Contract
土木工事における
工事請負契約における
設計変更ガイドライン
設計変更手続きの明確化
平成30年4月 xx市建設緑政局
○ はじめに
平成26年6月に『公共工事の品質確保の促進に関する法律』が改正され、改正品確法の基本理念に「請負契約の当事者が対等の立場における合意に基づいてxxな契約を適正な額の請負契約代金で締結」が示されているとともに、「設計図書に適切に施工条件を明示するとともに、必要があると認められたときは、適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金又は工期の変更を行うこと」が規定されています。
建設緑政局における設計変更ガイドライン(以下「本ガイドライン」という。)は
、設計・監督を担当する職員用として平成24年7月に策定、使用していたものですが、今回、設計変更を円滑・適切に行うための受発注者双方の共通の手引書として使用するために対象事項や必要な手続きなどを新たに整理して取りまとめたものです。
なお、本ガイドラインは、xx市工事請負契約約款(以下「契約約款」という。)に基づいて契約した建設緑政局及び各区役所道路公園センター発注の公共工事に適用するものです。
目 次
Ⅰ 設計変更ガイドライン
1.設計変更ガイドラインの目的 1
(1)背景と目的 1
(2)発注者・受注者の留意事項 1
2.設計変更が不可能なケース 2
◆基本事項 2
3.設計変更が可能なケース 3
◆基本事項 3
(1)設計図書に誤びゅう又は脱漏がある場合の手続き(契約約款第19
5
条第1項の(2))
(2)設計図書の表示が明確でない場合の手続き(契約約款第19条第1
6
項の(3))
(3)設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場
7
が一致しない場合の手続き(契約約款第19条第1項の(4))
(4)工事中止の場合の手続き(契約約款第21条) 8
(5)受注者からの請求による工期の延長(契約約款第22条) 9
(6)発注者の請求による工期の短縮(契約約款第23条) 10
(7)「設計図書の照査」の範囲を超えるもの 11
4.設計変更手続きフロー 12
(1)契約約款第19条に基づく設計変更 12
(2)契約約款第20条に基づく設計変更 13
5.設計変更に関わる資料の作成 14
6.指定・任意の使い分け 15
◆基本事項及び留意事項 15
Ⅱ 設計変更事例 17
1. 設計変更ガイドラインの目的
(1)背景と目的
xx市建設緑政局及び各区役所道路公園センターでは、市民生活や経済活動の基盤となる道路、河川、橋梁、公園等の社会資本を整備・維持管理するため、様々な工事を設計し、発注している。
これら公共事業は地形、地質、天候等の多種多様な自然条件・環境条件の下で生産されるという特殊性を有している。工事発注においては、あらかじめ必要な調査、検討に基づいて設計を行っているが、予見できない事態の発生により工事内容の変更
(設計変更)が避けられない場合がある。
本ガイドラインは、工事請負契約後に設計変更を行う際の発注者及び受注者双方の留意事項や事例を挙げ、対等な立場における具体的な手続きを明示することにより設計変更の適正化・円滑化を図ることを目的としている。
(2)発注者・受注者の留意事項
発注者は、受注者が工事の目的に沿った適切な施工ができるよう必要な条件を明示した設計図書を作成し、変更の必要がある場合は、受注者に対して書面により適切な指示を行う必要がある。
受注者は、工事の目的を達せられるよう施工する義務があり、そのため施工にあたっては設計図書や現場条件、発注者の意図を事前に確認し、疑義がある場合はそれを明らかにしておく必要がある。
発注者は
設計積算にあたっては必要な調査、検討を行い、工事施工上の制約となる条件がある場合は特記仕様書等に明示するよう努め、履行中の指示は全て書面で行う。
受注者は
工事の着手にあたって設計図書を照査し、着手時点における疑義を明らかにするとともに、施工中に疑義が生じた場合には、発注者と「協議」し進めることが重要である。
工事に必要な関係機関との調整、住民合意、用地確保、法定手続などの進捗状況を踏まえ、現場の実態に即した施工条件(自然条件を含む。)の明示等により、適切に設計図書を作成し、積算内容との整合を図るよう努める。
『発注関係事務の運用に関する指針』P4 抜粋
2.設計変更が不可能なケース
【基本事項】
◆ 下記のような場合においては原則として設計変更できない。
1.設計図書に条件明示のない事項において、発注者と「協議」を行わず受注者が独自に判断して施工を実施した場合。
条件明示のない事項は、設計図書での表示が不十分、不正確、不明確で実際の工事施工にあたってどのように施工してよいか判断がつかない場合などのことである。この場合においても、受注者が勝手に判断して、施工することは不適当であるため、監督員に通知し確認を得なければならない。
2.発注者と「協議」をしているが、協議の回答がない時点で施工を実施した場合。協議とは、受注者と発注者が対等の立場で合議し、結論を得ることである。協
議の回答がない時点で施工を実施した場合は、受注者が勝手に判断して、施工したこととなるため、設計変更の対象とはならない。
3.「承諾」で施工した場合。
承諾とは受注者が自らの都合により、契約図書で明示した事項の施工方法等について監督員に同意を得るものである。設計図書と工事現場の不一致・条件明示の無い事項等の場合は契約約款 19 条に基づく発注者への確認をすることが必要であり、安易な承諾による施工は避けるべきである。
4.契約約款・xx市土木工事共通仕様書に定められている所定の手続きを経ていない場合(契約約款第 19 条~25 条、xx市土木工事共通仕様書 1-1-1-13~
1-1-1-15)。
5.正式な書面によらない事項(口頭のみの指示・協議等)の場合。
設計図書の変更を行うことで、必要に応じて工期、請負金額の変更を行うことができる。xx市土木工事共通仕様書において「設計図書の変更は、入札に際して発注者が示した設計図書を発注者が指示した内容及び設計変更の対象となることを認めた協議内容に基づき、発注者が修正することをいう。」とあり、この「指示」と「協議」については、書面により行うとされていることから、口頭での実施に際しては、受注者が勝手に判断し施工を行ったこととなるため、設計変更の対象とならない。なお、受注者は発注者の手続きに疑問が生じた場合は、発注者と手続きの確認をした上で、施工を行うこと。
※ 契約約款第 27 条(臨機の措置)については別途考慮する。
・受注者自らの都合により施工方法等について監督員の「承諾」を得たもの
⇒ 設計変更不可
・書面により対等な立場で合意して監督員の「指示」によるもの
⇒ 設計変更可能
3.設計変更が可能なケース
【基本事項】
◆契約約款にて次のように規定している
○契約約款第19条(条件変更等)抜粋
1.図面、仕様書などが一致しないとき(優先順位が定められている場合を除く)
2.設計図書の誤びゅう又は脱漏があるとき
3.設計図書の表示が明確でない
4.施工上の制約条件等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないとき
5.設計図書で明示されていない施工条件について予期することができない特別な状態が生じたとき
○契約約款第20条(設計図書の変更)抜粋
発注者が,必要があると認められるときは設計図書の変更を受注者に通知して、設計図書の変更することができる。
○契約約款第21条(工事の中止)抜粋
工事用地等が確保できないため又は受注者の責めに帰することのできないものにより、受注者が工事を施工できないと認められるとき
○契約約款第22条(受注者の請求による工期の延長)
○契約約款第23条(発注者の請求による工期の短縮等)
◆その他(共通仕様書などによるもの)
○設計図書の照査の範囲を超える作業を実施した場合(契約約款第19条)
*他にも、設計変更に関する項目として、契約約款第18条(設計図書不適合の場合の改造及び義務、破壊検査等)、第26条(賃金又は物価の変動に基づく請負金額の変更)、第27条(臨機の措置)、第31条(請負金額の変更に代える設計図書の変更)などがある。
【留意事項】
◆基本事項に当てはまる場合であっても、xxの手続きを経ていなければ設計変更による対応することはできない。
◆ 設計図書の変更にあたっては下記の事項に留意し受注者へ指示する。
1.当初設計の考え方や設計条件を再確認して、設計変更にあたる。
2.当該事業(工事)での変更の必要性を明確にし、設計図書の変更は契約約款第 20 条にもとづき書面で行う。
(規格の妥当性、変更対応の妥当性(別途発注ではないか)を明確にする。)
3.設計図書の変更に伴う契約変更の手続きは、原則、その必要が生じた都度、遅滞なく行うものとする。
4.受発注者どちらの発議であっても、契約変更手続きを行う前に受注者に作業を行わせる場合は、必ず書面にて指示を行うものとする。
5.分離発注が著しく困難で、一体施工の必要性があるものについては、適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金又は工期の変更を行うこととする。なお、変更金額が請負金額の30%を超える場合も同様とする。
【設計変更が可能なケース】
(1)設計図書に誤びゅう又は脱漏がある場合の手続き
(契約約款第 19 条第1項の(2))
○受注者は、xxx上、設計図書が誤っていると思われる点を発注者に確認すべきであり、発注者は、それが本当に誤っている場合には設計図書を訂正する必要がある。また、設計図書に脱漏がある場合には、受注者としては、自分で勝手に補って施工をつづけるのではなく、発注者に確認して、脱漏部分を訂正してもらうべきである。
発注者
受注者
確認の請求
「契約約款第 19 条(条件変更等)第1項の(2)」に基づき、その旨を直ちに監督員に通知
発注者は第4項、第5項に基づき、必要に応じて設計図書の訂正・変更(当初積算の考え方に基づく条件明示)
結果の通知
受注者及び発注者は契約約款第 24 条、第 25 条に基づき、「協議」により工期及び請負金額を定める
ex.
・施工上必要な条件等の明示がない場合
【設計変更が可能なケース】
(2)設計図書の表示が明確でない場合の手続き
(契約約款第 19 条第1項の(3))
○設計図書の表示が明確でないことは、表示が不十分、不正確、不明確で実際の工事施工にあたってどのように施工してよいか判断がつかない場合などのことである。この場合においても、受注者が勝手に判断して、施工することは不適当である。
発注者は第4項、第5項に基づき、必要に応じて設計図書の訂正・変更(当初積算の考え方に基づく条件明示)
発注者
受注者
確認の請求
「契約約款第 19 条(条件変更等)第1項の(3)」に基づき、条件明示が不明確な旨を直ちに監督員に通 知
結果の通知
受注者及び発注者は契約約款第 24 条、第 25 条に基づき、「協議」により工期及び請負金額を定める
ex.
・土質柱状図は明示されているが、地下水位が不明確な場合
・水替工実施の記載はあるが、作業時もしくは常時排水などの運転条件等の明示がない場合
【設計変更が可能なケース】
(3)設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しない場合の手続き
(契約約款第 19 条第1項の(4))
○自然的条件とは、例えば、掘削する地山の高さ、埋め立てるべき水面の深さ等の地表面の凹凸等の形状、地質、湧水の有無又は量、地下水の水位、xxxの除去すべき物の有無。
また、人為的な施工条件の例としては、地下埋設物、地下工作物、xx(捨)場、工事用道路、通行道路、工事に関係する法令等が挙げられる。
発注者
受注者
確認の請求
「契約約款第 19 条第1項の(4) 」に基づき、設計図書の条件明示(当初積算の考え)と現地条件とが一致しないことを直ちに監督員に通知
調査の結果、その事実が確認された場合、発注者は第4項・第5項に基づき、必要に応じて設計図書の訂正・変更
結果の通知
受注者及び発注者は契約約款第 24 条、第 25 条に基づき、「協議」により工期及び請負金額を定める
ex.
・設計図書に明示された土質が現地条件と一致しない場合
・設計図書に明示された地下水位が現地条件と一致しない場合
・設計図書に明示された交通誘導警備員の人数等が規制図と一致しない場合
・前頁の手続きにより行った設計図書の訂正・変更で、現地条件と一致しない場合
・その他、新たな制約等が発生した場合
【設計変更が可能なケース】
(4)工事中止の場合の手続き
(契約約款第 21条)
○受注者の責めに帰することができないものにより工事目的物等に損害を生じ若しくは工事現場の状態が変動したため、受注者が工事を施工できないと認められる場合の手続き
発注者
受注者
予期しない現場条件等のため、受注者が工事を施工することができない
「契約約款第 21 条(工事の中止)第1項」により、発注者は工事の全部又は一部の施工を原則として一時中止しなければならない。
承諾した基本計画書に基づき、施工監督及び設計変更を実施
基本計画書に基いた施工の実施
発注者は、現場管理上、最低限必要な施設・人数等を吟味し、基本計画書を承諾
不承諾の場合は、基本計画書を修正し、再度承諾を得る。
発注者より、一時中止の指示
(契約上一時中止をかけることは発注者の義務)
受注者は、xx市土木工事共通仕様書1-1-1-13 第3項に基づき、基本計画書を作成し、発注者の承
諾を得る。
ex.
・設計図書に工事着工時期が定められた場合、その期日までに受注者の責によらず施工できない場合
・警察、河川・鉄道管理者等の管理者間協議が未了の場合
・管理者間協議の結果、施工できない期間が設定された場合
・受注者の責によらない何らかのトラブル(地元調整等)が生じた場合
・設計図書に定められた期日までに詳細設計が未了のため、施工できない場合
・予見できない事態が発生し、工事を施工できない場合
・工事用地の確保が出来ない等のため工事を施工できない場合
・設計図書と実際の施工条件の相違又は設計図書の不備が発見されたため施工を続けることが困難な場合
・埋蔵文化財の発掘又は調査、その他の事由により工事を施工できない場合
【設計変更が可能なケース】
(5)受注者からの請求による工期の延長
(契約約款第22条)
○受注者は、天候の不良、関連工事の調整協力、その他受注者の責めに帰すことができない事由により工期内に工事を完成することができない場合は、発注者へその理由を明示した書面により工期延長変更を請求することができる。
受注者
発注者
発注者は、必要があると認められるときは工期を延長しなければならない。請負代金についても必要と認められるときは変更を行う。
「契約約款第 22 条(受注者の請求による工期の延長)第1項」に基づき、その理由を明示した書面により監督員に通知
協議
受注者及び発注者は契約約款第 24 条、第 25 条に基づき、「協議」により工期などを定める
ex.
・天候不良の日が例年に比べ多いと判断でき、工期の延長が生じた場合
・設計図書に明示された関連工事との調整に変更があり、工期の延長が生じた場合
・その他受注者の責めに帰することができない事由により工期の延長が生じた場合
【設計変更が可能なケース】
(6)発注者の請求による工期の短縮
(契約約款第23条)
○発注者は、特別な理由により工期を短縮する必要があるときは、工期の短縮変更を受注者に書面にて請求することができる。
受注者
発注者
発注者は、「契約約款第 23 条
(発注者の請求による工期の短縮等)第1項」に基づき、特別な理由により工期を短縮する必要があるときは、工期の短縮変更を書面により受注者に請求。
受注者は発注者からの請求に基づき、工期短縮を図るための施工計画を発注者に提出し、承諾を得る。
協議
受注者及び発注者は契約約款第 24 条、第 25 条に基づき、「協議」により工期などを定める
ex.
・工事一時中止にともない工期延長が予想され、工期短縮が必要な場合
・関連工事等の影響により、工期短縮が必要な場合
・その他の事由(地元調整、関係機関調整など)により工期の短縮が必要な場合
【設計変更が可能なケース】
(7)「設計図書の照査」の範囲をこえるもの
1.現地測量の結果、横断図を新たに作成する必要があるもの。又は縦断計画の見直しを伴う横断図の再作成が必要となるもの。
2.施工の段階で判明した推定岩盤線の変更に伴う横断図の再作成が必要となるもの。ただし、当初横断図の推定岩盤線の変更は「設計図書の照査」に含まれる。
3.現地測量の結果、排水路計画を新たに作成する必要があるもの。
4.構造物の位置や計画高さ、延長が変更となり構造計算の再計算が必要となるもの。
5.構造物の載荷高さが変更となり、構造計算の再計算が必要となるもの。
6.現地測量の結果、構造物のタイプが変更となり、構造計算の再計算が必要となるもの。
7.構造物の構造計算書の計算結果が設計図と違う場合の構造計算の再計算及び図面作成が必要となるもの。
8.基礎杭が試験杭等により変更となる場合の構造計算及び図面作成。
9.土留め等の構造計算において現地条件や施工条件が異なる場合の構造図面作成。
10.「設計要領」・「各種示方書」等との対比設計。
11.設計根拠まで遡る見直し、必要とする工費の算出。
(注1) 適正な設計図書に基づく数量の算出及び完成図については、受注者の費用負担によるものとする。
(注2) 設計図書で縦横断図が示されておらずxx市土木工事共通仕様書
「10-14-4-3 路面切削工」「10-14-4-5 切削オーバーレイ工」「10-14-4-6 オー バーレイ工」等に該当し縦横断設計を行うものは設計図書の照査に含まれる。
4.設計変更手続きフロー
必要に応じて実施
(1)契約約款第19条に基づく設計変更:条件変更等
受注者
発注者
契約約款第19条第1項第1号~5号に該当する事実を発見
通知し確認を請求
【第19条第1項】
受注者:立会い 発注者:直ちに調査の実施 【第19条第2項】
調査結果のとりまとめ
意見
【第 19 条第3項】
受理
調査終了後 14 日以内にその結果を通知(とるべき措置がある場合、当該指示を含む)※
必要があると認められるときは設計図書の訂正又は変更<発注者と受注者とが協議して発注者が行う>
・工事目的物の変更を伴わない設計図書の変更【第3号】
必要があると認められるときは設計図書の訂正又は変更
<発注者が行う>
・設計図書の訂正【第1号】
・工事目的物の変更を伴う設計図書の変更【第2号】
【第 19 条
第4項】
変更内容・変更根拠の明確化、変更図面、変更数量計算書等の変更設計図書の作成
変更設計決裁
必要があると認められるときは工期若しくは請負金額を変更【第19条第5項】
又は
請負金額の変更に代える設計図書の変更【第31条】
協議 ①工期の変更【第24条】 ②請負金額の変更【第25条】 ③設計図書の変更【第31条】
※ 契約変更手続きを行う前に受注者へ作業を行わせる場合は、所定の手続きを行い、指示書には概算額を記載する。
(2)契約約款第20条に基づく設計変更:設計図書の変更
受注者
発注者
通知 設計図書の変更【第20条】※
設計図書の変更が必要と認められたとき
変更内容・変更根拠の明確化、変更図面、変更数量計算書等の変更設計図書の作成
変更設計決裁
必要があると認められるときは工期若しくは請負金額を変更【第20条第5項】
又は
請負金額の変更に代える設計図書の変更【第31条】
協議 ①工期の変更【第24条】 ②請負金額の変更【第25条】 ③設計図書の変更【第31条】
※ 契約変更手続きを行う前に受注者へ作業を行わせる場合は、所定の手続きを行い、指示書には概算額を記載する。
■先行指示書等への概算額の記載方法
設計変更を行う為、契約変更に先だって指示を行う場合は、指示書にその内容に伴う増減額の概算額を記載する。
ただし、軽微なものについては省略することができる。
なお、緊急的に行う場合または何らかの理由により概算額の算定に時間を要する場合は、
「後日通知する」ことを添えて指示を行うものとする。
ここで記載する概算額は、「参考値」であり、契約変更額を拘束するものではない。
5.設計変更に関わる資料の作成
設計変更に関わる資料の作成についての具体的対応方法
1)設計照査に必要な資料作成
受注者は、当初設計等に対して契約約款第19条第1項に該当する事実が発見された場合、監督員にその事実が確認できる資料を書面により提出し、確認を求めなければならない。なお、これらの資料作成に必要な費用については契約変更の対象としない。
受注者
発注者
現地と設計内容の違いについて、確認できる資料を書面で提出。
第19条第1項に該当する事実を発見。
資料の作成費用は設計変更の対象としない。
2)設計変更に必要な資料作成
契約約款第19条第1項に基づき設計変更するために必要な資料の作成については、契約約款第19条第4項に基づき発注者が行うものであるが、受注者に行わせる場合は、以下の手続きによるものとする。
① 設計照査に基づき設計変更が必要な内容については、受発注者間で確認する。
② 設計変更するために必要な資料の作成について書面により協議し、合意を図った後、発注者が具体的な指示を行うものとする。
③ 発注者は、書面による指示に基づき受注者が設計変更に関わり作成した資料を確認する。
④ 書面による指示に基づいた設計変更に関わる資料の作成業務については、契約変更の対象とする。
受注者
発注者
資料の作成費用は設計変更の 対象とする。
設計変更に関わる資料を作成
し、提出する。
設計変更が必要な内容について、受発注者間で確認
必要な資料の作成ついて協議し、発注者が受注者に具体的な作業を指示
6.指定・任意の使い分け
【基本事項】
指定・任意については、契約約款第1条第3項に定められているとおり、適切に扱う必要がある。
1.任意については、その仮設、施工方法の一切の手段の選択は受注者の責任で行う。
2.任意については、その仮設、施工方法に変更があっても原則として設計変更の対象としない。
3.ただし、指定・任意ともに当初積算時の想定と現地条件が異なることによる変更は行う。
【留意事項】
◆指定・任意の使い分けにおいては下記の事項に留意する。
1.仮設、施工方法等には、指定と任意があり、発注においては、指定と任意の部分を明確にする必要がある。
2.発注者(監督者)は、任意の趣旨を踏まえ、適切な対応をするように注意が必要。
※任意における下記のような対応は不適切
・○○工法で積算しているので、「○○工法以外での施工は不可」
・標準歩掛かりではバックホウで施工となっているので、「クラムシェルでの施工は不可」
・新技術の活用について受注者から申し出があった場合に、「積算上の工法で施工」
ただし、任意であっても、当初積算時の条件と現地条件に変更がある場合は、設計変更を行う。
◎ 発注者の指定事項以外は受注者の裁量の範囲
■自主施工の原則
契約約款第1条第3項により、設計図書に指定されていなければ、工事実施の手段、仮設物等は受注者の裁量の範囲
契約約款第1条第3項
仮設、施工方法その他の工事目的物を完成するために必要な一切の手段については、この約款及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定 める。
【指定と任意の考え方】
x x | 任 意 | |
設計図書 | 施工方法等について具体的に指定す る | 施工方法等について具体的には 指定しない |
施工方法等の変更 | 発注者の指示又は承諾が必要 | 受注者の任意(施工計画書等の 修正、提出は必要) |
施工方法の変更がある場合 の設計変更 | 設計変更の対象とする | 設計変更の対象としない |
条件明示の変更に対応した 設計変更 | 設計変更の対象とする | 設計変更の対象とする |
その他 | <指定仮設とすべき事項> ・河川堤防と同等の機能を有する仮締切のある場合 ・関係官公署との協議により制約条件のある場合 ・特許工法又は特殊工法を採用する場合 ・その他、第三者に特に配慮する必要がある場合 ・他工事等に使用するため、工事完成後も存置される必要のある仮設 |
Ⅱ 設計変更事例
◆事例の分類 1.工事目的物の形状・寸法や仕様の変更
2.工事目的物の追加
3.施工数量の増減
4.施工方法等(施工場所、施工時期、工法)の変更
5.工事の中止、工事着手時期の変更、工期の変更
1-1 工事目的物の形状・寸法や仕様の変更
変更事例
用地取得を前提として工事契約した一部分について用地交渉が不調となったため、その区間では設計通りの構造で施工が不可能なことから、用地取得範囲内ですりつけ構造として変更した。
設計での仕様・施工条件
・工事用地に関する施工条件として用地取得時期を明示
・予定どおり処理出来ない場合は、監督員と協議する。と示されていた。
当初設計
・一部分について用地交渉が不調。
・用地取得範囲内ですりつけるよう暫定構造とする。
・変更した設計図書に基づき変更設計とする。
【契約約款第20条(設計図書の変更)】
変更設計
Point
契約約款第20条(設計図書の変更)では発注者は必要があると認める時は自らの意志で設計図書を変更できるとされており、工事目的物の変更を受注者に通知し、工期又は請負代金の変更を行う。
1-2 工事目的物の形状・寸法や仕様の変更
変更事例
当初想定していた支持地盤が試験杭の施工やボーリング調査結果から強度不足が判明したので、基礎工の構造を変更した。
設計での仕様・施工条件
・設計図書には土質柱状図及び支持地盤となる岩盤線が示されていた。
当初設計
・試験杭の施工やボーリング調査結果から強度不足が判明。
・試験杭の施工結果より工事一時中止を指示
・ボーリング調査を追加
・土質変更に伴う基礎杭長、基礎杭径等の変更について設計図書に明示
・一時中止の増加費用、ボーリング調査費用及び変更設計図書に基づく基礎構造の費用計上
変更設計
Point
岩盤線推定のためのボーリングはジャストポイントで行われているとは限らないので試験杭で確認することは有効。
2-1 工事目的物を完成させるための追加工種
変更事例
埋設管が工事の支障となるため、既設管を一部撤去し、埋設管の切り回し工事を追加した。
設計での仕様・施工条件
・既設管は、設計図書には示されておらず、その対処方法については監督員が別途指示する。
と示されていた。
当初設計
・埋設管が工事の支障となる。
・既設埋設管を一部撤去し、新規に切り回しする埋設管の位置、規格、数量等を設計図書に明示。
・既設埋設管の一部撤去費用と新規切り回し埋設管の敷設費用を計上。
変更設計
Point
工事に影響する可能性が大きいため特記仕様書又は図面には「存在」を記して設計変更の対象とする可能性を示唆しておき、施工過程での調査内容については速やかに監督員に通知し、その確認を請求すること。【契約約款第19条
(条件変更等)】
3-1 施工数量の増減
変更事例
一部用地において所有者との交渉が継続しているため工事を一時中止し、契約工期内に工事が完成出来ない見通しとなった。最終的に、用地取得が見込めないことから当該施工箇所の一部工事を取りやめた。
設計での仕様・施工条件
・工事用地に関する施工条件として用地取得時期が明示されていた。
また、予定どおり処理出来ない場合は、監督員と協議する。と示されていた。
当初設計
・一部用地において所有者との交渉が難航。
・工事の一時中止を指示し、工期延長を行う。
・用地未取得箇所の工事数量を減じ積算すると共に工事一時中止に伴う増加費用を計上。
変更設計
Point
やむを得ず工事を一部一時中止しなければならない場合は、数量増減に伴う設計図書の変更を行う。【契約約款第20条(設計図書の変更)】
3-2 施工数量の増減
変更事例
工事施工箇所に家屋移転補償済みの家屋があるが、当初想定していた時期より移転が遅れたため当該施工箇所の一部工事を取りやめた。
設計での仕様・施工条件
・用地未取得地の範囲、確保見込み時期が設計図書に示されていなかった。
当初設計
・当初想定した移転時期より遅れた。
・工事の一部中止を指示すると共に設計図書の変更を行う。
・変更した設計図書に基づき変更設計とする。
【契約約款第20条(設計図書の変更)】
変更設計
Point
用地の確保時期は施工計画に影響を与えるため、移転未了の見込み時期等も明示しておく必要がある。
4-1 施工方法等の変更
変更事例
排水基準を満足する水質で排水したところ、渇水のために水質汚濁が危惧されたため、濁水処理設備を追加した。
設計での仕様・施工条件
・当初設計図書には水質汚濁に関する特別な事項は示されていなかった。
当初設計
・渇水のために水質汚濁が危惧された。
・水質管理に伴う処理剤及び濁水処理設備の機能、稼働時間について明示。
・変更積算は濁水処理設備等について計上。
変更設計
Point
本来ならば、濁水処理設備の必要性の有無も含めて受注者が自主的に施工する範囲であるが、渇水という状況下においてその必要性が検討されたもの。
4-2 施工方法等の変更
変更事例
地元要望により、振動発生の懸念があるとして発注者に工法変更の申し入れがあり、工法変更をした。
設計での仕様・施工条件
・仮締め切りの施工については、打ち込みを高周波バイブロハンマ、引き抜きを電動式バイブロハンマ方式により施工方法を指定している。また、現地の状況によりがたい場合は、監督員と協議する。
と示されていた。
当初設計
・地元要望により、振動発生の懸念があるとして発注者に工法変更の申し入れがあった。
・受注者と協議のうえ、鋼xxの打ち込み、引き抜き工法を変更する。
・特記仕様書に工法変更を明示した。
変更設計
Point
契約時点では、最も合理的な工法として指定したものであるが、地元から要望を寄せられた時点で、発注者は苦情内容を調査し、「周辺住民に振動による悪影響を及ぼさない施工方法を採用すること」という施工の制約を変更特記仕様書に示し、設計変更の対象とする必要がある。
4-3 施工方法等の変更
変更事例
工事用道路の振動抑制対策について地元要望があり、調査の結果、砕石による補修だけでは解決しないため敷鉄板の敷設を追加した。
設計での仕様・施工条件
・工事用道路に関しては「既設のものを使用」することとしており、補修に関しては補修材の材質、数量の明示がされていた。
当初設計
・工事用道路の振動抑制対策について地元要望があった。
・工事用道路の整備について補修材料及び敷鉄板の敷設数量を明示。
・敷鉄板の敷設費用及び損料を計上。
変更設計
Point
施工手段や仮設は本来任意であるが、重要な仮設物や特別に地元と約束がある場合などの仮設については指定仮設として設計図書に示す事になる。この場合、地元要望に基づき施工条件の変更となったため設計変更の対象とする。
4-4 施工方法等の変更
変更事例
現道切り回し作業を夜間とすることを警察協議により条件に付された。これにより、昼間とは別に夜間作業に伴う交通誘導警備員の配置が必要となった。
設計での仕様・施工条件
・「全作業は昼間作業」という施工時間帯が施工条件として示されている。また、車両出入り口の箇所数と交通誘導警備員の人数が示されていた。
当初設計
・現道切り回し作業を夜間とすることを警察協議により条件に付された。
・以下の3点について設計図書に条件明示する。
①夜間作業の区分
②交通誘導警備員の夜間作業時間帯及び員数
③夜間作業の変更に伴う工期の延長
・夜間作業に伴う積算の変更と交通誘導警備員の費用を計上。
変更設計
Point
当初の特記仕様書では作業が昼間を前提としており、交通誘導警備員の配置も昼間のみであった。しかし、警察協議により夜間作業に条件変更となったため設計変更の対象とする。
4-5 施工方法等の変更
変更事例
当初見込んだ道路使用が許可されず、クレーン及び仮設プラントの設置用に仮桟橋を設けることとした。
設計での仕様・施工条件
・当初の特記仕様書では仮設備の設置方法についての指定が示されており、設置箇所は車道の1車線規制が可能である旨の施工条件が示されていた。
当初設計
・当初見込んだ道路使用が許可されなかった。
・施工ヤードとして仮桟橋工を設計図書に明示し、変更設計図書に従い仮桟橋工を計上。
変更設計
Point
道路使用が許可されず施工ヤードを変更せざるを得なかった。条件明示に先だって、道路使用が可能であるか事前の調査・検討が必要であった。
4-6 施工方法等の変更
変更事例
当初設計では、掘削にあたり水替えポンプを想定していたが、予想以上に湧水が多く、ウェルポイント工法を追加した。
設計での仕様・施工条件
・当初設計図書には水替ポンプの規模と数量が示されていた。 Φ○○×台数を想定しているが、これによりがたい場合は、監督員と協議。
と示されてた。
当初設計
・予想以上に湧水が多く、ウェルポイント工法を追加した。
・ウェルポイントの追加に伴って水替工のポンプ台数を減じて積算。
・ウェルポイント工法の費用を計上。
変更設計
Point
一般に工事の施工条件は、たとえ常識的な範囲であっても、具体的な数値等を設計図書に明示しておくことが望ましい。
5-1 工事の中止、工事着手時期の変更、工期の変更
変更事例
用地取得交渉に不測の日数を要したため一時中止し、工期延期を行った。
設計での仕様・施工条件
・工事用地に関する施工条件として用地取得時期が明示されていた。また、予定どおり処理出来ない場合は、監督員と協議と示されていた。
当初設計
・用地取得交渉に不測の日数を要した。
・工事の一時中止を指示し、工期延長を行う。変更費用については工事一時中止に伴う増加費用を計上。
【契約約款第21条(工事の中止)】
変更設計
Point
発注者は、施工条件として用地未処理部分がある場合は、処理の見込み時期を明らかにすると共に事実上施工が不可能な時は、時機を逸せず工事の一時中止を速やかに指示する必要がある。
5-2 工事の中止、工事着手時期の変更、工期の変更
変更事例
予期せぬ河川の増水により護岸基礎の施工ができず、その後の法覆工施工を含めると当初工期内で完了出来ないため、工期延長を行った。
設計での仕様・施工条件
・当初設計では現況河川の平水位が示されていた。
当初設計
・予期せぬ河川の増水により護岸基礎の施工ができず、その後の法覆工施工を含めると当初工期内で完了出来なくなった。
・受注者から河川の増水により基礎工の施工が不可能である旨を明示。(工事期間中の水位観測、天気調査結果、写真、工程表)
・工期の延長
【契約約款第22条(受注者の請求による工期の延長) 第24条(工期の変更方法)】
変更設計
Point
河川の増水が予期できないものか否かの判断がポイント。例年とは異なる水位の状況であり、施工出来ない水位であることを示さなければならない。
5-3 工期短縮に伴う変更
変更事例
当初設計時点の現場条件に違いがあり○○工を追加したが、供用日が決まっており、追加工種分の工期延期ができず、当初工期のままで施工を指示した。
設計での仕様・施工条件
・○○工種はなかった
当初設計
・○○工種を追加したが、供用日が決まっていたため、当初工期のまま施工することになった。
・受発注者間で○○工種追加に伴う工程上の影響を確認し、合意した内容に基づき、必要な費用を追加する。
ex.
・施工時間の延長
・建設機械の増
変更設計
Point
工種追加により、作業が増えているが工期を延期しない場合は、その影響が作業段取り等に出てくる可能性があり、その影響について必要性を確認の上、費用を見込まなければならない。
5-4 工期短縮に伴う変更
変更事例
工事一時中止により2ヵ月の工期延期になるところ、供用日が決まっているため、工期延期を1ヵ月とし、1ヶ月間の工期短縮するための施工を指示した。
設計での仕様・施工条件
・設計工程:○ヵ月
当初設計
・工事一時中止が発生し、工期延期になるところ、供用日が決まっているため、1ヵ月工期短縮する施工方法を計画し、実施することになった
・受発注者間で1ヵ月工期短縮する方策について確認し、合意した内容に基づき、必要な費用を追加する。
ex
・プレキャスト導入に伴う増
・建設機械の増
・夜間施工に伴う増
変更設計
Point
工事数量に変動はないが、工程短縮するために作業時間や機械セット数を増やす必要がある場合、その必要性を確認の上、費用を見込まなければならない。