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◎現在の実務でも諾成的消費貸借契約は認められていますが、改正法では、要物契約としての消費貸借契約を維持しつつ、書面でする消費貸借については、当事者間の合意のみで契約が成立することを明文化しました。
◎金融機関においては、金銭消費貸借契約を書面で行うことが通常と思われますので、従前どおり、金銭交付時に契約の効力を生じさせたい場合は、その旨契約書に特約で定める必要があります。
一 諾成的消費貸借の明文化
現行法において、消費貸借は要物契約とさ れ、消費貸借の合意だけでは契約は成立せず、金銭その他の目的物の交付があった時に契約が成立するとされています(現行法587条)。しかし、実務においては、目的物の交付前 に消費貸借契約の成立を認める、いわゆる諾成的消費貸借契約も行われており(例えば融資枠契約(コミットメントライン))、判例も諾成的消費貸借契約の有効性を認めています
(注1)。
このように実務において諾成的消費貸借契約のニーズがあり、実際に利用されているところですが、諾成的消費貸借契約の成立を安易に認めると、たとえ口約束であっても貸主に「貸す義務」、借主に「借りる義務」が発生することになり、妥当でない場合が生じる可能性があるほか、当事者間で消費貸借に関する合意がある場合に、それが要物契約を前提とする合意(目的物の交付により契約の効力が生じる)なのか、諾成的消費貸借としての合意なのか判別が困難であるという問題が生じます(注2)。
そこで改正法は、587条において、要物契約としての消費貸借契約を維持しつつ、587条の2において、書面でする消費貸借契約については、合意のみで成立する(諾成的消費
貸借契約)こととしました。なお、同条は任意規定と解されているので(注3)、書面でする消費貸借契約であっても、目的物の交付により契約の効力が生じるとの特約をすることは可能です。この場合、書面でする消費貸借契約は、諾成契約であるのが原則であることから、特約を契約書に明記する必要があります。
他方、現行の実務では、諾成的消費貸借契約について、必ずしも書面によることは求められていませんが、改正法では、書面でする消費貸借契約に限って諾成的消費貸借契約の成立を認めていますので、書面によらない諾成的消費貸借契約は認められない(目的物の交付により契約が成立する)ということになるでしょう。
二 「書面」の意義
改正法587条の2にいう書面には、消費貸借の詳細な内容まで具体的に記載されている必要はありませんが、金銭その他の物を貸す旨の貸主の意思およびそれを借りる旨の借主の意思の両方が表れている必要があります。したがって、例えば差入方式の契約書による借主の一方的な意思表示のみでは、諾成的消費貸借は成立しないと考えられます。もっとも、トラブル防止のためには、上記のとおり、目的物の交付により契約の効力が発生す
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◎保証に関する改正事項としては、①保証の内容に関するもの(従前の解釈の明文化や、求償権の整理、連帯保証人について生じた事由の主債務者に対する効力の一部変更など)、②保証人に対する情報提供義務の新設、③根保証契約に関する見直し、④公証人による保証意思確認手続の新設などがあります(注1)。
一 保証の内容に関する改正事項
1 従前の解釈の明文化
まず、現行法の一般的な解釈に従って、具体的な規定を設けた(明文化した)ものとしては、以下のようなものがあります。
① 主債務の目的・態様が保証契約締結後に加重されても、保証人の負担は加重されない旨を明文化しました(改正法448条2項)。これは、内容に関する附従性の問題ですが、保証人の関与(了解)なく保証債務の負担が加重されるのは適当ではないからです。
② 主債務者が債権者に対して抗弁を主張できる場合には、保証人も債権者に対してその抗弁で対抗できる旨を明文化しました(改正法 457条2項)。これは、保証債務は主債務の履行を担保するものあることから、現行法457条2項では「相殺」と限定的に規定されていましたが、一般的な解釈にしたがって、抗弁
一般に拡張したものです。(注2)
③ 主債務者が債権者に対して相殺権、取消権または解除権を有するときには、それにより主債務者が債務を免れる限度で、保証人も債権者に対して「債務の履行を拒むことができる」旨を明文化しました(改正法457条3項。いわゆる「履行拒絶の抗弁権」として構成)。これはあくまで履行を拒絶できるだけですから、保証人が主債務者の有する相殺権や取消権、解除権を行使することはできません。
➃ 委託を受けた保証人が保証を履行し債務を消滅させた場合の主債務者に対する求償権について、支出額が主債務の額を超えるときは、消滅した主債務の額になることを明文化しました(改正法459条1項)。これも従前から一般的にとられてきた解釈を明示したものです。
2 連帯保証人に生じた事由の絶対的効力の限定
次に、連帯保証人について生じた事由の主債務者に対する効力について、一部修正(限定)をしました。
すなわち、連帯保証人について生じた事由の主債務者に対する効力については、連帯債務に関する規定の改正と平仄をあわせて、これまで絶対的効力事由(主債務者に対しても効力が及ぶ)とされていたもののうち、「履行の請求」「免除」が除外され、これが相対的効力事由(主債務者に対して効力を生じない)とされました(改正法458条、441条)。ただし、債権者と主債務者が別段の意思表示をした場合には、主債務者に対する効力はその意思に従うとされており(同条但書)、特約などで合意することによって主債務者に効力を及ばせることができるようになっています(注3)。
3 求償権に関する規定の整理
保証人の主債務者に対する求償権に関する規定についても整理されました。
まず、委託を受けた保証人が期限前弁済等
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◎現行法では、絶対的効力事由として、「履行の請求」「免除」「時効の完成」が定められていますが、改正法では、「履行の請求」「免除」「時効の完成」についての絶対的効力事由の規定が削除されており、他の連帯債務者に効力を及ぼさないことが原則とされています(相対的効力の原則)。ただし、改正法では、債権者および他の連帯債務者の1人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従うとされており、改正法により相対的効力しか有しないとされる事由であっても、当事者間の特約でもって絶対的効力を維持することは可能です。
◎「履行の請求」について、時効管理の観点から、現行法と同様に絶対的効力を維持するため、他の連帯債務者との契約書等で、「連帯債務者の1人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる」旨の条項を設けておくことが考えられます。
◎「免除」「時効の完成」について、連帯債務者の1人に対して債務の免除をし、または連帯債務者の1人のために時効が完成したとしても、他の連帯債務者に効力を及ぼさないのが原則ですので、他の連帯債務者に対しては引き続き債権全額の請求を行うことができます。
一 連帯債務に関する改正事項の概要
1 連帯債務者の1人について生じた事由の効力の見直し
連帯債務者の1人に生じた事由は、他の連帯債務者に効力を及ぼさないのが原則です
(相対的効力の原則)。
現行法では、相対的効力の原則の例外として、連帯債務者の1人に生じた事由が他の連帯債務者に効力を及ぼすとされる絶対的効力事由として、「連帯債務者の1人に対する履行の請求」「連帯債務者の1人に対する免除」
「連帯債務者の1人についての時効の完成」が定められていますが、改正法では、「履行の請求」「免除」「時効の完成」についての絶対的効力事由の規定が削除されており、他の連帯債務者に効力を及ぼさないのが原則とされています(【図表】参照)。
ただし、改正法では、連帯債務者の1人に生じた事由は、他の連帯債務者に効力を及ぼさないとする相対的効力の原則は維持したう
えで(改正法441条本文)、債権者および他の連帯債務者の1人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従うとされています(同条但書)。したがって、改正法により相対的効力しか有しないとされる事由であっても、当事者間の特約でもって絶対的効力を維持することは可能です。例えば、債権者A、連帯債務者B、Cがいるとすれば、債権者Aと連帯債務者Bとの間の特約でもって、債権者Aの連帯債務者Cに対する履行の請求の効力は、連帯債務者Bにも及ぶとしておくことが考えられます。
なお、連帯債務の相対的効力の原則とその例外は、連帯保証人について生じた事由の主債務者に対する効力についても準用されています(同法458条、441条。連帯保証についての詳細は、Q14を参照して下さい)。
2 連帯債務者の求償権に関する見直し
⑴ 連帯債務者間の求償権の要件
自己の財産をもって共同の免責を得た連帯