売買契約(FCA)
輸入貨物に係る関税評価上の取扱い等に関する照会
輸入者が業務委託契約に基づき支払う手数料の取扱いについて
x 会 | ||
照会内容等 | ① 輸入貨物の品名 | 玩具の部分品(税表分類:第 85 類) |
② 照会の趣旨 | 「買付け業務委託契約」に基づき支払われる手数料が輸入貨物の課税価格に算入されるか否かについて照会するものです。 | |
③ 取引の概要及びx x評価に関する照会者の見解とその理由 | 別紙1のとおり。 | |
④ 関係する法令条項等 | 関税定率法第4条第1項第2号イ | |
⑤ 添付書類 | 照会の趣旨及びその理由等の照会事項に関する参考資料 |
回 答 | |||
回答年月日 | 令和元年 10 月 23 日 | 回答者 | 名古屋税関業務部首席関税評価官 |
回答内容 | 別紙2のとおり。 ただし、次のことを申し添えます。 (1) 回答内容は、あくまで照会に係る事実関係を前提としたものであり、具体的な事例において異なる事実がある場合や新たな事実が生じた場合には、回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。 (2) 回答内容は、税関としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではありませんのでご留意ください。 |
目次
3. 輸入取引においてQ社が果たしている役割及び提供している役務の性質について 7
同
輸入者・買手 B社
(本邦)
買付け業務委託契約注文書(PO)
輸出者 Q社
(A国)
インボイス・輸入貨物貨物代金
業務委託手数料
貨物代金
輸入貨物 注文書(PO)
売買契約(FCA)
製造者・売手 S社ほか複数者
(A国ほか)
(1) 本邦所在の輸入者(買手)であるB社(以下、「輸入者」という。)は、A国ほか所在の製造者(売手)であるS社ほか複数者(以下、「製造者」という。)と売買契約を締結し、輸入貨物を FCA 取引条件で輸入しています。なお、輸入者はいずれの製造者とも特殊関係にありません。
(2) 当該輸入取引を行うにあたり、輸入者はA国所在の輸出者であるQ社との間で、「買付け業務委託契約」(以下、「業務委託契約」という。)を締結しています。なお、Q社は、輸入者が 100%出資して設立した現地法人です。
(3) 輸入者は、輸入貨物について、価格・数量・品質・納期等に係る要望を電子メール等によりQ社に伝えて製造者との交渉を委託します。
輸入貨物が新規品の場合、Q社は輸入者からの依頼に基づき、複数の製造者に対し相見積を取り、価格交渉をするとともに、サンプル作成を依頼する等の業務を行います。輸入者は当該価格交渉及びサンプル確認の結果、製造者を決定します。
一方、輸入貨物が継続品の場合、Q社は輸入者の要求事項に基づき製造者と交渉を行います。その際、輸入者は製造者への要求事項をQ社に対して電子メール等により随時伝える一方、製造者からの回答をQ社から電子メールによって随時フィードバックしてもらうことで取引内容を詰め、その結果、輸入者と製造者との間で取引内容が決定されます。
輸入者は、同社の社内システムにより発行する注文書(以下、「PO」という。)を電子メールに添付し、 Q社宛てに送付します。Q社は受領した当該 PO に基づき、輸入者の書式を用いて正式な PO を作成して製造者宛に電子メールで送付します。そして、当該製造者宛の PO に対して製造者から拒絶する旨の意思が示されなければ、売買契約が成立し、取引が開始されます。
製造者は、当該製造者宛の PO に基づく売買契約で定められた指定場所(A国のコンテナフレートステーション(以下、「CFS」という。))に指定された期日に納品するため、輸入貨物を出荷、輸送します。Q
社は、業務委託契約に基づき、当該 CFS において、製造者から輸入貨物の納入を受けますが、実務上はQ社が業務委託した NVOCC(Non Vessel Operating Common Carrier「非船舶運航一般輸送人」)であるN社の倉庫係が納入を受けます。納品を確認した倉庫係は、製造者(または製造者から依頼を受けた運送会社)が持参した出荷指示書に受領印を押し、製造者に返却します。Q社は、製造者から受領印のある出荷指示書が送付されることにより輸入貨物が納品されたことを確認します。このような納入の流れにより、製造者から輸入者への貨物の引渡しが完了します。
Q社は、輸入貨物の納品を確認した後、N社に指示を出し、輸入者が指定した船に輸入貨物を積み込みます。複数の製造者から納品される場合には、貨物は CFS ですべて混載され、船積みされます。また、CFS から CY までの横持ちは、N社が行っており、当該横持ち料金はN社がQ社に請求する CFSチャージに含まれています。
輸入者は、輸入貨物を本邦へ向けて発送するにあたり、通関業者であり NVOCC でもある本邦の運送業者と、同者の複合輸送グループが提示した運送形態での運送に合意します。Q社は、当該合意に基づき輸入者から出される指示に従って、買付代理人の業務として、同複合輸送グループ企業であるN社に対しブッキングを行い、B/L 上の荷送人となります。
輸入者は自社を受取人として輸入貨物の海上運送をカバーした保険を付し、保険料を支払います。輸入貨物の引渡しの時点は、A国の CFS への搬入時であり、当該引渡し時点において製造者から輸入者へ所有権と危険負担が移転するため、輸入者がA国 CFS から本邦までの運送の危険負担を負います。このように、輸入者はA国 CFS で輸入貨物の引渡しと船積みに関する業務の一部をQ社に委託し、 Q社はA国 CFS における物流業務をN社に委託していますが、Q社自身は輸入貨物に係る危険を負担することはありません。
輸入貨物代金の支払いは、Q社が、輸入者の指示に従って、輸入者からQ社に事前に入金された金額から製造者に行います。なお、各製造者に対する支払いは、基本的に月末締めで、翌月に取引額をまとめて行われます。
(4) 業務委託契約により、輸入者がQ社に委託している主な業務の内容は、以下のとおりです。
① 発注業務:輸入者からの PO に基づき、製造者に PO を発行する。
② 出荷業務:輸入者が指定する場所・納期に従い製造者から納品された輸入貨物を出荷する。
③ 見積依頼:輸入者の指示に従い、製造者に輸入貨物の見積依頼をする。
④ 品質検査:輸入者の指示に従い、輸入貨物の品質検査を行う。(製造者検品終了後に行う、工場出荷前検査)
⑤ 新規仕入先業者の開拓:輸入者の指示に従い新規製造者を開拓し、報告する。
⑥ 在庫保管:輸入者の指示に従い、副資材等を購入し製造者に支給する。
(契約においてQ社の業務と規定されているものの、現在は行われておらず、今後も行う予定はない。)
⑦ 支払業務:輸入者の指示に従い、輸入者から事前入金された金額を製造者に支払う。
⑧ 情報収集活動:輸入者の指示に従い、必要な情報を収集しこれを報告する。
契約書に具体的な業務内容の記載が無い事項として、次の⑨及び⑩の業務も発注業務に関連する業務としてQ社に委託しています。
⑨ 輸入貨物に不具合が発生した場合、輸入者から「受入検査不合格連絡表」等により報告を受け、製造者に対して発生原因等の調査を行う。この際、再発防止等の対策に係る交渉も同時に行った上で輸入者に報告し、輸入者の判断により、最終的には、当該輸入貨物の製造者への差し戻し等の交渉も行うこととなる。ただし、不具合の責任はあくまでも製造者が負い、Q社が賠償を求められることはない。
⑩ 輸入者は一部の取引において、製造者に金型を無償で貸与し、製造者は当該金型を使用して輸入貨物を生産している。金型を無償貸与する際、基本的には輸入者は直接製造者と連絡を取っているが、言葉の問題等でコミュニケーションがうまく取れない場合は、Q社が輸入者をサポートすることになっている。
なお、当該業務委託契約は本邦への輸入貨物に係る業務の他、各製造者から輸入者の第三国現地法人に向けて出荷する貨物に係る業務も対象としています。
(5) Q社は、A国ほかに所在する複数の製造者が取引条件に基づき出荷した輸入貨物を本邦に向けて輸出する際、輸入貨物の取りまとめ等を行います。なお、個々の製造者が売買契約に基づき指定場所による引渡の責任及び危険を負担しており、原則として、指定場所による引渡により、製造者から輸入者に危険負担が移転します。
Q社は、輸入貨物に瑕疵、欠陥、その他の品質不良が発生した際には、輸入者及び製造者との間に入って交渉を行いますが、業務委託契約を履行するにあたりQ社の責に帰する理由がある場合を除いて当該瑕疵、欠陥、その他の品質不良に対して責任を負うことはありません。
輸入取引は、輸入者及び製造者の計算と危険負担により行われており、Q社が危険負担を負うことはなく、製造者とQ社との間に輸入貨物の販売に係る業務委託関係及び代理関係等もありません。加えて、製造者から手数料を受領している事実もありません。
輸入者は、製造者とのコミュニケーションを円滑に行うこと及びスムーズに貿易業務を行うことを目的として業務委託しているのであって、Q社に業務委託しなくても製造者との輸入取引を成立させることは可能ですが、輸入取引の利便性を考慮しQ社に業務委託しています。
(6) 業務委託契約の履行に伴う対価については、以下のとおりです。
輸入者は、上記(4)の業務の対価(「業務委託手数料」)として、業務委託契約に基づき、Q社が本業務を履行するために要した経費(運送関連費用等)及びQ社社員給与を含む事務所経費等に、それらの総額の5%を加えた額を月分まとめてQ社に支払っています。当該手数料として支払う費用のうち、運送関連費用は、Q社が負担した実費を輸入港までの運賃等として輸入貨物の課税価格に算入して申告しています。
なお、本邦向け輸入貨物に係る手数料の額については、経費総額を各出荷額に応じて、本邦向け輸入貨物分と第三国現地法人向け貨物分へ按分した額にそれぞれ5%を上乗せして輸入者に請求されていることから、明らかにすることは可能です。
(7) Q社が行う業務委託契約に基づく業務以外のその他の業務については、以下のとおりです。
Q社が行う業務のうちの99%以上が上記(4)の業務で、それ以外の業務(以下、「個別業務」という。)は、A国で製造された包装資材の本邦の客先への販売です。
業務委託契約に基づく業務に係る経費と個別業務に係る経費とは別管理しており、また、事務所経費等については、伝票処理件数を基に按分しているため、上記(6)の業務委託契約の履行に伴う対価には、個別業務に係る経費は計上されておりません。
輸入者と製造者は、輸入貨物の品質、数量、価格等について取り決め、瑕疵、数量不足、事故、不良債権等の危険を負担する者であることから、輸入者と製造者との売買が輸入取引であり、輸入者が買手、製造者が売手となります。
当該取引において、Q社は、輸入者と締結した業務委託契約に基づき、輸入者の指示により輸入者の代理として当該売買に関する業務を行っている者であることから、当該契約に関して支払われる対価の額は、関税定率法第4条第1項第2号イに規定する「仲介料その他の手数料」から除外される「買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付けに係る業務の対価として支払われるもの」に該当し、課税価格に算入する必要はないものと考えます。
輸入者がQ社に支払う業務委託手数料は、Q社が負担する運送関連費用の実費、金型の無償貸与に係る業務の対価及び本件輸入取引と関係のない取引に係る業務の対価を除いて、関税定率法第4条第1項第2号イに規定する「買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付けに係る業務の対価として支払われるもの」に該当することから、輸入貨物の課税価格に算入されません。
なお、Q社が負担する運送関連費用の実費については、関税定率法第4条第1項第1号に規定する「輸入港までの運賃等」に該当することから、輸入貨物の課税価格に算入されます。
関税定率法(以下、「法」という。)第4条第1項本文において、輸入貨物の課税標準となる価格(以下、「課税価格」という。)は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において運賃等の額を加えた価格とすると規定されています。
上記「運賃等の額」として、同項第2号イにおいて、輸入貨物に係る輸入取引に関し買手により負担される手数料のうち、仲介料その他の手数料(買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付けに係る業務の対価として支払われるものを除く)は課税価格に算入するとされています。
法基本通達(以下、「通達」という。)4-1(1)において、「輸入取引」とは、本邦に拠点を有する者が買手として貨物を本邦に到着させることを目的として売手との間で行った売買であって、現実に当該貨物が本邦に到着することとなったものをいい、通常、現実に貨物を輸入することとなる売買がこれに該当するとされています。また、同(3)において、輸入取引における「買手」「売手」とは、実質的に自己の計算と危険負担の下に輸入貨物に係る輸入取引をする者であるとされています。
通達4-9(1)において、仲介料その他の手数料とは、輸入取引に関して業務を行う者に対し買手が支払う手数料をいい、このうち、「買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付けに係る業務の対価として買手により支払われる手数料(買付手数料)」以外のものは、課税価格に算入するとされています。
さらに、同(3)において、買付手数料に該当するか否かの判断は、契約書等における名称のみによるものではなく、手数料を受領する者が輸入取引において果たしている役割及び提供している役務の性質を考慮して行うものとし、具体的には以下のイからハまでによるとされています。
イ 手数料を受領する者が「買付けに関し買手を代理して当該買付けに係る業務を行う者」であることが、買付委託契約書等の文書により明らかであること
この場合において、「買付けに関し買手を代理して当該買付けに係る業務を行う者」とは、買手の管理の下で、買手の計算と危険負担により(イ)から(ニ)までのような業務を行う者をいう。ただし、当該手数料を受領する者が一の輸入取引に関し売手と買手の双方を代理している場合には、当該手数料は買付手数料には該当せず、課税価格に算入する手数料となる。
(イ) 契約の成立までの業務(例えば、供給者を探し、買手の要求を売手に通知し、見本を集める業務) (ロ) 商品の引渡しに関する業務(例えば、貨物を検査し、貨物についてのxx、運送、保管、引渡し
を手配する業務)
(ハ) 決済の代行に関する業務(ただし、手数料を受領する者が自己の資金により輸入貨物代金の支払を行う場合には、自己の計算と危険負担の下で活動し荷主としての損失を被っていたり又は利益を得ていたりする可能性があることに留意する。)
(ニ) その他(例えば、クレーム処理に関する交渉を行う業務)
ロ 手数料を受領する者が買付けに関し買手を代理して当該買付けに係る業務を実際に行っているという実態の存在が文書や記録その他の資料により確認できること
ハ 税関の要請がある場合には、売手と買手との間の売買契約書、輸入貨物の売手(製造者等)が買手にあて作成した仕入書等を提示することが可能であること
また、同(3)なお書きにおいて、
手数料を受領する者が、上記イに掲げるような輸入貨物の買付けに関し買手を代理して行う当該買付けに係る業務に加えてその他の役務(例えば、当該輸入貨物を工場から輸出港又は輸出場所へ輸送することについて手配するのではなく、自ら貨物を輸送する等)を提供し、当該役務の対価を含む手数料を買手が支払う場合、当該手数料の総額を買付手数料に該当するものとして取り扱うことはできない。ただし、当該手数料のうち、輸入貨物の買付けに関し買手を代理して行う買付けに係る業務の対価に相当する額を買手が証明した場合は、当該相当する額は買付手数料に該当するものとして取り扱うものとする。
とされています。
本件取引において、本邦所在の輸入者は、A国ほか所在の製造者と売買を交わし、以下(1)から(3)までのように輸入貨物を FCA A国 CFS 渡し条件で本邦に輸入(購入)しています。
(1) 価格交渉、発注及び売買の成立
輸入者は、製造者と輸入貨物の価格交渉を行い、価格・数量・品質・納期等を自ら取り決め、その後、製造者に PO をメールで送付することにより売買契約を成立させています。また、製造者は輸入者からの PO を受けることで売買契約に合意し、貨物の製造を行います。以上から、輸入者と製造者が輸入貨物の売買の当事者であると言えます。
(2) 貨物の出荷及び引渡し
輸入者及び製造者は、貨物の出荷に際し、製造者の工場で輸入者が出荷前検査を行うことに基本的に合意しています。当該出荷前検査で問題がなければ、輸入貨物は製造者の工場から出荷され、A国 CFS で製造者から輸入者に引き渡されます。実際には、輸入者の代理としてQ社が納品を受け、Q社は当該業務を運送取扱人であるN社に委託していますが、引渡し後に輸入貨物に係る毀損、滅失等の危険を負担するのはあくまで輸入者とされています。このため、輸入者は輸入貨物の引渡し後、本邦までの輸送に係る保険を自ら付しています。以上から、輸入者と製造者が貨物を本邦に到着させることを目的として FCA A国 CFS 渡し条件で売買を行い、当該売買における貨物の瑕疵、数量不足、事故等の危険を負担していると言えます。
(3) クレームの処理及び貨物代金の支払い
輸入貨物が本邦に到着後、輸入者は必要に応じて受入検査を行います。当該受入検査において不良品等が見つかった場合には、輸入者から製造者に連絡され、製造者が当該クレームに対応します。また、輸入貨物の代金は、基本的に月分の取引額がまとめられて製造者に支払われます。以上のことから、輸入者と製造者が輸入貨物の瑕疵、数量不足に係る危険を負担し、また、貨物代金や補償に係る不良債権等の危険を負担していると言えます。
以上の取引に係る具体的事実から、貨物を本邦に到着させることを目的として、実質的に自己の計算と危険負担の下に取引を行っているのは輸入者と製造者であり、両者の間の売買により実際に貨物が本邦に到着することになったと認められます。したがって、輸入者と製造者の間の売買が法第4条第1項に規定する「輸入取引」となり、輸入者が買手、製造者が売手であると認められます。
3. 輸入取引においてQ社が果たしている役割及び提供している役務の性質について
次に当該輸入取引においてQ社が果たしている役割及び提供している役務の性質を取引の流れに沿って検討します。
(1) 価格交渉、発注及び売買の成立における役割
価格交渉の段階から売買の成立に至るまでにおいて、Q社は輸入者の指示に従って、複数の製造者から見積書を徴して輸入者に各製造者の見積もり金額を提示します。その後、輸入者が取引相手として決めた製造者に輸入者の要望を連絡しつつ、価格、納期、製品の規格等の取引条件に係る交渉を行いま
す。また、輸入者の指示によって製造者に製品サンプルの作成を依頼します。最終的には輸入者のPO を製造者に送信することで、輸入者と製造者の売買契約を成立させています。Q社はこれらの業務を輸入者の指示に従って行っている実態が提出書類から確認できます。以上から、Q社は通達4-9(3)イ(イ)契約の成立までの業務(例えば、供給者を探し、買手の要求を売手に通知し、見本を集める業務)を買手の管理の下で、買手の計算と危険負担により行っていると認められます。
(2) 貨物の出荷及び引渡しにおける役割
輸入者の説明によれば、業務委託契約書に基づき貨物の検収として、輸入者は製造者の工場における出荷前検査をQ社に委託しています。Q社は自らのスタッフを製造者の工場に派遣し、検査を行い、検査結果を輸入者に報告していることが提出された出荷前検査報告書から確認できます。
また、Q社は当該検査を経て出荷された貨物の納品をA国 CFS で受けます。その後、輸入者からの指示に従って、船積みまでの間一時的に貨物を CFS で保管し、他の製造者から納品を受けた輸入貨物を取りまとめて本邦へ貨物を送り出します。実際には、Q社は当該業務をN社に委託していますが、当該業務に要した実費は、N社からQ社に請求され、Q社は当該請求額を業務委託契約に係る手数料に含めて輸入者に請求しています。
以上から、通達同(ロ) 商品の引渡しに関する業務(例えば、貨物を検査し、貨物についてのxx、運送、保管、引渡しを手配する業務)について、Q社は、買手の管理の下で、買手の計算と危険負担により、貨物の引渡しに係る検査を行っていると認められます。その一方で、輸入貨物の運送、保管、引渡しに係る業務については、これらを自らが提供し、提供に要した費用を負担しています。そして、当該費用を手数料に含めて輸入者に請求しています。
(3) クレームの処理及び貨物代金の支払いにおける役割
Q社はクレームの処理について、輸入貨物が本邦到着後に輸入者が行った受入検査の結果を製造者に伝え、不良品に係る代替品の送付を要求し、返送にかかった費用を請求しています。また、輸入貨物の代金について、輸入者からの送金を受けた後、輸入者の指示に従って製造者に電信送金しています。
以上から、Q社は通達同(ハ) 決済の代行に関する業務(略)、同(ニ) その他(例えば、クレーム処理に関する交渉を行う業務)を買手の管理の下で、買手の計算と危険負担により、行っていると認められます。
以上のような業務内容が業務委託契約書に規定されており、Q社が当該業務を輸入者の指示の下に行っていることから、Q社は輸入貨物の買付けに関し、通達4-9(3)イに規定する買手である輸入者を代理して業務を行う者であると認められます。さらに業務委託契約書の内容に沿ってQ社が業務を行っている実態が他の提出書類により具体的に確認できることから、通達同(3)ロの要件を満たします。また、製造者が輸入者に宛てた仕入書等も提示されており、通達同(3)ハの要件も満たしています。
ただし、上記(2)の輸入貨物の運送、保管、引渡しに係る業務については、自らの負担で提供していることから、これらの業務を手配しているとは認められず、買付けに係る業務に加えてこれらの役務を提供していると解されます。
このほか、Q社が提供している業務のうち、製造者への金型の無償貸与に係る業務及び輸入者の第三国現地法人に向けて出荷する貨物に係る業務についても、当該輸入貨物の買付けに係る業務とは認められません。
業務委託契約及び輸入者の説明から、輸入者からQ社に下記のように手数料が支払われることになっています。
(1) 従業員給与等を含むQ社の一月分の事務所経費総額のうち、当該業務に要した費用及びその5%が業務委託手数料として支払われる。なお、Q社の全業務の99%以上が当該業務委託契約に基づく業務である。
(2) (1)の内訳として、上記3.(2)のA国 CFS で輸入貨物の納品を受けた後本邦に向けて発送されるまで
の間A国 CFS で要した実費(CFS チャージ等の運送関連費用)。
(3) (1)の内訳として、当該輸入取引における金型の無償貸与に係る業務に要した費用。
(4) (1)の内訳として、当該輸入取引と関連しない各製造者から輸入者の第三国現地法人に向けて出荷する貨物に係る業務に要した費用。
上記(2)の輸入貨物のA国 CFS で要した運送関連費用の実費は、上記3のとおり、買付けに係る業務の対価ではなく追加的に役務を提供した費用であることから買付手数料とは認められず、法第4条第1項第1号の規定により、「輸入港までの運賃等」に該当します。
上記(3)の金型の無償貸与に係る業務及び上記(4)の輸入者の第三国現地法人に向けて出荷する貨物に係る業務については、当該輸入貨物の買付けに係る業務ではなく、追加的に他の役務を提供していることから、その費用は買付手数料とは認められません。
以上より、Q社は、輸入貨物の買付けに関し買手を代理して行う業務に加え、その他の役務を提供していることから、通達4-9(3)なお書きにより、業務委託契約に基づきQ社に支払われた上記(1)の手数料総額を買付手数料に該当するものとして取り扱うことはできません。しかし、上記(2)、(3)及び(4)を控除した額は、買付けに係る業務の対価であると認められ、買手である輸入者はこれに相当する額を明らかにすることができます。よって、上記(1)の手数料総額から上記(2)、(3)及び(4)を控除した額が当該取引に係る買付手数料と認められ、課税価格に算入する必要はありません。
輸入者がQ社に支払う業務委託手数料は、Q社が負担する運送関連費用の実費、金型の無償貸与に係る業務の対価及び本件輸入取引と関係のない取引に係る業務の対価を除いて、法第4条第1項第2号イに規定する「買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付けに係る業務の対価として支払われるもの」に該当することから、輸入貨物の課税価格に算入されません。
なお、Q社が負担する運送関連費用の実費については、法第4条第1項第1号に規定する「輸入港までの運賃等」に該当することから、輸入貨物の課税価格に算入されます。
4.(3)の金型の無償貸与に係る業務に要する費用は、当該金型を使用して生産された貨物が輸入された場合には、当該輸入貨物の輸入申告の際に、法第4条第1項第3号ロに該当する費用として、課税価格への算入を検討する必要があります。