医療 健康 介護 子ども・家庭・教育 就労支援 その他 計 調査対象の PFS事業 10 6 5 5 3 8 37 うち事業実施中又は実施済み 5 3 3 2 1 4 18
成果連動型民間委託契約に係るアンケート調査の結果について
平成 31 年4月 25 日内閣府 政策統括官(経済社会システム担当)内閣官房 日本経済再生総合事務局
成果連動型民間委託契約(PFS: Pay for Success)に取り組む地方自治体及び事業者に対し、PFS 導入の狙いや課題等についてアンケート調査を実施した。調査の結果は、以下のとおり。
調査目的:PFS の取組状況や課題を把握し、その解決策についてのxx投資会議構造改革徹底推進会合「第4次産業革命」会合(PPP/PFI)等における調査審議に資するため。
調査対象:関係府省や有識者からの情報等をもとに、PFS の検討・実施を進めている 34 地方自治体及びこれらの事業に携わる 14 事業者に対しアンケート調査を実施。
調査時期:平成 31 年2月8日~2月 20 日
1.PFS 事業の実施状況
調査対象とした地方自治体において検討・実施されている全PFS 事業37 件1のうち、事業実施中又は実施済みのものが 18 件、事業検討中又は検討後実施を見送ったもの
が 19 件あった。事業実施中又は実施済みのもののうち、成果報酬を支払ったものが
6件あった。
また、調査対象となった PFS 事業の事業分野については、医療分野が 10 件と最多であった。続いて健康分野が6件あった。事業実施中又は実施済みのものについては、医療分野が5件と最多であった。続いて健康分野と介護分野が3件あった。…【表1】
表1 調査したPFS事業とその検討・実施過程及び分野
(単位:件)
医療 | 健康 | 介護 | 子ども・家庭・教育 | 就労支援 | その他 | 計 | |
調査対象の PFS事業 | 10 | 6 | 5 | 5 | 3 | 8 | 37 |
うち事業実施中又は実施済み | 5 | 3 | 3 | 2 | 1 | 4 | 18 |
(備考)自由回答を内閣府において分類のうえ集計。
1 1つの地方自治体が複数の事業を実施する場合や、複数の地方自治体が1つの事業を実施する場合があるため、調査対象の地方自治体数とは一致しない。なお、単年度事業として少額の事業を複数実施している場合には、各年度1件(その他)として集計した(東近江市、xx市)。
2.PFS 導入の狙いとその効果
地方自治体における PFS 導入の当初の狙いについては、「より高い成果の創出が期待される」、「社会的課題を解決する新たな手法を把握・実証できる」との回答がそれぞれ 19 自治体(55.9%)と最多であった。続いて「行政コストの削減が見込まれる」が 17 自治体(50.0%)あった。 …【図1】
PFS 導入が当初の狙い通りの効果が得られたかについては、現段階では「事業を検討中又は実施中のため、わからない」との回答が、いずれの狙いにおいても最多であった。
効果について判断できる場合にあっては、PFS 導入にプラスの効果を認める回答が多かった。 …【図2】
3.PFS 導入の課題とその理由
地方自治体における PFS 導入の課題(導入に向けた不安)については、「適正な成果指標・評価方法の設定が困難」との回答が 27 自治体(79.4%)と最多であった。続いて、この成果指標・評価方法と密接に関係すると考えられる「報酬の支払い条件の設定が困難」との回答が 15 自治体(44.1%)あり、「成果報酬を含む予算の確保が困難」との回答が 13 自治体(38.2%)あった。 …【図3】
① 「適正な成果指標・評価方法の設定が困難」である理由
「適正な成果指標・評価方法の設定が困難」である理由については、「十分な根拠を持った成果指標が見つからない」との回答が 17 自治体(63.0%)と最多であった。
…【図4】
② 「報酬の支払条件の設定が困難」である理由
「報酬の支払条件の設定が困難」である理由については、本来目指している成果(医療費削減等)を短期間で確認できない中にあって、段階に応じて年度毎に報酬を支払えるようにする条件設定が困難である、全額成果連動ではなく一部固定払いを設定するかを決定するのが困難であるなど、報酬の支払条件の設定について妥当性を判断する根拠がないという回答がみられた(自由回答)。
➂ 「成果報酬を含む予算の確保が困難」である理由
「成果報酬を含む予算の確保が困難」である理由については、「行政コストの削減など事業により見込まれる便益の根拠が乏しい」との回答が7自治体(53.8%)と最多であった。 …【図5】
4.国に期待する役割
PFS を推進する上で国に期待する役割等については、地方自治体では、「事例収集、ガイドライン・マニュアル、モデル事業、PFS を行う事業分野提示」という、国に対して一定の指針の提示を求める回答が 14 自治体(48.3%)と最多であった。続いて、国による「財政支援」との回答が 12 自治体(41.4%)あった。 …【図6】
また、事業者においても、おおむね同様の傾向がみられた。 …【図7】
(備考)自由回答を内閣府において分類のうえ集計。
(備考)自由回答を内閣府において分類のうえ集計。
成果連動型民間委託契約による事業の概要
地方自治体名 | 事業分野 | 事業概要 | 成果指標 | 事業期間 | 国の支援(案件組成) | 国の支援(事業実施) |
xx県xx市 | 就労支援 | 生活困窮者等を対象に訪問支援を実施し、就労支援プログラムへの参加者の増加を図る。 | 「ひきこもり」等の社会的孤立者数(求職型、非求職型、非希望型(アウトリーチ対象)など5分類) | 2018年度 | - | 厚生労働省 民間活力を活用した社会的事業の開発・普及のための環境整備事業 |
xxx八王子市 | 医療 | 受診勧奨を実施し、大腸がん検診・精密検査の受診率を向上させ、早期がん発見者数の増加を図る。 | 大腸がん検診受診率、精密検査受診率、早期がん発見者数 | 2017~2019 年度 | 経済産業省 健康寿命延伸産業創出推進事業 | - |
xxx多摩市 | 医療 | 保健指導を実施し、糖尿病性腎症の重症化の防止を図る。 | プログラム修了率、生活習慣改善率 | 2018年度 | - | 厚生労働省 民間活力を活用した社会的事業の開発・普及のための環境整備事業 |
xx県伊那市 | 健康 | 運動指導・食事指導を実施し、対象者の体力年齢の若返りと医療費の削減を図る。 | 体力年齢、医療費 | 2017~2018 年度 | - | - |
滋賀県東近江市 | その他 | コミュニティビジネスのスタートアップを支援することにより、地域資源の循環、地域課題の解決等を図る。(注) | (各事業ごとに設定) | 2016年度、 2017年度、 2018年度 | - | 厚生労働省 民間活力を活用した社会的事業の開発・普及のための環境整備事業 |
大阪府 | 子ども・家庭・教育 | 養育里親の支援のため、フォスタリング業務を実施し、里親登録数等の向上を図る。 | 研修登録(施設実習到達者に限る)、里親登録数 | 2018年度 | - | 厚生労働省 民間活力を活用した社会的事業の開発・普及のための環境整備事業 |
大阪府xx市 | 子ども・家庭・教育 | 不登校の児童・生徒に対するフリースクール事業を実施し、若者のニート・ひきこもり等の防止を図る。 | 小中学校への出席日数、フリースクールへの出席日数 | 2018年度 | - | 厚生労働省 民間活力を活用した社会的事業の開発・普及のための環境整備事業 |
兵庫県神戸市 | 医療 | 人工透析に至るリスクが高い者を対象に、受診勧奨及び保健指導を実施し、腎機能低下の抑制等を図る。 | 保健指導プログラム修了率、修了者の生活習慣改善率、生活習慣改善者の腎機能低下抑制率 | 2017~2019 年度 | 経済産業省 健康寿命延伸産業創出推進事業 | - |
地方自治体名 | 事業分野 | 事業概要 | 成果指標 | 事業期間 | 国の支援(案件組成) | 国の支援(事業実施) |
兵庫県xx市 | 健康 | 健康プログラム等を提供し、住民の健康度の向上と医療費及び介護リスクの抑制を図る。 | 参加者数、運動不十分層の割合、継続率、歩数変化、医療費抑制額、介護リスク抑制率 | 2018~2022 年度 | - | 内閣府(地方創生) 地方創生推進交付金 |
新潟県見附市 | ||||||
xx県白子町 | ||||||
奈良県天理市 | 介護 | 脳機能の維持・改善のための教室を開催することなどにより、認知症の予防を図る。 | トレーニング応援ボランティアの研修受講の有無、受講者数に対するボランティア数、教室の開催回数、出席率、MMSE(ミニメンタ ルステート検査)の点数 | 2017年度、 2018年度 | - | - |
岡山県岡山市 | 健康 | 運動、栄養・食生活、社会参加に関する サービスを提供する健康ポイント事業を実施し、市民の健康づくりの習慣化を図る。 | 参加者数、生活習慣を改善しようとする者 の数、サービスの継続利用者数、BMI、身体活動量 | 2018~2022 年度 | - | 内閣府(地方創生) 地方創生推進交付金 |
広島県 | 医療 | 受診勧奨を実施し、大腸がん検診者数・精密検査受診率を向上させ、早期がん発見者数の増加を図る。 | 大腸がん検診受診者数、精密検査受診率 | 2018~2020 年度 | 経済産業省 健康寿命延伸産業創出推進事業 | - |
愛媛県xx市 | その他 | 規格外農産物など地元食材を活用した事業を実施し、地元農業・商業・雇用を活性化させる。(注) | (各事業ごとに設定) | 2018年度 | - | - |
熊本県xx市 | 介護 | 理学療養士による介護保険事業利用希望者へのサポート、住宅改修・福祉用具貸与への適切な助言により、生活自立支援プログラムの参加xxxを図る。 | 窓口対応件数、リハ職訪問アセスメント件数、リハ職福祉用具・住宅改修点検件数、窓口からの自立支援プログラム参加者数、不要な福祉用具・住宅改修の是正件数 | 2018年度 | - | 厚生労働省 民間活力を活用した社会的事業の開発・普及のための環境整備事業 |
大分県 | 医療 | AI(人工知能)及びソーシャル・マーケティング手法を活用した服薬指導を実施し、重複服薬の削減を図る。 | 削減薬剤数 | 2018年度 | - | 厚生労働省 民間活力を活用した社会的事業の開発・普及のための環境整備事業 |
※2019年2月現在で、事業実施中又は実施済みの事業。アンケート調査への回答などに基づいて作成した。
(注)単年度事業として少額の事業を複数実施している場合には、各年度1件(その他)として集計した(東近江市、xx市)。
(参考)PFS事業に係る地方自治体等を支援することが可能な措置の整理
省庁 | 内閣府(地方創生推進本部事務局) | 厚生労働省 | 経済産業省 |
年度 | 平成28年度~ | 平成29年度~平成31年度 | 平成26年度~ |
交付金・ 事業等の名称 | 地方創生推進交付金 | 保健福祉分野における民間活力を活用した社会的事業の開発・普及のための環境整備事業 | 健康寿命延伸産業創出推進事業 |
目的 | 地方公共団体による、それぞれの地域の実情に応じたまち・ひと・しごと創生に資する事業の効率的かつ効果的な実施を図る。 | 保健福祉分野において、SIBなど社会的インパクト投資や成果連動 型民間委託契約の枠組みを活用して社会的事業を試行的に実施 し、その課題や有効性の検証を行う。これを通じて、保健福祉分野における社会的事業の開発・普及を目指す。 | 日本再興戦略にも掲げられている「健康寿命延伸産業」の創出・育成を通じ、国民の健康増進、あるべき医療費・介護費の実現を目指す。 |
予算額 | H29年度:1,000億円 H30年度:1,000億円 H31年度:1,000億円 ※上記は地方創生推進交付金全体の予算額 | H29年度:0.6億円 H30年度:1.0億円 H31年度:1.0億円 | H27年度:0.32億円、H28年度:0.14億円、H29年度:0.19億円 H30年度:6.0億円の内数 H31年度:4.9億円の内数 ※いずれも「健康寿命延伸産業創出推進事業」予算額のうちSIB推進関係の額 |
内容 | 【交付対象】 地方公共団体 | 【委託先】 コンソーシアムの代表者(社会的事業者又は中間支援 組織) | 【委託先】 シンクタンク・中間支援組織等 |
【交付対象経費】 地域再生計画に記載された、地方版まち・ひと・しごと創生総合戦略に位置づけられた自主的・主体的で先導的な事業の実施に要する経費 【交付率】 50% 【交付限度額(H31年度)】先駆性のある取組 都道府県:6億円、中枢中核都市:5億円、その他市区町村:4億円 先駆的・優良事例の横展開 都道府県:2億円、中枢中核都市:1.7億円、その他市区町村:1.4億円 | 【事業内容(H31年度)】 社会的インパクト投資や成果連動型民間委託契約の枠組みを活用した社会的事業を試行的に実施し、その課題及び有効性の検証並びに社会的インパクト評価の環境整備を行う。 事業者は自治体を含む関係者とコンソーシアムを形成し、コン ソーシアム内で合意した事業内容等に基づいて事業を実施・成果評価を行う。 事業内容に応じて特定課題と地域課題型に分類。 【委託費(H31年度)】 950万円/件(左記を上限とする) | 【事業内容】 次世代のヘルスケアビジネスを創出・育成に向けて、社会の需要創出を実現すべく、健康経営及び健康投資の普及・定着に向けた事業を実施。本事業の中で、SIB推進に関する以下の取組を行っている。 (1)ヘルスケア分野でのSIBの可能性についての検討(有識者委員会の開催、効果測定のパイロット事業) (2)SIBの基礎自治体での案件組成支援(神戸市、八王子市において、①指標・支払テーブル設定、②資金調達、③事業実施を支 援)、普及啓発 (3)SIBの広域連携(県・市町村連携)モデル組成支援(広島県) |
※地方創生推進交付金については、SIBへの支援策ではなく、地方公共団体の自主的・主体的な取り組みについて交付対象事業の要件に合致する事業であれば支援。