S 増=[P2-P1-(P1×15/1000)]
xx市建設工事請負契約約款第 26 条第 1 項~第 4 項運用マニュアル(暫定版)
(全体スライド条項)
2022 年(令和 4 年)12 月
xx市
建設局建設管理部技術検査課
はじめに
本マニュアルは,xx市建設工事請負契約約款(以下「契約約款」という。)第 26 条第1項か
ら第4項の全体スライド条項について,「xx市建設工事請負契約約款第 26 条第1項~第4項運用基準」(以下「本基準」という。)に関するスライド額の算定方法や発注者及び受注者間における協議等についての運用の考え方を整理したものである。
本マニュアルにおいて,出来形数量の確認や残工事量の算出等において疑義が生じた場合は,工事担当課と必要に応じ相談等を行い,円滑な執行に努めること。
1.適用対象工事
(1)工期が 12 か月を超える工事であること。
(2)契約約款第 26 条第 1 項の請求は,2.(3)に定める残工期が 2.(2)に定める基準日から2か月以上あること。
・全体スライド,単品スライド及びインフレスライドの違い
項目 | 全体スライド (契約約款第 26 条第1項から第4項) | 単品スライド (契約約款第 26 条第5項) | インフレスライド (契約約款第 26 条第6項) | |
適用対象工事 | 工期が 12 か月を超える工事 ただし,基準日以降,残工期が2か月以上ある工事 ( 比較的大規模な長期工事) | すべての工事 ( 運用等発出日時点で継続中の工事及び新規契約工事) | すべての工事 ただし,基準日以降,残工期が2か月以上ある工事 (本基準発出日時点で継続中の工事及び新規契約工事) | |
請負額変更の方法 | 対象 | 請負契約締結の日から 12 か月経過した基準日以降の残工事量に対する資材,労務単価等 | 部分払いを行った出来高部分を除く主要な工事材料 | 本基準に基づき,賃金水準の変更がなされた日以降の基準日以降の残工事量に対する資材,労務単価等 |
受発注者の負担 | 残工事費の 1.5% | 対象工事費の 1.0% (ただし,全体スライド又はインフレスライドと併用の場合,全体スライド又はインフレスライド適用期間における負担はなし) | 残工事費の 1.0% (契約約款第 30 条「天災不可抗力条項」に準拠し,建設業者の経営上最小限度必要な利益まで損なわないよう定められた「1%」を採用。) | |
再 ス ラ イド | 可能 ( 全体スライド又はインフレスライド適用後, 12 か月経過後に適用可能) | なし ( 部分払いを行った出来高部分を除いた工期内全ての資材を対象に,精算変更契約後にスライド額を算出するため,再スライドの必要がない) | 可能 (本基準に基づき,賃金水準の変更がなされる都度,適用可能) |
2.請求日及び基準日等について
請求日及び基準日等の定義は,次のとおりとする。
(1)請求日
スライド変更の可能性があるため,発注者又は受注者が請負代金額の変更の協議(以下
「スライド協議」という。)を請求した日とする。
(2)基準日
請求日とすることを基本とする。なお,請求があった日から起算して,14 日以内で発注者と受注者が協議して定める日とすることもできるものとする。
(3)残工期
基準日以降の工事期間とする。
・請求日について
請求に際しては,残工事の工期が基準日(請求日とすることを基本とする。請求日から 14 日以内の範囲で定めることも可とする。)から2か月以上必要であることに留意すること。
・基準日について
発注者と受注者とが協議して定める基準日は,請求日を基本とするが,これにより難い場合は,請求日から 14 日以内の範囲で定める。
・残工期について
残工期については,基準日における契約工期の残工事期間を基本とするが,基準日までに変更契約を行っていない場合でも先行指示等により工期延期が明らかな場合には,その工期延期期間を考慮することができる。
3.スライド協議の請求
発注者又は受注者からのスライド協議の請求は,請負契約締結の日から12か月経過後に書面により行うこととする。
・スライド対象の確認
発注者は工期内で請負契約締結の日から12か月を経過(または,前回スライド基準日以降
12か月)した段階で,スライド判定を行い,スライド協議の請求について判断することとする。
スライド判定にあたっては,設計変更に伴う変更契約を行った上で,出来高を確認し,変動前と変動後残工事請負代金額により判定することを基本とする。
・スライド協議の請求について
発注者又は受注者からのスライド協議の請求は,書面により行うこととする。
・スライド額協議開始日について
発注者は,受注者の意見を聴いてスライド額協議開始日を定め,請求日から7日以内に受注者に書面により通知する。
・事務手続フローについて
別紙「全体スライド条項(工事請負契約約款第 26 条第 1 項~第 4 項)事務手続フロー」を参照すること。
4.請負代金額の変更
(1)賃金等の変動による請負代金額の変更額(以下「スライド額」という。)
当該工事に係る変動額のうち請負代金額から基準日における出来形部分に相応する請負代金額を控除した額の 1000 分の 15 に相当する金額を超える額とする。
(2)増額スライド額の算定
S 増=[P2-P1-(P1×15/1000)]
この式において,S 増,P1 及び P2 は,それぞれ次の額を表すものとする。
S 増:増額スライド額
P1:請負代金額から基準日における出来形部分に相応する請負代金額を控除した額 P2:変動後(基準日)の賃金等を基礎として算出した P1 に相当する額
(P=(α×Z),α:請負比率(落札率),Z:官積算額)
(3)減額スライド額の算定
S 減=[P2-P1+(P1×15/1000)]
この式において,S 減,P1 及び P2 は,それぞれ次の額を表すものとする。
S 減:減額スライド額
P1:請負代金額から基準日における出来形部分に相応する請負代金額を控除した額 P2:変動後(基準日)の賃金等を基礎として算出した P1 に相当する額
(P=(α×Z),α:請負比率(落札率),Z:官積算額)
(4)スライド額
労務単価,材料単価,機械器具損料並びにこれらに伴う共通仮設費,現場管理費及び一般管理費等の変更について行われるものであり,歩掛の変更については考慮するものではない。
・P2 について
P2 は,出来形部分に相応する直接工事費(基準日以前の単価)に残工事部分に相応する直接工事費(基準日時点の単価)を加算した額及びそれにより算定した共通費率に基づく共通費を含んだ額から,出来形部分に相応する直接工事費及び共通費の額を控除した額とする。
・共通費積み上げの費用について
P2 における共通費積み上げ費用は,出来形部分に相応する費用(基準日以前の単価)に残工事部分に相応する費用(基準日時点の単価)を加算した額から,出来形部分に相応する額を
控除した額とする。
・複数回スライドを行う場合について
スライド請求を複数回行う場合におけるスライド額の算出も上記に基づき同様に実施するものとする。なお,その場合基準日における請負代金額には,それまでに実施したスライド額を含むものとする。
・複数回スライドを行う場合の受注者負担額について
複数回請求された場合の受注者負担額は,基本的には,残工事請負代金額から 1.5%の範囲内については,受注者のリスク負担であり,何回目のスライドであってもその考え方は変わらないため,控除する。
・共通費の算定について
共通費の計算は,出来形部分に相応する直接工事費(基準日以前の単価)と残工事部分に相応する直接工事費(基準日時点の単価,スライド後の変更増含む)を加算した共通費率により算出する。
また,積み上げで計上している項目については,出来形部分に相応する項目と残工事部分に相応する項目を加算し,共通費を算定する。
5.残工事量の算定
(1)基準日における残工事量を算定するために行う出来形数量の確認は,数量総括表に対応して出来高確認を行うものとすること。
(2)基準日までに変更契約を行っていないが先行指示及び協議等されている設計量についても,基準日以降の残工事量についてはスライドの対象とすること。
(3)現場搬入材料については,認定したものは出来形数量として取り扱うこと。また,次の材料等についても出来形数量として取り扱うものとする。
・工場製作品については,工場での確認又はミルシート等で在庫確保が証明できる材料は出来形数量として取り扱う。
・基準日以前に配置済みの現地据付型の建設機械及び仮設材料等(架設用クレーン,仮設鋼材など)も出来形の対象とする。
・書面にて工事材料契約の完了が確認でき,近隣のストックヤード等で在庫確認が可能な材料は出来形数量として取り扱う。
(4)数量総括表で一式明示した仮設工についても出来形数量の対象とできる。
(5)出来形数量の計上方法については,発注者側に換算数量がない場合は,受注者側の当該工種に対する構成比率により出来形数量を算出してもよい。
(6)受注者の責めに帰すべき事由により遅延していると認められる工事量は,増額スライドの場合は,出来形部分に含めるものとし,減額スライドの場合は,出来形部分に含めないものとする。
※営繕工事においては,「数量総括表」とあるのは「数量書」と,「数量総括表で一式明示した仮設工」とあるのは「数量書で一式明示した仮設工事等」とするものとする。
・出来形数量等の確認方法について
基準日における工事の出来形数量の確認については,本マニュアル 5.に基づき監督職員が実施することを基本とする。
なお,公共工事の執行にあたっては,広域的な範囲で迅速かつ確実な執行が求められることから,当面,受注者に「工事出来高内訳書」又は「実施工程表付き工事履行報告書」の提出を求め,これにより,数量総括表に対応した出来高を確認できることとする。
・「工事出来高内訳書」による出来高の確認
「工事出来高内訳書」に記載された出来高数量により,数量総括表に対応した出来高数量を確認する。
・「実施工程表付き工事履行報告書」による出来高の確認
次式により数量総括表に対応した出来高を算出する。(ただし,実施工程表は,基準日までに作成されたものとする。)
出来形数量 = 基準日における設計数量
× (基準日における実施済工程工期/実施工程工期)
本基準に基づくスライド請求を複数回行う場合,2回目以降の基準日における出来形数量の確認方法は,1回目の基準日における確認方法と原則同じ方法によることとする。
・出来形数量等の確認時期について
発注者は,請求日から 14 日以内に出来高確認を行う。
6.物価指数
発注者は,積算に使用する単価を用いた変動率を物価指数とすることを基本とする。なお,受注者の協議資料等に基づき双方で合意した場合は別途の物価指数を用いることができる。
・積算に使用する単価について
変動後の価格を算定する際に用いる材料単価等については,発注者が積算に使用している物価資料等の基準日における価格を基礎とする。
・基準日における特別調査又は見積価格採用単価について
見積価格は,見積額の変動の有無を確認することを基本とする。なお,再調査や再見積に多大な労力又は日数を必要とする場合には,当初積算時の類似単価の物価変動率により算定することができる。ただし,当該材料等の工事費全体に占める割合が大きい場合は,別途考慮する。
7.変更契約の時期
スライド額に係る契約変更は,精算変更時点で行うことができる。
・精算変更時点で行う場合
スライド額に係る契約変更を精算変更時点で行う場合は,スライド基準日における出来形数量を確認し,残工事量を受発注者間で確認すること。
8.インフレスライド条項及び単品スライド条項の併用
(1)契約約款第 26 条第6項に規定するインフレスライド条項に基づく請負代金額の変更を実施した後であっても,インフレスライド適用後12か月経過後に,本基準によるスライドを請求することができる。
(2)本基準に基づき請負代金額の変更を実施した後であっても,契約約款第 26 条第5項に規定する単品スライド条項に基づく請負代金額の変更を請求することができる。
・契約約款第 26 条第1項から第4項に規定する全体スライド条項は,材料価格を含む物価や賃金等の変動に伴う価格水準全般の変動について対応するものであることから,単品スライド条項の適用となっている材料を含めて,まず全体スライド条項によるスライド額を算出することが基本となる。その上で,全体スライド条項との重複を防止するため,全体スライド条項の対象とした数量については,変動前の単価を全体スライド条項の適用日の単価として単品スライド条項のスライド額を算出することとなる。
・また,全体スライド条項と単品スライド条項とをそれぞれ単独で考えれば,前者においては残工事費の 1.5%,後者においては対象工事費の 1%,それぞれで受注者の負担が生じることとなる。両スライドのルールをそのままそれぞれ適用した場合には,受注者にリスクを重複して負担させることになり,結果的にリスク負担が過大なものとなる。
・このような過大なリスク負担を回避するため,単品スライド条項のみが適用される期間においては当該期間の工事費の 1%を受注者の負担とするが,全体スライド条項と単品スライド条項が併用されている期間においては,全体スライド条項の適用により受注者が負担する残工事費の 1.5%をもって既に単品スライド条項に係るリスク負担がなされているとの考え方に基づき,単品スライド条項に係る 1%分の負担を求めないこととした。
・さらに,単品スライド条項に係る対象工事費は基本的には最終的な全体工事費であり,全体スライド条項と併用した場合の対象工事費は全体スライド条項に係るスライド額を含む変更後の総価となる。
9.その他の留意事項
・スライド額協議開始日は、基準日(=請求日を基本とする)以降に、出来高確認の実施と合意及び、残工事額の算定後にスライド額を算定する必要があるため、これらの作業に要する日数を確保し、スライド額協議開始日を決定する。またスライド変更契約日を考慮した上で適宜設定を行う。なお、先行実施されている工事については、設計変更契約をしておく必要があるため、その期間も考慮し適宜設定する。
・全体スライド協議完了後、若しくは、同時に設計変更を行う場合は、基準日時点の単価で算出する。
・スライド協議の結果、スライド額が対象工事費の 1.5%を超えないためにスライドの適用が認められなかった工事において、協議以降に設計変更を行う場合の単価は、基準日以前の単価により算出する。
【参考】契約約款第 26 条(賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更)
全体
スライド
単品
スライド
インフレスライド
1 発注者又は受注者は,工期内で,かつ,請負契約締結の日から 12 月を経過した後に日本国内における賃金水準又は物価水準の変動により請負代金額が不適当となったと認めたときは,相手方に対して請負代金額の変更を請求することができる。
2 発注者又は受注者は,前項の規定による請求があったときは,変動前残工事代金額(請負代金額から当該請求時の出来形部分に相応する請負代金額を控除した額をいう。以下同じ。)と変動後残工事代金額(変動後の賃金又は物価を基礎として算出した変動前残工事代金額に相応する額をいう。以下同じ。)との差額のうち変動前残工事代金額の 1000 分の 15 を超える額につき,請負代金額の変更に応じなければならない。
3 変動前残工事代金額及び変動後残工事代金額は,請求のあった日を基準とし,物価指数等に基づき発注者と受注者とが協議して定める。ただし,協議開始の日から 14 日以内に協議が整わない場合にあっては,発注者が定め,受注者に通知する。
4 第1項の規定による請求は,本条の規定により請負代金額の変更を行った後再度行うことができる。この場合において,同中「請負契約締結の日」とあるのは
「直前の本条に基づく請負代金額変更の基準とした日」とするものとする。
5 特別な要因により工期内に主要な工事材料の日本国内における価格に著しい変動を生じ,請負代金額が不適当となったときは,発注者又は受注者は,前各項の規定によるほか,請負代金額の変更を請求することができる。
6 予期することのできない特別の事情により,工期内に日本国内において急激なインフレーション又はデフレーションを生じ,請負代金額が著しく不適当となったときは,発注者又は受注者は,前各項の規定にかかわらず,請負代金額の変更を請求することができる。
7 前2項の場合において,請負代金額の変更額については,発注者と受注者とが協議して定める。ただし,協議開始の日から 14 日以内に協議が整わない場合にあっては,発注者が定め,受注者に通知する。
8 第3項及び前項の協議開始の日については,発注者が受注者の意見を聴いて定め,受注者に通知しなければならない。ただし,発注者が第1項,第5項又は第6項 の請求を行った日又は受けた日から7日以内に協議開始の日を通知しない場合に は,受注者は,協議開始の日を定め,発注者に通知することができる。