Contract
1-3 運営段階における課題に対する適切な対応
運営段階の課題
課題 標準契約書モデル及びその解説
要求水準書作成指針
・運営段階に入り初めて明らかとなった状況変化への対応
・運営段階におけるサービス水準の確保
・複雑で多岐にわたる運営関連業務の
・柔軟なサービス内容・サービス価格の変更
・統括マネジメント業務の位置づけ
・事業コンセプト書の添付
とりまとめの必要性
・運営段階に特徴的な人件費の比重の高いサービスへの対応
・モニタリングと業績連動支払いのシステムの充実
・発注者の任意解除
・発注者への損失補償の明確な位置づけ
・要求水準書の明確化、具体化、精緻化
・建築基準法等法令変更に対する対応
・一定の基準を設定し官民がリスク分担
・当事者間の紛争に対する対応
・紛争調整規定の新設
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(1)変更メカニズム ①状況変化に対応した柔軟なサービス内容の変更
契約期間終了まで変更しないことではなく、柔軟に変更できるメカニズムの存在が重要 長期契約
運営の比重が高い事業では、運営開始前後に当初想定しえなかった事項が判明することも多い。
予め全て予測するのは困難
・まずは、当初の要求水準はできるだけ明確にすること、xx性・透明性の確保が重要
・しかし、変更の必要性が生じることが常に問題という訳ではなく、変更の必要性が生じてい るのに放置する方が問題という発想の転換が必要。
柔軟に変更に対応できる規定の創設
例:通常の変更(一定の価格以上のもの)の他、小規模な変更のための簡易な変更メカニズムを創設
迅速性 透明性
曖昧な事実上の変更はモニタリングの基準が不明確となり、結果的にモニタリングが困難に!
英国での試み
中小規模変更
カタログ方式:予想可能な変更について、予め項目(変更内容)と価格(全て込み)を決定オープンブック方式:入札時の単価を開示した上で、これに応じて算定
大規模変更
マーケットテスティング
ベンチマーキング
独立した技術アドバイザーの利用
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(1)変更メカニズム ②サービス対価の変更
建設費の高騰に対する対応
基本的考え方――リスクを最もよく管理することができる者が当該リスクを負担
民間の創意工夫で影響を緩和することが期待され、原則として受注者負担。
しかし、応札時点で民間が予測しえない急激な物価変動は受注者が管理できるリスクの範囲を超える。
・公共工事標準請負約款における調整条項のうち「単品スライド」「スーパーインフレ」に該当する
ものについては、約款と同様に規定するべき。
・使用する客観的指標や変動幅は、今後明確化していくことが望ましい。
ソフトサービスのサービス対価の変更
指標による価格調整のみでは市場実勢価格と乖離が生じる。
市場実勢価格と乖離を防止するためのメカニズムを組み込む。
例:①ベンチマーキング(市場価格を調査し、これに応じて調整
②マーケットテスティング(SPCが対象のサービスを入札し、落札した事業者に委託先を交代)
③当該サービスについての契約期間の短縮
※対象となるサービスは、主にソフトサービス(資本的支出を伴わず、資本的支出との関連性も低いサービス)を想定している(資本的支出に関連するサービスは、一部のみ取り出して市場価格と比較するのが困難であるため)
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(2)任意解除(発注者都合による解除)
任意解除規定の必要性 公共側の政策変更 住民ニーズの変化 等
発注者による任意解除権を規定
課題――損失補償額の算定
・下請契約等の内容も予め把握しておくことが望まれる。財務モデル、下請契約等の情報共有は、
サービス内容変更の際の価格算定にも有用
・解除時期と損失補償額(具体的金額)を予め合意する方法もある
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発注者による債務不履行と同様の損失補償支払を義務づけ安易な任意解除を抑制
安易な任意解除を認めると、民間事業者及び融資金融 機関の立場が不安定に
優先貸付人 | 元本、利息の他、スワップ解約コストなど合理的な期限前弁済時の補償金をカバー |
業務の委託先 | 合理的な商慣習に反しない限り、再委託先への期限前解約に伴う補償金をカバー |
株主 株主劣後貸付人 | 両当事者で合意した将来の収支計画(財務モデル等)に基づき支払うことが考えられるが、現段階ではこれを合意するという慣行はなく、今後合意するようにすることが望まれる。また、収支計画と現実が異なる場合の扱い(特に民間収益事業部分)、将来のリスクの扱い (例:リスクが高いプロジェクトでは高い割引率を使用)にも留意する必要がある。 |
よりよいコミュニケーションのために
(3)紛争予防及び解決のためのメカニズム ①基本的考え方
協 議
当事者間での協議
・紛争予防・解決に相応しい構成員で「調整会議」等を組織
・定期的に会議を開催し紛争予防を図る
・紛争が生じた際に実効的な話合いができる体制を維持
中立的第三者が関与する紛争解決手続の活用
・契約上で、官民のコミュニケーションを図るために必要な会合のタイプ、程度について規定。
・官民の良好な関係を保つためには、コンタクトするポイントは複数あることが望ましい。
中立的第三者の関与
・中立的第三者の関与によりxxな解決を図る
・中立的第三者が関与する手続の存在により、その前段階の協議による紛争解決を促進(協議において不合理な主張がなされることを予防)
・中立的第三者の選任の困難性により敬遠されるのを防止するため、当面は中立的第三者の判断に拘束力のない調停方式を想定
・その一方で、官民双方の責任体制が混乱せず、意思決定が明確になされるように両者のチャンネルが適切に設定されることが重要。
※英国財務省Operational Taskforce Note2: Project Transition Guidance
裁 判 (2007年3月) 参照
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(3)紛争予防及び解決のためのメカニズム ②日英比較
○SoPC4(英国 PFI契約の標準化 第4版)及び「標準契約書モデル及びその解説(案)」に添付予定の契約書例
SoPC4
契約書例
当事者間での解決
当事者間での協議
調整会議における協議
中立的第三者の判断
裁定人選任請求
予め同意した名簿の順番に従って裁定人を選任
28日以内裁定人による判断
調停申立て
○○日以内調停人の意見
○○日以内合意 or 不同意
28日以内
仲裁開始請求 裁判
仲裁 仲裁人の選任
仲裁判断
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(4)法令変更
法令変更により増加した費用をどちらが負担するのか?
例:建築基準法の改正により増加した費用
(4)法令変更
基本的な考え方――リスクを最もよく管理することができる者が当該リスクを負担
→以下のいずれかに該当する場合のみ民間負担とすべき
物価等の指標に基づく調整条項、ベンチーマーキング等により
最終的に費用の増加を吸収できる場合
受注者の合理的努力により影響を押さえられる場合
利用料金値上げ等により、
一般利用者にコストを転嫁できる場合
資本的支出 | 発注者 | |
資本的支出以外 | 当該事業に直接影響を与える法令変更 | 発注者 |
一般的法令変更 | 受注者 |
条項の内容
※実際の判断は困難である場合が多いため、契締結時点で予想できる変更については、PFI事業契約書におい変更内容を特定した上で、費用の負担者を明記すべき
法令変更による増加費用の
軽減義務
民間収益事業は原則受注者負担
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(5)モニタリング、支払いメカニズムの充実 ①実効的モニタリングシステムの構築
要求水準書
モニタリング
支払メカニズム
入札時に公表
標準契約書モデル及びその解説(案)
要求水準書作成指針
モニタリング内容確定までのプロセス例
モニタリング基本計画書(案)の提示
応札者による具体的モニタリング方法の提案
アウトプット仕様ごとに、達成状況を見るためのモニタリング指標と、計測の方法、計測の頻度を示す 。
モニタリング実施計画書の作成
モニタリング委員会の開催
(セルフモニタリング結果及び発注者の評価を対照させながら、両者の認識を一致させ、モニタリングの基準を共同で作成していく)
事業の性質によっては、入札時に詳細を示すことは困難なことも多いため、官民共同で実態に応じて段階的に詳細化していくことが必要。
初めの1年間については、原則ペナルティ(減額)の対象としないことも考えられる。
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(5)モニタリング、支払いメカニズムの充実 ②建設モニタリング
課題:BTO事業において、完工検査段階で瑕疵が見つかるなど、建設モニタリングが十分に機能していない例がある。
・セルフモニタリングに関する発注者の考え方を入札段階で応札者に示し、事業者選定段階でセルフモニタリングの方法を提案させること等により、発注者の視点、ノウハウを明確に応札者に伝達
・重要な部分は発注者自らモニタリング
発 注 者
工事監理計画書等の提出
SPC
セルフモニタリング
例:
・瑕疵が存在した場合の影響が大きい事項
・完工後の瑕疵発見が困難かつ重要な事項
・施設の安全性に直接かかわる事項
・地域の環境保全に大きな影響を与える事項
特に重要な事項は中間確認等により直接モニタリング
施工会社等から一定程度独立
設計会社
工事監理
施工会社
していることが望ましい
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(5)モニタリング、支払いメカニズムの充実 ③適切な支払メカニズムの構築
サービス水準維持のためのインセンティブとしての実効性の確保
発注者の意図に応じた重み付け
発注者にとって重要な部分はペナルティを重くするなど、発注者の意図が受注者に伝わるような支払メカニズムとする
各指標間の関係
一つの事由が複数の指標に関連する場合に(例:エレベーターの停止により、他のサービスに遅延が生じる)、二重に減額するのか否か等を明確に規定しておく。
施設整備費部分の扱い
特にBOT方式では、施設整備費部分についてもペナルティにする方法も積極的に活用すべきである
が、上限を設けるなど、民間事業者、金融機関の過度な負担にならないようにすべきである。
リカバリーポイント・ボーナスポイント
違反ポイントと相殺できるリカバリーポイント、さらにはサービス対価の増額につながるボーナスポイントを導入することも考えられる。
利用量に基づく調整
入場者の増加等により民間事業者の費用が増加する場合、原則としてこれに応じてサービス対価を 連動させる(サービスの質の向上が、収益の悪化につながることを回避するため)
・収容能力に応じた上限設定及び入場制限も考えられる。
・支払メカニズム作成段階で、民間事業者のコスト構造の十分なシミュレーションが必要
※(1)~(5)の議論の詳細は、xxxx://xxx0.xxx.xx.xx/xxx/xxxxxx0.xxxx にて閲覧可能 36