Contract
河川・道路管理用電気通信施設の入札契約方式のあり方
平成21年3月
国土交通省直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会
品質確保専門部会 電気通信施設ワーキング
河川・道路管理用電気通信施設の入札契約方式のあり方 報告書(概要)
はじめに
電気通信施設ワーキング設立の背景、目的、経過の総括
第xx 電気通信施設の入札契約の現状
河川管理・道路管理・災害対策のために国土交通省が整備・利用している電気通信施設の概要を述べ、これら施設の整備・利用のための設計業務、工事、製造、点検業務契約に関する現状の入札契約制度をとりまとめた。
入札契約の実績データから、工事契約が最も多く、工事(現地施工)主体工事より機器主体工事が多いこと、機器主体工事において不調と一者入札が多いこと、金額別に見ると予定価格が低いものに不調・不落が多いこと、新設ではなく改造・増設において一者入札が多いことが判明した。
その原因と対策を検討する資料とするために、受注者から入札参加資格要件、発注図書、積算価格等の入札契約に関係する意見を収集した。
第二章 電気通信施設の入札契約の課題と改善案
検討の目的を、発注者の果たすべき責任として整理し、その観点から現在の入札契約の課題を整理し、課題と改善案を対応付けた。改善案は収集したデータや意見を踏まえ、合理的なコストで品質を確保しながら競争性、透明性を改善するための次の事項である。
① 入札参加資格要件の改善;品質を確保しつつ応札者の増加を図る入札参加資格要件の改善案であり、機器主体工事と点検に適用される。
② 技術者配置の効率化への改善;品質を確保しつつ応札者の増加を図るため、施工・業務履行における技術者配置の効率化への改善案であり、全ての契約区分に適用される。
③ 発注図書の改善;必要な技術仕様を提示し、かつ、無用な制約を排除するための発注図書の作成に関する改善案である、設計、工事、製造に適用される。
④ 運用中の施設の機能維持(修繕、改造、増設)の円滑化;運用中の施設を対象に、所要のサービスを提供するために修繕、改造、増設を円滑に実施するための技術手法、入札契約手法の改善案であり、全ての契約区分に適用される。
⑤ 多様な発注方式の採用;設計・施工・保守の分離、単年度契約という現行の発注方式に対して、新技術の採用や企業の事業領域を考慮した新たな発注方式として、詳細設計付工事、メンテナンス付工事、リース契約の採用に関する改善案であり、設計、工事、保守に関係する。
⑥ 機器価格設定方法の改善;見積りによる従来の機器価格設定に対して、機器費データベースを構築することで適切な機器価格設定を可能とする改善案であり、機器主体工事、製造に適用される。
⑦ 積算体系の改定;機器製造と現場施工における積算と実態の乖離を解消するために、積算体系に機器管理費を新設する改善案であり、機器主体工事、製造に適用される。
⑧ 積算基準の改善;積算と実態との乖離のある移設、撤去、深夜割り増しに関する改善案であり、工事、製造、保守に適用される。
⑨ 総合評価方式における評価手法の改善;技術の向上による品質確保のため、機器に対して適切な評価を行える総合評価方式における評価手法の改善であり、機器主体工事に適用される。
⑩ 請負工事成績評定要領の改善;技術の向上による品質確保のため、機器を含む工事における工事成績の評定要領の改善であり、機器主体工事に適用される。
第三章 電気通信施設の入札契約の改善への取り組みと今後の課題
国土交通省では、上記の改善案について実施可能なものについて、試行あるいは本運用の取り組みを行った。これらについて、対策前後の状況を整理し、レビューをまとめた。
平成 21 年度以降に実施する取り組みについて、状況とスケジュールをとりまとめた。
今後の課題として、対策の確実な実施、継続的な監視とレビュー、継続的な改善への取り組み、ユニットプライスなどの新たな改善の検討に対する必要性を記した。
電気通信施設ワーキング資料集
設立趣意書、委員名簿、検討経緯、アンケートデータ、用語集を添付した。
以上
はじめに
国土交通省直轄事業における電気通信施設は、河川、道路等の事業の一部として整備・運用がなされ、社会インフラを有効に機能させるために利用されている。技術的な分類では電気、通信、情報に関連する施設である。
具体的には、道路・トンネル照明、警報設備、情報表示設備、インターネット・携帯電話等による情報提供などの一般市民の目に触れる施設のほか、観測・異常検知システム、CCTV(監視カメラ)等の情報収集施設、無線通信、光ファイバー通信、衛星通信等の通信施設、これらを支える受変電、非常用電源設備など、極めて広範囲にわたっている。これら施設の整備・利用には、設計・製造・据付・調整・運用サービスなどが必要であり、多くの民間企業との契約によって実施されている。
これらの電気通信施設の整備・運用に当たっては、土木工事に適用されている入札契約方式が準用されてきたが、常時通電され運用されている施設、ネットワークで相互に関連している施設、ソフトウェアが組み込まれている施設などの特徴を考慮すると、土木工事の方式を準用するだけでは適切とはならないケースもあると考えられる。また、昨今、公共事業の入札契約制度に国民の厳しい目が向けられ、競争性、透明性、xx性の向上に向けて様々な改善が行われている状況から、電気通信施設の入札契約方式についても不断の見直しを行い、施設の特性に適合させる必要がある。
このような背景から、「国土交通省直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会・品質確保専門部会」の中に平成19年9月、電気通信施設に関するワーキングを設置し、電気通信施設の入札契約方式の改善に向けた検討が行われることとなった。
これを受けて、ワーキングでは5回の検討会を実施し、実績データの収集・分析、受注実績のある民間企業へのアンケート・ヒアリング、入札契約に関する改善提案、提案を踏まえた試行のレビューなどを通じて、国土交通省電気通信施設の入札契約の改善のため、積算体系の見直しなど抜本的かつ幅広い検討を行った。本報告書は、その検討の成果をとりまとめたものである。
最後に、ワーキングの実施にあたり、各委員を始め、多数の方々にご協力をいただきました。関係各位に心より感謝の意を表します。
平成21年3月
国土交通省直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会
品質確保専門部会 電気通信施設ワーキング
座長 x x x x
-目 次-
第xx 電気通信施設の入札契約の現状
1 | 電気通信施設の概要 | 1- | 1 |
2 | 電気通信施設の入札契約制度 | 1- | 3 |
3 | 契約と応札の現状 | 1- | 8 |
4 | 受注者の意見 | 1-14 | |
第二章 電気通信施設の入札契約の課題と改善案 1 電気通信施設の発注者が果たすべき責任 | 2- | 1 | |
2 電気通信施設の入札契約の課題と改善案 | 2- | 3 | |
改善案1 入札参加資格要件の改善 | 2- | 6 | |
改善案2 技術者配置の効率化への改善 | 2- | 9 | |
改善案3 | 発注図書の改善 | 2-13 | |
改善案4 | 運用中の施設の機能維持(修繕、改造、増設)の円滑化 | 2-15 | |
改善案5 | 多様な発注方式の採用 | 2-21 | |
改善案6 | 機器価格設定方法の改善 | 2-27 | |
改善案7 | 積算体系の改定 | 2-29 | |
改善案8 | 積算基準の改善 | 2-34 | |
改善案9 | 総合評価方式における評価手法の改善 | 2-35 |
改善案10 工事成績評定の改善 2-39
第三章 電気通信施設の入札契約の改善への取り組みと今後の課題
1 現在までの取り組みとそのレビュー 3- 1
2 平成 21 年度以降の取り組み 3-10
3 今後の課題 3-20
電気通信施設ワーキング資料集
資料-1 | 設立趣意書 | 資料- | 1 |
資料-2 | 委員名簿 | 資料- | 2 |
資料-3 | 検討経緯 | 資料- | 4 |
資料-4 | 受注者ヒアリング、アンケート結果 | 資料- | 5 |
資料-5 | 用語解説 | 資料-46 |
第xx
電気通信施設の入札契約の現状
1 電気通信施設の概要
国土交通省では、河川、道路等の社会資本の有効活用、効率的な維持管理、迅速な災害対策を行うため、種々の電気通信施設の整備及び維持管理を行っている。
(1) 河川における電気通信施設
河川整備計画策定、河川環境整備、河川改修、河川管理、ダム管理等に必要な雨量、水位、水質、流量、画像等のデータを収集、処理、提供するため、水位・雨量テレメータ設備、レーダ雨量計設備、CCTVカメラ設備、ダム管理設備、光ケーブルなどを整備、維持管理している。また、安全な河川環境を利用者に提供するため、放流警報、河川情報板などを整備、維持管理している。
(2) 道路における電気通信施設
道路整備、道路環境整備、道路管理等に必要な道路気象、環境、交通、画像等のデータを収集、処理、提供するため、道路管理システム、CCTVカメラ設備、共同溝管理設備、光ケーブルなどを整備、維持管理している。また、安全な道路環境を利用者に提供するため、道路・トンネル照明、トンネル非常警報、道路情報板などを整備、維持管理している。
(3) 防災に関する電気通信施設(河川・道路共通)
災害状況の迅速な把握と災害対策活動を行うため、衛星通信設備、ヘリコプタ画像設備、多重無線通信設備などの通信設備及び受変電設備、非常用発電設備などの電気関連設備を整備、維持管理している。
災害時には、これら電気通信施設を活用し、災害情報を迅速に収集し、現地対策本部や事務所、地方整備局に伝達する。さらに、地方自治体、関係機関との情報共有、交換を行い、被災現地状況を早期に把握し、以後の応急復旧対策や二次災害防止のための迅速な意志決定に利用している。あわせて、放送機関やインターネット等を通して、国民へ災害情報の提供を行っている。
また、大規模災害や広域災害時には、これら情報は本省防災センターに集約され、更に首相官邸危機管理センター等にも伝送されるなど、我が国の防災対策にとって重要な役割を果たしている。
【河川における電気通信施設】 | ダム管理設備 放流警報設備 | ゲート制御設備 CCTVカメラ | 水位・雨量テレメータ レーダ雨量計 |
・ダム管理設備 | |||
・ゲート制御設備 | |||
・放流警報設備 | |||
・水位・雨量テレメータ設備 | |||
・レーダ雨量計設備 | |||
・CCTVカメラ設備 | |||
・光ケーブル・光伝送設備 | |||
【共通する電気通信施設】 | ヘリコプタ映像伝送 防災情報設備 | 衛星通信車 受変電設備 | 通信鉄塔 非常用発電設備 |
・ヘリコプタ映像伝送設備 | |||
・衛星通信設備 | |||
・事務所等の防災情報設備 | |||
・事務所等の受変電設備 | |||
・非常用発電設備 | |||
・通信鉄塔、通信機等 | |||
【道路における電気通信施設】 | トンネル照明設備 | 道路管理システム 共同溝管理設備 | CCTVカメラ |
・道路照明、トンネル照明 ・道路管理システム ・道路情報板 ・共同溝管理設備 ・CCTVカメラ設備 ・光ケーブル・光伝送設備 | |||
道路情報板 |
図 1-1 電気通信施設の概要
2 電気通信施設の入札契約制度
(1) 電気通信施設の設計、整備、維持管理に対応する契約制度
河川・道路等の事業執行における予備調査、実施計画調査、建設計画、建設工事、維持管理というプロセスにおいて、電気通信施設についても構造物と連動して計画、導入、維持管理に係る契約が必要となる。調査設計から整備
(導入、増設、改造)、その後の維持管理のプロセスにおける契約は、制度の違いから業務委託契約(設計)、工事契約/製造契約/購入契約(施設整備)、業務委託(点検)に分類される。
表 2-1 電気通信施設の契約制度
契約 区分 | 契約内容の概要 | 対象業務・ 製品 | 業務内容の例 |
調査 設計 | ○電気通信施設に係る調査、計 画及び設計の業務委託契約 | 調査設計 | 電気通信施設に係る調査、計画、設計業 務 |
工事 | ○政府調達協定(WTO)に基づく「建設サービス」に該当する分野の電気通信施設の整備、更新、改修等に係る請負契約 (機器の工場製作を含む) ○主な該当業種(工種) ・ 電気工事業(電気設備工事、受変電設備工事) ・ 電気通信工事業(通信設備工事) | 電気設備工事 | 道路・河川・公園等の照明設備、配電設備、共同溝付帯設備及び電気応用施設等の工 事 |
受変電設 備工事 | 受変電設備、発電設備及びその他電源設 備の工事 | ||
通信設備工事 | 通信設備工事:監視制御・情報通信設備、防災・情報表示設備、優先通信線路及び 通信鉄塔・反射板等の工事 | ||
維持修繕 工事 | 道路照明等、道路上の電気設備の維持修 繕工事 | ||
製造 | ○政府調達協定(自主的措置)に基づく「電気通信機器」「コンピュータ」及び「一般物品」に該当する電気通信機器の整備、更新、改造等に係る請負契約(機器の工場製作を含む) ○「工事」と同様に機器の工場製作段階及び据付、調整において、施工管理を必要とする機器 に該当する。 | 電気通信機器 | 端末機器、交換機、伝送装置、無線通信 装置、及び通信ケーブル等の調達、製造及び据付調整 |
コンピュー タ | コンピュータ及び関連周辺設備等の調達 及び据付調整 | ||
一般物品 | テレメータ設備、レーダ雨量計等計測器及び一般物品に係る調達及び据付調整 | ||
購入 | ○政府調達協定(自主的措置)に基づく「電気通信機器」「コンピュータ」及び「一般物品」に該当する電気通信機器の購入契約 ○機器の工場製作段階における、施工管理を必要しない機器 等に該当する。 | 電気通信 機器 | 電話機、FAX等の汎用市場流通品のx x |
コンピュー タ | パソコン等汎用市場流通品の調達 | ||
一般物品 | 画像符号化装置、テレビ会議装置等の汎用市場流通品の調達 | ||
役務 | ○電気通信施設の点検、運転監視及び修理に係る業務請負契 約 | 保守点検 | 電気通信施設の点検業務 電気通信施設の運転監視業務電気通信施設の修理 |
(2) 入札契約方式の適用範囲
契約区分(設計、工事、製造、購入、点検)、発注予定価格等に応じて以下のような入札契約方式が適用されている。
① 設計
7,900万円未満の案件については、業務内容と予定価格に応じて、簡易公募型(簡易公募型に準じた方式を含む)による企画競争入札方式(プロポーザル方式を含む)若しくは公募型価格競争入札方式、一部で総合評価落札方式を適用している。
なお、7,900万円(45万SDR)以上の案件については、政府調達協定に基づき、公募型による企画競争入札方式(プロポーザル方式を含む)又は価格競争入札方式を適用している。
② 工事/製造/購入
1) 工事
平成 18 年度から一般競争入札(最低価格落札方式)と一般競争入札(総合評価落札方式)の導入と試行が行われ、その後、適用範囲が拡大されて平成 20 年からは、これらを基本としている。
なお、7.9億円(450万SDR)以上の工事は、政府調達協定に基づき一般競争入札(総合評価落札方式)を適用している。
2) 電気通信機器の製造・購入
予定価格が1,700万円(10万SDR)以上の案件には政府調達協定に基づく一般競争入札(最低価格落札方式)を適用し、6,600万円(38.5万S DR)以上の案件には一般競争入札(総合評価落札方式)を適用している。
1,700万円未満の案件は原則として一般競争入札(最低価格落札方式)を適用している。
3) コンピュータの購入
政府調達協定(自主的措置)に基づき、予定価格が1,700万円(10万S DR)以上の案件には一般競争入札(最低価格落札方式)を適用し、1.4億円(80万SDR)以上の案件には一般競争入札(総合評価落札方式)を適用している。
なお、1,700万円未満の案件にあっても、原則として一般競争入札(最低価格落札方式)を適用している。
4) 一般物品の製造・購入
政府調達協定(自主的措置)に基づき、予定価格が1,700万円(10万S DR)以上の案件には一般競争入札(最低価格落札方式)を適用している。
なお、1,700万円未満の案件にあっても、原則として一般競争入札(最低価格落札方式)を適用している。
③ 点検
点検については、原則として一般競争入札(最低価格落札方式)を適用している。
以上の適用状況を図 2-1 に示す。
区分 調査設計 工 事
電気通信機器の製造・購入
コンピュータの購入
一般物品の製造・購入
点検/運転監視
一般競争入札
(政府調達協定)
円
万
) 原則
一般競争入札
一般競争入札
(政府調達協定)
原則
一般競争入札
6,
企画競争入札
(プロポ ーザル含む)指名競争
原則
一般競争入札
一般競争入札
(政府調達協定)
総合評価方式
一般競争入札
(政府調達協定)
総合評価方式
一般競争入札
(政府調達協定)
積極的な一般競争入札 行
一般競争入札
総合評価方式
総合評価方式
一般競争入札
(政府調達協定)
7.9億円
(450万
札
札
総合評価方式
SDR)
7,900万円
(45万
SDR)
000万円
6,600万円
(38.5万 SDR)
実施拡大
実施拡大
実施拡大
(
1
1
1,700万円
(10万 SDR)
一般競争入札政府調達協定)
一般競争入札政府調達協定)
1.4億円
(80万
原則
一般競争入札
一般競争入札政府調達協定)
SDR)
1,700万円
(10万
SDR)
企画競争入
(プロポ ーザル含指名競争
企画競争入
(プロポ ーザル含指名競争
1,700万
(10
SDR
図 2-1 各契約区分で採用している入札契約方式(平成20年度)
(国土交通省大臣官房技術調査課調べ)
(3) 応札者に求められる条件(入札参加資格要件)
それぞれの契約区分(設計、工事、製造、購入、点検)における目的物の品質を確保するため、応札者には入札公告、入札説明書で次の条件が求められており、「入札参加資格要件」と呼ばれている。
① 設計
設計においては、企業の同種・類似業務の履行実績、技術者の履行実績が求められている。
② 工事/製造/購入
1) 工事
工事においては、xx技術者(監理技術者)の専任配置(請負代金2,
500万円以上の場合)、企業の同種・類似工事施工実績、技術者の施工実績を求めており、特に、設備主体の工事にあっては設計製作体制・支援体制が求められている。
2) 製造
製造においては、企業の同種・類似機器の納入・製造実績に加え、設計製作体制、支援体制が求められている。
3) 購入
購入においては、企業の同種・類似機器の納入・製造実績を求めており、特に、政府調達協定(自主的措置)に基づく電気通信機器の購入については、支援体制が求められている。
③ 点検
点検においては、企業の同種・類似業務履行実績、技術者の履行実績が求められている。
入札参加資格要件は、発注機関や個々の契約により異なる。表 2-2 に関東地方整備局の入札参加資格要件の例を示す。
表 2-2 入札参加資格要件 (平成19年4現在:関東地方整備局)
(国土交通省大臣官房技術調査課調べ)
区分 | xx(監理)技術者等の要件 | 企業の施工実績 | |||||
技術者 要件 | 選任 | 専任 | 常駐 | 施工実績 | 設計、製作体制 | 支援体制 | |
設計 | ○ | ○ | - | - | ・同種・類似業 務 の履行実績 | - | - |
工事 | ○ | - | ○ ※ | ○ | ・同種・類似工事の施工実績 | ・当該設備の製作に係る設計管理、工程管理、試験に係る能力の証明 | ・障害時の支援体制 ・保守部品の供給体制 ・技術支援体制 |
製造 (電気通信機器) | - | ○ | - | - | ・同種・類似機器の納入・製造実績 | ・当該設備の製作に係る設計管理、工程管理、試験に係る能力の証明 | ・障害時の支援体制 ・保守部品の供給体制 |
製造 (一般物品) (個別製作機器) | - | - | - | - | ・同種・類似機器の納入・製造実績 | ・当該設備の製作に係る設計管理、工程管理、試験に係る能力の証明 | ・障害時の支援体制 ・保守部品の供給体制 |
購入 (電気通信機器) | - | - | - | - | ・同種・類似機器の納入・製造実績 | - | ・障害時の支援体制 ・保守部品の供給体制 |
購入 (一般物品) | - | - | - | - | ・同種・類似機器の納入実績 | - | ・障害時の支援体制 ・保守部品の供給体制 |
点検 | ○ | ○ | - | - | ・同種・類似業務 の履行実績 | - | - |
*:工場製作期間中は、工場のxx(監理)技術者と兼ねることができる。
3.契約と応札の現状
(1) 契約区分別の発注件数と契約額
(億円) 工事(合計)
800 件数:1,736件
金額:71,373百万円
700 電気設備工事
件数:437件
金額:26,691百万円
600
500 受変電設備工事
件数:153件
金額:5,707百万円
400
300 通信設備工事
件数:994件
金額:35,872百万円
200 件数:474件
件数:145件 金額:14,350百万円
金額:8,624百万円
100 維持工事 件数:211件 件数:265件
金額:3,263百万円
件数:152件 金額:1,955百万円
金額:3,102百万円
0 工 事 製 造 購 入 調査設計 保守点検(修繕含む)
(億円)
800
工事(合計)件数:1,736件
金額:71,373百万円
700
600
電気設備工事件数:437件
金額:26,691百万円
500
400
受変電設備工事件数:153件
金額:5,707百万円
300
200
通信設備工事件数:994件
金額:35,872百万円
件数:145件
金額:8,624百万円
件数:474件
金額:14,350百万円
100
維持工事 件数:152件
金額:3,102百万円
件数:265件
件数:211
件
金額:3,263百万円
金額:1,955百万円
0
工 事
製 造
購 入
調査設計 保守点検(修繕含む)
平成17年度の発注件数/契約額データ(100万円以下を除く)を図 3-1 に示す。図の通り、工事契約は全契約件数の61%、全契約額の72%であり、最も大きな割合を占めている。次は点検業務となっている。
* 少額契約(100万円以下)をのぞく
図 3-1 契約区分別の発注件数と契約額
平成17年度国土交通省(8地整及び北海道、沖縄(うち港湾・空港除く))実績値
(国土交通省大臣官房技術調査課調べ)
(2) 機器主体工事と工事(現地施工)主体工事別の契約額と発注件数
「機器主体」とは、請負工事価格に対し機器費の割合が50%以上のものをいい、「工事(現地施工)主体」とは、請負工事価格に対し工事費が50%以上のものをいう。機器主体工事は、受変電設備工事、通信設備工事の一部であり、平成 19 年度の内訳を見ると、契約額で 65%、件数で 59%を占めている。
平成19年度主体別工事発注状況(契約額)
件数:1,251
金額:87,096百万円
工事主体工事 35%
30,410百万円
56,686百万円
機器主体工事 65%
平成19年度主体別工事発注状況(件数)
件数:1,251
金額:87,096百万円
工事主体工事 41%
件数:519
件数:732
機器主体工事 59%
図 3-2 主体別工事発注状況(件数、契約額)
平成19年度国土交通省(8地整(うち港湾・空港除く))実績値
(国土交通省大臣官房技術調査課調べ)
(3) 工事における機器製作の有無による応札状況
契約区分において大きな割合を占める「工事」において、機器を含む場合と含まない場合の応札状況の違いを図 3-3 に示す。機器主体工事と工事(現場施工)主体工事を比較すると、件数、割合の双方で機器主体工事において一者応札が多い。また、機器主体、工事主体のいずれも不調・不落が平成 18 年度は1割強、平成 19 年度は 2割弱発生している。一者応札、不調・不落のいずれも増加していることが分かる。
件数
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
凡例
不調・不x x者応札
426
48%
351
39%
162
105
12%
106
127
68
10%
73
17%
20%
11%
H18 H19 H18 H19
機器主体工事
工事主体工事
18%
図 3-3 機器を含む工事契約における応札状況(件数)
平成18・19年度国土交通省(8地整(うち港湾・空港除く))実績値
(国土交通省大臣官房技術調査課調べ)
(4) 機器主体工事内容別の応札状況
機器主体工事における不調・不落、一者応札の原因を探るため、機器の新設・増設・改造・更新の別に、その状況を調査した結果を図 3-4 に示す。発注件数は新設が
多い(平成 19 年度で52%)ため、発生件数で見ると新設における不調・不落、一者応札が多いが、割合では、不調・不落については増設が、一者応札については改造、増設が多くなっている。平成 18 年度から平成 19 年度にかけてその数は増加している。
件数
300
254
250
凡例
不調・不落 1者応札
200
167
150
106
120
100
86
80
65
78
57
60
50
28
40
53
36 40 43 42
13
19
31
0
H18 H19
新設
H18 H19
増設
H18 H19
改造
H18 H19
更新
H18 H19
その他
図 3-4(1) 機器主体工事内容別の応札状況(発生件数)
70%
62%
60%
凡例
不調・不落 1者応札
50%
48%
47%
43%
40%
40%
32%
34%
30%
28%
23%
20%
23%23%
20%
17%
14%
14%
15%
15%
12%
11%
10%
9%
0%
H18 H19
新設
H18 H19
増設
H18 H19
改造
H18 H19
更新
H18 H19
その他
図 3-4(2) 機器主体工事内容別の応札状況(発生割合)
平成18・19年度国土交通省(8地整(うち港湾・空港除く))実績値
(国土交通省大臣官房技術調査課調べ)
(5) 契約金額別の応札状況
全工事を対象に不調・不落、一者応札の原因を探るため、契約金額との関連を調査した。その結果を図 3-5 に示す。不調・不落については、契約金額の少ない案件において多く見られる。一者応札については、契約金額との関連は少ないように見える。不調・不落対策に対しては、積算等のアプローチが、一者応札に対しては、発注図書
(技術仕様)などのアプローチが有効ではないかと考えられる。
金額別応札状況(件数)
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
0
30
60
90
120 150 180 210
百万円
1者応札(18)
1者応札(19)
不調・不落(18)
不調・不落(19)
図 3-5(1) 工事における契約金額別の応札状況(発生件数)
金額別応札状況(割合)
45%
40%
35%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
0
30
60
90
120 150 180 210
百万円
1者応札(18)
1者応札(19)
不調・不落(18)
不調・不落(19)
図 3-5(2) 工事における契約金額別の応札状況(発生割合)
平成18・19年度国土交通省(8地整(うち港湾・空港除く))実績値
(国土交通省大臣官房技術調査課調べ)
(6) 点検における契約状況
契約区分において「工事」の次に多かった「点検」について、その応札状況を調査した。結果を図 3-6 に示す。点検業務においては一者応札が多く、さらに増加していることが分かる。
一般的に点検業務は通年で発注されることから、技術者を一年間に亘り配置しなければならない。また、点検対象とする施設の中には、xx中継所やダム上流山間部のテレメータ雨量観測局など、分かりにくく、往復の行程に長時間の徒歩を必要とするものなどがある。このような事情から応札が敬遠されていることが考えられる。
点検業務応札状況(H18)
点検業務応札状況(H19)
複数応札
53%
1者応札
47%
複数応札
34%
1者応札
66%
図 3-6 点検契約における応札状況(発生割合)
(国土交通省大臣官房技術調査課調べ)
(7) 契約区分別の有資格者
上記応札者の母集団にあたるものは、各地方整備局の有資格者の登録者である。表 3-1 に、関東地方整備局の有資格者の登録状況の例を示す。
それぞれの契約区分に対してある程度の企業数は存在することが分かる。ただし、例えば、通信設備工事には、鉄塔のような鋼構造物工事、光ファイバ設備工事、ダム制御設備工事等が含まれており、同一の工種であっても、どの工事をも実施できるとは限らない。特に機器の製造を含む工事では機器の設計、生産には相当な投資や技術開発が必要であるため、設備の種類毎に数社しかないのが現状である。
表 3-1 有資格者の登録状況 (平成19年4現在:関東地方整備局)
契約区分 | 登録の要件等 | 工事規模/ランク | 有資格業者の数 | ||
設 | 計 | 関東地方整備局(港湾空港関係を除く) 土木関係コンサルタント業務(電気電子) | ランク区分なし | 107 | |
工事 | 電気設備工事 | 関東地方整備局(港湾空港関係を除く) | A | 2億円以上 | 54 |
B | 5000万円以上2億円未満 | 531 | |||
C | 5000万円未満 | 1,405 | |||
受変電設備工事 | 関東地方整備局(港湾空港関係を除く) | ランク区分なし | 924 | ||
通信設備工事 | 関東地方整備局(港湾空港関係を除く) | ランク区分なし | 976 | ||
製 | 造 | 国土交通省(全省庁統一) (競争参加地域:関東・甲信越) (営業品目:電気・通信用機器類) | A | 3000万円以上 | 227 |
B | 2000万円以上3000万円未満 | 150 | |||
C | 400万円以上2000万円未満 | 446 | |||
D | 400万円未満 | 309 | |||
購 | 入 | 国土交通省(全省庁統一) (競争参加地域:関東・甲信越) (営業品目:電気・通信用機器類) | A | 3000万円以上 | 902 |
B | 1500万円以上3000万円未満 | 565 | |||
C | 300万円以上1500万円未満 | 2,189 | |||
D | 300万円未満 | 1,071 | |||
点 | 検 | 国土交通省(全省庁統一) (競争参加地域:関東・甲信越) (営業品目:建物管理等各種保守管理) | A | 3000万円以上 | 785 |
B | 1500万円以上3000万円未満 | 618 | |||
C | 300万円以上1500万円未満 | 2,730 | |||
D | 300万円未満 | 1,466 |
4 受注者の意見
入札契約における問題点を様々な角度から把握するために、受注者に対するアンケートとヒアリングを行った。これらの意見を尊重して検討を行うものの、品質確保の観点から、そのまま受け入れられないものもある。
(1) 設計業務
アンケート | ヒアリング | |
入札参加資格要件等 | ・ 適切である(74%) ・ 同種・類似実績の要件が厳しい(62%) | |
技術者要件 | ・ 管理技術者の要件が厳しい (47%) | ・ 技術士とRCCMの評価差の縮小を希望 ・ 担当技術者の資格要件の撤廃希望(若手の育成) |
発注時期 | ・ 適切でない(56%) ・ 年度末に業務が集中(74%) | ・ 発注が下半期に集中している(平準化を要望) ・ 冬期の現地調査不可能期間を考慮した納期を希望 |
発注内容 | ・ 発注規模、発注区分は適切 (82%) | ・ 「電気+通信+情報」等、工種が多岐に亘り、対応 可能な技術者が限られる (分離発注を望む) |
発注図書 | ・ 業務目的が不明確(59%) ・ 発注仕様が曖昧(56%) | ・ 詳細設計で基本設計を見直す内容あり ・ 仕様が曖昧なため、打合せが膨大となる ・ 照査基準の全国統一を要望する |
発注方式 | 〔設計・施工一括発注方式、詳細設計付き工事〕 ・ 技術進歩が早い部分についてはやむなし、それ以外は分離発注を望む ・ 詳細設計を工事に移行すると、コンサルタント側の詳細設計の技術力が低下する ・ 施工管理的な業務を望む ・ 詳細設計の下流部分はコンサルタント設計ではなく 施工設計である | |
積算 (予定価格) | ・ 適切である(53%) ・ 条件が曖昧(79%) | ・ 公募型競争は低価格入札が多く参入できない ・ 指名競争、標準型プロポーザル方式は新規参入の障害要因 ・ 低価格入札はしない方針、但し、発注仕様が不明 確なため、結果的に低入札となることが懸念される |
(2) 工事(機器主体工事)
アンケート | ヒアリング | |
入札参加資格要件等 | ・ 適切である(39%) ・ 応募要件(参加資格)について適切である(89%) ・ 設計・製作体制の証明が難し い(6%) | ・ アフターサービスを24時間体制とするのは厳しい |
技術者要件 | ・ 監理技術者の要件が厳しい (67%) ・ 現場代理人の要件は適切 (56%) (追加アンケート) ・ 工事現場を担当できる監理技術者の不足(6/8 社;受変電・電源、16/17 社;通信) | ・ 建設業法上の有資格者が不足 ・ 技術者の施工実績要件の緩和を要望 ・ 緩和の結果、配置技術者が評価要素となってもやむを得ない ・ 技術者の確保に苦慮、施工経験、協力会社の技術者の活用、専任期間の緩和を要望 |
発注時期 | ・ 年度末に集中(89%) ・ 発注予定情報の乖離について支障がある(83%) | ・ 発注時期が下半期に集中し、年間バランスが悪く、技術者のコストが高い ・ 年間計画に沿って受注努力するため、当初計画にないものは応札しにくい ・ 発注時期の平準化を望む ・ 発注予定の公表と発注にずれがあり支障 ・ 工期延期で技術者が確保できず、受注計画が狂う ・ 小規模工事でも工期が短ければ参加希望 |
発注内容 | ・ 既設設備と関連がある工事は参加しづらい(89%) | ・ 発注ロットを大型化してほしい ・ 少しでも他社関連部分があると応札障害要因となる ・ 他社製品の比率は全体の1~4割が参入判断要件。 ・ 他社製品の調達が必要な場合、入札前に金額等が固まれば良いが、契約後の確定となる場合は参入が難しい ・ 他社製品に係わる部分を請け負ったとしても、自社では改造しない ・ 他社が改造した場合、製品の保証ができなくなる |
発注図書 | ・ 精度が低い(83%) ・ ハード・ソフトの接続条件明示が不足(72%) | ・ 既設機器の改造、増設は標準仕様が無いと参入しにくい ・ 大まかな仕様、曖昧な仕様は参入しにくい ・ 接続インターフェース条件を明確化することで競争性が増大する |
発注方式 | ・ 応札資料作成に時間を要する 〔多様な発注方式〕 ・ メンテナンス付き工事や、詳細設計付き工事を歓迎 ・ 設計・施工を一体的に実施することで、手戻りが無く、コスト的にメリットがある ・ 即応性の高いメンテナンス体制を確保するためにも、メンテナンス付き工事を要望 ・ メンテナンス付き工事の元請け限定は厳しい(製造部門以外を分社化の方向にある) ・ 詳細設計付き工事の場合、設計技術者(有資格者) の確保が困難 | |
総合評価 | ・ 現在の方式が適切(56%) ・ 機器性能を重視すべき(83%) ・ 施工計画に重点を置くべき (28%) | ・ 技術評価点をもっと高めてほしい ・ 各社の提案内容を公表してほしい |
積算 (予定価格) | ・ 機器費において、市場調査価格と実勢価格に乖離がある ・ 官積算と実諸経費に乖離がある ・ 土木工事要素を含んだ工事は採算性が悪い |
(3)工事(工事主体工事)
アンケート | ヒアリング | |
入札参加資 | 適切である(54%) | ・ 機器を含む工事においては、契約代理店が扱ってい |
格要件等 | ・ 応募要件(参加資格)は適切 | る製品であれば応募するが、扱っていない場合は応募し |
(56%) | ない | |
・ 設計・製作体制の証明が困 | ・ リスク分担が明示されれば応札の幅が広がる | |
難(28%) |
技術者要件 | ・ 監理技術者の要件が厳しい (47%) ・ 現場代理人の要件は適切 (71%) | ・ 業界全体で人材が不足している ・ 通信設備工事の監理技術者が不足 ・ 複数の施工実績を求められると技術者配置が厳しい |
発注時期 | ・ 年度末に集中(58%) ・ 発注予定情報の乖離:支障がある(40%) | ・発注予定公表と現実にずれがある |
発注内容 | ・ 既設設備と関連がある工事は参加しづらい(55%) | ・ 通信設備工事の発注ロットを大型化してほしい ・ 複数出張所にまたがる工事は、打合せ、対応に時間を要するので応札しにくい |
発注図書 | ・ 精度が低い(53%) ・ ハード・ソフトの接続条件明示が不足(24%) | ・ 機器製作の規格(JIS、JEC、JEM)により大幅に価格が異なるため、具体明示が必要 |
発注方式 | 〔入札(総合評価)〕 ・ 現在の方式が適切(59%) ・ 機器性能を重視すべき(31%) ・ 施工計画に重点を置くべき (55%) | ・ 新たな入札方式が出てくると追従に労力が必要 〔入札(総合評価)〕 ・ 参加資格通知から入札までの期間を延長してほしい (積算期間が不足) |
積算 (予定価格) | ・ 機器費において、市場調査価格と実勢価格に乖離がある ・ 官積算と実諸経費に乖離がある ・ 機器にも間接費を計上してほしい ・ 小規模工事の間接費を見直してほしい ・ 低入札の意志が無いにもかかわらず、低入札となることがある |
(4) 点検業務(標準的な設備を包括して点検を実施する場合)
アンケート | ヒアリング | |
入札参加資 格要件 | 適切である(77%) | |
技術者要件 | ・ 管理技術者の要件が厳しい (28%) | 〔技術者要件〕 ・ 管理技術者の育成には数年必要 ・ 管理技術者の資格要件を公示時点から業務開始時点としてほしい ・ 管理技術者、保守技術者の確保が困難 |
発注図書 | ・点検内容が明確でない(23%) | |
発注方式 | 〔多様な発注方式〕 ・ 点検機器障害復旧に係る契約範囲として点検、損傷復旧箇所の特定、故障復旧を含めることが適当(51%) ・ 維持管理複数年契約方式を望 む(47%) | 〔多様な発注方式〕 ・ 単年度で毎年チャンスが有る方が良い(競争リスク分散) ・ 業務範囲に障害箇所の特定、障害復旧まで含めてほしい |
積算 (予定価格) | ・ 業務内容が適切(62%) ・ 労務単価が合わない(特にメーカ等への外注単価) (66%) ・ 点検内容と歩掛の乖離 (50%) | ・ 点検業務1件のみの受注では経営困難 |
参考
受注者アンケート、ヒアリング実施数
国土交通省と過去5年間において、3件以上の契約実績のある企業(302社)に対し、電子媒体による自記入式の調査表により実施した。
〔アンケート〕
業 者 区 分 | 回答数 | 備考 |
コンサルタント | 34 | |
電気設備工事(Aランク) | 16 | 予定価格 2億円以上 |
電気設備工事(Bランク) | 32 | 予定価格 5000万円以上2億円以下 |
電気設備工事(Cランク) | 5 | 予定価格 5000万円未満 |
通信設備工事 | 91 | |
受変電設備工事 | 17 | |
物品等の製造 | 10 | |
物品等の購入 | 26 | |
点検、運転監視(注1) | 41 | |
点検(注2) | 4 | |
合 計 | 276 |
注1 標準的な設備の点検、運転監視業務
注2 機器製作メーカの技術的依存度の高い設備(ダムコン等)の点検
受注者アンケートを補足することを目的にヒアリングを実施した。
〔ヒアリング〕
業 者 区 分 | 事前ヒアリング 実施数 | 電気通信施設WGで のヒアリング実施数 | 備考 |
コンサルタント | 4 | 1 | |
機器主体工事 | 12 | 2 | |
工事主体工事 | 9 | 1 | |
点検、運転監視 | 3 | 1 |
事前ヒアリング : ヒアリング希望者全員に対し、実施した。
電気通信施設WGヒアリング : 事前ヒアリング実施者に対し、全国的に受注活動を実施し、当該
業者区分を代表する意見を有していると思われる社に対し、同W Gから要請した。
資料編に受注者アンケート、ヒアリング結果を示す。
第二章
電気通信施設の入札契約の課題と改善案
1.電気通信施設の発注者が果たすべき責任
電気通信施設の発注者として果たすべき責任とそのための体制整備を以下のように考える。
①~③については、「国土交通省直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会「中間取りまとめ」(平成18年9月)」を引用した。
① 国民のニーズにあった社会資本整備に関する責任
発注者は、社会経済情勢の動向や国民ニーズ等を的確に把握し明確化した上で、良好な社会資本を適正な費用で整備・維持するため、調査、計画、設計、施工、維持管理のすべての段階、すなわち建設生産システム全体を俯瞰しつつ、各々の仕組みを常に改善する責任がある。
② 価格と品質が総合的に優れたものをタイムリーに調達し継続的に提供する責任
発注者は、公共サービスの享受者である国民に対して、透明性の高い競争を通じ、価格と品質が総合的に優れた工事等の調達を実施することで、最も価値のある社会資本を適切な時期に提供する責任がある。
③ 発注者と受注者がそれぞれ工事等の品質確保に責任を持つ仕組みを構築・維持する責任
発注者は、受注者に対して契約上(契約条件の適切な設定、書面による適切な指示、適切な支払い等)の責任がある。また、発注者は、工事等において適時・適切に検査を行うことにより、品質を確保する責任がある。
一方、受注者は、契約内容を適正に履行し、公共工事の品質を確保(適切な品質管理、出来形管理等)する責任とともに、法令遵守、工事中の周辺環境への配慮、下請企業への適正な支払い、談合その他の不正行為の根絶等の社会的責任がある。
発注者は、両者がそれぞれの立場から工事等の品質確保に責任を持つ仕組みを構築・維持する責任がある。
④ 目的を達成するため適切に施設を整備しサービスを提供する責任
電気通信施設の発注者は、河川・道路事業等の目的を達成するために、上記①~③に加えて、電気通信施設の特質に留意しつつ施設を整備、維持管理する責任がある。
電気通信施設は、河川・道路等の社会資本の利用や管理において常時利用され、災害時においても確実に機能させなければならない。
このため、調達段階においてニーズに対応した設備の所要性能を確保するこ
とに加えて、維持管理段階おいて継続的に施設を機能させ、施設障害時等にも迅速な復旧・回復を行う責任がある。
⑤ 発注者の技術力向上を図る責任
発注者は、技術や市場の動向に適合した電気通信技術を的確に導入し、国民また行政のニーズに対応するために、専門技術力に加えて事業の構想・計画段階から設計・積算・施工・維持管理の各段階に至る知識経験を備え、マネジメント・危機管理能力、品質確保に関する専門的能力の向上を図る責任がある。
2 電気通信施設の入札契約の課題と改善案
「第xx 3.入札契約と応札者の現状」から、契約額全体の 72%を占める工事契約、特にその過半数を占める機器主体工事において不調不落の増加、応札者の減少傾向が見られる。また、点検業務においては応札者数の減少が顕著である。
不調不落の増加により、供用すべき施設整備の遅れ、事務手続き等の繰り返しによる労力増大といった問題が生ずる。また、応札者の減少も、競争性、透明性、xx性の視点から好ましくなく、応札者の減少は不調不落の増大を招く危険性をはらんでいる。
したがって、より多くの応札者が入札に参加できるよう、入札契約制度について見直す必要がある。同時に、国民のニーズにあう社会資本整備に関する責任、価格と品質が総合的にすぐれたものをタイムリーに調達し継続的に提供する責任、発注者と受注者が品質確保に責任を持つ仕組みを構築・維持する責任、目的を達成する施設を提供する責任、発注者の技術力向上の責任という前項で述べた発注者の責任を果たす必要がある。
入札契約制度の見直しにおいては、施設整備のプロセスにおいて、工事契約の前段にあたる調査設計から、整備(工事・製造・購入)、整備後の維持管理に至るプロセスが相互に関連し、前段の成果が後段に引き継がれることを考慮する必要がある。そして、企業が応札を困難としている障害を取り除くと同時に、工事等の品質、応札における経済的・社会的・技術的インセンティブを総合的に確保する必要がある。
そのためには、電気通信施設整備の全プロセスに対して、入札参加資格要件、施工・業務履行の環境、発注図書、積算、評価(入札時、完成時)といった入札契約制度全般について検討し、発注者責任を全うする必要がある。図 2-1 に業務プロセスに対応する現状の課題を示す。
図 2-2 に、各課題に対応した改善案とそれが適用される契約区分を示した。以下、各改善案について記す。
. 技術的可能性
応札者;仕様を満足できるか発注者;適切な仕様か
3
応札者;応札が可能か
発注者;入札参加要件が適切か
1. 応札可能性
. 業務遂行可能性
応札者;技術者配置などが可能か発注者;施工条件、環境は適正か
2
入札参加要件
施工は可能だが、製造体制がない
技術者配置等
技術者の配置が難しい
業務履行の体制が整わない
工事(総合評価)
保守業務
発注図書等
3. 技術的可能性
応札者;仕様を満足できるか発注者;適切な仕様か
仕様が不明確
設備運用
多様な発注方式
詳細設計と施工の一体化、施工と保守の一体化
機器費、施工費
品質評価
6. 評価
応札者;技術が適正に評価されるか発注者;適切な評価をしているか
4. 事業領域と発注の適合性
応札者;事業領域に適合するか
発注者;適切な発注方式・発注区分か
設計業務
2. 業務遂行可能性
応札者;技術者配置などが可能か発注者;施工条件、環境は適正か
1. 応札可能性
応札者;応札が可能か
発注者;入札参加要件が適切か
運用を考慮した施工が評価されない
諸経費から技術者経費の捻出が困難
5. 経済的可能性
応札者;適正な利潤を得られるか発注者;適切な積算か
技術者が手配できない
入札公告
評定
施工
総合評価
入札公告(各種条件提示)
設計成果品
課 題
工夫した機能が評価されない
. 経済的可能性
応札者;適正な利潤を得られるか発注者;適切な積算か
5
. 評価
応札者;技術が適正に評価されるか発注者;適切な評価をしているか
6
. 事業領域と発注の適合性
応札者;事業領域に適合するか
発注者;適切な発注方式・発注区分か
4
予定価格算定
図 2-1 業務プロセスと入札契約の課題
. 技術的可能性
応札者;仕様を満足できるか発注者;適切な仕様か
3
応札者;応札が可能か
発注者;入札参加要件が適切か
1. 応札可能性
. 業務遂行可能性
応札者;技術者配置などが可能か発注者;施工条件、環境は適正か
2
1. 応札可能性
応札者;応札が可能か
発注者;入札参加要件が適切か
① 入札参加要件の改善
設計 | 機器主体 工事 | 工事主体 工事 | 製造 | 保守 |
● | ● | ● | ||
● | ● | ● | ● | ● |
● | ● | ● | ||
● | ● | ● | ||
● | ● | ● | ● | |
● | ● | |||
● | ● | |||
● | ● | ● | ● | |
● | ||||
● |
課 題 改善案
② 技術者配置の効率化への改善
③ 発注図書の改善
④ 運用中の機器の機能維持(修繕・改造・
増設)の円滑化
⑤ 多様な発注方式の採用
⑥ 機器価格設定方法の改善
⑦ 積算体系の改定
⑧ 積算基準の改善
5. 経済的可能性
応札者;適正な利潤を得られるか発注者;適切な積算か
4. 事業領域と発注の適合性
応札者;事業領域に適合するか
発注者;適切な発注方式・発注区分か
3. 技術的可能性
応札者;仕様を満足できるか発注者;適切な仕様か
2. 業務遂行可能性
応札者;技術者配置などが可能か発注者;施工条件、環境は適正か
⑨ 総合評価落札方式における評価手法の改善
6. 評価
応札者;技術が適正に評価されるか発注者;適切な評価をしているか
⑩ 請負工事成績評定要領の改善
. 経済的可能性
応札者;適正な利潤を得られるか発注者;適切な積算か
5
. 評価
応札者;技術が適正に評価されるか発注者;適切な評価をしているか
6
. 事業領域と発注の適合性
応札者;事業領域に適合するか
発注者;適切な発注方式・発注区分か
4
図 2-2 入札契約の課題と改善対策案の対応整理
改善案1 入札参加資格要件の改善
電気通信施設の入札契約状況から、機器主体工事において入札不調・不落・少数応札が比較的高い比率で発生しており、さらに増加傾向にあること、点検業務については一般競争入札を適用してから一者応札が高い比率で発生していることが判明した。品質を確保しつつ、応札者の増加を図るために、入札契約の入り口にあたる入札参加資格要件の改善について検討を行った。
1.1 機器主体工事
機器主体工事において、応札企業と応札者が配置すべき技術者には、品質確保のために一定の要件を求めている(第xx表2-2 参照)。これに対して、工事の品質を確保しつつ、調達する機器の特徴や業態の変化を踏まえた改善について、次の通り検討を行った。
① 応札企業に求める要件
応札企業には、施工実績、設計製作体制、技術的支援体制を求めている。このうち、設計製作体制について、次のように検討した。電気通信施設の整備において、機能やコストを精査した結果として、一般xx市場に流通している市販製品の使用が増加している。これらは、統一的な品質管理がなされており、さらに、粗悪品は一般市場で排除される。これらは国交省用に設計製作されるものではなく、その製品の機能・性能・価格を勘案して導入を図るものであるから設計製作体制を求めることは不要と考えられる。
技術的支援体制については、市販製品を導入した場合に、その製品サイクルを考慮した保守部品の供給期間について配慮が必要である。
また、設備の改造・増設や少額工事など、技術的難易度が低い、基本的な技術が確立されているといった、品質が確保される案件については、内容に応じて要件を緩和することが考えられる。
この「設計・製作体制」の緩和、技術的支援体制の緩和に伴い、機器製作者の代理店、工事業者等の応札が期待できる。
② 配置技術者に求める要件
現場施工の配置技術者には、xx(監理)技術者資格、施工実績を求めている。xx(監理)技術者資格は建設業法の規定に準拠しており、施工実績には当該工事と同種・類似の工事の実績を求めている。なお、工場製作期間の配置技術者は、現場におけるマネジメント能力よりも機器製作に係る品質管理能力が求められるため、工事の施工実績は求められていない。
現場への配置技術者には当該設備に特化した技術的能力よりも、工事全体に対す
るマネジメント能力による工事品質の確保が求められるため、類似工事の範囲を拡大して施工実績の要件を緩和することが考えられる。
この「施工実績の要件」の緩和により、対象技術者が増加し、技術者配置が容易になり応札者の拡大が期待できる。
これら、機器主体工事における入札参加資格要件の改善を表 1-1 にまとめた。
表 1-1 機器主体工事における入札参加資格要件の改善
対象要件 | 細別 | 現行 | 改善 | 期待される 効果 |
応札企業 | 施工実績 | 同種・類似の施工実績 (施工量=発注規模の概ね 1/2以上) | ||
設計製作体制 | 設備特性に係わらず 「設計・製作体制を要求」 | 市販製品について設計製作体制を除外 設備改造・増設や少額工事等で工事内容に応じて要件を 緩和 | 代理店等の参入機会の拡大 | |
技術的支援体制 | ・障害時支援 ・保守部品供給体制 ・技術的問合せに対する支援体制 | 市販製品について保守部品の供給体制を緩和 設備改造や少額工事等で工事内容に応じ て要件を緩和 | ||
監理(xx)技術者(現地) | 施工実績 | 同種・類似の施工実績 (施工量=発注規模の概ね1/2以上) | 類似工事範囲の拡大 | 対象技術者の拡大で技術者配置が容易となり応 札者の増加 |
市販製品の例;CCTVカメラ、非常用発電設備、受変電設備、ネットワーク機器
市販製品ではない機器の例;多重無線設備、光ファイバ伝送設備、道路情報板、放流警報設備、雨量/水位観測設備
1.2 点検業務
点検業務における平成19年度の入札参加資格において、応札企業及び応札者が配置すべき技術者に求めている要件に対して、業務の品質を確保しつつ、業務内容、点検対象設備の特徴、技術者の減少を踏まえた見直し検討を次のように行った。
① 応札企業に求める要件
契約手続きの簡素化、効率化のため、電気設備、通信設備、情報設備等を一括して点検する契約方式を採っており、応札企業には点検対象設備に応じた履行実績を求めている。
このため、xxな対象設備に精通する応札者を期待するところであるが、複数設備の履行実績を有する企業が限られるために応札者数が少なくなっている可能性がある。
対象設備の点検マニュアル等のドキュメントの整備も進み、特殊機器の点検については外部委託することも可能であるため、基本的な設備の点検技術と業務履行のためのマネジメント能力があれば、複数種類の施設の点検の品質確保が可能であると考えられ、履行実績設備数の低減(例えば、3 設備→1 設備)という緩和が考えられる。
この「履行実績設備数の緩和」により応札者数の拡大が期待できる。
② 配置技術者に求める要件
配置技術者には、管理技術者資格、業務実績(業務経験)を求めている。業務経験の対象設備については、上記「① 応札企業に求める要件」の対象設備数の低減と同様に緩和が考えられる。
また、業務経験の基準日については、従来、「競争参加資格確認及び技術審査申請書」の受領期限日としていたが、業務の履行開始日を基準日としても、実質的な業務経験はあると考えられ、これにより業務経験年数を実質的に1年緩和できることになる。
この「業務経験の緩和」により、対象技術者の増加が見込まれることから、応札者の拡大が期待できる。
改善案2 技術者配置の効率化への改善
企業は、工事の実施や業務の履行における様々なリスクを想定して応札の判断を行うため、入札参加資格要件を満たす者が必ずしも入札に参加するとは限らない。応札に当たり企業が想定するリスクを軽減あるいは回避することにより、品質を確保しつつ応札者の増加を図ることができると考えられる
受注者のアンケート、ヒアリングから、企業が工事の実施や業務の履行において想定するリスクと対応策を下表にまとめた。この中で多くの企業が、技術者配置を課題と考えており、本項では、主に技術者配置の効率化について検討する。
表 2-1 応札に当たって想定するリスクと対策案
番 号 | 想定される リスク | 概要 | 対策案 |
2-1 | 技術者の選任不能(技術者配置) | 監理(xx)技術者の選任において、他案件の専任との調整等の結果、当該応札に技術者を割り当てられな いリスクがある | ①技術者要件の適正 化、②技術者の効率的な配置への支援、③技術者準備期間の確保、 ④施工時期の平準化 |
2-2 | 機会逸失(技術者配置) | 事前公表以外の工事が公告された場合に技術者の割り当てができないなどの理由から契約機会を逸失 するリスクがある | ⑤発注案件の事前公表の徹底 |
2-3 | 工期延期(技術者配置) | 概略発注などによって工期が延期されると、技術者専任期間の延長による他の案件への影響や、コスト増 加のリスクがある | ⑥工期変更の回避、適正化、⑦ワンデイレスポンス |
2-4 | 工期不足 | 工期が十分確保できない案件は、工事の完成ができない、品質確保ができない、工事成績が低下するなどの リスクがある | ⑧早期発注による適正工期の確保 |
2-5 | 不採算 | 移設・仮設・専門外の要素(土工など)・他社への支払いが含まれる案 件は、採算割れとなるリスクがある | 改善案6,7,8にて整理 |
2-6 | コンプライアンス | 他社設備の改修等が含まれる案件において、入札時点で当該他社との接触が自社コンプライアンスに抵触するリスクがある | 改善案3,4にて整理 |
① 技術者要件の適正化
「1.入札参加資格要件の改善」に、監理(xx)技術者に求める同種・類似工事の施工実績の内、類似工事の範囲を拡大など、対象技術者の増加を図り、技術者配置を容易とする方策を述べた。
② 技術者等の効率的な配置への支援
②-1 入札説明書において技術者の専任を要する期間(現場工事期間)を明確化する(工場製作期間における技術者の兼任と現場工事期間の技術者変更を明確化)。
②-2 入札説明書においてフレックス工期制度を明記する(適用する場合)。
技術者の専任を要する期間の明確化及びフレックス工期制度により請負者が工事開始日を選択できることで、効率的な技術者配置が可能となり、応札可能案件が増加することが期待できる。この概念を図 2-1 に示す。
③ 履行準備期間の確保
点検業務において、落札決定から履行開始までに十分な履行準備期間(1ヶ月程度)を確保することにより、技術者の準備を可能にするものである。
点検業務や運転監視業務(点検業務と一括で発注される場合が多い)では、点検技術者、運転監視員(常駐)を確保する必要があり、落札から履行開始までの期間が短いと技術者等を確保できず履行が困難となるリスクが生ずる。履行準備期間を確保することで、技術者等の確保、配置が容易となるため、応札者数の増加が期待できる。
④ 施工時期の平準化
単年度予算であることと、入札契約手続きが複雑化していることなどから発注時期が遅れ、工期が年度末に集中する場合が多くなっている。これにより、専任を必要とする現場工事の技術者の配置が困難となって、応札を見送る可能性がある。また、現場工事が年度末に集中することで資機材、施工技術者の確保が困難又はコスト高となって採算性が悪化し応札意欲が低下する可能性がある。
施工時期の集中による応札者数の減少を避けるため、工事に関する計画・調整等をあらかじめ前年度に実施するなどの準備の前倒し、積算の簡素化、効率化などによって、早期発注を行い、工期の年度末への集中を回避し、施工時期を平準化させることで応札者数の増加が期待できる。
⑤ 発注案件の事前公表の徹底
地方整備局単位で、四半期毎に工事等の発注見通しの公表を行っており、企業は、それを基に応札計画や技術者配置計画などを検討している。公表と実際の発注が食い違うと、企業は技術者配置が困難となり、応札を見送る可能性がある。発注案件の精確な事前公表を行うことにより、計画的な技術者の配置が可能と
なり、応札者数の増加が期待できる。
⑥ 工期延期の回避、適正化
概略発注工事や現場条件等で工事中止となり、工期延期となる場合には、配置技術者の専任期間が延長され、他工事への技術者配置が困難となる。
工期変更を回避するために上述した計画的・効率的な方策を講ずることや発注者・受注者による工期延期リスクに係る情報の共有が考えられる。変更の際には、その内容、時期を適正とすることが必要である。また、専門工事の分離や設計業務の別途発注などの方策も考えられる。これらの方策により工期延期によるリスクが低減し、応札者の増加が期待できる。
なお、早期の引き渡し、完成検査の実施により技術者拘束期間の短縮も可能である。
⑦ ワンデイレスポンスなどによる施工、履行の効率化
概略発注工事や発注者の指示が仕様書などに含まれる場合は、請負者は発注者からの指示が無ければ現場施工が困難である。また、現場条件が発注図書と異なる場合には、請負者からの協議や問い合わせに対して発注者からの指示、返答が遅れると現場施工が停止し、施工のための時間の不足やコスト増加の要因となる。
施工や履行における、協議や問い合わせに速やかに返答することで、無駄を無くし、効率的な施工や作業が可能になる。これによりリスクを低減し、応札者の増加が期待できる。
⑧ 早期発注による工期の確保
工事に関する計画・調整等をあらかじめ前年度に実施するなどの準備の前倒し、積算の簡素化、効率化などによって、早期発注を行い、適正な工期を確保することが工事の品質確保のために必要であり、そのような発注を行うことで応札者の増加が期待できる。
(フレックス工期に基づく着手届)
契約期間
受注者が選択した工期 (xx(監理)技術者の配置期間)
機器搬入
変更可能
工場製作のみが行われている期間は専任を要しないた
め、他の同種工事の工場製作技術者との兼任可能
xx(監理)技術者
専任
現場代理人
技術者の兼任、あるいは別途代理人を割り当て
他工事xx(監理)技術者
(現場代理人)
当該工事xx(監理)技術者
(現場代理人)
現場工事期間
工事完了
工場製作期間
工事開始日
契約締結
工場製作完了
検査完了
当初工期
工事開始日まで他工事の技術者専任が可能
図 2-1 技術者等の配置例(工場製作期間、フレックス工期を適用した事例)
2-12
改善案3 発注図書の改善
一般的な材料で完結せずに、複雑な機能を有する機器を含む工事においては、機能、性能、環境条件、施工条件、責任分界点、インタフェース等に関する仕様を詳細に記述することが、品質の確保、積算価格の精度向上のために求められる。一方で、詳細に規定したために機種等の限定を招き、結果的に応札者の制限となる恐れがある。機種等が限定された場合、それと同等以上の機能・性能等を有する機器や、より低価格な機器の活用、それらを供給できる応札者の参入機会を逸してしまう可能性が生ずる。
この問題を解決するためには、品質確保に必要となる本質的な仕様を漏れなく精確に記述し、同時にそれ以外の不要な規定をしないことが必要となる。
このような考え方で、機器仕様及び特記仕様書等の発注図書を改善すれば、応札者の技術力を活用し、技術的要件による応札者の参入リスクを低減することができる。したがって、応札への参加が促進されることが期待できる。
(1) 発注仕様において機種等を限定させないための発注図書の作成
発注図書は、自ら作成する場合と設計業務成果に基づいて作成する場合がある。詳細設計業務成果は、発注図書の基礎としての役割のほか、予定価格積算のための資料として利用される。その場合には、標準的な工法と特定の製品を想定して設計、図面作成、数量算定などが行われるため、そのままでは成果品において特定製品に係る詳細な記載が残る事例がある。
このため、詳細設計業務の成果においては、予定価格積算用の資料と、発注図書作成用の成果を分け、発注図書用の成果品についてはxx性、透明性を確保する必要がある。これにより、応札企業の技術力を生かす仕様書となるが、一方で、詳細な仕様化がなされていない部分もあるため、入札段階の総合評価用提出資料や受注後の機器製作仕様書によって品質に対する確認を行う必要がある。
同時に、発注図書において必要な項目を記すことは、品質確保や応札企業にとって機器製作上のリスク回避となるため重要である。
図 3-1 に設計業務と施工における仕様の概念を示す。
工 場 製 作機器製作設計
製作仕様
確定
機器製作
据付調整
(設計段階)
(x x 段 階)
特定機器、特定メーカ依存となりやすい範囲
(施工段階のxx性を損ねる)
詳細施工図
詳細機器仕様書
(設計段階)
(x x 段 階)
施工一般図
設計・詳細設計
機能仕様主体の
仕様書
【発 注】
設計・詳細設計
工 場 製 作 据付調整
設計・詳細設計
【従 来】
【課 題】
【見直し後】
(標準的な施工)
図 3-1 設計業務と施工における仕様の概念
(2) 発注図書の標準化
同種の目的物を整備する場合には、労力の削減と標準的な品質を確保するため、標準的な仕様を作成することが考えられる。標準的な仕様の作成においては、各地整の実情や技術の変化、標準的な機能や市場動向などを十分に調査のうえ、コストとのバランスを考慮しつつ制定することが必要とされる。
改善案4 運用中の施設の機能維持(修繕、改造、増設)の円滑化
国土交通省の電気通信施設は、円滑な道路交通の確保や河川の管理、防災対策など国民生活や安全・安心を支える基盤の一部として機能しているものであり、修理や更新などを行いながらも、数十年以上の長期間に亘って連続的に運用し続けることが求められる。そのためには、故障などによる機能停止が極力起こらないように平均故障間隔(MTBF)を長くすることと、迅速な機能回復のため平均復旧時間(MTTR)を短くすることが必要となり、施設の更新が必要となる場合も機能停止時間を極力短くすることが必要となる。また、外部条件の変化に対応して施設の増設、改造を適時適切に実施することも重要である。
入札契約の観点からは、第xxで明らかになったように、修繕・改造・増設契約は、新設に比べて応札者が少なく、一者入札が多いことも課題となっている。これは、技術者配置の問題の他に、運用中の施設に関与する際には、表 4-1 に示すリスクを受容せざるを得ないことが挙げられる。
リスクを軽減または回避し、運用中の施設の機能維持(修繕、改造、増設)を円滑に実施するためには、当該施設を熟知している製造者と随意契約を行うことが一般的な方法である。
表 4-1 運用中の施設に係るリスク
リスクの種別 | 内容 |
・施設全体に対する調査 | 運用中の既設施設への影響を抑制し、着手する施設全体に責任を持つには、対象物全体に 対して詳細な調査と対応が必要である。 |
・入念な事前テストの実施 | 品質を確保し、作業におけるリスクを軽減させるためには、実作業の前のテストは必須であり、そのため、既設対象物(少なくともインタフェース)を模擬したテスト環境を構築し、正常・異常・境界のテストデータを準備し、入念なテストの実施 が必要となる場合がある。 |
・既存施設製作者との調整 | 現地作業において、既設施設の製作者を立ち 合わせ、対向で調整するなどの調整が必要となる場合がある。 |
・責任分界、法的な諸問題への対応 | 障害発生時の責任を負うリスク、障害原因の追究などのアフターサービスのリスク、ソフトウェアの改修を含む場合は知的財産権の侵害などのリ スクが存在する。 |
しかし、国土交通省の電気通信施設は、複数社の多様な設備が複雑にネットワーク化されており、機器単体の維持保守がシステム全体の機能を担保するものではないことや、製造部門と保守部門、工事部門の分社化、保守専門会社の技術力向上が進むなどにより、必ずしも、製造者との随意契約が唯一の機能維持の実施方法とは言えない恐れがある。
また、特定者の技術に依存するリスクや価格決定に対する恣意性を排除するため、競争性の確保、応札者の拡大も必要であり、そのためには、既設施設の製造者以外の企業が入札に参加できるように修繕、改造、増設におけるリスクを軽減させるべきである。
以上を踏まえて、技術的な観点、入札契約制度の観点の双方から、運用中の施設の機能維持(修繕、改造、増設)の円滑化のための検討を行った。
4-1 修繕
「修繕」とは、所要の性能・機能を回復させる行為である。修繕契約と履行が迅速、円滑に行われない場合には、電気通信施設やそれが支えるインフラそのものの機能の停止により提供サービスの低下や危険・災害発生の検知の遅れなどが懸念され、それを防ぐために代替施設の準備や人員によるサービスの代替(目視による異常監視や、人間による異常情報の提供)などコストの代償も大きなものとなる。
このような事象の発生を防ぐため、技術的な観点からは、保守点検による障害予知、定期的な部品の交換、冗長設計による機能停止の回避、保守性の良い設計の採用
(部品交換の容易性、汎用部品の使用)、予備部品等の事前準備を行うべきである。現在は、復旧の迅速化のため緊急な技術者や部品の手配が求められる一方で、入
札契約手続きに時間を要している事例が見られる。入札契約制度の観点からは、極力短い期間で修繕が完了する制度を適切に使用するべきである。例として、緊急随意契約、公募型随意契約等の適用や小規模修理を含む保守契約の採用なども検討の余地がある。
4-2 改造
「改造」とは、既設機器が有する性能・機能の一部を変更、若しくは、新たな機能・性能を追加する行為をいう。改造には、既設機器の調査・改変となるため、知的財産に対する配慮が必要になる、作業や機能確認のために機能停止を余儀なくされる場合もある。
技術的な観点からは、当初に導入される機器を改造しやすい(拡張性、柔軟性の高い)設計とする必要がある。具体的には、どのような機能追加があるかを定義し、実現する手法を定めた上で、機能のパラメータ化、機能のブロック化と疎結合化、テストの実施などの方策が必要となり、機器のコスト上昇要因となる。したがって、そのメリットとデメリットを評価することが必要である。
入札契約の観点からは、既設機器並びに改造内容の仕様を詳述した図書を付して契約を行うことにより応札者のリスクを減ずることが考えられるが、既設機器の開発者には設計内容に関する知的財産の取り扱いの観点から全てを公開できない場合があり、一方、改造者には設計内容の把握に大きな労力が必要であること、他社の設計内容を把握することにより知財権侵害(盗用)のリスクの懸念が発生することを認識する必要がある。
4-3 増設
「増設」とは、機器を追加する行為をいう。増設に当たって、技術的な観点からは既設施設とのインタフェースの明確化、標準化が重要である。
入札契約制度の観点からはインタフェース条件を明示した図書によりリスクを減ずることが可能となる。すなわち、既設機器、増設機器のいずれかが提示したインタフェース条件を満足しない場合、当該機器に責任を持つ者が修正の義務を負うことになる。しかしながら、コネクタ形状や電圧・電流のような物理的条件だけではなく、例えば通信インタフェースではプロトコル(伝送手順)の全レイヤ(階層)に対して、また、アプリケーション(機能を実現させるソフトウェアの動作)について、正常範囲だけではなく、異常時、境界値など全ての条件に対して明確にインタフェースを策定しなければならないことに留意しなければならない。
4-4 改造・増設を円滑に実施するための共通事項
増設・改造については、それを円滑に実施するために、共通する改善方策が考えられる。
(1) 発注における方策
① 小規模な増設・改造における入札参加資格、応札条件等の緩和
新設時に的確な発注図書、製作仕様書、施工検査、試験成績書などのドキュメント類が整備され、基本的な設計は確立されている場合で、基本機能に影響を及ぼさない小規模な増設・改造であれば、新設時と同等な入札参加要件(企業、配置技術者)
を求めなくても施工が可能な場合があると考えられる。入札参加要件の緩和により、小規模な案件に対して代理店や保守会社などを含めて応札者の拡大や小規模な案件による配置技術者の育成が期待できる。
② 一体不可分の設備を複数年に亘って整備する場合は次の方策が考えられる。
・ 単年度契約ではなく国債により継続的な一つの契約(複数年契約)とする。
・ 単年度契約に依らざるを得ない場合は初年度に全体条件を明示し連結部分のインタフェース条件を明確化、厳格化を図る。(初年度は一般競争に付し、整備完了まで随意契約を行う)
③ 早期発注
・ 増設、改造については、新設に比べて後回し、すなわち、年度末に発注されがちであるが、技術者配置に余裕のある早期に発注することで不調・不落の防止が期待できる。
(2) 新設部分の分離
既設設備と密接に関連する部分と新設部分とを分離し、新設部分がxxに競争入札できる環境を整備する。そのためにはインタフェース、責任分界、知的財産権など様々なリスクを軽減する措置を合わせて実施する必要がある。
新設部分を明確に分離することが可能であれば、応札者の参入促進が期待できる。
(3) 増設・改造しやすい設計(標準化、適切な疎結合設計)の導入
① 標準化
・ 標準的なシステム(ソフトウェアの繰り返し使用、オープンソースの利用、標準インタフェースの採用)を増加させ、個々に設計された特殊仕様のシステムを減少させる。
・ 標準の策定と維持にはコストと人員を要するため、標準化すべき範囲(scope)を設計方針、インタフェース、作業、ルールなどの中から選別し、適切な繰り返し仕様の策定と活用を行う。なお、既存の公開された標準、インタフェース、ハードウェア、ソフトウェアがある場合には、それらの使用による効率化を考慮する。筐体についても汎用のものを使用することで組み込み装置の選択の幅が広がる。
② 疎結合設計
・ 運用中に生ずると考えられる変更については分離できるようハード的・ソフト的な疎結合を設計に組み込み、機能要件として明確に定義する。
・ 増設改造におけるインタフェース形態を明確化する(表 4-2)。
表 4-2 インタフェース形態の整理
ケース | 例 | 特徴 | 対応 | |
ハードウェア | 接点で接続される、双方 向ではないなど単純なインタフェース | 発電機と受変電設 備、通信機と監視制御装置 | インタフェース仕様が明確で、検証が容易であり、 実績も豊富なため、接続に当たり責任分界点の問題が少なく、制約が少ない | 分離発注 |
アナログインタフェース | 旧式の監視カメラシステム | 特性がリニアで単純なものは制約が少ない。複雑な場合には、整合する特性を持つアナログ素子を使用する制約が生じる | 単純特性;分離発注 複雑;増設改造。 現在は採用数が少 ない | |
デジタルインタフェース (標準仕様のある疎結合な接続) | 異なる機関の情報システム | 異なる機関を接続するためにインタフェースの標準の策定、接続にあたっての調整を発注者が行うた め、責任分界、知財権の問題が少ない。 | 分離発注 | |
デジタルインタフェース (システム内部の装置間の密結合な接続) | ダム制御設備の装置間、親子関係のあるシステム | システム構成内部のインタフェースについては、技術の進歩や設計思想を尊重し、また、標準策定・維持にコストがかかるため標準を定めないことが多い。このため、受注者独自の仕様であり、公開には知財の整理が必要。増設・改造では全体の把握を はじめ、検証、対向調整等が必要 | 今後、標準化を促進する必要がある。統一河川情報システムでは実現している。 | |
デジタルインタフェース (装置内部) | PCサーバ内部の HDD、通信機内 部の基盤 | 汎用品以外は部品規格がなく、PCサーバなど一部は規格があるが、純正品以外の動作保証はされ ない。HDD の外部化など分離の方法が考えられる | 多くは修理で実施 |
ケース | 例 | 特徴 | 対応 | |
ソフトウェア | ソフトウェア (動作環境の変更) | OSのアップデート、 セキュリティソフトの更新 | 汎用的なソフトウェアであるため手順は明確であ るが、アップデートの結果、所要のソフトウェアが動作するか否かは検証が必要である | ネットワークでセキュ リティを確保すれば不要 |
ソフトウェア (プログラムの修正が無い設定変更) | 通信相手先の追加、パラメータの変更 | 書き換えるべき事項を把握し、方法、注意事項、影響が明確に整理されているならば、スキルを有 している技術者であれば対応できる。 | 条件を整理し、仕様化を促進する必要 がある | |
ソフトウェア (プログラムの修正) | 機能の追加 | ソフトウェアの内部構造や変数等を把握し、修正できることに加え、知財権、保証の問題をクリアする必要がある。 | オープンソース、マッシュアップ化といった発注時の設計 の改善 |
改善案5 多様な発注方式の採用
現在の建設生産システムは発注者、設計者、施工者の三者構造により実施することを基本としてきたが、近年、公共事業を取りまく環境が大きく変化しており、現行の生産システムにおいて様々な課題が顕在化しつつあるとの提言があり、改善に向け詳細設計付工事、設計・施工一括発注方式、本体・設備一括発注方式、メンテナンス付工事などの多様な発注方式の適用が検討、試行されている。 (「国土交通省直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会 品質確保部会 平成 19 年度とりまとめ」P-5 より)
電気通信施設には、高度な技術を要する施設、運用に費用を要する施設、構成機器寿命が短い施設などを含む場合があり、従前の発注方式である設計・施工分離、施工内容別契約方式以外の新たな契約方式として詳細設計付工事、メンテナンス付工事、リース契約方式などの適用について検討した。
5-1 詳細設計付工事
詳細詳計付工事は、設備の機能や主要緒元等を確定した上で、製作や施工のための詳細な設計を製作・施工と一括で発注することにより、応札企業の技術力を活用して製作・施工の効率化、品質確保を図る方式である。電気通信施設において、詳細設計と製作・施工を一体で行うことでコスト、品質面で優位となる案件について適用が考えられる。
(
詳細設計付工事の概要を図 5-1 に示す。
工事
詳細設計
基本設計概略設計
工事契約
設計業務契約
工事
詳細設計
基本設計概略設計
設計・施工分離方式
従来方式)
設計思想の確実な
伝達のための補足
詳細設計付工事契約
詳細設計付工事
発注者・受注者の責任範囲の明確化 詳細設計成果の確認
段階検査
段階検査
図 5-1 詳細設計付工事の概要
(1) 適用の考え方
想定される案件としては、応札企業の技術力を設計に反映させることが合理的な案件、機能性能を確保するための施工方法や機器構成等に複数の方式があり発注者が標準的な設計を提示できない案件、詳細設計段階で技術的難易度が高い案件など、発注図書において詳細な仕様規定を行わない方が合理的若しくは仕様規定が困難な場合である。
したがって、標準的仕様が無い設備、現場条件等で設計条件が大幅に変わる場合、過去に実施事例の無い研究開発要素のある設備などであり、具体的に適用可能な設備としては以下が考えられる
・ 水力発電設備:水量、ヘッド等の条件で、適用される水車形式が異なり、水車設計に製造者のノウハウがあり、形状や性能に差が生ずる。
・ 小型レーダ設備:標準的仕様が無く、最大の機能を発揮させるため製造者の設計により機器形状・重量が異なって据付条件等が変更となる。
・ 特殊な移設や補修:状況によって手法やコストが大きく異なり、対象物の調査と施工とを同時に行うことが合理的である。
(2) 適用の留意点
適用に当たっては次のような事項に留意する必要がある。
① 技術提案の的確な評価
詳細設計付工事では、高度技術提案型総合評価方式と併用し、応札者の技術提案を評価することが原則であり、前例の無い高度な技術を適切に評価するために、発注者の技術力や評価体制が必要となる。
② 設計思想の確実な伝達
詳細設計付工事においては詳細設計に着手する前の段階での発注となることから、発注者の詳細設計において補足すべき設計思想が施工段階に適切に反映されるように、設計思想を確実に伝達することが必要である。
③ 発注者・受注者の責任範囲の明確化
詳細設計付工事においては、発注者・受注者の責任範囲が曖昧になる恐れがあり、設計段階において発注者・受注者のリスク分担、発注・詳細設計完了時・施工の各段階における確認事項等を整理しておくことが重要である。
④ 技術力を活かせる発注図書の作成
発注図書として、本発注方式の目的を鑑み、設計、製作・施工の自由度の範囲を明確にし、応札企業が保有する技術やノウハウが発揮できる要求水準書や機能要求仕様書といった発注図書を作成すべきである。
5-2 メンテナンス付工事
施工と維持管理を一体的に競争入札に付すことによって、ライフサイクルコストを対象にした評価が可能になり、製作・施工段階においてメンテナンスの省力化や長寿命化を考慮した技術提案によるコスト縮減が期待できる。このような発注方式は「メンテナンス付工事」と呼ばれる。メンテナンス付工事の概要を図 5-2 に示す。
想定される設備としては、維持管理段階において技術的な難易度が高いため機器製作者の固有技術が必要な設備や維持管理段階で消耗部品の交換などで維持管理経費が比較的大きな設備の場合で、応札企業の設備設計によって、維持管理が容易
(メンテナンスフリー、特殊な技術を要しない、長寿命)若しくは維持管理経費(消耗部品費や電力量)が軽減される事が期待される場合に適用の検討をする。
競争入札
工事・維持管理分離方式(従来)
・・・・・・
時間
標準的な施工・維持管理方法
維持管理
施工と維持管理を一体的に競争入札に付すことによって、ライフサイクルコストを対象にした評価が可能になり、製作・施工段階においてメンテナンスの省力化や長寿命化を考慮した技術提案によるコスト縮減が期待できる。
施工 | 維持管理 | 維持管理 |
メンテナンス付工事
随意契約
一体評価
施工
維持管理 維持管理
・・・・・・
時間
提案に基づく新たな施工・維持管理方法
競争入札
(技術提案)
・本体に関する技術提案
・維持管理に関する提案
維持管理
図 5-2 メンテナンス付工事の概要
(1) 適用の考え方
応札企業の技術提案によってメンテナンスコストの縮減や長寿命化のための技術導入が見込める設備に適用し、施工時点及び維持管理段階で機能、コストを担保する。具体的に適用可能な設備としては以下が考えられる
・ 水力発電設備:水車設備は設計、材料等で、大規模点検(分解整備)の周期、停止期間、コストが異なり発電量にも影響する。
・ 小型レーダ設備:設計、方式により消耗部品交換の間隔、コストが異なると共に運用電力量が異なる。
(2) 適用の留意点
適用に当たっては以下に留意する必要がある。
① 技術提案の的確な評価
メンテナンス付工事では高度技術提案型総合評価方式と併用し、応札者の技術提案を評価する必要があり、ライフサイクルコスト等を適切に評価する必要が生ずるため、発注者が適切な評価を行うための技術力や評価体制が必要となる。
また、省力化、長寿命化等を考慮した設計等に関して有効な技術提案を得るためには、十分な検討期間を設ける必要がある。
② 契約制度
メンテナンス付工事の契約の期間は施工及びメンテナンス期間であり、予算制度上では国債予算を確保する必要があるが、制度上5年以下とな っており、評価期間の設定などの考慮が必要である。また、具体的適用においては予算上の制度、仕組みを整理することが重要である。
5-3 リース契約方式
電気通信施設の調達手法として「リース契約方式」の適用性について検討した。「リース契約方式」は、機器等の物品を利用者に代わる別の企業(リース会社)が購入し、利用者に一定期間貸し出す契約方式をいう。物品の所有権はリース会社にあり、契約期間は減価償却期間より短い設定が可能で、主に高額な機器や設備、パソコンなど技術進歩の速い機器などが対象とされ、民間企業等では税制上のメリットもあり広く活用されている。
行政機関では、リース契約において民間企業のような会計、税制度のメリットが無く、リース会社経費や金利分のコスト上昇のデメリットがある。また、リース契約において経済化を図るには複数年の契約とする必要があるが、行政機関においては予算が単年度毎となっていること、随意契約に厳しい制約があることから適用が困難であった。現行制度下で長期継続契約が認められているものは「電気、ガス、水道、電気通信役務」のみであり、リース契約(賃貸借契約)も単年度毎となっていた。
複数年に亘る契約締結には、国債設定が必要であるが、一部で国債を設定しコピー機、パソコン等でリース契約を行っている事例があるが、適用範囲は限定されている。一般的に行われている単年度予算による買取方式とリース方式との比較を表5-1 に示 す。
表 5-1 買取方式とリース方式の比較
比較項目 | 買取方式 | リース方式 |
経済性 | 物件価格は、購入、リースに関わらず競争入札による価格低減効果が期待できる。 | リース経費相当額分が高価となる。リース経費相当額とは、リースに要する物件価格以外の金利+固定資産税+保険料+管理費等であ る。 |
整備効果の発現 | 一括して整備するための予算確 保が困難であり、整備効果の発現に時間を要する場合がある。 | 単年度相当額の予算で一括して整備が可能となる。 |
設備の改造 | 自ら保有する施設であるため制限 は無い。 | 所有権はリース会社にあるため困 難な場合がある。 |
障害対応 | 自ら保有する施設であるため、障害対応についても整備とは別に対策を講ずる必要がある。 | 保守を含むリース契約があり、保守を含めた競争入札にすることが考えられる。ただし、契約(設備)毎となるため、設備の包括的な保守は できない |
(1) 適用の考え方
リース契約は、設備をリース会社が保有し、利用者(国)が利用料(経費)として分割して支払うものであり、初年度経費は少ないが、利用期間を通した総支払額にはリース会社の経費(税、金利等)が含まれるため、予算(コスト)面のメリットは無く、予算の平滑化の反面、予算の硬直化を招く。また、建設国債については基本的に長期間継続して利用する道路やダムなどの整備を前提とした予算制度であり、5年程度の経費的な支払は、従前は認められていなかった。
したがって、現行の予算制度でリース契約を広範囲に適用することは難しいと考えられるが、予算制度の変更もなされており、適用の可能性が広がるとの想定で検討を行う。
リース契約の適用が有効と考えられる設備は以下である。
・供用期間が5年以内の設備
機器の運用途中においても機能の変更が無く、5年以内に更新することが機能・運用xxxな設備。
(例) パソコン、サーバ類等で単体にて機能する汎用製品
・ 一括整備することが機能性能、コスト的に有利な設備
情報通信設備でネットワークに接続される設備を一斉に整備又は更新することで、機能・性能の向上の効果が高く、既設装置との接続・変換に係るコストの低減が期待できる設備。(単年度予算の確保が難しい場合)
(例) ネットワーク機器、ネットワークシステムなど
(2) 今後の対応
現状では、リース契約の適用範囲は限定されており、予算制度の変更や国債予算確保の可能性などを視野に、リース契約制度を適用することが可能で、かつ、コストのデメリットを補える設備やその効果的な整備手法について検討を進める必要がある。
改善案6 機器価格設定方法の改善
(1) 現在の機器価格の設定方法とその課題
現在の機器価格の設定は、機器の種類に応じて、直接または第三者経由(価格調査)で製造者から徴収した見積り価格をベースにしている。
標準仕様書が定められている機器(標準機器)の場合は、全国的に適用され発注量も一定数あるため、一括して見積りを徴収して実績やデフレーターを考慮して機器価格設定をしており、発注機関(事務所等)が個別に見積りを取ることは無い。
標準機器以外の機器については、価格調査若しくは、対象機器の製造を行っているものに機器仕様及び見積り条件を提示し、得られた見積り価格を実績、類似機器などとの比較等を行い積算価格としている。
しかしながら、見積り依頼先が全ての応札者とならない場合や入札公告前に機器仕様が提示されることに対して、xx性、透明性の面から懸念が指摘されている。
また、見積り価格や価格調査の価格(積算価格)と実際に応札される機器価格(工事費内訳書)との乖離(見積りは希望価格であり、応札は実取引価格)などの問題がある。このため、見積りに依存せずに、機器価格をより適正に設定する方法について検討した。
(2) 取り組みの方向
見積り以外で機器価格設定に利用できる価格としては、実際に応札した者の応札価格や落札価格、諸経費動向調査のコスト調査価格などの実績価格がある。これらを価格設定に用いることで、次のメリットが考えられる。
① 見積りの依頼先と応札参加者の違いを少なくできる。
② 積算価格と入札価格の差異を縮小できる。
③ 見積りを徴収しないことでxx性、透明性が確保される。
以上のことから、実績価格を蓄積し、統計的に処理して機器価格を算定する仕組み
(機器費データベース)を提案する。
(3) 機器価格の新たな設定方法
機器価格の新たな設定方法として機器費データベースを有効に機能させるための基本的設計として、次のようなものが考えられる。
① 蓄積する機器費の範囲
・ 実績価格として、できる限り多くのデータを機器費データベースに入力する。
・ 一般的な統計手法に基づき、中央値に対する2σ以外等の異常値排除を行う。
(仕様の解釈などにより生ずる異常な機器価格を排除するため)。
② 機器費算定の統計処理
・ 蓄積された機器台数を母集団とし、重みを考慮した機器単価の加重平均または中央値や最頻値などの統計処理値及び機器調達数の他に入札案件数、応札者数の重み、従来の価格との比較、価格変動要因の検討などを行い、適正な機器価格を算定するものとする。
③ 統計処理した機器単価の扱い
・ 機器単価の見直し時期は、予定価格と落札価格の乖差や取引状況や市場の動向を踏まえて決定する。
・ 統計処理をするためには、同一仕様の機器単位で処理するものとする。また、統一仕様でない機器や、施工費等に関するデータについても、適正な価格設定に活用する。
入札
図 6-1 に、機器費を用いた価格決定の概念を示す。
【従 来】 | 仕様決定 見積仕様調製 施工 見積の徴収 機器価格設定 予定価格設定 |
【提 案】 | 仕様決定 [標準的な仕様] 機器価格設定 予定価格設定 [非標準な仕様] (問い合わせ) 機器費 応札価格 DB (登録) 施工 仕様決定 入力価格の 見積仕様調製 妥当性精査 見積の徴収 機器価格設定 予定価格設定 |
入札
図 6-1 機器価格設定方法の改善
改善案7 積算体系の改定
(1) 現在の積算体系とその課題
現在の電気通信工事の積算体系では、機器費と工事費とは独立し、これらを合算して工事価格としている。工事費は現場での据付調整工事の工事原価(直接/間接費工事費)に一般管理費を加えたものとしているが、機器費は材料費とは異なり一般管理費や間接費を含んだ価格として取り扱っている(図 7-1)。
請負工事費
(予定価格)
工事価格
材料費 直接製作費 純製作費 製作費 工場製作原価 二次労務費 間接製作費 一般管理費等 工場管理費 | ||
機器費 | ||
消費税相当額
工事費
共通仮設費 | |
現場管理費 | |
技術者間接費 |
工事原価
直接工事費
純工事費
一般管理費等
間接工事費
図 7-1 現在の電気通信工事積算体系
機器製作を含む工事では、その製作期間、製作費は、いずれも現地での据付調整工事のそれより大きな割合を占めることが一般的である。機器製作を除く据付調整工事だけでは不調不落が多いことも考え合わせると、機器製作を含む工事全体に係る経費の全てを、割合の小さな現場での据付調整工事の間接費、一般管理費では賄えないため、機器見積り価格には経費の一部が含まれていると推測される。
諸経費動向調査の分析により、発注者の積算価格(見積り価格をベースにした機器費と標準積算)と施工業者の実績価格の機器費、直接工事費、間接工事費、一般管理費の比率を比較した(表 7-1)。その結果、機器費の割合が積算では 82.6%、実績では 71.9%となっており、その間に約11%の乖差が生じており、機器費と工事費の間で何らかの経費の融通がなされていると推測される。
表 7-1 諸経費動向調査による官民積算内訳比較
発注者の 積算 A | 施工者の 実績 B | A-B | |||
機器費 | 82.8% | 71.9% | 10.9% | ||
工事費 | 17.2% | 28.1% | -10.9% | ||
直接工事費 | 9.2% | 11.0% | -1.8% | ||
間接工事費 | 6.0% | 15.4% | -9.4% | ||
共通仮設費 | 1.2% | 3.1% | -1.9% | ||
現場管理費 | 3.3% | 11.4% | -8.1% | ||
技術者間接費 | 1.5% | 0.9% | 0.6% | ||
一般管理費等 | 2.0% | 1.7% | 0.3% | ||
工事価格 | 100.0% | 100.0% |
機器主体工事では、従来、品質を確保するため入札参加要件に設計製作体制を求めるなど、請負者が機器を製作し、設置することが一般的であった。 しかし、入札参加条件の緩和により、機器を製作しない工事業者や代理店等の受注、工場部門と事業部門の分社化や独立採算化、他社製機器の組み込みが増加している。このような機器製作とそれ以外の工事の独立性が高くなっている業態に合わせて、機器製作費とそれ以外の工事費との独立性を高め、その間で行われてきた経費の融通を適正な形で処理することが、積算体系を構成する各要素の透明性、合理性を高めるために必要だと考えられる。合理的な積算体系による適正な積算価格により競争性の向上、応札者数の増加が期待できる。
また、製造、施工が各々適正な価格で発注できれば、工事における様々な制約を考慮して、製造、施工の分離発注などによる発注工期の平準化や早期化などを行いつつ、十分な競争性を確保することも可能になることが期待できる。
(2) 課題への取り組み
工事費全体の総価(予定価格)では、設計額が少額の工事では不調、不落が多い傾向にあるが、概ね適正な落札率となっており、問題がないと考えられる。これには、機器、すなわち、機器費を含まない現地施工を主体とする工事も含まれていることから、従来の直接工事費は概ね妥当と考えられる。
従って総価と直接工事費を変えずに積算体系上の整合を図れば良く、諸経費動向調査の分析結果から、従来の機器費の約1割を、製造以外の工事に係る経費へと配分し直すことで実態との調整がなされると考えられる。ここで、機器主体工事の場合は、機器費の占める割合が高いため、機器費の1割は直接費・間接費の概ね5割に相当するため、従来の積算体系のままでは対処ができない。したがって、積算体系全体の枠組みを抜本的に見直す必要がある。
本検討においては、機器費の一部を分離し、工事に係る製造以外の経費に計上す
る見直し案として、次に示す案Aと案Bを立案し、検討を行った。
なお、参考に機器あるいは工場製作物を取り扱う他の積算体系、①公共建築工事
(電気設備工事)、②土木工事標準積算基準(機械編)、③土木工事標準積算基準
(土木編・鋼橋(製作架設))のいずれも、諸経費率や体系は異なるものの、機器あるいは工場製作物は何らかの間接費の対象としており、機器費を間接費等の対象とすること自体は問題ないと考えられる。
① 見直し案 A
土木工事共通仕様書(鋼橋製作架設工)に準拠した案で、機器製作費(工場製作原価)と工事原価を合算し、一般管理費対象とする方式(図 7-2)。これは、鋼橋製作をベースとしており、既存の積算体系との親和性が高い。
工事価格
工事原価
直接工事費
請負工事費
純工事費
共通仮設費
(予定価格)
一般管理費等
間接工事費
現場管理費
消費税相当額
技術者間接費
図7-2 見直し積算体系案A
機器製作費(工場製作原価)
② 見直し案 B
機器見積り価格に含まれていた製造以外の経費を、機器費と分離して工事費の間接費に機器管理費(仮称)として新たに設定する方式(図 7-3)。これは、電気通信の独自な積算体系となり、機器管理費(仮称)を適切に設定必要がある。
機器単体費(工場出荷価格)
工事価格
請負工事費
工事費
工事原価
直接工事費
純工事費
(予定価格) 一般管理費等
消費税相当額
間接工事費
共通仮設費
現場管理費
機器間接費 技術者間接費
図7-3 見直し積算体系案B
機器管理費
③ 見直し案の比較
上記の見直し案Aと見直し案Bの方法について比較を表 7-2 に示す。検討の結果、新たな機器管理費を設定する B 案が、積算を実態に適合させる体系として望ましいと
の結論を得た。
(3)今後の対応
① 機器管理費の設定
諸経費動向調査の工事実績サンプルを分析して、各工事毎の官積算と施工者の実態経費の分析から機器管理費相当額を抽出して、機器単体費相当額に対する経費率を算出し回帰式を設定し、適切な機器管理費の算出法を確立させる必要がある。
② 機器単体費
機器単体費については積算価格の総価と機器管理費相当額の均衡を図り適切に設定されべきである。また、機器費データベースの活用が期待される。
③ 円滑な新積算体系への移行
積算体系の変更は影響、関連する範囲がxxなため次の事項を徹底することが必要である。
・ 積算体系に係る積算システム、各種ドキュメントの改訂と周知
・ 国交省内の他、同じ積算体系を利用している関係者等への周知徹底
・ 入札参加者等への周知
・ 機器管理費の精査のためのフォローアップ
今回の積算体系の見直しにより、機器積算価格と実態価格との乖離の縮小と現場工事費の適正化が期待される。また、機器単体費が機器管理費及び一般管理費の対象となり、経費率は対象額の増加に従い低減することから、機器単体費額が小さい工事
(少額工事)では積算価格が上昇し、機器単体費が大きい(高額工事)では積算価格が低下し、応札実態との整合が期待されると共に、不落不調の多い少額工事において応札意欲の向上、応札者数の増加が期待できる。
さらに、機器管理費を適切に設定することにより機器製造と据付施工工事との分離発注における据付施工工事における不調不落が減少することが予想されるため、工期の平準化や早期発注のための適切な発注形態が可能になることが期待される。
表 7-2 積算体系の見直し案の比較
比較項目 | 見直し案 A | 見直し案 B | 比較結果 |
積算体系 | 一 般 x x 費 を 適 用。鋼橋製作据付工に準拠した積算体系 | 機器管理費(仮 称)を新設。電気通信独自の積算体系 | 案 A:既存積算体系と整合 案 B:独自体系として独 自経費の新たな設定が必要 |
請負者の業態変化への対 応 ( 機 器 (工場)費用と現場費用 の分離) | 一般管理費として機器費から分離 | 機器管理費として機器費から分離 | 案Aでは機器費に対する一般管理費なので、完全な分離とはならないが、積算内訳は分離される。案 B は完全に分離される |
積算内訳の適 正 化 ( 機 器費/工事費比率の不整合解消) | 諸経費動向調査の結果から、機器の一般管理費相当額を分離すれば整合がとれる | 機器管理費として不整合分に見合った額を機器費から(現場)工事費に分離すれば整合 がとれる | 両案ともに不整合を解消できる |
想定した機 器の取り扱い経費の内 訳との整合 | 現場経費と一般管理費(本支社経費)の整合性には疑問 が残る | 現場経費として積算と実態の整合性が高い | 機器費と現場経費の整合性は案 B が高い |
機器費の設定 | 機器見積りにおいて一般管理費を分離することが難しい | 必要経費として見積り時点での分離は比較的容易 | 機器費DBからの算出による設定は両案とも可能 |
ユニットプライスへの対応性 | 現場工事費が実態と乖離しているため単価合意が難しい | 現場実態との整合性が高いため機器単位のユニット 価格算定が容易 | 機器費の扱いを含め新たな体系を検討する必要がある |
発注単位、 施工条件への整合性 | 機器製作と据付の分離発注等で柔軟性が低い 据付工事の単独発 注が困難 | 分離発注や施工条件で機器管理費の設定により施工実態との整合性 を確保できる | 案 B は機器管理費として実態に整合した設定が可能 |
改善案8 積算基準の改善
積算体系の個々の要素である積算基準についても、実態に即した適切なものである必要がある。従来から、新たな機器、材料、工法の導入に合わせて歩掛など積算に係る基準が整備されてきた。個々の積算基準について、従来からの作業の場にて行うこととして、ここでは全体的な積算の考え方における改善について検討した。
(1) 撤去作業の考え方
電気通信工事において、対象物を再利用しない場合の撤去作業の歩掛は、他の積算基準に比べて低く抑えられている。これは、撤去作業が一方で新設作業を伴うことが多いため、新設作業の利益を見越していたことが考えられる。しかし、従前に比べて多くの施設が集約設置され、また、それらが相互に(場合によっては遠隔地とも)接続され、複雑化、ネットワーク化されている現状が見られる。また、耐震基準の充実により強固な設置が行われている。したがって、実際の撤去作業では、他の設備に影響を与えずに指示された設備等をきれいに撤去、搬出する作業は他の工種に比べて手間がかからないとは言えない。このため、撤去作業においては、他の工種と同等の歩掛を適用することが望ましい。
(2) 移設作業の考え方
移設作業においては、運用中の施設を、その施設やデータ等に影響を与えずに移動させることが必要となる。したがって、リスクの影響評価を行い、データのバックアップをはじめとするリスク軽減対策の実施、システムの停止手順、復旧手順の計画立案、運用停止時間を極小化するための仮設、不稼動の場合の対策など高度なノウハウが必要になる。したがって、移設における再使用を行う撤去作業について、相当の歩掛を計上することが必要と考えられる。
(3) 休日・夜間作業の考え方
電気通信施設の工事等に伴う運用停止が、一般市民や業務に与える影響を抑制するために、土日等の休日、あるいは夜間に作業を実施することが少なくない。これらは、最終成果物にならないため見過ごされがちであるが、作業実態を反映させた適切な積算とする必要がある。
休日については、労働基準法における「法定休日」として整理されており、計画的に作業を実施する場合には割増賃金とする必要は認められなかった。
夜間作業の場合は、労務調整係数により補正が可能となっているため、適切に運用されることが望ましい。
また、積算に要する発注者・受注者の労力を軽減するため積算基準の合理化や簡略化、ユニットプライスについて検討を図るべきである。
改善案9 総合評価方式における評価手法の改善
(1) 現在の総合評価手法とその課題
平成19年度の国土交通省が発注した電気通信施設工事において、機器主体工事の割合は全工事件数中59%であり、その工事目的物の品質は納入される機器の品質に大きく依存する。
受注者を決定する仕組みとして、工事契約においては総合評価方式が広く利用されており、「企業の技術力」、「企業の信頼性・社会性」、「企業の高度な技術力」を評価し、応札価格と合わせて受注者を決定している。その評価内容及び配点の一例を表 9-1 に示す。
表 9-1 総合評価方式の評価内容と配点(関東地整の複数の事例を参考に作成)
評価の視点 | 評価項目 | 主な評価 対象 | 配点割合 | |
① 企業の技術力 | 施工計画 | 工程管理に係る技術的所見 | 現場での施工 | 63~83 |
材料の品質管理に係る技術的所見 | ||||
施工上の課題に対する技術的所見 | ||||
施工上配慮すべき事項 | ||||
施工体制 | 品質確保の実効性 | |||
施工体制確保の確実性 | ||||
企業の施工実績 | 同種・類似工事の施工実績 | |||
工事成績 | ||||
優良工事表彰 | ||||
安全管理優良請負者表彰 | ||||
イメージアップ優良工事表彰 | ||||
関連分野での技術開発の実績 | ||||
配置予定技術者の能力 | 資格 | |||
同種・類似工事の施工実績 | ||||
工事成績 | ||||
優良工事技術者表彰 | ||||
継続教育(CPD)の取り組み状況 | ||||
② 企業の信 頼 性 ・ 社会性 | 地域精通度 | 地理的条件(近隣地域での施工実績等) | 現場での施工 | 0~9 |
地域貢献度 | 地域への貢献(災害協定等) | |||
③ 企業の高度な技術力 | 総合的なコスト | 総合的なコストの低減に関する技術提案 | 現 場 ・ 機器双方を 評価 | 30~50 |
性能・強度等 | 工事目的物の性能、機能の向上に関する技 術提案 | |||
環境の維持等 | 社会的要請への対応に関する技術提案 | |||
技術提案に係る具体的な施工計画 |
表 9-1 に示す評価項目のうち、「企業の技術力」と「企業の信頼性・社会性」は現場施工を重視した項目であるため機器品質の評価を含んでおらず、「企業の高度な技術力」において機器品質と現場施工を合わせて評価している。このように、現在の評
価内容では、現場施工の評価項目数に比べて工場で製作される機器の評価項目数は少ない。
このため、機器主体工事の総合評価において、次の改善を行うことが機器を含む工事目的物全体の品質の向上につながると考える。また、これにより、応札者の技術開発へのインセンティブが増進し、適正な評価の仕組みの展開による参入者の増大、すなわち競争性の確保が期待できる。
・ 機器の特性や費用構成割合に合わせて評価項目及び配点割合を見直す。
・ 電気通信施設の特性を考慮した評価項目を設定する
・ 無用な性能競争を抑止する手法を導入する。
(2) 課題への取り組み
① 機器主体工事における機器評価割合の適正化
機器の評価割合を高めるには、評価内容全体で機器品質を評価する項目を設定することが考えられるが、「企業の技術力」と「企業の信頼性・社会性」は全工事種別で共通の現場施工を重視した評価項目となっている。このため、機器の品質を評価対象としている「企業の高度な技術力」の項目において機器品質の配点割合を高めることが適切と考える。
「企業の高度な技術力」では従来、機器品質に関する項目と現場施工に関する項目を設定し両者にほぼ等分に配点しているが、機器の評価割合を高めるため、機器品質に関する項目に傾斜配分し高めの設定とすることを提案する。なお、現場施工面については、「企業の技術力」及び「企業の信頼性・社会性」でも評価をしているため、工事の特性によっては「企業の高度な技術力」で現場施工に関する項目を設定しないこともありえる。
「企業の高度な技術力」における機器品質の配点割合に関する従来の設定例を表
9-2に、改善後の設定例を表9-3に示す。
表9-2 従来の「企業の高度な技術力」の設定例
評価項目 | 評価項目の例 | 評価対象 | 配点割合の例 | |
技術提案 | 総合的なコスト | 発電機の燃料消費率 | 機器品質 | 50% |
性能・強度等 | 設備設置面積 | |||
環境の維持等 | 施工中の工事騒音の低減 | 現場施工 | 50% | |
工事全般の施工計画 | 据付調整に関する配慮事項 |
表9-3 改善後の「企業の高度な技術力」の設定例
評価項目 | 項目の例 | 評価対象 | 配点割合の例 | |
技術提案 | 総合的なコスト | 発電機の燃料消費率 | 機器品質 | 80% |
性能・強度等 | 設備設置面積 | |||
環境の維持等 | 煤煙の発生量 | |||
工事全般の施工計画 | 据付調整に関する配慮事項 | 現場施工 | 20% |
②機器品質を適切に評価する手法の導入
現在の総合評価の多くは、機器品質は定量的な指標で表される項目(性能)のみで評価される。定量評価は評価者に係わらず同一の結果が保証され、また発注者の恣意性を排除できるメリットがあるためである。しかし、機器品質を高める項目の全てが定量評価できるとは限らず、重要でありながら定量化できないために評価されない項目がある。これは機器品質の確保に対して定量的指標(性能)が至上との正しくない優先度を示すことにもなり、無用な性能競争を招く恐れがある。
その改善方法として、機器品質に重要と考えられる項目については、定量化できなくても定性的に評価する仕組みを導入すること。また、定量的指標には上限値を設けることを提案する。これによって、品質に重要な項目を漏れなく評価できることになり、無用な性能競争を抑止できる。
■現在の設備別定量評価項目の例
CCTV 設備 | 情報処理設備 | 電源設備 | 情報板設備 |
・最低被写体照度 ・ズームレンズ比 等 | ・演算処理性能(MIPS) ・性能信頼性(MTBF) 等 | ・発電機燃料消費率 ・変圧器損失電力 等 | ・消費電力 ・設備重量 等 |
これらは定量化が可能で、それぞれ重要な性能であるが、機器の品質を表す指標として全てでなく、機器のライフサイクル全体の品質を見ると下記の項目もまた重要である。
■評価項目に加える定性評価(キーワード)の例
・耐久性 ・耐震性 ・安定性 ・修理の迅速性 ・維持管理の容易性
定性評価項目例
■定性評価の具体例
評価項目 | 提案の想定 | 評価方法 |
耐久性の向上 | ・屋外用箱体の耐久性が向上する高機能塗料の塗布 | 提案内容の有用性を 【優・良・可】で評価 |
・屋外用箱体にステンレス鋼板を使用 | ||
・コネクタ等の防塵・防湿性が向上するモールド品の使用 | ||
・定量的に証明できる高耐久性部品・部材の使用等 | ||
耐震性の向上 | ・重量部品の移動等を防止するストッパーの装備 | |
・定量的に証明できる耐震性能 | ||
安定性の向上 | ・電子機器類の安定性が向上する大風量ファンの使用 | |
・不必要な機能を削除したOSをサーバ類に使用 | ||
・定量的に証明できる安定性能 | ||
維持管理の容易性 | ・メンテナンスフリー・長寿命部品の使用 | |
・定期交換を要する部品のユニット化 | ||
・点検・調整を要さない自動調整機構の装備 |
このような定性的な評価を確実かつ客観的に実施するには、応札者の提案の評価や、提案内容の確認手法等が重要であり、客観性を高めるためにマニュアル等により具定例を示す必要がある。
③ 品質向上に寄与しない性能競争の防止
機器の評価を高めると、落札するために工事品質に寄与しない性能競争を招く恐れがある。それによりコストパフォーマンスに優れた工事目的物の調達が行えない恐れがある。
機器の適切な評価と無用な性能競争防止を図るため、仕様に適切な上限値を設定し、上限値を上回った提案は全て満点の同一評価とすることを提案する。
■上限値の設定例【情報処理設備(機器の性能・機能〔演算処理性能〕)】
評価の適用 | 評価手法 | 提案値の例 (MIPS) | 配点 | 評価イメージ | ||||
標準値と発注者の望む仕様(目標とする値)を設定 | 目標値を超えた提案の全てに満点を与え、標準値と同じ提案を0点とする。他の提案は比例案分する。 | 標準値 | 20000 | - | 60000 | |||
A社 50000 40000 上限値 B社 C社 30000 D社 | ||||||||
上限値 | 40000 | - | ||||||
A 社 | 55000 | 10.0 | ||||||
B 社 | 40000 | 10.0 | ||||||
C 社 | 35000 | 7.5 | ||||||
20000 標準値 10000 | E社 | |||||||
D 社 | 30000 | 5.0 | ||||||
E 社 | 20000 | 0 | F社 | |||||
F 社 | 17000 | 欠格 | ||||||
※演算処理性能(MIPS)が大きいほど高性能
(3) 今後の対応課題
総合評価方式の課題を解決するためには上記で述べた改善を速やかに実施に移すことが必要であり、次に示す対応が必要である。
1) 総合評価マニュアルの作成
総合評価方式に関する改善について、統一した実現を図るため「総合評価マニュアル」を作成することを提案する。
■総合評価マニュアルに記載すべき内容
①総合評価の基本的事項
③設備毎の定量、定性評価項目例
⑤評価項目毎の評価方法
②配点設定の考え方
④評価するスペックの上限値の考え方
⑥技術提案の確認方法
2) 改善に対するフォローアップ
社会情勢等の変化に合わせて総合評価方式についても常に改善していくことが必要があるため、次によりフォローアップの実施を提案する。
■フォローアップ事項の例
①改善の効果を確認するための入札結果等の情報収集と分析
②技術動向を踏まえたスペックの上限値等の調整
③総合評価マニュアルに対する各発注手続き担当部署からの意見収集
④評価項目、評価手法等に関する関係業界からの意見収集
⑤上記を踏まえた検討とマニュアルの改訂
改善案10 工事成績評定の改善
(1) 現在の工事成績評定とその課題
工事成績評定は、工事毎にその施工状況、工事目的物の品質等を評価し工事成績を付与するものである。その目的は、発注者が優れた能力や実績を有する企業の選定に利用すること、受注者が工事成績を通じて施工技術の改善を行い技術力の向上を図ることである。工事成績評定の評価対象項目及び配点は、建設工事の全工種を対象としているため、工事の主体となることが多い現場施工に関するものに重点が置かれている傾向があり、機器製作に関する評価対象項目は少ない。したがって、機器主体工事において工事費の8割程度の割合を占める機器製作に対し、工事成績評定の配点割合は3割程度と小さいのが実情である(図 10-1)。
しかし、機器主体工事における工事目的物の品質は、納入される機器の品質に依存する割合が大きいため、これらについて工事成績評定による適切な評価を行う必要があると考えられる。これにより工事品質の向上並びに受注者の技術向上に対するインセンティブが期待できる。
評価配点割合価格構成割合
■工事成績評定配点割合と機器主体工事の価格構成割合の比較
機器製作(3割) | 現場施工(7割) | |
機器製作(8割) | 現場施工(2割) |
図 10-1 工事成績評定の配点割合と価格構成
(2) 工事成績評定の改善案
工事成績評定は、工事の現場監督総括業務を行うxx技術評価官、工事の監督総括を行う総括技術評価官及び工事の完成確認検査を行う技術検査官の3者が、考査項目別運用表と工事成績採点表を用いて実施する。考査項目別運用表には評価対象項目が記載され、工事成績採点表には配点が記載されており、これらを組み合わせて成績評定を行う。したがって、工事成績評定の改善には、考査項目別運用表の評価対象項目内容並びに評価対象項目数、工事成績採点表の考査項目の加算点並びに評価段階の見直しが必要となる(図10-2)。現在、現行の工事成績評定要領の改定作業が進められており、平成21年度の本格運用が予定されていることから、検討の成果を直ちに反映させるため、機器主体工事の評価方法の検討結果を本改定版に反映させるべきと考える。
考査項目別運用表の評価対象項目内容並びに評価対象項目数の見直し
工事成績採点表の考査項目加算点並びに評価段階の見直し
評価者が各考査項目別運用表の評価対象項目の確認チェック数で評価段階が確定
考査項目別運用表
考査項目別運用表
考査項目別運用表
各評価者の評価段階で加算点が決定し、3者の得点合計により工事成績評定点が確定
技術検査官
総括技術評価官
xx技術評価官
工事成績評定点
工事成績採点表
図 10-2 工事成績評定の概要と見直しイメージ
① 考査項目別運用表における全工種共通の考査項目へ評価対象項目の追加
・ 全工種共通の考査項目について、特定工種に限定した表現及び内容を可能な限り改め、より幅広い工種で対象となる評価対象項目とする。これにより、より幅広い工事特性を対象に評価し易くなり、機器製作と現場施工の双方で評価が可能となる。
(削除項目例)
xx技術評価官(1.施工体制 Ⅰ.施工体制一般)
□ 工事規模に応じた人員、機械配置の施工となっている。 【現場施工】
□ 建設業退職金共済制度の主旨を作業員等に説明するとともに、証紙の購入が適切に行われ、配布が受け払い簿等により適切に把握されている。 【現場施工】
(追加項目例)
xx技術評価官(1.施工体制 Ⅰ.施工体制一般)
□ 緊急指示、災害、事故等が発生した場合の対応が速やかである。 【機器製作&現場施工】
□ 施工計画書を工事着手前に提出している。 【機器製作&現場施工】
・ 考査項目の出来形及び出来ばえ以外で機器製作に関する評価対象項目の設定が可能なxx技術評価官の考査項目である施工体制に工場製作に関する評価対象項目を新たに追加する。このように、新たに工場製作に関する評価対象項目を設定することで、機器主体工事に適用が可能となる。機器製作以外は評価対象外項目として取り扱う。
(追加項目例)
xx技術評価官(1.施工体制 Ⅰ.施工体制一般)
□ 機械設備、電気設備等について、製作工場における社内検査体制(規格値の設定や確認方法等)を整えている。 【機器製作】
□ 工場製作期間における技術者を適切に配置している。 【機器製作】
② 考査項目別運用表における出来形及び出来ばえの適切な評価
考査項目別運用表の考査項目である「出来形及び出来ばえ」は、「出来形」、
「品質」、「出来ばえ」の3項目に細別化(考査項目細別)されている。この3項目の考査項目細別は工種毎に分類され評価対象項目が個別に設定できることから製作主体工事の工事特性を適切に評価へ反映できる。このため、これらの評価対象項目及び配点を重点的に見直すべきである。
・ 対象機器の評価対象となる考査項目細別において、工種が設定されているが、これらは、契約において用いている区分とは異なるものであった。これらの名称を契約工種に統一する(図 10-3)。このように選択工種の考査項目名称を分かり易くすることで、専門職種以外の採点者による工種選択誤りが防止できる。機械設備工事と電気通信設備工事を分離し、工種に適合した評価対象項目の充実を図ることができる。
【xx技術評価官】
考査項目細別 | 現行の工種名区分 | 改定後の工種名区分 |
出来形 | ■機械設備工事・電気設備工事 | ■機械設備工事 《分離》 ■電気設備工事・通信設備工事・受変 電設備工事 |
品 質 | ■機械設備工事・電気設備工事 | ■機械設備工事 《分離》 ■電気設備工事・通信設備工事・受変 電設備工事 |
【技術検査官】
考査項目細別 | 現行の工種名区分 | 改定後の工種名区分 |
出来形 | ■機械設備工事・電気設備工事 | ■機械設備工事 《分離》 ■電気設備工事・通信設備工事・受変 電設備工事 |
品 質 | ■機械設備工事・電気設備工事 ■電気通信工事 | ■機械設備工事 《分離》 ■電気設備工事 ■通信設備工事・受変電設備工事 |
出来ばえ | ■電気設備工事・照明設備工事・その他類似工事 ■通信設備工事・受変電設備工事・そ の他類似工事 | ■電気設備工事 ■通信設備工事 ・受変電設備工事 |
図 10-3 工事成績評定の工種名称区分
・ 対象機器の出来形及び出来ばえを適切に評価するため、評価対象項目を追加拡充するとともに技術検査官においては機器主体工事と工事主体工事の考査項目細別の品質と出来ばえの評価対象項目を明確に区分する。これにより、評価対象項目数の追加拡充により実状に沿った内容の設定並びにきめ細やかな評価が可能となる。
・ 対象機器の品質に関する特殊性を適切に評価するため、xx技術評価官と技術検査官の考査項目細別である品質に任意評価内容が設定可能な評価対象項目として「その他」項目を追加する(図 10—4)。
以上の結果から、工場製作に適用できる評価対象項目の割合が10%程度増加する。
③ 工事成績採点表における出来形、品質の配点の見直し
・ 機器の出来形及び出来ばえの優劣をきめ細かく評価するため、配点ウエイトの大きい技術検査官の考査項目細別である出来形、品質の評価段階を現行5段階から7段階に細分化する(図 10—5)。
・ 機器主体工事の工事特性である機器の品質を有効に評価するため、xx技術評価官の考査項目細別である出来形、品質の評価加算点を増加し、全体の得点配分において出来形及び出来ばえの考査項目に重点配分する。
工事成績評定合計点において、現行と改正で機器製作が占める評定点の変化を確認するため、工事成績評定の細別有効配点を機器製作に係る評価対象項目数で按分した得点の比較を行った。
その結果、以上の課題への取り組みにより、機器製作に対する評価配点割合が3割程度から5割程度に向上することが分かった。
【契約工種による区分】
工事主体=電気設備工事
機器主体=通信設備・受変電設備工事
考査項目別運用表
(技 術 検 査 官)
考 査 項 目 工 種 a a’ b b’ c d e
3.出来形及び出来ばえ
通信設備工事・受変電設備工事
優れている
●評価対象項目
bより優れている
やや優れている
cより優れている
他の評価に該当しない
🞎 品質関係の測定方法又は測定値が不適切であったため監督職員
🞎 品質関係の測定方法又は測定値が不適切であったため検査職員
Ⅱ.品質
【評価対象項目の拡充】
きめ細やかな評価を活用するため項目数を拡充
🞎 設計図書に定められている品質管理を実施していることが確認できる。
🞎 材料及び構成部品の品質及び形状について、設計図書等と適合が確認できる証明書等を整備していることが確認できる。
🞎 材料の品質照合の結果が、品質保証書等(現物照合を含む)で確認でき、設計図書の仕様を満足していることが確認できる。
🞎 設備、機器の品質、機能及び性能が、成績等で確認でき、設計図書の仕様を満足していることが確認できる。
🞎 ケーブル及び配管の接続などの作業が、施工計画書に記載された手順に沿って行われ、不具合が無いことが確認できる。
🞎 設備全体としての運転性能が所定の能力を満足していることが確認できる。
🞎 完成図書において、設備の機能並びに性能及び操作方法が容易に判別できる資料を整備していることが確認できる。
🞎 完成図書において、単体品の製造年月日及び製造者が判別できる資料を整備していることが確認できる。
🞎 設備全体及び各機器において、設計図書に規定した品質及び性能を工場試験記録により確認できる。
🞎 設備全体についての取扱い説明書を工夫していることが確認できる。
🞎 完成図書で定期的な点検や交換を要する部品及び箇所を明示していることが確認できる。
🞎 設備の構造において、点検や消耗品の取替え作業が容易にできるよう工夫していることが確認できる。
が文書で指示を行い改善された。
【その他項目の追加】
が修補指示を行った。
🞎 その他
理由:
対象機器に特性に沿った任意評価内
容が設定可能
● 判断基準
※ 該当項目が 90%以上・・・・・・・・・a
※ 該当項目が 80%以上~90%未満・・・・a’
※ 該当項目が 70%以上~80%未満・・・・b
※ 該当項目が 60%以上~70%未満・・・・b’
※ 該当項目が 60%未満・・・・・・・・・c
① 当該「評価対象項目」のうち、評価対象外の項目は削除する。
② 削除項目のある場合は削除後の評価項目数を母数として、比率(%)計算の値で評価する。
③ 評価値( %)=( )評価数/( )対象評価項目数
④ なお、削除後の評価対象項目数が2項目以下の場合はc評価とする。
図 10—4 工事成績評定の考査項目別運用表(抜粋例)
【評価段階の細分化】
技術検査官の出来形と品質の考査項目細別を現行5段階から「a’と b’」を新設し、7段階に細分化
【加算点の見直し】
改
xx技術評価官の出来形(2点→4
別記様式第1
点)と品質(2点→5点)を加点
定工事成績採点表 〔完成、一部完成〕
平成
年地
月 日 x x
方整備局 事務所
工 事 名 | 契約金額(最終) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
請負者名 | 工期 | 平成 | 年 月 | 日 から 平成 | 年 | 月 | 日 | 完 x x 月 日 | 平成 | 年 | 月 | 日 | |||||||||||||||||||||||||
xx技術評価官 | 総括技術評価官 | 技術検査官(既済・中間) | 技術検査官(既済・中間) | 技術検査官(完成) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
氏名 | 氏名 | 氏名 | 氏名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
考査項目 | 細 別 | a | b c | d | e | a | a’ | b | b’ | c | d | e | a | a’ | b | b’ | c | d | e | a | a’ | b | b’ | c | d | e | a | a’ | b | b’ | c | d | e | ||||
1.施工体制 | Ⅰ.施工体制一般 | +1.0 | +0.5 0 | -5.0 | -10 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
Ⅱ.配置技術者 | +3.0 | +1.5 0 | -5.0 | -10 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
2.施工状況 | Ⅰ施工管理 | +4.0 | +2.0 0 | -5.0 | -10 | +5.0 | +2.5 | 0 | -7.5 | -15 | +5.0 | +2.5 | 0 | -7.5 | -15 | +5.0 | +2.5 | 0 | -7.5 | -15 | |||||||||||||||||
Ⅱ.工程管理 | +4.0 | +2.0 0 | -5.0 | -10 | +2.0 | +1.0 | 0 | -7.5 | -15 | ||||||||||||||||||||||||||||
Ⅲ.安全対策 | +5.0 | +2.5 0 | -5.0 | -10 | +3.0 | +1.5 | 0 | -7.5 | -15 | ||||||||||||||||||||||||||||
Ⅳ.対外関係 | +2.0 | +1.0 0 | -2.5 | -5.0 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
3.出来形及び 出来ばえ | Ⅰ.出来形 | +4.0 | +2.0 0 | -2.5 | -5.0 | +10 | +7.5 | +5.0 | +2.5 | 0 | -10 | -20 | +10 | +7.5 | +5.0 | +2.5 | 0 | -10 | -20 | +10 | +7.5 | +5.0 | +2.5 | 0 | -10 | -20 | |||||||||||
Ⅱ.品 質 | +5.0 | +2.5 0 | -2.5 | -5.0 | +15 | +12 | +7.5 | +4.0 | 0 | -12.5 | -25 | +15 | +12 | +7.5 | +4.0 | 0 | -12.5 | -25 | +15 | +12 | +7.5 | +4.0 | 0 | -12.5 | -25 | ||||||||||||
Ⅲ.出来ばえ | +5.0 | +2.5 | 0 | -5 | +5.0 | +2.5 | 0 | -5 | +5.0 | +2.5 | 0 | -5 | |||||||||||||||||||||||||
4.工事特性 | Ⅰ.施工条件等への対応 | ※2 | + 20.0 ~ 0 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
5.創意工夫 | Ⅰ.創意工夫 | ※3 | +7.0 ~ 0 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
6.社会性等 | Ⅰ.地域への貢献等 | +10.0 | +7.5 | +5.0 | +2.5 | 0 | |||||||||||||||||||||||||||||||
加減点合計(1+2+3+4+5+6) | ± | . 点 | ± . 点 | ± | . 点 | ± | . | 点 | ± | . | 点 | ||||||||||||||||||||||||||
評定点(65点±加減点合計) | ※1 | ① . | 点 | ② . 点 | ③ | . 点 | ③ | . | 点 | ④ | . | 点 | |||||||||||||||||||||||||
評 定 点 計 | 点 | ○既済部分(中間)検査があった場合:(① 点×0.4+② 点×0.2+③ ※但し、③(既済、中間)が2回以上の場合は平均値 ○既済部分(中間)検査がなかった場合:(① 点×0.4+② 点×0.2+④ | 点×0.2+④ 点×0.4)= | 点×0.2)= 点 | 点 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
7.法令遵守等 | ※7 | 点 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
評定点合計 | ※8 | 点 ○評定点計( 点 )-法令遵守等( 点) = 点 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
8.総合評価技術提案 | 技術提案履行確認 | ※9 | 履行 不履行 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
所 見 | ※5 | (xx技術評価官) | (総括技術評価官) | (技術検査官) |
図 10—5 工事成績評定の工事成績採点表
(3) 今後の対応
平成21年度から改定工事成績評定要領の本格運用を行う予定であり、今年度に土木工事を始めとする全工種(機器主体工事を含む)の試行が実施されている。試行の結果を踏まえ評価対象項目内容の最終見直しを行うとともに電気通信設備の選択考査項目(出来形及び出来ばえ)は専門職種以外の採点者でも評価できるよう評価対象項目の解説版を作成する必要がある。
また、工事引き渡し後における機器の品質を担保するため、契約上の瑕疵による工事成績評定の再評価(減点)を徹底し、工事成績評定点による入札参加資格並びに総合評価加算点への活用を図ることが望まれる(図 10—6)。
これにより、高品質の機器を納入した優良企業が次回入札時に相対的に有利となるため、工事全体の品質向上が期待できる。
※再評価(減点)
総合評価加算点
入札参加資格
工事成績評定
完了検査
(技術検査)
※入札条件に反映
※引き渡し後に契約上の瑕疵が認められた場合
目的物の引き渡し
工事の完成
図 10—6 瑕疵による工事成績評定の再評価フロー
第三章
電気通信施設の入札契約の改善への取り組みと今後の課題
1 現在までの取り組みとそのレビュー
電気通信施設ワーキングにおける検討を踏まえ、国土交通省では、実施可能な対策について、試行または実運用として取り組みを行った。以下に、平成19年度及び中間報告を受けた平成20年度に、本省、地方整備局(8)、北海道開発局(1)(合計9地方整備局等)の発注において実施した取り組み結果とそのレビューを示す。
改善案 1 入札参加要件の改善
(1) 機器主体工事
国土交通省の特別注文品ではない市販製品の品質向上、価格を考慮し、これらの採用が拡大していることを考慮し、次の取り組みを行った。
① 取り組み状況
平成 20 年度の発注において、入札参加要件を下表に準じて改善した
(7/9地方整備局等)。
工事における入札参加要件の改善内容(平均的なもの)は次のとおり。
対象要件 | 細別 | 現行 | 改善 | 期待される効果 |
応札業者 | 設計製作体制 | 設備特性に係わらず 「設計・製作体制を要 求」している | 市販製品について設計製作 体制を除外する | 代理店等の参入機会の拡大 |
監理(xx)技術 者 | 施工実績 | 同種・類似の施工実績 (施工量=発注規模の概ね1/2以上) | 類似範囲の拡大 | 配置できる技術者の拡大 |
市販製品の例 ;CCTVカメラ、一般的な非常用発電設備、
一般的な受変電設備、ネットワーク機器
市販製品ではない機器の例;多重無線設備、光ファイバ伝送設備、道路情報板、放
流警報設備、雨量/水位観測設備
② 取り組みの評価
平成 20 年度前半の統計において一部工事で応札者が増加していることを確認した。
施工後の品質について評価中である。
契約金額によってランク分けがされていない工種において、市販製品を使用した大規模な案件について、工事の円滑な遂行、品質確保に不安があるとの意見があった。
③ 今後の取り組み
平成 21 年度は全地方整備局等において改善する見込みである。改造や少額発注への適用拡大、技術的支援体制(保守部品の供給等)の緩和を検討する。
(2) 点検業務
点検マニュアル等の整備などの品質確保手段が充実してきたことと、応札者数の減少を考慮して次の取り組みを行った。
① 取り組み状況
平成 19 年度は、企業に対して、主な設備を示し、同一契約でなくても良いがそれらの点検業務履行実績を求めていた。
平成 20 年度は、求める履行実績設備を2種類(同一契約でなくても良い)
に緩和し、平成 21 年度にはさらに1種類に緩和した(本省及び概ね全地方整備局等)。
平成 19 年度は、配置予定技術者の実績期間は、「競争参加資格確認及
び技術審査申請書」の受領期限で認定していたが、平成20 年度から、これを「点検業務の開始日」とすることで、現在履行中の業務についても対象とすることを可能とした(本省及び 8/9 地方整備局等)。
② 取り組みの評価
応札者数の増加・減少については地方整備局等によりまちまちであった。点検業務については、上記と平行して履行準備期間の確保、発注区分の見直しを併せて実施している。したがって、この取り組みだけで応札者数を評価することはできないが、企業の履行実績については1種類まで緩和しており、この要件について、これ以上の緩和は困難である。また、緩和したことによる弊害も懸念されている。
③ 今後の取り組み
この要件とは別の観点から改善案(準備期間の確保、発注区分の見直しなど)を検討し、適宜実施している。
改善案 2 技術者配置の効率化への改善
(1) 点検
準備期間、発注内容について、きめ細かく対応することで、より多くの技術者に機会が与えられるよう次の取り組みを行った。
① 取り組み状況
点検業務では、入札から履行開始までの準備期間を確保できれば、技術者の手配が可能となり、より多くの者が応札できると考え、平成 21 年度当初を履行開始とする発注において、1ヶ月程度の準備期間の確保を本省並びに全地整において実施した(246/360件)。
発注業務内容を精査し、対象設備を限定(電気設備、通信設備など)、業務を限定(保守、運転監視)することで技術者が確保でき、応札者の増加が期待できる一部案件について、分離して発注した。
② 取り組みの評価
改善案1(2)に記したとおり、点検業務については、上記と平行して企業に求める履行実績の緩和、技術者実績認定期間の改善を併せて実施している。したがって、この取り組みだけで応札者数を評価することはできないが、応札者数の増加・減少については地方整備局等によりまちまちであった。
③ 今後の取り組み
点検業務についてより細かな対応を検討する。
(2) ワンデーレスポンス
工事、業務を効率化することで、技術者の効率的な配置を目指し、受注者からの問い合わせに直ちに回答するワンデーレスポンスに次のように取り組みを行った。
① 取り組み状況
平成20年度は7地方整備局等で試行した。平成21年度は8地方整備局等の見込み。
② 取り組みの評価
受注者から良い評価が得られたという意見がある一方で、発注担当課と出張所の連携が不足していた、受注者からの協議資料が不備であったといった制度運用上の問題についても意見が寄せられた。
③ 今後の取り組み
平成21年度はさらに適用を拡大する予定である。アンケート・ヒアリングによって発注者・受注者の意見を聴取し、運用の円滑に向けた取り組みが必要である。
改善案 3 発注図書の改善
(1) 発注図書の適正化
① 取り組み状況
機種等を限定させないための発注図書作成のため、「詳細設計照査要領
(案)」(平成 20 年 6 月)、「電気通信施設設計業務特記仕様書作成要領
(案)」(平成 20 年 6 月)を策定し、設計業務成果の図面、仕様、表現の適正化を図った。
詳細設計段階において求めていた詳細施工図、詳細機器仕様の記載範囲をそれぞれ「施工一般図」、「機能仕様主体の仕様書」の範囲とし、細部は施工段階において施工者の固有技術が活かせるように改めた。
全ての地方整備局等において発注図書の適正化への指導を実施している。
② 取り組みの評価
次のような意見が寄せられた。
・ 発注者の詳細仕様化が必要であった。
・ 特定な機種を指定するものか、適正なものかの判断が難しい場合があった。
・ 確実な検査のできないあいまいな表現が存在した。
・ インタフェース仕様に社外秘があった。
③ 今後の取り組み
事務所等の指導を継続する。発注仕様について引き続き改善する。
(2) 発注図書の標準化
① 取り組み状況
各地整に導入されている機器の標準的な機能を整理し、下記の標準となる機器仕様書を作成した。
①CCTVカメラ設備
②道路情報表示装置NHL形表示機V2
③非常用発動発電装置
④簡易型非常用発動発電装置
⑤IP伝送装置
⑥IP映像装置
⑦道路トンネル非常用設備
⑧道路トンネル非常用設備インナーメンテナンス型警報表示板
⑨トンネル照明用自動xx装置
⑩トンネル内ラジオ再放送設備
平成20年度において、上記仕様を採用した契約数は下表の通りである。
種類 | 仕様書番号 | 平成20年度契約数 |
CCTV | ① | 41 |
情報板 | ② | 15 |
発電機 | ③④ | 13 |
IP 機器 | ⑤⑥ | 12 |
トンネル防災 | ⑦⑧⑨⑩ | 5 |
② 取り組みの評価
年度途中の仕様書の完成であったが、発注図書の適正化のほか、発注資料作成時間の短縮といった効率化の面でも効果があるとの意見が寄せられた。
一方、仕様の技術面について幾つかの改善意見(地域による外囲環境条件の違いへの対応など)が寄せられた。
③ 今後の取り組み
平成21 年度には、本省・全地方整備局等において特殊な制約条件が無ければ原則的に標準仕様を用いることとしており、さらに適用の拡大が見込める。
積算の合理化にもつながり、また、価格設定の合理化(機器費データベース)においても標準仕様が必要であることから、対象機器の拡大を検討する。
また、標準仕様の適用状況に応じた見直しを継続的に行う。
改善案 4 運用中の施設の機能維持(増設・改造・修繕)の円滑化
運用中の施設の機能維持(増設・改造・修繕)の円滑化における①取り組み状況、
小分類 | ①取り組み状況 | ②取り組みの評 価 | ③今後の取り組み |
修繕における | ①障害に対する緊急随 | 随意契約の制限 | 修繕の緊急性を鑑 |
緊急随意契約 | 意契約を実施、②唯一 | により契約の労力 | み、時間短縮の手 |
性確認公募後の随意契 | 軽減と時間短縮を | 法について検討を | |
約を一部の案件で実 | 図れないケースが | 継続する。随意契 | |
施、③随意契約は不可 | あった | 約に対する要望は | |
能とするところがあった。 | 強い。 | ||
円滑な修繕の | 緊急随意契約以外の方 | 緊急性を考慮して | 対象とする施設の |
方法 | 式について現状を調査 | 方式を使い分ける | 用途、障害の状況 |
した。①点検にて実施、 | 必要がある、事務 | ( 緊 急 性 、 複 雑 | |
②通年の維持工事、② | 手続き時間をより | 性)、納入者(製造 | |
少額随意契約(役務、 | 短縮したい、変更 | 者、施工者)、保守 | |
修繕、工事)を採用して | 量の増大を回避x | x状況、メンテナン | |
いた。 | たいという意見が | ス専門業者の有 | |
あった。 | 無、契約方式など | ||
によってきめ細かな | |||
整理が必要になる | |||
と考えられる。 | |||
詳細を把握したうえ | |||
で、整備や保守を | |||
含めた改善案の整 | |||
理が必要である。 | |||
小 規 模 な 増 | ①鉄塔補強等の応札者 | 取り組み実施後に | 各地方整備局等の |
設・改造にお | が少ない案件で緩和、 | 評価を行う。 | 取り組みを整理し、 |
ける入札参加 | ②技術者要件を緩和、 | 品質確保と応札者 | |
資格の見直し | ③工事契約ではなく役 | の増加方策を検討 | |
務契約で実施とした事 | する。 | ||
例があった |
②取り組みの評価、③今後の取り組みは下表の通りである。その1 入札契約制度の取り組み
その2 技術的方策による取り組み
小分類 | ①取り組み状況 | ②取り組みの評 価 | ③今後の取り組み |
新規部分の分離 | 分離可能な設備、子局・端末設備等の増設については分離発注を実施。(例 発電機と受変電装置の分離、情報 板、CCTV、テレメータ の子局増設) | 増設の応札者数が少ない場合がある 品質に問題は認められない。 | xxxxxxx、責任分解点等について、発注図書等で引き続き明確化する。 |
標準インタフェース(I/F)の策定 | システム間の接続、親局-子局間の I/F について策定を進めてきた (例 河川情報、レーダ雨量等ネットワークシステムの伝送仕様、CCTV等の親局-子局間の制 御 I/F) | システム間伝送方式で問題は認められない。 設備の機器間 I/Fについては標準化していないものが多い。 | インタフェースの標準化について継続的に実施する |
統一ソフトウェアの製作と導入 | 規模の大きい全国システム、同一機能のシステム等について実施(例河川情報システム、映 像共有化システム) | 品質に問題は認められない(複数の受注者が異サーバで施工) | ソフトウェアの統一化について継続実施を予定 |
疎結合設計 | 機能ブロック毎に分離する設計を実施(例 河川情報システム、ダム制 御システム) | 一部のシステムに限定されている | 設計の適正化について継続的に実施する。 |
改善案 5 多様な発注方式の採用
多様な発注方式の①取り組み状況、 ②取り組みの評価、③今後の取り組みは下表の通りである。
分類 | ①取り組み状況 | ②取り組みの評価 | ③今後の取り組み |
詳細設計付 | 情報板設置工事の | 設計を含めた長い工期 | 平成21年度以降 |
工事 | 基礎部分などで試 | 設定が必要であった。 | に発注するダム管 |
行した。 | 契約変更の範囲に注意 | 理制御設備、レー | |
する必要があった。 | ダ雨量設備等で事 | ||
例を積み重ねるこ | |||
とを予定している。 | |||
メンテナンス | 平成 19 年度に4件 | 有効な技術提案が少な | 設計から維持管理 |
付工事 | の工事で試行を行 | かった。 | までの一体発注で |
い、2件で提案を採 | メンテナンスの随意契約 | ライフサイクルコスト | |
用した。詳細は下 | について説明が必要であ | の低減が期待でき | |
表に示す。 | った。 | る設備を対象に適 | |
単年度予算では各年毎 | 用を検討する。 | ||
に随意契約となるため、 | 事例を積み重ね、 | ||
国債を設定するべきであ | 今後の実施に活か | ||
る。 | す。 | ||
リース契約 | 平成 20 年度にネッ | 単年度予算では毎年随 | 効果が発揮できる |
トワーク機器、市販 | 意契約を行う必要がある | 案件の整理と国債 | |
PC、複合機の賃貸 | ため、国債を利用した複 | 予算の確保が必要 | |
借で実施した。 | 数年契約とすべきである | である。 | |
とする意見が多い。 |
メンテナンス付工事の実施状況は下表のとおりである。
工事概要 | 施工①、メンテ期間② | 応募者に求めた提案 | ※1 | ※2 | ※3 | ※4 | 入札結果の評価 |
レ ー ダ 雨 量 計 設 備 更新(1 箇所) (高度技術提案型) | ①:H19 ②:H20~24 | ① 5年間の維持管理計画 ② 5年間の維持管理費 ③ 維持管理に寄与する技術提案 | 1 | 無 | 167% | 無し | ・応札が1社に止まった。 ・維持管理に寄与する提案が得られず、施工のみの契約に止まった。 ・「高度技術提案なし」により、 標準案での入札となった。 |
ダ ム 放 流 制 御 設 備 更新(1 箇 所) | ①:H19,20 ②:H21~25 | ① 5年間の維持管理計画 ② 5年間の維持管理費 ③ ゲート制御の安全対策 | 1 | 1 | 65% | 有り | ・応札が1社のみ。・安全対策、維持管理コスト低減の提案が得られた。 |
ダ ム 放 流 制 御 設 備 更新(1 箇所) | ①:H19,20 ②:H21~25 | ① 5年間の維持管理計画 ② 5年間の維持管理費 ③ ゲート制御の安全対策 | 7 | 2 | 115% | 無し | ・5 社が予定価格以下(0.75~ 0.93)。・総合評価の結果、メンテ実施要件を満たさない社が落札者となり、施工のみの 契約に止まった。 |
VICS エリアステーショ ン 更 新 (10 箇所) | ①:H19 ②:H20~24 | ① 5年間の維持管理計画 ② 5年間の維持管理費 | 2 | 1 | 78% | 有り | ・維持管理において、主要部品(HD ディスク)交換周期の長期化、リモートメンテナンスの採用による品質向上、コスト 低減の提案が得られた。 |
※1 応札者数
※2 メンテナンス実施要件を満たした者の数
※3 落札者のメンテナンス費の提案の官積算に対する率
※4 メンテナンスの随契予定
2 平成21年度以降の取り組み
電気通信施設ワーキングにおける検討を踏まえ、平成21年度以降の入札契約等に取り組みを目指しているものは次のとおりである。
改善案 2 技術者配置の効率化への改善
技術者配置の効率化のための対策に関する①取り組み状況、 ②スケジュール、
③課題は下表の通りである。
項目 | ①取り組み状況 | ②スケジュール | ③課題 |
技術者等の効率的な配置への支援 | 現地据付予定期間、フレックス工期制度の入札公告への記載x xを整理した | 21年度の実施に向けて調整 | 適用の容易性を確保するため制度運用のマニュアル化 |
施工時期のx x化 | 平成21年度工事の 早期発注を準備中 | 報告書に基づき 事務所等を指導 | 実施状況とその効果を把握するため、事前公表状況、発注時期、設定工期、工期延期の発生状況などを数量的に把握し、入札契約状況と対比する。また、このデータに基づき、継続的な実施に向けた事務 所等の指導を実施。 |
発注案件の事前公表の徹底 | 21年度に向け準備中 | 21年度第一四半期公表で実施 予定 | |
工期変更の回 避、適正化 | 実施方法を検討中 | 報告書に基づき 事務所等を指導 | |
早期発注による工期の確保 | 平成21年度工事の早期発注を準備中 | 報告書に基づき事務所等を指導 |
(フレックス工期に基づく着手届)
機器搬入
変更可能
工場製作のみが行われている期間は専任を要しないた
め、他の同種工事の工場製作技術者との兼任可能
xx(監理)技術者
専任
現場代理人
技術者の兼任、あるいは別途代理人を割り当て
他工事xx(監理)技術者
(現場代理人)
当該工事xx(監理)技術者
(現場代理人)
契約締結
現場工事期間
工場製作期間
受注者が選択した工期 (xx(監理)技術者の配置期間)
契約期間
工事完了
工場製作完了
工事開始日
当初工期
検査完了
工事開始日まで他工事
の技術者専任が可能
技術者配置の効率化の例
改善案 6 機器価格設定の適正化
① 取り組みの概要
機器費データベースを構築し、見積によらずに適切な機器価格設定を可能とするため、機器費の応札額等の実績値を格納するデータベースを構築し、データの蓄積を開始した。
考案したアルゴリズムに従って、標準仕様を制定した機器価格について機器費を検証した。
② スケジュール
データ入力フォーマット、異常値の取り扱い、統計処理について検討を行いつつ、H21年度より標準仕様を策定した機器からxx適用を行う。
③ 課題
・機器価格の経年分析
・対象とする機器の拡充
・機器費以外のシステムインテグレーション費への利用拡大
・ユニットプライス積算方式に向けた検討
機器費データベースを用いた作業の流れのイメージを下図に示す
(問い合わせ)
機器費 DB
(登録)
入力価格の妥当性精査
機器価格設定
仕様決定
機器価格設定
仕様決定
予定価格設定
予定価格設定
施工
応札価格
[標準的な仕様]
入札
[非標準な仕様]
見積の徴収
見積仕様調製
機器費データベースを用いた機器価格設定のフロー
機器費データベースに格納されたデータの表示例を下図に示す
○○○○装置
仕様:○○○○
[台数]
60
50
40
30
20
10
0
[金額]
機器費データベースに格納されたデータの表示例
改善案 7 積算体系の見直し
① 取り組みの概要
機器製造と現場施工における積算と実態の乖離を解消するため、積算体系における機器費の取り扱いを抜本的に見直す。適正な施工費の算定による応札者の増加を目標としている。機器費の内訳を検討し機器単体費に改変するとともに、機器管理費を新設し、積算体系と実勢価格とを整合させた。諸経費動向調査を分析し、機器管理費率を策定した。
② スケジュール
積算システム、関連するドキュメントの変更をH20年度に完了させ、平成 21年度から適用する。
大規模な改定であり、多くの機関に利用されているため、円滑な移行への周知を行う。
③ 課題
・現場管理費率の継続的な調査と修正が必要である。
・ユニットプライス積算方式に向けた積算体系の検討。
現場工事費
・直接工事費
・間接工事費
機器管理費:機器等の調達、検収、現場での管理等に要する経費
機器単体費
(製作工場等の一般管理費を含む工場出荷価格)
(新たな現場工事費)従前の機器費に含まれた機器管理費を分離し、間接工事費へ移行
現場工事期間
工場製作期間
(従前の機器費) 機器単体及び機器に係わる費用
機器管理費
・機器の現場における管理に係る費用
・技術管理に要する費用(現場の試験検査費用)
・保険料(火災保険、損害保険)
・機器の製造・調達調整経費
・教育訓練等に関する費用
・機器製作期間中の現場経費
・その他
機器管理費の概念
【現行基準と基本的に同じ】
・現場工事期間の工事、据付調整に要する直接、間接の工事費
・現場工事期間以外の経費、機器に係わる経費等は含まない
④ 取り組みの具体例
積算基準(「土木工事工事費積算基準(電気通信編)」に下記の変更を行った。
請負工事費
(予定価格)
工事価格
機器単体費(工場出荷価格)
消費税相当額
工事費
工事原価
一般管理費等
直接工事費間接工事費
共通仮設費現場管理費
純工事費
機器間接費
技術者間接費
機器管理費
改定された積算体系
機器管理費に関する記述
2.機器管理費
(1) 機器管理費は、工事施工にあたって機器の調達、機器の施工現場での適切な管理等に要する経費で、次の項目及び内容である。
1) 機器の施工現場における管理に係る費用
機器の施工現場内での保管に必要な安全施設、安全管理及び運搬等に要する費用
2) 技術管理に要する費用
機器の品質管理のための施工現場における試験・検査及び試運転等に要する費用
3) 保険料
機器の施工現場内における火災保険、損害保険等の保険料
4) 機器の調達に要する費用
機器の調達、製作の調整等に要する費用
5) 訓練等に要する費用
機器の操作運用に関して発注者等への教育訓練に要する費用
6) 機器製作期間中の現場経費
機器製作期間がある場合に期間中の施工現場の安全管理等に要する費用
7) 事務用品費
8) 通信交通費
9) 雑費
1)から 8)までに属さない諸費用
改善案 8 積算基準の改善
積算基準に関する①取り組み状況、 ②スケジュール、③課題は下表の通りである。
項目 | ①取り組み状況 | ②スケジュール | ③課題 |
撤去作業に係る積算基準の改善 | 撤去作業の実態を鑑み、歩掛の改定案を 検討した | 実施には積算システム変更作業が多大なものとなり、H21 年度からの適用は困難であった。このため、平成 22 年度からの適用に向けて準備を行う。 | 改訂作業の確実な実施 |
移設作業に係る積算基準の改善 | 不調不落の多い移設工事における応札者の増加を図るため、再使用を行う撤去を含む移設作業において、必要な項目を整理し、歩掛の改定案 を検討した。 | ||
夜間作業に係る積算基準の改善 | 夜間作業における割 増について整理し た。 | 平成 21 年度からの実施 | 実施の徹底 のための周知を図る |
積算作業の軽減、ユニットプライスの採用 | 労力が多い積算項目、積算額の少ない積算項目等の抽出、ユニットプライスに関 する調査の開始 | 平成 21 年度から、各地整等の関係者と共同で検討を行う。 | 基本的な考え方の整理 |
改善案 9 総合評価方式の改善
① 取り組みの概要
機器を適正に評価することにより、工事等の品質を確保すること、技術の向上を目的として、機器を含む工事の総合評価において、評価方法の改善を行うものである。機器の定性評価の拡大、機器の価格割合に見合う配点配分の見直し、性能の上限値の設定という改善案を作成した。
② スケジュール
この改善案を全国で確実に実行するためには、その方法を整理したマニュアルが必要である。このため、平成20年度内に定性評価等を盛り込んだ総合評価マニュアル案を作成した。平成21年度から、総合評価落札方式において、このマニュアルを利用しつつ、同時のその方法の改善を図っていく。
③ 課題
新たな方法による円滑な評価の実施。
提案評価内容に対する工事実施中の確認の徹底提案評価内容に対する工事完了後の妥当性評価
定性評価項目や性能上限値の適切な設定のためのレビュー
④ 取り組みの具体例
(1) 総合評価マニュアルの構成
以下のような構成の総合評価マニュアル案を作成した。
第1章 x x
1-1 本手引きの目的等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1-2 総合評価落札方式の基本的事項・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1-3 総合評価タイプの選定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2第2章 工事に適した評価項目・配点の設定
2-1 工事に適した評価項目の設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
2-1-1 評価項目設定の考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・3
2-1-2 評価項目設定時の留意事項・・・・・・・・・・・・・・・3
(1) 標準Ⅰ型の場合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 1)評価項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3別紙1-1(総合評価落札方式の評価項目例)・・・・・・・5
別紙1-2(設備毎の評価項目例)・・・・・・・・・・・・6 2)提案を求める項目に対する標準案(標準値)の設定・・・・・・9
3)提案を求める項目に対する上(下)限値の設定・・・・・・・・9
4)技術提案の求め方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
(2) 標準Ⅱ型の場合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 1)評価項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
2-2 配点の設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
2-2-1 配点設定の考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
2-2-2 配点設定の留意点・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
(1) 標準Ⅰ型の場合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
(2) 標準Ⅱ型の場合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
2-3 評価項目設定例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
2-3-1 定量評価項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
2-3-2 定性評価項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46第3章 評価手法・確認方法等
3-1 評価手法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61
3-1-1 定量的評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61
3-1-2 定性的評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62
3-2 技術提案の確認手法等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63
3-2-1 技術提案の確認フロー・・・・・・・・・・・・・・・・63
3-2-2 総合評価計画書・報告書の記載事項・・・・・・・・・・65
3-2-3 技術提案の実施確認表・・・・・・・・・・・・・・・・67
3-3 確認方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69
3-3-1 定量評価項目の確認方法・・・・・・・・・・・・・・・69
3-3-2 定性評価項目の確認方法・・・・・・・・・・・・・ 103第4章 留意事項等
4-1 評価項目の有用性等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118
4-2 技術提案の活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 119第5章 その他参考事項
5-1 発注資料作成上の留意事項・・・・・・・・・・・・・・・・ 120
5-2 入札説明書記載例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120用語の定義
用語の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 127
(2) 定性評価の例
機器品質の評価は、提案内容の評価と完成時の確認が客観的に行える定量的な指標を用いて行われてきたが、機器品質の全てが定量評価できるとは限らない。機器の品質を適切に評価するため、重要な評価項目については定量化できないものであっても「定性評価項目」として評価対象に加えることとし、定性評価項目を整理するとともに、定性評価項目の確認方法等も整理し、総合評価マニュアルを作成した。
総合評価マニュアル案 定性評価項目部分の抜粋
2-3-2 定性評価項目
社会性や環境を踏まえた取り組み、耐久性や耐震性のxxxの数値化できない項目であるが機器品質として重要な項目に関する技術提案を引き出すものであり、評価項目(案)を以下に示す。
なお、評価手法については、3-1-2に示す。
(1)各種設備:周囲温度対策の確保(「性能・機能」評価項目) 別紙2-33
(2)各種設備:設備騒音の抑制(「性能・機能」評価項目) 別紙2-34
(3)各種設備:塩害対策の確保(「性能・機能」評価項目) 別紙2-35
(4)各種設備:雪害対策の確保(「性能・機能」評価項目) 別紙2-36
(5)各種設備:雷害対策の確保(「性能・機能」評価項目) 別紙2-37
(6)各種設備:耐震対策の確保(「性能・機能」評価項目) 別紙2-38
(7)各種設備:防水対策の確保(「性能・機能」評価項目) 別紙2-39
(8)各種設備:防錆対策の確保(「性能・機能」評価項目) 別紙2-40
(9)各種設備:操作性の向上(「性能・機能」評価項目) 別紙2-41
(10)各種設備:緊急停止対策の確保(「性能・機能」評価項目) 別紙2-42
(11)各種設備:耐久性の向上(「性能・機能」評価項目) 別紙2-43
(12)各種設備:耐震性の向上(「性能・機能」評価項目) 別紙2-44
(13)各種設備:安定性の向上(「性能・機能」評価項目) 別紙2-45
(14)各種設備:維持管理の容易性(「性能・機能」評価項目) 別紙2-46
マニュアルに記載した定性評価提案値の確認方法例
1)耐久性の向上
提案内容を踏まえた数値、形状図、証明書又は写真などにより確認する。
【確認書類等】
試験報告書、製作仕様書、ミルシート、類似品現物確認等
改善案 10 請負工事成績評定要領の改善
① 取り組みの概要
機器の適正な評価により、工事等の品質を確保すること、技術の向上を目的として、機器を含む工事に対する工事成績の評定要領の改善を行うものである。評価項目、配点の見直し、工種区分の適正化などの改善案を作成し、それに基づき、平成20 年度、一部の工事成績評定で試行した。試行の結果、改善が確認された。
② スケジュール
H21 年度から新たな請負工事成績評定要領にて実運用を行う。
③ 課題
新たな要領により、円滑に成績評定を実施すること。新たな要領のレビュー。
④ 取り組みの具体例
成績評定配点において、工事成績評定の考査項目細別である「出来形」、「品質」、「出来ばえ」の比重は高く、機器を適正に評価するうえで重要な項目である。評定実施の際に、これらの考査項目細別では工種を選択し、評価を行う。
今まで、選択する工種の区分は、他の分類方法と異なり分かりにくいものであった。このため、考査項目の見直しの際に、考査項目と工種とを整合させるとともに、工種名は一般競争参加資格の契約工種名に統一した。
これにより、考査項目の有効性を高め、また、成績評定を分かりやすいものとできる。
考査項目細別 | 現行の工種名区分 | 改定後の工種名区分 |
出来形 | ■機械設備工事・電気設備工事 | ■機械設備工事 《分離》 ■電気設備工事・通信設備工事・受変 電設備工事 |
品 質 | ■機械設備工事・電気設備工事 ■電気通信工事 | ■機械設備工事 《分離》 ■電気設備工事 ■通信設備工事・受変電設備工事 |
出来ばえ | ■電気設備工事・照明設備工事・その他類似工事 ■通信設備工事・受変電設備工事・そ の他類似工事 | ■電気設備工事 ■通信設備工事 ・受変電設備工事 |
工事成績評定の工種名称区分の適正化例(技術検査官用)
3 今後の課題
国土交通省電気通信施設における近年の不調・不落の増加、応札者数の減少という問題に取り組むため、平成 19 年度に有識者からなる電気通信施設ワーキングが設
置され、平成 20 年度にかけて入札契約制度の検討が実施された。そこで入札契約制度の広範囲にわたる抜本的な見直しが行われ、入札契約に係る改善案がとりまとめられた。検討の中間段階であっても、直ちに実施可能な改善策は、試行あるいは本格的な運用がなされ、その結果については前章にまとめられた通りである。
今回の改善提案を有効なものとすべく、提案を確実に実行に移すとともに、改善の方向が価格と品質が総合的に優れた国土交通省の電気通信施設の整備につながるか、今後もフォローアップを続ける必要がある。さらに、社会情勢や技術の変化に対応して発注者責任を全うし続けられるよう、改善方法について不断の見直しが必要と考えている。例えば、現在の積算方式は、必要な資機材を積み上げて予定価格を算出しているが、発注に係る様々なコスト要素が複雑に関連し、全ての情報を処理することが難しくなっている状況を踏まえ、ユニットプライスなどの新たなに取り組みについて今後一層の検討が必要と考えられる。
以上
資料-1
国土交通省直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会品質確保専門部会
「電気通信施設WG」の設立趣意書
【設置目的】
国土交通省直轄事業の電気通信施設は、河川、道路等の事業の一部として整備され、構造物の適切な管理に必要な情報の収集、利用者への情報提供等に活用されている。
国土交通省の電気通信施設は、戦後、防災用非常通信のための多重無線回線の整備を中心に進展してきたが、近年では、CCTV、ヘリコプター画像伝送システム等による情報収集、光ファイバー、衛星回線等の利用による情報の伝送、河川・道路情報表示装置、インターネット・携帯電話等を利用した情報提供、受変電設備、非常用電源設備、道路・トンネル照明設備等の整備など、対象が極めて広範囲にわたり、それら機器、運用サービス等を提供する業者も多種多様にわたっている。
従来、国土交通省の電気通信施設の調達に当たっては、土木工事に適用されている入札契約方式を準用することにより実施してきたが、高度な技術を要する設備工事や、既設設備の維持・改修工事などにおいては、十分な競争性を確保できなかったケースもあったと考えられる。また、昨今、公共事業の入札契約制度について、国民の厳しい目が向けられ、競争性、透明性、xx性をより高く確保するため、さまざまな改善が行われている状況を勘案すると、電気通信施設の入札契約制度についても不断の見直しを行い、個別の施設の特性に合ったものに改善していく必要がある。
このような背景から、同様の検討を行っている「国土交通省直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会・品質確保専門部会」に電気通信施設に関するワーキングを設置し、電気通信施設の入札契約手法の改善に向けた検討を行うものである。
【主な検討事項】
河川、道路管理用電気通信施設に関して
(1)入札契約手続きに関すること
(2)入札方式の競争性の確保に関すること
(3)多様な発注方式に関すること
資料-2-①
国土交通省直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会品質確保専門部会 電気通信施設WG
委 員 名 簿(平成 19 年度)
座 長 xx xx 東京大学大学院工学系研究科 教授(懇談会 委員長)委 員 xx xx 大阪大学大学院工学研究科 教授
委 員 xx xx 立命館大学情報理工学部 教授委 員 xx xx 日本大学理工学部 教授
委 員 xx xx (社)建設電気技術協会 専務理事委 員 xx xx 国土交通省大臣官房技術調査課長
委 員 xx xx 国土交通省大臣官房技術調査課電気通信室長
委 員 xx xx 国土交通省国土技術政策総合研究所
建設マネジメント技術研究室長
委 員 xx x 国土交通省関東地方整備局企画部情報通信技術調整官
(事務局) 国土交通省大臣官房技術調査課電気通信室
資料-2-②
国土交通省直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会品質確保専門部会 電気通信施設WG
委 員 名 簿(平成 20 年度)
座 長 xx xx 東京大学大学院工学系研究科 教授(懇談会 委員長)委 員 xx xx 大阪大学大学院工学研究科 教授
委 員 xx xx 立命館大学情報理工学部 教授委 員 xx xx 日本大学理工学部 教授
委 員 xx xx (株)ティー・アンド・ティー 取締役技術本部長委 員 xx xx 国土交通省大臣官房技術調査課長
委 員 xxxxx 国土交通省大臣官房技術調査課電気通信室長
委 員 xx xx 国土交通省国土技術政策総合研究所
建設マネジメント技術研究室長
委 員 xx xx 国土交通省関東地方整備局企画部
情報通信技術調整官
(事務局) 国土交通省大臣官房技術調査課電気通信室資料-3
資料-3
電 気 通 信 施 設 W G の 検 討 経 緯
電気通信施設WG 品質確保専門部会
(平成19年9月11日) (平成19年10月16日)
(平成19年11月12日)
1.入札契約の実態の分析(受注者ヒアリング含む)製造業者/工事業者/コンサルタント/保守業者
2.入札契約手続きにおける課題と対応(案)
第2回 WG
・電気通信施設WG設置承認
・電気通信施設WG審議事項の報告
平成19年度 第2回 部会
1.河川・道路管理用電気通信施設の概要
2. 入札契約実態の分析
3.入札業務手続きにおける課題と対応(案)
第1回 WG
(平成20年10月20日)
(平成20年11月14日)
(平成21年1月16日)
(平成21年3月11日)
・電気通信施設WG審議事項の報告
平成20年度 第1回 部会
1.平成20年度検討課題の審議
2.平成19年度検討課題の状況
第4回 WG
河川・道路管理用電気通信施設の
入札契約方式のあり方(中間報告書)
(平成20年2月4日) (平成20年3月14日)
・電気通信施設WG審議事項の報告
・河川・道路管理用電気通信施設の入札契約方式のあり方(中間報告書)の承認
平成19年度 第4回 部会
第3回 | WG | |
「河川・道路管理用電気通信施設の 入札契約方式のあり方」(中間報告書まとめ) ① 入札契約方式のあり方 | ||
② 入札方式の競争性確保方策 ③ 新たな発注方式に関する適用のあり方 |
第5回 | WG | |
1 平成20年度検討課題 | ||
① 積算体系の改善 | ||
② 評価・評定方法の改善 | ||
2 これまでの検討課題のとりまとめ | ||
③ 最終報告書骨子案 |
河川・道路管理用電気通信施設の
入札契約方式のあり方(報告書)
平成20年度 最終 部会 | ||
・電気通信施設WG審議事項の報告 ・河川・道路管理用電気通信施設の入札契約方式のあり方(最終報告書)の承認 | ||
(平成21年3月)
資料-4
受注者ヒアリング、アンケート結果
【概 要 版】
目 次
1.アンケート調査の概要
2.アンケート集約結果の概要
(1) 設計
(2) 工事全体
(3) 製造・購入
(4) 点検
3.ヒアリング調査の概要
4.ヒアリングの結果
(1) 事前ヒアリングの結果
(2) ヒアリングの結果
1.アンケート調査の概要
(1) アンケート調査の目的
受注者の課題、問題点、品質向上に向けた提案内容を把握するための基礎資料とする。
(2) アンケート調査の内容
調査内容 | 設計業務契約関連 | 工事契約関連 | 製造契約関連 | 点検・監視 業務契約 関連(A) | 点検・監視 業務契約 関連(B) |
入札参加要件について | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
納入設備に対する支援体制について | ○ | ○ | |||
機器障害復旧 | ○ | ○ | |||
点検、機器障害復旧に係る契約範囲について | ○ | ○ | |||
発注について | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
応募要件について | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
総合評価 | ○ | ○ | |||
入札段階について | ○ | ||||
契約変更について | ○ | ||||
現場管理 | ○ | ||||
情報公開・公表について | ○ | ||||
積算について | ○ | ○ | ○ | ||
多様な発注方式 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
品質確保向上方策 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
その他 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
(3) 調査設計
① 調査対象 国土交通省と過去5年間において3件以上の契約実績のある会社
② 標本数 302サンプル
③ 調査方法 電子媒体による調査(自記入式)
④ 調査期間 平成 19 年 10 月 5 日~10 月 15 日
(4) 回収結果(全体)
① 設計サンプル数 302
② 有効回収数 276
③ 有効回収率 91.4%
(5) 回収結果(業種区分別)
業種区分 | 設計サンプル 数 | 有効回収数 | 有効回収率 | 備考 |
設計業務 | 35 | 34 | 97.1% | |
電気設備工事(Aランク) | 16 | 16 | 100.0% | 予定価格 2億円以上 |
電気設備工事(Bランク) | 34 | 32 | 94.1% | 予定価格 5000万円以上2億円未満 |
電気設備工事(Cランク) | 6 | 5 | 83.3% | 予定価格 5000万円未満 |
通信設備工事 | 99 | 91 | 91.9% | |
受変電設備 | 20 | 17 | 85.0% | |
物品等の製造 | 10 | 10 | 100.0% | |
物品等の購入 | 28 | 26 | 92.9% | |
点検、運転監視業務(注1) | 48 | 41 | 85.4% | |
点検業務(注2) | 6 | 4 | 66.7% |
注1 標準的な設備の点検、運転監視業務 (点検A)
注2 機器製作者の技術的依存度の高い設備(ダムコン等)の点検 (点検B)