx浄水場)。
(注2)選定事業者は、業務要求水準書等に反しない限り、自由に設計変更を行うことができるとの考え方に仮に立脚すれば、完工検査時には管理者等は業務要求水準書との整合性を確認するのみで、設計図書との整合性は確認しないこととなる。
3 検討を要する課題
(1) 設計変更の根拠
① 選定事業者が作成した設計図書が業務要求水準書に適合しない場合、管理者等は設計図書を業務要求水準書に適合させるように求めれば足るため、1(2)に掲げる管理者等が設計変更を求める事項は、業務要求水準書に明確な記載のない事項と考えられる。
② 管理者等が選定事業者に対して設計変更を求める場合について、その根拠をどこに求めるかについては、次の三通りの考え方が想定される。イ 業務要求水準書に位置付けのない事項について設計変更を求める場
合には、まず業務要求水準書の変更・追加を行う必要があるものとする考え方
ロ 契約時点以降の管理者等の要求について、「追加業務要求」として作成することを求める考え方
ハ 管理者等は、軽微な事項であれば、業務要求水準書等の根拠を要することなく、必要に応じて設計変更を求めることができるとする考え方
(注3)ハのように解することは、PFI事業の契約主義・透明性の観点から問題がないかどうか検討を要する。
(注4)なお、設計変更と業務要求水準書の変更の二つの手続を並行して設ける場合には、両者の関係について整理する必要がある。
(2) 設計変更の範囲
① 契約ガイドラインは、設計変更の限界として、民間事業者の入札参加
者提案を「逸脱する」設計変更を求めることはできない旨を記述している。
② 「逸脱」とは、「本筋からそれはずれること。また、そらしはずすこと。」
(広辞苑)。法令用語としては、権限、範囲、趣旨、目的、経路等について、「逸脱」の語が用いられている。基準や設計との関係では、合致しているかどうかは「適合」の語が用いられることが一般的である。合致しない場合には、「矛盾」の語が用いられるケースもある。なお、契約ガイドラインでは、「民間事業者の入札参加者提案を逸脱する設計変更」(契約ガイドライン2-1-2)、「施設の建設工事の施工状況が設計図書等を逸脱している」との表現が用いられている。
③ 「逸脱」の概念は、本筋と合致しているかどうかを問題とするものであり、本筋と合致しない程度を含むものではないと解される。このため、民間事業者の入札参加者提案が詳細な事項まで記載されているものであるとすれば、民間事業者の入札参加者提案を逸脱する設計変更を求めることはできない旨を契約に盛り込む場合、管理者等が設計変更を求めることができる範囲は相当に限定されることとなる。
(注5)管理者等が設計変更を求めることができる範囲を仮に限定する必要があるとすれば、軽微な設計変更に限定することが考えられる。軽微な設計変更としては、例えば、次のような事項が考えられる。
① 建築物の構造、工法、位置、断面等の変更で重要なもの以外のもの
② 建築物の設計変更で、延べ面積の○分の1を超える延べ面積の増減を伴わないもの
③ 施設整備に係るサービス対価の変更見込額が当初の施設整備に係るサービス対価の○%を超えないもの
4 条項例案の対応
条項例案は、3(1)②イのパターンで作成するとともに、業務要求水準書の変更については、特段の制約を設けてはいない。また、完工検査の段階では設計図書との整合性についても確認することとしている。
(注6)条項例案は、施設の設計、建設、維持・管理業務を主たる内容とした事業であってサービス購入型の事業を主として念頭に置いているため、業務要求水準書の変更を比較的幅広く許容する構成としている。選定事業者がリスクを負担する受益者負担型(いわゆる独立採算型)の事業、廃棄物処理事業等施設の運営を選定事業者が行う事業等については、管理者等の求めによる変更の範囲をより制限することが考えられる。
(注7)設計図書の修正・変更と費用負担の関係について、条項例案(第十五条第六項)は、次のとおりとしている。
① 設計図書の修正が当初の業務要求水準書に適合しないことを理由とする場合に
ついては、選定事業者の負担
② 当初の業務要求水準書を変更して設計図書の変更を求める場合については、管理者等の負担
不可抗力による損害について
○損害の範囲はどこまで含まれるか。
○1%の事業者負担は、どの範囲の損害について求めることが適当か。
○各損害の性質に応じて管理者等の負担をどこまで求めるか。
1 天災及び不可抗力の関係
(1) 天災等:暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、地すべり、落盤、火災、騒乱、暴動その他の自然的又は人為的な事象(条項例案第二十一条第一項)
(2) 不可抗力:天災等(業務要求水準書で基準を定めたものにあっては、当該基準を超えるものに限る。)で管理者等及び選定事業者双方の責に帰すことができないもの(条項例案第二十七条第一項)
(注1)条項例案第二十一条第一項
第二十一条 事業用地等の確保ができない等のため又は暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、地すべり、落盤、火災、騒乱、暴動その他の自然的又は人為的な事象(以下「天災等」という。)により工事目的物等に損害を生じ若しくは工事現場の状態が変動したため、選定事業者が工事を施工できないと認められるときは、選定事業者は、直ちに工事の中止内容及びその理由を管理者等に通知しなければならない。
(注2)条項例案第二十七条第一項
第二十七条 第二十九条第五項に規定する完工確認書の交付前に、天災等(業務要求水準書で基準を定めたものにあっては、当該基準を超えるものに限る。)で管理者等及び選定事業者双方の責に帰すことができないもの(以下「不可抗力」という。)により、工事目的物、仮設物又は工事現場に搬入済みの工事材料若しくは建設機械器具に損害が生じたときは、選定事業者は、その事実の発生後直ちにその状況を管理者等に通知しなければならない。
2 不可抗力による損害について、条項例案は、標準約款に掲げられている条項を参考として、1%の事業者負担が適用される損害の範囲を施設、設備等の物的損害を中心に構成している。一方、不可抗力による損害について、幅広くとらえて規定している契約等がある(国土交通省庁舎事業契約書例、東京税関xx出張所、東京国際空港エプロン、xx浄水場)。このうち、東京税関xx出張所の契約は、次の事項を損害として掲げている。
① 「施設整備期間」及び「維持管理・運営期間」の変更、延期及び短縮に伴う「本件工事費等」及び「維持管理・運営費」(金利及び物価変動を含む。)
② 原因、被害状況調査及び復旧方法検討等に必要な調査研究費用、再調査・設計及び設計変更等に伴う追加費用
③ 損害防止費用、損害軽減費用、応急処置費用
④ 損壊した施設及び設備の修復及び復旧費用、残存物及び土砂等の解体、撤去及び清掃費用、工事用機械及び設備、仮工事、仮設建物等の損傷・復旧費用
⑤ 「施設整備期間」及び「維持管理・運営期間」の変更に伴う各種契約条件変更及び解除に伴う追加費用(合理的な金融費用、違約金を含む。)
⑥ 「施設整備期間」及び「維持管理・運営期間」の変更、延期及び短縮に伴う「事業者」の間接損失及び出費(経常費、営業継続費用等。ただし、「事業者」の期待利益は除く。)
3 2に掲げられた損害について、条項例案との対応関係は、次のとおりとしている。
(1) 2①の期間の変更に伴う工事費等の損害については、工事の中止に伴うサービス対価の変更(第二十一条第五項)、維持管理・運営期間中のサービス対価の取扱(第三十七条第二項及び第三項)で対応している。
(注3)条項例案第二十一条第五項
5 管理者等は、第一項又は第三項の規定により工事の施工が一時中止された場合
(工事の施工の中止が選定事業者の責に帰すべき事由による場合を除く。)において必要があると認めるときは、選定事業者と協議し、引渡予定日若しくはサービス対価を変更し、又は選定事業者が工事の続行に備え工事現場を維持し若しくは労働者、建設機械器具等を保持するための費用その他の工事の施工の一時中止に伴う増加費用若しくは選定事業者の損害を負担するものとする。
(注4)条項例案第三十七条第二項及び第三項
2 選定事業者は、第一項の通知を行った日以降、履行不能の状況が継続する期間中、履行不能となった業務における履行義務を免れる。
3 管理者等は、前項に基づき履行義務を免れた期間に対応するサービス対価の支払いにおいて、選定事業者が履行義務を免れたことにより支出又は負担を免れた費用を控除することができる。
(2) 2②には設計変更等に伴う費用が掲げられている。不可抗力により事業用地等の条件に変動が生じた結果、設計変更が必要となるケースについては、第十二条第一項第四号及び第二項、第十三条第四項並びに第十五条第六項で、必要な費用は管理者等の負担と措置している。業務要求水準書の変更は必要ないが設計変更を行う必要があるケースがあるのか、その場合に管理者等の負担が必要かどうかについては、検討を要する。
(注5)条項例案第十二条第一項第四号及び第二項
第十二条 選定事業者は、事業を実施するに当たり、次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは、その旨を直ちに管理者等に通知しなければならない。 一・二 (略)
三 事業用地等の条件(形状、地質、湧水等の条件をいうものとし、埋蔵文化財、土壌汚染及び地中障害物に係る条件を含む。次号において同じ。)について、入札説明書等に示された自然的又は人為的な条件と実際の現場が一致しないこと
四 入札説明書等で明示されていない事業用地等の条件について、予期することができない特別の状態が生じたこと
2 前項各号に掲げる事実が確認された場合において、必要があると認めるときは、管理者等は、業務要求水準書の変更案の内容を選定事業者に通知して、業務要求水準書の変更の協議を請求しなければならない。
(注6)条項例案第十三条第四項
4 業務要求水準書の変更が行われた場合において、管理者等は、必要があると認めるときは、理由を示して設計図書又は第三十一条第一項の維持管理・運営業務の体制書若しくは計画書の変更を求める旨を選定事業者に通知することができる。
(注7)条項例案第十五条第六項
6 前項の規定に基づく設計図書の変更その他の必要な措置に要する費用は、第四項の通知を受けた場合においては選定事業者の負担とし、第十三条第四項の通知を受けた場合においては管理者等の負担とする。
(3) 2②の「原因、被害状況調査及び復旧方法検討等に必要な調査研究費用」については、通常の管理行為を超える費用が発生するかどうか検討が必要であるとともに、仮に管理者等が費用を負担するとすれば、調査の実施方法等に関する管理者等と選定事業者の調整の手続が必要となると考えられる。
(4) 2③の「損害防止費用、損害軽減費用、応急処置費用」については、臨機の措置の条項(第二十四条)において、通常の管理行為を超えるものとして選定事業者がサービス対価の範囲において負担することが適当でないと認められる部分について、管理者等が負担することとしている。
(注8)条項例案第二十四条
第二十四条 選定事業者は、災害防止等のため必要があると認めるときは、臨機の措置をとり、災害等による損害をできる限り少なくするよう努めなければならない。
2 前項の場合において、選定事業者は、そのとった措置の内容を管理者等に直ちに通知しなければならない。
3 選定事業者が第一項の規定により臨機の措置をとった場合において、当該措置に要した費用のうち、通常の管理行為を超えるものとして選定事業者がサービス対価の範囲において負担することが適当でないと認められる部分については、管理者等が負担する。
(5) 2④の施設、設備等を対象とした物的損害については、不可抗力による損害の条項(第二十七条第四項及び第五項並びに第三十八条第三項及び第四
項)において、標準約款の例を参考として、次の3要件を掲げている。
① 確認可能性:管理者等が負担する額は記録等により確認することができる額に限定している。
② 通常妥当性:損害の額は通常妥当と認められるものに限定することとし、「通常妥当」とは、例えば工事材料の場合、中等の品質という意味となる。
③ 現場搬入性:工事材料、建設機械器具については、工事現場に搬入されているものに限り、工事現場以外の工場、倉庫等にある工事材料、輸送途中の工事材料等については、選定事業者の負担としている。
(注9)条項例案第二十七条第四項及び第五項
4 管理者等は、前項の規定により選定事業者から損害による費用の負担の請求があったときは、当該損害の額(工事目的物、仮設物又は工事現場に搬入済みの工事材料若しくは建設機械器具であって、選定事業者の工事に関する記録等により確認することができるものに係る額に限る。)及び当該損害の取片付けに要する費用の額の合計額(以下本条において「損害合計額」という。)のうち施設整備に係るサービス対価(施設整備に係る資金調達に伴う利息相当額を除く。)の100分の1を超える額を負担しなければならない。
5 損害の額は、次の各号に掲げる損害につき、それぞれ当該各号に定めるところにより算定する。
一 工事目的物に関する損害
損害を受けた工事目的物に相応する額とし、残存価値がある場合にはその評価額を差し引いた額とする。
二 工事材料に関する損害
損害を受けた工事材料で通常妥当と認められるものに相応する額とし、残存価値がある場合にはその評価額を差し引いた額とする。
三 仮設物又は建設機械器具に関する損害
損害を受けた仮設物又は建設機械器具で通常妥当と認められるものについて、当該工事で償却することとしている償却費の額から損害を受けた時点における 工事目的物に相応する償却費の額を差し引いた額とする。
(注 10)条項例案第三十八条第三項及び第四項
3 管理者等は、前項の規定により選定事業者から損害による費用の負担の請求があったときは、当該損害の額(維持管理・運営業務を実施するためPFI施設で使用していた機械器具その他の物件であって、維持管理・運営業務の計画書等により確認することができるものに係る額に限る。)及び当該損害の取片付けに要する費用の額の合計額のうち、維持管理・運営に係るサービス対価の1年分の100分の1を超える額を負担しなければならない。
4 前項のPFI施設で使用していた機械器具その他の物件に関する損害の額は、損害を受けた物件で通常妥当と認められるものに相応する額とし、残存価値がある場合にはその評価額を差し引いた額とする。
(6) 2⑤、2⑥の期間の変更のうち工事の中止に伴う追加費用としては、例えば下請けとの契約解除に伴う損害賠償等が考えられる。工事の中止に伴う措置について、第二十一条第五項において、履行不能の理由が選定事業者の責に帰すべき事由による場合以外の場合について、増加費用・損害を管理者等が負担するものと措置している。
(注 11)条項例案第二十一条第五項
(注3)参照
(注 12)不可抗力により選定事業者と下請けの第三者との契約が解除された場合、当該契約の条項に基づき違約金又は損害賠償が発生し、選定事業者が下請けに対して違約金又は損害賠償を支払ったときは、その支払金は選定事業者の増加費用又は損害として管理者等に請求されることとなる。このため、選定事業者と下請けの第三者との契約関係について、管理者等がどのように関与することが適切かが問題となる。例えば、次のような対応が考えられる。
① 選定事業者と第三者との違約金等は、選定事業者と第三者とが契約を締結するに当たり、あらかじめ管理者等の承諾を得た条項に基づくものに限り、管理者等が支払うものとする対応
② 選定事業者と第三者との契約に基づく違約金等について管理者等が支払う額は、当該選定事業者と第三者との契約の契約価額の一定割合又は一定額を上限とする 対応(一定額としては、例えばサービス対価の一定日数分が考えられる。)
③ 選定事業者と第三者とが契約を締結したときは、当該契約を管理者等に提出するものとする対応
なお、①又は②を採用する場合であっても、例えば下請けの第三者が受けた損害が①又は②で定められた額を上回り、かつ、当該損害が現に生じた損害であって、通常妥当と認められるものであるときは、選定事業者はその差額を管理者等に請求することができるとすることも考えられる。
①を採用する場合の条項例を例示すると、次のとおりとなる。
(選定事業者が第三者と締結する損害賠償額の予定等)
第○条 第二十一条第五項、第二十三条第五項、第二十四条第三項、第五十二条第二項、第五十三条第二項及び第五十四条第二項の規定により管理者等が増加費用又は損害を負担し、又は賠償する場合において、当該増加費用又は損害が選定事業を行うため選定事業者が第三者と締結した契約により支払うべき損害賠償額の予定その他の契約終了時に支払うべき金銭債務に基づくものであるときは、管理者等が負担し、又は賠償する増加費用又は損害の額は、選定事業者と第三者との契約により支払うべき金銭債務の内容について管理者等があらかじめ承諾していたものに係る額に限る。ただし、当該第三者に生じた損害が現に生じた損害であって、通常妥当と認められるものであるときは、管理者等はその通常生ずべき損害の額を負担する。
(7) 2⑤、2⑥の期間の変更のうち維持管理・運営期間の変更については、第三十七条第二項及び第三項において、①選定事業者は、履行不能の状況が継続する期間中、履行不能となった業務における履行義務を免れる。②管理者等は、履行義務を免れた期間に対応するサービス対価の支払いにおいて、選定事業者が履行義務を免れたことにより支出又は負担を免れた費用を控除することができる、と措置している。
また、不可抗力に伴い契約解除した場合の損害賠償については、第五十四条第二項で、管理者等はその損害を賠償しなければならないと規定している。
(注 13)条項例案第三十七条第二項及び第三項
(注4)参照
管理者等の費用負担を伴う法令変更について
第三十九条 法令変更(次に掲げるものをいう。以下同じ。)により、この契約に従った業務の全部若しくは一部の履行ができなくなったとき若しくは履行ができなくなると予想されるとき又は費用が増加したとき若しくは費用が増加すると予想されるときは、選定事業者は、速やかに、その内容及び理由を管理者等に通知しなければならない。
一 法律、命令(告示を含む。)、条例又は規則(規定を含む。)の制定又は改廃
二 行政機関が定める審査基準、処分基準又は行政指導指針の制定又は改廃三 都市計画その他の計画の決定、変更又は廃止
○法律、政省令等が変更されて、新たな設備投資が必要となった。
○都市計画が変更されて、容積率が引下げられた。
○許認可の審査基準、処分基準又は行政指導指針が改正されて、新たな維持管理上の対応が必要となった。
○地方公共団体の照会に対して国の回答があり、その回答に沿うものとした場合、従来SPCが実施していた運用が事実上困難となった。
○裁判所の判決(当該PFI事業に係るものでないもの)の結果、従来SPCが実施していた運用が事実上困難となった。
○処分基準は明示されていないが、従来許認可を受けることができた案件について、許認可を受けることができなくなった。
○業務要求水準書が引用している行政機関が作成した性能基準が改正されたため管理者等が設計変更を求めた。
→性能基準が行政内部の指針の性格を有するものであるとすれば、業務要求水準書の変更として取扱うことが適当か。
※法令に関する定義の例(東京税関xx出張所(仮称)整備等事業)
「法令等」
法律、政令、省令、条例及び規則並びにこれらに基づく命令、行政指導及びガイドライン、裁判所の判決、決定、命令及び仲裁判断、並びにその他公的機関の定める全ての規定、判断、措置等をいう。
「法令等の変更等」
本契約の締結時点における既存の「法令等」の変更若しくは廃止又は新たな「法令等」の新設をいう。
任意解除と逸失利益について
1 公共工事の取扱
(1) 公共工事標準請負契約約款
第四十xx x(発注者)は、工事が完成するまでの間は、前条第1項の規定(請負者の責に帰すべき事由による解除)によるほか、必要があるときは、契約を解除することができる。
2 甲は、前項の規定により契約を解除したことにより乙(請負者)に損害を及ぼしたときは、その損害を賠償しなければならない。
(2) 公共工事標準請負契約約款の解説(建設業法研究会・xx出版社)
(第48条)第2項は、解除に伴う効果のうち損害賠償義務について規定したものである。任意解除は、請負者に不利益を与えないことが条件であり、損害を賠償しなければならないことは、民法第641条に規定されているとおりである。民法の解除においては、この損害賠償の範囲は、民 法第416条の相当因果関係の範囲内における積極的損害と消極的損害、すなわち、請負者が既に支出した費用と、解除されずに工事が完成したとすれば請負者が得たであろう利益の双方に及ぶとされている。そして、既に支出した費用の中には、請負者が工事のために購入した工事材料や雇用した労働者に要した費用で他に転用することができずに損失として残ったものも含むと解されている。
(注1)民法第416条、民法第641条
(損害賠償の範囲)
第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
(注文者による契約の解除)
第六百四十一条 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
2 民間の請負契約の解除に関する裁判例
(1) 東京高裁昭和60年5月28日判決
① 事案の概要
原告(注文者)は被告(請負者)との間で請負代金1億1千万円とするビル建設工事請負契約を締結したところ、風俗営業等取締法の定める距離制限により請負契約の目的としたビルにおいて個室付浴場業を営むことができないことが判明したため、原告が請負契約の解除を申入れ、
被告がこれを承諾したもの。損害額が争いとなった。
② 判決理由(抄)
イ 民法641条は、注文者に対し、請負人が仕事を完成する前である限り、何時でもその理由いかんを問わず請負契約を解除することを認めた規定であるが、右規定が注文者に対しかかる自由を認めた趣旨は、注文者に対して不要な仕事の完成を強制することは酷であり、かつ、社会経済的見地から見ても不相当である反面、請負人に損害を賠償すれば請負人にとってもなんら不利益はないから中途解約を否定する必要がないことにある。そうだとすれば、請負人は、注文者の側の一方 的事情により請負契約を工事中途で解除されるのであるから、これによる積極損害の賠償を請求しうることはもとより、工事完成により得べかりし利益をも損害として請求することができるものと解すべきである(但し、xxの見地上、請負人が中途解約により節約できた労力を他の仕事に転用しこれによって利益をあげたような場合には、請負人は右未完成部分の工事完成によって得べかりし利益から他の仕事によってあげた利益を控除した残額についてのみ損害賠償の請求をすることができるものと解すべきである。)。
ロ なお、商法第582条は、荷送人(注文者)等の損失補償の額を運送人(請負人)が「既ニ為シタル運送ノ割合ニ応スル運送賃、立替金及ヒ其処分ニ因リテ生シタル費用」に限定しているところ、右規定は運送の大量的、画一的であるという特質に基づき特に荷送人等の責任の軽減を図ったものと解される。
ハ [証拠略]によれば、被告(請負人)は、本件工事の完成により少 なくとも本件請負金額1億1千万円の5パーセントに当たる550万円の利益を得ることができたはずであることが認められる。被告は本件契約解除により爾後本件工事にかかる労務の提供を節約できたことが明らかであるが、右節約できた労務を利用してなんらかの利益を得たとの事実又は故意に利益を得ることを避けたとの事実は本件全証拠によっても認められず、かえって[証拠略]によれば、被告は本件工事完成により得べかりし利益に代わる利益をなんら得ていないことが認められる。よって、被告は原告に対し右得べかりし利益550万円について損害賠償の請求をすることができるというべきである。
(2) 名古屋高裁昭和63年9月29日判決
① 事案の概要
被控訴人(請負者)は控訴人(注文者)から賃貸住宅工事の設計及び監理を請け負い、報酬を300万円とすることを約した。控訴人は被控訴人に対して契約を解除する意思表示をしたところ、その時点で相当の仕事をしていたため損害を被ったものとして、被控訴人が控訴人に対して損害賠償を請求した。
② 判決理由(抄)
イ 控訴人は被控訴人に対して右解除によって被控訴人が被った損害を賠償すべきところ、右の損害は被控訴人と控訴人との間に契約が成立した後右の解除までの間に被控訴人において右契約履行のため支出した費用とその得べかりし利益の合計額になるべきものであるが、さらに損益相殺の法理の適用を考慮し、右合計額は結局、右解除の時まで に被控訴人がなした仕事に照応する請負代金(報酬)相当額をもってこれを算定することがxxに合致する。
ロ [証拠、認定等を勘案するとき、]被控訴人は、控訴人との本件マンションの建築の設計、監理契約が成立後控訴人の前記解除の意思表示がなされるまでの間に右契約のうち70パーセントに相当する仕事の 履行を終えていたものと認めるのが相当である。右によれば被控訴人の前記損害額は前記金300万円の7割に当る金210万円と算定されるべきである。
(注2)損益相殺の法理とは、請負人が支出した費用と得べかりし利益の合算額となる損害賠償の範囲について、既成工事部分の原状回復により回復された材料で転用、売却できるものがある場合や、請負人が請負契約が解除されたことにより仕事完成義務を免れたために費用の支出を節約できたり、未工事部分の仕事のために手配された労働力や材料を他に転用、売却することによってその対価を取得することができる場合は、これらを控除するとするもの。
3 地方公共団体の計画担保責任に関する裁判例最高裁第三小法廷昭和56年1月27日判決
(1) 事案の概要
株式会社である原告は製紙工場の建設を計画し、被告村に対し、工場の誘致及び村所有地を工場用地として譲渡することを陳情した。村長は工場建設に全面的に協力する旨を言明し、原告は製紙工場の建設に着手した。その後、xx選挙が行われ、企業誘致推進に反対の立場をとる者が新村長に就任した。工場の設置に関する村の協力が得られないことが明らかとなり、工場設置は不可能となったので、原告はやむを得ず工場建設を断念した。原告はxの協力拒否により5574万円余の積極的損害を被ったとして損害賠償請求したが、一・二審は原告の請求を排斥した。
(注3)原告と被告村の間には契約関係はない。
(2) 最高裁の判決
原告の請求を棄却した控訴審判決について、一部破棄差戻、一部却下
(3) 最高裁の判決理由(抄)
① 地方公共団体の施策を住民の意思に基づいて行うべきものとするいわゆる住民自治の原則は地方公共団体の組織及び運営に関する基本原則であり、また、地方公共団体のような行政主体が一定内容の将来にわたっ て継続すべき施策を決定した場合でも、右施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることがあることはもとより当然であって、地方公共団体は原則として右決定に拘束されるものではない。
② しかし、右決定が、単に一定内容の継続的な施策を定めるにとどまらず、特定の者に対して右施策に適合する特定内容の活動をすることを促す個別的、具体的な勧告ないし勧誘を伴うものであり、かつ、その活動が相当長期にわたる当該施策の継続を前提としてはじめてこれに投入する資金又は労力に相応する効果を生じうる性質のものである場合には、右特定の者は、右施策が右活動の基盤として維持されるものと信頼し、これを前提として右の活動ないしその準備活動に入るのが通常である。このような状況のもとでは、たとえ右勧告ないし勧誘に基づいてその者と当該地方公共団体との間に右施策の維持を内容とする契約が締結されたものとは認められない場合であっても、右のように密接な交渉を持つに至った当事者間の関係を規律すべきxxxxの原則に照らし、その施策の変更にあたってはかかる信頼に対して法的保護が与えられなければならないものというべきである。
③ すなわち、右施策が変更されることにより、前記の勧告等に動機づけられて前記のような活動に入った者がその信頼に反して所期の活動を妨げられ、社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合に、地方公共団体において右損害を補償するなどの代償的措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び、地方公共団体の不法行為責任を生ぜしめるものといわなければならない。
4 世界都市博覧会の中止と事後対策
(1) 世界都市博覧会については、平成5年に計画が決定され多数の企業、団体が参加して準備が進められていたが、平成7年にxxxx知事が当選し、世界都市博覧会の中止を決定した。
(2) xxxは、3の最高裁判決の趣旨に沿い、補償基準等を作成し、総額約
340億円の補償を実施した。
(3) 補償基準等の中には、次の趣旨が盛り込まれている。
① 補償の相手方は、都市博の開催を前提として(財)東京フロンティア協会と直接契約をし、又は直接協会から出展等の依頼若しくは指示を受けて事業を行った者をいう。
② 補償は財産的損害に限り、精神的損害は対象としない。財産的損害のうち、原則として積極的損害を補償の対象とし、利息は付さない。いわゆる逸失利益等を含む消極的損害は、補償の対象としない。
③ ②の積極的損害とは、都市博開催を前提に行った工事等の費用など補償請求者が自己の財産から積極的に支払い又は支払いを義務付けられたことにより生じた損害をいう。
5 契約条項の構成
(1) 公共工事標準請負契約約款では、損害の負担について、次のとおり、二種類の条文を使い分けている。
① 「乙(請負者)に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない」と規定する条項(第十八条第五項(条件変更等)、第十九条(設計変更)及び第二十条第三項(工事の中止))。この条項の場合には、消極的損害(逸失利益)は含まず、積極的損害を対象としているものと解される。
② 「乙(請負者)に損害を及ぼしたときは、その損害を賠償しなければならない」と規定する条項(第四十八条第二項(任意解除)及び第四十九条第二項(発注者の責に帰すべき事由等による解除))。この条項の場合には、1(2)のとおり、積極的損害と消極的損害の双方に及ぶと解される。
(2) 条項例案では、公共工事標準請負契約約款の例を踏まえ、次のとおり整理している。
① 第十三条第三項(業務要求水準書の変更)及び第二十一条第五項(工事の中止)では、「選定事業者に損害を及ぼしたときは、管理者等は必要な費用を負担しなければならない」等と規定し、積極的損害を対象としている。
② 第五十二条第二項(任意解除)、第五十三条第二項(管理者等の責に帰すべき事由等による解除)及び第五十四条第二項(不可抗力又は法令変更による解除)では、「選定事業者に損害を及ぼしたときは、その損害を賠償しなければならない」等と規定し、積極的損害及び消極的損害の双方を対象としている。
(注4)公共工事標準請負契約約款では、不可抗力による解除には特別の条項が設けられていないため、不可抗力を原因として解除が必要な場合には、任意解除(第四十八条)の規定で対応することとなる。
(注5)条項例案第十三条第三項、第二十一条第五項、第五十二条第二項、第五十三条第二項、第五十四条第二項
第十三条第三項 第一項の通知の日から○日を経過しても前項の協議が整わない場
合において、管理者等は、必要があると認めるときは、業務要求水準書、事業日程又はサービス対価を変更し、選定事業者に通知することができる。この場合において、選定事業者に損害を及ぼしたときは、管理者等は必要な費用を負担しなければならない。ただし、選定事業者が損害の発生を防止する努力を怠った場合においては、この限りでない。
第二十一条第五項 管理者等は、第一項又は第三項の規定により工事の施工が一時中止された場合(工事の施工の中止が選定事業者の責に帰すべき事由による場合を除く。)において必要があると認めるときは、選定事業者と協議し、引渡予定日若しくはサービス対価を変更し、又は選定事業者が工事の続行に備え工事現場を維持し若しくは労働者、建設機械器具等を保持するための費用その他の工事の施工の一時中止に伴う増加費用若しくは選定事業者の損害を負担するものとする。
第五十二条第二項 管理者等は、前項の規定により契約を解除したことにより選定事業者に損害を及ぼしたときは、その損害を賠償しなければならない。
第五十三条第二項 選定事業者は、前項の規定によりこの契約を解除した場合において、損害があるときは、その損害の賠償を管理者等に請求することができる。
第五十四条第二項 管理者等は、前項の規定によりこの契約を解除したことにより選定事業者に損害を及ぼしたときは、その損害を賠償しなければならない。
利益について
①収入の形態
サービス対価の一部として管理者等より支払われるもの
受益者負担型の事業として利用者から収入を得るもの
維持管理・運営段階に関するもの
②期間・タイミング
建設段階に関するもの
既にコストが発生しているもの
(構成企業等への支払含む)
コストが未発生のもの
既に利益として実現済みのもの
今後の実現を見込むもの
(逸失利益)
イメージ図(サービス購入型の場合)
●施設整備費相当分
施設整備費相当分のサービス対価
(利益相当分) |
既に実施した施設整備に対応する部分 施設整備を実施
していない部分
逸失利益
(注)施設整備段階の中途で、契約が解除された場合が想定されており、
通常は、施設の整備途中で管理者等がサービス対価を支払うことはない。
●維持管理費相当分
既に実施し 支払済の部分
まだ実施されていない部分
a年 b年 c年
d年 e年 f 年
・・・・・・・
各年分のサービス対価
(利益相当分)
逸失利益
公共用地の取得に伴う営業補償の考え方(国土交通省の例)
○国土交通省の基準によると、同省が施行する土地収用法その他の法律により、土地等を収用し、又は使用することができる事業に必要な土地等の取得若しくは使用に伴い、通常営業の継続が不能となると認められるときの収益の補償は、「従来の営業収益(又は営業所得)の2年(被補償者が高齢であること等により円滑な転業が特に困難と認められる場合においては3年)分の範囲内で適正に定めた額」とされている。
第3節 営業補償
(営業廃止の補償)
第47条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業の継続が不能となると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
一 免許を受けた営業等の営業の権利等が資産とは独立に取引される慣習があるものについては、その正常な取引価格
二 機械器具等の資産、商品、仕掛品等の売却損その他資本に関して通常生ずる損失額
三 従業員を解雇するため必要となる解雇予告手当相当額、転業が相当と認められる場合において従業員を継続して雇用する必要があるときにおける転業に通常必要とする期間中の休業手当相当額その他労働に関して通常生ずる損失額
四 転業に通常必要とする期間中の従前の収益相当額(個人営業の場合においては、従前の所得相当額)
2 前項の場合において、解雇する従業員に対しては第68条の規定による離職者補償を行うものとし、事業主に対する退職手当補償は行わないものとする。
国土交通省の公共用地の取得に伴う損失補償基準(平成 13年1月6 日国土交通省訓令第 76 号)(抜粋)
国土交通省の公共用地の取得に伴う損失補償基準の運用方針(平成 15年8月5日
国総国調第 57 号)(抜粋)
第32 基準第47条(営業廃止の補償)は、次により処理する。
1~3 (略)
4 解雇予告手当相当額の補償額は、解雇することとなる従業員の平均賃金の30日分以上とする。この補償及びその他の営業補償における平均賃金とは、労働基準法
(昭和22年法律第49号)第12条に規定する平均賃金を標準とし、同条に規定する平均賃金以外のものでも、通常賃金の一部と考えられる家族手当等は、その内容を調査の上平均賃金に算入できるものとする。
5 同条第1項第3号に規定する転業に通常必要とする期間は、雇主が従来の営業を廃止して新たな営業を開始するために通常必要とする期間であって6か月ないし
1年とし、この間の休業手当相当額は、この期間に対応する平均賃金の100分の
80を標準として当該平均賃金の100分の60から100分の100までの範囲内で適正に定めた額とする。
6 同条第1項第4号に規定する転業に通常必要とする期間中の従前の収益相当額
(個人営業の場合においては所得相当額)は、営業地の地理的条件、営業の内容、被補償者の個人的事情等を考慮して、従来の営業収益(又は営業所得)の2年(被補償者が高齢であること等により円滑な転業が特に困難と認められる場合におい ては3年)分の範囲内で適正に定めた額とする。この場合において法人営業における従前の収益相当額及び個人営業における従前の所得相当額は、売上高から必要経費を控除した額とし、個人営業の場合には必要経費中に自家労働の評価額を含まないものとする。
(参考)
土地収用法(昭和 26年6月9 日法律第 219 号)(抜粋)
(通常受ける損失の補償)
第88条 第71条、第72条、第74条、第75条、第77条、第80条及び第8
0条の2に規定する損失の補償の外、離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し、又は使用することに因つて土地所有者又は関係人が通常受ける損失は、補償しなければならない。
(損失の補償に関する細目)
第88条の2 第71条、第72条、第74条、第75条、第77条、第80条、第
80条の2及び前条の規定の適用に関し必要な事項の細目は、政令で定める。
※第71条、第72条 : 土地等に対する補償
※第74条 | : | 残地補償 |
※第75条 | : | 工事の費用の補償 |
※第77条 | : | 移転料の補償 |
※第80条 | : | 物件の補償 |
※第80条の2 : 原状回復の困難な使用の補償
土地収用法第88条の2の細目等を定める政令(平成 14年7月5 日政令第 248 号)
(抜粋)
(営業の廃止に伴う損失の補償)
第20条 土地等の収用又は使用に伴い、営業(農業及び漁業を含む。以下同じ。)の継続が通常不能となるものと認められるときは、次に掲げる額を補償するものとする。
一 独立した資産として取引される慣習のある営業の権利その他の営業に関する無形の資産については、その正常な取引価格
二 機械器具、農具、漁具、商品、仕掛品等の売却損その他資産に関して通常生ずる損失額
三 従業員を解雇するため必要となる解雇予告手当(労働基準法(昭和22年法律第49号)第20条の規定により使用者が支払うべき平均賃金をいう。)相当額、転業が相当であり、かつ、従業員を継続して雇用する必要があるものと認められる場合における転業に通常必要とする期間中の休業手当(同法第26条の規定により使用者が支払うべき手当をいう。次条第1項第1号において同じ。)相当額その他労働に関して通常生ずる損失額
四 転業に通常必要とする期間中の従前の収益(個人営業の場合においては、従前 の所得。次条において同じ。)相当額
国・公共団体の違法行為について
○ 国・公共団体が契約関係にある私人との間で違法な行為をした場合、契約上の責任のほか、不法行為責任の追及が可能となり、国家賠償法に基づいて損害賠償を請求することができる。
民法(明治二十九年四月二十七日法律第八十九号)(抜粋)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、
これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
国家賠償法(昭和二十二年十月二十七日法律第百二十五号)(抜粋)
第xx x又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
○ 不法行為責任の場合には、損害には積極的損害及び消極的損害(逸失利益)が含まれ、消極的損害についても一般に広く認められている。
【解説】
損害には積極的なそれ(不法行為があったため被害者が支出した損害)と消極的なそれ
(逸失利益。得べかりし利益の喪失ともいう)とがあるが、賠償すべき損害は両者の全部に及ぶ。
(出典:「民法② 債権法」 xxx、xxx、xxxx 勁草書房 2003 年)
※ 交通事故の場合、逸失利益は、原則として給与所得者は現実の収入額を基礎とし、幼児・学生等については原則として平均賃金額を基礎とし、平均的な就労可能期間を勘案して算定されている。