Q2-1 土地賃貸借契約の終了原因 A2-1
2 土地賃貸借契約終了一般
弁護士
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Q2-1 土地賃貸借契約の終了原因
土地の賃貸借契約が終了する場合としては、どのようなものがありますか。
A2-1
合意により終了する場合として合意解除が、当然に終了するものとして期間の満了が、一方的に終了させる場合として解約申入れ及び法定解除等があります。解説
合意解除は、賃貸人と賃借人とが合意により賃貸借契約を解除するものである。
合意による終了以外の終了原因として、まず、賃貸借契約に期間が定められている場合には、その期間の満了により、契約は終了する。ただし、旧借地法や借地借家法の適用がある場合には、一定の要件を充たすと借地契約が更新されたものとみなされる1。
また、賃貸借契約に期間が定められなかった場合
(民法617条)や期間が定められた場合でも解約権を留保した場合(同法618条)には、当事者の一方が解約の申入れをすることにより、賃貸借契約を終了させることができる場合がある。
さらに、賃借人が賃貸人に無断で賃借権の譲渡または転貸をした場合(同法612条2項)のほか、賃借人が債務不履行をした場合(同法541条)等に、賃貸人は賃貸借契約を解除できる場合がある2。
Q2-2 解約申入れ
所有している空き地を有効活用しようと考えて、駐車場として賃貸しました。特に期間を定めずに貸していたのですが、この度、その土地に別荘を建てることになりました。土地を返してもらうことはできるのでしょうか。
A2-2
建物の所有を目的とせず、期間の定めのない土地賃貸借契約においては、解約の申入れをし、1年経過後に土地を返してもらうことができます。
解説
賃貸借契約に期間が定められなかった場合(民法617条)や期間が定められた場合でも解約権を留保した場合(同法618条)には、当事者の一方が解約の申入れをすることにより、賃貸借契約を終了させることができる場合がある。
解約の申入れは、原則として、賃貸借契約の締結後、いつでもすることができる(同法617条1項前段)。解約の申入れがなされた場合は、その日から猶予期 間(土地の賃貸借では1年、建物の賃貸借では3ヶ月、動産・貸席の賃貸借では1日)が経過することにより、賃貸借契約が終了する(同法617条1項後段)。この期間
は、当事者の合意により変更することができる。
例外として、借地借家法の適用がある場合(Q2-3)には、期間の定めがなければ存続期間は30年とされるため(同法3条)、解約申入れによる契約の終了は認められない。
Q2-3 期間の満了と存続期間
所有する土地を、借地人が自宅を建てるために、期間10年間として賃貸し、借地人はその土地に自宅を建てて住んでいます。もうすぐ10年になりますが、借地人からは、まだ子どもも小さいし、新しく家を建てるお金もないから、10年経った後も住み続けたいと言われています。10年経った時に土地を返してもらえないのでしょうか。
A2-3
建物の所有を目的とする借地契約については、旧借地法または借地借家法が適用されます。
大正10年5月15日から平成4年7月31日までに締結されたものについては、旧借地法の適用により、堅固な建物の所有を目的とする場合には30年未満の期間を定めてもその期間は60年とされ、非堅固な建物の所有を目的とする場合には20年未満の期間を定めてもその期間は30年とされます。
平成4年8月1日以降に締結されたものについては、借地借家法の適用により、建物の種類を問わず、30年未満の期間を定めてもその期間は30年とされます。したがって、設問の事例では、10年を経過した時
点で返してもらうことはできません。解説
賃貸借の存続期間について、民法は、20年を超えることができないと定めている(民法604条1項)。
しかし、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」(借地権。旧借地法1条、借地借家法2条1号。)
については、旧借地法ないし借地借家法による修正を受ける(旧借地法は大正10年5月15日に施行され、借地借家法は平成4年8月1日に施行されている。大正10年5月15日から平成4年7月31日までに締結された借地契約に基づく借地権には旧借地法が適用され、平成4年8月 1日以降に締結されたものには借地借家法が適用される。)。
ここでいう「建物」については、生活や営業を保護するという観点から、工作物よりも狭く、生活し営業を行うことが可能なxx物であることを要するという見解と、投下資本の維持・回収確保の観点から、維持・回収が要請される程度の資本が投下されたものであれば足りるという見解がある。いずれの見解においても、継続的に利用可能なxx物であることは必要とされ、仮設的で耐久性のないものは「建物」とはいえない。
また、「所有を目的とする」とは、「借地人の借地使用の主たる目的がその地上に建物を築造し、これを所有することにある場合」をいうとされる(最判昭和42年12月5日判タ216号120頁)。その判断にあたっては、契約内容、使用形態及び利用目的等が考慮される。
旧借地法が適用される場合、目的物たる建物が堅固なものかそうでないものかによって借地契約の存続期間が異なる。まず、堅固な建物の場合には60年とされ
(旧借地法2条1項本文)、契約で30年以上の存続期間を定めたときはその期間になる(同条2項)。契約で30年未満の存続期間を定めても、それは借地権者に不利な約定として定めなかったものとみなされ(同法11条)、 60年になると解される。次に、非堅固な建物の場合には30年とされ(同法2条1項本文)、契約で20年以上の存続期間を定めたときはその期間になる(同条2項)。契約で20年未満の存続期間を定めても、それは借地権者に不利な約定として定めなかったものとみなされ(同法11条)、30年になると解される。
借地借家法が適用される場合、建物の構造にかかわらず、借地契約の存続期間は30年とされ、契約でそれより長い期間を定めたときにかぎり、約定期間によるとされている(同法3条)。
以上の存続期間の修正のほか、更新の可能性もある。例外として、建物の所有を目的とする土地の賃貸借
であっても、「臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合」には、存続期間に関する規定が適用されない(旧借地法9条、借地借家法25条)3。
Q2-4 建物買取請求権
所有する土地を借地人が自宅を建てるために賃貸し、実際に借地人が自宅を建てて住んでいましたが、この程、期間満了で、更新もなく、借地契約が終了することになりました。土地の明渡しにあたって、借地人から、借地上に建てた建物を買い取ってもらいたいと言われています。買い取らなければならないのでしょうか。
A2-4
借地契約の存続期間が満了し、更新がなされない場合で、借地人がその権原により借地に建て、所有する建物が存続しているときに、借地人が建物買取請求をした場合には、xxは、その建物を時価で買い取らなければなりません。
解説
旧借地法及び借地借家法では、建物その他借地人が権原により土地に付属させた物を時価で買い取るべきことをxxに請求する権利(建物買取請求権)が認められている(旧借地法4条2項、借地借家法13条1項)。
借地人は、①借地権の存続期間が満了した場合に、
②契約の更新がなされないときは、③存続期間の満了時に賃借人が借地上に建物等を所有し、④借地人が買取請求をする時に建物等が土地の上に存在していれば、⑤xxに対して当該建物等を時価で買い取るべきことを請求する意思表示をすることによって、建物買取請求権を行使することができる。なお、第三者が借地上の建物等を取得した場合に、xxが賃借権の譲渡・転貸を承諾しないときも、同様の買取請求権が認められている(旧借地法10条、借地借家法14条)。
建物買取請求権が行使された場合、建物等について、当事者間に売買契約が成立したのと同一の効果が認められる(大判昭和11年5月26日民集15巻998頁、最判昭和33年6月6日判時152号28頁、最判昭和42年9月14日民集21巻7号1791頁等。)。そのため、借地人は、同時履行の抗弁権(民法533条本文。前掲最判昭和42年9月14日等。)や留置権(同法295条1項本文。前掲最判昭和33年6月6日等。)により、建物代金の支払いがあるまで建物の引渡しを拒絶できる。この建物留置権の実効性を確保するために、その敷地についても留置権が認められている(大判18年2月18日民集22巻91頁等。)。ただし、その場合でも、存続期間の満了後は、土地を無権原で占有していることに変わりはない以上、地代相当額を土地所有者に不当利得として返還しなければならない(最判昭和35年9月20日民集14巻11号2227頁)。
5 Oike Library No.45 2017/4
買取価格は、建物等の「時価」とされる。ここでいう「時価」は、建物が現存するままの状態における価格である( 最判昭和35年12月20日民集14巻14号3130頁)。借地権そのものの価格は含まれない。建物の存在する場所的環境は参酌すべきとされる。
なお、借地借家法では、借地権の存続期間が満了する前に、xxの承諾を得ないで、残存期間を超えて存続すべきものとして建物が新たに築造されたときは、xxの請求により、裁判所が、代金の全部または一部の支払いにつき相当の期限を許与できるとされている
(同法13条2項)。
借地人の債務不履行を理由としてxxが賃貸借契約を解除した場合に、借地人に建物買取請求権が認められるかどうかについては争いがあるが、判例は、信頼関係の破壊の観点から、建物買取請求権を否定する
(最判昭和35年2月9日民集14巻1号108頁)。
1 更新の詳細は、「3 賃貸借契約の更新」を参照。また、それに関連して、定期借地権については、御池ライブラリー 35号8頁を参照。
2 法定解除の詳細については、御池ライブラリー 39号6頁、同39号12頁も参照。
3 一時使用の賃貸借の詳細については、御池ライブラリー 35号1頁以下も参照。