国名 訪問先機関名 ドイツ ・連邦交通建設住宅省建設都市計画局・(社)ドイツ建設業中央連合会 オランダ ・運輸水利省公共事業水資源管理局・デルフト工科大学 土木地質学部建設マネージメント研究室・運輸社会資本情報技術センター・ハイマンス社 (建設会社) イギリス ・政府商務室(OGC)資産・建設課・環境庁・レディング大学 建設マネージメント学部 台湾 ・運輸情報省交通部台湾区国道新建工程局・台北市高速鉄道システム部・公共建設委員会行政院・台湾科学技術大学・鹿島建設現地営業事務所 日本(他機関)...
Ⅲ.諸外国等における支払方法等の実態調査
1. 目的
出来高に応じて部分払を行っている欧州各国(ドイツ、オランダ、イギリス)等の公共工事における代金支払、契約、検査等の方法について、現地ヒアリング等による実態調査を行い、我が国の公共工事への適用の参考にすることを目的とする。
2. 調査概要
2.1調査項目
①公共工事契約の形態
②工事代金支払方法
③検査および現場監理体制
④設計変更・契約変更
2.2調査対象国及び機関
本調査における調査対象国及び機関は、以下を対象とした。
欧州については、国土交通省国土技術政策総合研究所総合技術政策研究センター建設システム課、(財)国土技術研究センター等で現地調査を行った。
表Ⅲ-2-1調査対象機関
国名 | 訪問先機関名 |
ドイツ | ・連邦交通建設住宅省建設都市計画局 ・(社)ドイツ建設業中央連合会 |
オランダ | ・運輸水利省公共事業水資源管理局 ・デルフト工科大学 土木地質学部建設マネージメント研究室 ・運輸社会資本情報技術センター ・ハイマンス社 (建設会社) |
イギリス | ・政府商務室(OGC)資産・建設課 ・環境庁 ・レディング大学 建設マネージメント学部 |
台湾 | ・運輸情報省交通部台湾区国道新建工程局 ・台北市高速鉄道システム部 ・公共建設委員会行政院 ・台湾科学技術大学 ・鹿島建設現地営業事務所 |
日本 (他機関) | ・日本道路公団 ・東京電力(株) |
3. 調査結果
3.1欧州(ドイツ、オランダ、イギリス)調査結果
(1)調査日程
平成 14 年 1 月 13 日~1 月 25 日
(2)訪問機関
表Ⅲ-3-1訪問機関
国名 | 訪問先機関名 |
ドイツ | 連邦交通建設住宅省 建設都市計画局 Federal Ministry of Transport, Building and Housing (BMVBW) |
(社)ドイツ建設業中央連合会 Hauptverband der Deutschen Bauindustrie e.V. (HDB) | |
オランダ | 運輸水利省公共事業水資源管理局 Directorate-General of Public Works and Water Management (Rijkswaterstaat, RWS) Ministry of Transport, Public Works and Water Management |
デルフト工科大学 土木地質学部 建設マネージメント研究室 Delft University of Technology, Faculty of Civil Engineering and Geosciences | |
運輸社会資本情報技術センター(CROW) Information and Technology Centre for Transport and Infrastructure (CROW) | |
ハイマンス社 (建設会社) Heijmans Infrastructuur en Milieu | |
イギリス | 政府商務室(OGC)資産・建設課 Property & Construction Directorate (P&CD), Office of Government Commerce |
環境庁 Environment Agency | |
レディング大学 建設マネージメント学部 University of Reading, School of Construction Management & Engineering |
(3)調査結果
我が国の国土交通省ならびに調査三カ国の公共工事における主な建設工事契約方式および支払方法は表Ⅲ-3-2に示すとおりである。
表Ⅲ-3-2契約方法と支払頻度
日 本 | ドイツ | オランダ | イギリス | |
主な契約方法 | 総価契約 | 単価契約 | 単価契約 | 単価契約 (デザインビルド方式は総価) |
主な支払方法 | 前払 40% 完成時 60% 請負者は、部分払または中間前払20%の選択 可能 | 2~3週間毎の出来高払 (VOBには、「できる限り短い期間」とある) 前払金はない ( VOB に制度はあるが、あまり用いられない) | 4週間毎の出来高払 (RAWに、「4週間毎」とある) 前払金はない (RAWには、前払制度がない) | 毎月 の出来高払 (ICEに、「毎月」とある) 前払金はない (ICEには、前払制度がない) |
(参考) 日本道路公団: 総価単価契約/3ヶ月毎の出来高払・前払金40%台湾 : 単価契約 /毎月の出来高払・前払金0~30%
東京電力 : 単価総価契約/毎月の均等払または出来高払・前払金なし
1) 公共工事契約の形態
ドイツ・オランダにおける公共工事契約は、一部にデザインビルド契約方式(請負者が設計および施工の両方を行う)も行われているが、現時点では日本の主な公共工事と同様に、設計を発注者が行い建設工事を単独で発注する契約形態が主流となっている。
一方、イギリスでは PFI、ターゲットプライスコントラクトおよびプライムコン トラクトと呼ばれる新たな契約方式が主流を占め始め、建設単独契約はすでに「x x的契約(Traditional Contract)」と呼ばれるにまで至っている。本調査は、我が 国の公共工事の大多数を占める建設単独契約での部分払方式を検討するものであり、伝統的契約を中心に調査している。
ドイツ・オランダ・イギリス(伝統的契約)の公共工事契約においては各国共に標準契約約款が制定されており、いずれの契約方式でも単価契約が通常である。
表Ⅲ-3-3調査各国の公共工事契約約款
ドイツ | オランダ | イギリス | 日本 | |
標準契約約款名 | VOB-B 編 | UAV/RAW | ICE 契約約款 | 公共工事標準請負契約約款 |
発行元または約款の位置付け | ドイツ工業規格 (DIN)の一部 | 契約に関する標準行政規程 | 英国土木学会 | 中央建設業審議会 |
契約方式 | 単価契約 | 単価契約 | 単価契約 | 総価契約 |
単価契約では、数量明細書に従って請負者が提示する工種毎の単価が契約対象であり、それらの単価と発注者が与える概算数量を掛けて得られる金額の総額が入札額となる。これは暫定的であって最終的な支払金額は契約単価と最終工事量によって再計算される。仕様、工法の変更あるいは工事量の著しい増減1等により、契約単価の見直しが必要となる場合に契約変更が行われる。反対に、工事量の増減が一定の範囲内であれば、支払額の確定において発注者と請負者で協議・合意されることは実質的には工事量のみという点に特徴がある。
一方、日本の公共工事では総価契約が一般的に用いられている。この契約では請負総額が契約対象であって、工事費を構成する各工事単価には契約上の拘束力が無い。したがって、総額が変わる場合には数量増減の大小を問わず契約変更が必要となる。
調査三カ国では、工事単価が発注者と請負者で合意されている点、および数量の増減が大きくなければ契約変更無しに支払額が確定される点で、我が国の契約方式
1 ドイツ VOB約款では工事量の増減が±10%を超える場合、イギリス ICE約款では工事量の増減により単価の見直しが必要であるとエンジニアが判断した場合に、契約単価の見直しが行われる。
と比べスムーズに部分払を実行できる契約方式となっている。
2) 工事代金支払方法
調査三カ国および日本における工事代金支払に係わる各国の状況は表Ⅲ-3-
4のとおりである。
表Ⅲ-3-4工事代金支払に係わる各国状況のまとめ
ドイツ | オランダ | イギリス | 日本 (国土交通省) | |
前払金 | ×*1 | × | × | ○ 契約金額の 40%以内 |
中間前払金 | × | × | × | △*2 契約金額の 20%以内 |
前払金・中間前払金保証 | × | × | × | ○ |
部分払 | ○ | ○ | ○ | △*3 |
部分払の間隔 | 規程は無いが通常、2 週間~ 3 週間毎 | RAW で規程 4週間毎 | ICE で規程 1 ヶ月毎 | 規程は無いがあっても工期途 中で 1 回程度 |
履行保証 | △*4 契約金額 5%を預託または銀行保証 | ○ 契約金額 5%を預託または銀行保証 | ○*5 契約金額の 5~ 10% のボンド | ○ 契約金額 10%または工事完成を保証する ボンドまたは銀行保証 |
部分払からの留保金 | △*4 10% | × | ○*5 3~ 5% | ○ 10% |
留保金の支払時期 | 完成時*4 (2~ 3%が欠陥保証期間中*6 保留され る) | - | 完成時*5 (半額が欠陥保証期間中*6 保留される) | 完成時 (全額) |
注 *1: VOBに前払金の制度は規程されているが、支払われることはほとんど無い。
*2:工期 150日以上、契約金額 1,000 万円以上の工事では契約時に請負者が選択できる。部分払との併用は出来ない。
*3:契約時に請負者が中間前払か部分払かを選択できることになっているが、部分払の適用例は少ない。あっても途中に 1回程度である。
*4:履行保証あるいは部分払からの留保金のいずれかを選択できる。
*5:コスト縮減のため履行保証や留保金制度を廃止し、親会社保証へ切替える事を検討中。
*6:欠陥保証期間はドイツでは工事完成後 2年(構造物)または 1年(その他)、イギリスでは通常 12ヶ月
①前払金・中間前払金
調査三カ国では、公共工事において日本で支払われているような前払金、中間前払金は支払われていない。支払とは成果(行われた工事)に対する対価という考えが各国にあり、工事開始前に支払が行われることは無い。それどころか、契約時に請負者が履行保証として発注者へ資金を預託する例もあり(ドイツ、オランダ)、日本とはかなり状況が異なる。
ドイツでは前払が行われることは殆ど無いが、VOB には前払に関する規程が存在する。その中で前払金はヨーロッパ中央銀行貸出金利プラス1%の金利付きで返済すると規程されており、前払というよりも着工前に請負者へ行うxxx資金の貸付けと考えられる。
②部分払
調査三カ国共に工事の出来高に対して 2 週間~1 ヶ月間隔で部分払が実施されている。工事の出来高以外にも工場製品の現場搬入や材料の購入に対しても部分払が行われることが多い。
オランダ、イギリスでは支払間隔が標準約款等で定められており、オランダ
(RAW)では 4 週間おき、イギリス(ICE 約款)では 1 ヶ月おきと規程されている。ドイツ(VOB)では支払間隔を「出来る限り短い期間区分で行われるものとする」とし、契約書に期間を明記しないことも多いが、実際の支払は 2 週間~3 週間おきに行われることが多い。
③履行保証・留保金
履行保証制度は調査各国で異なり、ドイツでは「契約金額 5%を預託または銀行保証あるいは各部分払からの留保金(10%)」のいずれかひとつを選択、オランダでは「契約金額 5%を預託または銀行保証」のいずれかの選択である。イギリスでは現在「契約金額 5~10%のボンドならびに各部分払からの留保金(3~5%)」の両方が適用されているが、保証機関に支払われる保証料を節約することよる間接費の削減やキャッシュフローの改善を目的としてボンド・留保金の両方を廃止し親会社保証へ移行することが検討されている。
日本においては、「契約金額 10% 等の履行保証および部分払からの留保金
(10%)」に加え、前払が行われるために前払金保証が適用されており、調査各国と比較して手厚い保証といえよう。
④下請への支払
調査三カ国共に、発注者から元請への支払と同様に元請から下請への支払も部分
払が一般的であり、現金により支払われている。発注者は元請から下請への契約(支払)に関与しないことが原則となっているが、イギリスにおいては下請への支払が元請への支払より「2~3ヶ月遅れることも多い(レディング大学)」ことも指摘されており、イギリス防衛省では下請への支払証明の提出を次回の元請への支払の条件にするなど、建設業界内のキャッシュフローの改善に取り組んでいる。
3) 検査および現場監理体制
部分払のための書類作成等の事務処理に対して、各国の発注者および請負者共に負担を感じるとの意見は少数であった。
理由としては作成書類がかなり少ないことでまず挙げられる。国により作成される書類の種類は多少異なるが、出来高を証明するための数量計算書が作成され、日報等の施工管理書類を用い出来高が確認されている。一方、工事写真は義務としてではなく自主的に記録として撮られている。また、品質管理は日常管理業務の一環として行われており、部分払にあわせて書類検査を行うわけではない。
次に、現場管理の体制が挙げられる。部分払に関する発注者、請負者あるいは第三者機関で、実質的な支払の判断者について模式的に表わしたものが図Ⅲ-4-1
「部分払における出来高検査・支払に関しての役割」である。日本のように監督職員と検査職員を別々に置いている例は調査三カ国では見られない。日本では、発注者側の日常の工事監督は監督職員により行われるが、支払検査は検査職員が実施するよう定められている。一方、調査各国では検査職員を別に任命することは無く、監督職員の責任により部分払が行われている。
調査三カ国の品質検査体制は「QA/QC システムに基づく検査(イギリス)」、
「ISO9000 による品質管理を要求(オランダ)」や「常勤の監督官の結果が信頼され、その署名が重要(ドイツ)」であり、品質を各工程・過程において常時管理することに重点がおかれ、第三者機関であるエンジニア(イギリス)や発注者監督職員
(ドイツ、オランダ)が検査に対する責任を有している。
ただし、最終検査については、「本省から他の職員が来て検査を行う(ドイツ連邦交通建設住宅省)」や「支払が数ヶ月後となる場合もある(オランダ運輸水利省)」にあるように部分払時より厳密な検査が行われている。
4) 設計変更・契約変更
我が国の工事では総価契約で実施されるために、設計変更には工法・仕様等の変更といった主に単価に影響を及ぼすために総額が変更になるものと、単価は変わらないが工事数量が変わるために総額が変更となるものの両方が含まれる。一方、調査各国の契約は単価契約であるのでこれら両者の違いをはっきり区別して理解する必要がある。
調査結果のうち、「設計変更のケースはあるが事前の検討が十分に行われるため
に大きな変更は少ない(イギリス OGC)」や「契約の初期に議論され途中での契約変更は基本的に行わない(ドイツ連邦交通建設住宅省)」は前者の工法・仕様等に関する単価に係わる変更であって契約変更を伴う。対象的に「設計変更はよく行われる(オランダ運輸水利省)」や「契約時点では工事の細部は決めず工事途中で詳細を決めるため、変更は付きもの(イギリス・レディング大学)」は、主に後者の工事数量に伴う変更であって常に契約変更を伴うとは限らない。
前者の単価が変更となり契約変更を伴う設計変更の場合は、「大きな変更の場合である(イギリス・レディング大学)」「交渉は長時間かかる(オランダ運輸水利省)」ものであり、契約変更が行われるまでは支払は行われず、「合意に至るまで作業は行われない(イギリス)」、「場合によっては工事が止まることがある(オランダ運輸水利省)」。
一方、後者の単価変更が無く契約変更を伴わない数量変更のみの設計変更の手続きは比較的簡素であり、「コストも含め現場で話し合いにより変更が行われる(ドイツ運輸建設住宅省)」「変更は随時行うが週間会議で協議される(オランダ運輸水利省)」ものである。支払われる工事費総額が確定しないことに対しては、「契約金額に予備費的な金が盛り込まれている(イギリス・レディング大学)」や「予算オーバーが生じないように設計変更はプロジェクトの早い段階で行われる(オランダ・デルフト工科大学)」等の工夫が行われている。
(4)調査三カ国の日本の支払方法に対する感想
前払時に 40%、完成時に 60%の工事代金を支払う我が国の工事代金支払方法について、調査三カ国の 9 機関の面談者に対し説明し、得られた感想を次表に示す。支払事務の効率化という観点から、日本の方法はシンプルで良いとの意見も出たが、前払を行わず部分払による各国の工事代金支払制度の方が合理的であり長所が多いとの意見が大勢を占めた。
表Ⅲ-3-5 日本の支払方法(前払 40%+完成時 60%)に対する感想
<3カ国・9機関への聞き取り>
■全般について
○日本の支払方法より、出来高に応じた部分払のほうが合理的と考える
(受発注者とも多数)
○支払事務の効率化という観点から、日本の方法はシンプルで良い(少数)
○その国の甲乙関係に関する文化・慣習も踏まえた上で、支払方法を考えるべき
■前払金について
○モノもできていないのに、あらかじめ支払を行うことに違和感を感じる(多数)
○もし請負者が途中で倒産した場合などに困るのではないか
■出来高に応じた部分払のほうが合理的と考える理由
○毎月出来高を確認し支払を行うことで、きちんと監督でき、品質にも好影響
○予算管理がしやすい
○完成時まで60%支払われない方法と比較して、キャッシュフローが良い(多数)
■既済部分検査に関する事務負担について
○検査に必要な書類や写真の作成・整理、事務処理の負担はほとんど感じておらず、
日本でも部分払に伴う作業量について懸念する必要はないと思う(受発注者とも多数)
○監督職員が日々出来形や品質を見ているのに、別の検査職員があらためて検査を行う必要はないと感じる
3.2台湾調査結果
(1)調査日程
平成 13 年 12 月 9 日~12 月 12 日
(2)訪問機関
表Ⅲ-3-6工事代金支払に係わる各国状況のまとめ
訪問先機関名 |
運輸情報省交通部台湾区国道新建工程局 Ministry of Transportation and Communications, Taiwan Area National Expressway Engineering Bureau (TANEEB) |
台北市高速鉄道システム部 Department of Rapid Transit Systems (DORTS), Taipei City Government |
公共建設委員会行政院 Public Construction Commission (PCC) Executive Yuan (Ministry と同格) |
台湾科学技術大学 National Taiwan University of Science and Technology Department of Construction Engineering |
鹿島建設現地営業事務所 |
(3)調査結果
1)公共工事契約の形態
台湾における公共工事契約は、日本の主な公共工事と同様に、設計を発注者が行い建設工事を単独で発注する契約形態が主流である。TANEEB と DORTS 双方とも FIDIC に準拠した標準契約約款が採用されており、契約方式は単価契約が通常である。この単価契約方式により欧州三カ国(ドイツ・オランダ・イギリス)と同様に部分払をスムーズに実行できる環境にあるといえる。
2)工事代金支払方法
台湾の2機関および日本における工事代金支払に係わる各国の状況は表Ⅲ-3
-7のとおりである。
表Ⅲ-3-7 工事代金支払に係わる台湾状況のまとめ
TANEEB | DORTS | 日本 (国土交通省) | |
契約方式 | 単価契約 | 単価契約 | 総価契約 |
前払金 | ○*1 通常 10% (上限は 30%) | ○*1 7.5~15% | ○ 契約金額の 40%以内 |
中間前払金 | × | × | △*2 契約金額の 20%以内 |
前払金・中間前払金保証 | ○ | ○ | ○ |
部分払 | ○ | ○ | △*3 |
部分払の間隔 | 2 週間または 4週間毎 | 1 ヶ月毎 | 規程は無いが あっても工期途中で 1 回程度 |
履行保証 | ○ | ○ | ○ 契約金額 10%または工事完成を保証する ボンドまたは銀行保証 |
部分払からの留保金 | ○ 10%ただし契約金額 5%に達するまで | ○ 10% | ○ 10% |
留保金の支払時期 | 完成時 (半額*4) | 完成時 (半額が欠陥保証期 xx*5 保留される) | 完成時 (全額) |
注 *1:他機関(台北県地方整備局や台北市工事等)では、前払金が払われないこともある。
*2:工期 150 日以上、契約金額 1,000 万円以上の工事では契約時に請負者が選択できる。部分払との併用は出来ない。
*3:契約時に中間前払か部分払かを請負者が選択できることになっているが、部分払の適用例は少ない。あっても途中に 1回程度である。
*4:完成時に銀行保証に切り替えることが出来る。保証は欠陥保証期間の終了時に返還される
*5:欠陥保証期間は TANEEB では工事完成後 1 年(土木構造物)、DORTS では 2 年(地上
構造物)および 5年(地下構造物)
①前払金・中間前払金
TANEEB および DORTS では前払金が支払われることが一般的であるが、金額は契約により異なる。TENEEB では契約額の 30%が上限ではあるが 10%が一般的であり、DORTS では 7.5~15%となっている。現地調査で入手した他機関(台北県地方整備局や台北市)発注の工事契約書によれば、前払金が支払われないケースも
見られる。一方、日本のような中間前払金制度は存在しない。
また、前払金に対し請負者は前払金保証を提出しなければならない。
②部分払
台湾でも、工事の出来高に対して2 週間~1 ヶ月間隔で部分払が実施されている。工事の出来高以外の工場製品や材料の現場搬入に対する支払を行うかは各機関で異なるが、支払が行われる場合でも価格の 40~70%となっている。
TANEEB では大規模工事では毎月1回、小規模工事では毎月2回、また DORTSでは毎月1回の支払が行われている。各部分払額は、出来高から前払金の分割返済分および留保金分が差し引かれて支払われる。
③履行保証・留保金
台湾では請負者が銀行保証やボンドによる履行保証を提出することが一般的であるが、それに加え銀行残高証明書の提出が求められることもある。
留保金は各部分払から差し引かれる。TANEEB の場合、留保額は 10%で累積額が契約総額の 5%に達するまで差し引かれる。留保金は引き渡し時に支払われるが、その半額に相当する銀行保証を提出し、それは欠陥保証期間終了時に支払われる。
3)検査および現場監理体制
部分払の手続きで作成される書類は、欧州調査結果と同じくかなり少ない。出来高を証明するためには数量計算書や日報等の施工管理書類が一般的に用いられている。
現場管理の体制においては、日本で行われているような監督職員と検査職員による二重監理ではなく、日常の監督職員が部分払においても責任を有している。
4)設計変更・契約変更
欧州では契約変更が行われるまでは工事および支払は行われないこととは対象的に、台湾では発注者と請負者が合意に至らない場合でも工事は行われ、DORTSの場合には暫定的に発注者見積額の 80%が支払われる。
3.3国内他機関調査結果
(1)調査結果
1)工事契約の形態
我が国の公共工事契約は、国土交通省で行われている総価方式(工事代金の総価額を契約金額として締結される契約方式)が一般的な契約方式であるが、日本道路公団や東京電力(株)では、これと異なる契約方式で行われている。
日本道路公団においては、総価のみならず工種毎の単価を契約内容の一部とする総価単価方式を導入している。総価単価方式では、まず、入札で総価を決めて、その後にそれを構成する各単価について、総価を変えることなく甲乙協議により決定するものである。なお、建築,電気,設備工事では総価方式で行われることが多い。また、東京電力においては、主に単価を主目的として契約する単価総価方式を導 入している。単価総価契約とは、工事数量に請負者が提示する工種毎の単価を掛けて得られる金額の総額が工事総額となり、総額ではなく単価に契約上の拘束力がある。数量変更の場合の調整は契約された単価を元に計算されるという点では、ドイツ、オランダ、イギリス、台湾の公共工事で用いられている単価契約と同様の契約
方式といえる。
工事契約上の範囲については、国土交通省ではデザインビルド方式の試行やPF I等の検討が行われ、東京電力では一部デザインビルド方式や VE 方式を導入しているものの、三機関とも建設工事のみで契約する工事契約が主流である。
2)工事代金支払方法
国内の代表的な機関である国土交通省、日本道路公団並びに東京電力における工事代金支払に関わる状況は表Ⅲ-3-8のとおりである。
表Ⅲ-3-8 工事代金支払に係わるまとめ
国土交通省 | 日本道路公団 | 東京電力(株) | |
契約方式 | 総価契約 | 総価単価契約 | 単価総価契約 |
前払金 | ○ 請負金額の 40%以内 | ○ 請負金額の 40%以内 | × |
中間前払金 | △*1 請負金額の 20%以内 | × | × |
前払金・中間前 払金保証 | ○ | ○ | × |
部分払 | △*2 | ○ | ○ |
部分払の間隔 | 規定は無いが通常 年 1 回程度 | 3 ヶ月に1回 (5,8,11,2 月) | 毎月 |
履行保証 | ○ 請負金額の 10%または工事完成を保証する。 | ○ 請負金額の 10%を保証金,有価証券,金融機関等で保証する | - |
部分払からの 留保金 | ○ 10% | ○ 10% | ○ 10% |
保留金の支払 時期 | 完成時 (全額) | 完成時 (全額) | 完成時 (全額) |
*1:工期 150 日以上、契約金額 1,000 万円以上の工事では契約時に請負者が選択できる。部分払との併用は出来ない。
*2:契約時に請負者が中間前払か部分払かを選択できることになっているが、部分払の適用例は少ない。あっても途中に 1回程度である。
①前払金・中間前払金
国土交通省が執行する公共工事で支払われる前払金・中間前払金については、日本道路公団では、前払金はあるものの、中間前払金までは無く、東京電力には両方無い。
②部分払
国土交通省・日本道路公団・東京電力の三機関ともに部分払制度はあるが、その内容は大いに異なっている。国土交通省では、契約時に請負者が選択できることになっているが、その適用例は少なく、あっても年1回程度である。日本道路公団では、3 ヶ月に一度(5,8,11,2 月)出来形部分の確認を請求できることになっているが、請負者から請求が無ければ支払わないこともある。また、甲は特に必要があると認める場合は、乙とあらかじめ協議の上、出来形確認請求月を変更することもある。東京電力では、120 日を超える工事の場合に、毎月支払われている。その部分払方式には、年間の想定出来高を 12 で割って支払う均等払と出来高に応じた出来高払がある。なお、120 日以下の工事では、完了時に支払う竣工払となる。
③留保金
留保金については、国土交通省・日本道路公団・東京電力の三機関ともに請負金額の 10%とし、工事完成時に全額支払われることになっている。
3)検査および現場監理体制
国土交通省では、部分払も完成時払と同様な手続きで行われており、相応の書類の作成や手続きを要する。また、部分払にあたっての既済部分検査でも、完成検査と同様に検査職員による体制で、出来形・品質・出来映えについて完成検査と同等の内容,精度で行われているのが現状である。
日本道路公団や東京電力では、完成検査とは異なり、監督職員の責任によって出来形を検査して部分払を行うものであるため、作成書類も少なく手続きも容易である。
なお、品質検査については、国土交通省では既済部分検査時においても行っているが、日本道路公団や東京電力では日常の立会及び提出書類で品質を確認している。
4)設計変更・契約変更
設計変更は、工法・仕様の変更と工事数量の変更との大きく2つの内容が含まれており、三機関においては、部分払において設計変更対象となる工種の扱いが異なっている。
国土交通省では、数量変更分は、出来高対象となるものの、工法・仕様等の変更に伴い生じる新工種については、契約変更が為されなければ、部分払時の出来高に計上できない。
日本道路公団では、当初請負金額の 90%を超えない範囲であれば、契約変更前でも工法・仕様による変更分も工法変更手続きを行うことにより部分払の対象となる。なお、新工種については、契約変更前であっても、監督員と現場代理人の協議で新単価を設定し、出来高計上する。
東京電力では、一定割合の範囲で変更して部分払の対象としており、一定以上に累積した場合は、契約変更して支払うものである。また、新工種については契約変更が必要となる。
4. 調査結果のまとめ
欧州、台湾及び国内他機関における調査結果のまとめを表Ⅲ-4-1及び図Ⅲ-
4-1に示す。
表Ⅲ-4-1部分払方式における日本及び各国等の比較
日 本 | イギリス | ドイツ | オランダ | 台湾 | |||
国土 交通省 | 日本道路 公団 | 東京電力 (株) | |||||
契約方式 | 総価契約 | 総価単価契約 | 単価総価契約 | 単価契約 | 単価契約 | 単価契約 (DBは総価) | 単価契約 |
主な支払方法 | 前払: 40%以内 | 前払: 40%以内 | 前払金なし | 前払金なし | 前払金なし | 前払金なし | 前払: 30~0% |
完成:60% | 3ヶ月毎の出来高払 | 毎月の出来高払、均等払、完成時一括の 竣工払 | 毎月の出来高払 | 2~3週間毎の出来高払 | 4週間毎の出来高払 | 2週間~毎月の出来高払 | |
(部分払または中間前払20%以内の選択 可能) | 完成時払 | 完成時払 | 完成時払 | 完成時払 | 完成時払 | ||
保証期間終了時払 | 保証期間終了時払 | 保証期間終了時払 | |||||
部分払に係わる検査体 制 | 監督職員が検査職員を兼務できない | 監督職員が検査職員を兼務 | 監督職員が検査職員を兼務 | 日常の 監督体制と同じ | 日常の 監督体制と同じ | 日常の 監督体制と同じ | 日常の 監督体制と同じ |
出来形・品質を検査対象 | 主に出来形が対象、品質は日常検査で確認 | 出来形が対象、品質は日常検査で確認 | 出来形が対象、品質は日常検査で確認 | 出来形が対象、品質は日常検査で確認 | 出来形が対象、品質は日常検査で確認 | 出来形が対象、品質は日常検査で確認 | |
設計変更分の扱 い | 新工種は契約変更後に支払 | 当初契約額 90%超えない範囲で 支払 | 新工種は契約変更後に支払 | 契約変更注1後に工事および支払 | 契約変更注1 後に支払 (変更は殆ど無い) | 契約変更注1後に工事および支払 | 仮価格を用いて支払 (例:発注者見積の80%等) |
注1)単価契約では、設計変更による数量の増減が決められた範囲内であれば契約変更を行う必要が無い。
・出来高の確認
・出来高の検査
・出来高の報告
・出来高の報告
CM
・出来高の確認
・出来高の報告
・出来高の報告
・出来高の確認・検査
出来高検測者 (QS)
エンジニア
請負者
エンジニア/ QSは発注者職員であることも外部からの雇用であることもある。
大きな発注機関では、その職員であることが多いが、契約上は発注者とは独立する。
イギリス
ICE契約
・出来高の確認・検査
監督職員
請負者
運輸水利省では、監督職員としてコンサルタントを雇用することは少ない。
他の発注機関においては、コンサルタントをCMとして雇用する場合もある。
オランダ
運輸水利省
(公共事業水資源管理局)
・出来高の確認・検査
監督職員
請負者
発注者
連邦交通建設住宅省では、監督職員としてコンサルタントを雇用することはほとんどない。
州政府では、コンサルタントを雇用することがある。
ドイツ
連邦交通建設住宅省
監督職員
請負者
発注者
監督補助 (現場技術員)としてコンサルタント等を雇用することがある。ただし、現場技術員は指示、承諾、協議及び確認の適否等の権限は持たない。
日本
国土交通省
備考
〈第三者機関〉
〈発注者側〉
〈請負者側〉
国及び機関
発注者
発注者
検査職員
発注者 | |
エンジニア PM |
部分払における出来高検査・支払に関しての役割
・出来高の報告
・出来高の検査
・出来高の報告
・出来高の確認
エンジニア代理人
請負者
エンジニアは発注者側職員である。エンジニア代理人には通常コンサルタントが雇用される。
台湾
運輸情報省
(TANEEB)
・出来高の確認・検査
監督職員
請負者
発注者
監督補助(施工管理員)としてコンサルタント等を雇用することがある。ただし、施工管理員は指示、承諾、協議及び確認の適否等の権限は持たない。
日本道路公団
:検査・支払に関する実質的判断者
図Ⅲ-4-1部分払における出来高検査・支払に関しての役割