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中国民法典の制定について(2)
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[目 次]
第1 はじめに
第2 中国民法典の全条文について
第一編 総則 | ||
第二編 物権 | ~以上までICDNEWS第85号 | |
第三編 契約 | ||
第一分編 | 通 | 則 |
第二分編 典型契約第九章 売買契約
第十章 電力・水・ガス・熱供給使用契約第十一章 贈与契約
第十二章 貸金契約 第十三章 保証契約 第十四章 賃貸借契約
第十五章 ファイナンスリース契約第十六章 ファクタリング契約
第十七章 請負契約
第十八章 建設工事契約
第十九章 運送契約 ~以上まで本号
[本 文]
第2 中国民法典の全条文について 1
第三編 契 約 2第一分編 通 則第xx 一般規定
1 本文中の条文見出しは,主として全国人大法工委民法xxx・xxx編『中華人民共和国民法典合同編解読(上,下)』(中国法制出版社・2020年7月),同室・xxx編『民法典新旧逐条対比』(中国検察出版社・2020年6月),及びxxxx監修・xxxx編集『逐条解説中国契約法の実務』(中央経済社,
2004年1月)を参照したものである。
2 新法「第三編 契約」では,契約法[合同法](1999年成立,全428条)を基礎として,改革の全面的深化の精神が貫かれており,契約の維持,平等な交換,xxな競争が堅持され,商品及び要素の自由な流動が促されること,契約法以降に現れた新しい状況と問題を解決するために,世界各国の立法経験を参考にして,契約制度をさらに改善している。第三編は,計3つの分編,29章,526条から構成されている。
第463条【契約編の調整範囲】
本編は契約を原因として発生する民事関係を調整する。
第464条【契約の定義,身分関係合意の法律適用】
契約とは,民事主体間における民事法律関係の発生,変更,終了に関する合意をいう。
2 婚姻,養子縁組,後見等の身分関係に関する合意は,当該身分関係に関する法律規定を適用する。規定がない場合,その性質に基づき本編の規定を参照適用することができる。
第465条【契約に対する法的保護,契約の相対性原則】
法に基づき成立した契約は,法律の保護を受ける。
2 法に基づき成立した契約は,当事者に対してのみ法的拘束力を有する。但し,法律に別段の規定がある場合を除く。
第466条【契約の解釈】
当事者に契約条項の理解に対する争いがある場合は,本法第142条第1項の規定に従って,争いがある条項の意味を確定しなければならない。
2 契約文書を2種類以上の言語により締結し,かつ同等の効力を有する旨の約定がある場合,各文書に使用される文言は同じ意味を有するものと推定する。各文書に使用される文言が一致しない場合,契約の関連条文,性質,目的及び誠実信用原則に基づいて解釈しなければならない。
第467条【非典型契約,特定渉外契約の法律適用】
本法又はその他の法律にxxの規定がない契約は,本編通則の規定を適用し,かつ本編又はその他の法律において最も類似する契約の規定を参照適用することができる。
2 中華人民共和国内で履行される中外合弁企業契約,中外合作経営企業契約,中外xxxx資源探査開発契約については,中華人民共和国の法律を適用する。
第468条【契約に因らず発生した債権債務関係の法律適用】
契約に因らず発生した債権債務関係は,当該債権債務関係に関する法律の規定を適用する。規定がない場合,本編通則の関係規定を適用する。但し,その性質に基づいて適用することができない場合を除く。
第二章 契約の締結
第469条【契約の形式】
当事者は,契約を締結する場合,書面形式,口頭形式又はその他の形式を採用することができる。
2 書面形式とは,契約書,書簡,電報,テレックス,ファックス等その内容を有形で表現することができる形式をいう。
3 電子データ交換,電子メール等の方式によりその内容を有形で表現することが可能であり,かつ随時に取り寄せ調査できる電子文書は,書面形式とみなす。
第470条【契約の内容】
契約の内容は,当事者が約定し,一般に次に掲げる条項を含む。
(一)当事者の氏名又は名称及び住所
(二)目的
(三)数量
(四)品質
(五)代金又は報酬
(六)履行期限,履行地及び履行方式
(七)違約責任
(八)紛争解決方法
2 当事者は,各種契約のモデル文書を参照して契約を締結することができる。
第471条【契約締結の方式】
当事者は,契約を締結する場合,申込,承諾方式又はその他の方式を採用することができる。
第472条【契約の申込】
申込とは,他人との契約の締結を希望する意思表示をいい,当該意思表示は次に掲げる条件に適合しなければならない。
(一)内容が具体的に確定していること
(二)申込受領者が承諾した場合,申込者が直ちに当該意思表示に拘束される旨を表明していること
第473条【申込の誘引】
申込の誘引とは,他人が申込の通知を自己に対して発することを希望する意思表示をいう。競売公告,入札公告,株式目論見書,債券募集方法,基金目論見書,商業広告と宣伝,価格表の送付等を申込の誘引とする。
2 商業広告と宣伝の内容が申込に関する条件に適合する場合,申込を構成する。
第474条【申込の発効時期】
申込の発効時期には,本法第137条の規定を適用する。
第475条【申込の撤回】
申込は撤回することができる。申込の撤回には,本法第141条の規定を適用する。
第476条【申込の取消と例外】
申込は取り消すことができる。但し,次のいずれかに該当する場合を除く。
(一)申込者が承諾期限を確定し,又はその他の形式により申込が取消すことができない旨を明示しているとき
(二)申込受領者に申込は取消すことができないものと認識する理由があり,かつ契約履行のため既に合理的な準備作業を行っているとき
第477条【申込取消の要件】
申込の取消の意思表示を対話方式で行う場合,当該意思表示の内容は,申込受領者が承諾するより前に申込受領者に知らせなければならない。申込の取消の意思表示を非対話方式で行う場合,申込受領者が承諾するより前に申込受領者に到達しなければならな
い。
第478条【申込の失効】
次のいずれかに該当する場合,申込は失効する。
(一)申込が拒絶されたとき
(二)申込が法に基づき取消されたとき
(三)承諾期限が満了し,申込受領者が承諾していないとき
(四)申込受領者が申込の内容に対して実質的変更を行ったとき
第479条【承諾】
承諾とは,申込受領者が申込に同意する旨の意思表示をいう。
第480条【承諾の方式】
承諾は通知方式により行わなければならない。但し,取引慣習に基づく場合,又は申込が行為を通じて承諾とすることができる旨表明されている場合を除く。
第481条【承諾の到達時期】
承諾は,申込で確定された期限内に申込者に到達しなければならない。
2 申込で承諾期限が確定されていない場合,承諾は次に掲げる規定に従って到達しなければならない。
(一)申込を対話方式で行う場合,直ちに承諾をしなければならない。
(二)申込を非対話方式で行う場合,承諾は合理的期間内に到達しなければならない。
第482条【承諾期間の起算点】
申込を書簡又は電報で行う場合,承諾期間は,書簡に明記された日付又は電報が発信された日から起算する。書簡に日付が明記されていない場合,当該書簡の投函にかかる消印日から起算する。申込を電話,ファックス,電子メール等の高速通信方式により行う場合,承諾期間は,申込が申込受領者に到達した時から起算する。
第483条【契約の成立時期】
承諾が発効した時に契約は成立する。但し,法律に別段の規定があり,又は当事者に別段の約定がある場合を除く。
第484条【承諾の発効時期】
通知方式で承諾する場合,発効時期には本法第137条の規定を適用する。
2 承諾に通知が必要でない場合,取引慣習又は申込の要求に基づいて承諾としての行為をした時に発効する。
第485条【承諾の撤回】
承諾は撤回することができる。承諾の撤回には本法第141条の規定を適用する。
第486条【承諾期限後の承諾】
申込受領者が承諾期限を超えて承諾の通知を発し,又は承諾期間内に承諾の通知を発したが,通常の状況では申込者に速やかに到達することができない場合,新たな申込とする。但し,申込者が速やかに申込受領者に対して当該承諾が有効である旨を通知した場合を除く。
第487条【意外遅延の承諾】
申込受領者が承諾期間内に承諾の通知を発し,通常の状況では申込者に速やかに到達することができたにもかかわらず,その他の原因により承諾が承諾期限を徒過して申込者に到達した場合,申込者が申込受領者に対して承諾期限を徒過したことを理由に当該承諾を受け入れない旨を速やかに通知した場合を除き,当該承諾を有効とする。
第488条【申込内容を実質的に変更した承諾】
承諾の内容は,申込の内容と一致しなければならない。申込受領者が申込の内容について実質的に変更した場合,新たな申込とする。契約の目的,数量,品質,代金又は報酬,履行期限,履行地及び履行方式,違約責任及び紛争解決方法等に関する変更は,申込内容に対する実質的変更である。
第489条【申込内容の非実質的変更をした承諾】
承諾で申込の内容に対して実質的でない変更をした場合,申込者が速やかに反対の意思表示をし,又は申込において承諾で申込の内容に対していかなる変更もしてはならない旨表明している場合を除き,当該承諾は有効とし,契約の内容は,承諾の内容をその基準とする。
第490条【書面形式による場合の契約成立】
当事者が契約書形式により契約を締結する場合,当事者が共に署名,捺印し,又は指印を押した時に契約は成立する。署名,捺印し,又は指印を押す前に,当事者の一方が既に主要な義務を履行し,相手方が受け入れたとき,当該契約は成立する。
2 法律,行政法規の規定又は当事者の約定により書面形式で契約を締結しなければならないが,当事者は書面形式を採用しておらず,一方が既に主要な義務を履行し,相手方が受け入れた場合,当該契約は成立する。
第491条【確認書の締結】
当事者が書簡,データ電文等の形式により締結する契約で確認書の締結が要求されている場合,確認書を締結した時に契約が成立する。
2 当事者の一方がインターネット等の情報ネットワークを通じて公表した商品又はサービス情報が申込の要件に適合する場合,相手方が当該商品又はサービスを選択し,かつ注文書の提出に成功した時に契約が成立する。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第492条【契約成立地】
承諾の発効した場所を契約成立地とする。
2 データ電文形式により契約を締結する場合,受取人の主たる営業地を契約成立地とする。主たる営業地がない場合,その住所地を契約成立地とする。当事者に別段の約定がある場合,その約定に従う。
第493条【契約書による場合の契約成立地】
当事者が契約書形式により契約を締結する場合,当事者が最後に署名,捺印し又は指印を押した場所を契約成立地とする。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第494条【強制締約義務】
国家が被災者救済,感染予防・抑制又はその他の必要に基づいて発注任務又は指令的任務を命じた場合,関係する民事主体の間で関係する法律,行政法規の規定する権利及び義務に従って契約を締結しなければならない。
2 法律,行政法規の規定に従って申込を発出する義務を負う当事者は,速やかに合理的な申込を発出しなければならない。
3 法律,行政法規の規定に従って承諾義務を負う当事者は,相手方の合理的な契約締結の要求を拒絶してはならない。
第495条【予約契約】
当事者が将来の一定期限内に契約を締結する旨を約定した引受書,注文書,予約書等は,予約契約を構成する。
2 当事者の一方が予約契約で約定した契約締結義務を履行しない場合,相手方は予約契約の違約責任の負担を請求することができる。
第496条【格式条款】
格式条款 3 は,当事者が重複して使用するために事前に制定し,かつ契約締結時に相手方と協議していない条項である。
2 格式条款を用いて契約を締結する場合,格式条款を提供する側は,xx原則に従って当事者間における権利及び義務を確定し,かつその責任を免除又は軽減する等相手方に重大な利害関係のある条項について,合理的方式を講じて相手方に提示して注意喚起し,相手方の要求に応じて当該条項を説明しなければならない。格式条款を提供する側が提示又は説明の義務を履行せず,そのために相手方が重大な利害関係のある条項に対して注意していない又はそれを理解していない場合は,相手方は当該条項が契約内容を構成しないことを主張することができる。
第497条【格式条款の無効事由】
次のいずれかに該当する場合,当該格式条款は無効とする。
(一)本法第一編第六章第三節及び本法第506条の規定する無効事由を具えるとき
(二)格式条款を提供する一方の責任を不合理に免除又は軽減し,相手方の責任を加重し,相手方の主要な権利を制限するとき
(三)格式条款を提供する一方が相手方の主要な権利を排除するとき
第498条【格式条款の解釈】
格式条款に対する理解について紛争が発生した場合,通常の理解に従って解釈しなければならない。格式条款に対して二種以上の解釈がある場合,格式条款を提供する一方に不利な解釈をしなければならない。格式条款と非格式条款が一致しない場合,非格式条款を採用しなければならない。
3 格式条項は,定型条項,定型約款,様式条項,標準様式条項,約款等と訳されている。
第499条【懸賞広告】
懸賞者が公開方式により特定の行為を完成した者に対して報酬を支払うことを声明した場合,当該行為を完成した者はその支払いを請求することができる。
第500条【契約締結上の過失責任】
当事者は契約の締結過程において次のいずれかに該当し,相手方に損害を与えた場合,賠償責任を負わなければならない。
(一)契約締結の名目を利用して,悪意をもって協議を進めたとき
(二)契約締結に関する重要事実を故意に隠蔽し,又は虚偽の状況を提供したとき
(三)その他誠実信用原則に違反する行為があったとき
第501条【契約締結過程における当事者の守秘義務】
当事者は契約の締結過程において知り得た営業秘密又はその他秘密を保持すべき情報について,契約成立の有無にかかわらず,漏えい又は不正に使用してはならない。当該営業秘密又は情報を漏えい,不正に使用して,相手方に損害を与えた場合,賠償責任を負わなければならない。
第三章 契約の効力
第502条【契約の発効時期】
法に基づき成立した契約は,成立した時から発効する。但し,法律に別段の規定があり,又は当事者に別段の約定がある場合を除く。
2 法律,行政法規の規定により契約が認可等の手続を行うべき場合,その規定に従う。認可等の手続を行わなければ当該契約の発効に影響する場合,契約における提出承認等の義務に関する条項及び関連条項の効力には影響しない。認可申請等の手続を行うべき当事者が義務を履行しない場合,相手方は当該義務に違反した責任の負担を請求することができる。
3 法律,行政法規の規定により契約の変更,譲渡,解除等の状況として認可等の手続を行わなければならない場合,前項の規定を適用する。
第503条【黙示方式による無権代理の追認】
無権代理人が被代理人名義によって契約を締結し,被代理人が既に契約義務の履行を開始し,又は相手方の履行を受け入れた場合,契約に対する追認とみなす。
第504条【法人代表者等の権限を超えた契約締結】
法人の法定代表者又は非法人組織の責任者が権限を超えて締結した契約は,相手方がその権限の踰越を知り又は知り得べき場合を除き,当該代表行為は有効であり,締結した契約は法人又は非法人組織に対して効力を生じる。
第505条【経営範囲を超えた契約締結】
当事者が経営範囲を超えて締結した契約の効力は,本法第一編第六章第三節及び本編の関係規定に従って確定しなければならず,経営範囲を超えたことのみにより契約の無効を確認してはならない。
第506条【無効な免責条項】
契約中の次に掲げる免責条項は無効とする。
(一)相手方に人身損害を与えたとき
(二)故意又は重過失により相手方に財産上の損害を与えたとき
第507条【紛争解決条項の独立性】
契約の不発効,無効,取消又は終了の場合,契約中の紛争解決方法に関する条項の効力に影響しない。
第508条【契約効力規定の適用】
本編に契約の効力に対する規定がない場合,本法第一編第六章の関係規定を適用する。
第四章 契約の履行
第509条【契約履行の原則】
当事者は,約定に従って自己の義務を全面的に履行しなければならない。
2 当事者は,誠実信用原則に従い,契約の性質,目的及び取引慣習に基づいて通知,協力,秘密保持等の義務を履行しなければならない。
3 当事者は契約の履行過程において資源の浪費,環境汚染及び生態破壊を回避しなければならない。
第510条【約定不明な場合の処理】
契約が発効した後,当事者に品質,代金又は報酬,履行地等の内容に関する約定がない又は約定が不明確である場合,協議により補充することができる。補充協議が調わない場合,契約の関連条項又は取引慣習に従って確定する。
第511条【品質,代❹,履行地等の内容確定】
当事者の契約内容に関する約定が不明確であり,前条の規定によってもなお確定できない場合,次に掲げる規定を適用する。
(一)品質要求が不明確な場合,強制国家基準に従って履行する。強制国家基準がない場合,推奨国家基準に従って履行する。推奨国家基準がない場合,業界基準に従って履行する。国家基準,業界基準がない場合,通常の基準又は契約の目的に適合する特定基準に従って履行する。
(二)代金又は報酬が不明確な場合,契約締結時の履行地の市場価格に従って履行する。法に基づき政府指定価格又は政府指導価格を執行すべき場合,規定に従って履行する。
(三)履行地が不明確な場合,貨幣の給付は,貨幣を受ける一方の所在地で履行する。不動産の引渡しは,不動産の所在地で履行する。その他の目的物は,義務を履行する一方の所在地で履行する。
(四)履行期限が不明確な場合,債務者はいつでも履行することができ,債権者もいつでも履行を請求することができる。但し,相手方に必要な準備時間を与えなければならない。
(五)履行方式が不明確な場合,契約目的の実現に有益な方式に従って履行する。
(六)履行費用の負担が不明確な場合,義務を履行する一方が負担する。債権者の原因により増加した履行費用は,債権者が負担する。
第512条【電子契約における商品引渡等の方式・時期】
インターネット等の情報ネットワークを通じて成立した電子契約の目的が商品の引渡であり,かつ引渡に宅配物流方式が採用されている場合,受取人の受領署名の時期を引渡し時期とする。電子契約の目的がサービスの提供である場合,作成された電子証書又は現物証書に明記された時期をサービスの提供時期とする。前述の証書に時期が明記されておらず又は明記された時期が実際のサービスの提供時期と一致しない場合,実際のサービスの提供時期を基準とする。
2 電子契約の目的物がオンライン伝送方式による引渡である場合,契約の目的物を相手方が指定した特定システムに入り,検索,識別することができる時期を引渡し時期とする。
3 電子契約の当事者に引渡方式,引渡時期に関する別段の約定がある場合,その約定に従う。
第513条【政府による価格調整と契約価格の確定】
政府指定価格又は政府指導価格を執行する場合に,契約で約定した引渡期限内に政府価格の調整が行われたときは,引渡時の価格に従って価格を計算する。期限を徒過して目的物を引き渡した場合,価格が上昇したときは原価格で執行し,価格が下落したときは新価格で執行する。期限を徒過して目的物を受領し,又は支払いを行った場合に,価格が上昇したときは新価格で執行し,価格が下落したときは原価格で執行する。
第514条【❹銭債務の履行】
金銭支払いを内容とする債務は,法律に別段の規定があり又は当事者に別段の約定がある場合を除き,債権者は,実際の履行地の法定貨幣による履行を債務者に請求することができる。
第515条【選択債務と選択権帰属】
目的は複数存在するが債務者はそのうちの一つだけを履行する必要がある場合,債務者が選択権を有する。但し,法律に別段の規定があり,当事者に別段の約定があり又は別段の取引慣習がある場合を除く。
2 選択権を有する当事者が約定した期限内に又は履行期限が満了しても選択せず,催告を受けた後の合理的期間内になお選択しない場合,選択権は相手方に移転する。
第516条【選択権の行使】
当事者は,選択権を行使する場合,速やかに相手方に通知しなければならず,通知が相手方に到達したとき,目的が確定する。目的の確定後に変更してはならない。但し,相手方の同意を得た場合を除く。
2 選択することができる目的のいずれかに履行不能の状況が発生した場合,選択権を有する当事者は履行不能となった目的を選択してはならない。但し,当該履行不能となった状況が相手方により生じた場合を除く。
第517条【分割債権,分割債務】
債権者が二名以上で,目的を分割することができ,持分に従って各自が債権を有する場合,分割債権[按份债权]とする。債務者が二名以上で,目的を分割することができ,持分に従って各自が債務を負担する場合,分割債務[按份债务]とする。
2 分割債権者又は分割債務者の持分を確定することが困難である場合,持分が同じであるものとみなす。
第518条【連帯債権,連帯債務】
債権者が二名以上で,一部又は全部の債権者が債務の履行を債務者に求めることができる場合,連帯債権とする。債務者が二名以上で,債権者が債務の履行を一部又は全部の債務者に求めることができる場合,連帯債務とする。
2 連帯債権又は連帯債務は,法律で規定し又は当事者の約定による。
第519条【連帯債務者の負担分確定と求償】
連帯債務者の間の負担分を確定することが困難である場合,負担分が同じであるものとみなす。
2 実際に負担した債務が自己の負担分を超えた連帯債務者は,超えた部分についてその他の連帯債務者に対してその履行していない負担分の範囲内で求償権を有し,かつそれに相応する債権者の権利を有する。但し,債権者の利益を害してはならない。その他の連帯債務者は,債権者に対する抗弁を当該債務者に対して主張することができる。
3 求償された連帯債務者がその負うべき負担分の範囲内で履行が不能である場合,その他の連帯債務者は相応する範囲内で按分比例して分担しなければならない。
第520条【連帯債務の対外的効力】
一部の連帯債務者が債務を履行,相殺し,又は目的物を供託した場合,その他の債務者の債権者に対する債務は,相応する範囲内で消滅する。当該債務者は,前条の規定に従ってその他の債務者に求償することができる。
2 一部の連帯債務者の債務が債権者により免除された場合,当該連帯債務者の負うべき負担分の範囲内で,その他の債務者の債権者に対する債務は消滅する。
3 一部の連帯債務者の債務と債権者の債権が同一人に帰属する場合,当該債務者が負うべき負担分を控除した後,債権者のその他の債務者に対する債権は引き続き存在する。
4 債権者が一部の連帯債務者の給付を受領遅滞した場合,その他の連帯債務者に対して効力を生じる。
第521条【連帯債権の内外部関係】
連帯債権者の間において持分を確定することが困難な場合,持分が同じであるものとみなす。
2 実際に債権を受領した連帯債権者は,按分比例によりその他の連帯債権者に返還しなければならない。
3 連帯債権には本章の連帯債務の関係規定を参照適用する。
第522条【第三者のためにする契約と違約責任】
当事者の約定により債務者が第三者に債務を履行する場合に,債務者が第三者に債務を履行せず,又は債務の履行が約定に適合しないときは,債権者に対して違約責任を負わなければならない。
2 法律の規定又は当事者の約定により第三者が直接債務の履行を債務者に請求することができる場合に,第三者が合理的期間内に明確に拒絶しておらず,債務者が第三者に債務を履行せず又は債務の履行が約定に適合しないときは,第三者は,違約責任の負担を債務者に請求することができる。債務者は,その債権者に対する抗弁を第三者に対して主張することができる。
第523条【第三者による債務履行と違約責任】
当事者において,第三者が債権者に債務を履行する旨を約定した場合,第三者が債務を履行せず又は債務の履行が約定に適合しないときは,債務者は債権者に対して違約責任を負わなければならない。
第524条【第三者による債務履行と効果】
債務者が債務を履行せず,第三者が当該債務について合法的利益を有する場合,第三者は債権者に対して代わりに履行する権利を有する。但し,債務の性質,当事者の約定又は法律の規定に基づき,債務者だけが履行できる場合を除く。
2 債権者が第三者の履行を受けた後,その債務者に対する債権は第三者に譲渡される。但し,債務者と第三者との間に別段の約定がある場合を除く。
第525条【同時履行の抗弁権】
当事者が相互に債務を負い,履行順序に先後のない場合,同時に履行しなければならない。当事者の一方は,相手方が履行するまでは,その履行請求を拒絶する権利を有する。当事者の一方は,相手方による債務の履行が約定に適合しないとき,それに相応する履行請求を拒絶する権利を有する。
第526条【契約の異時履行】
当事者が相互に債務を負い,履行順序に先後のある場合,先に債務を履行すべき一方当事者が履行するまでは,後に履行する当事者は,その履行請求を拒絶する権利を有する。先に履行すべき一方当事者の債務履行が約定に適合しないとき,後に履行する当事者は,それに相応する履行請求を拒絶する権利を有する。
第527条【不安の抗弁権】
先に債務を履行すべき当事者は,相手方が次のいずれかに該当することを証明する確実な証拠がある場合,履行を中止することができる。
(一)経営状況が著しく悪化したとき
(二)財産を移転し,資金を引き出し,隠匿し,もって債務を逃れようとしているとき
(三)商業上の信用を喪失したとき
(四)債務の履行能力を喪失し又は喪失するおそれのあるその他の状況があるとき
2 当事者が確実な証拠もなく履行を中止した場合,違約責任を負わなければならない。
第528条【不安の抗弁権の効力】
当事者は,前条の規定に従って履行を中止した場合,速やかに相手方に通知しなければならない。相手方が適当な担保を提供した場合は,履行を再開しなければならない。履行を中止した後,相手方が合理的期間内に履行能力を回復せず,かつ適当な担保を提供しない場合には,自己の行為をもって主要な債務の不履行を表明したものとみなし,履行を中止した一方は契約を解除し,かつ相手方に違約責任の負担を請求することができる。
第529条【債権者の原因により債務履行が困難となった場合】
債権者が分割,合併し又は住所を変更したが債務者に通知せず,これにより債務の履行に困難が生じた場合,債務者は,履行を中止し又は目的物を供託することができる。
第530条【債務の期限前履行】
債権者は,債務者による債務の期限前履行を拒絶することができる。但し,期限前履行が債権者の利益を害さない場合を除く。
2 債務者が債務を期限前に履行したことにより債権者に増加した費用は,債務者が負担する。
第531条【債務の一部履行】
債権者は,債務者による債務の一部履行を拒絶することができる。但し,一部履行が債権者の利益を害さない場合を除く。
2 債務者が債務を一部履行したことにより債権者に増加した費用は,債務者が負担する。
第532条【契約発効後における当事者の消極的義務】
契約が発効した後,当事者は,氏名,名称の変更又は法定代表者,責任者,担当者の変動に起因して契約義務の不履行を生じさせてはならない。
第533条【契約成立後の事情変更】
契約成立後,契約の基礎条件に , 当事者が契約締結時に予見不可能であった,商業上のリスクに属しない重大な変化が生じ,契約の履行継続が当事者の一方にとって明らかに不xxとなる場合,不利な影響を受ける当事者は,相手方との再協議を求めることができる。合理的期間内に協議が調わない場合には,当事者は人民法院又は仲裁機関に対して,契約の変更又は解除を請求することができる。
2 人民法院又は仲裁機関は,事件の実際の状況を踏まえて,xx原則に基づき契約を変更又は解除しなければならない。
第534条【契約の監督処理】
当事者が契約を利用して国家利益,社会公共利益を害する行為を行う場合 , これに対して市場監督管理及びその他関係行政主管部門が法律,行政法規の規定に従って監督,処理の責任を負う。
第五章 契約の保全
第535条【債権者代位権】
債務者がその債権又は当該債権と関係のある従たる権利の行使を怠ったことにより,債権者による期限到来債権の実現に影響する場合,債権者は,自己名義により債務者の相手方に対する権利の代位行使を人民法院に請求することができる。但し,当該権利が債務者自身に専属する場合を除く。
2 代位権の行使範囲は,債権者の期限到来債権を限度とする。債権者が代位権を行使するための必要費用は,債務者が負担する。
3 相手方は,債務者に対する抗弁を債権者に対して主張することができる。
第536条【期限到来前の保存行為】
債権者の債権の履行期が到来する前に,債務者の債権又は当該債権と関係のある従たる権利が,訴訟時効期間が間もなく満了し又は破産債権を速やかに届け出ない等の状況により,債権者の債権実現に影響する場合,債権者は,代位して債務者の相手方に履行を請求し,破産管財人に届出又はその他必要な行為をすることができる。
第537条【代位権行使の効果】
人民法院が代位権の成立を認定した場合,債務者の相手方が債権者に対して義務を履行し,債権者が履行を受けた後,債権者と債務者,債務者とその相手方の間の相応する権利義務関係は消滅する。債務者の相手方に対する債権又は当該債権と関係のある従たる権利について保全,執行の措置が講じられ,又は債務者が破産した場合は,関連する法律の規定に従って処理する。
第538条【無償行為の詐害行為取消】
債務者がその債権を放棄し,債権の担保を放棄し,財産を無償譲渡する等の方式により財産権益を無償で処分し,又はその期限到来債権の履行期限を悪意で延長し,債権者による債権実現に影響する場合,債権者は,人民法院に対して債務者の行為の取消を請求することができる。
第539条【有償行為の詐害行為取消】
債務者が明らかに不合理な低価格で財産を譲渡し,明らかに不合理な高価格で他人の財産を譲り受け,又は他人の債務のために担保を提供し,債権者による債権実現に影響し,当該状況について債務者の相手方が知り又は知り得べき場合,債権者は,人民法院に対して債務者の行為の取消を請求することができる。
第540条【詐害行為取消権の行使範囲】
取消権の行使範囲は,債権者の債権を限度とする。債権者が取消権を行使するための必要費用は,債務者が負担する。
第541条【詐害行為取消権の行使期間】
取消権は,債権者が取消事由を知り又は知り得べき日から1年以内に行使する。債務者の行為発生の日から5年以内に取消権を行使しない場合,当該取消権は消滅する。
第542条【詐害行為取消の効果】
債権者の債権実現行為に影響する債務者の行為が取り消された場合,始めから法的拘束力を有しない。
第六章 契約の変更及び譲渡第543条【契約の変更】
当事者が協議し合意した場合,契約を変更することができる。
第544条【契約未変更の推定】
契約変更の内容に関する当事者の約定が不明確である場合,変更していないものと推定する。
第545条【債権譲渡】
債権者は,債権の全部又は一部を第三者に譲渡することができる。但し,次のいずれかに該当する場合を除く。
(一)債権の性質に基づき譲渡できないとき
(二)当事者の約定により譲渡できないとき
(三)法律の規定により譲渡できないとき
2 当事者が約定により非金銭債権の譲渡を禁止した場合,善意の第三者に対抗することができない。当事者が約定により金銭債権の譲渡を禁止した場合,第三者に対抗することができない。
第546条【債権譲渡の通知】
債権者は,債権を譲渡し,債務者に通知していない場合,当該譲渡は債務者に対して効力を生じない。
2 債権譲渡の通知は取り消すことができない。但し,譲受人の同意を得た場合を除く。
第547条【譲渡債権の従たる権利】
債権者が債権を譲渡する場合,譲受人は,債権に関係する従たる権利を取得する。但し,当該従たる権利が債権者自身に専属する場合を除く。
2 譲受人による従たる権利の取得は,当該従たる権利の移転登記手続がなされず,又は占有が移転されないことによる影響を受けない。
第548条【債務者の抗弁権】
債務者は,債権譲渡通知を受領した後,譲渡人に対する抗弁を譲受人に対して主張することができる。
第549条【債務者の相殺権】
次に掲げる状況がある場合,債務者は譲受人に対して相殺を主張できる。
(一)債務者が債権譲渡通知を受領したときに,債務者が譲渡人に対して債権を有し,かつ債務者の債権が譲渡債権よりも先に又は同時に期限が到来するとき
(二)債務者の債権と譲渡債権が同一の契約から発生しているとき
第550条【増加費用の負担】
債権譲渡により増加した履行費用は,譲渡人が負担する。
第551条【債務の移転・免責的債務引受】
債務者は,債務の全部又は一部を第三者に移転する場合,債権者の同意を得なければならない。
2 債務者又は第三者は,債権者に対して合理的期間内の同意を催告することができ,債権者が意思表示を行わない場合,不同意とみなす。
第552条【債務者の加入・併存的債務引受】
第三者が債務者との間で債務者として加入する旨を約定して債権者に通知し,又は第三者が債務者として加入する意思を債権者に表示し,債権者が合理的期間内に明確に拒絶してない場合,債権者は,第三者がその債務負担意思がある範囲内で債務者と連帯債務を負うことを請求できる。
第553条【債務移転による新債務者の抗弁】
債務者が債務を移転する場合,新債務者は,原債務者の債権者に対する抗弁を主張することができる。原債務者が債権者に対して債権を有する場合,新債務者は,債権者に相殺を主張することができない。
第554条【債務移転と従たる債務】
債務者が債務を移転する場合,新債務者は,主たる債務に関係する従たる債務を負わなければならない。但し,当該従たる債務が原債務者自身に専属する場合を除く。
第555条【契約上の権利義務の一括譲渡】
当事者の一方は,相手方の同意を得て,契約における自己の権利及び義務を一括して第三者に譲渡することができる。
第556条【契約上の権利義務一括譲渡の法律適用】
契約上の権利及び義務を一括して譲渡する場合,債権譲渡,債務移転の関係規定を適用する。
第七章 契約上の権利義務の終了 第557条【債権債務の終了事由】
次のいずれかに該当する場合,債権債務は終了する。
(一)債務が既に履行されたとき
(二)債務が相互に相殺されたとき
(三)債務者が法に基づき目的物を供託したとき
(四)債権者が債務を免除したとき
(五)債権債務が同一人に帰属したとき
(六)法律が規定し,又は当事者が約定したその他の終了事由
2 契約を解除した場合,当該契約の権利義務関係は終了する。
第558条【債権債務終了後の義務】
債権債務が終了した後においても,当事者は,誠実信用等の原則に従い,取引慣習に基づいて通知,協力,秘密保持,不用物回収等の義務を履行しなければならない。
第559条【従たる権利の消滅】
債権債務が終了したとき債権の従たる権利も同時に消滅する。但し,法律に別段の規定又は当事者に別段の約定がある場合を除く。
第560条【複数債務の弁済充当順序】
債務者が同一債権者に対して負う複数の債務の種類が同じであり,債務者の給付が全ての債務を弁済するのに不足する場合,当事者に別段の約定がある場合を除き,債務者が弁済するときにその履行する債務を指定する。
2 債務者が指定しない場合,既に履行期が到来した債務を優先して履行しなければならない。複数債務の履行期がいずれも到来した場合,債権者に対する担保がない又は担保が最も少ない債務を優先して履行する。全てが無担保又は担保が同じである場合,債務者の負担が重い方の債務を優先して履行する。負担が同じである場合,債務の履行期が到来する順序の先後に従って履行する。履行期の到来が同じである場合,債務の比率に従って履行する。
第561条【費用,利息,主たる債務の弁済充当】
債務者は,主たる債務を履行するほか,さらに利息及び債権の実現に関係する費用を支払わなければならず,その給付が全ての債務を弁済するのに不足する場合,当事者に別段の約定がある場合を除き,次に掲げる順序に従って履行しなければならない。
(一)債権の実現に関係する費用
(二)利息
(三)主たる債務
第562条【合意解除,約定解除事由】
当事者が協議し合意した場合,契約を解除することができる。
2 当事者は,一方の契約解除事由を約定することができる。契約の解除事由が発生した場合は,解除権者は契約を解除することができる。
第563条【法定解除事由】
次のいずれかに該当する場合,当事者は契約を解除することができる。
(一)不可抗力により契約の目的が実現不能となったとき
(二)履行期限が満了する前に,当事者の一方が主要な債務を履行しない旨を明確に表示し,又は自己の行為をもって表明したとき
(三)当事者の一方が主要な債務の履行を遅滞し,催告を受けた後も合理的期間内に履行しないとき
(四)当事者の一方が債務の履行を遅延し,又はその他の違約行為があり,契約の目的が実現不能となったとき
(五)法律が規定するその他の事由
2 継続的に履行する債務を内容とする期間の定めのない契約について,当事者はいつでも契約を解除することができる。但し,合理的期間前に相手方に通知しなければならない。
第564条【解除権の行使期限】
解除権の行使期限を法律が規定し又は当事者が約定している場合,期限が満了しても当事者が行使しないとき,当該権利は消滅する。
2 解除権の行使期限を法律が規定しておらず,又は当事者が約定していない場合,解除権者が解除事由を知り又は知り得べき日から1年以内に行使しないとき,又は相手方が催告した後も合理的期間内に行使しないとき,当該権利は消滅する。
第565条【解除権行使】
当事者の一方は,法に基づき契約解除を主張する場合,相手方に通知しなければならない。通知が相手方に到達したときに契約は解除される。通知に債務者が一定期限内に債務を履行しなければ契約が自動的に解除される旨が明記され,債務者が当該期限内に債務を履行しない場合,通知に明記された期限が満了したときに契約は解除される。相手方が契約解除に対して異議のある場合,いずれの一方当事者も解除行為の効力確認を人民法院又は仲裁機構に請求することができる。
2 当事者の一方が相手方に通知せず,直接に訴訟又は仲裁方式により法に基づき契約解除を主張し,人民法院又は仲裁機構が当該主張を確認した場合,契約は,訴状副本又は仲裁申立書副本が相手方に送達されたときに解除される。
第566条【契約解除の効果】
契約を解除した後,未履行の場合は履行を中止し,既に履行している場合には,履行状況及び契約の性質に基づいて,当事者は,原状回復又はその他救済措置を講じるよう請求することができ,かつ損害賠償を請求する権利を有する。
2 契約が違約により解除された場合,解除権者は,違約責任の負担を違約した一方に請求することができる。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
3 主たる契約を解除した後も,担保提供者は,債務者が負うべき民事責任に対してなお担保責任を負わなければならない。但し,担保契約に別段の約定がある場合を除く。
第567条【契約の終了と決済・清算条項の効力】
契約の権利義務関係の終了は,契約中の決済及び清算条項の効力に影響しない。
第568条【法定相殺】
当事者が相互に債務を負い,当該債務の目的物の種類,品質が同一である場合,いずれの一方も自己の債務と相手方の期限の到来した債務を相殺することができる。但し,債務の性質,当事者の約定又は法律の規定により相殺することが許されない場合を除く。
2 当事者が相殺を主張する場合,相手方に通知しなければならない。通知は相手方に到達したときから発効する。相殺には条件又は期限を付すことができない。
第569条【合意相殺】
当事者が相互に債務を負うが目的物の種類,品質が同一でない場合,協議による合意を経て相殺することもできる。
第570条【供託】
次のいずれかに該当し,債務の履行が困難である場合,債務者は,目的物を供託することができる。
(一)債権者が正当な理由なく受領を拒絶したとき
(二)債権者が行方不明であるとき
(三)債権者が死亡したが相続人,遺産管理人が確定せず,又は民事行為能力を喪失したが後見人が確定していないとき
(四)法律が規定するその他の事由
2 目的物が供託に適さず,又は供託費用が過度に高い場合,債務者は,法に基づき目的物を強制競売又は強制換価し,得た代金を供託することができる。
第571条【供託の成立】
債務者が目的物又は法に基づく目的物の強制競売,強制換価により得た代金を供託部門に引き渡したとき,供託は成立する。
2 供託が成立した場合は,債務者がその供託の範囲内で目的物を既に引き渡したものとみなす。
第572条【供託通知】
目的物を供託した後,債務者は,速やかに債権者又は債権者の相続人,遺産管理人,後見人,財産管理人に通知しなければならない。
第573条【供託期間の危険,果実,供託費用】
目的物を供託した後,毀損,滅失の危険は債権者が負う。供託期間における目的物の果実は,債権者の所有とする。供託費用は債権者が負担する。
第574条【供託物の受け取りと取り戻し】
債権者は,供託物を随時受け取ることができる。但し,債権者が債務者に対して期限の到来した債務を負う場合,債権者が債務を履行又は担保を提供する前においては,供託部門は,債務者の求めに基づき,債権者による供託物の受け取りを拒絶しなければならない。
2 債権者が供託物を受け取る権利は,供託日から5年以内に行使されない場合,消滅し,供託物は,供託費用を控除した後に国家所有となる。但し,債権者が債務者に対する期限到来債務を履行せず,又は債権者が供託部門に対して供託物を受け取る権利の放棄を書面で表示した場合,債務者は,供託費用を負担した後に供託物を取り戻す権利を有する。
第575条【債務免除】
債権者が債務者の一部又は全部の債務を免除した場合,債権債務の一部又は全部が終了する。但し,債務者が合理的期間内に拒絶した場合を除く。
第576条【債権債務の混同】
債権及び債務が同一人に帰属する場合,債権債務が終了する。但し,第三者の利益を害する場合を除く。
第八章 違約責任
第577条【違約責任の基本規則】
当事者の一方が契約義務を履行せず,又は契約義務の履行が約定に適合しない場合,履行の継続,救済措置の実施又は損害賠償等の違約責任を負わなければならない。
第578条【予期違約責任】
当事者の一方が契約上の義務を履行しない旨を明確に表示し,又は自己の行為をもって表明した場合,相手方は履行期限の到来前においても違約責任の負担を請求することができる。
第579条【❹銭債務の履行請求】
当事者の一方が代金,報酬,賃料,利息を支払わず,又はその他の金銭債務を履行しない場合,相手方はその支払いを請求することができる。
第580条【非❹銭債務の違約責任】
当事者の一方が非金銭債務を履行せず,又は非金銭債務の履行が約定に適合しない場合,相手方は履行を請求することができる。但し,次のいずれかに該当する場合を除く。
(一)法律上又は事実上,履行不能であるとき
(二)債務の目的が強制履行に適さず,又は履行費用が過度に高額なとき
(三)債権者が合理的期間内に履行請求しなかったとき
2 前項の規定する除外事由があり,契約目的が実現不能となった場合,人民法院又は仲裁機構は,当事者の請求を根拠として契約上の権利義務関係を終了させることができる。但し , 違約責任の負担には影響しない。
第581条【代替履行】
当事者の一方が債務を履行せず,又は債務の履行が約定に適合せず,債務の性質に基づいて強制履行すべきでない場合,相手方は第三者が代替履行する費用の負担をその当事者に請求することができる。
第582条【瑕疵履行の違約責任】
履行が約定に適合しない場合,当事者の約定に従って違約責任を負わなければならない。違約責任に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,損害を受けた一方は,目的の性質及び損害の大小に基づいて,修理,再製作,交換,返品,代金又は報酬の減額等の違約責任を合理的に選択し,相手方に負担を請求することができる。
第583条【義務履行・救済措置後の残余損害の賠償】
当事者の一方が契約義務を履行せず,又は契約義務の履行が約定に適合しない場合,義務を履行し又は救済措置を講じた後,相手方にさらにその他の損害があるときは,損害を賠償しなければならない。
第584条【法定の違約損害賠償】
当事者の一方が契約義務を履行せず,又は契約義務の履行が約定に適合せず,相手方に損害を与えた場合,損害賠償額は違約によって発生した損害に相当しなければならず,
契約履行後の逸失利益を含むものとする。但し,違約した当事者が契約締結時に予見し又は予見し得べきであった違約により発生し得る損害を超えてはならない。
第585条【違約❹の約定】
当事者は,一方が違約した場合に違約状況に基づいて相手方に対して一定金額の違約金を支払う旨を約定することができ,違約により発生した損害賠償額の計算方法を約定することもできる。
2 約定した違約金が発生した損害よりも低い場合,人民法院又は仲裁機構は,当事者の請求に基づいて増額することができる。約定した違約金が発生した損害より過度に高い場合,人民法院又は仲裁機構は,当事者の請求に基づいて適当な減額をすることができる。
3 当事者が履行遅延した場合の違約金について約定した場合,違約当事者は違約金を支払った後も,さらに債務を履行しなければならない。
第586条【手付❹】
当事者は,一方が相手方に債権の担保として手付金を支払う旨を約定することができる。手付金契約は,実際に手付金を交付したときに成立する。
2 手付金の金額は,当事者が約定する。但し,主たる契約の目的額の百分の二十を超えてはならず,超えた部分は手付金の効力を生じない。実際に支払われた手付金の金額が約定した金額より多い,又は少ない場合,約定した手付金の金額を変更したものとみなす。
第587条【違約手付❹の効力】
債務者が債務を履行した場合,手付金を代金に充当し,又は回収しなければならない。手付金を交付した一方が,約定した債務を履行しない,又は履行が約定に適合せず,契約目的の実現が不能となった場合,手付金の返還を請求する権利を有しない。手付金を収受した一方が,約定した債務を履行しない , 又は履行が約定に適合せず , 契約目的の実現が不能となった場合,手付金の2倍の金額を返還しなければならない。
第588条【手付❹,違約❹,法定損害賠償の適用関係】
当事者が既に違約金を約定し,同時に手付金についても約定している場合,当事者の一方が違約したときは,相手方は,違約金又は手付金に関する条項を選択して適用することができる。
2 手付金が一方の違約により発生した損害を填補するのに不足する場合,相手方は手付金の金額を超過した損害の賠償を請求することができる。
第589条【債権者の受領拒絶】
債務者が約定に従って債務を履行した場合に,債権者が正当な理由なく受領を拒絶したときは,債務者は増加した費用の賠償を債権者に請求することができる。
2 債権者の受領遅延期間において,債務者は利息を支払う必要がない。
第590条【不可抗力による契約の履行不能】
当事者の一方が不可抗力により契約の履行が不能になった場合,不可抗力の影響に基づいて一部又は全部の責任を免除する。但し,法律に別段の規定がある場合を除く。不可抗力により契約が履行不能になった場合,速やかに相手方に通知し,相手方に与える
おそれがある損害を軽減しなければならず,かつ合理的期間内に証明を提供しなければならない。
2 当事者の履行遅延後に不可抗力が発生した場合,その違約責任は免除されない。
第591条【損害拡大防止義務】
当事者の一方が違約した後に,相手方は,適切な措置を講じて損害拡大を防止しなければならない。適切な措置を講じず損害を拡大させた場合,拡大した損害について賠償を請求することはできない。
2 当事者が損害の拡大を防止するために支出した合理的費用は,違約当事者が負担する。
第592条【当事者双方の違約】
当事者がいずれも契約に違反した場合,各自が相応する責任を負わなければならない。
2 当事者の一方の違約が相手方に損害を与え,損害の発生について相手方に過失がある場合,相応する損害賠償額を減額することができる。
第593条【第三者の原因による違約】
当事者の一方は,第三者の原因によって違約した場合も,法に基づき相手方に対して違約責任を負わなければならない。当事者の一方と第三者の間の紛争は,法律の規定又は約定に従って処理する。
第594条【国際物品売買契約,技術輸出入契約に係る紛争の時効期間】
国際物品売買契約及び技術輸出入契約に係る紛争により訴訟を提起し,又は仲裁を申し立てる時効期間は4年とする。
第二分編 典型契約第九章 売買契約
第595条【売買契約の定義】
売買契約とは,売主が目的物の所有権を買主に移転し,買主が代金を支払う契約をいう。
第596条【売買契約の内容】
売買契約の内容は,一般に目的物の名称,数量,品質,代金,履行期限,履行地及び履行方式,包装方式,検査基準及び方法,決済方式,契約の使用文字及びその効力等に関する条項を含む。
第597条【無権処分の違約責任】
売主が未だ処分権を取得していないことにより目的物の所有権を移転できない場合,買主は契約を解除し,違約責任の負担を売主に請求することができる。
2 法律,行政法規が譲渡を禁止し,又は制限している目的物については,その規定に従う。
第598条【売主の基本義務】
売主は,買主に目的物を引き渡し,又は目的物を受領するため証拠証券を交付し,かつ目的物の所有権を移転する義務を履行しなければならない。
第599条【売主の関係証書交付義務】
売主は,約定又は取引慣習に従って目的物を受領するための証拠証券以外の関係する
証券及び資料を買主に交付しなければならない。
第600条【知的財産権の留保】
知的財産権を具える目的物を売却する場合,法律に別段の規定又は当事者に別段の約定がある場合を除き,当該目的物の知的財産権は買主に帰属しない。
第601条【売主の目的物引渡義務】
売主は,約定した時間に従って目的物を引き渡さなければならない。引渡期限に関する約定がある場合,売主は,当該引渡期限内の何時でも引き渡すことができる。
第602条【目的物引渡期限が不明の場合】
当事者に目的物の引渡期限に関する約定がない又は約定が不明確である場合,本法第
510条,第511条第4号の規定を適用する。
第603条【目的物の引渡地】
売主は,約定した地点で目的物を引き渡さなければならない。
2 当事者に引渡地に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,次に掲げる規定を適用する。
(一)目的物を運送する必要がある場合,売主は,目的物を第一運送人に引き渡して,買主に運送し引き渡さなければならない。
(二)目的物を運送する必要がなく,売主及び買主が契約締結時点で目的物の所在地を知っている場合,売主は,当該地点で目的物を引き渡さなければならない。目的物の所在地を知らない場合,売主は契約締結時点の営業地で目的物を引き渡さなければならない。
第604条【売買目的物危険負担の基本規則】
目的物が毀損,滅失する危険は,目的物の引き渡し前は売主が負い,引き渡した後は買主が負う。但し,法律に別段の規定があり,又は当事者に別段の約定がある場合を除く。
第605条【引渡履行遅滞と危険負担】
買主の原因により目的物が約定期限に従って引渡しがなされなかった場合,買主は約定に違反したときから目的物が毀損,滅失する危険を負わなければならない。
第606条【運送途上にある目的物売買の危険負担】
売主が,運送人により運送途上にある目的物を売買したとき,当事者に別段の約定がある場合を除き,毀損,滅失する危険は,契約の成立時から買主が負う。
第607条【運送が必要な目的物の危険負担】
売主が約定に従って目的物を買主の指定地点に運送し,かつ運送人に引き渡した後は,目的物の毀損,滅失する危険は買主が負う。
2 当事者に引渡地に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第603条第2項第1号の規定に従って目的物を運送する必要がある場合,売主が目的物を第一運送人に引き渡した後は,目的物の毀損,滅失する危険は買主が負う。
第608条【買主が目的物を受領しない場合の危険負担】
売主が約定又は本法第603条第2項第2号の規定に従って引渡地で目的物を買主に
引き渡す場合において,買主が約定に違反して受け取らないときは,目的物の毀損,滅失する危険は,約定に違反したときから買主が負う。
第609条【関連証拠証券・資料不交付の影響】
売主が約定に従って目的物に関係する証拠証券又は資料を交付しない場合,目的物が毀損,滅失する危険の移転に影響しない。
第610条【売主xx違約の危険負担】
目的物の品質が品質要件に適合しないことにより,契約目的が実現不能となった場合,買主は,目的物の受領を拒絶し又は契約を解除することができる。買主が目的物の受領を拒絶し又は契約を解除した場合,目的物が毀損,滅失する危険は売主が負う。
第611条【危険負担と違約責任の関係】
目的物が毀損,滅失する危険を買主が負う場合,売主による義務の履行が約定に適合しないことは,買主が違約責任の負担を請求する権利に影響しない。
第612条【売主の権利担保義務】
売主は,引き渡す目的物について,第三者が買主に対して当該目的物につき,いかなる権利も享有しないことを保証する義務を負う。但し,法律に別段の規定がある場合を除く。
第613条【前条の義務の免除】
買主が契約締結時に第三者が売買の目的物に対して権利を享有することを知り又は知り得べき場合,売主は前条の規定する義務を負わない。
第614条【代❹支払の中止】
買主は,第三者が目的物について権利を享有することを証明する確実な証拠を有する場合,相応する代金の支払いを中止することができる。但し,売主が適当な担保を提供する場合を除く。
第615条【目的物の品質要求】
売主は,約定した品質要求に従って目的物を引き渡さなければならない。売主が目的物の品質に関する説明を提供した場合,引き渡す目的物は,当該説明の品質要求に適合しなければならない。
第616条【目的物に関する法定品質担保義務】
当事者に目的物の品質要求に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,本法第511条第1号の規定を適用する。
第617条【目的物の品質要求不適合による違約責任】
売主が引き渡した目的物が品質要求に適合しない場合,買主は,本法第582条から第584条の規定に基づいて違約責任の負担を請求することができる。
第618条【瑕疵担保責任の軽減・免除特約】
当事者に売主が目的物の瑕疵に対して負う責任の軽減又は免除に関する約定はあるが,売主の故意又は重過失により目的物の瑕疵を買主に告知しない場合,売主は,責任の軽減又は免除を主張する権利を有しない。
第619条【目的物の包装】
売主は,約定した包装方式に従って目的物を引き渡さなければならない。包装方式に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,通用の方式に従って包装しなければならず,通用の方式がない場合,目的物を保護するに足り,かつ資源節約,生態環境保護に有用な包装方式を採用しなければならない。
第620条【買主の検査義務】
買主は,目的物を受領したとき,約定した検査期限内に検査しなければならない。検査期限に関する約定がない場合,速やかに検査しなければならない。
第621条【目的物検査の異議通知】
当事者に検査期限に関する約定がある場合,買主は検査期限内に目的物の数量又は品質が約定に適合しない状況について売主に通知しなければならない。買主が通知を怠った場合,目的物の数量又は品質は約定に適合するものとみなす。
2 当事者に検査期限に関する約定がない場合,買主は目的物の数量又は品質が約定に適合しないことを発見し又は発見し得べき合理的期間内に売主に通知しなければならない。買主が合理的期間内に通知せず又は目的物を受領した日から2年以内に売主に通知しない場合,目的物の数量又は品質は約定に適合するものとみなす。但し,目的物に品質保証期がある場合,品質保証期を適用し,当該2年の規定を適用しない。
3 売主がその提供した目的物が約定に適合しないことを知り又は知り得べき場合,買主は,前2項の規定する通知時間の制限を受けない。
第622条【検査期限等の特則】
当事者が約定した検査期限が過度に短く,目的物の性質及び取引慣習に基づいて,買主が検査期限内に全面的な検査完了が困難である場合,当該期限は,買主が外観上の瑕疵に対してのみ異議を提出する期限とみなす。
2 約定した検査期限又は品質保証期が法律,行政法規の規定する期限よりも短い場合,法律,行政法規に定める期限を基準としなければならない。
第623条【数量,外観上の瑕疵に対する検査】
当事者に検査期限に関する約定がなく,買主が署名した送り状,確認書等に目的物の数量,型番,規格が明記されている場合,買主は数量及び外観上の瑕疵に対して既に検査したものと推定する。但し,これを覆すに足りる関連証拠がある場合を除く。
第624条【検査基準】
売主が買主の指示に従って第三者に目的物を引き渡し,売主と買主が約定した検査基準と買主と第三者が約定した検査基準が一致しない場合,売主と買主が約定した検査基準を基準とする。
第625条【売主の目的物回収義務】
法律,行政法規の規定又は当事者の約定に従って,有効使用年限が満了した後に目的物を回収しなければならない場合,売主は自ら又は第三者に委託して目的物を回収する
義務を負う。
第626条【買主の代❹支払義務】
買主は,約定した数額及び支払方式に従って代金を支払わなければならない。代金又は支払方法に関する約定がない又は約定が不明確である場合,本法第510条,第
511条第2号及び第5号の規定を適用する。
第627条【代❹支払地】
買主は,約定した地点で代金を支払わなければならない。支払地に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,買主は売主の営業地で支払わなければならない。但し,代金の支払いが目的物の引渡し又は目的物受領証の交付を条件とする旨の約定がある場合,目的物を引渡し又は目的物受領証を交付する場所で代金を支払う。
第628条【代❹の支払時期】
買主は,約定した時期に従って代金を支払わなければならない。支払時期に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,買主は目的物又は目的物受領証の受け取りと同時に支払わなければならない。
第629条【目的物超過提供の処理】
売主が目的物の数量を超過して提供した場合,買主は超過分を受領し又は受領を拒絶することができる。買主は超過分を受領する場合,約定した価格に従って代金を支払う。買主は超過分の受領を拒絶する場合,速やかに売主に通知しなければならない。
第630条【目的物果実の帰属】
目的物の引渡し前に生じた果実は売主の所有とし,引渡し後に生じた果実は買主の所有とする。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第631条【主物,従物と契約解除の効力】
目的物の主物が約定に適合しないことにより契約が解除された場合,契約解除の効力は従物に及ぶ。目的物の従物が約定に適合しないことにより契約が解除された場合,解除の効力は主物に及ばない。
第632条【一部目的物の契約解除】
目的物が複数の物であり,そのうちの一つの物が約定に適合しない場合,買主は当該物について解除することができる。但し,当該物と他物を分離することにより目的物の価値が明らかに害される場合,買主は複数の物について契約を解除することができる。
第633条【数次売買の契約解除】
売主が数次に目的物を引き渡す場合,売主がそのうちの1回の目的物の引渡をせず又は引渡が約定に適合せず,当該目的物につき契約目的が実現不能となったときは,買主は当該回の目的物について解除することができる。
2 売主がそのうちの1回の目的物の引渡をせず又は引渡が約定に適合せず,以後のその他各回の目的物引渡では契約目的が実現不能となった場合,買主は,当該回の目的物及び以後のその他各回の目的物について解除することができる。
3 買主がそのうちの1回の目的物について解除し,当該回の目的物とその他各回の目的物が相互に依存する場合,既に引き渡した目的物及び未だ引き渡していない目的物について解除することができる。
第634条【割賦売買の契約解除】
分割払いを行う買主の期限到来代金の未払い金額が総額の5分の1に達し,催告を受けた後の合理的期間内になお期限到来代金を支払わない場合,売主は買主に対して代金全額の支払い,又は契約解除を請求することができる。
2 売主が契約を解除する場合,買主に対して当該目的物の使用料の支払いを請求することができる。
第635条【見本品売買】
見本品売買の当事者は,見本品を密封保存しなければならず,見本品の品質について説明することができる。売主が引き渡す目的物は,見本品及びその説明の品質と同一でなければならない。
第636条【見本品売買における瑕疵担保責任】
見本品売買の買主が見本品に隠れた瑕疵があることを知らない場合,引き渡した目的物が見本品と同一であっても,売主が引き渡す目的物の品質は,なお同種の物の通常の品質基準に適合しなければならない。
第637条【試用販売における目的物の使用期限】
試用販売の当事者は,目的物の試用期限を約定できる。試用期限に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,売主が確定する。
第638条【試用販売】
試用販売の買主は,試用期限内に目的物を購入することができ,購入を拒絶することもできる。試用期限が満了し,買主が目的物を購入するか否かについて意思表示を行わない場合,購入するものとみなす。
2 試用販売の買主が試用期限内に既に代金の一部を支払い,又は目的物に対して売却,賃貸,担保物権の設定等の行為を実施した場合,買主が購入に同意したものとみなす。
第639条【試用販売の約定が不明な場合】
試用販売の当事者に目的物の使用料に関する約定がない又は約定が不明確である場合,売主は買主に支払いを請求する権利を有しない。
第640条【試用販売における危険負担】
目的物が試用期限内に毀損,滅失する危険は売主が負う。
第641条【所有権留保】
当事者は,売買契約において買主が代金の支払い又はその他の義務を履行しない場合,目的物所有権が売主に属する旨を約定することができる。
2 売主が目的物に対して留保する所有権は,登記を経なければ,善意の第三者に対抗することができない。
第642条【所有権留保売買と売主の目的物取戻権】
当事者に,売主が契約目的物の所有権を留保する旨の約定があり,目的物所有権が移転する前に買主が次のいずれかに該当して売主に損害を与えた場合,当事者に別段の約定がある場合を除き,売主は目的物を取り戻す権利を有する。
(一)約定に従った代金の支払いをせず,催告後の合理的期間内になお支払わないとき
(二)約定に従った特定条件を完成していないとき
(三)目的物の売却,質権設定又はその他不当な処分を行ったとき
2 売主は買主との協議を経て目的物を取り戻すことができる。協議が調わない場合,担保物権の実行手続を参照適用することができる。
第643条【買主による買戻し,売主による再売買】
売主が前条第1項の規定によって目的物を取り戻した後,双方が約定した,又は売主が指定した合理的な買戻期間内に,目的物を売主が取り戻すための事由が消滅した場合,買主は,目的物の買戻しを請求することができる。
2 買主が買戻期間内に目的物を買い戻さない場合,売主は,合理的価格により目的物を第三者に売却することができる。売却により得た代金から原買主の未払代金及び必要費用を控除した後になお残余がある場合は,原買主に返還しなければならない。不足する部分は原買主が弁済する。
第644条【入札募集応札売買の手続】
入札募集応札売買の当事者の権利と義務及び入札募集手続等は,関係の法律,行政法規の規定に従う。
第645条【競売手続の関連規定】
競売の当事者の権利と義務及び競売手続等は,関係の法律,行政法規の規定に従う。
第646条【他の有償契約への準用】
法律にその他の有償契約に関する規定がある場合,その規定に従う。規定がない場合,売買契約の関連規定を参照適用する。
第647条【交換取引への準用】
当事者に交換取引に関する約定があり,目的物の所有権を移転する場合,売買契約の関係規定を参照適用する。
第十章 電力,水,ガス,熱供給使用契約第648条【電力供給使用契約の定義】
電力供給使用契約とは,電力供給者が電力使用者に電力を供給し,電力使用者が電気料金を支払う契約である。
2 社会公衆に対して電力を供給する者は,電力使用者の合理的な契約締結の要求を拒絶してはならない。
第649条【電力供給使用契約の内容】
電力供給使用契約の内容は,一般に電力供給の方式,品質,時間,電力使用容量,住所,
性質,計量方式,電力価格,電気料金の精算方式,電力供給使用施設の保守責任等に関する条項を含む。
第650条【電力供給使用契約の履行地】
電力供給使用契約の履行地は,当事者の約定に従う。当事者に約定がない又は約定が不明確である場合,電力供給施設の財産権境界点を履行地とする。
第651条【電力供給者の義務】
電力供給者は,国家が規定する給電品質基準及び約定に従って安全に電力を供給しなければならない。電力供給者が国家が規定する給電品質基準及び約定に従って安全な電力供給を行わず電力使用者に損害を与えた場合,賠償責任を負わなければならない。
第652条【電力供給中断の通知義務】
電力供給者は,電力供給施設の定期整備,臨時整備,法に基づく電力供給制限又は電力使用者による違法な電力使用等の原因により,電力供給を中断する必要があるときは,国家の関係規定に従って電力使用者に事前に通知しなければならない。電力供給の中断を電力使用者に事前に通知せず電力使用者に損害を与えた場合,賠償責任を負わなければならない。
第653条【電力供給者の修理義務等】
自然災害等の原因により給電が中断した場合,電力供給者は国家の関係規定に従って速やかに応急修理を行わなければならない。速やかに応急修理を行わず電力使用者に損害を与えた場合,賠償責任を負わなければならない。
第654条【電力使用者の遵守義務】
電力使用者は,国家の関係規定及び当事者の約定に従って速やかに電気料金を支払わなければならない。電力使用者が期限を徒過しても電気料金を支払わない場合,約定に従って違約金を支払わなければならない。催告を受けた電力使用者が合理的期間内になお電気料金及び違約金を支払わない場合,電力供給者は,国家の規定する手続に従って電力供給を中止することができる。
2 電力供給者は,前項の規定に従って電力供給を中止する場合,電力使用者に事前に通知しなければならない。
第655条【電力使用者の電力使用上の義務】
電力使用者は,国家の関係規定及び当事者の約定に従って安全に,節約して,計画的に電力を使用しなければならない。電力使用者が国家の関係規定及び当事者の約定に従った安全な電力使用を行わず,電力供給者に損害を与えた場合,賠償責任を負わなければならない。
第656条【他の供給契約への参照】
水,ガス,熱の供給使用契約には,電力供給使用契約の関係規定を参照適用する。
第十一章 贈与契約
第657条【贈与契約の定義】
贈与契約とは,贈与者が自己の財産を受贈者に無償で与え,受贈者が贈与の受取りの意思表示をする契約をいう。
第658条【贈与の取消と制限】
贈与者は,贈与財産の権利が移転する前に贈与を取り消すことができる。
2 公証を経た贈与契約又は法に基づき取り消すことができない被災者救済,貧困扶助,障害者支援等の公益性,道徳義務の性質を有する贈与契約には,前項の規定を適用しない。
第659条【贈与財産の関係手続】
贈与財産が法に基づき登記又はその他の手続が必要である場合,関係手続を行わなければならない。
第660条【目的物引渡請求権,贈与財産の毀損・滅失】
公証を経た贈与契約又は法に基づき取り消すことができない被災者救済,貧困扶助,障害者支援等の公益性,道徳的義務の性質を有する贈与契約又は公証を経た贈与契約において,贈与者が贈与財産を引き渡さない場合,受贈者は引渡しを請求することができる。
2 前項の規定に従って引き渡すべき贈与財産が贈与者の故意又は重大な過失によって毀損,滅失した場合,贈与者は賠償責任を負わなければならない。
第661条【負担付贈与】
贈与には義務を付加することができる。
2 贈与に義務が付加されている場合,受贈者は約定に従って義務を履行しなければならない。
第662条【贈与財産の瑕疵担保責任】
贈与財産に瑕疵がある場合,贈与者は責任を負わない。義務を付加した贈与において,贈与財産に瑕疵がある場合は,贈与者は付加された義務の限度内で売主と同一の責任を負う。
2 贈与者は,故意に瑕疵を告知せず又は瑕疵がないことを保証し,受贈者に損害を与えた場合,賠償責任を負わなければならない。
第663条【贈与契約の取消事由】
受贈者が次のいずれかに該当する場合,贈与者は贈与を取り消すことができる。
(一)贈与者又は贈与者の近親族の合法的権益を著しく侵害したとき
(二)贈与者に対して扶養義務を負うが履行しないとき
(三)贈与契約で約定した義務を履行しないとき
2 贈与者の取消権は,取消事由を知り又は知り得べき日から1年以内に行使する。
第664条【贈与契約の取消事由2】
受贈者の違法行為により贈与者が死亡し又は行為能力を喪失した場合,贈与者の相続人又は法定代理人は贈与を取り消すことができる。
2 贈与者の相続人又は法定代理人の取消権は,取消しの事由を知り又は知り得べき日か
ら6か月以内に行使する。
第665条【贈与契約取消の効果】
取消権者は贈与を取り消した場合,受贈者に対して贈与財産の返還を請求することができる。
第666条【贈与義務の履行を免れる場合】
贈与者の経済状況が著しく悪化し,その生産経営又は家庭生活に重大な影響を与えた場合,贈与義務を履行しなくてもよい。
第十二章 貸❹契約(❹銭消費貸借契約)第667条【貸❹契約の定義】
貸金契約とは,借主が貸主から資金を借り入れ,期限に借入金を返還し,かつ利息を支払う契約をいう。
第668条【貸❹契約の形式,内容】
貸金契約は書面形式を採用しなければならない。但し,自然人間の資金で別段の約定がある場合を除く。
2 貸金契約の内容は,一般に借入金の種類,貨幣の種類,用途,金額,金利,期限及び返還方式等に関する条項を含む。
第669条【借主のxx状況提供義務】
貸金契約を締結する場合,借主は貸主の求めに従って借入金と関係がある業務活動及び財務状況に関するxxの状況を提供しなければならない。
第670条【利息天引きの禁止】
借入金の利息は,事前に元本から控除してはならない。利息を事前に元本から控除した場合,実際の借入金の金額に従って借入金を返還し,かつ利息を計算しなければならない。
第671条【貸付❹の提供・受領に関する約定違反】
貸主は,約定した期日,金額に従った貸付金の提供を行わず,借主に損害を与えた場合,損害を賠償しなければならない。
2 借主は,約定した期日,金額に従って借入金を受け取らない場合,約定した期日,金額に従って利息を支払わなければならない。
第672条【貸主の検査,監督権】
貸主は,約定に従って借入金の使用状況について検査,監督することができる。借主は,約定に従って関連の財務会計報告又はその他の資料を貸主に定期的に提供しなければならない。
第673条【借入❹の違約使用と貸主の権利】
借主が約定した借入金の用途に従った借入金の使用を行わない場合,貸主は,貸付金の提供を停止し,貸付金の回収を繰り上げ又は契約を解除することができる。
第674条【貸❹利息の支払】
借主は約定した期限に従って利息を支払わなければならない。利息支払期限に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合において,借入期間が1年未満であるときは,借入金の返還時に併せて支払わなければならない。借入期間が1年以上であるときは,満1年が経過するごとに支払わなければならず,残存期間が1年未満であるときは,借入金の返還時に併せて支払わなければならない。
第675条【返還期限】
借主は,約定した期限に従って借入金を返還しなければならない。借入期限に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,借主はいつでも返還することができる。貸主は合理的期間内の返還を借主に催告することができる。
第676条【遅延利息】
借主は,約定した期限に従って借入金の返還を行わない場合,約定又は国家の関係規定に従って遅延利息を支払わなければならない。
第677条【期限前の返還】
借主が借入金の返還を繰り上げる場合,当事者に別段の約定がある場合を除き,実際の借入期間に従って利息を計算しなければならない。
第678条【期限の延長】
借主は,返還期限が満了する前に貸主に期限延長を申請することができる。貸主が同意した場合,期限を延長することができる。
第679条【自然人間貸❹契約の要物性】
自然人間の貸金契約は,貸主が貸付金を提供したときに成立する。
第680条【自然人間貸❹契約の貸❹利率制限】
高利による貸金契約を禁止する。借入金の利率は,国家の関係規定に違反してはならない。
2 貸金契約に利息支払に関する約定がない場合,無利息とみなす。
3 貸金契約の利息支払いに関する約定が不明確であり,当事者が補充協議を合意できない場合,当地又は当事者の取引方式,取引慣習,市場利率等の要素に従って利息を確定する。自然人間の貸金の場合は,無利息とみなす。
第十三章 保証契約第xx 一般規定
第681条【保証契約の定義】
保証契約とは,債権の実現を保障するために,保証人と債権者が,債務者が期限到来債務を履行せず又は当事者が約定した事由が発生したときに,保証人が債務を履行し又は責任を負う旨を約定する契約をいう。
第682条【保証契約の附従性】
保証契約は,主たる債権債務契約の従たる契約とする。主たる債権債務契約が無効である場合,保証契約は無効とする。但し,法律に別段の規定がある場合を除く。
2 保証契約の無効が確認された後に,債務者,保証人,債権者に過失があった場合,その過失に基づいて各自が相応する民事責任を負わなければならない。
第683条【保証人の資格】
機関法人は保証人となることができない。但し,国務院の承認を得て外国政府又は国際経済組織の借款を使用して転貸を行う場合を除く。
2 公益を目的とする非営利法人,非法人組織は保証人となることができない。
第684条【保証契約の内容】
保証契約の内容は,一般に,保証される主たる債権の種類,金額,債務者の債務履行期限,保証の方式,保証の範囲及び期間等の条項を含む。
第685条【保証契約の形式】
保証契約は,単独で締結する書面契約とすることができ,主たる債権債務契約中の保証条項とすることもできる。
2 第三者が一方的に書面形式で債権者に保証をなし,債権者がこれを受け取りかつ異議を述べない場合,保証契約が成立する。
第686条【保証の方式】
保証の方式は,一般保証及び連帯責任保証を含む。
2 当事者が保証契約中で保証の方式に関する約定を行っておらず,又は約定が不明確である場合,一般保証に従って保証責任を負う。
第687条【一般保証】
当事者が保証契約中で,債務者が債務を履行することができないとき,保証人が保証責任を負う旨を約定する場合を一般保証とする。
2 一般保証の保証人は,主たる契約の紛争において裁判又は仲裁を経ず,かつ債務者財産について法に基づき強制執行を行ってもなお債務が履行不能となる前においては,債権者に対して保証責任の負担を拒絶する権利を有する。但し,次に掲げる状況がある場合を除く。
(一)債務者が行方不明であり,かつ執行可能な財産がないとき
(二)人民法院が既に債務者の破産事件を受理したとき
(三)債務者の財産が全ての債務を履行するのに不足すること又は債務履行能力がないことを証明する証拠を債権者が有するとき
(四)保証人が本項の規定する権利の放棄を書面で表示したとき
第688条【連帯責任保証】
当事者が保証契約中で,保証人及び債務者が債務について連帯して責任を負う旨を約定する場合を,連帯責任保証とする。
2 連帯責任保証の債務者が期限到来債務を履行せず又は当事者が約定した事由が発生し
たときは,債権者は,債務者に債務の履行を請求することができ,保証人にその保証の範囲内で保証責任の負担を請求することもできる。
第689条【反担保】
保証人は,反担保の提供を債務者に求めることができる。
第690条【根保証】
保証人と債権者は協議により根保証契約を締結し,最高債権額の限度内において一定期間連続して発生する債権に保証を提供する旨を約定することができる。
2 根保証契約には,本章の規定の他,本法第二編の根抵当権の関係規定を参照適用する。
第二節 保証責任
第691条【保証責任の範囲】
保証の範囲は,主たる債権及びその利息,違約金,損害賠償金及び債権を実現するための費用を含む。当事者に別段の約定がある場合,その約定に従う。
第692条【保証期間】
保証期間とは,保証人が保証責任を負うことが確定した期間であり,停止,中断及び延長を生じない。
2 債権者と保証人は,保証期間を約定することができる。但し,約定した保証期間が主たる債務の履行期限より早く,又は主たる債務の履行期限と同時に満了する場合,約定がないものとみなす。約定がない又は約定が不明確である場合,保証期間は主たる債務の履行期限が満了した日から6か月とする。
3 債権者と債務者の間に主たる債務の履行期限に関する約定がない又は約定が不明確である場合,保証期間は債権者が債務者に対して債務履行を請求した猶予期限が満了した日から計算する。
第693条【保証責任を負担しない場合】
一般保証の債権者が保証期間内に債務者に対して訴訟を提起せず又は仲裁を申し立てない場合,保証人は保証責任を負わない。
2 連帯責任保証の債権者が保証期間内に保証責任の負担を保証人に請求しない場合,保証人は保証責任を負わない。
第694条【保証債務の訴訟時効】
一般保証の債権者が,保証期間が満了する前に債務者に対して訴訟を提起し又は仲裁を申し立てた場合,保証人が保証責任の負担を拒絶する権利の消滅日から,保証債務の訴訟時効を起算する。
2 連帯責任保証の債権者が,保証期間が満了する前に保証責任の負担を保証人に請求した場合,債権者が保証責任の負担を保証人に請求した日から,保証債務の訴訟時効を起算する。
第695条【主たる債権債務変更の保証責任に対する影響】
債権者と債務者が保証人の書面同意を得ずに,協議を経て主たる債権債務の契約内容
を変更し,債務を軽減した場合,保証人はなお変更後の債務に対して保証責任を負う。債務を加重した場合,保証人は加重された部分に対して保証責任を負わない。
2 債権者と債務者が主たる債権債務の契約の履行期限を変更し,保証人の書面同意を得ていない場合,保証期間は影響を受けない。
第696条【債権譲渡と保証責任】
債権者が債権の全部又は一部を譲渡し,保証人に通知していない場合,当該譲渡は保証人に対して効力を生じない。
2 保証人と債権者の間に債権譲渡を禁止する約定があり,債権者が保証人の書面同意を得ずに債権を譲渡した場合,保証人は譲受人に対して保証責任を負わない。
第697条【債務移転と保証責任】
債権者が保証人の書面同意を得ずに,債務者による全部又は一部の債務移転を認めた場合,保証人は移転に同意していない債務に対して保証責任を負わない。但し,債権者と保証人の間に別段の約定がある場合を除く。
2 第三者が債務者として加わった場合,保証人の保証責任は影響を受けない。
第698条【一般保証人の免責】
一般保証の保証人が,主たる債務の履行期限の満了後に,債務者の執行可能財産に関するxxの状況を債権者に対して提供し,債権者が権利を放棄し,又はその行使を怠ったことにより当該財産が執行不能となった場合,保証人はその提供した執行可能財産の価値の範囲内において保証責任を負わない。
第699条【共同保証】
同一の債務に二名以上の保証人が存在する場合,保証人は保証契約で約定した保証割合に従って保証責任を負わなければならない。保証割合に関する約定がない場合,債権者はいずれか一名の保証人にその保証範囲内での保証責任の負担を請求することができる。
第700条【保証人の求償権】
保証人は,保証責任を負った後,当事者に別段の約定がある場合を除き,その負担した保証責任の範囲内で債務者に対する求償権を有し,債権者の債務者に対する権利を有する。但し,債権者の利益を害してはならない。
第701条【保証人の抗弁権】
保証人は,債務者の債権者に対する抗弁権を主張することができる。債務者が抗弁権を放棄した場合,保証人はなお債権者に抗弁を主張する権利を有する。
第702条【債務者が債権者に相殺権,取消権を有する場合】
債務者が債権者に対して相殺権又は取消権を有する場合,保証人は相応する範囲内で保証責任の負担を拒絶することができる。
第十四章 賃貸借契約
第703条【賃貸借契約の定義】
賃貸借契約とは,賃貸人が賃貸目的物を賃借人に引き渡して使用,收益させ,賃借人が賃料を支払う契約をいう。
第704条【賃貸借契約の内容】
賃貸借契約の内容は,一般に賃貸目的物の名称,数量,用途,賃貸借期限,賃料及びその支払期限と方式,賃貸目的物の修繕等に関する条項を含む。
第705条【賃貸借契約の期限】
賃貸借期限は,20年を超えてはならない。20年を超えた場合は,超過部分は無効とする。
2 賃貸借期限が満了した場合,当事者は賃貸借契約を更新することができる。但し,約定した賃貸借期限は,更新した日から20年を超えてはならない。
第706条【賃貸借契約と賃貸借契約登記届出手続】
当事者が法律,行政法規の規定に従った賃貸借契約登記届出手続を行わない場合,契約の効力に影響しない。
第707条【賃貸借契約の形式】
賃貸借期限が6か月以上である場合,書面でしなければならない。当事者が書面形式を採用せず,賃貸借期限を確定することができない場合,期限の定めのない賃貸借とみなす。
第708条【賃貸人の基本義務】
賃貸人は,約定に従って賃貸目的物を賃借人に引き渡し,かつ賃貸借期限内に賃貸目的物が約定した用途に適合することを保持しなければならない。
第709条【賃借人の基本義務】
賃借人は,約定した方法に従って賃貸目的物を使用しなければならない。賃貸目的物の使用方法に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合は,賃貸目的物の性質に基づいて使用しなければならない。
第710条【賃貸目的物使用による損耗】
賃借人は,約定した方法又は賃貸目的物の性質に従って賃貸目的物を使用し,賃貸目的物が損耗した場合,賠償責任を負わない。
第711条【賃貸目的物用法違反による契約解除】
賃借人が約定した方法又は賃貸目的物の性質に従って賃貸目的物を使用せず,賃貸目的物が損害を受けた場合,賃貸人は契約を解除し,損害賠償を請求することができる。
第712条【賃貸人の目的物維持修繕義務】
賃貸人は,賃貸目的物の維持修繕義務を履行しなければならない。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第713条【目的物維持修繕義務の補充規定】
賃借人は,賃貸目的物の維持修繕が必要であるときは,合理的期間内の維持修繕の実
施を賃貸人に請求することができる。賃貸人が維持修繕義務を履行しない場合,賃借人は,自ら維持修繕を行うことができ,維持修繕費用は賃貸人が負担する。賃貸目的物の維持修繕が賃借人の使用に影響を与えた場合,相応に賃料を減額し又は賃貸借期間を延長しなければならない。
2 賃借人の過失により賃貸目的物の維持修繕が必要である場合,賃貸人は前項の規定する維持修繕義務を負わない。
第714条【賃貸目的物の保管義務】
賃借人は,賃貸目的物を適切に保管しなければならず,保管が不適切であることにより賃貸目的物が毀損,滅失した場合,賠償責任を負わなければならない。
第715条【賃貸目的物の改良等】
賃借人は,賃貸人の同意を得て,賃貸目的物に対して改良を行い又は他物を増設することができる。
2 賃借人が賃貸人の同意を得ずに賃貸目的物に対して改良を行い又は他物を増設した場合,賃貸人は原状回復又は損害賠償を賃借人に請求することができる。
第716条【賃貸目的物の転貸】
賃借人は,賃貸人の同意を得て,賃貸目的物を第三者に転貸することができる。賃借人が転貸した場合,賃借人と賃貸人の間の賃貸借契約は引き続き有効とし,第三者が賃貸目的物に損害を与えた場合,賃借人が損害を賠償しなければならない。
2 賃借人が賃貸人の同意を得ずに転貸した場合,賃貸人は契約を解除することができる。
第717条【賃貸目的物の転貸期限】
賃借人が賃貸人の同意を得て賃貸目的物を第三者に転貸し,転貸借期限が賃借人の残存する賃貸借期限を超える場合,超える部分の約定は賃貸人に対して法的拘束力を有しない。但し,賃貸人と賃借人の間に別段の約定がある場合を除く。
第718条【転貸への同意みなし】
賃貸人が賃借人による転貸を知り又は知り得べき場合,6か月以内に異議を述べないときは,賃貸人が転貸に同意したものとみなす。
第719条【転借人による未納賃料等の支払】
賃借人が賃料を滞納した場合,転借人は賃借人に代わってその未納賃料及び違約金を支払うことができる。但し,転貸借契約が賃貸人に対して法的拘束力を有しない場合を除く。
2 転借人が代わって支払った賃料及び違約金は,転借人が賃借人に支払うべき賃料に充当することができる。転借人の支払額がその支払うべき賃料の金額を超える場合,賃借人に求償することができる。
第720条【賃貸目的物からの収益の帰属】
賃貸借期限内おける賃貸目的物の占有,使用により得た収益は,賃借人の所有に帰属する。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第721条【賃料の支払期限】
賃借人は約定した期限に従って賃料を支払わなければならない。賃料の支払期限に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定することができない場合において,賃貸借期限が1年未満であるときは,賃貸借期限の満了時に支払わなければならない。賃貸借期限が1年以上であるときは,満1年が経過するごとに支払わなければならず,残存期限が1年未満であるときは,賃貸借期限の満了時に支払わなければならない。
第722条【賃料不払による契約解除】
賃借人が正当な理由なく賃料を支払わず又は支払いを遅延した場合,賃貸人は合理的期間内の支払いを賃借人に請求することができる。賃借人が期限を徒過しても支払わない場合,賃貸人は,契約を解除することができる。
第723条【賃貸人の権利瑕疵担保責任】
第三者が権利を主張したことにより,賃借人が賃貸目的物を使用,収益することができなくなった場合,賃借人は賃料の減額又は賃料の不払いを請求することができる。
2 第三者が権利を主張した場合,賃借人は速やかに賃貸人に通知しなければならない。
第724条【賃借人からの契約解除事由】
次のいずれかに該当し,賃借人の原因によらず賃貸目的物を使用することができなくなった場合,賃借人は契約を解除することができる。
(一)賃貸目的物が司法機関又は行政機関に法に基づき封印,差押えされたとき
(二)賃貸目的物の権利帰属について紛争が存在するとき
(三)賃貸目的物に法律,行政法規の使用条件に関する強制規定に違反する事由があるとき
第725条【賃貸目的物の所有権変動と賃貸借契約】
賃貸借契約に基づく賃借人の占有期限内に賃貸目的物の所有権変動が生じた場合,賃貸借契約の効力に影響しない。
第726条【家屋賃借人の優先購入権】
賃貸人は賃貸家屋を売却する場合,売却前の合理的期間内に賃借人に通知しなければならず,賃借人は同等の条件により優先的に購入する権利を有する。但し,家屋の共有者が優先購入権を行使し,又は賃貸人が家屋を近親族に売却する場合を除く。
2 賃貸人が通知義務を履行した後に,賃借人が15日以内に購入の明確な表示を行わない場合,賃借人が優先購入権を放棄したものとみなす。
第727条【賃貸家屋競売と賃借人への通知等】
賃貸人が賃貸家屋の競売を競売人に委託した場合,競売の5日前までに賃借人に通知しなければならない。賃借人が競売に参加しない場合には,優先購入権を放棄したものとみなす。
第728条【賃貸人による優先購入権行使の妨害】
賃貸人が賃借人に通知せず又は賃借人による優先購入権の行使を妨害するその他の状
況がある場合,賃借人は賠償責任の負担を賃貸人に請求することができる。但し,賃貸人と第三者が締結した家屋売買契約の効力は影響を受けない。
第729条【賃貸目的物の毀損,滅失】
賃借人の責めに帰することができない事由により,賃貸目的物の一部又は全部が毀損,滅失した場合,賃借人は賃料の減額又は賃料の不払いを請求することができる。賃貸目的物の一部又は全部が毀損,滅失したことにより,契約の目的が実現不能となった場合,賃借人は契約を解除することができる。
第730条【賃貸借期限が不明の場合】
当事者に賃貸借期限に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,不定期の賃貸借とみなす。当事者はいつでも契約を解除することができる。但し,合理的期間前に相手方に通知しなければならない。
第731条【賃貸目的物の品質不適合による解除】
賃貸目的物が賃借人の安全又は健康に危害を及ぼす場合,賃借人は,契約を締結する時点で当該賃貸目的物の品質が不適合であることを明らかに知っていたとしても,賃借人はなお契約をいつでも解除することができる。
第732条【家屋賃借人死亡時の法的効果】
賃借人が家屋の賃貸借期限内に死亡した場合,その生前の共同居住者又は共同経営者は,原賃貸借契約に従って当該家屋を賃借することができる。
第733条【賃貸借期限満了と目的物返還】
賃貸借期限が満了した場合,賃借人は賃貸目的物を返還しなければならない。返還する賃貸目的物は,約定又は賃貸目的物の性質に従って使用された後の状態に適合しなければならない。
第734条【賃貸借期限満了後の継続使用,優先賃借権】
賃貸借期限が満了したが,賃借人が賃貸目的物の使用を継続し,賃貸人が異議を述べない場合,原賃貸借契約は引き続き有効とする。但し,賃貸借の期限は不定期とする。
2 賃貸借期限が満了した場合,家屋の賃借人は,同等の条件により優先的に賃借する権利を有する。
第十五章 ファイナンスリース契約
第735条【ファイナンスリース契約の定義】
ファイナンスリース契約とは,賃貸人が賃借人による売主,賃貸目的物の選択に基づいて,売主からリース物件を購入し,賃借人に提供して使用させ,賃借人がリース料を支払う契約をいう。
第736条【ファイナンスリース契約の内容】
ファイナンスリース契約の内容には,一般にリース物件の名称,数量,規格,技術性能,検査方法,リース期限,リース料構成及びその支払期限と方式,貨幣の種類,リース期限が満了した場合のリース物件の帰属等に関する条項を含む。
2 ファイナンスリース契約は,書面形式を採用しなければならない。
第737条【ファイナンスリース契約と通謀虚偽表示】
当事者がリース物件を虚構する方式によって締結したファイナンスリース契約は無効とする。
第738条【ファイナンスリース契約と行政許可】
法律,行政法規の規定に従ってリース物件の経営使用について行政許可を取得しなければならない場合,リース貸主が行政許可を取得していないことは,ファイナンスリース契約の効力に影響しない。
第739条【リース契約目的物の交付】
リース貸主は,リース借主による売主,リース物件に対する選択に基づいて締結した売買契約において,売主は,約定に従ってリース借主に目的物を引き渡さなければならず,リース借主は,目的物の受領に関する買主としての権利を有する。
第740条【リース借主の受領拒絶権】
売主がリース借主にリース物件を引き渡す義務に違反して,次のいずれかに該当する場合,リース借主は,売主が引き渡すリース物件の受領を拒絶することができる。
(一)リース物件が約定に著しく適合しないとき
(二)約定に従ってリース物件を引き渡さず,リース借主又はリース貸主の催告を経た後,合理的期間内になお引き渡さないとき
2 リース借主はリース物件の受領を拒絶する場合,速やかにリース貸主に通知しなければならない。
第741条【リース借主の賠償請求権】
リース貸主,売主,リース借主は,売主が売買契約の義務を履行しない場合,リース借主が賠償請求権を行使する旨を約定することができる。リース借主が賠償請求権を行使する場合,リース貸主は協力しなければならない。
第742条【リース借主の賠償請求権行使とリース料支払義務】
リース借主による売主に対する賠償請求権の行使は,そのリース料の支払義務の履行に影響しない。但し,リース借主がリース貸主の技能に依存してリース物件を確定し又はリース貸主がリース物件の選択に関与した場合,リース借主は相応するリース料支払義務の軽減又は免除を請求することができる。
第743条【リース借主の賠償請求失敗時における責任負担】
リース貸主が次のいずれかに該当し,リース借主による売主に対する賠償請求が失敗した場合,xxx借主は相応する責任の負担をリース貸主に請求する権利を有する。
(一)リース物件に品質上の瑕疵が存在することを明らかに知りながらリース借主に告知しなかったとき
(二)リース借主の賠償請求権の行使時に,速やかに必要な協力を提供しなかったとき
2 リース貸主が自己のみが売主に対して行使することができる賠償請求権の行使を怠り,リース借主に損害を与えた場合,リース借主はリース貸主に賠償責任の負担を請求する
権利を有する。
第744条【売買契約内容の変更】
リース貸主は,リース借主による売主,リース物件に対する選択に基づいて締結した売買契約につき,リース借主の同意を得ずにリース借主に関係する契約内容を変更してはならない。
第745条【リース物件の所有権帰属】
リース貸主がリース物件に対して有する所有権は,登記を経なければ,善意の第三者に対抗することができない。
第746条【リース料の確定基準】
ファイナンスリース契約のリース料は,当事者に別段の約定がある場合を除き,リース物件を購入するための大部分又は全てのコスト及びリース貸主の合理的利潤に基づいて確定しなければならない。
第747条【リース物件の瑕疵担保責任】
リース物件が約定に適合せず又は使用目的に適合しない場合,リース貸主は責任を負わない。但し,リース借主がリース貸主の技能に依存してリース物件を確定し又はリース貸主がリース物件の選択に関与した場合を除く。
第748条【リース貸主の占有使用権・リース貸主に対する損害賠償請求】
リース貸主はリース借主によるリース物件の占有及び使用を保証しなければならない。
2 リース貸主が次のいずれかに該当する場合,リース借主は損害賠償をリース貸主に請求する権利を有する。
(一)正当な理由なくリース物件を回収したとき
(二)正当な理由なくリース借主によるリース物件の占有及び使用を妨害し,干渉したとき
(三)リース貸主の原因により第三者がリース物件について権利を主張するとき
(四)リース借主によるリース物件の占有及び使用に対して不当な影響を与えるその他の状況
第749条【第三者に対する侵害責任】
リース借主によるリース物件の占有期間中に,リース物件が第三者に人身損害又は財産損害を与えた場合,リース貸主は責任を負わない。
第750条【リース物件の保管・使用・維持修繕義務】
リース借主は,リース物件を適切に保管,使用しなければならない。
2 リース借主は,リース物件の占有期間中における維持修繕義務を履行しなければならない。
第751条【リース物件の毀損滅失】
リース借主によるリース物件の占有期間中にリース物件が毀損,滅失した場合,リース貸主は,リース料の支払継続をリース借主に請求する権利を有する。但し,法律に別段の規定又は当事者に別段の約定がある場合を除く。
第752条【リース料の不払い】
リース借主は約定に従ってリース料を支払わなければならない。リース借主が催告を受けた後の合理的期間内になおリース料を支払わない場合,リース貸主は全てのリース料の支払いを請求することができ,契約を解除し,リース物件を回収することもできる。
第753条【リース貸主の契約解除権】
リース借主がリース貸主の同意を得ずに,リース物件を譲渡,抵当権設定,質権設定,出資又はその他の方式により処分した場合,リース貸主はファイナンスリース契約を解除することができる。
第754条【ファイナンスリース契約の解除事由】
次のいずれかに該当する場合,リース貸主又はリース借主は,ファイナンスリース契約を解除することができる。
(一)リース貸主と売主が締結した売買契約が解除され,無効が確認され又は取り消され,かつ売買契約を新たに締結することができないとき
(二)リース物件が当事者の責めに帰すことができない原因により毀損,滅失し,かつ修復又は代替物を確定できないとき
(三)売主の原因によりファイナンスリース契約の目的が実現不能となったとき
第755条【売買契約解除等によるファイナンスリース契約解除】
売買契約が解除され,無効が確認され又は取り消されたことにより,ファイナンスリース契約が解除されたが,売主及びリース物件をリース借主が選択した場合,リース貸主は,相応する損害賠償をリース借主に請求する権利を有する。但し,リース貸主が売買契約を解除し,無効が確認され又は取り消されたことが原因である場合を除く。
2 売買契約が解除され,無効が確認され又は取り消された時点で,リース貸主が損害賠償を既に得ている場合,リース借主は相応する賠償責任を負担しない。
第756条【リース貸主の補償請求権】
リース物件がリース借主に引き渡された後に予期せず毀損,滅失した等の当事者の責めに帰すことができない原因によりファイナンスリース契約が解除された場合,リース貸主は,リース借主に対してリース物件の償却状況に基づいて補償を請求することができる。
第757条【契約期限満了とリース物件帰属の一般規定】
リース貸主とリース借主は,リース期限が満了した場合のリース物件の帰属を約定することができる。リース物件の帰属に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,リース物件の所有権はリース貸主に帰属する。
第758条【リース物件の価値返還,リース物件の返還不能】
当事者に,リース期限の満了時にリース物件はリース借主の所有に帰属する旨の約定があり,リース借主が大部分のリース料を既に支払ったが,残りのリース料を支払う能力がなく,リース貸主がこのため契約を解除し,リース物件を回収した場合において,
回収されたリース物件の価値がリース借主の未納リース料及びその他の費用を超えているときは,リース借主は相応分の返還を請求することができる。
2 当事者に,リース期限満了時にリース物件はリース貸主の所有に帰属する旨の約定があり,リース物件が毀損,滅失し又は他物と付合,混合したことによりリース借主が返還不能となった場合,リース貸主はリース借主に合理的補償を請求する権利を有する。
第759条【象徴的代❹支払時のリース物件帰属】
当事者に,リース期限満了時に,リース借主は象徴的代金のみをリース貸主に支払う必要がある旨の約定がある場合,約定したリース料に関する義務の履行が完了した後,リース物件はリース借主の所有に帰属するものとみなす。
第760条【契約無効時のリース物件帰属】
ファイナンスリース契約が無効となった場合に,当事者に当該状況下でのリース物件の帰属に関して約定があるときは,その約定に従う。約定がない又は約定が不明確であるときは,リース物件をリース貸主に返還しなければならない。但し,リース借主の原因により契約が無効となり,リース貸主がリース物件の返還を求めず又はリース貸主への返還後にリース物件の効用が明らかに低下する場合,リース物件はリース借主の所有に帰属し,かつリース借主がリース貸主に合理的補償を与える。
第十六章 ファクタリング契約
第761条【ファクタリング契約の定義】
ファクタリング契約[保理合同]は,現在有する,又は将来有する売上債権[应收账款]の債権者が,売上債権をファクタリング業者[保理人]に譲渡し,ファクタリング業者が資金を融通し,売上債権の管理又は回収,売上債権債務者の支払保証等のサービスを提供する契約である。
第762条【ファクタリング契約の内容】
ファクタリング契約の内容は,一般に業務類型,サービス範囲,サービス期限,基本取引契約の状況,売上債権の情報,ファクタリング融資又はサービス報酬,及びその支払方式等の条項を含む。
2 ファクタリング契約は書面形式を採用しなければならない。
第763条【架空売上債権を譲渡対象とする場合】
売上債権の債権者が債務者との架空売上債権を譲渡対象として,ファクタリング業者とファクタリング契約を締結した場合,売上債権の債務者は,売上債権が存在しないことを理由にファクタリング業者に対抗することができない。但し,ファクタリング業者がその架空であることを明らかに知っている場合を除く。
第764条【ファクタリング業者の譲渡通知】
ファクタリング業者は,売上債権の債務者に譲渡通知を発出する場合,ファクタリング業者の身分を表明し,かつ必要な証憑を添付しなければならない。
第765条【正当な理由のない合意変更等のファクタリング業者への効力】
売上債権の債務者が売上債権の譲渡通知の受領後において,売上債権の債権者と債務者が正当な理由なく基本取引契約の合意を変更又は終了し,ファクタリング業者に対して不利な影響を生じさせた場合,ファクタリング業者に対して効力を生じない。
第766条【償還請求権のあるファクタリング】
当事者が償還請求権のあるファクタリングを約定した場合は,ファクタリング業者は,売上債権の債権者に対してファクタリングによる融資額の元利の返還又は売上債権の買戻しを主張し,売上債権の債務者に対して売上債権の債権を主張することもできる。ファクタリング業者が売上債権の債務者に対して売上債権の債権を主張し,ファクタリングによる融資額の元利及び関連費用を控除して残額がある場合は,残額部分は売上債権の債権者に返還しなければならない。
第767条【償還請求権のないファクタリング】
当事者が償還請求権のないファクタリングを約定した場合は,ファクタリング業者は,売上債権の債務者に売上債権の債権を主張しなければならず,ファクタリング業者が取得したファクタリングによる融資額の元利及び関連費用を上回る部分は,売上債権の債権者に返還する必要はない。
第768条【ファクタリングにおける売上債権の多重譲渡】
売上債権の債権者が同一の売上債権について複数のファクタリング契約を締結したことにより,複数のファクタリング業者が権利を主張する場合,既に登記済みのものが未登記のものに優先して売上債権を取得する。いずれも既に登記済みの場合は,登記の時間的先後の順序に基づき売上債権を取得する。いずれも未登記の場合には,売上債権の債務者が最初に受け取った譲渡通知中に明記されたファクタリング業者が売上債権を取得する。未登記で未通知でもある場合には,ファクタリング融資又はサービス報酬の比率に従って売上債権を取得する。
第769条【債権譲渡規定の適用】
本章に規定がない場合,本編第六章の債権譲渡の関係規定を適用する。
第十七章 請負契約
第770条【請負契約の定義】
請負契約とは,請負人が注文者の要求に従って仕事を完成し,仕事の成果を引き渡し,注文者が報酬を支払う契約をいう。
2 請負は,加工,受注製作,修理,複製,測定試験,検査等の仕事を含む。
第771条【請負契約の内容】
請負契約の内容は,一般に請負の目的,数量,品質,報酬,請負方式,材料の提供,履行期限,検収の基準及び方法等の条項を含む。
第772条【請負人の主たる仕事完成義務】
請負人は,自己の設備,技術及び労力により,主たる仕事を完成させなければならない。
但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
2 請負人は,その請け負った主たる仕事を第三者に委ねて完成させた場合,当該第三者が完成させた仕事の成果について注文者に対して責任を負わなければならない。注文者の同意を得ていない場合,注文者は契約を解除することもできる。
第773条【請負人の補助的仕事に対する責任】
請負人は,その請け負った補助的な仕事を第三者に委ねて完成させることができる。請負人がその請け負った補助的な仕事を第三者に委ねて完成させた場合,当該第三者が完成させた仕事の成果について注文者に対して責任を負わなければならない。
第774条【請負人の材料提供と責任】
請負人が材料を提供する場合,請負人は約定に従って材料を選定して使用し,かつ注文者の検査を受けなければならない。
第775条【注文者材料提供時の双方の義務】
注文者が材料を提供する場合,注文者は約定に従って材料を提供しなければならない。請負人は,注文者が提供した材料に対して,速やかに検査を行わなければならず,約定に適合しないことを発見したときは,交換,補充又はその他補救措置を採るよう注文者に速やかに通知しなければならない。
2 請負人は,注文者が提供した材料を無断で交換してはならず,修理が不要な部品を交換してはならない。
第776条【注文者の不合理な要求と双方の義務】
請負人は,注文者が提供した図面又は技術要求が不合理であることを発見した場合,速やかに注文者に通知しなければならない。注文者が回答を怠った等の原因により請負人に損害を与えた場合,損害を賠償しなければならない。
第777条【仕事の要求変更と責任】
注文者は,請負の仕事の要求を途中で変更して請負人に損害を与えた場合,損害を賠償しなければならない。
第778条【注文者の協力援助義務】
請負の仕事の内容に注文者の協力援助が必要である場合,注文者には協力援助する義務がある。注文者が協力援助義務を履行せず請負の仕事が完成不能となった場合,請負人は合理的期間内の義務履行を注文者に催告し,かつ履行期限を順延することができる。注文者が期限を徒過しても履行しない場合,請負人は契約を解除することができる。
第779条【注文者の監督検査】
請負人は,仕事の期間において,注文者が必要とする監督検査を受け入れなければならない。注文者は,監督検査により請負人の正常な仕事を妨害してはならない。
第780条【仕事の成果の引渡等】
請負人が仕事を完成させた場合,注文者に仕事の成果を引き渡し,かつ必要な技術資料及び関係の品質証明を提出しなければならない。注文者は当該仕事の成果を検収しなければならない。
第781条【請負人の違約責任】
請負人が引き渡した仕事の成果が品質要求に適合しない場合,注文者は,修理,再製作,報酬の減額,損害賠償等の違約責任を合理的に選択しその負担を請負人に請求することができる。
第782条【注文者の報酬支払義務】
注文者は約定した期限に従って報酬を支払わなければならない。報酬の支払期限に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,注文者は請負人が仕事の成果を引き渡す時に支払わなければならない。仕事の成果の一部が引き渡された場合,注文者は相応する支払をしなければならない。
第783条【請負人の留置権】
注文者が請負人に報酬又は材料費等の代金を支払わない場合,請負人は完成した仕事の成果に対して留置権を有し,又は引渡しを拒絶する権利を有する。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第784条【請負人の保管義務】
請負人は,注文者が提供した材料及び完成した仕事の成果を適切に保管しなければならず,保管が不適切であることにより毀損,滅失した場合,賠償責任を負わなければならない。
第785条【請負人の守秘義務】
請負人は,注文者の要求に従って秘密を保持しなければならず,注文者の許可を得ずに複製品又は技術資料を保存してはならない。
第786条【共同請負人の連帯責任】
共同請負人は注文者に対して連帯して責任を負う。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第787条【注文者の任意解除権】
注文者は,請負人が仕事を完成する前において,いつでも請負契約を解除することができ,請負人に損害を与えた場合は,損害を賠償しなければならない。
第十八章 建設工事契約
第788条【建設工事契約の定義】
建設工事契約とは,請負人が建設工事を行い,発注者が代金を支払う契約をいう。
2 建設工事契約は,工事の実地調査,設計,施工の契約を含む。
第789条【建設工事契約の形式】
建設工事契約は,書面形式を採用しなければならない。
第790条【建設工事契約の入札応札】
建設工事の入札募集,応札の活動は,関係法律の規定に従って公開,xx,xxに行わなければならない。
第791条【建設工事契約の締結方式】
発注者は,総請負人と建設工事契約を締結することができ,実地調査者,設計者,施工者と個別に実地調査,設計,施工の請負契約を締結することもできる。発注者は,一人の請負人が完成すべき建設工事を複数部分に分解して複数の請負人に発注してはならない。
2 総請負人又は実地調査,設計,施工の請負人は,発注者の同意を得て,自己が請け負った一部の仕事を第三者に完成させることができる。第三者は,その完成させた仕事の成果について総請負人又は実地調査,設計,施工の請負人と共に発注者に対して連帯責任を負う。請負人は,その請け負ったすべての建設工事を第三者に全部下請け[转包]させ又はその請け負ったすべての建設工事を分解して分割請負[分包]の名義により個別に第三者に全部下請けさせてはならない。
3 請負人が関連の資質条件に適合しない組織に工事を分割請負させることを禁止する。分割請負した組織がその請け負った工事をさらに分割請負させることを禁止する。建設工事の主体構造の施工は,請負人が自ら完成させなければならない。
第792条【国家の重大な建設工事契約】
国家の重大な建設工事契約は,国家が規定する手続及び国家が承認した投資計画,実行可能性調査報告等の文書に従って締結しなければならない。
第793条【建設工事施工契約無効の場合の処理】
建設工事施工契約は無効となったが,建設工事が完成検収に合格した場合,契約工事代金の時価換価に関する約定を参照して請負人に補償することができる。
2 建設工事施工契約が無効となり,かつ建設工事が完成検収に不合格となった場合,次に掲げる内容に従って処理する。
(一)修復した後の建設工事が完成検収に合格した場合,注文者は,修復費用の負担を請負人に請求することができる。
(二)修復した後の建設工事が完成検収に不合格となった場合,請負人は,契約の工事代金の時価換価に関する規定を参照して補償を請求することはできない。
3 注文者は,建設工事が不合格となったことにより発生した損害に過失がある場合,相応する責任を負わなければならない。
第794条【実地調査契約と設計契約】
実地調査,設計の契約の内容は,一般に関係の基礎資料及び概予算等の文書の提出期限,品質要求,費用及びその他協力条件等に関する条項を含む。
第795条【施工契約の内容】
施工契約の内容は,一般に工事範囲,建設工期,中間引渡工事の着工及び竣工期日,工事の品質,工事建設費,技術資料の引渡時期,材料及び設備の供給責任,資金割当及び決済,竣工検収,品質保証範囲及び品質保証期,相互協力等の条項を含む。
第796条【工事建設監督管理】
建設工事において監督管理を実行する場合,発注者は,監督管理人と書面形式を採用
して監督管理委託契約を締結しなければならない。発注者と監督管理人の権利と義務及び法的責任は,本編の委任契約及びその他の関係法律,行政法規の規定に従わなければならない。
第797条【発注者の検査権】
発注者は,請負人の正常な作業を妨害しない状況の下で,いつでも作業の進度,品質に対して検査を行うことができる。
第798条【隠ぺい工事の検収責任】
隠ぺい工事において,請負人は,隠ぺい作業の前に発注者に検査を通知しなければならない。発注者が速やかに検査を行わない場合,請負人は,工期を順延することができ,かつ工事の停止,工事待機等による損害の賠償を請求する権利を有する。
第799条【竣工検収】
建設工事の竣工後,発注者は,施工図面及び説明書,国家が発布した施工検収規範及び品質検査基準に基づいて速やかに検収を行わなければならない。検収に合格した場合,発注者は,約定に従って代金を支払い,当該建設工事を受領しなければならない。
2 建設工事は,完成検収に合格した後に,はじめて引き渡し,使用させることができる。検収を経ず又は検収に不合格となった場合,引き渡し使用させてはならない。
第800条【実施調査者,設計者の責任】
実地調査,設計の品質が要求に適合せず又は期限に従って実地調査,設計文書を提出せずに工期を遅延させて発注者に損害を与えた場合,実地調査者,設計者は,実地調査,設計を継続して完全なものにし,実地調査,設計費を減額又は免除し,かつ損害を賠償しなければならない。
第801条【施工者の品質担保責任】
施工者の原因により建設工事品質が約定に適合しない場合,発注者は,合理的期間内の無償修理又は再工事,改築を施工者に対して請求する権利を有する。修理又は再工事,改築を行った後,期限を徒過して引き渡した場合,施工者は,違約責任を負わなければならない。
第802条【請負人による不法行為責任】
請負人の原因により建設工事が合理的使用期間内に人身損害及び財産損害を与えた場合,請負人は賠償責任を負わなければならない。
第803条【発注者の違約責任】
発注者が約定した時期及び要求に従って原材料,設備,用地,資金,技術資料の提供を行わない場合,請負人は工期を順延することができ,かつ工事停止,作業待機等による損害の賠償を請求する権利を有する。
第804条【発注者による工事中断,遅延の責任】
発注者の原因により建設工事が途中で停止又は遅延した場合,発注者は損害の填補又は低減させる措置を講じ,請負人がこれにより受けた工事停止,工事待機,返送,機械設備の移動,材料及び部品の遊休化等による損害及び実際の費用を賠償しなければなら
ない。
第805条【発注者の違約責任】
発注者が計画を変更し,提供した資料が正確でなく,又は期限に従って必要な実地調査,設計の仕事ための条件提供を行わず,実地調査,設計のやり直し,工事停止又は設計修正変更を生じた場合,発注者は,実地調査者,設計者が実際に費やした仕事量に従って費用を増額して支払わなければならない。
第806条【発注者の契約解除権】
請負人が建設工事を全部下請けさせ,違法に分割請負させた場合,発注者は契約を解除することができる。
2 発注者が提供した主たる建築材料,建築部材及び設備が強制基準に適合せず又は協力援助義務を履行せず,これによって請負人が施工不能となり,催告を受けた後の合理的期間内になお相応する義務を履行しない場合,請負人は契約を解除することができる。
3 契約を解除した後に,既に完成した建設工事の品質が合格の場合,発注者は約定に従って相応する工事代金を支払わなければならない。既に完成した建設工事の品質が不合格の場合,本法第793条の規定を参照して処理する。
第807条【請負人の工事代❹優先弁済請求権】
発注者が約定に従った代金の支払いを行わない場合,請負人は発注者に対して合理的期間内の代金の支払いを催告することができる。発注者が期限を徒過しても支払わない場合,建設工事の性質に基づいて時価換価,強制競売をすべきでない場合を除き,請負人は発注者との協議を経て当該工事を時価換価することができ,当該工事の法に基づく競売を人民法院に請求することもできる。建設工事の代金は,当該工事を時価換価又は強制競売の代金より優先的に弁済を受ける。
第808条【請負契約規定の適用】
本章に規定がない場合,請負契約の関係規定を適用する。
第十九章 運送契約第xx 一般規定
第809条【運送契約の定義】
運送契約は,運送人が旅客又は物品を運送開始地から約定した地点まで運送し,旅客,荷送人又は荷受人が運賃又は運送費用を支払う契約である。
第810条【公共運送運送人の強制締約義務】
公共運送に従事する運送人は,旅客,荷送人の通常の合理的な運送の要求を拒絶してはならない。
第811条【運送人の適時・安全運送義務】
運送人は,約定した期限又は合理的期間内に旅客,物品を約定した場所に安全に運送しなければならない。
第812条【約定又は通常の運送路線運送義務】
運送人は,約定した又は通常の運送路線に従って旅客,物品を約定した地点に運送しなければならない。
第813条【運賃等支払義務】
旅客,荷送人又は荷受人は,運賃又は運送費用を支払わなければならない。運送人が約定した又は通常のルートに従った運送を行わず運賃又は運送費用が増加した場合,旅客,荷送人又は荷受人は,増加した部分の運賃又は運送費用の支払いを拒絶することができる。
第二節 旅客運送契約
第814条【旅客運送契約の成立】
旅客運送契約は,運送人が旅客に搭乗券を発行した時に成立する。但し,当事者に別段の約定があり又は別段の取引慣習がある場合を除く。
第815条【有効な搭乗券に基づく乗車義務】
旅客は,有効な搭乗券に記載された時間,便名及び座席番号に従って乗車しなければならない。旅客は,無券乗車,乗り越し,等級を超えた乗車又は割引条件に適合しない優待搭乗券での乗車を行った場合には,不足分の運賃を支払わなければならず,運送人は規定に従って割増運賃を徴収することができる。旅客が運賃を支払わない場合は,運送人は輸送を拒絶することができる。
2 実名制旅客運送契約における旅客が搭乗券を紛失した場合,運送人に紛失・再発行手続を請求することができ,運送人は運賃及びその他不合理な費用を再度徴収してはならない。
第816条【払戻しと変更】
旅客は,自己の原因により搭乗券に記載された時間に従って搭乗することができない場合,約定した期限内に払戻し又は変更手続を行わなければならない。期限を徒過して手続を行った場合,運送人は,運賃を払い戻さなくてもよく,運送義務を負わない。
第817条【約定に従った手荷物携帯義務】
旅客は,荷物を携帯するにあたり,約定した数量限度及び品目の要求に適合しなければならない。数量限度を超過し又は品目の要求に違反して荷物を携帯する場合は,運送委託手続を行わなければならない。
第818条【危険物品等の携帯禁止】
旅客は,引火性,爆発性,有毒性,腐食性,放射性及び運送手段上人身と財産の安全に危険を及ぼすおそれのある危険物品又は禁制品を携帯し又は荷物中に入れて持ち込んではならない。
2 旅客が前項の規定に違反した場合,運送人は危険物品又は禁制品を降ろし,廃棄し又は関係部門に提出交付することができる。旅客が危険物品又は禁制品の携帯又は持込みを続けた場合,運送人は運送を拒絶することができる。
第819条【運送人の告知義務,旅客の協力援助適応義務】
運送人は安全輸送義務を厳格に履行し,安全輸送に当たり注意すべき事項を速やかに旅客に告知しなければならない。旅客は,運送人が安全輸送のために講じる合理的手配に積極的に協力援助し適応しなければならない。
第820条【運送人の運送遅延その他正常運送が不能な場合】
運送人は,有効な搭乗券に記載された時間,便名及び座席番号に従って旅客を輸送しなければならない。運送人が運送遅延又はその他正常運送が不能な場合には,速やかに旅客に対する告知及び注意喚起をし,必要な配置措置を行い,かつ旅客の要求に基づき他の運行便への乗り換えを手配し又は搭乗券を払い戻さなければならない。これにより旅客に損害を与えた場合,運送人は賠償責任を負わなければならない。但し,運送人の責めに帰することができない場合を除く。
第821条【サービス水準の変更】
運送人が無断でサービス水準を下げた場合,旅客の請求に基づいて払戻しを行い,又は搭乗券代金を減額しなければならない。サービス水準を上げた場合,搭乗券代金を追加徴収してはならない。
第822条【運送人の救助尽力義務】
運送人は,運送過程において急病,出産,危険に遭遇した旅客の救助に尽力しなければならない。
第823条【旅客死傷の賠償責任】
運送人は,運送過程における旅客の死傷に対して賠償責任を負わなければならない。但し,死傷が旅客自身の健康上の原因によって生じた場合又は死傷が旅客の故意,重過失によるものであることを運送人が証明した場合を除く。
2 前項の規定は,規定に従って搭乗券が免除され,優待搭乗券を持ち,又は運送人の許可を得て搭乗した搭乗券を所持していない旅客に適用する。
第824条【手荷物滅失毀損の賠償責任】
運送過程において旅客が携帯する物品が毀損,滅失し,運送人に過失がある場合,賠償責任を負わなければならない。
2 旅客が運送を委託した荷物が毀損,滅失した場合,物品運送の関係規定を適用する。
第三節 物品運送契約
第825条【荷送人の通告義務】
荷送人は物品運送手続を行う場合,運送人に対して,荷受人の氏名,名称又は指示に基づく荷受人,物品の名称,性質,重量,数量,受取場所等の物品運送に関する必要な状況を正確に表明しなければならない。
2 荷送人の申告が事実ではなく又は重要な状況を遺漏して運送人に損害を与えた場合,荷送人は,賠償責任を負わなければならない。
第826条【荷送人の審査承認,検査等の義務】
物品運送に審査承認,検査等の手続が必要である場合,荷送人は関係の手続が完了した文書を運送人に提出交付しなければならない。
第827条【荷送人の物品包装義務】
荷送人は,約定した方式に従って物品を包装しなければならない。包装方式に関する約定がない又は約定が不明確である場合,本法第619条の規定を適用する。
2 荷送人が前項の規定に違反した場合,運送人は運送を拒絶することができる。
第828条【危険物品運送委託時の義務】
荷送人は,引火性,爆発性,有毒性,腐食性,放射性等の危険物品の運送を委託する場合,危険物品の運送に関する国家の規定に従って危険物品に対して適切な包装を行い,危険物品標識及びラベルを掲示し,危険物品の名称,性質及び防護措置に関する書面資料を運送人に提出交付しなければならない。
2 荷送人が前項の規定に違反した場合,運送人は,運送を拒絶することができ,また相応する措置を講じて損害の発生を回避することもでき,これにより発生した費用は荷送人が負担する。
第829条【荷送人の処分権】
運送人が物品を荷受人に引き渡す前において,荷送人は運送の停止,物品の返還,到達地の変更又は物品のその他荷受人への引渡しを運送人に求めることができる。但し,運送人がこれにより受けた損害を賠償しなければならない。
第830条【運送人の通知義務と荷受人の受取義務】
運送物品の到達後,運送人が荷受人を知っている場合,荷受人に速やかに通知しなければならず,荷受人は物品を速やかに受け取らなければならない。荷受人が期限を徒過して物品を受け取った場合,運送人に保管料等の費用を支払わなければならない。
第831条【荷受人の検査義務等】
荷受人が物品を受け取る時は,約定した期限に従って物品を検査しなければならない。物品の検査期限に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,合理的期間内に物品を検査しなければならない。荷受人が約定した期限又は合理的期間内に物品の数量,毀損等について異議を述べない場合,運送人が運送証書の記載に従って既に引き渡したことの初歩的証拠とみなす。
第832条【運送人の損害賠償責任】
運送人は運送過程における物品の毀損,滅失に対して損害賠償責任を負う。但し,物品の毀損,滅失が不可抗力,物品自体の自然的性質又は合理的な損耗及び荷送人,荷受人の過失によるものであることを運送人が証明した場合には,賠償責任を負わない。
第833条【損害賠償額の確定】
物品が毀損,滅失した場合の賠償額について当事者に約定がある場合,その約定に従う。約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,引き渡し又は引き渡すべきであった時点の物品到達地の市場価格に従って計算
する。法律,行政法規に賠償額の計算方法及び賠償限度額に関する別段の規定がある場合,その規定に従う。
第834条【相次運送の責任負担】
二名以上の運送人が同一の運送方式により相次いで運送する場合,荷送人と契約を締結した運送人が運送の全過程に対して責任を負わなければならない。ある運送区間で損害が発生した場合,荷送人と契約を締結した運送人及び当該区間の運送人が連帯して責任を負う。
第835条【不可抗力による物品滅失】
物品が運送過程において不可抗力により滅失し,運送費を受け取っていない場合,運送人は運送費の支払いを請求してはならない。運送費を既に受け取っていた場合,荷送人は返還を請求することができる。法律に別段の規定がある場合,その規定に従う。
第836条【運送人の留置権】
荷送人又は荷受人が運送費,保管費又はその他の費用を支払わない場合,運送人は相応する運送物品に対して留置権を有する。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第837条【物品の供託】
荷受人が不明であり又は荷受人が正当な理由なく物品の受取りを拒絶した場合,運送人は法に基づき物品を供託することができる。
第四節 複合運送契約
第838条【複合運送事業者の権利義務】
複合運送事業者は,複合運送契約を履行し,又は履行を手配する責任を負い,運送の全過程に対して運送人としての権利を有し,運送人としての義務を負う。
第839条【複合運送事業者と区間運送人の責任】
複合運送事業者は,複合運送に参加する各区間の運送人と複合運送契約の各区間の運送について相互間の責任を約定することができる。但し,当該約定は,複合運送事業者が運送の全過程に対して負う義務に影響しない。
第840条【複合運送証書の発行】
複合運送事業者は,荷送人から物品の引渡しを受けるとき,複合運送証書を発行しなければならない。荷送人の要求に従って,複合運送書類は譲渡可能証書とすることができ,譲渡不可証書とすることもできる。
第841条【荷送人の損害賠償責任】
荷送人が物品運送を委託する時点の過失により複合運送事業者に損害を与えた場合,荷送人が複合運送証書を既に譲渡していたとしても,なお賠償責任を負わなければならない。
第842条【賠償責任の法律適用】
物品の毀損,滅失が複合運送のある運送区間で発生した場合,複合運送事業者の賠償責任及び責任限度額は,当該区間の運送方式を調整する関係法律の規定を適用する。物
品の毀損,滅失が発生した運送区間を確定できない場合,本章の規定に従って賠償責任を負う。
(つづく)