この書面の位置づけ 書面の形態・呼称など 交付が求められるようになった時期 生命保険各社が任意に作成するものただし、生命保険商品に関する適正表示ガイドライン( 生命保険協会)で、優良性や保険料を表示する場合の必要事項、文字の大きさ“、最良“”業界初”などの特定用語の使用基準などが例示されている 書面の形態については、商品により、保険商品パンフレットの中、あるいは保険設計書の中に、「契約概要」のページを設けている場合もある 任意 位置づけや記載事項の枠...
第 3 章
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
1 契約としての生命保険
1. 基本的な契約関係
2. 生命保険契約までの流れ
3. 生命保険の契約にあたって、生命保険会社が交付する説明・確認書類
2 生命保険の販売チャネル
1. 生命保険募集人の役割
2. 多様化が進む販売制度
3. 生命保険の販売に関する禁止行為
4. 生命保険会社の損害賠償責任
3 申込みと承諾
1. 申込み前の手続き
2. 申込みの手続き
3. 生命保険会社による契約の承諾
【参考】契約内容登録制度・契約内容照会制度について
4. 保障が始まる時期
・53
・53
・54
・56
・57
・59
・59
・60
・60
・60
・62
・63
4 クーリング・オフ制度
1. 生命保険のクーリング・オフ
2. クーリング・オフが法令上適用されない主な場合
3. クーリング・オフの手続き
4. クーリング・オフの申し出の記入例
【参考】クーリング・オフ制度に関する保険業法・政令等(抜粋)
【参考】特定早期解約
・65
・66
・66
・66
・67
・68
5 告知義務
1. 告知義務
2. 告知のしかた
3. いつ告知が必要か
6 告知義務違反
1. 告知義務違反による解除
2. 生命保険会社が契約を解除できない場合
【参考】告知関連の約款の記載(例)
・68
・69
・69
・69
・70
・71
51
第3章
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
1
契約としての生命保険
1. 基本的な契約関係
契約者(保険契約者) | 生命保険会社と保険契約を結び、契約上のさまざまな権利と保険料の払込みなどの義務を持つ人 |
被保険者 | その人の生死、病気・ケガなどが保険の対象となる人 |
受取人 | 保険金などを受け取るよう、契約で指定された人 ※入院給付金等は被保険者が受取人 |
第3章
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
2. 生命保険契約までの流れ
意向把握関係
意向確認関係
重要事項説明関係
ⓕ意向確認書面
契約者控
②申込手続
申込書関係
⑧申込書
契約者控
媒介
告知関係
ⓗ告知書
被保険者控または
ⓗ診査(告知書)
被保険者控
報告
保険料関係
ⓘ第一回保険料充当金
ⓙ第一回保険料充当金領収証
③保険会社の承諾
⑦保険証券
媒介
ⓐ保険商品パンフレット(契約概要)
ⓑ保険設計書(契約概要)
ⓒ注意喚起情報
(転換の場合の重要事項説明書面含む)
ⓓ契約締結前交付書面
(特定保険の場合のみ)
ⓔご契約のxxx・(定款・)約款
<乗合代理店の場合>
●比較可能な商品の一覧の提示
●特定の商品の提示・推奨を行う理由の説明
生命保険会社各社それぞれの方法で顧客の意向を把握
具体的には以下が考えられる
①アンケート等によって事前に把握
②保険募集人が意向を予め推定 等
生
命 保 険
会
社
営業職員
代理店等
営業職員
代理店等
保険会社
指定の医師
営業職員
代理店等
x 約 者 等
①申込み前の手続き(例)
保険金受取人の指定は生命保険会社ごとに所定の範囲を定めています 。同 姓パートナーを受取人に指定することを可能にしてい
る会社もあります。
ⓐ~ⓔは必ず交付さ
れるもの
近年、申込み等の手続きをインターネットやタブレット端末で行う会社があります(ペーパーレス化。タブレット端末を用いる場合、不慣れな高齢者の告知
等は従来通り書面による方法を選択できます)。
その場合でも、告知書の被保険者控は、インターネットや、郵送される書類で確認できます。
申込手続は契約者が行いますが、被保険者が別人の場合は、
①申込書被保険者自
署欄
参照 155ページ
②診査、告知書の記入を、被保険者が行います。
参照 177ページ
※ 保険法施行後の契約については、被保険者の同意がなければその効力を生じないとされています( 第38条、67条)。
3. 生命保険の契約にあたって、生命保険会社が交付する説明・確認書類
第3章
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
生命保険の契約にあたって、生命保険会社は、契約申込書・告知書・保険料領収証などの「契約手続き上の書面」以外に、申込者等に「保険商品や保険契約について重要な事項を説明し理解いただくための書面」を作成、交付しています。その主なものは次のとおりです。
生命保険会社から交付される書類 | 主な内容 |
ⓐ保険商品パンフレット | モデル例などを用いて生命保険商品のしくみや特徴を示したもの |
ⓑ保険設計書 | 申込者ごとに個別情報に基づき作成するもの(保障設計書、見積書、提案書など会社によって呼称は異なる) |
ⓐ・ⓑ「契約概要」 | 生命保険商品の契約検討段階で、「申込者が保険商品の内容を理解するために必要な情報」をコンパクトにまとめたもの |
ⓒ「注意喚起情報」 【見本/157、165ページ参照】 | クーリング・オフ制度、告知義務、責任開始期、保険金等が支払われない場合など「生命保険会社が申込者に対して注意喚起すべき情報」を、契約の検討段階でも確認しやすいよう、保険商品パンフレット等とは別にコンパクトにまとめたもの |
(契約転換の場合) 転換を利用する場合の重要事項説明書面 | 契約の転換(=いわゆる生命保険の下取り)制度を利用する場合に、既契約と新契約、それぞれの種類・保険金額・保険期間・保険料内訳等を項目ごとに対比した表や、特約の中途付加など転換以外の方法があることなどの重要な事項を説明する書面 |
(投資性の強い保険の場合) ⓓ「契約締結前交付書面」 | 投資性の強い保険・年金(=「特定保険契約」、35ページ参照)についての「契約概要」と「注意喚起情報」のこと |
ⓔ「約款」 | 保険制度の技術的な事項について専門知識を有する生命保険会社があらかじめ標準的な契約条項を作成したもの |
ⓔ「ご契約のxxx」 | 契約の内容について、一般消費者にもわかりやすくするため保険約款の重要な部分をxxに解説し、また、契約にあたって熟知しておくべき事項をまとめたもの |
ⓕ「意向確認書面」 【見本/153、154ページ参照】 | 契約の申込みを行おうとする保険商品が申込者のニーズに合致しているものかどうかを、契約締結前に申込者が最終的に確認する機会を確保するために、その保険商品がニーズに合致していることを確認する書面 |
◆「保険審議会」(旧大蔵省に設置されたxx大臣の諮問機関)、監督指針(金融庁)と生命保険協会のガイドラインは17ページ参照。
◆上記のほか、金融庁販売勧誘検討チーム(金融庁に設けられた有識者からなる「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」)の提言により作成されたものとして、「生命保険の契約にあたっての手引(購入者手引)」があります。
この書面の位置づけ | 書面の形態・呼称など | 交付が求められるようになった時期 |
生命保険各社が任意に作成するもの ただし、生命保険商品に関する適正表示ガイドライン (生命保険協会)で、優良性や保険料を表示する場合の必要事項、文字の大きさ“、最良“”業界初”などの特定用語の使用基準などが例示されている | 書面の形態については、商品により、保険商品パンフレットの中、あるいは保険設計書の中に、「契約概要」のページを設けている場合もある | 任意 |
位置づけや記載事項の枠組みは監督指針(金融庁)で示されていたが、平成26年の保険業法改正により、新たに情報提供義務(第294条)が規定され「契約概要」「注意喚起情報」に記載されている事項の説明が義務化された。記載の仕方等は契約概要作成ガイドライン(生命保険協会)に例示されている | 平成18年4月 (平成18年9月末まで経過措置あり) これに先立って「重要事項説明書」の交付は平成13年4月 | |
「契約概要」と同じく、位置づけや記載事項の枠組みは監督指針(金融庁)で示されていたが、平成26年の保険業法改正により、新たに情報提供義務(第294条)が規定され「契約概要」「注意喚起情報」に記載されている事項の説明が義務化された。記載の仕方等は契約概要作成ガイドライン(生命保険協会)に例示されている | 会社により、転換や顧客情報の取扱いなどの記載とあわせた書面とし、呼称は「重要事項説明書(注意喚起情報)」「重要なお知らせ(注意喚起情報)」などとされている場合もある。また、「ご契約のxxx」と合冊としている場合もある | |
「保険業法(第294条の2)」「保険業法施行規則(第 227条の2第3項第9号及び第234条の21の2第1項第7号)」に基づき作成するもの。具体的な記載内容・方法は監督指針(金融庁)で示されている | 保険設計書・契約概要の中に「転換比較表」として掲載している場合もある【見本/172ページ参照】 | 平成12年2月 |
保険業法第300条の2にて準用される「金融商品取引法(第37条の3)」に基づき交付する書面。記載内容・方法の枠組みは監督指針(金融庁)で示され、細目は契約締結前交付書面作成ガイドライン(生命保険協会)に例示されている | 特定保険契約については、「契約概要」と「注意喚起情報」を、区分したうえで合冊としているケースが多くなっている | 平成19年9月 |
保険法では、契約者等に不利な約款の定めの部分を無効とする旨を規定しているものがある。約款の制定や変更に際しては、監督官庁による認可が必要 | 呼称は、「ご契約のxxx・(定款・)約 款 」と され 、冊 子 以 外にも CD-ROMでの交付や生命保険会社のホームページからのダウンロードによる交付も増えてきている | 契約成立後交付されていたが、事前交付は昭和52年10月 |
「保険審議会」の答申をふまえ、作成されているもの 昭和52年10月より約款と合冊とし、契約の申込み時までに交付する | 昭和38年4月 | |
平成19年4月より位置づけや記載事項の枠組みは監督指針(金融庁)で示されており、意向確認の機会は設けられていた。平成26年の保険業法改正により、新たに意向把握義務(第294条の2)が規定され生命保険募集に際して顧客の意向を把握し、契約締結時に顧客の意向と当該保険契約の内容が合致しているかを「意向確認書面」にて確認する機会の提供を行うという一連のプロセスが求められた。 | 呼称は「意向確認書」など 意向確認書面は、保険会社等で保管するとともに、契約者にその控えを遅滞なく交付することになっている。契約者控の交付は、意向確認時に手交されるほか、保険証券等に同封されて郵送される場合もある | 平成19年4月 (平成19年9月末まで経過措置あり) |
第3章
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
この「生命保険の契約にあたっての手引(購入者手引)」は、「業界共通のものとして消費者が保険商品を購入するにあたって留意すべき事項」をまとめたもので、生命保険文化センターのホームページに掲載されています。なお、生命保険文化センターのホームページには、購入者手引の対になるものとして、保険金等の請求・受取りにあたっての基本的な事項をまとめた「保険金・給付金の請求から受取りまでの手引」も掲載されています。
2
生命保険の販売チャネル
1. 生命保険募集人の役割
①生命保険の募集(販売)を行うことができる者
保険業法第275条に次のように定められています。
●内閣総理大臣(金融庁長官)の登録を受けた「生命保険募集人」
第3章
●内閣総理大臣(金融庁長官)の登録を受けた「保険仲立人」またはその役員、使用人
②生命保険募集人とは
雇用関係
営業職員
募集
(販売)
保 険 会 社
x 約 者 等
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
生命保険会社の営業職員や募集代理店などのほか、生命保険会社の募集代理店となっている銀行等において、生命保険募集人として登録を受けている従業員(行員)も含みます。
募集代理店 | ||
銀行等代理店 雇用関係 | ||
従業員(行員) |
委任または請負契約関係
③生命保険募集人の権限
※太字が生命保険募集人。
生命保険募集人は、保険業法上「生命保険会社のために保険契約の締結の代理または媒介を行う者」とされており、保険募集に際しその権限が代理なのか媒介なのかを申込書やパンフレット等で顧客に対し明示することが義務付けられています。
代 理 | 媒 介 | |
契約締結権 | ○ | ×(契約締結権は保険会社) |
告知受領権 | ○ | ×(口頭で健康状態を告げても告知したことにならない) |
第一回保険料充当x受領権 | ○ | ○ |
実態としては、ほとんどの生命保険募集人は、代理権を持たず、媒介の権限のみを有しています。 同様にほとんどの生命保険の募集代理店も「代理店」ではありますが、代理権を持たず、媒介の権限
のみを有しています。
●保険仲立人には契約を締結する権限
や告知を受領する
乗合代理店
参照 58ページ
ます。
険仲立人とは異なり
扱う乗合代理店は保
社の保険商品を取り
●複数の生命保険会
ありません。
することはほとんど
おり、個人を対象と
険商品を取り扱って
企業を対象とする保
企業を顧客として、
●実態としては、主に
権限はありません。
ます。
Ⅴ-5-3)が課されてい
条、金融庁の監督指針
務( 保険業法第299
とされ、法的に誠実義
かにして助言するもの
保険商品を理由を明ら
商品から顧客に適した
生命保険会社の保険
中立の立場で複数の
保険募集人と異なり、
ーカー)とは
保険仲立人(保険ブロ
2. 多様化が進む販売制度
第3章
生命保険の販売やサービス活動は、生命保険会社に所属する営業職員を中心に行われてきましたが、次の❷~❺の販売方法も増加しています。
❶営業職員制度 | 営業職員は生命保険会社と「雇用関係」にあり、保険商品の販売やサービス活動を行う形態 |
❷募集代理店制度 (銀行窓販、乗合代理店は後述) | 募集代理店は生命保険会社と「委任または請負契約関係」にあり、このうち法人代理店は一般に他の事業を営んでおり、そこに生命保険募集人として登録された使用人がいる場合が一般的 |
➌店頭販売 | 生命保険会社の営業窓口や特設の「生命保険コーナー」を通じて直接顧客に生命保険の販売を行う方式 |
❹通信販売 | 新聞や雑誌、ダイレクトメール等を媒体として保険商品を広告し、顧客から直接保険購入の申込みや資料の請求を受ける方式 |
❺インターネット通販 | 顧客がインターネットを通じて資料請求や申込みを行うほか、契約の成立まで完了できる会社もある。近年ではインターネットを主たる販売チャネルとする会社も現れてきている |
住宅関連信用保険 財形保険
個人年金保険 一時払終身
一時払養老
定期保険
平準払終身保険医療・介護保険
H13年4月~
H14年10月~ H1 保険等
等
7年12月~ H19年12月22日~
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
銀行等による保険商品の取扱い(銀行窓販)
保険の「銀行窓販」は平成13年度に解禁となり、取扱い商品もxx拡大されて平成19年12月からはすべての生命保険商品を取り扱うことができるよう規制が緩和されています。銀行窓販のみで取り扱われる商品や、他のチャネルで販売される場合と異なる商品名で取り扱われているケースなども存在します。
一方で、契約者保護を図るために、生命保険会社には以下のような対応が求められています。
●一定の保険商品について、事業性資金の融資先に対して、 〈銀行等が販売できる生命保険商品の範囲の変遷〉
手数料を得て保険募集を行わないことを確保するための措置を講じること。
●契約後の保全業務について銀行等と保険会社の業務分担を明確にして顧客に明示すること。
●銀行等が保険募集指針に以下の事項を定め、顧客に周知するための必要な措置を講じること(契約が結ばれると、以後の照会や手続きは、契約者が生命保険会社に対して行うのが一般的)。
①引受保険会社の明示や保険契約に係るリスクの所在についての説明を行うこと(契約が結ばれると、以後の照会や手続きは、契約者が生命保険会社に対して行うのが一般的)。
②顧客の自主的な判断による選択を可能とするための情報の提供を行うこと。
③違法な保険募集で損害を与えた場合には、銀行等に募集代理店としての販売責任があること。など。
●預金や資金借入等の非公開金融情報を保険募集に係る業務に利用する場合、同意の有効期間や撤回方法、利用の範囲等を具体的に明示するとともに、事前に顧客の同意を得なければ保険契約の締結の代理又は媒介ができないようにするための必要な措置を講じること。
●信用供与の条件とした保険募集(抱き合わせ募集)やその他「自己の取引上の優越的な地位」を不当に利用した保険募集は行わないこと(優越的地位の不当利用禁止)。
●一定の保険商品について、融資申込者(非事業性融資者は除く)への保険募集は行わないこと。 など。
また、銀行等は、顧客に対し預貯金でないことや預金保険の対象とはならないことなどについて書面を交付して説明するなど、保険契約と預金等との誤認を防止する態勢を整備することが求められていましたが、平成 24年4月からは誤認防止に係る説明を理解した旨を顧客から書面により確認しその記録を残すこと、など一層の慎重な対応が求められています。
テレマーケティング代理店のように電話で新規の保険募集をする場合、トラブルの未然防止・早期発見に資する取組みを具体的に定め、適切な教育・管
理・指導を行うことが求められています。
(監督指針
Ⅱ-4-4-1-1(- 5 )
銀行窓販の商品例
参照 42ページ
銀行窓販に関連する金融機関の相談窓口
参照 12ページ
乗合代理店による保険商品の取扱い
近年、商品や価格について調べ、比較検討したうえで商品を購入する傾向が高まっています。そうした消費者にとって、乗合代理店は複数の保険会社の商品を検討できるメリットがあります。
また、ショッピングセンターなど、人の往来の多い場所に店舗を構えていることも多く、気軽に入れて相談しやすい面もあります。こうした背景から、「乗合代理店」は増加傾向にありますが、概要は次のとおりです。
<法的位置づけ・業務内容>
第3章
●保険業法上の一社専属制(乗合禁止)には例外規定があり、複数の保険会社の商品を取り扱うことができます。例外規定の適用には、代理店内に教育責任者を配置するなど契約者等の保護に欠けるおそれがない一定の要件を満たすことが必要です。
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
●乗合代理店は保険募集を目的として、複数の生命保険会社と委託関係にあります。
●生命保険会社20社以上、損害保険会社を含めて30社以上などの保険商品を、数百店におよぶ店舗網で取り扱う大規模な乗合代理店もあります。
●複数の保険会社の商品を比較推奨販売するなど独自の募集プロセスを構築している乗合代理店もあります。
●「xx・中立」を標榜する乗合代理店もあります。しかし法令上は、保険会社から独立した立場で募集行為を行う保険仲立人とは異なり、保険会社から委託を受けて保険募集を行う立場にあり、「xx・中立」な保険募集が担保されているわけではありません。
<乗合代理店の教育体制>
●乗合代理店に所属する生命保険募集人も、業界共通教育制度による研修や、生命保険募集人としての登録、コンプライアンス等に関する継続教育制度の履修を要する点で生命保険会社に所属する営業職員や一社専属制の保険代理店等の場合と変わりありません。
●幅広い商品知識の必要性や、別の保険会社への個人情報流出の防止、不当な乗換募集の防止などの観点から、乗合代理店内に教育責任者、保険募集関連の業務を的確・xxに行うための業務管理責任者を配置する義務があります。
<乗合代理店で契約する際の留意すべき点>
●複数の保険会社の商品を取り扱っている乗合代理店も、すべての保険会社の商品を販売しているわけではありません。また、乗合代理店に所属する生命保険募集人も、保険販売を通して収入を得ている点では営業職員等と同じです。他のチャネルにおいて保険契約を締結する場合と同じように、保険商品等について、様々な手段で情報収集し、検討することが必要です。
●既契約を見直す場合、安易に解約して契約し直すのではなく、既契約を活用する方法と比較し十分に検討する必要があります。
保険募集人の体制整備義務
●これまで法令上の体制整備義務は保険会社に対して課されており、代理店等の体制整備は保険会社の教育・管理・指導の下で行う仕組みとなっていました。これに関し、平成26年の保険業法改正に伴い、「保険募集人(代理店を含む)」に対しても、基本的に、業務の規模・特性に応じた体制整備を義務付ける規制が新たに設けられました。体制整備義務が新たに保険募集人に課されることで、「保険会社に課されている体制整備」に準じた対応を行うことが必要になり、具体的には以下の対応が求められます。
①顧客への重要事項説明等保険募集の業務の適切な運営を確保するための社内規則等の策定、および、保険募集人に対する同社内規則等に基づいた適正な業務運営を確保するための研修の実施
②個人情報取扱いに関する社内規則の策定
③保険募集の業務(保険募集の業務に密接に関連する業務を含む)を委託する場合の当該委託業務の的確な遂行を確保するための委託先管理
個人代理店や小規模の法人代理店は、所属保険会社の指導・監督に従い適切かつ主体的に業務を実施する体制を整備することで足ります。
保険募集人は生命保
険会社1社の保険募集
参照 85ページ
障内容の変更」
既契約を活用した「保
参照 88ページ
乗換募集
参照 56ページ
保険仲立人
います。
282条に定められて
例外規定を含めて第
険業法上のルールで、
のみに携わるというx
x社専属制とは、生命
3. 生命保険の販売に関する禁止行為
第3章
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
保険会社・保険会社の役員・生命保険募集人・募集代理店・保険仲立人等は保険契約の締結又は保険募集(販売)に関し、保険業法や保険業法施行規則により次の行為が禁止されています。
保険業法第300条 | |
契約者又は被保険者に対して、虚偽のことを告げ、又は保険契約の契約条項のうち契約者又は被保険者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項を告げない行為 | |
契約者又は被保険者が保険会社に対して重要な事項につき虚偽のことを告げることを勧める行為 | |
契約者又は被保険者が保険会社に対して重要な事実を告げるのを妨げ、又は告げないことを勧める行為 | |
契約者又は被保険者に対して、不利益となるべき事実を告げずに、すでに成立している保険契約を消滅させて新たな保険契約の申込みをさせ、又は新たな保険契約の申込みをさせてすでに成立している保険契約を消滅させる行為 | |
保険料の割引き、割戻しその他特別の利益の提供を約し、又は提供する行為 | |
契約者、被保険者または不特定の者に対して、契約内容について他の保険契約と比較した事項であって誤解させるおそれのあるものを告げ、または表示する行為 | |
契約者、被保険者または不特定の者に対して、将来における契約者配当、社員に対する剰余金の分配、その他将来における金額が不確実な事項について断定的な判断を示し、または確実であると誤解させるおそれのあることを告げ、または表示する行為 | |
保険業法施行規則第234条 | |
契約者又は被保険者に対して、威迫し、または業務上の地位等を不当に利用して保険契約の申込みをさせ、またはすでに成立している保険契約を消滅させる行為 | |
契約者、被保険者または不特定の者に対して、保険契約等に関する事項であってその判断に影響するものにつき、誤解させるおそれのあることを告げ、表示する行為 |
(注)条文の一部を省略しているところがあり、原文どおりではありません。
4. 生命保険会社の損害賠償責任
生命保険募集人等を使用する生命保険会社についても、保険業法により生命保険募集人等が契約者に加えた損害に対する損害賠償責任を負うこととなっています。
所属保険会社等は、保険募集人が保険募集について契約者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、生命保険会社が生命保険募集人の雇用・委託につき相当の注意をし、かつ、生命保険募集人の行う保険募集につき契約者に加えた損害の発生の防止に努めたときなどには、生命保険会社の賠償責任は免除される。
保険業法第283条(抜粋)
3
申込みと承諾
1. 申込み前の手続き
第3章
平成26年保険業法改正に伴い、生命保険会社は生命保険契約を締結する際に申込者(これから契約者になろうとする者)の意向(ニーズ)を把握した上で、保険商品の提案を行い、申込者の意向(ニーズ)に合致しているかどうかを、契約締結前に確認することが求められています。また、契約者は申込手続の前に、ⓕ「意向確認書面」への確認、自署が必要となります。
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
2. 申込みの手続き
3つの要件 | 留意点 |
⑧申込書への署名 | ●契約者、被保険者自身による署名 ●「契約概要」・「注意喚起情報」・「ご契約のxxx・(定款・)約款」等の重要書類受領書への署名 |
ⓗ告知 | ●「告知書」にて、保険会社の質問する重要事項に、正確にありのままを記入 ●保険会社の指定する医師に口頭で質問されたことに答える |
ⓘ第一回保険料 充当金の払込み | ●現金、振込、デビットカード、クレジットカード等生命保険会社の指定する方法から選択し、第一回保険料充当金を払い込む ●ⓙ第一回保険料充当金領収証が交付される |
3. 生命保険会社による契約の承諾
①危険選択とは
生命保険会社が、保険制度の維持・契約者間のxx性の維持を目的として、告知内容などをもとに各申込内容の「危険」度を測定し、契約を承諾するかどうかを決定することです。
●選択の基準となる「危険」とは
危険の種類 | 危険選択の材料 | |
身体的危険 | 身体・健康上の危険で、現在の健康状態・傷病歴・身体の障害状態などに関するもの | 告知書、医師の診査、人間ドックや勤務先の健康診断等の検査結果など |
環境的危険 | 生活環境全般に関する危険で、現在の職業や仕事の内容などに関するもの | 申込書など |
道徳的危険 (モラルリスク) | 生命保険を利用して不当な利益を得ようとする心理状態 | 契約者・被保険者・受取人の関係の妥当性、保険金・給付金の金額の妥当性、申込みの動機、その他を総合的に判断 |
振込み等の場合、第一回保険料充当金領収証は交付されない場
合もあります。
参照 63ページ
始期について
保障が始まる責任開
参照 53ページ
交付される時期
記号ⓕなどの書面が
ます(以下同様)。
社と不要な会社があり
もに押印が必要な会
の書面には、自署とと
意向確認書など各種
②契約承諾の種類
無条件承諾 | ●申込みどおりの内容で契約が成立 |
申込内容 変更のうえ承諾 | ●申込内容の変更(保険金や給付金の減額、保険期間の短縮、特約の除外など)を条件に承諾 ●契約者が申込内容の変更を書面で承諾すれば変更した内容で契約は成 立 |
特別条件※付承諾 | ●生命保険会社が特別条件を付けて承諾 ●契約者が特別条件の内容について承諾書に署名すれば契約は成立 |
不承諾 | ●契約は成立せず、第一回保険料充当金は返還 |
第3章
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
※特別条件について
特別保険料領収法 | 通常に適用される保険料よりも割増しされた保険料(割増保険料)を領収する方法 |
保険金削減支払法 | 保険金等の支払いを一定期間・一定割合で削減する方法 |
特定疾病・部位不担保法 | 特定の疾病・身体の特定の部位を入院等の保障対象から除外する方法 |
特定障害状態不担保法 | 眼球および眼球付属器に生じた疾病を原因とした高度障害保険金等の支払いおよび保険料払込免除を不担保とする方法 |
ねんましほう 年増法 | 実際の年齢に一定の年齢を加算し、契約年齢を引き上げて保険料率をあてはめる方法 |
<特別条件の例>
逓増性危険 |
年数の経過とともに危険の程度が次第に増加するもの。特別保険料領収法が適用される。 (例:血圧異常、尿異常等) |
恒常性危険 |
危険の程度が一定で、年数がたってもほとんど変わらないもの。特別保険料領収法が適用される。 (例:両眼視力障害、両耳聴力障害、高度言語障害等) |
逓減性危険 |
年数の経過とともに危険の程度が減少するもの。保険金削減支払法が適用される。会社によっては、一定期間特別保険料領収法を適用することがある。 (例:外傷、胃潰瘍、十二指腸潰瘍等) |
※現在病気中(治療中)の人、過去(5年以内)に大病にかかった場合などの高度な危険については、契約を延期、または不承諾となる場合があります。
(例:がん、肝硬変、心臓病等)
③保険証券の送付
保険会社が契約を承諾し、契約が成立すると、重要な事項を記載した書面(保険証券)が送付されます。保険証券は契約内容を証する書面であり、書面自体に金銭的な価値があるわけではありません。保険証券を紛失した場合、契約者が所定の手続きをすると再発行されます。
※保険証券の代わりに契約内容通知書やインターネットで契約内容を確認できる契約者カードを発行する会社もあります。
特別条件付契約は更新・払済保険への変更・延長( 定期)保険への変更等ができない場合があります。
更新
参照 47ページ
払済保険への変更・延長( 定期)保険への変更
参照 89ページ
保険証券の見本
参照 183ページ
【参考】契約内容登録制度・契約内容照会制度について
生命保険会社および全国共済農業協同組合連合会は、保険契約等の引受けの判断あるいは保険金、給付金等の支払いの判断の参考とすることを目的として、「契約内容登録制度」(全国共済農業協同組合連合会との間では「契約内容照会制度」といいます。)に基づき、各生命保険会社等の保険契約等に関する下記の登録事項を共同して利用しています。
第3章
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
「契約内容登録制度・契約内容照会制度」では、各生命保険会社等は、保険契約等の申込みがあった場合、生命保険協会に、保険契約等に関する下記の登録事項の全部または一部を登録します。ただし、保険契約等を引受けできなかったときは、その登録事項は消去されます。生命保険協会に登録された情報は、同じ被保険者について保険契約等の申込みがあった場合または保険金等の請求があった場合、生命保険協会から各生命保険会社等に提供され、各生命保険会社等において、保険契約等の引受けまたはこれらの保険金等の支払いの判断の参考とするために利用されることがあります。
なお、登録の期間ならびに引受けおよび支払いの判断の参考とする期間は、契約日等から5年間(被保険者が15歳未満の保険契約等については、「契約日等から5年間」と「契約日等から被保険者が15歳に到達するまでの期間」のいずれか長い期間)とします。
各生命保険会社等はこの制度により知り得た内容を、保険契約等の引受けおよびこれらの保険金等の支払いの判断の参考とする以外に用いることはありません。
また、各生命保険会社等は、この制度により知り得た内容を他に公開しません。
【登録事項】
(1)契約者および被保険者の氏名、生年月日、性別ならびに住所(市・区・郡までとします。)
(2)死亡保険金額および災害死亡保険金額
(3)入院給付金の種類および日額
(4)契約日、復活日、増額日および特約の中途付加日
(5)取扱会社名
その他、正確な情報の把握のため、契約および申込みの状態に関して相互に照会することがあります。
「契約内容登録制度・契約内容照会制度」における情報の管理については、保険契約等ごとに当該保険契約等の保険者である各生命保険会社等が責任を負います。契約者または被保険者は、諸手続に従い、登録事項の開示を求め、その内容が事実と相違している場合には、訂正を申し出ることができます。また、個人情報の保護に関する法律に違反して登録事項が取り扱われている場合、諸手続に従い、利用停止あるいは第三者への提供の停止を求めることができます。各手続きの詳細については、各生命保険会社等に問い合わせることになります。
たがる照会制度として、支払査定時照会制度があります。
参照 133ページ
生命保険会社等をま
これらの制度とは別に、
4. 保障が始まる時期
①責任開始期
●生命保険会社が契約上の責任を開始する時期を責任開始期といいます。
●①申込み、②告知あるいは診査、③第一回保険料充当金の払込み、のいずれか遅い時から契約上の責任が開始されます。
第3章
責任開始期(例)
承諾
▼
Ⓐ
▲申込み ▲告知
(診査)
責任開始
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
▲第一回保険料充当金払込み
承諾
▼
Ⓑ 責任開始
▲申込み ▲第一回保険料充当金払込み
▲告知
(診査)
承諾
▼
Ⓒ 責任開始
▲申込み ▲告知
(診査)
▲第一回保険料充当金払込み
●近年、第一回保険料充当金の払込みを口座振替とする生命保険会社もあり、その場合は口座からの引落しを待たずに、①申込み、②告知(診査)の2つをもって責任開始の要件となります。
●第一回保険料充当金をデビットカード、クレジットカードを利用して払い込む場合は、「カードで決済手続きをした日」を③第一回保険料充当金を払い込んだ日とみなす生命保険会社と、口座振替と同様に
①申込み、②告知(診査)の2つをもって責任開始の要件とする生命保険会社があります。
●キャッシュレス転換の場合は申込み、告知あるいは診査がともに完了したときが責任開始期となります。
②承諾前に保険事故が起こった場合
上図のⒶⒷの通り、生命保険会社が契約を承諾する前であっても、保障は責任開始期を迎えており、
①保険事故がなければ当然承諾されていたであろう契約ならば、保険金・給付金等は支払われ、
②保険事故の有無にかかわらず、客観的にみて承諾されないとみなされる契約の場合(もともと契約できない身体的危険がある場合等)は、保険金・給付金等は支払われません。
キャッシュレス転換とは、転換(下取り)価格を活用して転換後契約の第一回保険料充
当金を払い込む、転換時に金銭の授受を伴わない方法です。 参照 86ページ
失効した契約を復活した場合の責任開始期
参照 80ページ
身体的危険
参照 60ページ
③責任開始期と契約日
●原則:責任開始期=契約日
●ただし、約款上契約日を責任開始期の属する月の翌月1日としている場合は、責任開始期≠契約日となりますが、この場合は契約日前でも、責任開始期より保障は開始しています。
●なお、保険証券には通常、責任開始期ではなく、契約日が記載されています。
第3章
④責任開始期に原因となる傷病が生じていた場合(契約前発病)
●原則:責任開始期前に生じている傷病(以下、契約前発病)を原因として高度障害状態に該当した場合や入院・手術をした場合には、高度障害保険金や入院給付金等は支払われません。
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
●ただし、責任開始期から一定期間(通常2年)経過後に契約前発病を原因として入院・手術をした場合には、入院給付金等は支払われます(高度障害保険金は支払われません)。
●また、生命保険協会が作成している「保険金等の支払いを適切に行うための対応に関するガイドライン」にて、被保険者が契約前発病について責任開始期前に
①受療歴、症状または人間ドック・定期健康診断における検査異常がなくかつ
②被保険者または保険契約者に被保険者の身体に生じた異常(症状)についての自覚又は認識がないことが明らかな場合等
には高度障害保険金、入院給付金等を支払う旨定めています。
なお、契約前発病であっても、正しく告知がなされており、その告知内容に基づいて生命保険会社が契約を承諾した場合、その病気が責任開始期以降に生じたものとみなして高度障害保険金や入院給付金等を支払うよう見直し、その旨を約款に記載している生命保険会社もあります。
また、限定告知型生命保険の場合、契約前に医師から勧められていた入院・手術などを除いて、契約前発病の場合でも契約後に症状が悪化した場合は入院給付金などが支払われる商品もあります。ただし、契約当初1年間の給付金額は半額になるなど、保障内容には制限があります。
参照 114ページ
参照 39ページ
限定告知型生命保険
参照 17ページ
ライン
生命保険協会のガイド
取れない場合
保険金・給付金を受け
4
クーリング・オフ制度
1. 生命保険のクーリング・オフ
●新しく生命保険契約を申し込んだ、または転換を利用した場合、クーリング・オフすることによって払い込んだ保険料が返金されたり、転換前の契約内容に戻すことができます(保険業法第309条)。
第3章
●クーリング・オフできる期間は一般的に「クーリング・オフに関する書面を受け取った日」または「申込日」のいずれか遅い日からその日を含めて8日間です(実務上は10日、15日、30日等延長している生命保険会社もあります)。
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
●「クーリング・オフに関する書面」がどの書面であるかについては、注意喚起情報に記載されています。
クーリング・オフに関する書面は、ⓒ注意喚起情報、ⓓ契約締結前交付書面、ⓔご契約のxxx・約款、ⓙ第一回保険料充当金領収証の場合があります。
■クーリング・オフの例
申込日
クーリング・オフに関する事項を記載した書面を受け取った日
4/1
4/5
4/12
いずれか遅い日
4/5
8日間
●4/12までの消印のある郵便による申し出であること
●初日(4/5)を算入
●また、クーリング・オフできる起算日を「クーリング・オフに関する書面を受け取った日」または「申込日」のいずれか遅い日よりも、更に遅い日としている生命保険会社もあります。
払込方法など | 起 算 日 |
振込み | ●申込日 ●生命保険会社に着金した日 ●郵送された領収証が契約者に到着した日 など |
クレジットカード | ●ご利用票を受け取った日 ●決済手続日(カードを読み取りの機械に通した日) ●申込日 ●生命保険会社がクレジットカードの有効性を確認した日 など |
デビットカード | ●申込日 ●ご利用票を受け取った日 ●払い込んだ日 など |
キャッシュレス転換 | ●申込日 |
インターネット契約 | ●申込日の翌日 ●クーリング・オフに関する書面が届いた日 |
クーリング・オフ制度に関する保険業法・政令等
参照 67ページ
転換
参照 86ページ
「クーリング・オフに関する書面」については、保険業法では定められていないため、生命
保険会社、保険種類、保険料払込方法などにより異なります。
記号ⓒ、ⓔなどの書面が交付される時期
参照 53ページ
第3章
2. クーリング・オフが法令上適用されない主な場合
法令上適用されない主な場合 | 根 拠 法 令 |
●法人契約、事業保険契約の場合 | 保険業法第309条1項2号、3号 |
●保険期間が1年以内の契約の場合 | 保険業法第309条1項4号 |
●生命保険会社が指定した医師の診査が 終了した場合 | 保険業法施行令第45条5号 |
●財産形成貯蓄契約、財産形成年金貯蓄 契約又は財産形成住宅貯蓄契約の場合 | 保険業法施行令第45条6号 |
●債務履行の担保のための契約の場合 | 保険業法施行令第45条7号 |
●保険金額の中途増額、特約の中途付加、 復活・更新などの場合 | 保険業法施行令第45条8号 |
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
●法令上はクーリング・オフが適用されない場合でも、生命保険会社が自主的にクーリング・オフを適用としている場合があります。
例えば、銀行の窓口などを含む「店頭」での契約について、「申込者があらかじめ訪問日や契約の申込みをしたい旨を告げていた」場合、法令上クーリング・オフは適用されません。
しかし、生命保険会社は一般的に「店頭での契約については、場合分けをせず一律にクーリング・オフを適用」としています。「契約者が指定した場所」での契約、「保険料を振り込んだ場合」、「通信販売」、
「インターネットでの申込み」についても、一律にクーリング・オフを適用しているのが一般的です。
3. クーリング・オフの手続き
●生命保険会社に書面で申し出ます。
●書面を発した日に効力が生じます。
●書面に記載する事項は「注意喚起情報」や「ご契約のxxx」で確認します。
●申込書に押印した場合は、同一印で押印します。
4. クーリング・オフの申し出の記入例
○○生命保険相互(株式)会社御中私は契約の申込撤回を行います。
申込者 文化千太 領収証番号12345678平成○年○月○日
住所 xxxxxx区丸の内三̶四̶一氏名 文化千太 印
険者名、営業職員名などの項目の記入を要する生命保険会社も
あります。
他に、保険種類、被保
の申出日としています。
日付をクーリング・オフ
を要件とし、その消印
会社では実務上、郵送
から、多くの生命保険
た日が重要となること
続きでは、書面を発し
クーリング・オフの手
明欄の★印を参照。
は67ページの補足説
を適用としている場合
的にクーリング・オフ
生命保険会社が自主
第3章
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
保険業法施行令第 条
【参考】クーリング・オフ制度に関する保険業法・政令等(抜粋)
保険契約の申込みの撤回等ができない場合 | 補足説明 | |
保険業法第309条1項 | 1.申込者等が、内閣府令で定めるところにより、保険契約の申込みの撤回等に関する事項を記載した書面を交付された場合において、その交付をされた日と申込みをした日とのいずれか遅い日から起算して8日を経過したとき | ★実務上は10日、15日、30日等延長している場合がある |
2.申込者等が、営業もしくは事業のために、又は営業もしくは事業として締結する保険契約として申込みをしたとき | 法人契約、事業保険契約 | |
3.一般社団法人もしくは一般財団法人、特別の法律により設立された法人、法人でない社団もしくは財団で代表者もしくは管理人の定めのあるもの又は国もしくは地方公共団体が保険契約の申込みをしたとき | 財団法人、地方自治体などの団体(代表者)が契約者である契約 | |
4.当該保険契約の保険期間が1年以下であるとき | ||
5.当該保険契約が、法令により申込者等が加入を義務付けられているものであるとき | ||
6.申込者等が保険業者等の営業所、事務所その他の場所において保険契約の申込みをした場合その他の場合で、申込者等の保護に欠けるおそれがないと認められるものとして政令(→「保険業法施行令第45条」)で定める場合 | ||
45 | 1.申込者等が、保険業者等に対し、あらかじめ日を通知してその営業所、事務所その他これらに準ずる場所(以下「営業所等」という)を訪問し、かつ、当該通知し、又は訪問した際に自己の訪問が保険契約の申込みをするためのものであることを明らかにした上で、当該営業所等において当該保険契約の申込みをした場合 | 平成19年6月改正 ★実務上は一般的に店頭での申込みの場合もクーリング・オフ適用としている |
2.申込者等が、自ら指定した場所(保険業者の営業所等及び当該申込者等の居宅を除く)において保険契約の申込みをすることを請求した場合において、当該保険契約の申込みをしたとき | 平成19年6月改正 ★実務上は一般的に「指定場所での申込み」もクーリング・オフ適用としている | |
3.申込者等が、郵便その他の内閣府令(→「保険業法施行規則第241条」)で定める方法により保険契約の申込みをした場合 | ★実務上は一般的に通信販売やインターネットでの申込みの場合もクーリング・オフ適用としている | |
4.申込者等が、保険契約に係る保険料又はこれに相当する金銭の払込みを保険業者の預金又は貯金の口座への振込みにより行った場合(当該保険契約の相手方である保険業者もしくは当該保険契約に係る保険募集を行った保険業者又はこれらの役員もしくは使用人に依頼して行った場合を除く) | 平成19年6月改正 ★実務上は一般的に「保険料を振り込んだ場合」もクーリング・オフ適用としている | |
5.申込者等が、保険会社等の指定する医師による被保険者の診査をその成立の条件とする保険契約の申込みをした場合において、当該診査が終了したとき | 医師の診査が終了しているとき (告知を確認する生命保険面接士の面接はクーリング・オフ可能) |
保険契約の申込みの撤回等ができない場合 | 補足説明 | |
45 | 6.当該保険契約が、勤労者財産形成貯蓄契約、勤労者財産形成年金貯蓄契約又は勤労者財産形成住宅貯蓄契約であるとき | 一般財形、財形年金、財形住宅 |
7.当該保険契約が、金銭消費貸借契約、賃貸借契約その他の契約に係る債務の履行を担保するための保険契約であるとき | 質権設定契約 | |
8.当該保険契約が、既に締結されている保険契約(以下「既契約」という)の更改(保険金額その他の給付の内容又は保険期間の変更に係るものに限る)もしくは更新に係るもの又は既契約の保険金額、保険期間その他の内容の変更に係るものであるとき | 特約の中途付加、更新、保険金額の中途増額など (転換は新たな契約申込なので、クーリング・オフ可能) | |
同法施行規則第241条 | 1.郵便を利用する方法 | ★実務上は一般的に「通信販売」の場合もクーリング・オフ適用としている |
2.ファクシミリ装置その他これに準ずる通信機器又は情報処理の用に供する機器を利用する方法 | ||
3.保険会社等が設置した機器を利用する方法 |
保険業法施行令第 条
第3章
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
(注)条文の一部を省略しているところがあり、原文どおりではありません。
【参考】特定早期解約
変額個人年金保険などの特定保険のうち、クーリング・オフが適用されないものは、「特定早期解約」を行うことができる旨を定めることとされています(保険業法施行規則第11条3の2号)。
特定早期解約とは、保険契約の成立日またはこれに近接する日から起算して10日以上の一定の日数(保険会社が設定)を経過するまでの間ならば、解約により契約者に払い戻される返戻金の計算に際して、契約者価額から控除する金額を0円とし、および当該保険契約にかかる費用として保険料から控除した金額の全額を契約者価額に加算するものです。
しかし、一般的に実務上は変額個人年金保険などについても広くクーリング・オフの適用対象になっており、実際に特定早期解約を適用するケースはほとんどありません。
5
告知義務
1. 告知義務
●生命保険契約の告知義務については、保険法第37、66条の規定に基づき約款で定めています。
●生命保険会社が求めた告知事項に、契約者や被保険者は事実の告知をしなければなりません。
●健康状態についての告知は被保険者が行わなければなりません。
●営業職員、代理店職員、生命保険面接士などに口頭で伝えても告知したことにはなりません。
●告知に関して手元に残る告知書の写しで、告知内容を確認します。
告知書の写し:生命保険協会「正しい告知を受けるための対応に関するガイドライン」に基づき作成されます。複写式の告知書控えの交付や、告知書のコピーが送付されます。
参照 35ページ
参照 177ページ
告知書の見本
ん。
告知受領権もありませ
せん。検診は行わず、
xxが医師ではありま
資格試験に合格してい
生命保険業界の行う
生命保険面接士とは
特定保険
④どのように
●告知書の記入
●生命保険面接士の健康確認
●医師による診査
●人間ドック検査成績表・告知書の提出
●健康診断結果通知書・告知書の提出
●健康管理証明書・告知書の提出
③何を
●契約者職業
●被保険者職業
●最近の健康状態
●過去5年の健康状態
●がんの病歴
●過去2年以内の健康診断
●身長・体重
●身体の障害 など
第3章
2. 告知のしかた
①誰が
●契約者
●被保険者
②誰に
●生命保険会社(所定の告知書)
●生命保険会社の指定する医師
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
●告知に関するコールセンターを設置したり、告知サポート資料を作成している生命保険会社もあります。
3. いつ告知が必要か
●新たに生命保険を契約する場合
●契約の内容を変更する場合(死亡保障を増額したり、医療特約などを中途付加する場合)
●転換により契約をする場合
●失効した契約を復活する場合
●払済保険や延長(定期)保険にした契約を復旧する場合
6
告知義務違反
1. 告知義務違反による解除
●契約者や被保険者が、故意または重大な過失により正しく告知を行わなかった場合、生命保険会社は将来に向かって契約を解除することができます(保険法第55、84条の規定に基づき、約款で定めています)。
○告知義務違反と契約の解除・保険金等の支払可否との関係(概略・イメージ)
ない
ある
解除する
承諾していなかった
無条件で承諾していた
告知義務違反の事実が判明
第3章
仮にその事実を加入時に正しく告知していた場合、生命保険会社は契約を承諾していたか
解除しない
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
生命保険会社は契約を解除するか
保険金・給付金の請求内容と告知 義務違反の内容に因果関係があるか
支払われない
この場合、生命保険会社はすでに支払っている保険金・給付金の返還を請求できる
支払われる
保険金・給付金が支払われるか
契約が解除されると、払込保険料は返還されないが、解約返戻金がある場合は解約返戻金が支払われる。転換契約の場合、元の契約に戻すことができる旨、約款に定めている場合もある。
2. 生命保険会社が契約を解除できない場合
告知義務違反があっても、次の場合、生命保険会社は契約を解除できません(保険法第55条2項~4項、第84条2項~4項の規定に基づき約款で定めています)。
●告知義務違反について、契約時に生命保険会社が知っていたときや、過失のため知らなかったとき
●生命保険会社が告知義務違反について知ってから、1ヵ月経過したとき
●責任開始期から2年を超えたとき(支払事由が2年以内に起こっている場合を除く)
●営業職員などが告知妨害・不実告知教唆をしたとき
告知妨害:被保険者などが告知することを、営業職員などが妨げること
不実告知教唆:営業職員などが被保険者などに事実でないことを告知することを勧めること
*ただし、営業職員などによる上記の行為がなくても、契約者または被保険者が告知義務違反をしたと認められる場合、生命保険会社は解除することができます。
*保険法施行前(平成22年3月までの契約)は生命保険協会の「保険金等の支払いを適切に行うための対応に関するガイドライン」による対応となります。
仮に加入時に正しく告知をしていて、生命保
険会社が「特別条件付
参照 61ページ
参照 17ページ
ライン
生命保険協会のガイド
参照 86ページ
転換
なりません。
険給付を行わなければ
間に因果関係のない保
知義務違反の内容との
契約を解除しても、告
より、生命保険会社は
号、第88条2項1号に
保険法第59条2項1
特別条件
す。
れない場合がありま
険金・給付金が支払わ
件の内容によっては保
ます。ただし、特別条
解除しないこととなり
が同意することにより、
後、特別条件に契約者
は、告知義務違反判明
で承諾していた」場合
【参考】告知関連の約款の記載(例)
告知義務
保険契約の締結または復活の際、支払事由または保険料の払込免除事由の発生の可能性に関する重要な事項のうち会社が被保険者に関して書面で告知を求めた事項について、契約者または被保険者は、その書面により告知することを要します。ただし、会社の指定する医師が口頭で質問した事項については、その医師に口頭により告知することを要します。
第3章
告知義務違反
生命保険の契約締結、説明義務、告知義務等
①契約者または被保険者が、故意または重大な過失により、前条の規定により会社が告知を求めた事項について、事実を告げなかったか、または事実でないことを告げた場合には、会社は、将来に向かって保険契約を解除することができます。
②会社は給付金等の支払事由または保険料の払込免除事由が生じた後においても前項の規定により保険契約を解除することができます。この場合には、給付金等を支払わず、または保険料の払込みを免除しません。また、すでに給付金等を支払っていたときは、その返還を請求することができ、すでに保険料の払込みを免除していたときは、各普通保険約款の第1編(普通規定)に定める保険料の払込免除の規定にかかわらず、払込みを免除した保険料の払込みがなかったものとして取り扱います。
③前項(②)の規定にかかわらず、給付金等の支払事由または保険料の払込免除事由の発生が解除の原因となった事実によらなかったことを契約者、被保険者またはその給付金等の受取人が証明したときは、会社は、給付金等を支払いまたは保険料免除します。
④第1項(①)または第2項(②)の規定により保険契約を解除するときは、会社はその旨を契約者に通知します。ただし、契約者またはその住所もしくは居所が不明であるか、その他正当な理由により契約者に通知できない場合には、被保険者または給付金等の受取人に通知します。
⑤本条の規定により保険契約を解除したときは、会社は、各普通保険約款の第3編(特別規定)に定める解約返戻金を契約者に支払います。
告知義務違反があっても保険契約を解除できない場合
①会社は、次のいずれかの場合には、前条(告知義務違反)の規定による保険契約の解除をすることができません。
(1)保険契約の締結または復活の際、会社が解除の原因となる事実を知っていたとき、または過失のためこれらを知らなかったとき
(2)会社のために保険契約の締結の媒介を行うことができる者(会社のために保険契約の締結の代理を行うことができる者を除き、以下、本条において「保険媒介者」といいます。)が、契約者または被保険者が告知をすることを妨げたとき
(3)保険媒介者が、契約者または被保険者に対し、告知をしないことを勧めたとき、または事実でないことを告げることを勧めたとき
(4)会社が解除の原因となる事実を知った日から起算して1ヵ月を経過したとき
(5)保険契約が責任開始期の属する日から起算して2年を超えて有効に継続したとき。ただし、責任開始期の属する日から起算して2年以内に給付金等の支払事由または保険料の払込免除事由が生じていた場合を除きます。
②前項2号および3号の規定は、当該各号に規定する保険媒介の行為がなかったとしても、契約者または被保険者が、告知義務の規定により会社が告知を求めた事項について、事実を告げなかったかまたは事実でないことを告げたと認められるときは適用しません。